上述した従来の技術においては、連続する制御周期毎に取得された道路画像から検出されたレーンマークの画像部分の候補を、ある短時間分集めて実空間座標に変換することによって、レーンマークの実空間位置を認識している。そして、この場合に、レーンマークの実空間位置の認識の信頼性の尺度として、図8に示したように、直前の所定期間における平均的なレーンマークの検出率が一般的に採用されている。
図8では、制御周期T10毎に実行されるレーンマーク検出処理の結果を、レーンマークが検出されたときを○で示し、レーンマークが検出されなかったときを×で示している。また、レーンマーク検出の信頼性が高いと判断して、レーンマークと車両との相対位置の認識を実行したときを○で示し、レーンマーク検出の信頼性が低いと判断して、レーンマークと車両との相対位置の認識を停止したときを×で示している。
そして、レーンマーク検出の信頼性について、判断時点tp1の直前のn個分の周期の期間(t11〜tp1)において、レーンマークが検出された周期の個数がm以上であるときに、レーンマーク検出の信頼性が高いと判断して、レーンマークと車両との相対位置を認識している。
この場合、レーンマークが検出されない状態(×が続いた状態、〜t14)から、レーンマークが検出される状態(×から○に移行、t15〜)に切り換わったときに、最低でもm×T10に相当する時間が経過するまでは、レーンマーク検出の信頼性が高くなったと判断されないため、レーンマークと車両との相対位置の認識を開始することができない。
そのため、例えば車両が交差点を通過する場合や、道路の分岐若しくは合流箇所を走行する場合のように、レーンマークが敷設されていない箇所を一時的に走行して、レーンマーク検出の信頼性の低下によりレーンマークと車両との相対位置の認識を停止したときに、その後、レーンマークが敷設された状態に復帰しても、レーンマーク検出の信頼性が高いと判断されるようになるまでには、ある程度の時間を要する。
そして、この場合には、車両が交差点や道路の分岐若しくは合流箇所を通過して、レーンマークが安定して検出可能な状態に復帰したにも拘わらず、レーンマークと車両との相対位置の認識が停止した状態が継続する。そのため、車線維持のためにステアリングをアシスト駆動する車線維持制御や、車線からの逸脱警報制御等を速やかに再開することができないという不都合があった。
本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、レーンマークと車両との相対位置の認識が停止する期間を、レーンマーク検出の信頼性の高さを確保した上で短縮することができる車線認識装置を提供することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、車両に搭載されたカメラにより撮像される車両周囲の道路の画像から、道路の車線を区分するレーンマークを検出する処理を、所定の制御周期毎に実行するレーンマーク検出手段と、前記各制御周期におけるレーンマークの検出の有無を示す検出有無データを、順次追加して保持するデータ保持手段と、前記データ保持手段に保持された最新のものから所定個数分前までの前記検出有無データから、レーンマークの平均的な検出率であるレーンマーク検出率を算出するレーンマーク検出率算出手段と、前記レーンマーク検出率が所定の信頼性閾値よりも高いときに、前記レーンマーク検出手段によるレーンマークの検出結果に基づいて、前記車両とレーンマークとの相対位置を認識するレーンマーク位置認識手段とを備えた車線認識装置に関する。
そして、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したことを検知する走行状況検知手段を備え、前記レーンマーク位置認識手段は、前記走行状況検知手段により、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したことが検知されたときは、該通過が検知された時点から所定条件が成立するまでの間は、前記レーンマーク検出率が前記信頼性閾値以下であっても、前記車両とレーンマークとの相対位置を認識し、該通過が検知された時点から前記所定条件が成立するまでの間以外においては、前記レーンマーク検出率が前記信頼性閾値以下であるときに、前記車両とレーンマークとの相対位置の認識を停止することを特徴とする。
