次に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの全体左側面図、図2は同右側面図、図3は動力伝達系のスケルトン図、図4は油圧式無段変速機構のスケルトン図、図5は運転室(運転キャビン)の平面図、図6は運転室(運転キャビン)の右側面図、図7はステアリングコラムの斜視図、図8はハンドル部の平面図、図9は制御系の機能ブロック図である。
本発明を適用したコンバインは、走行機体1の下部に左右一対の走行装置としての走行クローラ2が装設されたものであり、走行機体1の進行方向に向かって左側には脱穀装置3を搭載し、走行機体1の前部には単動式の油圧シリンダ9により昇降動可能な刈取前処理装置4を配置する。刈取前処理装置4の下部フレームの下部側にはバリカン式の刈刃装置5を、前方には6条分の穀稈引起装置6が配置され、穀稈引起装置6と脱穀装置におけるフィードチェン7前端との間には穀稈搬送装置8が配置され、穀稈引起装置6の下部前方には分草体10が突出している。走行機体1の右側前部に運転室11が配置され、その後側に穀粒タンク12が配置されている。
図1に示すように、刈取前処理装置4に先端を装着した前方下向き傾斜状の昇降筒フレーム14の基端を水平筒(図示せず)に固着し、該水平筒を走行機体1の前部に設けた複数の軸受ブラケット(図示省略)に回動自在に軸支し、走行機体1上のエンジン15からの動力を水平筒及び昇降筒フレーム14の各々の内径部に配置した伝動軸等を介して刈取前処理装置4の各部に動力伝達される。そして、昇降筒フレーム14の中途部と走行機体1との間に装架した昇降油圧シリンダ9にて刈取前処理装置8を昇降駆動させるものである。
刈取前処理装置4と圃場面との対地高さを検出して刈高さを検出するための刈高さセンサとしての超音波センサ20は、穀稈引き起こし装置6の裏面側に設けたブラケット(図示せず)に配置し、超音波センサ20における発信器の発信部(ホーン部)と受信器の受信部とを圃場面に向けるように配置する。超音波センサ20の設置高さと刈刃5の設置高さとが異なる場合には、超音波センサ20の検出値から所定の換算により、刈高さ検出値を求めるようにしている。
コンバインの動力伝達系を示すスケルトン図(図3)に示すように、エンジン15の出力軸16a及び16bをエンジンルームカバーの前側及び後側に突設させ、前側に突出する出力軸16aの前端から自在継手軸を介してミッションケース23にドライブシャフト駆動出力させる。後側に突出する出力軸16bの後側突出部にフライホイールを取付け、その後側に設けられた作業出力プーリ24からベルト、テンションローラ形脱穀クラッチ及びプーリ25を介してカウンタケース32に対して後向きに突出する第1入力軸26に、エンジン15の駆動力(一定回転動力)が動力伝達される。
カウンタケース32には、前向きに突出する第1入力軸26と一体的な扱胴入力軸26aと、機体外側方に突出する刈取入力軸27と、機体内方向に突出する第2入力軸としての車速同調入力軸28と、フィードチェン入力軸29と、出力回転軸30とが備えられている。
後述する油圧式無段変速機構(油圧ポンプ、油圧モータ式)のミッションケース23の出力軸23aに設けた刈取駆動プーリと前記カウンタケース32右側に突出した車速同調入力軸28に設けた車速同調プーリとにベルトを巻掛し、テンションローラ形刈取クラッチを介してベルトを緊張させ、ミッションケース23からカウンタケース32に車速同調動力を入力させ、高速走行時には、左右両側の走行クローラ2,2の速度に同調させて刈取前処理装置4の駆動速度も高い速度にするように構成されている。
また、カウンタケース32前側に突出する扱胴入力軸26aに設けた脱穀プーリと扱胴13及び処理胴18の各駆動入力プーリとをベルトにて巻掛け連結する一方、出力回転軸30に取付けられた選別プーリからベルト等を介して扱胴13下側の選別唐箕17及び揺動選別機構に駆動力を伝え、脱穀部(脱穀装置)3の各部を駆動すると共に、前記カウンタケース32の左側面のフィードチェン入力軸29から、フィードチェン7の前側駆動スプロケットに動力を伝える。
