JP2005029647A - 耐摩耗性軸受油組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた耐摩耗性や酸化安定性を有する軸受油組成物を提供する。
【解決手段】基油に、ポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステルなどの非イオン系界面活性剤と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールの脂肪酸エステル(部分エステルを含んでも良い)、ホスフェート、ホスファイト、アシッドホスフェート、及びアシッドホスフェートのアミン塩などの摩耗防止剤を溶解させて、軸受油組成物とする。
【選択図】 なし
【解決手段】基油に、ポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステルなどの非イオン系界面活性剤と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールの脂肪酸エステル(部分エステルを含んでも良い)、ホスフェート、ホスファイト、アシッドホスフェート、及びアシッドホスフェートのアミン塩などの摩耗防止剤を溶解させて、軸受油組成物とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性と酸化安定性に優れる軸受油組成物に関するものである。詳しくは、各種焼結軸受、動圧軸受、特に銅系材料を使用した軸受用の潤滑油として優れており、耐摩耗性と酸化安定性に優れる軸受油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、摩擦・摩耗が生じる部位の潤滑特性を向上させるため、例えばZnDTPやリン酸エステルなどのリン化合物、ポリサルファイド、硫化油脂、硫化オレフィンなどの硫黄化合物、さらには、MoDTPやMoDTCなどの有機モリブデン化合物が多く使用されているが、特に使用環境が苛酷になればなるほど更なる耐摩耗性の向上が望まれている。
しかしながら、近年、潤滑油を必要とする高速化・小型化・軽量化された装置、例えば、HDD、CD−RやDVD−RなどのPC機器、AV機器に使用されるモーターにおいて、潤滑油の使用条件がますます過酷になってきている。そのため、特に耐摩耗性が必要な部位において使用する目的で、各種摩耗防止剤が添加されたもの潤滑油が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、各種界面活性剤が添加されたもの等も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、使用条件がさらに過酷な部位、あるいは銅材を使用した部位においては、さらなる耐摩耗性の向上が望まれている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−34987号公報
【特許文献2】
特開平9−217077号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、特定の界面活性剤、もしくは特定の界面活性剤と摩耗防止剤を組み合わせて添加することにより、各種焼結軸受、動圧軸受、特に銅系材料を使用した軸受用の潤滑油として、優れた耐摩耗性と酸化安定性を有する耐摩耗性軸受油組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、鉱油又は合成油を基油とし、その基油に、特定の界面活性剤、もしくは特定の界面活性剤と摩耗防止剤を組み合わせて添加することにより、優れた耐摩耗性を有することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、基油と、非イオン系界面活性剤と摩耗防止剤が含有されていることを特徴とする軸受油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記軸受油組成物において、非イオン系界面活性剤が、ポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステルである軸受油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記軸受油組成物において、非イオン系界面活性剤の含有量が、0.05〜5質量%である軸受油組成物を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、上記軸受油組成物において、摩耗防止剤が、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールの脂肪酸エステル(部分エステルを含んでも良い)、ホスフェート、ホスファイト、アシッドホスフェート、及びアシッドホスフェートのアミン塩から選ばれる少なくとも1種であり、摩耗防止剤の含有量が0.05〜5質量%である軸受油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記軸受油組成物において、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンおよびヒンダードフェノール類から選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤を含有し、酸化防止剤の含有量が、アルキル化ジフェニルアミンは0.05〜2質量%、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンは0.05〜2質量%、ヒンダードフェノール類は0.05〜2質量%である軸受油組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、上記軸受油組成物において、アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種の分散剤を含有し、アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体の含有量が0.05〜5質量%である軸受油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記軸受油組成物において、ベンゾトリアゾール及びその誘導体およびアルキルコハク酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の金属不活性剤及び錆止め剤を含有し、ベンゾトリアゾール及びその誘導体の含有割合が0.001〜0.05質量%、アルキルコハク酸誘導体の含有割合が0.01〜0.3質量%である軸受油組成物を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の軸受油組成物に使用される基油は、鉱油又は合成油、あるいはこれらの混合物が用いられる。鉱油や合成油の種類は、特に制限はされないが、JISK2283動粘度試験方法による40℃における動粘度が3〜500mm2/S、好ましくは4〜250mm2/S、さらに好ましくは5〜150mm2/S、特に好ましくは6〜100mm2/Sである。
40℃動粘度が、3mm2/S未満であると適正な油膜が得られなかったりすることがあり、500mm2/Sを越えると軸が回転するときの抵抗トルクが大きくなってしまうため好ましくない。
【0009】
鉱油としては、溶剤精製や水素化精製などの精製により得られるパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油又は中間基系鉱油などを挙げることができる。
さらに、合成油の種類としては炭化水素系合成油、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルジオールエステル、コンプレックスエステル)、ポリグリコールエステル、グリセリンエステル、芳香族エステル、さらに、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化トリフェニルエーテル、アルキル化テトラフェニルエーテル、アルキル化ポリフェニルエーテルなどのエーテル油や各種シリコーン油や各種フッ素油なども挙げられる。
【0010】
特に、軸受用潤滑油として使用する場合には、軸受の使用環境から、ポリαオレフィンのような炭化水素系合成油やジエステル類が好ましく、さらに好ましくは、ジエステル類が挙げられる。
詳しくは、炭化水素系合成油としてポリ−α−オレフィン、ポリブテン、エチレン−α−オレフィンオリゴマーなどが挙げられる。
モノエステルとしては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸などとメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどの1価のアルコールからなるモノエステルが挙げられる。
【0011】
ジエステルとしては、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、グルタン酸、アジピン酸、ジメチルコハク酸、ピメリン酸、テトラメチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などとメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどのの1価のアルコールを同一種類もしくは他方の種を異にした2塩基酸からなるジエステルが挙げられる。
【0012】
ポリオールエステルとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールとカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸からなるポリオールエステルが挙げられる。
ポリグリコールエステルとしては、ポリグリコールとカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸からなるグリコールエステルが挙げられる。
グリセリンエステルとしては、モノ脂肪酸グリセリン、ジ脂肪酸グリセリン、トリ脂肪酸グリセリンが挙げられ、脂肪酸にはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸からなるグリセリンエステルが挙げられる。
【0013】
ポリフェニルエーテルは、アルキル基がないものでも良いし、アルキル基が直鎖又は分枝鎖のアルキル基があるものでも良い。アルキル基の具体例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、メチルオクチル、エチルペプチル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシルなどが挙げられる。
上記基油は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良く、また、鉱油と合成油を組み合わせて使用しても良い。
【0014】
本発明の軸受油組成物は、耐摩耗性を向上させるために非イオン系界面活性剤が含有されている。