かかる本発明によれば、前記レーンマーク位置認識手段は、基本的には前記レーンマーク検出率が前記信頼性閾値よりも高いときに限定して、前記レーンマーク検出手段により検出されたレーンマークと前記車両との相対位置を認識することによって、レーンマーク検出の信頼性を高めている。
そして、前記走行状況検知手段により、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所(以下、レーンマーク不設置箇所という)を通過したことが検知されたときには、その後は道路の左右のレーンマークが安定して検出される状態に復帰すると想定される。そこで、前記レーンマーク位置認識手段は、前記走行状況検知手段により、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したことが検知されたときには、該通過が検知された時点から所定条件が成立するまでの間は、前記レーンマーク検出率が前記信頼性閾値以下であっても、前記車両とレーンマークとの相対位置を認識する。
これにより、レーンマーク検出の信頼性の高さを維持した上で、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したときに、前記レーンマーク位置認識手段による前記車両とレーンマークとの相対位置の認識を速やかに再開させることができる。
また、前記走行状況検知手段は、前記走行状況検知手段は、前記レーンマーク検出手段により道路の左右のレーンマークが検出されたレーンマーク検出状態から、前記レーンマーク検出手段により左右のレーンマークのうちの少なくとも一方が検出されていないレーンマーク不検出状態に切替わったときに、該レーンマーク検出状態からレーンマーク不検出状態に切替わった第1の時点から、次にレーンマーク検出状態に復帰した第2の時点までの間における前記車両の軌跡を算出し、前記軌跡の道路幅方向の変化量が、所定の幅方向変化量閾値以下であるときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる本発明によれば、前記走行状況検知手段は、レーンマーク検出状態からレーンマーク不検出状態に切替わった第1の時点から、次にレーンマーク検出状態に復帰した第2の時点までの間の前記車両の軌跡を算出する。そして、道路幅方向での前記車両の軌跡の変化量が前記幅方向変化量閾値以下である場合には、前記車両の道路幅方向の移動量が小さく、前記第1の時点から前記第2の時点までの間における前記車両の直進性が高いと判断することができる。そこで、この場合に、前記走行状況検知手段は、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したと検知することができる。
また、前記走行状況検知手段は、前記軌跡の道路幅方向の変化量が前記幅方向変化量閾値以下であり、且つ、前記第1の時点の直前に前記レーンマーク検出手段により検出された道路の左右のレーンマーク間の幅と、前記第2の時点で前記レーンマーク検出手段により検出された道路の左右のレーンマーク間の幅との差が、所定の道路幅変化閾値以下であるときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる発明において、前記第1の時点の直前に前記レーンマーク検出手段により検出された道路の左右のレーンマーク間の幅と、前記第2の時点で前記レーンマーク検出手段により検出された道路の左右のレーンマーク間の幅との差が、前記道路幅変化閾値以下であるときには、レーンマーク不検出状態の前後におけるレーンマークの連続性が高いと判断することができる。そのため、前記走行状況検知手段による、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したことの検知の信頼性を高めることができる。
また、前記車両の走行速度を検出する車速センサを備え、前記走行状況検知手段は、前記軌跡の道路幅方向の変化量が前記幅方向変化量閾値以下であり、且つ、交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所の通過距離の想定値と、前記車速センサにより検出された前記車両の走行速度とを用いて算出された交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所の予想通過時間よりも、前記第1の時点から前記第2の時点までの経過時間が短いときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる本発明によれば、例えば、道路の補修工事等により道路のレーンマークが設けられていない状況が前記予想通過時間以上継続したときには、前記レーンマーク位置認識手段による前記車両とレーンマークとの相対位置の認識は実行されない。そのため、前記走行状況検知手段による、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したことの検知の信頼性を高めることができる。