エンジン15の後側の出力軸16bに設けたプーリと、排出オーガ31の横スクリューコンベヤ33の前端に取付けられた排出駆動プーリとに排出クラッチを介してベルト巻掛け連結させ、排出オーガ31に出力を伝えて穀粒タンク12の穀粒を排出させる。
なお、揺動選別機構は、穀粒を穀粒タンク12に取出す一番コンベヤ、再選別処理する二番選別物を取出す二番コンベヤ、副唐箕34、扱胴13と一番コンベヤ、二番コンベヤ間に横架させる揺動選別盤35等からなる。
なお、カウンタケース32に設けたサンギヤとプラネタリギヤとリングギヤを備える遊星ギヤ機構からなるフィードチェン変速機構によって無段変速可能にフィードチェン7に動力伝達するもので、第1入力軸26からの動力を入力して穀稈の搬送に必要な最低回転を確保しながら、油圧式(HST式)無段変速機構からの出力軸23aを経てフィードチェン変速機構を介して出力回転軸30に動力伝達し、低い一定回転から高回転にフィードチェン7の速度を車速と同調させて変更可能となるように構成されている。
次に、ミッションケース23内のHST式(2油圧モータ2油圧ポンプによる無段階変速機構内に機械的変速機構を組み込んだもの)走行駆動部42の構成について説明する。図4に示す実施例は、ミッションケース60内に、後述する左右一対の遊星歯車機構61,61等からなる差動歯車機構と、第1油圧ポンプ63及び第1油圧モータ64からなる走行用油圧式駆動手段と、第2油圧ポンプ66及び第2油圧モータ67からなる旋回用油圧式駆動手段と動力伝達用歯車機構等を内装する。なお、走行機体1に搭載したエンジン15からの回転力は、プーリとVベルト等の無端帯62とを介して、ミッションケース60の外側にて両方の油圧ポンプ63,66の入力軸に伝達し、伝達ケース65内の油圧路を介してそれぞれの油圧モータ64,67に油圧動力伝達する。
左右一対の遊星歯車機構61,61は左右対称状であって、同一半径上に複数(実施例では3つ)の遊星歯車69がそれぞれ回転自在に軸支された左右一対の腕輪68をミッションケース60内にて同軸線上にて適宜隔てて相対向させて配置する。各遊星歯車69にそれぞれ噛み合う太陽歯車70,70を固着した太陽軸71の左右両端は、両腕輪68,68の内側にてその回転中心部に位置する軸受に回転自在に軸支されている。内周面の内歯と外周面の外歯とを備えたリングギヤ72は、その内歯が3つの遊星歯車69にそれぞれ噛み合うように、太陽軸71と同心状に配置されており、このリングギヤ72は、太陽軸71上または、腕輪68の外側面から外向きに突出する中心軸73上に軸受を介して回転自在に軸支されている。
走行用油圧式駆動手段における容量可変式の第1油圧ポンプ63の回転斜板の角度を変更調節する等にて、第1油圧モータ64への圧油の吐出方向と吐出量を変更して、当該第1油圧モータ64の出力軸の回転方向及び回転数が調節可能に構成されている。そして、第1油圧モータ64の入力軸からの回転動力は、歯車74,75,76,77を介して従来から周知の歯車機構にて構成された副変速機構80に伝達され、その出力歯車78を介して太陽軸71に固定したセンター歯車79に伝達される。
なお、歯車74の軸74aに関連させた歯車機構81を介して作業機等への回転力を伝達するPTO軸82(実施形態では、刈取同調軸45に対応する)に出力する。この場合、PTO軸82の中途部にはクラッチ手段82aが備えられている。従って、走行用油圧式駆動手段からの回転動力は、伝動歯車機構及び副変速機構80を介してセンター歯車79に伝達され、次いで、左右一対の遊星歯車機構61,61に伝達される。そして、左側の腕輪68の中心軸73に固着した伝動歯車83を、左側の走行クローラ2の駆動輪2aに対する出力軸21aに固着した伝動歯車84に噛み合わせて出力する。同様に、右側の腕輪38の中心軸73に固着した伝動歯車83を、右側の出力軸21bに固着した伝動歯車84に噛み合わせて出力する。