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステル、グリセリンエステル、ソルビタンエステルなどの非イオン系界面活性剤が好ましく挙げられ、特に、ポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテルもしくはエステルが好ましい。なお、アミン系非イオン系界面活性剤及びアミド系非イオン系界面活性剤は、酸化安定性の面で良好でないため、好ましくない。非イオン系界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明で使用するポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステルとしては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
R1−(−O−R2−)n−OR3 (1)
(式中、R1及びR3は、水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基若しくはアシル基であり、同一でもよいし又は異なってもよく、R2は炭素数1〜8のアルキレン基である。nは3〜7500の整数である。)
上記式中、R1及びR3の一価の炭化水素基としては、脂肪族系炭化水素基、脂環式系炭化水素基、芳香族系炭化水素基などが挙げられ、これらのうち脂肪族系炭化水素基が好ましい。脂肪族系炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、また、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。なお、一価の炭化水素基の炭素数が18を超えると、基油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。
【0016】
一価の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、オレイル基、ヘキシルフェニル基、オクチルシクロヘキシル基などが挙げられる。R1及びR3のアシル基における炭化水素基としては、上記一価の炭化水素基と同様なものが挙げられる。
R1及びR3としては、炭素数1〜9のアルキル基が特に好ましい。
R2は炭素数1〜8のアルキレン基であり、エチレン基が好ましい。R2は、炭素数が8を越えると、油への溶解性が低下する可能性があるため好ましくない。
また、nは3〜7500の整数であるが、好ましくは5〜1000の整数であり、特に好ましくは10〜500の整数である。nが3より小さいと基油への分散性が悪くなる可能性があり、nが7500より大きいと基油への溶解性が低下する可能性があるため好ましくない。
【0017】
また、本発明で使用するポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステルとしては、下記式(2)で表される化合物も挙げられる。
R4−〔−O(C3H6O)a(C2H4O)b−R5〕x (2)
(式中、R4は炭素数3〜20の一価又は多価の炭化水素基であり、R5は水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基若しくはアシル基であり、同一でもよいし又は異なってもよく、aは4〜25の整数であり、bは0≦(b/a)≦2の条件に適合する整数であり、xはR4の価数に対応する整数である。)
R4の一価又は多価の炭化水素基としては、脂肪族系炭化水素基、脂環式系炭化水素基、芳香族系炭化水素基などが挙げられ、これらのうち脂肪族系炭化水素基が好ましい。この一価又は多価の炭化水素基の炭素数は、3〜20の範囲であるが、好ましくは4〜15の範囲である。一価又は多価の炭化水素基の炭素数が3未満であっても、20を超えても、溶解性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、一価又は多価の炭化水素基の価数は、適宜選定すればよいが、一価〜六価が好ましく、一価又は二価が特に好ましい。
【0018】
R5の一価の炭化水素基としては、脂肪族系炭化水素基、脂環式系炭化水素基、芳香族系炭化水素基などが挙げられ、これらのうち脂肪族系炭化水素基が好ましい。脂肪族系炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、また、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。なお、一価の炭化水素基の炭素数が18を超えると、基油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。一価の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、オレイル基、ヘキシルフェニル基、オクチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
R5としては、炭素数1〜9のアルキル基が特に好ましい。
【0019】
aはプロピレンオキシドの平均付加モル数であり、4〜25の整数である。bはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、0≦(b/a)≦2の条件に合う整数である。(b/a)の比率は2以下であるが、R4の炭素数が3〜6の場合、(b/a)の比率は3/18以下が好ましく、2/18以下が特に好ましい。R4の炭素数が7〜10の場合、(b/a)の比率は3/7以下が好ましく、2/8以下が特に好ましい。R4の炭素数が11〜20の場合、(b/a)の比率は5/5以下が好ましく、4/6以下が特に好ましい。これらの範囲を超えると、溶解性に悪影響を及ぼす可能性がある。
なお、プロピレンオキシド単位とエチレンオキシド単位は、ランダム構造であってもよいし、ブロック構造であってもよい。
【0020】
一般式(2)の化合物は、炭素数3〜20の一価又は多価のアルコールにプロピレンオキシド、エチレンオキシド又は両者を付加させることにより得ることができる。炭素数3〜20の一価又は多価のアルコールとしては、例えばプロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、オクチレングリコール、ノニルアルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース、ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンなどが挙げられる。
本発明で使用する非イオン系界面活性剤成分の含有割合は、それぞれ、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.075〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な耐摩耗性を有しないことがあり、また、5質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0021】
また、この界面活性剤と組み合わせて使用する摩耗防止剤としては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールの脂肪酸エステル(部分エステルを含んでも良い)、ホスフェート、ホスファイト、アシッドホスフェート、アシッドホスフェートのアミン塩、から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
特に、摩耗防止剤を1種類で使用する場合には、上記脂肪酸エステル(以下、脂肪酸エステルという。)が好ましく、摩耗防止剤を2種類以上で使用する場合には、脂肪酸エステルとホスファイト、脂肪酸エステルとアシッドホスフェートのアミン塩の組み合わせが好ましく、さらに好ましくは脂肪酸エステルとホスファイトとアシッドホスフェートのアミン塩の組み合わせである。
【0022】
本発明で使用する脂肪酸エステルとしては、下式(3)〜(5)で表される構造のものが挙げられる。
【化1】
【0023】
(式中、R6〜R14は、水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基を有するアシル基を示し、R6とR7の少なくとも1つが前記アシル基であり、R8〜R10の少なくとも1つが前記アシル基であり、R11〜R14の少なくとも1つが前記アシル基であり、R6〜R14は、それぞれ同一であっても、異なってもよい。)
上記式中、R6〜R14は、好ましくは、炭素数6〜18のアルキル基を有するアシル基である。R6〜R14が、炭素数が31を越えると、油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。
上記脂肪酸エステルは、上記式(3)〜(5)のいずれか1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。また、上記式(3)〜(5)の各式のものは、それぞれ1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
本発明で使用するホスフェートとしては、下記式(6)で表される構造のものが挙げられる。
【0024】
【化2】
(式中、R15〜R17は、水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基を示し、R15〜R17は、同一であっても、異なってもよい。)
R15〜R17は、好ましくは、炭素数3〜9のアルキル基である。炭素数が22を越えると、油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。
【0025】
上記ホスフェートの具体例には、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート等があり、例えばベンジルジフェニルホスフェート、アリルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェートおよびトリブチルフェニルホスフェート等の化合物を挙げることができる。
上記ホスフェートは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0026】
本発明で使用するフォスファイトとしては、下記式(7)、(8)で表される構造をもつものが挙げられる。
【化3】
(式中、R18は、炭素数1〜22の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。)
上記式中、R18は、好ましくは炭素数8〜18の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。R18は、炭素数が22を越えると基油への溶解性が低下するため好ましくない。
【0027】
R18の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、エチルヘプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル、イソドデシル、n−トリデシル、イソトリデシル、n−テトラデシル、イソテトラデシル、n−ペンタデシル、イソペンタデシル、n−ヘキサデシル、イソヘキサデシル、n−ヘプタデシル、イソヘプタデシル、n−オクタデシル、イソオクタデシル、n−ノナデシル、イソノナデシルなどが挙げられる。これらのフォスファイトは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
