現在、連続乳化工程は公知の工法として一般的に行なわれている。本発明者らも従来よりこの工法にてトナー粒子とするトナー粒子を含んだスラリー液を製造してきたが、本発明はそのような製造技術を基礎として、これをさらに改善したものともいうことができる。
本発明の連続乳化設備の一例を図1に示す。この連続乳化設備としては、後述する[Α油相]、[β油相]、[水相]をそれぞれストックするタンクとして、[α油相]用タンク(001)、[β油相]用タンク(002)、[水相]用タンク(003)を持ち、それら液体を精密に定量連続送液する為のポンプとして送液ポンプ(004)(ロータリーポンプ)を備えている。これらポンプを用いて送液された[α油相]と[β油相]はスタティックミキサー(005)を通過することによりプレ混合され[油相](後述)となる。この[油相]と[水相]は乳化前液投入口(Α)より連続乳化機構内へ投入される。
本発明における連続乳化機構は冷却機(006)と乳化機(007)(パイプラインホモミキサー)及び循環配管部(008)を含む。これらを合わせた容積が滞留部容積と成る。乳化機、分散機などの装置を用いた乳化部に当るのは乳化機(007)(パイプラインホモミキサー)である。乳化前液(乳化状態になる前の有機液相(油相)、これを含む液、水系媒体液)の投入口(Α)より連続乳化機構内の循環配管部(008)へ投入された液、すなわち[油相](有機液相)と[水相]は、乳化機(007)(パイプラインホモミキサー)により1パス目の剪断を受ける。乳化機を出て循環配管部(008)、冷却機(006)を通った液は乳化完了液排出口(Z)に達する。ここで、液の一部は循環配管部(008)より排出され、乳化完了液回収タンク(009)へと送られる。この液の一部が排出される原理は、滞留部への乳化前液の連続的な投入によりスラリー液が滞留部より溢れ出すことによる。排出されなかった残りの液は、循環配管部(008)、冷却機(006)を通った後、循環流量を調整する目的として設置している流量調整バルブ(010)を通過した後、再び乳化前液投入口(Α)へ至る。ここでは、常時新たに[油相]と[水相]が投入され乳化機(007)(パイプラインホモミキサー)にて、前記排出されなかった残りの液に対しては2パス目の剪断、新たに投入された[油相]と[水相]に対しては1パス目の剪断を受ける。この一連の動作を永続的に繰返す結果、違うパス回数のトナー粒子が、乳化条件によって決定される割合でそれぞれ存在する乳化完了液として、定常的に乳化完了液回収タンク(009)へと送られる。この説明から理解されるように、本明細書における「スラリー液」とは、トナー用組成物の有機液相(少なくとも樹脂、着色剤を有機溶剤に溶解又は分散してなる溶解物又は分散物の有機液相、又は少なくとも着色剤を液状モノマーに溶解及び分散してなるトナー用組成物の有機液相で、「油相」とも換言されている)が水系媒体中で乳化処理された液を意味する。
すなわち、樹脂や着色剤からなるトナー組成物を有機溶剤(液状モノマーを含む)に溶解または分散してなる有機液相を水系媒体とともに連続乳化工程内に連続的に投入し、連続乳化工程内に設置された乳化機、分散機などの装置(以下、便宜上「乳化機」として説明する)の例えば回転羽などの回転部と固定部との狭小隙間に起こる大きな剪断力によってトナー組成物を水系媒体中に微小油滴として分散させる(乳化)。この分散されたトナー粒子は滞留部内をある時間循環し、その間にまた幾度もの乳化機による剪断を受け、その後排出部より排出され乳化完了液となる。排出口から排出される液量は、連続乳化工程内に投入される液量と等しくなる。すなわち、滞留部からの溢れ出しの仕組みを用いている。
トナー粒子が連続乳化工程内に投入されてから排出されるまでに乳化機によって剪断を受ける回数、すなわち乳化部を通過する回数(パス回数)は各々のトナー粒子によって違ったものとなる。一般にパス回数が少ないトナー粒子ほど粒径が大きくなり、パス回数を重ねるにつれて次第に小さくなる。しかし、ある程度の小ささになった粒子にさらにパス回数を重ねていくと、トナー粒子同士の凝集現象が発生し、逆にトナー粒子粒径自体は大きくなってしまう。つまりは、トナー粒子粒径には最適パス回数範囲が存在する。このような現象により、パス回数が少ない状態で滞留部から溢れ出して乳化完了となったトナー粒子や与えられたパス回数が過剰な状態で滞留部から溢れ出して乳化完了となったトナー粒子は、他のパス回数が適切に与えられたのち滞留部から溢れ出して乳化完了となったトナー粒子よりも大きな粒径を持つ。この低パス回数トナー粒子や過剰パス回数トナー粒子の存在により、トナー粒子全体の粒径の均一化状態の指標となるDv/Dn値が悪くなる。後述するが、本発明においては、トナー粒子の均一化状態阻害因たる粗大粒子の乳化完了液中での存在割合は、低パス回数トナー粒子の方が過剰パス回数トナー粒子よりも非常に大きい。すなわちDv/Dn値に与える影響も低パス回数トナー粒子の方が大きい。