他方、旋回用油圧式駆動手段における容量可変式の第2油圧ポンプ66の回転斜板の角度を変更調節する等にて、第2油圧モータ67への圧油の吐出方向及び吐出量を変更して、当該第2油圧モータ67の出力軸の回転方向及び回転数を調節可能に構成されている。そして、第2油圧モータ67からの回転動力は、歯車機構85を介して一対の伝動歯車86,87に伝達される。次いで、図5に示すように左側のリングギヤ42の外歯に対しては伝動歯車56と直接噛み合い、右側の伝動歯車87が逆転軸に取付く逆転歯車89に噛み合い、この逆転歯車89と右側のリングギヤ72の外歯とが噛み合う。
従って、第2油圧モータ67の正回転にて、左側のリングギヤ72が所定回転数にて逆回転すると、右側のリングギヤ72が前述と同一回転数にて正回転することになる。この構成により、例えば、旋回用油圧式駆動手段を停止させておけば、左右両側のリングギヤ72,72の回転は停止した固定状態である。この状態で走行用油圧式駆動手段を駆動すると、第1油圧モータ64からの回転力は、太陽軸71のセンター歯車79に入力され、その回転力は、左右両側の太陽歯車70,70に同一回転数にて伝達され、左右両側の遊星歯車機構の遊星歯車69、腕歯車68を介して左右両側の出力軸21a,21bに平等に同方向の同一回転数にて出力されるので、直進走行ができる。従って、走行用油圧式駆動手段のみを正回転駆動すると、走行機体1は直進前進し、逆回転駆動したときには直進後退する。
反対に、走行用油圧式駆動手段を停止した状態では、太陽軸71及び左右両側の太陽歯車70,70は固定される。この場合、図示しないブレーキ手段を作動させるのが好ましい。この状態にて、旋回用の油圧式駆動手段(第2油圧モータ67)を例えば正回転駆動させると、左の遊星歯車69、腕歯車68からなる遊星歯車機構は逆回転する一方、右の遊星歯車69、腕歯車68からなる遊星歯車機構は正回転することになる。従って、左走行クローラ2は後進する一方、右走行クローラ2は前進するので、走行機体1はその場で、左にスピンターンすることになる。
同様にして、旋回用油圧式駆動手段(第2油圧モータ67)を逆回転駆動させると、左の遊星歯車機構61は正回転し、右の遊星歯車機構61は逆回転して、左走行クローラ2は前進する一方、右走行クローラ2は後退するので、走行機体1はその場で、右にスピンターンすることになる。そして、走行用油圧式駆動手段を駆動しつつ旋回用油圧式駆動手段を駆動した場合には、前進時及び後退時において、スピンターン旋回半径より大きい旋回半径で右また左に旋回できることになり、その旋回半径は左右走行クローラ2,2の速度に応じて決定されることになる。
次に、図5〜図8を参照して、運転室11内の各種操作用レバーやスイッチ類の配置構成について説明する。運転室11内のステップフレーム43のうち、前部で低位置の水平状ステップ部44にステアリングコラム45を立設させ、操作用の丸ハンドル47及び計器パネル40及びフロントパネル41をステアリングコラム45上部に設けると共に、ステップフレーム43の後部を段付立上り状のシート部に形成して、このシート部に運転席46を設ける。また、ステップフレーム43の右側沿いに運転室11の入口に対する開閉扉が設けられている。運転室11の入口と反対側の運転席46の左側にサイドコラム48を設け、このサイドコラム48の上面に前方より主変速レバー49、副変速レバー50、脱穀及び刈取用クラッチレバー51、排藁切断及び集束用切換スイッチ52を設ける。運転席46の左右両側には左右のアームレスト53が上方に折畳み自在に配備されている。HST式(2油圧モータ2油圧ポンプによる無段階変速機構内に機械的変速機構を組み込んだもの)走行駆動部42の各油圧ポンプ等の斜板を調節して車速を無段階変速するための主変速レバー49は、図3に示すように、前記運転室11内の座席46の側方の略水平状のサイドコラム48の上面に穿設したガイド溝58に沿って前後回動し、ほぼ垂直姿勢の中立位置(停止位置)に対して前に倒すと前進位置であり、垂直に対する傾斜角度が大きいほど車速が速くなる。後方に傾斜させると後退となり、その傾斜角度が大きいほど車速が速くなる。
