JP4677118B2 - 画像表示装置及び撮像装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示装置及び撮像装置に関し、特に、頭部装着型画像表示装置等の画像表示装置と撮像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、頭部に装着して映像や音声を楽しむことができる頭部装着型画像表示装置が製品化されていて、例えば眼鏡に類似した方法で装着し、大画面の映像を観察することができるようになっている。
【0003】
このような頭部装着型画像表示装置では、小型のLCD(液晶表示装置)等により画像を表示して、その画像を光学系を介して拡大した後に、観察者の眼球に投影するようになっており、頭部に装着する使用形態を考慮して、光学系についても小型で高性能化を図る努力がなされている。
【0004】
このような光学系の一例として、特開平7−333551号には、LCD等により表示された画像を、全反射面や光学パワーを有する曲面でなる反射面等の複数の反射面で反射させて、観察者の眼球に導く単一のプリズムでなる観察光学系が記載されている。
【0005】
また、特開平9−73005号には、複数の反射面を有するプリズム素子の例えば両側面から位置決め部を突設して、これらの位置決め部に設けた形状部により、他の部材と精度良く位置決め固定する技術が記載されている。特開平9−73005号には、さらに、LCD等の表示手段により表示された画像を観察者の眼球に導くためのプリズム素子とは別に、外界像を透過させる第2の光学素子を組み合わせる技術が記載されている。
【0006】
また、製造誤差に伴う光学特性の劣化を補償する技術として、特開平2000−330069のものがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような特開平7−333551号、特開平9−73005号、及び、特開平2000−330069に記載されたものでは、LCD等の表示システムにより表示された画像を観察者の眼球に導くための光学素子は、何れも単一のプリズムとなっている。しかしながら、近年、表示システムの高画素化、高精細化が望まれていて、こうした高精細な表示システムに対応するためには、単一のプリズムのみで画像を観察者の眼球に導く光学系を用いるのが必ずしも最適とは言えなくなっており、複数のプリズムを組み合わせて光学系を構成することも考慮に入れる必要が生じている。この場合には、これらのプリズム同士も互いの位置関係を高精度に決定しなければならない。
【0008】
ところが、その必要精度に対して実際の製造工程は必ずしも十分な工程余裕を保有しているとは限らず、その誤差によって、例えば視度ずれや台形歪みを生じることになる。このような品質の劣化を補償する技術として、例えば特開平2000−330069では、表示システムに垂直な方向で表示システムとプリズムの相対位置を調整している。しかし、これでは台形歪みを補正することはできず、また、2個以上のプリズムを有する光学系は考慮されていない。
【0009】
通常の軸対称光学系においては、製造誤差によって劣化した光学性能を回復させるためにレンズの偏心調整を行うことは周知の事実である。しかし、一般には、この偏心調整に伴って像位置がシフトし、実際には偏心調整とフォーカスシフト調整を2段階で行う必要があった。
【0010】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のプリズムからなる光学系において、製造誤差による光学性能の劣化を容易に補償する調整手段を具備した画像表示装置、撮像装置等の光学装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の画像表示装置は、画像表示手段と、光学的パワーを有するプリズム素子と、光学的パワーを有するもう1つ光学素子とを備え、画像表示手段が表示した画像を眼球網膜上に投影する画像観察光学系を有する画像表示装置において、
前記画像表示手段の画像表示面中央から出て光学系の射出瞳中心を通過する軸上主光線が、前記プリズム素子入射面に第1の方向で入射し、前記プリズム素子で少なくとも1回内部反射し、前記プリズム素子射出面から前記第1の方向とは異なる第2の方向に射出し、前記画像観察光学系を連結保持する保持手段が、前記プリズム素子を前記第1の方向及び前記第2の方向を含む基準面に沿って連続的に位置調整可能な位置調整手段を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この場合に、前記保持手段は、前記画像表示手段を前記基準面に沿って連続的に位置調整可能な第2の位置調整手段を備えていることが望ましい。