また、前記走行状況検知手段は、前記レーンマーク検出手段により道路の左右のレーンマークが検出されたレーンマーク検出状態から、前記レーンマーク検出手段により左右のレーンマークのうちの少なくとも一方が検出されていないレーンマーク不検出状態に切替わったときに、該レーンマーク検出状態からレーンマーク不検出状態に切替わった第1の時点から、次にレーンマーク検出状態に復帰した第2の時点までの間の前記車両の軌跡を算出し、前記第1の時点から前記第2の時点までの間における前記軌跡の向きの変化量が、所定の進行方向閾値以下であるときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる本発明によれば、前記走行状態検知手段は、レーンマーク検出状態からレーンマーク不検出状態に切替わった第1の時点から、次にレーンマーク検出状態に復帰した第2の時点までの間の前記車両の軌跡を算出する。そして、前記第1の時点での前記車両の進行方向からの前記軌跡の向きの変化量が前記進行方向閾値以下である場合には、前記車両の進行方向の変化が少なく、前記第1の時点から前記第2の時点までの間における前記車両の直進性が高いと判断することができる。そこで、この場合に、前記走行状況検知手段は、前記車両が交差点又は道路の左右のレーンマークのうちの少なくとも一方が設けられていない分岐・合流路を通過したと検知することができる。
また、前記走行状況検知手段は、前記第1の時点から前記第2の時点までの間における前記軌跡の向きの変化量が前記進行方向閾値以下であり、且つ、前記第1の時点の直前に前記レーンマーク検出手段により検出された道路の左右のレーンマーク間の幅と、前記第2の時点で前記レーンマーク検出手段により検出された道路の左右のレーンマーク間の幅との差が、所定の道路幅変化閾値以下であるときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる発明において、前記第1の時点の直前に前記レーンマーク検出手段により検出された道路の左右のレーンマーク間の幅と、前記第2の時点で前記レーンマーク検出手段により検出された道路の左右のレーンマーク間の幅との差が、前記道路幅変化閾値以下であるときには、レーンマーク不検出状態の前後におけるレーンマークの連続性が高いと判断することができる。そのため、前記走行状況検知手段による、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したことの検知の信頼性を高めることができる。
また、前記車両の走行速度を検出する車速センサを備え、前記走行状況検知手段は、前記第1の時点から前記第2の時点までの間における前記軌跡の向きの変化量が前記進行方向閾値以下であり、且つ、交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所の通過距離の想定値と、前記車速センサにより検出された前記車両の走行速度とを用いて算出された交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所の予想通過時間よりも、前記第1の時点から前記第2の時点までの経過時間が短いときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる本発明によれば、例えば、道路の補修工事等により道路のレーンマークが設けられていない状況が前記予想通過時間以上継続したときには、前記レーンマーク位置認識手段による前記車両とレーンマークとの相対位置の認識は実行されない。そのため、前記走行状況検知手段による、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したことの検知の信頼性を高めることができる。