上記フォスファイトの具体例には、トリス(2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート)フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリステアリルフォスファイト、トリイソオクチルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリクレジルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイトなどの亜リン酸トリアルキルエステル類、亜リン酸ジアルキルエステル類、亜リン酸モノアルキルエステル類などが挙げられる。
【0029】
本発明で使用するアシッドフォスフェートとしては、下記式(9)で表される構造をもつものが挙げられる。
(R19)dH3−dO3P (9)
(式中、R19は炭素数4以上の炭化水素基を表し、dは1又は2である。)
R19の具体例としては、炭素数4〜20の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、すなわちアルキル基およびアルケニル基、炭素数4〜20の芳香族炭化水素基、シクロアルキル基が挙げられる。炭素数が4以下でも20以上でも目的の性能がでない可能性がある。炭素数の好ましくは炭素数6〜18であり、より好ましくは炭素数8〜12である。
アシッドフォスフェートの具体例としては、たとえば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。
なお、上記アシッドフォスフェートは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0030】
本発明で使用するアシッドフォスフェートのアミン塩は、アシッドフォスフェートを中和して塩をつくるアルキルアミンでもよく、下記式(10)で表される構造のアルキルアミンが挙げられる。
【化4】
(式中、R20、R21およびR22は、一価の炭化水素基又は水素原子であり、そのうち少なくとも1個は炭化水素基である。)
【0031】
上記式のアルキルアミンの具体例は、ジブチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、オレイルアミン、ココナッツアミン、牛脂アミンなどである。
なお、上記フォスフェート類は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明で使用する摩耗防止剤の含有割合は、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.15〜2質量%、特に好ましくは0.15〜1.5質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な潤滑性を得られないことがあり、また、5質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0032】
本発明の軸受油組成物には、酸化防止剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤としては、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンおよびヒンダードフェノール類から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
アルキル化ジフェニルアミンは、式(11)で表される構造を有するものが挙げられる。
【化5】
(式中、R23およびR24は、水素原子、又は炭素数1〜16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。)
【0033】
上記式中のR23およびR24は、好ましくは炭素数3〜9の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子又は炭素数4及び8の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。
アルキル基の炭素数が16を越えると油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。また、R23およびR24は、同一であっても、異なっても良い。
上記の直鎖又は分枝鎖のアルキル基の具体例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、メチルオクチル、エチルペプチル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシルなどが挙げられる。
【0034】
アルキル化ジフェニルアミンの好適な具体例としては、例えばジフェニルアミン、ブチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジブチルジフェニルアミン、オクチルブチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミンなどが挙げられる。
アルキル化ジフェニルアミンは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
アルキル化ジフェニルアミンの含有割合は、好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な酸化防止能が得られないことがあり、2質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0035】
アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンとしては、式(12)で表される構造を有するものが挙げられる。
【化6】
(式中、R25は、炭素数1〜16の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。)
上記式のR25は、好ましくは炭素数4〜8の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。
【0036】
R25の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、エチルヘプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル、n−テトラデシルなどが挙げられる。
【0037】
上記アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンの具体例としては、n−ペンチル化フェニル−α−ナフチルアミン、2−メチルブチル化フェニル−α−ナフチルアミン、2−エチルヘキシル化フェニル−α−ナフチルアミン、n−オクチル化フェニル−α−ナフチルアミン、n−ノニル化フェニル−α−ナフチルアミン、1−メチルオクチル化フェニル−α−ナフチルアミン、n−ウンデシル化フェニル−α−ナフチルアミン、n−ドデシル化フェニル−α−ナフチルアミンが挙げられる。
アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンの含有割合は、好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な酸化防止能が得られないことがあり、2質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0038】
ヒンダードフェノール類としては、式(13)、(14)及び(15)で表される構造を有するものが好ましい。
【化7】
【0039】
上記式(13)における、R26、R27、R29及びR30は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を示す。好ましくは、水素原子又は炭素数4〜8の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。R26、R27、R29及びR30は、同一であっても、異なっても良い。
また、R28は、炭素数1〜5のアルキレン基であり、好ましくは、1〜4である。
上記式(14)におけるR31及びR32は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を示す。好ましくは、水素原子又は炭素数4〜8の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。R31及びR32は、同一であっても、異なっても良い。
また、nは、1〜4の整数であり、好ましくは、1〜3である。
【0040】
上記式(15)におけるR33、R34及びR35は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を示す。好ましくは、R33及びR34は、水素原子又は炭素数4〜8の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基であり、R35は、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。R33、R34及びR35は、同一であっても、異なっても良い。
上記のヒンダードフェノール類は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
ヒンダードフェノール類の含有割合は、好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な酸化防止能が得られないことがあり、2質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0041】
本発明の軸受油組成物には、分散剤としてのアルケニルコハク酸イミド又はその誘導体を含有させることが好ましい。
分散剤としてのアルケニルコハク酸イミド又はその誘導体としては、下記式(16)で表されるモノタイプ、又は下記式(17)で表されるビスタイプの構造を有するものが挙げられる。
【0042】
【化8】
【0043】
上記式(16)、(17)において、R36及びR38は、ポリブテニル基を表し、好ましくは、平均分子量が、約1000〜5000のもの、より好ましくは約1000〜3000のもの、特に好ましくは約1000〜2000のものである。ポリブテニル基の平均分子量が1000未満のものは、不溶解分の分散効果が低く、5000を越えるものは、基油への溶解性が低下することがある。
R37は、炭素数1〜7のアルキレン基を表し、炭素数の好ましい範囲は2〜5である。
nは、0〜10の整数を表し、好ましくは1〜7の整数である。
【0044】
上記のアルケニルコハク酸イミドは、一般には、ポリブテンと無水マレイン酸との反応で得られるポリブテニルコハク酸無水物を、さらにポリアミンと反応させることによって得られる。
ポリブテニルコハク酸無水物と反応させるポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミンなどの単一ジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、ペンタペンチレンヘキサミンなどのポリアルキレンポリアミン類などが挙げられる。
【0045】
