JP4678661B2 - 新規なテトラキスアミノフェニル(ジ)フェニレンジアミン骨格を有する化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なテトラキスアミノフェニル(ジ)フェニレンジアミン骨格を有する化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、癌等の腫瘍に対する治療法の一つとして光化学療法がある。光化学療法に関しては比較的早くから研究が行われており、既に、1976年には臨床での応用が為されている。又、文献、特許も数多く出されており、例えば、Michael J.Manyaらの総説(J.C1in.Onco1ogy,6,380,(1988))がある。これらの文献や特許によれば、これまで光化学療法剤として研究され、又、臨床応用されてきたのはポルフィリン系化合物がほとんどで、現在日本では、日本レダリーがジヘマトポルフィリンを商品名フォトフリンで販売している。
【0003】
これらポルフィリン系化合物を用いた光化学療法について説明する。癌患者(外科的手法を伴わない場合、原理的に皮膚癌等、体表面近傍の癌に限られる)に薬剤を投与し、数日経ると正常細胞においては薬剤は大部分代謝されるのに対して、癌細胞に取り込まれた薬剤はそのまま癌細胞内に残留したままとなる。この際、残留量の差は数倍から数十倍である。次に、600〜700nmの光を癌細胞に照射すると、薬剤が残留している癌細胞だけが特異的に死滅し、正常細胞は影響を受けない。これらの薬剤が癌細胞にのみ残留する理由は十分に明らかではないが、癌細胞と正常細胞との血流状態の差、あるいは、リンパ細胞等の免疫系の活性の差によるものと考えられている。又、光照射によって薬剤が残留している癌細胞が死滅する理由についても十分に明らかではないが、光照射によって活性化された薬剤からのエネルギー移動により周辺の酸素が細胞毒性の強い一重項酸素に変化する為と考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したポルフィリン系化合物を用いた光化学療法はいくつかの問題点を有する。問題点の一つとして、化合物自身の吸収波長と治療に用いる光の波長との関係である。即ち、治療に用いる光の波長としては、生体内の物質による散乱・吸収を示さないこと、赤血球のヘモグロビンに影響を及ぼさないこと等から、600nm以上の波長が望ましいが、上記従来技術にあげた、例えば、フォトフリンの600nm以上の波長領域における光の吸収量は、該化合物の最大吸収波長363nmにおける光の吸収量のわずか2〜3%にすぎない。従って、現実には非常に効率の悪い光化学療法を行う事になり、その分薬剤の投与量を増やしたり、光の照射量を増やす必要が生じ、結果として副作用が増加したり、装置のコストが上がったりすることになる。
【0005】
又、問題点の二つ目として、ポルフィリン系化合物の皮膚等における光毒性が上げられ、投与された患者はおよそ6〜8週間は日光等の光を避ける生活が必要である。更に、問題点の三つ目として、630nm付近の波長の組織侵達度が僅か数mmしかなく、治療範囲の狭いことが挙げられ、これが臨床応用への壁となっている。本発明者らは、これら従来技術の持つ課題を解決するため、テトラキスアミノフェニル(ジ)フェニレンジアミン骨格を有する化合物に注目し、疎水性化合物を利用した発明(国際公開WO 00/16806号)、この目的に適合した水溶性の高い新規化合物及びこれを利用した光化学治療剤の発明(特願平11−372059号及び特願平11−372139号)を先に完成させている。本発明の目的はこれら従来技術の持つ課題を解決するため、赤外線領域の光を効率よく利用でき、水溶性に優れ且つ組織親和性の高い光化学療法剤に適する新規化合物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記したような課題を解決すべく鋭意努力した結果、本発明を完成した。すなわち本発明は、
【0007】
1)一般式(1)
【化3】
(環A及び環Bは置換基を有していても良く、R1からR8の少なくとも1つは一般式(2)
【化4】
(Eは置換基を有していても良い2価の炭化水素鎖であり、Dは置換基を有していても良いアミノ基又は置換基を有していても良いアルコキシル基であり、Xはカルボニル基又はスルホニル基である。)
で示される置換基であり、残りは水素原子又はカルボキシル基若しくはスルホン酸基で置換された炭化水素基であり、mは1又は2の整数である。)
で示されるテトラキスアミノフェニルフェニレンジアミン骨格若しくはテトラキスアミノフェニルジフェニレンジアミン骨格を有する化合物、又はその許容しうる塩。
【0008】
2)一般式(1)の環A及び環Bが置換基を有しない化合物である上記1)に記載の化合物、又はその許容しうる塩。
3)一般式(2)のEが炭素数1乃至10のポリメチレンである上記1)又は2)に記載の化合物、又はその許容しうる塩。