また、前記車両の走行速度を検出する車速センサと、前記車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサとを備え、前記走行状況検知手段は、前記車速センサにより検出される前記車両の走行速度と、前記ヨーレートセンサにより検出される前記車両のヨーレートとを用いて、前記第1の時点から前記第2の時点までの間の前記車両の軌跡を算出することを特徴とする。
かかる本発明によれば、前記車両のヨーレート(車両の鉛直軸回りの角加速度)から前記車両の進行方向を認識し、前記車両の走行速度から前記車両の走行距離を認識して、前記車両の軌跡を算出することができる。
また、前記車両のステアリングに加えられるトルクを検出するトルクセンサを備え、前記走行状況検知手段は、前記レーンマーク検出手段により道路の左右のレーンマークが検出されたレーンマーク検出状態から、前記レーンマーク検出手段により左右のレーンマークのうちの少なくとも一方が検出されていないレーンマーク不検出状態に切替わったときに、該レーンマーク検出状態からレーンマーク不検出状態に切替わった第1の時点から、次にレーンマーク検出状態に復帰した第2の時点までの間に、前記トルクセンサにより検出されたトルクの最大値が、所定のトルク閾値以下であるとき、又は前記第1の時点から前記第2の時点までの間に前記トルクセンサにより検出されたトルクの変化量が、所定のトルク変化量閾値以下であるときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる本発明によれば、前記第1の時点から前記第2の時点までの間に前記トルクセンサにより検出されたトルクが前記トルク閾値以下である場合には、運転者によるステアリングの操作が緩やかであり、前記第1の時点から前記第2の時点までの間における前記車両の直線性が高いと判断することができる。そこで、この場合に、前記走行状況検知手段は、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したと検知することができる。
また、前記車両のステアリング舵角を検出する舵角センサを備え、前記走行状況検知手段は、前記レーンマーク検出手段により道路の左右のレーンマークが検出されたレーンマーク検出状態から、前記レーンマーク検出手段により左右のレーンマークのうちの少なくとも一方が検出されていないレーンマーク不検出状態に切替わったときに、該レーンマーク検出状態からレーンマーク不検出状態に切替わった第1の時点から、次にレーンマーク検出状態に復帰した第2の時点までの間に、前記舵角センサにより検出された前記車両のステアリング舵角の最大値が、所定の舵角閾値以下であるとき、又は前記第1の時点から前記第2の時点までの間に前記舵角センサにより検出された前記車両のステアリング舵角の変化量が、所定の舵角変化量閾値以下であるときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる本発明によれば、前記第1の時点から前記第2の時点までの間に前記舵角センサにより検出されたステアリング舵角が前記舵角閾値以下である場合には、運転者によるステアリングの操作量が少なく、前記第1の時点から前記第2の時点までの間における前記車両の直進性が高いと判断することができる。そこで、この場合に、前記走行状況検知手段は、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したと検知することができる。
また、前記車両は少なくとも一対の左右の車輪を有し、前記左右の車輪の回転速度差を検出する回転速度差検出手段を備え、前記走行状況検知手段は、前記レーンマーク検出手段により道路の左右のレーンマークが検出されたレーンマーク検出状態から、前記レーンマーク検出手段により左右のレーンマークのうちの少なくとも一方が検出されていないレーンマーク不検出状態に切替わったときに、該レーンマーク検出状態からレーンマーク不検出状態に切替わった第1の時点から、次にレーンマーク検出状態に復帰した第2の時点までの間に、前記回転速度差検出手段により検出された前記左右の車輪の回転速度差の最大値が、所定の回転速度差閾値以下であるとき、又は前記第1の時点から前記第2の時点までの間に前記回転速度差検出手段により検出された前記左右の車輪の回転速度差の変化量が、所定の車輪速度差変化量閾値以下であるときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる本発明によれば、前記回転速度差検出手段により検出される前記車両の左右の車輪の速度差は、前記車両の進行方向の変化(曲がり度合い)に応じて変化する。そのため、前記第1の時点から前記第2の時点までの間に前記回転速度差検出手段により検出された前記左右の車輪の回転速度差、又はその変化量が前記車輪速度差変化量閾値以下であるときには、前記第1の時点から前記第2の時点までの間における前記車両の直進性が高いと判断することができる。そこで、この場合に、前記走行状況検知手段は、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したと検知することができる。