【0013】
また、前記軸上主光線が通過する全ての光学素子は、前記基準面内に配置され、前記全ての光学素子の光学作用面は少なくとも前記基準面に対して対称性を有していることが望ましい。
【0014】
また、前記位置調整手段は、前記プリズム素子側面に形成された前記基準面に平行なプリズム基準面と、前記保持手段の所定位置に形成されたプリズム当て付け面とからなる摺動機構であることが望ましい。
【0015】
また、前記第1の方向への並進可動機構と前記基準面に沿った回転機構とを有することが望ましい。
【0016】
本発明の撮像装置は、撮像手段と、光学的パワーを有するプリズム素子と、光学的パワーを有するもう1つの光学素子とを備えた撮像光学系を有する撮像装置において、
光学系の開口絞り中心を通過し前記撮像手段の撮像面中央に入射する軸上主光線が、前記プリズム素子入射面に第2の方向で入射し、前記プリズム素子で少なくとも1回内部反射し、前記プリズム素子射出面から前記第2の方向とは異なる第1の方向に射出し、前記撮像光学系を連結保持する保持手段が、前記プリズム素子を前記第1の方向及び前記第2の方向を含む基準面に沿って連続的に位置調整可能な位置調整手段を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明においては、軸上主光線が、プリズム素子入射面に第1の方向で入射し、プリズム素子で少なくとも1回内部反射し、プリズム素子射出面から第1の方向とは異なる第2の方向に射出し、画像観察光学系を連結保持する保持手段が、プリズム素子を第1の方向及び第2の方向を含む基準面に沿って連続的に位置調整可能な位置調整手段を備えているので、1つのプリズム素子を動かすことによって光学系の偏心調整とフォーカスシフト調整ができ、調整を効率良く行うことができる。また、調整機構を単純にすることが可能となるので、鏡枠構造全体を簡素化することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の光学装置の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、複数のプリズムからなる光学系が適用される両眼式眼鏡型ディスプレイ1の使用時の様子を示す斜視図である。頭部装着型画像表示装置の一例としての、この両眼式眼鏡型ディスプレイ1は、観察者が通常の眼鏡と略同様にして眼前から側頭部にかけて装着して用いるものであり、左右一対の光学系や映像表示回路等を内蔵してなる本体1aの両側部から、眼鏡のつる状をなす側頭保持アーム1bをそれぞれ突設している。さらに、この両眼式眼鏡型ディスプレイ1は、イヤホン1cを耳内に装着することにより、音も楽しむことができるようになっている。
【0020】
また、図2は、複数のプリズムからなる光学系が適用される単眼式眼鏡型ディスプレイ2の使用時の様子を示す斜視図である。頭部装着型画像表示装置の他の例としての、この図2に示す単眼式眼鏡型ディスプレイ2は、右眼で映像を見るものとなっており、左眼でそのまま通常の視野を確保することができる点を除いては、上記図1に示したものと略同様の構成となっていて、本体2aの両側部から側頭保持アーム2bをそれぞれ突設すると共に、イヤホン2cにより音声を聴取するようになっている。なお、図2の例では、右眼用のものを示しているが、左眼用のものであってももちろん構わない。
【0021】
次に、図3は、図1や図2に示した眼鏡型ディスプレイの内部構成を示す斜視図であり、ここでは例えば図2の内部の例について示す。上記本体2a内には、例えばTVチューナやDVDプレーヤ等の映像ソースから出力される映像信号を受けて表示システム用の駆動信号を生成する電装基板3と、この電装基板3に接続されているフレキシブルプリント基板4と、このフレキシブルプリント基板4に取り付けられている表示システム(表示素子)と、この表示システムにより表示される画像を観察者の眼球に導く鏡枠ユニット10とが配設されている。
【0022】