また、上記のアルケニルコハク酸イミドの誘導体としては、アルケニルコハク酸イミドのホウ素化合物誘導体、有機ホスホネート誘導体の外に、アルケニルコハク酸イミドをアルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、アルキレンオキシド、イオウ、多価アルコールなどと反応させて得られるアルケニルコハク酸イミド誘導体などが挙げられる。
上記のアルケニルコハク酸イミド又はその誘導体は、それぞれ単独で使用してもよいし、アルケニルコハク酸イミドを2種以上、又はその誘導体を2種以上、あるいはアルケニルコハク酸イミドと誘導体を組み合わせて使用してもよい。
アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体の含有割合は、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%であり、特に好ましくは0.2〜2質量%である。
【0046】
本発明の軸受油組成物には、金属不活性剤及び錆止め剤を含有させることが好ましい。金属不活性剤及び錆止め剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体およびアルキルコハク酸誘導体から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ベンゾトリアゾールの誘導体としては、ベンゾトリアゾールと、それに水溶性アミン、脂肪酸エステルなどを反応して得られる誘導体などが挙げられる。これらのベンゾトリアゾールとその誘導体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ベンゾトリアゾール及びその誘導体の好適なものは、式(18)で表される構造をもつものである。
【0047】
【化9】
本発明で使用するベンゾトリアゾール及びその誘導体の含有割合は、好ましくは0.001〜0.05質量%であり、より好ましくは0.003〜0.02質量%である。含有割合が0.1質量%未満であると十分な金属腐食防止性を得られないことがあり、0.05質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0048】
アルキルコハク酸の誘導体としては、アルキルコハク酸アミド、アルキルコハク酸エステルなどが挙げられ、アルキルコハク酸の誘導体の好適なものは、式(19)、式(20)で表される構造をもつものである。
【化10】
【0049】
上記式(19)および(20)中、R39、R41及びR42は炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R40は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。R39の好ましいものは、炭素数10〜14のアルケニル基であり、特に好ましくはドデセニル又はドデカジエニルである。R41及びR42の好ましいものは、炭素数8〜16のアルキル基又はアルケニル基である。R39、R41及びR42の具体例としては、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ヘキセジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、デカジエニル、ウンデカジエニル、ドデカジエニル、テトラデカジエニル、ヘプタデカジエニル、オクタデカジエニルなどが挙げられる。
【0050】
R40の具体例としては、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチルなどが挙げられる。これらのアルキルコハク酸誘導体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよいが、好ましくは2種以上を組み合わせたものであり、特に好ましくはアルケニルコハク酸の部分エステルとアルキルコハク酸アミドを組み合わせたものである。
アルキルコハク酸の誘導体の含有割合は、好ましくは0.01〜0.3質量%であり、より好ましくは0.03〜0.1質量%であり、特に好ましくは0.03〜0.07質量%である。含有割合が0.01質量%未満であると十分な金属腐食防止性が得られないことがあり、0.3質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0051】
本発明の軸受油組成物には、摩耗防止剤として、チオホスフェート、チオホスファイト、硫化オレフィン、ポリサルファイド、Znジアルキルジチオホスフェート、Moジアルキルジチオホスフェート、Moジアルキルジチオカルバメートを用いることもできる。
さらに、本発明の軸受油組成物には、必要に応じて、上記以外の各種添加剤を配合することもできる。添加剤としては、例えば、スチレンーブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート等の流動点降下剤;オレフィンコポリマー等の粘度指数向上剤等が挙げられる。
本発明の軸受油組成物は、種々の機器の潤滑油として使用できる。特に、動圧軸受用軸受油組成物として、使用すると優れた効果を発揮することができる。
【0052】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
実施例および比較例では、基油と各成分の添加剤を配合して、軸受油組成物、を調製し、それぞれの耐摩耗性と摩擦係数を評価した。各実施例、各比較例において組成物の調製に用いた基油、添加剤成分は次の通りである。
【0053】
(1)基油
基油としては、▲1▼高度精製されたパラフィン系鉱油で、減圧蒸留留出油をフルフラールで溶剤抽出し、メチルエチルケトンで溶剤脱ろう後、さらに水素化精製した鉱油、又は▲2▼工業的に合成された合成油であるポリ−α−オレフィンを使用した。JIS K2283動粘度試験方法による40℃の動粘度が10〜30mm2/sの粘度のものを使用した。又は、▲3▼工業的に合成された合成油であるジエステルを使用した。40℃の動粘度が8〜20mm2/sの粘度のものを使用した。
【0054】
(2)界面活性剤
▲1▼ポリオキシエチレンアルキルエーテル
式(1)のR1及びR3が炭素数8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R2がエチレン基であり、n=200のポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用した。
▲2▼第4級アンモニウムサルフェート(カチオン系界面活性剤)
【化11】
(式中、Rは炭素数18のアルキル基である。)
【0055】
(3)摩耗防止剤
▲1▼脂肪酸エステル
式(3)のR6及びR7が炭素数が18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R6及びR7が同一のネオペンチルグリコールエステルを使用した。
▲2▼ホスフェート
式(6)のR15〜R17が同一の炭素数7のアルキル基であるホスフェートを用いた。
▲3▼ホスファイト
式(7)のR18が直鎖又は分岐鎖のC12H25のアルキル基であるホスファイトを用いた。
【0056】
▲4▼アシッドホスフェート
式(9)のR19が直鎖又は分岐鎖のC8H17のアルキル基であり、dが2であるアシッドホスフェートを用いた。
▲5▼アシッドホスフェートのアミン塩
上記アシッドホスフェートのオレイルアミン塩を用いた。
【0057】
(4)酸化防止剤
▲1▼アルキル化ジフェニルアミン
式(11)のR23、R24が、水素原子、直鎖又は分枝鎖のC4H9、直鎖又は分枝鎖のC8H17のいずれかの組み合わせであるアルキル化ジフェニルアミンの混合物を用いた。
▲2▼アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン
式(12)において、R25が直鎖又は分枝鎖のC8H17であるアルキル化フェニル−α−ナフチルアミンを用いた。
▲3▼ヒンダードフェノール
式(15)において、R33及びR34がtert−ブチル基で、R35がメチル基の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを用いた。
【0058】
(5)分散剤
▲1▼アルケニルコハク酸イミド誘導体
式(17)のR36及びR38が、平均分子量が約1900のポリブテニル基であり、R37がエチレン基であり、nが2〜6の混合物であるビスタイプを用いた。
(6)金属不活性剤及び錆止め剤
▲1▼ベンゾトリアゾール
式(18)のベンゾトリアゾールを用いた。
▲2▼アルキルコハク酸エステル
式(19)において、R39が炭素数12のアルケニル基であり、R40が炭素数5のアルキル基であるアルキルコハク酸エステルを用いた。
【0059】
(評価方法)
軸受油として要求される、耐摩耗性、熱安定性、金属への腐食安定性、防錆性について、下記の評価方法により、軸受油組成物を評価した。
▲1▼耐摩耗性の評価方法<シェル四球試験法>
潤滑油の耐摩耗性を評価する方法の一つで、ASTMD2783に準拠して行い、耐摩耗性を摩耗径で評価した。下記にその試験条件を示す。
【0060】
▲2▼熱安定性の評価方法<スラッジ試験法>
潤滑油の熱安定性(酸化安定性)を評価する方法の一つで、JISK2540に制定されている熱安定度試験に準拠した試験によるもの。
【0061】
▲3▼金属への腐食安定性の評価方法
潤滑油の潤滑性を評価する方法の一つで、JISK2513に準拠して行い、金属への腐食安定性を銅板の変色の程度で評価した。変色の程度は、JISK2513に規定されており、1〜4の数値で評価され、数値が小さい程安定性に優れる。
▲4▼防錆性の評価方法
潤滑油の防錆性を評価する方法の一つで、JISK2510に制定している方法で行い、防錆性を錆の程度で評価した。
【0062】
(実施例1〜15)
基油に、各成分を表1〜4上段に掲げる割合(質量%)で配合し、軸受油組成物を調製した。
それらの軸受油組成物の各種性能を評価し、その結果を表1〜表4下段に示す。
(比較例1〜7)
基油に、各成分を表5上段に掲げる割合(質量%)で配合し、軸受油組成物を調製した。それらの軸受油組成物の各種性能を評価し、その結果を表5下段に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
(高速スピンドルモーター試験)
上記実施例9、10及び15の軸受油組成物を用いて、高速スピンドルモーター試験を行ったところ、3000時間の耐久試験において、いずれも良好な成績を示した。
【0068】
【発明の効果】
本発明の軸受油組成物は、耐摩耗性や酸化安定性が優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性と酸化安定性に優れる軸受油組成物に関するものである。詳しくは、各種焼結軸受、動圧軸受、特に銅系材料を使用した軸受用の潤滑油として優れており、耐摩耗性と酸化安定性に優れる軸受油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、摩擦・摩耗が生じる部位の潤滑特性を向上させるため、例えばZnDTPやリン酸エステルなどのリン化合物、ポリサルファイド、硫化油脂、硫化オレフィンなどの硫黄化合物、さらには、MoDTPやMoDTCなどの有機モリブデン化合物が多く使用されているが、特に使用環境が苛酷になればなるほど更なる耐摩耗性の向上が望まれている。