4)一般式(2)のDがモルホリノ基、アルコキシカルボニル(水酸基を有する)アルキルアミノ基、水酸基を有するアルキルアミノ基、水酸基を有していても良いピペリジノ基、水酸基を有していても良いアルコキシアルキルアミノ基、スルホン酸基を有するアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を有するアルキルアミノ基、フェニル基及び水酸基を有するアルキルアミノ基、水酸基を有するアルキルアミノカルボニル(フェニル基及び水酸基を有する)アルキルアミノ基、(水酸基及びアルコキシカルボニル基を有する)アルキルアミノカルボニル(フェニル基及び水酸基を有する)アルキルアミノ基、グルコサミノ基、(アルコキシカルボニル基、フェニル基及び水酸基を有する)アルキルアミノ基、アルキル基を有していても良いピペラジノ基、アミノ基を有する抗生物質残基、アルコキシル基、アルコキシポリアルキレングリコールアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基である上記1)乃至3)のいずれか1項に記載の化合物、又はその許容しうる塩。
【0009】
5)一般式(2)のXがカルボニル基である上記1)乃至4)のいずれか1項に記載の化合物、又はその許容しうる塩。
6)一般式(2)のEが、炭素数1乃至6のポリメチレンであり,Xがカルボニル基であり,一般式(1)のmが1である上記1)乃至5)のいずれか1項に記載の化合物、又はその許容しうる塩。
7)一般式(2)のDがモルホリノ基である上記6)記載の化合物、又はその許容しうる塩。
8)N,N,N'N'-テトラキス{p-ジ(モルフォリノカルボキシアルキル)アミノフェニル}-p-フェニレンジアミン又はその許容しうる塩。
9)上記8)の化合物が、N,N,N'N'-テトラキス{p-ジ(モルフォリノカルボキシプロピル)アミノフェニル}-p-フェニレンジアミンである化合物、又はその許容しうる塩。
10)上記1)乃至9)のいずれか1項に記載の化合物のモノ又はジカチオン化合物。
11)上記1)乃至10)のいずれか1項に記載の化合物の溶解液。
12)水溶液である上記11)に記載の溶解液。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の化合物又はその許容しうる塩は、mが1であるテトラキスアミノフェニルフェニレンジアミン骨格若しくは、mが2であるテトラキスアミノフェニルジフェニレンジアミン骨格を有し、上記式(1)で示される。上記式(1)において環A及び環Bは、該置換基以外の置換基を有していても良く、R1からR8の少なくとも1つは上記式(2)で示す置換基である。
【0011】
環A及び環Bの置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、シアノ基、低級アルキル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等のC1〜C5のアルコキシル基が挙げられ、低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基等のC1〜C5のアルキル基が挙げられる。環Aが無置換か、ハロゲン原子(特に塩素原子又は臭素原子)、メチル基又はシアノ基で置換されていて、環Bが無置換が好ましく、環A、環B共に無置換が特に好ましい。
又、mは1又は2の整数を表し、m=1が特に好ましい。
【0012】
上記式(2)のEにおける置換基とは、例えば低級アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられ、具体的には上記環A及び環Bの置換基が例示される。上記式(2)のEにおける置換基を有していても良い2価の炭化水素鎖は、好ましくは置換基を有していても良いC1〜C10のポリメチレンであり、更に好ましくは無置換のC1〜C6のポリメチレン、例えば、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、さらに特に好ましくは、トリメチレン基が挙げられる。
【0013】
上記式(2)におけるDは、置換基を有していても良いアミノ基であり、好ましくはモルホリノ基、アルコキシカルボニル(水酸基を有する)アルキルアミノ基、水酸基を有するアルキルアミノ基、水酸基を有していても良いピペリジノ基、水酸基を有していても良いアルコキシアルキルアミノ基、スルホン酸基を有するアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基を有するアルキルアミノ基、フェニル基及び水酸基を有するアルキルアミノ基、水酸基を有するアルキルアミノカルボニル(フェニル基及び水酸基を有する)アルキルアミノ基、(水酸基及びアルコキシカルボニル基を有する)アルキルアミノカルボニル(フェニル基及び水酸基を有する)アルキルアミノ基、グルコサミノ基、(アルコキシカルボニル基、フェニル基及び水酸基を有する)アルキルアミノ基、アルキル基を有していても良いピペラジノ基、アミノ基を有する抗生物質残基、アルコキシル基、アルコキシポリアルキレングリコールアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基である。
【0014】
アルコキシカルボニル(水酸基を有する)アルキルアミノ基としては、例えば(C1-C4)アルコキシカルボニル(水酸基を有する)(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば2−ヒドロキシ−1−メトキシカルボニルエチルアミノ基、1−エトキシカルボニル−2−ヒドロキシエチルアミノ基、2−ヒドロキシ−1−メトキシカルボニル−プロピルアミノ基等が挙げられる。