上記鏡枠ユニット10は、上記表示システムにより表示される画像を導く第1プリズム8と、この第1プリズム8と所定の位置関係に配設されることにより第1プリズム8を射出した画像の光束を内部で複数回反射させた後に観察者の眼球に導く第2プリズム7と、上記表示システムを固定するものであって、これら第1プリズム8と第2プリズム7を所定の位置関係に保持しながら本体2aに固定される鏡枠9とを有して構成されている。
【0023】
図4は、表示システムから射出された画像の光線が第1プリズム8及び第2プリズム7内を通過する様子を示す側面図である。第1プリズム8と第2プリズム7は、各々ただ1つの対称面を有する自由曲面プリズムであり、各々の対称面が重なるように光学系が設計されている。
【0024】
ここで、表示システムは、赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色による発光を時系列的に順次行うLEDユニット5と、このLEDユニット5にから発光された光を受けて画素毎に制御された所定の反射率により反射する反射型LCD6とを有して構成されている。すなわち、LEDユニット5内のLEDにより発光されて均一に拡散された光は、入射反射面8aから屈折して第1プリズム8内に入った後に、第1反射面8bで反射され、透過面8cを介して反射型LCD6を照明する。反射型LCD6は、各画素の反射率を、照明光が上記RGBの何れであるかに応じて制御するようになっており、LEDユニット5と協働して面順次式の表示システムを構成している。
【0025】
この反射型LCD6により反射された光は、透過面8cから再び第1プリズム8内に入射して、第1反射面8bで反射された後に、入射反射面8aの内面側で今度は反射して、射出面8dから第1プリズム8の外部に出る。
【0026】
この第1プリズム8から第2プリズム7との間の空間に射出された光は、一旦中間像面に結像した後に、続いて入射面7aから第2プリズム7内に入り、反射射出面7bの内面側で全反射され、第2反射面7cで反射された後に、反射射出面7bから射出されて、観察者の眼球に像を結像するようになっている。
【0027】
このように、反射型LCD6をLEDユニット5により面順次に照明することによって、カラーフイルター等を用いる従来のLCDに比して、同一の画素数でも約3倍の高精細な画像を表示することが可能となる。
【0028】
すなわち、このような高精細な画像を実現するために、さらには、観察者がより広い画面を観察することができるようにするために、2つのプリズム8、7により構成される光学系を採用しているものである。
【0029】
ここでは、プリズム2つの構成を例示したが、さらに高性能な光学系を実現する際には、3つ以上のプリズムが必要がとなることも自明のことである。このように、2つ以上のプリズムで構成される光学系の製作誤差に伴う性能劣化は、以下に説明するような手段で効果的に補償される。
【0030】
図5〜図6は、本発明の第1の実施形態を示す図であり、図4の光学系において、第1プリズム8と第2プリズム7を位置決めしながら互いに組み付ける構成を示している。図5(a)は分解斜視図、図5(b)は分解正面図である。第1プリズム8の側面には、第1プリズム8の対称面Aに平行となるように当て付け面12が形成されている。当て付け面12の略中央には、第1プリズム8を保持部11に固定するためのビス孔12aが穿設されている。
【0031】
第2プリズム7の入射面7aの外側となる左右の側面には、第1プリズム8を組み付ける保持部11が一体成形により各々設けられている。保持部11の内側側面11aは、第2プリズム7の対称面Bに平行となるように各々形成されている。さらに、内側側面11aには、第1プリズム8を固定するビス15を貫通させる孔部11cが、ビス15の外形よりも大きく、当て付け面12よりも小さい大きさで各々形成されている。
【0032】
また、保持部11の前面には、図示しないLCD6を搭載したLCDユニット17の取り付け面11bが各々形成され、LCDユニット17を固定するためのビス孔11dが穿設されている。
【0033】
このような構成において、第1プリズム8と第2プリズム7を連結する際には、第1プリズム8の当て付け面12と保持部11の内側側面11aを各々当接させるように配置し、孔部11cより小さい内径のワッシャー13を介してビス15をビス孔12aに締結する。また、LCDユニット17を連結する際には、スペーサー14を挟んでLCDユニット17の対応する面と取り付け面11bを各々当接させ、ビス16をビス孔11dに締結する。