しかしながら、近年、潤滑油を必要とする高速化・小型化・軽量化された装置、例えば、HDD、CD−RやDVD−RなどのPC機器、AV機器に使用されるモーターにおいて、潤滑油の使用条件がますます過酷になってきている。そのため、特に耐摩耗性が必要な部位において使用する目的で、各種摩耗防止剤が添加されたもの潤滑油が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、各種界面活性剤が添加されたもの等も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、使用条件がさらに過酷な部位、あるいは銅材を使用した部位においては、さらなる耐摩耗性の向上が望まれている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−34987号公報
【特許文献2】
特開平9−217077号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、特定の界面活性剤、もしくは特定の界面活性剤と摩耗防止剤を組み合わせて添加することにより、各種焼結軸受、動圧軸受、特に銅系材料を使用した軸受用の潤滑油として、優れた耐摩耗性と酸化安定性を有する耐摩耗性軸受油組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、鉱油又は合成油を基油とし、その基油に、特定の界面活性剤、もしくは特定の界面活性剤と摩耗防止剤を組み合わせて添加することにより、優れた耐摩耗性を有することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、基油と、非イオン系界面活性剤と摩耗防止剤が含有されていることを特徴とする軸受油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記軸受油組成物において、非イオン系界面活性剤が、ポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステルである軸受油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記軸受油組成物において、非イオン系界面活性剤の含有量が、0.05〜5質量%である軸受油組成物を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、上記軸受油組成物において、摩耗防止剤が、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールの脂肪酸エステル(部分エステルを含んでも良い)、ホスフェート、ホスファイト、アシッドホスフェート、及びアシッドホスフェートのアミン塩から選ばれる少なくとも1種であり、摩耗防止剤の含有量が0.05〜5質量%である軸受油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記軸受油組成物において、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンおよびヒンダードフェノール類から選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤を含有し、酸化防止剤の含有量が、アルキル化ジフェニルアミンは0.05〜2質量%、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンは0.05〜2質量%、ヒンダードフェノール類は0.05〜2質量%である軸受油組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、上記軸受油組成物において、アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種の分散剤を含有し、アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体の含有量が0.05〜5質量%である軸受油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記軸受油組成物において、ベンゾトリアゾール及びその誘導体およびアルキルコハク酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の金属不活性剤及び錆止め剤を含有し、ベンゾトリアゾール及びその誘導体の含有割合が0.001〜0.05質量%、アルキルコハク酸誘導体の含有割合が0.01〜0.3質量%である軸受油組成物を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の軸受油組成物に使用される基油は、鉱油又は合成油、あるいはこれらの混合物が用いられる。鉱油や合成油の種類は、特に制限はされないが、JISK2283動粘度試験方法による40℃における動粘度が3〜500mm2/S、好ましくは4〜250mm2/S、さらに好ましくは5〜150mm2/S、特に好ましくは6〜100mm2/Sである。
40℃動粘度が、3mm2/S未満であると適正な油膜が得られなかったりすることがあり、500mm2/Sを越えると軸が回転するときの抵抗トルクが大きくなってしまうため好ましくない。
【0009】
鉱油としては、溶剤精製や水素化精製などの精製により得られるパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油又は中間基系鉱油などを挙げることができる。
さらに、合成油の種類としては炭化水素系合成油、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルジオールエステル、コンプレックスエステル)、ポリグリコールエステル、グリセリンエステル、芳香族エステル、さらに、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化トリフェニルエーテル、アルキル化テトラフェニルエーテル、アルキル化ポリフェニルエーテルなどのエーテル油や各種シリコーン油や各種フッ素油なども挙げられる。
【0010】
特に、軸受用潤滑油として使用する場合には、軸受の使用環境から、ポリαオレフィンのような炭化水素系合成油やジエステル類が好ましく、さらに好ましくは、ジエステル類が挙げられる。
詳しくは、炭化水素系合成油としてポリ−α−オレフィン、ポリブテン、エチレン−α−オレフィンオリゴマーなどが挙げられる。
モノエステルとしては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸などとメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどの1価のアルコールからなるモノエステルが挙げられる。
【0011】
ジエステルとしては、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、グルタン酸、アジピン酸、ジメチルコハク酸、ピメリン酸、テトラメチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などとメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどのの1価のアルコールを同一種類もしくは他方の種を異にした2塩基酸からなるジエステルが挙げられる。
【0012】
ポリオールエステルとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールとカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸からなるポリオールエステルが挙げられる。
ポリグリコールエステルとしては、ポリグリコールとカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸からなるグリコールエステルが挙げられる。
グリセリンエステルとしては、モノ脂肪酸グリセリン、ジ脂肪酸グリセリン、トリ脂肪酸グリセリンが挙げられ、脂肪酸にはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸からなるグリセリンエステルが挙げられる。
【0013】
ポリフェニルエーテルは、アルキル基がないものでも良いし、アルキル基が直鎖又は分枝鎖のアルキル基があるものでも良い。アルキル基の具体例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、メチルオクチル、エチルペプチル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシルなどが挙げられる。
上記基油は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良く、また、鉱油と合成油を組み合わせて使用しても良い。
【0014】
本発明の軸受油組成物は、耐摩耗性を向上させるために非イオン系界面活性剤が含有されている。
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステル、グリセリンエステル、ソルビタンエステルなどの非イオン系界面活性剤が好ましく挙げられ、特に、ポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテルもしくはエステルが好ましい。なお、アミン系非イオン系界面活性剤及びアミド系非イオン系界面活性剤は、酸化安定性の面で良好でないため、好ましくない。非イオン系界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明で使用するポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステルとしては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
R1−(−O−R2−)n−OR3 (1)
(式中、R1及びR3は、水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基若しくはアシル基であり、同一でもよいし又は異なってもよく、R2は炭素数1〜8のアルキレン基である。nは3〜7500の整数である。)
上記式中、R1及びR3の一価の炭化水素基としては、脂肪族系炭化水素基、脂環式系炭化水素基、芳香族系炭化水素基などが挙げられ、これらのうち脂肪族系炭化水素基が好ましい。脂肪族系炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、また、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。なお、一価の炭化水素基の炭素数が18を超えると、基油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。
【0016】
一価の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、オレイル基、ヘキシルフェニル基、オクチルシクロヘキシル基などが挙げられる。R1及びR3のアシル基における炭化水素基としては、上記一価の炭化水素基と同様なものが挙げられる。