水酸基を有するアルキルアミノ基としては、例えば水酸基を有する(C1-C6)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば、2−ヒドロキシエチルアミノ基、3−ヒドロキシプロピルアミノ基、4−ヒドロキシブチルアミノ基、2−ヒドロキシプロピルアミノ基、1−イソブチル−2−ヒドロキシエチルアミノ基、1−エチル−2−ヒドロキシエチルアミノ基、2,3−ジヒドロキシエチルアミノ基等が挙げられる。
水酸基を有していても良いピペリジノ基としては例えば、3−ヒドロキシピペリジノ基、4−ヒドロキシピペリジノ基等が挙げられる。
【0015】
水酸基を有していても良いアルコキシアルキルアミノ基としては、例えば水酸基を有していても良い(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ基、3−(3−ヒドロキシプロポキシ)プロピルアミノ基等が挙げられる。
スルホン酸基を有するアルキルアミノ基としては、例えばスルホン酸基を有する(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えばスルホメチルアミノ基、スルホエチルアミノ基等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基を有するアルキルアミノ基としては、例えばジ(C1-C4)アルキルアミノ基を有する(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば、2−ジメチルアミノエチルアミノ基、2−ジエチルアミノエチルアミノ基、3−ジメチルアミノプロピルアミノ基、3−ジエチルアミノプロピルアミノ基等が挙げられる。
【0016】
フェニル基及び水酸基を有するアルキルアミノ基としては、例えばフェニル基及び水酸基を有する(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば1−ヒドロキシ−2,3−ジフェニルプロピルアミノ基等が挙げられる。
水酸基を有するアルキルアミノカルボニル(フェニル基及び水酸基を有する)アルキルアミノ基としては、水酸基を有する(C1-C4)アルキルアミノカルボニル(フェニル基及び水酸基を有する)(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば1−ベンジル−2−(2,3−ジヒドロキシプロピルアミノカルボニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ基等が挙げられる。
(水酸基及びアルコキシカルボニル基を有する)アルキルアミノカルボニル(フェニル基及び水酸基を有する)アルキルアミノ基としては、例えば(水酸基及び(C1-C4)アルコキシカルボニル基を有する)(C1-C4)アルキルアミノカルボニル(フェニル基及び水酸基を有する)(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば1−ベンジル−2−ヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシ−1−メトキシカルボニル)エチルアミノ基等が挙げられる。
【0017】
(アルコキシカルボニル基、フェニル基及び水酸基を有する)アルキルアミノ基としては、例えば((C1-C4)アルコキシカルボニル基、フェニル基及び水酸基を有する)(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば1―ベンジル−2−ヒドロキシ−2−メトキシカルボニルエチルアミノ基等が挙げられる。
アルキル基を有していても良いピペラジノ基としては、例えば(C1-C4)アルキル基を有していても良いピペラジノ基が挙げられ、具体的には例えば、2−メチルピペラジノ基、2−エチルピペラジノ基、4−メチルピペラジノ基、4−エチルピペラジノ基、4−プロピルピペラジノ基、4−ブチルピペラジノ基等が挙げられる。
アミノ基を有する抗生物質残基としては、例えば抗菌抗生物質残基、制癌抗生物質残基等が挙げられるが,制癌抗生物質残基が好ましく、具体的には例えば,アドリアマイシン残基、ブレオマイシン残基、マイトマイシン残基等が挙げられる。
アルコキシル基としては、例えばC1〜C4のアルコキシル基が挙げられ,具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0018】
アルコキシポリアルキレングリコールアミノ基としては、例えば片末端(C1-C4)アルコキシ片末端アミノポリアルキレングリコール等が挙げられ、平均分子量1000〜50000が好ましく、具体的には例えば平均分子量5000のメトキシポリエチレングリコールアミノ基が挙げられる。
アルキルアミノ基としては、例えば(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば,メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基としては、例えばジ(C1-C4)アルキルアミノ基が挙げられ、具体的には例えば,ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ(t−ブチル)アミノ基等が挙げられる。
【0019】
上記式(2)のXは、カルボニル基又はスルホニル基であり、カルボニル基が好ましい。