図5〜図7に示す如く、フロントパネル41は中央部より左右方向に延設させた左右翼部である上下パネルケース59a、59bに分割したものである。上パネルケース59aの上面には、左右にスイッチパネル41a、41bを備え、ステアリングコラム45の上部に下パネルケース59bの下側を固定させる。上パネルケース59aの左右中央部位の前端から計器パネル40のパネルボックスが上向きに突出するように連結されている。丸ハンドル47はハンドルホイル55とハンドルスポーク56とハンドルハブ57とで側面視略コ形状に形成され、上パネルケース59aの左右中央部位の上方に突出させるハンドル軸(図示せず)にハンドルハブ57を固定させる。そして、ホイル55・スポーク56・ハブ57で囲まれる空間域に計器パネル40のパネルボックスを配設させるのである。ハンドル軸やハンドルハブ57の取付部をフロントパネル41の中央部で隠蔽するように構成している。
そして、フロントパネル41における左右のスイッチパネル41a・41bには、操作用及び設定用の各種のスイッチが複数配置されている。例えば、左スイッチパネル41aには、走行機体1を左右水平な姿勢に維持する自動水平制御の入り切りを操作するための自動水平スイッチ90、走行機体1の左右傾斜角度を設定するための傾斜設定ダイヤル91、脱穀装置3に対する刈取穀稈の扱深さ位置を所定位置に維持する自動扱深さ制御の入り切りを操作するための自動扱深さスイッチ92等のスイッチ類が配置されている。
右のスイッチパネル41bには、刈取前処理装置4を所定の刈高さ位置に維持する自動刈高さ制御の入り切りを操作するための自動刈高さスイッチ93、自動刈高さ制御時の刈高さ位置を設定するための刈高さ設定ダイヤル94、選別機構(図示せず)における穀粒の選別状態を調節する選別調節ダイヤル95等の各種操作用のスイッチ類が配置されている。
なお、その他の種類のスイッチ、例えば、作業中エンジン負荷が限界に近づくと車速を自動減速し負荷が軽減されると自動的に元の車速に戻す快速制御入切用スイッチ、高速運転入切用の自動走行スイッチ、作業灯をオンオフする作業灯スイッチ、エンジン15のアクセル調節を行うダイヤル式設定器、エンジン15を一定回転させる電子ガバナ制御入切用のエコモードスイッチ等であっても良い。
運転パネルであるフロントパネル41を、ステアリングコラム45の上端であって、丸ハンドル47より下方に左右長手の翼状に設けたことによって、コンバイン作業に必要な各種作業用スイッチなど操作部材をフロントパネル41の両ウイング部に集約的且つコンパクトに配設して操作性を向上させると共に、サイドコラム48に設置する作業用スイッチを低減させコラム48横幅を縮小させて、運転席46との間の作業スペースを拡大させるなどして作業性を向上させることができる。サイドコラム48の側板にボルト止めする運転部用コントローラ103をボックス103aで覆うように構成している。
フロントパネル41の上方であって、丸ハンドル47のハンドルホイル55より内径部位に配置された計器パネル40には、液晶表示装置121が配置され、その左右両側には、液晶表示装置61の画面選択や画面設定のための複数のスイッチ122,123,124,125が配置されている。
主変速レバー49の握り部の上面には、手動で走行機体1の左右及び前後傾斜姿勢を調節可能な十字方向に移動可能な姿勢調節スイッチと、刈取前処理装置4の刈取速度を変速操作するための刈取変速スイッチと、刈取穀稈の扱深さ位置を手動で変更調節するための扱深さ調節スイッチと、刈取前処理装置4を手動で昇降操作するための刈取昇降スイッチと、刈取前処理装置4を刈高さ設定ダイヤルで予め設定した刈高さ位置(以下、設定刈高さ位置という)よりも高い所定高さまで強制的に上昇させたり、設定刈高さ位置まで強制的に下降させたりするための刈取オートスイッチとが配置されている。同様に、ハンドルホイル55の内径部の左右両側上面には、図8に示すように、手動で走行機体1の左右及び前後傾斜姿勢を調節可能な十字方向に移動可能な姿勢調節スイッチ131と、刈取前処理装置4の刈取速度を変速操作するための刈取変速スイッチ132と、刈取穀稈の扱深さ位置を手動で変更調節するための扱深さ調節スイッチ133と、刈取前処理装置4を手動で昇降操作するための刈取昇降スイッチ134と、刈取前処理装置4を刈高さ設定ダイヤルで予め設定した刈高さ位置(以下、設定刈高さ位置という)よりも高い所定高さまで強制的に上昇させたり、設定刈高さ位置まで強制的に下降させたりするためのシーソ型の刈取オートスイッチ135とが配置されても良い。