R1及びR3としては、炭素数1〜9のアルキル基が特に好ましい。
R2は炭素数1〜8のアルキレン基であり、エチレン基が好ましい。R2は、炭素数が8を越えると、油への溶解性が低下する可能性があるため好ましくない。
また、nは3〜7500の整数であるが、好ましくは5〜1000の整数であり、特に好ましくは10〜500の整数である。nが3より小さいと基油への分散性が悪くなる可能性があり、nが7500より大きいと基油への溶解性が低下する可能性があるため好ましくない。
【0017】
また、本発明で使用するポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステルとしては、下記式(2)で表される化合物も挙げられる。
R4−〔−O(C3H6O)a(C2H4O)b−R5〕x (2)
(式中、R4は炭素数3〜20の一価又は多価の炭化水素基であり、R5は水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基若しくはアシル基であり、同一でもよいし又は異なってもよく、aは4〜25の整数であり、bは0≦(b/a)≦2の条件に適合する整数であり、xはR4の価数に対応する整数である。)
R4の一価又は多価の炭化水素基としては、脂肪族系炭化水素基、脂環式系炭化水素基、芳香族系炭化水素基などが挙げられ、これらのうち脂肪族系炭化水素基が好ましい。この一価又は多価の炭化水素基の炭素数は、3〜20の範囲であるが、好ましくは4〜15の範囲である。一価又は多価の炭化水素基の炭素数が3未満であっても、20を超えても、溶解性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、一価又は多価の炭化水素基の価数は、適宜選定すればよいが、一価〜六価が好ましく、一価又は二価が特に好ましい。
【0018】
R5の一価の炭化水素基としては、脂肪族系炭化水素基、脂環式系炭化水素基、芳香族系炭化水素基などが挙げられ、これらのうち脂肪族系炭化水素基が好ましい。脂肪族系炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、また、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。なお、一価の炭化水素基の炭素数が18を超えると、基油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。一価の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、オレイル基、ヘキシルフェニル基、オクチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
R5としては、炭素数1〜9のアルキル基が特に好ましい。
【0019】
aはプロピレンオキシドの平均付加モル数であり、4〜25の整数である。bはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、0≦(b/a)≦2の条件に合う整数である。(b/a)の比率は2以下であるが、R4の炭素数が3〜6の場合、(b/a)の比率は3/18以下が好ましく、2/18以下が特に好ましい。R4の炭素数が7〜10の場合、(b/a)の比率は3/7以下が好ましく、2/8以下が特に好ましい。R4の炭素数が11〜20の場合、(b/a)の比率は5/5以下が好ましく、4/6以下が特に好ましい。これらの範囲を超えると、溶解性に悪影響を及ぼす可能性がある。
なお、プロピレンオキシド単位とエチレンオキシド単位は、ランダム構造であってもよいし、ブロック構造であってもよい。
【0020】
一般式(2)の化合物は、炭素数3〜20の一価又は多価のアルコールにプロピレンオキシド、エチレンオキシド又は両者を付加させることにより得ることができる。炭素数3〜20の一価又は多価のアルコールとしては、例えばプロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、オクチレングリコール、ノニルアルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース、ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンなどが挙げられる。
本発明で使用する非イオン系界面活性剤成分の含有割合は、それぞれ、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.075〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な耐摩耗性を有しないことがあり、また、5質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0021】
また、この界面活性剤と組み合わせて使用する摩耗防止剤としては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールの脂肪酸エステル(部分エステルを含んでも良い)、ホスフェート、ホスファイト、アシッドホスフェート、アシッドホスフェートのアミン塩、から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
特に、摩耗防止剤を1種類で使用する場合には、上記脂肪酸エステル(以下、脂肪酸エステルという。)が好ましく、摩耗防止剤を2種類以上で使用する場合には、脂肪酸エステルとホスファイト、脂肪酸エステルとアシッドホスフェートのアミン塩の組み合わせが好ましく、さらに好ましくは脂肪酸エステルとホスファイトとアシッドホスフェートのアミン塩の組み合わせである。
【0022】
本発明で使用する脂肪酸エステルとしては、下式(3)〜(5)で表される構造のものが挙げられる。
【化1】
【0023】
(式中、R6〜R14は、水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基を有するアシル基を示し、R6とR7の少なくとも1つが前記アシル基であり、R8〜R10の少なくとも1つが前記アシル基であり、R11〜R14の少なくとも1つが前記アシル基であり、R6〜R14は、それぞれ同一であっても、異なってもよい。)
上記式中、R6〜R14は、好ましくは、炭素数6〜18のアルキル基を有するアシル基である。R6〜R14が、炭素数が31を越えると、油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。
上記脂肪酸エステルは、上記式(3)〜(5)のいずれか1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。また、上記式(3)〜(5)の各式のものは、それぞれ1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
本発明で使用するホスフェートとしては、下記式(6)で表される構造のものが挙げられる。
【0024】
【化2】
(式中、R15〜R17は、水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基を示し、R15〜R17は、同一であっても、異なってもよい。)
R15〜R17は、好ましくは、炭素数3〜9のアルキル基である。炭素数が22を越えると、油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。
【0025】
上記ホスフェートの具体例には、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート等があり、例えばベンジルジフェニルホスフェート、アリルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェートおよびトリブチルフェニルホスフェート等の化合物を挙げることができる。
上記ホスフェートは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0026】
本発明で使用するフォスファイトとしては、下記式(7)、(8)で表される構造をもつものが挙げられる。
【化3】
(式中、R18は、炭素数1〜22の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。)
上記式中、R18は、好ましくは炭素数8〜18の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。R18は、炭素数が22を越えると基油への溶解性が低下するため好ましくない。
【0027】
R18の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、エチルヘプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル、イソドデシル、n−トリデシル、イソトリデシル、n−テトラデシル、イソテトラデシル、n−ペンタデシル、イソペンタデシル、n−ヘキサデシル、イソヘキサデシル、n−ヘプタデシル、イソヘプタデシル、n−オクタデシル、イソオクタデシル、n−ノナデシル、イソノナデシルなどが挙げられる。これらのフォスファイトは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
上記フォスファイトの具体例には、トリス(2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート)フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリステアリルフォスファイト、トリイソオクチルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリクレジルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイトなどの亜リン酸トリアルキルエステル類、亜リン酸ジアルキルエステル類、亜リン酸モノアルキルエステル類などが挙げられる。
【0029】
本発明で使用するアシッドフォスフェートとしては、下記式(9)で表される構造をもつものが挙げられる。
(R19)dH3−dO3P (9)
(式中、R19は炭素数4以上の炭化水素基を表し、dは1又は2である。)
R19の具体例としては、炭素数4〜20の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、すなわちアルキル基およびアルケニル基、炭素数4〜20の芳香族炭化水素基、シクロアルキル基が挙げられる。炭素数が4以下でも20以上でも目的の性能がでない可能性がある。炭素数の好ましくは炭素数6〜18であり、より好ましくは炭素数8〜12である。
アシッドフォスフェートの具体例としては、たとえば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。
なお、上記アシッドフォスフェートは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0030】
本発明で使用するアシッドフォスフェートのアミン塩は、アシッドフォスフェートを中和して塩をつくるアルキルアミンでもよく、下記式(10)で表される構造のアルキルアミンが挙げられる。