上記式(2)のE、X、Dの好ましい組み合わせとしては、例えばEがC1〜C10のポリメチレンであり、Xがカルボニル基であり、Dがモルホリノ基、(C1-C4)アルコキシカルボニル(水酸基を有する)(C1-C4)アルキルアミノ基、水酸基を有する(C1-C4)アルキルアミノ基、水酸基を有していても良いピペリジノ基、水酸基を有していても良い(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキルアミノ基、スルホン酸基を有する(C1-C4)アルキルアミノ基、ジ(C1-C4)アルキルアミノ基を有する(C1-C4)アルキルアミノ基等が挙げられる。
上記式(2)のE、X、Dのより好ましい組み合わせとしては、例えばEがC1〜C6のポリメチレンであり、Xがカルボニル基であり、Dがモルホリノ基、(C1-C4)アルコキシカルボニル(水酸基を有する)(C1-C4)アルキルアミノ基、水酸基を有していても良いピペリジノ基、水酸基を有していても良い(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキルアミノ基、スルホン酸基を有する(C1-C4)アルキルアミノ基等が挙げられる。
【0020】
上記式(2)のE、X、Dのさらに好ましい組み合わせとしては、例えばEが炭素数3のポリメチレンであり、Xがカルボニル基であり、Dがモルホリノ基である。
【0021】
本発明の化合物において、その許容しうる塩とは分子内の電荷を中和するのに必要なアニオン又はカチオンである。カチオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、無機又は有機アンモニウムイオン(例、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン)、及びピリジニウムイオン等が挙げられる。又、アルキルアミン(例、メチルアミン)、アミノアルコール(例、エタノールアミン)及びアミノ酸類(例、グリシンメチルエステル、セリンエチルエステル)等のアミン類のアンモニウムイオンも挙げることができる。
アニオンの場合、アニオンは1価、2価どちらでも良い。1価のアニオンとしては、例えば有機酸1価アニオン、無機1価アニオン等が挙げられる。
有機酸1価アニオンとしては、例えば酢酸イオン、乳酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、ステアリン酸イオン等の有機カルボン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンモノスルホン酸イオン、クロロベンゼンスルホン酸イオン、ニトロベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等の有機スルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ブチルトリフェニルホウ酸イオン等の有機ホウ酸イオン等が挙げられる。無機1価アニオンとしては、例えば水酸化物イオン、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、バナジン酸イオン、リン酸イオン、ホウ酸イオン等が挙げられる。
【0022】
2価のアニオンとしては、例えばナフタレン−1、5−ジスルホン酸、R酸、G酸、H酸、ベンゾイルH酸、p−クロルベンゾイルH酸、p−トルエンスルホニルH酸、カルボニルJ酸、4,4'−ジアミノスチルベン−2,2'ージスルホン酸、ジJ酸、ナフタル酸、ナフタリン−2,3−ジカルボン酸、ジフェン酸、スチルベン−4,4'−ジカルボン酸、6−スルホ−2−オキシ−3−ナフトエ酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、1,6−ジアミノアントラキノン−2,7−ジスルホン酸等の2価の有機酸のイオンが挙げられる。
【0023】
これらのカチオンあるいはアニオンとの塩のうち好ましいものとしては、薬学的に許容しうるカチオンあるいはアニオンとの塩であって、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の塩や、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、メチルアミン、エチレンジアミン等の有機塩基との塩及びグリシンメチルエステル、セリンエチルエステル等のアミノ酸類との塩が挙げられる。
【0024】
次に、本発明の一般式(1)で示される化合物の具体例を、表1に示す。これらの化合物は、フリーの形で記載している。表1中環A、環Bは該置換基以外は無置換であり、mは1であり、「Ph」はフェニル基、「NHGlc」はグルコサミノ基、「Morpho.」はモルフォリノ基、「Pipera−Me」はN−メチルピペラジノ基、「Piperi−OH」は4−ヒドロキシピペリジノ基、「NH−ADR」はアドリアマイシン残基、「PEG―M」は平均分子量5000のモノメトキシポリエチレングリコールを表す。又、例えばR1〜R8が全て3−[N−(2−ヒドロキシエチル)カルバモイル]プロピル基である場合には「8(n-C3H6CONHCH2CH2OH)」と表し、R1〜R8のうち、例えば一つが3−[N−(2−ヒドロキシエチル)カルバモイル]プロピル基で残りが3−カルボキシルプロピル基である場合には「7(n-C3H6CO2H) (n-C3H6CONHCH2CH2OH)」等と略して表記する。
【0025】
表1
NO. R1〜R8
1 8(n-C3H6CO−Morpho.)