乳化完了となる排出液の中にあるトナー粒子について、各々のトナー粒子がどれだけのパス回数を受けているかをまずは連続乳化機構を1個のみ使用した単段連続乳化機構〔図1〕についてシミュレーションした。その結果を〔図2〕に示す。また、このようなシミュレーション結果の妥当性は、本発明において、プロセスが定常的な連続乳化段階に達する前の立上り期間を模擬的に作り出し、この模擬的立上り期間中に、被乳化試料を一定時間毎にサンプリングし、この試料について測定、評価した結果と比較することにより判断された(図5の場合も同様)。
〔図2〕に示されるような結果のための計算の基礎について〔図3〕を用いて説明する。〔図3〕は単段連続乳化機構の乳化部、循環部、これらを含む滞留部を模式的に描いたものである。循環部に相当する配管部分にて配管の太さが各々違っているが、これは流量の増減を視覚的に判り易くする為、誇張したものである。単段連続乳化機構内へ新たに供給されて来る乳化前液(乳化状態になる前の有機液相、これを含む液、水系媒体液)の合計流量をF〔kg/min〕、単段連続乳化機構内乳化部にて乳化される粒子及び乳化前液が該乳化部を通過する流量をQ〔kg/min〕とし、乳化される粒子が単段連続乳化機構外へ排出されるまでの間に該乳化部を通過する回数(パス回数)をn〔回〕とする。乳化完了液排出口(Z)からは、乳化前液投入口(Α)から乳化前液が供給される為、溢れ出しの原理でF〔kg/min〕にて排出される。よって、乳化完了液排出口(Z)と乳化前液投入口(Α)の間の循環部内区間にて、理論的に流量(Q−F)〔kg/min〕で循環中のスラリー液に、乳化前液投入口(Α)より流量F〔kg/min〕にて新たに乳化前液が連続的に投入されていく。投入後の[既に循環部内を循環中のスラリー液と新たに投入された乳化前液の混合液]は充分に均一状態になるとする。このとき、[既に循環部内を循環中のスラリー液と新たに投入された乳化前液の混合液]に占める[乳化前液]の割合は、F/Q〔−〕となる。この混合液内にF/Q〔−〕の割合で占める[乳化前液]が乳化部である乳化機(007)(パイプラインホモミキサー)を1回通過することにより1パス目の剪断を受ける。混合液内で(1−F/Q)〔−〕の割合を占める[既に循環部内を循環中のスラリー液]も同様に受けたパス回数を1増やす。その後混合液は乳化完了液排出口(Z)近辺に流れてきて流量F〔kg/min〕にて溢れ出すが、1回乳化機を通過することにより1パス目の剪断を受けた乳化前液は、溢れ出した液中にF/Q〔−〕の割合で含まれている。残りの(1−F/Q)〔−〕の割合で溢れ出した乳化完了液中に存在しているものは、[既に循環部内を循環中だったスラリー液]である。つまりは、溢れ出した乳化完了液中に含まれる1パス目剪断のみを受けた、トナー粒子の割合はF/Q〔−〕である。
この時、乳化完了液排出口(Z)で溢れ出さず循環部をさらに循環することになる1パス目剪断のみを受けたトナー粒子の循環液中存在割合もF/Q〔−〕である。この排出口から乳化前液投入口(A)までの間のスラリー液流量は理論上(Q−F)〔kg/min〕である。このスラリー液と新たに乳化前液投入口(Α)より流量F〔kg/min〕で投入される乳化前液との混合液中に存在する1パス目剪断のみを受けたトナー粒子の割合は、{F/Q * (Q−F)}/{(Q−F)+F}〔−〕となり、この式を整理するとF/Q * (1−F/Q)〔−〕となる。この混合液が上記と同様に、また1回、乳化機(007)(パイプラインホモミキサー)を通過し、1パス分剪断回数を増やした後、乳化完了液排出口(Z)で流量F〔kg/min〕にて排出される。ここで排出液中に含まれる2パスだけ剪断を受けたトナー粒子の排出液中存在割合は1パス目の循環部残割合(1−F/Q)〔−〕内において、2パス目で排出される割合F/Q〔−〕である。即ち2パスだけ剪断を受けた粒子が排出液中に占める割合はF/Q * (1−F/Q)となる。同様に3パスだけ剪断を受けた粒子が排出液中に占める割合は1パス目の循環部残割合(1−F/Q)〔−〕内の2パス目の循環部残割合(1−F/Q)〔−〕内において、3パス目で排出される割合F/Q〔−〕である。即ち同様に3パスだけ剪断を受けた粒子が排出液中に占める割合はF/Q * (1−F/Q) * (1−F/Q)となる。
以上のシミュレーションをパス回数を増やして繰り返していくと結果的に、乳化部を1つ、循環部を1つ持つ連続乳化機構からなる連続乳化工程において、パス回数n〔回〕にて排出された粒子割合Wn〔%〕は下記式(3)となる。