【0034】
このような構成の光学系を調整する際には、まず、第1プリズム8を固定したビス15を緩め、当て付け面12と内側側面11aが各々当接した状態で摺動可能とする。次に、LCDユニット17に搭載されたLCD6が表示する画像を第2プリズム7を通して観察しながら、第1プリズム8をその対称面に沿った回転及び並進方向に協調的に摺動させ、観察像が最適となる位置でビス15を締結し、第1プリズム8を保持部11に固定する。
【0035】
以上の構成による調整の原理を図6を用いて説明する。図6は、図4で示した光学系において、LCD6の画像表示面中央Oから射出し、射出瞳中心Pを通過する光線(軸上主光線)を図示したものである。通常の軸対称光学系との類似性から、この光線の軌跡を光軸と定義する。上記光線は、第1の方向で第1プリズム8に入射し、内部で2回反射した後、第1の方向とは異なる第2の方向で第1プリズム8の射出面から射出する。すなわち、この第1プリズム8は入射側と射出側で光軸を折り曲げている。本発明の構成によれば、第1の方向と第2の方向を含む面(以後、これを基準面と呼ぶ。)に沿って第1プリズム8を動かすことによって調整を行うため、射出側の光軸に対して垂直な並進は、入射側光軸に対して軸上並進成分を含んでいる。これにより、図6で調整Aと記した回転成分の調整は、通常の軸対称光学系における偏心調整に近い作用を有し、一方で、図6で調整Bと記した並進成分の調整は、通常の軸対称光学系における偏心調整の作用と面間隔調整の作用を併せ持つことになる。
【0036】
以上のことから、本発明の構成に従えば、偏心収差や像歪みに主に対応する回転成分の調整(調整A)と、フォーカスシフトに主に対応する並進成分の調整(調整B)を協調的に実行することにより、これらの不具合に対応した調整を同時に効率良く行うことができる。また、1つのプリズムを動かすことによって調整を実現しているため、調整機構を単純にすることが可能となり、鏡枠構造全体を簡素化することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、図5に示すように、LCDユニット17をスペーサー14を挟んで保持部11に固定しているので、スペーサー14の厚さを適宜調節することによって、前述の第1プリズム8による調整とは独立にフォーカスシフトを補正することができる。これは、ロット間バラツキのように、比較的大きなオフセットが生じる場合に効果的である。
【0038】
図7〜図8は、第1の実施形態の変形例を説明する図である。この変形例は、図5で示した構成において、主に第1のプリズムと保持部に変形を加えたものであり、図示しない全ての構成は図5の構成と同一である。
【0039】
図7は、第1プリズム80と保持部110の組み付け方を説明した図である。第1プリズム80の側面には、第1プリズム80の対称面に平行となるように当て付け面120が形成されている。当て付け面120の略中央には、さらに凸部180が形成されており、その略中央には、第1プリズム80を保持部110に固定するためのビス孔180aが穿設されている。
【0040】
保持部110の内側側面110aには、第1プリズム80を固定するビス15を貫通させる孔部110bが各々形成されている。さらに、孔部110bの周囲には、図中X軸方向に長い凹部190が形成されている。
【0041】
図8(a)、(b)は、第1プリズム80と保持部110の組み付けた状態で、図7中のX軸、及びY軸で切った断面を示したもので、本構成の調整機構を説明するためのものである。図8において、当て付け面120に形成された凸部180は、保持部110に形成された凹部190によってガイドされ、図7中のX軸方向のみに可動な機構となっている。また、凸部180の高さは凹部190の深さより低く形成されているので、第1プリズム80に形成された当て付け面120は、保持部110の内側側面110aに当接した状態で摺動可能な機構となっている。
【0042】
以上の構成により、並進成分の調整方向を最も効果的な一方向に限定することができ、さらに、容易に光学系の調整を実施することが可能となる。効果的な並進成分の調整方向としては、例えば図6で示している通り、第1プリズムの入射側の光軸方向(第1の方向)とすることが、フォーカスシフトを容易に補正するという点で効果的である。