2 8(n-C3H6CONHCH(CH2OH)COOCH3)
3 8(n-C3H6CONHCH2CH2OH)
4 8(n-C3H6CONHCH2CH(OH)CH2OH)
5 8(n-C3H6CO−Piperi.−OH)
6 8(n-C3H6CONHCH2CH2CH2CH2OH)
7 8(n-C3H6CONHCH2CH2OCH2CH2OH)
8 8(n-C3H6CONHCH2SO3H)
9 8(n-C3H6CONHCH2CH2N(C2H5)2)
10 8(n-C3H6CONHCH2CH(OH)CH3)
11 8(n-C3H6CONHCH(C2H5)CH2OH)
12 8(n-C3H6CONHCH(OH)CH(CH2Ph)Ph)
13 8(n-C3H6CONHCH(CH2Ph)CH(OH)CONHCH2CH(OH)CH2OH)
14 8(n-C3H6CONHCH(CH2CH(CH3)2)CH2OH)
15 8(n-C3H6CONHCH(CH2Ph)CH(OH)CONHCH(CH2OH)COOCH3)
16 8(n-C3H6CONHGlc)
17 8(n-C3H6CONHCH(CH2Ph)CH(OH)COOCH3)
18 8(n-C3H6CO−Pipera.―Me)
【0026】
19 8(n-C3H6CONH−ADR)
20 8(CH2CO−Morpho.)
21 8(C2H4CO−Morpho.)
22 8(n-C4H8CO−Morpho.)
23 8(n-C6H12CO−Morpho.)
24 8(CH2CONHCH(CH2OH)COOCH3)
25 8(C2H4CONHCH(CH2OH)COOCH3)
26 8(n-C4H8CONHCH(CH2OH)COOCH3)
27 8(n-C6H12CONHCH(CH2OH)COOCH3)
28 8(CH2CONHCH2CH2CH2CH2OH)
29 8(n-C6H12CONHCH2CH2CH2CH2OH)
30 8(C2H4CONHCH2CH2OCH2CH2OH)
31 8(n-C4H8CONHCH2CH2OCH2CH2OH)
32 8(CH2CONHCH(CH2Ph)CH(OH)CONHCH2CH(OH)CH2OH)
33 8(n-C4H8CONHCH(CH2Ph)CH(OH)CONHCH2CH(OH)CH2OH)
34 7(n-C3H6CO2H) (n-C3H6CO−Morpho.)
35 6(n-C3H6CO2H) 2(n-C3H6CO−Morpho.)
36 4(n-C3H6CO2H) 4(n-C3H6CO−Morpho.)
【0027】
37 7(CH2CO2H) (CH2CO−Morpho.)
38 4(n-C4H8CO2H) 4(n-C4H8CO−Morpho.)
39 7(n-C3H6CO2H) (n-C3H6CONHCH(CH2OH)COOCH3)
40 6(n-C3H6CO2H) 2(n-C3H6CONHCH(CH2OH)COOCH3)
41 4(n-C3H6CO2H) 4(n-C3H6CONHCH(CH2OH)COOCH3)
42 7(CH2CO2H) (CH2CO NHCH(CH2OH)COOCH3)
43 4(n-C4H8CO2H) 4(n-C4H8CONHCH(CH2OH)COOCH3)
44 7(n-C3H6CO2H) (n-C3H6CO2C2H5)
45 6(n-C3H6CO2H) 2(n-C3H6CO2C2H5)
46 4(n-C3H6CO2H) 4(n-C3H6CO2C2H5)
47 7(CH2CO2H) (CH2CO2C2H5)
48 4(n-C4H8CO2H) 4(n-C4H8CO2C2H5)
49 8(CH2CONHCH2CH2CH2CH2OH)
50 7(n-C3H6CO2H) (n-C3H6CONH−PEG−M)
51 6(n-C3H6CO2H) 2(n-C3H6CONH−PEG−M)
52 8(C2H5SO2NHC2H5)
53 8(n-C3H6SO2N(C2H5)2)
54 8(C2H5SO3C2H5)
55 4(C2H5SO3H) 4(C2H5SO2NHC2H5)
56 4(C2H5SO3H) 4(C2H5SO3C2H5)
【0028】
本発明の化合物のうち、上記式(2)のXがカルボニル基である化合物は、例えば特願平11−372139号に記載の方法、即ちテトラキス(p-ジ(シアノアルキル)アミノフェニル)-p-フェニレンジアミンを酸又は塩基にて加水分解すること、により調製されるテトラキス(p-ジ(カルボキシアルキル)アミノフェニル)-p-フェニレンジアミン類と、アミノ基や水酸基等を有する化合物を有機溶媒中、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリドン(NMP)等の水溶性極性溶媒中、0〜180℃、好ましくは5〜50℃で、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCA)、1―エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(WSC)等の脱水縮合剤と、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N−ヒドロキシスクシニルイミド(HOSu)、4−ジメチルアミノピリジン等の反応助剤を用いて縮合する事によって得ることができる。なお、原料のテトラキス(p-ジ(シアノアルキル)アミノフェニル)-p-フェニレンジアミンは特開2000−80071号公報に記載の方法により得ることができる。