また、前記走行状況検知手段は、前記レーンマーク検出手段により道路の左右のレーンマークが検出されたレーンマーク検出状態から、前記レーンマーク検出手段により左右のレーンマークのうちの少なくとも一方が検出されていないレーンマーク不検出状態に切替わったときに、該レーンマーク検出状態からレーンマーク不検出状態に切替わった第1の時点の直前における前記レーンマーク検出手段によるレーンマークの検出結果に基づいて、前記レーンマーク位置認識手段により検出された前記車両とレーンマークとの相対位置と、次にレーンマーク検出状態に切替わった第2の時点における前記レーンマーク検出手段によるレーンマークの検出結果に基づいて、前記レーンマーク位置認識手段により検出された前記車両とレーンマークとの相対位置との差が、所定の相対位置差閾値以下であるときに、前記車両が交差点又は道路の分岐若しくは合流箇所を通過したと検知することを特徴とする。
かかる本発明によれば、前記第1の時点の直前における前記車両とレーンマークとの相対位置と、前記第2の時点における前記車両とレーンマークとの相対位置との差が、前記相対位置差閾値以下であるときには、前記第1の時点と前記第2の時点におけるレーンマーク間の幅の変化が少なく、且つ、前記第1の時点から前記第2の時点までの間における前記車両の直進性が高いと判断することができる。そこで、この場合に、前記走行状況検知手段は、前記車両がレーンマーク不設置箇所を通過したと検知することができる。
本発明の実施の形態の一例について、図1〜図7を参照して説明する。図1を参照して、車線認識装置10は、車両1(本発明の車両)に搭載して使用され、車両1の前方を撮像するカメラ2により撮像される道路の画像から、走行車線を区分するために道路に敷設されたレーンマークを検出して、レーンマークと車両1との相対位置を認識するものである。
車線認識装置10により認識されたレーンマークと車両1との相対位置のデータは、車両1のECU(Electronic Control Unit)30に出力される。ECU30は、レーンマークと車両1との相対位置に基いて、車両1が走行車線内に維持されるように、ステアリング5をアシスト駆動する車線維持制御と、車両1が走行車線から逸脱しそうな状況となったときに、警報(図示しないスピーカからの音声出力等による)を行なう車線逸脱警報制御とを実行する。
また、車両1には、車両1の走行速度を検出する車速センサ20、車両1の鉛直軸回りの角加速度を検出するヨーレートセンサ21、ステアリング5の操舵角を検出する舵角センサ22、及びステアリング23に加えられるトルクを検出するトルクセンサ23が備えられている。
次に、図2を参照して、車線認識装置10は、制御周期毎にカメラ2により撮像される車両前方の道路の画像から、レーンマーク(白線、黄線、キャッツアイ、Botts Dots等)を検出するレーンマーク検出手段11と、レーンマーク検出手段11によるレーンマーク検出の有無を示す検出有無データが順次書き込まれて保持されるリングバッファ14(本発明のデータ保持手段に相当する)と、リングバッファ14に保持された検出有無データから、レーンマークの平均的な検出率であるレーンマーク検出率を算出するレーンマーク検出率算出手段12と、車両とレーンマークとの相対位置を認識するレーンマーク位置認識手段13と、車両1が交差点を通過したことを検知する走行状況検知手段15とを備えている。
車線認識装置10は、マイクロコンピュータ等により構成された電子ユニットであり、該マイクロコンピュータに車線認識用プログラムを実行させることによって、該マイクロコンピュータが、レーンマーク検出手段11、レーンマーク検出率算出手段12、レーンマーク位置認識手段13、及び走行状況検知手段15として機能する。また、車線認識装置10には、車速センサ20、ヨーレートセンサ21、舵角センサ22、及びトルクセンサ23による各検出信号が入力される。