【0043】
また、この変形例では、図7が示すように、当て付け面120が形成された凸部の側面を不連続な平面で構成し、凸部全体としては多角形柱の構造とすることで、治具によって第1プリズム80を把持する際の作業性が向上されている。
【0044】
本発明の構成による調整の原理は、画像表示装置に限ることなく、光軸を折り曲げる光学系全般に適用することが可能である。図9〜図11は、本発明の第2の実施形態であり、本発明を撮像装置の光学系に適用した状態を説明するものである。
【0045】
図9は撮像光学系の一例を示す図であり、第1プリズム208、第2プリズム207、開口絞り203、光学的ローパスフイルター204、及び、撮像素子のカバーガラス205からなり、紙面に対して対称な構成となっている。第2プリズム207の入射反射面207bに入射した物体光は、第2プリズム207の反射面207cで内部反射され、さらに入射反射面207bで内部反射(全反射)された後に、射出面207aから第2プリズム207の外に出る。第2プリズム7の外に出た光は、光学的ローパスフィルター204、開口絞り203を通過した後、第1プリズム208の入射面208aから第1プリズム208に入射し、射出反射面208bで内部反射(全反射)し、反射面208cで内部反射し、射出反射面208bから第1プリズム208の外に出る。第1プリズム208の外に射出した光は、カバーガラス205を通過して撮像素子の結像面(撮像面)206に物体の像を結像する。
【0046】
図10は、本実施形態の要部を模式的に説明する図である。図9で説明した光学系を保持する保持手段210は、第2プリズム207、光学的ローパスフィルター204と開口絞り203を含む光学ユニット202、及び、カバーガラス205を含む撮像ユニット201を保持固定し、さらに、第1プリズム208を、第1の調整手段211及び第2の調整手段212を介して保持固定している。第1の調整手段211は、光学系の対称面に沿って結像面203に略垂直な方向への並進可動機構を有し、第2の調整手段212は、光学系の対称面に沿った回転方向の可動機構を有している。
【0047】
図11は、図10の構成による調整の原理を示す図であり、図9で示した光学系において、開口絞り203の中心Pと結像面206の中心Oを通る光線(軸上主光線)を示してある。この光線の軌跡を光軸と定義すると、この光学系は、光軸が光学系の対称面上で折り曲げられた折り曲げ光学系であり、第1プリズム208においては、結像面206に略平行な第2の方向に入射し、結像面206に略垂直な第1の方向に射出している。ここで、第1の調整手段211及び第2の調整手段212は、それぞれ光学系の対称面上における並進と回転の可動機構を有することから、図6を参照にして説明した第1の実施形態と全く同じ原理で、偏心収差や像歪みに主に対応する回転成分の調整と、フォーカスシフトに主に対応する並進成分の調整を協調的に実行することができ、これらの不具合に対応した調整を同時に効率良く行うことができる。また、1つのプリズムを動かすことによって調整を実現しているため、調整機構を単純にすることが可能となり、鏡枠構造全体を簡素化することができる。
【0048】
なお、図9に示したような撮像光学系は、物体像を形成しその像をCCDや銀塩フィルムといった撮像素子に受光させて撮影を行う撮影装置、とりわけカメラに用いることができる。また、物体像を接眼レンズを通して観察する観察装置、とりわけカメラのファインダー部の対物光学系としても用いることも可能である。また、内視鏡等の小型の撮像素子を用いた光学装置用の撮像光学系としても用いることができる。以下に、例示として、電子カメラの撮影部の対物光学系に組み込んだ構成の概念図を示す。図12は電子カメラ40の外観を示す前方斜視図、図13は同後方斜視図、図14は電子カメラ40の構成を示す断面図である。電子カメラ40は、この例の場合、撮影用光路42を有する撮影光学系41、ファインダー用光路44を有するファインダー光学系43、シャッター45、フラッシュ46、液晶表示モニター47等を含み、カメラ40の上部に配置されたシャッター45を押圧すると、それに連動して撮影用対物光学系48を通して撮影が行われる。この撮影用対物光学系48に図9に示したような撮像光学系が用いられている。撮影用対物光学系48によって形成された物体像はCCD49の撮像面(結像面)206上に形成される。