又、上記式(2)のXがスルホニル基である化合物は、同じく上記特許出願に記載の方法にて調整されたテトラキス(p-ジ(スルホアルキル)アミノフェニル)-p-フェニレンジアミン類をDMF等の溶媒中チオニルクロリド、5塩化リン等を用いて塩素化した後、アミノ基や水酸基を有する化合物と反応させることによって合成が可能である。
本発明の化合物の塩は、例えば水等の溶媒に溶かし、前記記載の所望のアニオンの酸もしくは塩を添加するか、所望のカチオンのアルカリを添加して塩交換を行う方法を用い、続いて凍結乾燥することにより得られる。
【0029】
本発明の化合物は全量又はその1部分量を、合成、精製過程あるいは適切な酸化剤による酸化工程に供することによりモノカチオン化合物又はジカチオン化合物へと導くことができる。生成するカチオン化合物の全体量に占める割合は1〜100%であり、好ましくは30〜100%である。このカチオン化合物は、赤外線領域、特に700〜1600nmに吸収極大波長を有する。この骨格構造がカチオン化された化合物は、合成段階あるいはその後の精製段階において単一体あるいは混合物として得ることができる。又、置換基の種類によっては上記方法のみではカチオン体の存在比率が低い誘導体も存在する。その場合、銀塩、塩化第二銅、二酸化マンガン等の酸化剤で酸化した後に、塩を得ることもできる。又、例えば特公昭43−25335号公報記載の方法でも合成することが可能である。
【0030】
本発明の溶解液は、上記の本発明の化合物を溶媒に溶解したものである。溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられ、水が好ましい。本発明の溶解液における本発明の化合物の濃度は、0.05mg/ml〜1g/ml程度が好ましい。この溶解液は、時間の経過とともに着色してくる。これは、本発明の化合物は、溶媒中の酸素の影響により、酸化されてその一部又は全部がカチオン化されるためと思われる。
本発明の溶解液は、例えば750nm以上に吸収極大波長を持ち、光化学療法の際に次の特徴を有する。
(a)吸収極大波長が750nm以上にある為、生体組織のより深部までの治療にも対応できる。
(b)光を照射した場合に優れた活性を示し、例えば固型癌を消滅させることができる。
(c)標的細胞例えば癌細胞に親和性を有するため、極めて効率的な治療が可能である。
(d)光にさらされない状態では生体に対しほとんど不活性であるため、副作用が軽減される。
(e)水にも有機溶媒にも溶解可能であるため、注射剤等に製剤化が可能である。
【0031】
本発明の光化学療法剤の作用機序は十分に解明されていないが、化合物の熱発散による温熱効果が考えられ、又、分子内に含まれる遊離基(ラジカル)又は類似の分子種を生成することによって、腫瘍血管に作用して腫瘍壊死作用を引き起こし、治療効果を発揮するとも考えられる。
【0032】
本発明の化合物、その溶解液は血栓症、動脈硬化、循環器系疾患等に対して治療効果を示すが、癌等の腫瘍の治療剤として特に有用であり、深部の腫瘍に対しても光化学療法を使用できる。
本発明の化合物又はその溶解液を光化学療法剤として使用する際は、注射剤、錠剤、散剤など通常使用されている剤型に製剤化することにより使用され得る。製剤化に当っては、通常使用されている薬学的に許容される担体、例えば結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、保存剤、無痛化剤、色素、香料等が使用できる。注射剤の場合は、通常溶剤を使用する。溶剤としては、例えば水、生理食塩水、5%ブドウ糖又はマンニトール液、水溶性有機溶媒、例えばグリセロール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、クレモフォア等及びそれらの混合液、並びに水と該水溶性有機溶媒の混合液等が挙げられる。
【0033】
本発明の化合物、その溶解液を光化学療法剤として使用する場合、その投与量は年齢、体重、病態、治療効果、投与方法、投与時期、投与日数、投与期間により異なるが、通常1回10〜1000mgを2ないし4週間毎に、3〜6回、好ましくは、100〜500mgを4週間毎に5回投与する。
本発明の化合物、その溶解液を腫瘍の光化学治療法に適用する場合は、上記の光化学療法剤を投与した後、700〜1600nmの波長を有する光線を照射することを特徴とする。腫瘍としては、固形腫瘍が挙げられ、例えば良性腫瘍と悪性腫瘍に分類される。良性腫瘍としては、例えば乳頭腫、線腫(ポリープ)、脂肪腫、血管腫、リンパ管腫、繊維腫、黒子等が挙げられる。悪性腫瘍としては、癌腫例えば、皮膚癌、胃癌、大腸癌、膀胱癌、子宮癌、食道癌、肺癌等、及び肉腫等が挙げられる。
【0034】