【化4】
(式中、R20、R21およびR22は、一価の炭化水素基又は水素原子であり、そのうち少なくとも1個は炭化水素基である。)
【0031】
上記式のアルキルアミンの具体例は、ジブチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、オレイルアミン、ココナッツアミン、牛脂アミンなどである。
なお、上記フォスフェート類は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明で使用する摩耗防止剤の含有割合は、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.15〜2質量%、特に好ましくは0.15〜1.5質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な潤滑性を得られないことがあり、また、5質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0032】
本発明の軸受油組成物には、酸化防止剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤としては、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンおよびヒンダードフェノール類から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
アルキル化ジフェニルアミンは、式(11)で表される構造を有するものが挙げられる。
【化5】
(式中、R23およびR24は、水素原子、又は炭素数1〜16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。)
【0033】
上記式中のR23およびR24は、好ましくは炭素数3〜9の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子又は炭素数4及び8の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。
アルキル基の炭素数が16を越えると油への溶解性が低下することがあるため好ましくない。また、R23およびR24は、同一であっても、異なっても良い。
上記の直鎖又は分枝鎖のアルキル基の具体例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、メチルオクチル、エチルペプチル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシルなどが挙げられる。
【0034】
アルキル化ジフェニルアミンの好適な具体例としては、例えばジフェニルアミン、ブチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジブチルジフェニルアミン、オクチルブチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミンなどが挙げられる。
アルキル化ジフェニルアミンは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
アルキル化ジフェニルアミンの含有割合は、好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な酸化防止能が得られないことがあり、2質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0035】
アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンとしては、式(12)で表される構造を有するものが挙げられる。
【化6】
(式中、R25は、炭素数1〜16の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。)
上記式のR25は、好ましくは炭素数4〜8の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。
【0036】
R25の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、エチルヘプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル、n−テトラデシルなどが挙げられる。
【0037】
上記アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンの具体例としては、n−ペンチル化フェニル−α−ナフチルアミン、2−メチルブチル化フェニル−α−ナフチルアミン、2−エチルヘキシル化フェニル−α−ナフチルアミン、n−オクチル化フェニル−α−ナフチルアミン、n−ノニル化フェニル−α−ナフチルアミン、1−メチルオクチル化フェニル−α−ナフチルアミン、n−ウンデシル化フェニル−α−ナフチルアミン、n−ドデシル化フェニル−α−ナフチルアミンが挙げられる。
アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンの含有割合は、好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な酸化防止能が得られないことがあり、2質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0038】
ヒンダードフェノール類としては、式(13)、(14)及び(15)で表される構造を有するものが好ましい。
【化7】
【0039】
上記式(13)における、R26、R27、R29及びR30は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を示す。好ましくは、水素原子又は炭素数4〜8の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。R26、R27、R29及びR30は、同一であっても、異なっても良い。
また、R28は、炭素数1〜5のアルキレン基であり、好ましくは、1〜4である。
上記式(14)におけるR31及びR32は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を示す。好ましくは、水素原子又は炭素数4〜8の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。R31及びR32は、同一であっても、異なっても良い。
また、nは、1〜4の整数であり、好ましくは、1〜3である。
【0040】
上記式(15)におけるR33、R34及びR35は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を示す。好ましくは、R33及びR34は、水素原子又は炭素数4〜8の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基であり、R35は、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基である。R33、R34及びR35は、同一であっても、異なっても良い。
上記のヒンダードフェノール類は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
ヒンダードフェノール類の含有割合は、好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。含有割合が0.05質量%未満であると十分な酸化防止能が得られないことがあり、2質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0041】
本発明の軸受油組成物には、分散剤としてのアルケニルコハク酸イミド又はその誘導体を含有させることが好ましい。
分散剤としてのアルケニルコハク酸イミド又はその誘導体としては、下記式(16)で表されるモノタイプ、又は下記式(17)で表されるビスタイプの構造を有するものが挙げられる。
【0042】
【化8】
【0043】
上記式(16)、(17)において、R36及びR38は、ポリブテニル基を表し、好ましくは、平均分子量が、約1000〜5000のもの、より好ましくは約1000〜3000のもの、特に好ましくは約1000〜2000のものである。ポリブテニル基の平均分子量が1000未満のものは、不溶解分の分散効果が低く、5000を越えるものは、基油への溶解性が低下することがある。
R37は、炭素数1〜7のアルキレン基を表し、炭素数の好ましい範囲は2〜5である。
nは、0〜10の整数を表し、好ましくは1〜7の整数である。
【0044】
上記のアルケニルコハク酸イミドは、一般には、ポリブテンと無水マレイン酸との反応で得られるポリブテニルコハク酸無水物を、さらにポリアミンと反応させることによって得られる。
ポリブテニルコハク酸無水物と反応させるポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミンなどの単一ジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、ペンタペンチレンヘキサミンなどのポリアルキレンポリアミン類などが挙げられる。
【0045】
また、上記のアルケニルコハク酸イミドの誘導体としては、アルケニルコハク酸イミドのホウ素化合物誘導体、有機ホスホネート誘導体の外に、アルケニルコハク酸イミドをアルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、アルキレンオキシド、イオウ、多価アルコールなどと反応させて得られるアルケニルコハク酸イミド誘導体などが挙げられる。
上記のアルケニルコハク酸イミド又はその誘導体は、それぞれ単独で使用してもよいし、アルケニルコハク酸イミドを2種以上、又はその誘導体を2種以上、あるいはアルケニルコハク酸イミドと誘導体を組み合わせて使用してもよい。
アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体の含有割合は、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%であり、特に好ましくは0.2〜2質量%である。
【0046】
本発明の軸受油組成物には、金属不活性剤及び錆止め剤を含有させることが好ましい。金属不活性剤及び錆止め剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体およびアルキルコハク酸誘導体から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ベンゾトリアゾールの誘導体としては、ベンゾトリアゾールと、それに水溶性アミン、脂肪酸エステルなどを反応して得られる誘導体などが挙げられる。これらのベンゾトリアゾールとその誘導体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ベンゾトリアゾール及びその誘導体の好適なものは、式(18)で表される構造をもつものである。
【0047】
【化9】