このCCD49で受光された物体像は、処理手段52を介し、電子画像としてカメラ背面に設けられた液晶表示モニター47に表示される。また、この処理手段52には撮影された物体像を電子情報として記録する記録手段61が接続され、撮影された電子画像を記録することもできる。なお、この記録手段61は処理手段52と別体に設けらてもよいし、フロッピーディスク等により電子的に記録書込を行うように構成してもよい。また、CCD49に代わって銀塩フィルムを配置した銀塩カメラとして構成してもよい。さらに、ファインダー用光路44上には、ファインダー光学系43が配置されており、液晶表示モニター47とは別に被写体の構図等を確認することができるようになっている。図14ではこのファインダー光学系43は図示を省いてある。
【0049】
なお、本例では、撮影用対物光学系48のカバー部材65として平行平面板を配置しているが、パワーを持ったレンズを用いてもよい。
【0050】
以上の本発明の画像表示装置及び撮像装置は、例えば次のように構成することができる。
【0051】
〔1〕 画像表示手段と、光学的パワーを有するプリズム素子と、光学的パワーを有するもう1つ光学素子とを備え、画像表示手段が表示した画像を眼球網膜上に投影する画像観察光学系を有する画像表示装置において、
前記画像表示手段の画像表示面中央から出て光学系の射出瞳中心を通過する軸上主光線が、前記プリズム素子入射面に第1の方向で入射し、前記プリズム素子で少なくとも1回内部反射し、前記プリズム素子射出面から前記第1の方向とは異なる第2の方向に射出し、前記画像観察光学系を連結保持する保持手段が、前記プリズム素子を前記第1の方向及び前記第2の方向を含む基準面に沿って連続的に位置調整可能な位置調整手段を備えていることを特徴とする画像表示装置。
【0052】
〔2〕 上記1において、前記保持手段は、前記画像表示手段を前記基準面に沿って連続的に位置調整可能な第2の位置調整手段を備えていることを特徴とする画像表示装置。
【0053】
〔3〕 上記1において、前記軸上主光線が通過する全ての光学素子は、前記基準面内に配置され、前記全ての光学素子の光学作用面は少なくとも前記基準面に対して対称性を有していることを特徴とする画像表示装置。
【0054】
〔4〕 上記1において、前記位置調整手段は、前記プリズム素子側面に形成された前記基準面に平行なプリズム基準面と、前記保持手段の所定位置に形成されたプリズム当て付け面とからなる摺動機構であることを特徴とする画像表示装置。
【0055】
〔5〕 上記1において、前記位置調整手段は、前記第1の方向への並進可動機構と前記基準面に沿った回転機構とを有することを特徴とする画像表示装置。
【0056】
〔6〕 撮像手段と、光学的パワーを有するプリズム素子と、光学的パワーを有するもう1つの光学素子とを備えた撮像光学系を有する撮像装置において、光学系の開口絞り中心を通過し前記撮像手段の撮像面中央に入射する軸上主光線が、前記プリズム素子入射面に第2の方向で入射し、前記プリズム素子で少なくとも1回内部反射し、前記プリズム素子射出面から前記第2の方向とは異なる第1の方向に射出し、前記撮像光学系を連結保持する保持手段が、前記プリズム素子を前記第1の方向及び前記第2の方向を含む基準面に沿って連続的に位置調整可能な位置調整手段を備えていることを特徴とする撮像装置。
【0057】
【発明の効果】
以上の説明のように、本発明によれば、1つのプリズムを動かすことによって光学系の偏心調整とフォーカスシフト調整ができるので、調整を効率良く行うことができる。また、調整機構を単純にすることが可能となるので、鏡枠構造全体を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複数のプリズムからなる光学系が適用される両眼式眼鏡型ディスプレイの使用時の様子を示す斜視図である。
【図2】複数のプリズムからなる光学系が適用される単眼式眼鏡型ディスプレイの使用時の様子を示す斜視図である。
【図3】図2の眼鏡型ディスプレイの内部構成を示す斜視図である。
【図4】表示システムから射出された画像の光線が第1プリズム及び第2プリズム内を通過する様子を示す側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示す分解斜視図と分解正面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の構成による調整の原理を説明するための図である。