投与は、経口、非経口のいずれでも良いが、好ましくは非経口的に投与する。注射による投与は、静脈、動脈、皮下、患部(腫瘍部)等に行うことができる。又、軟膏等の塗布製剤として腫瘍表面に塗布するか、又は注射剤としては直接腫瘍内に注入することがより好ましい。
【0035】
光化学療法に用いる光は、治療剤に含まれる化合物の吸収極大波長とほぼ同じ波長のもの、又は該化合物の吸収波長を含む波長帯のものであればいずれも使用でき、通常700〜1600nm、更に好ましくは750〜1300nmの波長を有する光線が使用され、好ましくはレーザー光が用いられる。光の照射量は、治療標的の種類、状態、患者の状態、年齢、性別、体重、体質及び用いた化合物の種類等により異なるが、通常10〜500J/cm2、好ましくは100〜300J/cm2の範囲で用いられる。
又、照射光は、単一の波長又は波長帯のもの1種のみ用いてもよいが、異なる波長又は異なる波長帯の2種以上を用いてもよい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明が、これらの実施例に限定されるものではない。Msは質量分析値を表す。
【0037】
実施例1 No.1の化合物の合成
DMF(30ml)に溶解したN,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(カルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミン(1.00g)にモルフォリン(0.78ml)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.20g)及びジイソプロピルカルボジイミド(1.4ml)を加え、室温にて24時間反応する。反応液に酢酸エチル(30ml)及びジイソプロピルエーテル(120ml)を加え、室温にて30分攪拌した後、傾斜法にて上清を除去し沈澱を残渣として得る。残渣を水(50ml)と水で飽和した1−ブタノール(250ml)にて抽出する。ブタノール層を分液し,水(25ml)で洗浄後、水(100ml)とヘキサン(250ml)を加え再度分液操作を行う。得られた水層をDEAE−toyopearl(5ml)に通塔し、溶出画分を凍結乾燥することによって、表1中のNo.1の化合物(860mg)を得た(Ms(ESI)m/z;1714[M+H]+,858[M+2H]2+)。
このNo.1の化合物1mgを蒸留水10mlに溶解し、本発明の溶解液(水溶液)を得た。λmax;984nm(水)
【0038】
実施例2 No.2の化合物の合成
実施例1の方法に従って、N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(カルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンと、モルフォリンに替えてセリンメチルエステルを用い、表1中のNo.2の化合物を得た(Ms(ESI)m/z;1714[M+H]+,858[M+2H]2+)。
このNo.2の化合物1mgを蒸留水10mlに溶解し、本発明の溶解液(水溶液)を得た。
【0039】
実施例3 No.3の化合物の合成
実施例1の方法に従って、N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(カルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンと、モルフォリンに替えて2−アミノエタノールを用い、表1中のNo.3の化合物を得た(Ms(ESI)m/z;1506[M+H]+)。
このNo.3の化合物1mgを蒸留水10mlに溶解し、本発明の溶解液(水溶液)を得た。λmax;966nm(水)
【0040】
実施例4 No.4の化合物の合成
実施例1の方法に従って、N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(カルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンと、モルフォリンに替えて3−アミノ−1,2−プロパンジオールを用い、表1中のNo.4の化合物を得た(Ms(ESI)m/z;1746[M+H]+)。
このNo.4の化合物1mgを蒸留水10mlに溶解し、本発明の溶解液(水溶液)を得た。λmax;976nm(水)
【0041】
実施例5 No.5の化合物の合成成
実施例1の方法に従って、N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(カルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンと、モルフォリンに替えて4−ヒドロキシピペリジンを用い、表1中のNo.5の化合物を得た(Ms(ESI)m/z;1826[M+H]+, 913[M+2H]2+)。
このNo.5の化合物1mgを蒸留水10mlに溶解し、本発明の溶解液(水溶液)を得た。
【0042】
実施例6 No.6の化合物の合成