本発明で使用するベンゾトリアゾール及びその誘導体の含有割合は、好ましくは0.001〜0.05質量%であり、より好ましくは0.003〜0.02質量%である。含有割合が0.1質量%未満であると十分な金属腐食防止性を得られないことがあり、0.05質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0048】
アルキルコハク酸の誘導体としては、アルキルコハク酸アミド、アルキルコハク酸エステルなどが挙げられ、アルキルコハク酸の誘導体の好適なものは、式(19)、式(20)で表される構造をもつものである。
【化10】
【0049】
上記式(19)および(20)中、R39、R41及びR42は炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R40は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。R39の好ましいものは、炭素数10〜14のアルケニル基であり、特に好ましくはドデセニル又はドデカジエニルである。R41及びR42の好ましいものは、炭素数8〜16のアルキル基又はアルケニル基である。R39、R41及びR42の具体例としては、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ヘキセジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、デカジエニル、ウンデカジエニル、ドデカジエニル、テトラデカジエニル、ヘプタデカジエニル、オクタデカジエニルなどが挙げられる。
【0050】
R40の具体例としては、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチルなどが挙げられる。これらのアルキルコハク酸誘導体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよいが、好ましくは2種以上を組み合わせたものであり、特に好ましくはアルケニルコハク酸の部分エステルとアルキルコハク酸アミドを組み合わせたものである。
アルキルコハク酸の誘導体の含有割合は、好ましくは0.01〜0.3質量%であり、より好ましくは0.03〜0.1質量%であり、特に好ましくは0.03〜0.07質量%である。含有割合が0.01質量%未満であると十分な金属腐食防止性が得られないことがあり、0.3質量%を越えると効果が飽和し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0051】
本発明の軸受油組成物には、摩耗防止剤として、チオホスフェート、チオホスファイト、硫化オレフィン、ポリサルファイド、Znジアルキルジチオホスフェート、Moジアルキルジチオホスフェート、Moジアルキルジチオカルバメートを用いることもできる。
さらに、本発明の軸受油組成物には、必要に応じて、上記以外の各種添加剤を配合することもできる。添加剤としては、例えば、スチレンーブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート等の流動点降下剤;オレフィンコポリマー等の粘度指数向上剤等が挙げられる。
本発明の軸受油組成物は、種々の機器の潤滑油として使用できる。特に、動圧軸受用軸受油組成物として、使用すると優れた効果を発揮することができる。
【0052】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
実施例および比較例では、基油と各成分の添加剤を配合して、軸受油組成物、を調製し、それぞれの耐摩耗性と摩擦係数を評価した。各実施例、各比較例において組成物の調製に用いた基油、添加剤成分は次の通りである。
【0053】
(1)基油
基油としては、▲1▼高度精製されたパラフィン系鉱油で、減圧蒸留留出油をフルフラールで溶剤抽出し、メチルエチルケトンで溶剤脱ろう後、さらに水素化精製した鉱油、又は▲2▼工業的に合成された合成油であるポリ−α−オレフィンを使用した。JIS K2283動粘度試験方法による40℃の動粘度が10〜30mm2/sの粘度のものを使用した。又は、▲3▼工業的に合成された合成油であるジエステルを使用した。40℃の動粘度が8〜20mm2/sの粘度のものを使用した。
【0054】
(2)界面活性剤
▲1▼ポリオキシエチレンアルキルエーテル
式(1)のR1及びR3が炭素数8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R2がエチレン基であり、n=200のポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用した。
▲2▼第4級アンモニウムサルフェート(カチオン系界面活性剤)
【化11】
(式中、Rは炭素数18のアルキル基である。)
【0055】
(3)摩耗防止剤
▲1▼脂肪酸エステル
式(3)のR6及びR7が炭素数が18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R6及びR7が同一のネオペンチルグリコールエステルを使用した。
▲2▼ホスフェート
式(6)のR15〜R17が同一の炭素数7のアルキル基であるホスフェートを用いた。
▲3▼ホスファイト
式(7)のR18が直鎖又は分岐鎖のC12H25のアルキル基であるホスファイトを用いた。
【0056】
▲4▼アシッドホスフェート
式(9)のR19が直鎖又は分岐鎖のC8H17のアルキル基であり、dが2であるアシッドホスフェートを用いた。
▲5▼アシッドホスフェートのアミン塩
上記アシッドホスフェートのオレイルアミン塩を用いた。
【0057】
(4)酸化防止剤
▲1▼アルキル化ジフェニルアミン
式(11)のR23、R24が、水素原子、直鎖又は分枝鎖のC4H9、直鎖又は分枝鎖のC8H17のいずれかの組み合わせであるアルキル化ジフェニルアミンの混合物を用いた。
▲2▼アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン
式(12)において、R25が直鎖又は分枝鎖のC8H17であるアルキル化フェニル−α−ナフチルアミンを用いた。
▲3▼ヒンダードフェノール
式(15)において、R33及びR34がtert−ブチル基で、R35がメチル基の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを用いた。
【0058】
(5)分散剤
▲1▼アルケニルコハク酸イミド誘導体
式(17)のR36及びR38が、平均分子量が約1900のポリブテニル基であり、R37がエチレン基であり、nが2〜6の混合物であるビスタイプを用いた。
(6)金属不活性剤及び錆止め剤
▲1▼ベンゾトリアゾール
式(18)のベンゾトリアゾールを用いた。
▲2▼アルキルコハク酸エステル
式(19)において、R39が炭素数12のアルケニル基であり、R40が炭素数5のアルキル基であるアルキルコハク酸エステルを用いた。
【0059】
(評価方法)
軸受油として要求される、耐摩耗性、熱安定性、金属への腐食安定性、防錆性について、下記の評価方法により、軸受油組成物を評価した。
▲1▼耐摩耗性の評価方法<シェル四球試験法>
潤滑油の耐摩耗性を評価する方法の一つで、ASTMD2783に準拠して行い、耐摩耗性を摩耗径で評価した。下記にその試験条件を示す。
【0060】
▲2▼熱安定性の評価方法<スラッジ試験法>
潤滑油の熱安定性(酸化安定性)を評価する方法の一つで、JISK2540に制定されている熱安定度試験に準拠した試験によるもの。
【0061】
▲3▼金属への腐食安定性の評価方法
潤滑油の潤滑性を評価する方法の一つで、JISK2513に準拠して行い、金属への腐食安定性を銅板の変色の程度で評価した。変色の程度は、JISK2513に規定されており、1〜4の数値で評価され、数値が小さい程安定性に優れる。
▲4▼防錆性の評価方法
潤滑油の防錆性を評価する方法の一つで、JISK2510に制定している方法で行い、防錆性を錆の程度で評価した。
【0062】
(実施例1〜15)
基油に、各成分を表1〜4上段に掲げる割合(質量%)で配合し、軸受油組成物を調製した。
それらの軸受油組成物の各種性能を評価し、その結果を表1〜表4下段に示す。
(比較例1〜7)
基油に、各成分を表5上段に掲げる割合(質量%)で配合し、軸受油組成物を調製した。それらの軸受油組成物の各種性能を評価し、その結果を表5下段に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
(高速スピンドルモーター試験)
上記実施例9、10及び15の軸受油組成物を用いて、高速スピンドルモーター試験を行ったところ、3000時間の耐久試験において、いずれも良好な成績を示した。
【0068】
【発明の効果】
本発明の軸受油組成物は、耐摩耗性や酸化安定性が優れている。
Claims (7)
- 基油と、非イオン系界面活性剤と摩耗防止剤が含有されていることを特徴とする軸受油組成物。
- 非イオン系界面活性剤が、ポリオキシアルキレングリコール又はそのエーテル若しくはエステルである請求項1記載の軸受油組成物。
- 非イオン系界面活性剤の含有量が、0.05〜5質量%である請求項1又は2に記載の軸受油組成物。
- 摩耗防止剤が、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールの脂肪酸エステル(部分エステルを含んでも良い)、ホスフェート、ホスファイト、アシッドホスフェート、及びアシッドホスフェートのアミン塩から選ばれる少なくとも1種であり、摩耗防止剤の含有量が0.05〜5質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の軸受油組成物。
- アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンおよびヒンダードフェノール類から選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤を含有し、酸化防止剤の含有量が、アルキル化ジフェニルアミンは0.05〜2質量%、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミンは0.05〜2質量%、ヒンダードフェノール類は0.05〜2質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の軸受油組成物。
- アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種の分散剤を含有し、アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体の含有量が0.05〜5質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の軸受油組成物。
- ベンゾトリアゾール及びその誘導体およびアルキルコハク酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の金属不活性剤及び錆止め剤を含有し、ベンゾトリアゾール及びその誘導体の含有割合が0.001〜0.05質量%、アルキルコハク酸誘導体の含有割合が0.01〜0.3質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の軸受油組成物。
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