リングバッファ14は、図3に示したように、検出有無データを30個分(配列要素a[1],a[2],…,a[30])保持する容量を有している。そして、新たに追加される検出有無データはa[1]に保持され、それまでa[1]に保持されていたデータはa[2]にシフトする。同様に、それまでa[2],a[3],…,a[29]に保持されていたデータが、a[3],a[4],…,a[30]にシフトする。そして、それまでa[30]に保持されていたデータが廃棄される。
次に、図4に示したフローチャートに従って、車線認識装置10の作動について説明する。車線認識装置10は、図4のSTEP1〜STEP7の処理を、所定の制御周期毎に繰り返し実行する。
先ず、車線認識装置10は、STEP1でカメラ2により車両前方の道路の画像を取り込む。続くSTEP2はレーンマーク検出手段11による処理である。レーンマーク検出手段11は、道路の画像から抽出したエッジ点に対するハフ変換等の直線抽出処理を行って、レーンマークを検出する。また、レーンマーク検出手段11は、レーンマークが検出されたか否かを示す検出有無データをリングバッファ14に追加する。
次のSTEP3で、車線認識装置10はレーンマークの画像部分が検出されたか否かを判断する。そして、レーンマークの画像部分が検出されたときはSTEP3に進み、レーンマークの画像部分が検出されなかったときにはSTEP8に進んで、処理を終了する。
続くSTEP4では、車両1が交差点を通過した時点から所定時間以内であるか否かが判断される。ここで、車両1が交差点を通過したことの検知は走行状況検知手段15により実行され、車両1が交差点を通過した時点から所定時間以内であるか否かの判断は、レーンマーク位置認識手段13により実行される。なお、STEP4における所定時間の経過は、本発明の所定条件に相当する。
なお、走行状況検知手段15による車両1が交差点を通過したことの検知処理については後述する。また、STEP4における所定時間は、レーンマーク検出率算出手段12により算出されるレーンマーク検出率Rtが、信頼性閾値Rthよりも高くなる時間を想定して設定されている。
STEP4で車両1が交差点を通過した時から所定時間が経過していたときはSTEP5に進む。STEP5はレーンマーク検出率算出手段12による処理であり、レーンマーク検出率算出手段12は、以下の式(1)によりレーンマーク検出率Rtを算出する。
但し、Rt:最新に追加されたものからn個分の配列要素における平均的なレーンマーク検出率、n:リングバッファの配列要素の総個数(本実施の形態では30)、m:レーンマーク検出有りを示す検出有無データを保持したリングバッファの配列要素の個数。
続くSTEP6〜STEP7はレーンマーク位置認識手段による処理である。STEP6で、レーンマーク位置認識手段13は、レーンマーク検出率Rtが信頼性判定値Rthよりも高いか否かを判断する。
レーンマーク検出率Rtが信頼性判定値Rthよりも高いときはSTEP7に進み、レーンマーク位置認識手段16は、レーンマーク検出手段11によるレーンマークの検出結果に基づいて、実空間上の車両1とレーンマークとの相対位置を認識する。そして、レーンマーク位置認識手段16は、この相対位置のデータをECU30に送信し、STEP8に進んで、車線認識装置10は1制御周期の処理を終了する。
一方、STEP6でレーンマーク検出率Rtが信頼性判定値Rth以下であったときにはSTEP8に分岐する。この場合は、レーンマーク位置認識手段13による車両1とレーンマークとの相対位置の認識は実行されずに、車線認識装置10は1制御周期の処理を終了する。
また、STEP4で車両1が交差点を通過した時から所定時間以内であるときには、STEP7に進む。この場合には、STEP5〜STEP6によるレーンマーク検出率Rtが信頼性閾値Rthよりも高いか否かの判断は行われずに、STEP7で、レーンマーク位置認識手段13が、車両1とレーンマークとの相対位置を算出する。
ここで、図5は、交差点を通過するときの車両1の軌跡を示したものであり、t1は、車両1の左右のレーンマーク50L,50Rが検出された状態(レーンマーク検出状態)から、レーンマーク50R,50Lが検出されない状態(レーンマーク不検出状態)に切替わった時点を示している。