実施例1の方法に従って、N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(カルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンと、モルフォリンに替えて4−アミノ−1−ブタノールを用い、表1中のNo.6の化合物を得た(Ms(ESI)m/z;1730[M+H]+,866[M+2H]2+)。
このNo.6の化合物1mgを蒸留水10mlに溶解し、本発明の溶解液(水溶液)を得た。
【0043】
実施例7 No.7の化合物の合成
実施例1の方法に従って、N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(カルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンと、モルフォリンに替えてジグリコールアミンを用い、表1中のNo.7の化合物を得た(Ms(ESI)m/z;1858[M+H]+,930[M+2H]2+)。
このNo.7の化合物1mgを蒸留水10mlに溶解し、本発明の溶解液(水溶液)を得た。
【0044】
実施例8 No.8の化合物の合成
実施例1の方法に従って、N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(カルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンと、モルフォリンに替えてアミノメチルスルホン酸を用い、表1中のNo.8の化合物を得た(Ms(ESI)m/z;951[M−2H]2-,634[M−3H]3-,475[M−4H]4-)。
このNo.8の化合物1mgを蒸留水10mlに溶解し、本発明の溶解液(水溶液)を得た。
【0045】
実施例9 No.9の化合物の合成
実施例1の方法に従って、N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(カルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンと、モルフォリンに替えてN,N−ジエチルアミノエチルアミンを用い、表1中のNo.9の化合物を得た(Ms(ESI)m/z;974[M+2H]2+,650[M+3H]3+,488[M+4H]4+)。
このNo.9の化合物1mgを蒸留水10mlに溶解し、本発明の溶解液(水溶液)を得た。
【0046】
次に、癌の光化学療法における本発明の化合物の使用例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
試験例 ヒト大腸癌DLD−1に対する抗腫瘍効果
ヒト大腸癌DLD−1を2mm角の腫瘍片にし、BALB/c(雌性)ヌードマウスの背側部皮下に套管針にて移植し、腫瘍体積が40mm3以上になった時点で治療実験に用いた。表1中のNo.1、8、6、7、5の各化合物(6mg)又はNo.2の化合物(10mg)を5%ブドウ糖液(1ml)に溶解し、麻酔下、腫瘍内局所に100μl(No.1、8、6、7、5の各化合物は30mg/kg、No.2の化合物は50mg/kg)投与し、直後に波長980nmの半導体レーザーを腫瘍部位に200J/cm2照射して光化学療法を行った。5%ブドウ糖液のみを投与し、レーザー光照射したマウスを対照として比較した。
【0048】
結果
前記化合物No.1、8、6、7、5又は2を用いて光線力学的療法を行ったマウスにおいては、レーザー照射翌日より腫瘍部が黒色を呈し痂皮を形成し、腫瘍の壊死が誘導され、腫瘍の完全消失も認められた。しかしながら、5%ブドウ糖液のみの場合には腫瘍の壊死が誘導されず、増殖が認められた。即ち、化合物No.1、8、6と7では、照射後28日ですべてのマウスで腫瘍縮小が認められ、特に化合物No.1では9匹中5匹のマウスが完全治癒し、高い有効性を示した。結果を表2に示す。
【0049】
表2 試験例1の化合物の腫瘍壊死作用
【0050】
【発明の効果】
本発明の化合物は、水又は水溶性極性溶媒に溶解可能で生体への投与が容易となり、更に癌組織に滞留し、効率良い光化学療法を可能とする。
Claims (6)
- 一般式(1)
- 一般式(2)のDがモルホリノ基である請求項1記載の化合物、又はその許容しうる塩。
- N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(モルホリノカルボキシプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンである化合物、又はその許容しうる塩。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物のモノ又はジカチオン化合物。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の化合物の溶解液。
- 水溶液である請求項5に記載の溶解液。
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