これらのスイッチは、コンバインでの刈取脱穀作業時に操作する機会が多いものであるから、このように主変速レバー49の握り部に配置すると、左手を握り部から離さずに例えば親指でスイッチを簡単に操作でき、非常に操作性がよい。
また、図3に示すように、運転室11内の床面のうち、ステアリングコラム45より右側には、走行機体1の走行速度の減速用ペダル102が配置されている。
なお、ガイド溝に沿って前後に回動する副変速レバー50は、HST式走行駆動部42内に設けた機械的変速機構(図示せず)を操作する伝動モータ等のアクチュエータを制御するためのものである。
次に、刈取脱穀作業における設定走行速度の変更操作及びその制御について説明する。これら操作制御を実行するマイクロコンピュータ等の電子式の制御装置(コントローラ)103は図9に示し、図示しないが各種演算処理や制御を実行するための中央処理装置(CPU)や、制御プログラムを記憶させた読み出し専用メモリ(ROM)、各種の検出値、データ等を一時的に記憶させる随時読み書き可能メモリ(RAM)、制御装置103の電源をOFFとしても記憶データを保持するための不揮発性メモリ、タイマ機能としてのクロック、インターフェイス、バスなどを備える。
制御装置103の入力側に接続するのは、前記主変速レバー49の回動位置を検出するためのロータリエンコーダ等の主変速位置検出器104と、副変速レバー50の回動位置を検出する副変速位置検出器106と、脱穀クラッチをON(入り)・OFF(切り)操作するための脱穀クラッチスイッチ107と、刈取クラッチをON(入り)・OFF(切り)操作するための刈取クラッチスイッチ108と、刈取前処理装置4の昇降アーム14の回動位置(対機体高さ位置)を検出するためのポジションセンサ109と、通常の刈取脱穀作業時の圃場面に対する刈取前処理装置4の高さ位置(対地高さ)を検出するための超音波センサ20と、減速用ペダル102の踏込み量を検出する踏込み量検出器110と、オペレータが減速用ペダル102を踏込み操作したときの踏込み量検出器110に対応する減速状態の走行速度を維持するための減速ロックスイッチ126と、その減速ロックを解除するための減速ロック解除スイッチ127と、丸ハンドル47の回動量(旋回量)を検出するためのロータリエンコーダ等のハンドル回動位置センサ120等である。実施形態では、減速ロックスイッチ126は丸ハンドル47のハンドルホイル55の右側に設けられ、減速ロック解除スイッチ127は左側に設けられている(図8参照)が、ハンドルホイル55の左側に減速ロックスイッチ126を設け、右側に減速ロック解除スイッチ127を設けるようにしても良い。
また、制御装置103の出力側に接続するのは、HST式の走行駆動部42における第1油圧ポンプ63及び第2油圧ポンプ66の各出力を調節するための斜板のアクチュエータ111、112と、脱穀クラッチ50の電磁弁駆動回路113と、刈取クラッチ49の駆動モータ駆動回路114と、昇降油圧シリンダ9の電磁弁駆動回路116等である。
前述の各場合、畔越えモード、中立位置、作業モードの3位置にセット可能な副変速レバー50を作業モードの位置にセットする。この状態で、主変速レバー49を直立姿勢にすれば、中立位置(N位置)となり、走行速度は零である。そして、主変速レバー49の回動位置(中立位置以外)に応じて、コンバインに搭載したマイクロコンピュータ式の制御装置103の指令により、前記各作業モード時に適応する走行駆動部42の出力(馬力)及び回転数を所定のレンジに設定保持することができる。図11のフローチャートに示すように、例えば、主変速レバー15を前傾させると走行車両は前進し、その前傾角度が大きいと、その前進速度が増大する(ステップS1)。逆に、主変速レバー49を後傾させると走行車両は後退し、その後傾角度が大きいと、その後退速度が増大する(ステップS1)というように構成するのである。なお、圃場から畔まで又は移動用トラックの荷台部までに、大きい傾斜角度で踏み板を掛け渡し、この踏み板に沿ってコンバインを移動させるためには、超低速モードである畔越えモードの位置に副変速レバー50をセットする。