また、t3は、レーンマーク不検出状態からレーンマーク検出状態に切替わった時点を示している。また、t5は、従来の車線認識装置のように、レーンマーク検出率Rtが信頼性閾値Rthよりも高いときに限定して、車両1とレーンマークとの相対位置の認識を実行した場合に、レーンマーク位置認識手段13による車両1とレーンマークとの相対位置の認識処理が実行されていない状態(レーンマーク位置不認識状態)から、車両1とレーンマークとの相対位置の認識処理が実行されている状態(レーンマーク位置認識状態)に切替わった時点を示している。
ここで、図6は図5に示した状況のタイミングチャートであり、上から順に、レーンマーク検出状態とレーンマーク不検出状態の切替わり、従来の車線認識装置におけるレーンマーク位置認識状態とレーンマーク位置不認識状態の切替わり、本実施形態の車線認識装置におけるレーンマーク位置認識状態とレーンマーク位置不認識状態の切替わり、を示している。
図6中、t2はレーンマーク位置認識状態からレーンマーク位置不認識状態に切替わった時点であり、t4はレーンマーク位置不認識状態からレーンマーク位置認識状態に切替わった時点を示している。
従来の車線認識装置では、車両1が交差点を通過してレーンマーク不検出状態からレーンマーク検出状態に切替わったときに、レーンマーク検出率Rtが信頼性閾値Rthよりも高くなるのを待つ必要がある。そのため、車両1が交差点を通過して、レーンマーク不検出状態からレーンマーク検出状態に切替わったt3から、レーンマーク不認識状態がレーンマーク認識状態に切替わるt5までの時間が長くなる。そして、t5までは、上述したECU30による車線維持制御と車線逸脱警報制御が実行されない。
それに対して、本実施の形態では、車両1が交差点を通過したと検知された時から所定時間内は、レーンマーク検出率Rtが信頼性閾値Rth以下であっても、レーンマーク位置認識手段13により車両1とレーンマークとの相対位置が認識される。そのため、車両1が交差点を通過したt3に演算による遅れ時間が加わったt4で、車両1とレーンマークとの相対位置の算出を速やかに再開することができる。
次に、走行状況検知手段15による車両1が交差点を通過したことの検知処理の第1実施形態について説明する。図5を参照して、走行状況検知手段15は、レーンマーク検出状態からレーンマーク不検出状態に切替わったt1(本発明の第1の時点に相当する)から、次にレーンマーク検出状態に切替わったt3(本発明の第2の時点に相当する)までの間における車両1の軌跡60を算出する。
具体的には、走行状況検知手段15は、車速センサ20により検出される車両1の走行速度と、ヨーレートセンサ21により検出される車両1のヨーレートから、車両1の軌跡60を算出する。そして、以下の(1)及び(2)の条件が満たされるときに、車両1が交差点を通過したと検知する。
(1) t1における道路幅方向についての、軌跡60の変化量が所定の幅方向変化量閾値(例えば、レーンマーク50R,50L間の幅の17%程度(3.6m幅であれば0.6m)に設定される)以下。
(2) t1におけるレーンマーク50R,50L間の幅と、t3におけるレーンマーク51R,51L間の幅との差が、所定の道路幅変化閾値(例えば、レーンマーク51R,51L間の幅の10%(3.6m幅であれば±0.36m)程度に設定される)以下。
なお、上記(1)の条件のみを用いて、車両1が交差点を通過したことを検知してもよい。また、車両1が交差点を通過したことを検知する条件として、さらに以下の(3)の条件を追加することで、交差点通過の検知精度を高めることができる。
(3) t1からt3までの経過時間が、予め想定された交差点の通過距離を車両1の走行速度で除して算出し予想通過時間以下。
また、走行状況検知手段15による車両1が交差点を通過したことの検知処理として、以下の第2形態〜第9形態を採用してもよい。
[第2実施形態]走行状況検知手段15は、以下の(4)及び上記(2)の条件が満たされるときに、車両1が交差点を通過したと検知する。
(4) t1からt3までの車両1の軌跡60の向きの変化量が、所定の進行方向閾値(例えば、1.2度(交差点の幅が25mであれば、車両1が交差点を走行するときの横方向の移動量が0.5mとなる)以下。
なお、上記(4)の条件のみを用いて、車両1が交差点を通過したことを検知してもよい。また、車両1が交差点を通過したことを検知する条件として、さらに上記(3)の条件を追加することで、交差点通過の検知精度を高めることができる。
[第3実施形態]走行状況検知手段15は、以下の(5)又は(6)の条件が成立するときに、車両1が交差点を通過したと検知する。
(5) t1からt3までの間において、トルクセンサ23により検出されるステアリング5に加わるトルク(絶対値)の最大値が、所定のトルク閾値以下。