【図7】第1の実施形態の変形例の第1プリズムと保持部の組み付け方を説明する図である。
【図8】図7中のX軸とY軸で切った断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態で用いている撮像光学系の一例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の要部を模式的に説明する図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の構成による調整の原理を説明するための図である。
【図12】図9に示した撮像光学系を用いた電子カメラの外観を示す前方斜視図である。
【図13】図9に示した撮像光学系を用いた電子カメラの外観を示す同後方斜視図である。
【図14】図12、図13の電子カメラの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
A、B…対称面
1…両眼式眼鏡型ディスプレイ
1a…本体
1b…側頭保持アーム
1c…イヤホン
2…単眼式眼鏡型ディスプレイ
2a…本体
2b…側頭保持アーム
2c…イヤホン
3…電装基板
4…フレキシブルプリント基板
5…LEDユニット
6…反射型LCD
7…第2プリズム
7a…入射面
7b…反射射出面
7c…第2反射面
8…第1プリズム
8a…入射反射面
8b…第1反射面
8c…透過面
8d…射出面
9…鏡枠
10…鏡枠ユニット
11…保持部
11a…内側側面
11b…取り付け面
11c…孔部
11d…ビス孔
12…当て付け面
12a…ビス孔
13…ワッシャー
14…スペーサー
15…ビス
16…ビス
17…LCDユニット
40…電子カメラ
41…撮影光学系
42…撮影用光路
43…ファインダー光学系
44…ファインダー用光路
45…シャッター
46…フラッシュ
47…液晶表示モニター
48…撮影用対物光学系
49…CCD
52…処理手段
61…記録手段
65…カバー部材
80…第1プリズム
110…保持部
110a…内側側面
110b…孔部
120…当て付け面
180…凸部
180a…ビス孔
190…凹部
201…撮像ユニット
202…光学ユニット
203…開口絞り
204…光学的ローパスフイルター
205…カバーガラス
206…結像面(撮像面)
207…第2プリズム
207a…射出面
207b…入射反射面
207c…反射面
208…第1プリズム
208a…入射面
208b…射出反射面
208c…反射面
210…保持手段
211…第1の調整手段
212…第2の調整手段

Claims (3)

  1. 画像表示手段と、光学的パワーを有するプリズム素子と、光学的パワーを有するもう1つ光学素子とを備え、画像表示手段が表示した画像を眼球網膜上に投影する画像観察光学系を有する画像表示装置において、
    前記画像表示手段の画像表示面中央から出て光学系の射出瞳中心を通過する軸上主光線が、前記プリズム素子入射面に第1の方向で入射し、前記プリズム素子で少なくとも1回内部反射し、前記プリズム素子射出面から前記第1の方向とは異なる第2の方向に射出し、前記画像観察光学系を連結保持する保持手段が、前記プリズム素子を前記第1の方向及び前記第2の方向を含む基準面に沿って連続的に位置調整可能な位置調整手段を備えていることを特徴とする画像表示装置。
  2. 請求項1において、前記保持手段は、前記画像表示手段を前記基準面に沿って連続的に位置調整可能な第2の位置調整手段を備えていることを特徴とする画像表示装置。
  3. 撮像手段と、光学的パワーを有するプリズム素子と、光学的パワーを有するもう1つの光学素子とを備えた撮像光学系を有する撮像装置において、
    光学系の開口絞り中心を通過し前記撮像手段の撮像面中央に入射する軸上主光線が、前記プリズム素子入射面に第2の方向で入射し、前記プリズム素子で少なくとも1回内部反射し、前記プリズム素子射出面から前記第2の方向とは異なる第1の方向に射出し、前記撮像光学系を連結保持する保持手段が、前記プリズム素子を前記第1の方向及び前記第2の方向を含む基準面に沿って連続的に位置調整可能な位置調整手段を備えていることを特徴とする撮像装置。
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