他方、丸ハンドル47を右または左に回動することより、走行車両は所定方向に旋回できるのであり、本実施形態の一対の遊星歯車機構61と、旋回用油圧式駆動手段である第2油圧ポンプ66及び第2油圧モータ67を利用することにより、丸ハンドル47の回動量が大きくなるに従って、旋回速度を遅くするようにしている。
刈取脱穀作業時に、オペレータが主変速レバー49を操作して刈取脱穀の作業能率を重視した最高速に近い状態で快速走行しているとき、圃場の途中で倒伏穀稈の部分や湿りの多い穀稈を刈取りするには、一時的にコンバインの走行速度を低下させる必要がある。つまりこのような場合には、脱穀装置3に一時的に大きな負荷が掛かり、刈取前処理装置4や脱穀装置3に付与する所定(適正脱穀)のための出力トルク及び回転が低下する虞がある。その場合、オペレータは減速用ペダル102を適宜量だけ踏み込むことにより(ステップS2:yes )、その踏込み量を踏込み量検出器110にて検出し、その検出値を制御装置103に入力すると、その検出値に比例して第1油圧ポンプ63の出力を低下させるべくアクチュエータ111を作動させ、コンバインの走行速度を低減させる(ステップS3)。なお、減速用ペダル102の最大踏込みにより、走行機体1の走行速度は零となるように制御する。
これらにより、コンバインのエンジン15に無理な負荷をかけず、刈取前処理装置4での適正量の刈取り、脱穀装置3での適正な脱穀、選別作業を維持することができる。このような負荷の多い箇所を通り抜けた後には、オペレータは減速用ペダル102の踏込み量を徐々に少なくすることにより、走行速度は徐々に増速され、オペレータが減速用ペダル102から足を離すと、主変速レバー49でセットした走行速度まで復元する(ステップS7)。
このような操作を実行しているとき、オペレータは丸ハンドル47を両手で持ったまま操向操作を行えるから、コンバインの操業を安定して行えるという効果を奏する。
換言すると、コンバインの操作をオートマチック変速機構付きの通常の自動車における運転と同じように、丸ハンドル47を両手操作で行い、オペレータの足で減速用ペダル102を操作して、コンバインの走行速度を減速と加速とに任意に速度変更させることできると共に、速度オートセットの如く主変速レバー49でセットした元の走行速度まで復元させることができ、オペレータの作業負担が大幅に軽減でき、長時間の作業でのオペレータ疲労を軽減させることができるという効果を奏する。
また、旋回時には、走行機体の走行速度を減速してオペレータは丸ハンドル47を操作する必要があるが、本発明によれば、オペレータは主変速レバー49を減速方向に操作することなく、減速用ペダル102の踏込み量を調節するだけで、無段階的に走行速度を減速させることができ、オペレータは両手で丸ハンドル47を回動操作できるから、旋回操作を安定して実行できる。この操作は、丸ハンドル47による旋回半径を一定に維持しながら、減速させる場合に特に有効となる。また、旋回終了後に直ちに快速走行に移行したい場合にも本発明は有効となる。
なお、減速用ペダル102を踏込んだ位置に対応する減速された走行速度に保持する減速ロックスイッチ126を丸ハンドル47を持ながら操作することで(ステップS4:yes )、やや長い減速状態を維持できる(ステップS5)ので、オペレータが、減速用ペダル102を一定量の踏込みで維持する操作が不要となり、作業の疲労度も軽減できる。この状態を解除するには、減速ロック解除スイッチ127を押せば良く(ステップS6:yes )、その場合、瞬時に主変速レバー49のセットした位置に対応する元の走行速度まで復帰する(ステップS7)。その速度上昇が急であると危険であるから、所定時間(数十秒)かけて元の走行速度まで復帰するように制御することが好ましい。そのための速度の復元増加割合(単位時間あたりの速度増加割合)をオペレータの好みで設定できる速度復元割合ダイヤル(図示せず)を設けることが好ましい。