(6) t1からt3までの間において、トルクセンサ23により検出されるステアリング5に加わるトルクの変化量が、所定のトルク変化量閾値以下。なお、トルクの変化量として、トルクセンサ23により検出されるトルクの2乗値の積分値を用いてもよい。
[第4実施形態]走行状況検知手段15は、以下の(7)又は(8)の条件が成立するときに、車両1が交差点を通過したと検知する。
(7) t1からt3までの間において、舵角センサ22により検出されるステアリング5の操舵角(絶対値)の最大値が、所定の操舵角閾値以下。
(8) t1からt3までの間において、舵角センサ22により検出されるステアリング5の操舵角の変化量が、所定の操舵角変化量閾値以下。
[第5実施形態]走行状況検知手段15は、以下の(9)又は(10)の条件が成立するときに、車両1が交差点を通過したと検知する。
(9) t1からt3までの間において、車両1の左右の前輪の回転速度差が、所定の回転速度差閾値以下。ここで、左右の前輪の回転速度差は、車速センサ20による右前輪の回転速度の検出信号と左前輪の回転速度の検出信号とに基づいて、車線認識装置10又はECU30内部の演算処理により求められる。なお、このようにして左右の前輪の回転速度差を求める構成が、本発明の回転速度差検出手段に相当する。
(10) t1からt3までの間において、車両1の左右の前輪の回転速度差の変化量が、所定の回転速度差閾値以下。
[第6実施形態]走行状況検知手段15は、以下の(11)の条件が成立するときに、車両1が交差点を通過したと検知する。
(11) t1の直前のレーンマークの検出結果に基づいて、レーンマーク位置認識手段13により認識された車両1とレーンマークとの相対位置と、t3でのレーンマークの検出結果に基づいて、レーンマーク位置認識手段13により認識された車両1とレーンマークとの相対位置との差が、所定の相対位置差閾値以下。
なお、上記第1実施形態〜第6実施形態において、車両1の走行速度が、交差点のある一般道路での走行速度を想定した走行速度閾値以下であるときに限定して、車両1が交差点を通過したことを検知するようにしてもよい。
また、上記第1実施形態〜第6実施形態において、車両1の走行速度が、上記車線維持制御及び上記車線逸脱警報制御を実行する最低速度以上であるときに限定して、車両1が交差点を通過したことの検知を行うようにしてもよい。
また、本実施の形態では、車両1が交差点を通過したことを検知したが、図7(a)に示したように、車両1が道路の分岐箇所を通過するときにも、左右のレーンマーク70R,70Lのうちの一方が検出されない区間A1が存在する。
同様に、図7(b)に示したように、車両1が道路の合流箇所を通過するときにも、左右のレーンマーク71R,71Lのうちの一方が検出されない区間A2が存在する。そのため、道路の分岐又は合流箇所を通過するときにも、上記車線維持制御及び上記車線逸脱警報制御を実行することができなくなる。
そこで、上述した車両1が交差点を通過したことの検知と同様にして、車両1が道路の分岐又は合流箇所を通過したことを検知するようにしてもよい。そして、車両1が道路の分岐又は合流箇所を通過したことを検知したときには、道路の分岐又は合流箇所を通過した時点から所定時間内においては、レーンマーク検出率が信頼性閾値以下であっても、車両1とレーンマークとの相対位置を認識することによって、上記車線位置制御及び上記車線逸脱警報制御が停止する時間を短縮することができる。
なお、本実施の形態においては、レーンマーク検出率Rtが信頼性閾値Rth以下であっても、車両1とレーンマークとの相対位置を認識する条件(本発明の所定条件に相当する)として、車両1が交差点を通過した時点から所定時間内を設定した。しかし、本発明の所定条件として、例えば、車両1が交差点を通過した時点から所定距離(レーンマーク検出率Rrが信頼性閾値Rthよりも高くなる距離を想定して設定される)を走行するまでや、車両1が交差点を通過した時点から、レーンマーク検出率Rtが信頼性閾値Rthよりも高くなるまでを設定してもよい。
なお、本実施の形態においては、車両1が交差点を通過したことを、レーンマークの検出の有無と、車速センサ20等の各種センサによる検出値に基づいて検知したが、車両1がGPS(Global Positioning System)を備えているときには、GPSと地図データにより、車両1が交差点を通過したことを検知するようにしてもよい。