(ここで、式中の右辺において乗数としてある「n」は、該単段連続乳化機構乳化部の通過回数n〔回〕を表わす。左辺においてWの右下添字としてある「n」は、該単段連続乳化機構乳化部の通過回数目n〔回〕目を表わす。)
以上のような基本概念をもとにQ、Fの現実的な適正値範囲の中で検討を重ねて〔図2〕を得たわけだが、このグラフを見ると判るとおり、排出口から溢れ出す乳化完了液において、パス回数が少ないトナー粒子ほど多い割合を占める。このパス回数が少ない粒子は前述の通り粒径が大きく、乳化完了液のDv/Dnを悪化させる大きな要因となる。この低パス回数粒子の存在割合をどの程度まで抑えれば、Dv/Dnが1.00に近づき、シャープな粒度分布を持つトナーが得られるかを鋭意検討した。
またこの低パス回数トナー粒子の低減を、連続乳化を行なう条件面だけでなく、連続乳化機構の改良によってさらに高められないかの検討も行なった。その結果、連続乳化機構を複数個(ここではk個とおく)並べたk段連続乳化機構を用いるとさらに低パス回数トナー粒子を低減できることが判明した。〔図4〕において、前述〔図1〕で説明した単段連続乳化機構を2個直列連結したk=2の時の2段連続乳化機構を示し、第1段目連続乳化機構、第2段目連続乳化機構として用いている。第1段目連続乳化機構にて乳化されたスラリー液の一部は第1段目スラリー液排出口(B)より排出液として流量1F〔kg/min〕にて排出され、第2段目スラリー液投入口(C)より流量2F〔kg/min〕にて第2段目連続乳化機構へ投入される。これは乳化前液投入口(Α)より流量1F〔kg/min〕にて新たに乳化前液が連続的に投入されていくためであり、このとき、1F=2Fが成り立つ。第2段目乳化機構にて乳化されたスラリー液の一部は乳化完了液排出口(Z)で排出され、乳化完了液として乳化完了液回収タンク(009)へと送られる。
〔図4〕を模式的に表した〔図6〕においてもk=2の時の2段連続乳化機構を示し、そのパス回数シミュレーション計算を基礎に、その発展形としてk段連続乳化機構そのパス回数シミュレーション計算も以下記述する。k=2の時の2段連続乳化機構についてパス回数シミュレーションを行なった結果は〔図5〕に示す。〔図6〕は、〔図3〕と同様、2段連続乳化機構のそれぞれの乳化部および滞留部を模式的に描き、配管の太さ誇張により流量の増減を視覚的に判り易くしている。
〔図6〕において、2段連続乳化機構の第1段目連続乳化機構へ乳化前液投入口(Α)より投入される乳化前液の流量を1F〔kg/min〕、第2段目連続乳化機構へ第2段目スラリー液投入口(C)より投入されるスラリー液の流量を2F〔kg/min〕、第1段目連続乳化機構の乳化部内にて乳化されるスラリー液及び乳化前液が該乳化部を通過する流量を1Q〔kg/min〕、第2段目連続乳化機構の乳化機内にて乳化されるスラリー液が該乳化部を通過する流量を2Q〔kg/min〕とし、乳化される液が2段連続乳化機構外へ乳化完了液排出口(Z)より排出されるまでの間に第1段目連続乳化機構乳化部を通過する回数をn1〔回〕、第2段目連続乳化機構乳化部を通過する回数をn2〔回〕とする。(ただし、n1,n2は自然数である。)なお、前述の通り、各段連続乳化機構において[投入量]=[排出量(溢れだし量)]となるのは自明であり、2段連続乳化機構では1F=2F〔kg/min〕が成り立つ。
また、第1段目連続乳化機構乳化部の通過回数と第2段目連続乳化機構乳化部の通過回数を合わせた合計通過回数をt回(=n1+n2)とする。
2段連続乳化機構においては、第1段目乳化部で1パス目、第2段目乳化部で2パス目と、計2パスは必ず乳化機による剪断を受けている。
2段連続乳化機構から排出される、つまりは第2段目連続乳化機構の乳化完了液排出口(Z)から溢れ出す乳化完了液の中に含まれる3パスのみ剪断を受けたトナー粒子の存在割合σ12W3〔%〕の計算に際しての基本的考え方を例として以下に記す。第2段目連続乳化機構に第2段目スラリー液投入口(C)より投入されるスラリー液は必ず第1段目乳化部にて1パス以上のパス回数を受けている。第2段目連続乳化機構乳化部の乳化完了液排出口(Z)で、3パスのみの剪断しか受けず溢れ出してきたトナー粒子が第2段目連続乳化機構乳化部の乳化完了液排出口(Z)からの排出液に占める割合σ12W3〔%〕は、第1段目連続乳化機構乳化部で1パスのみ剪断を受け第1段目スラリー液排出口(B)より排出された(n1=1)もののうち第2段目連続乳化機構乳化部で2パスのみ剪断を受け排出された(n2=2)ものが、第2段目連続乳化機構乳化部の乳化完了液排出口(Z)よりの排出液に占める割合と、第1段目連続乳化機構乳化部で2パスのみ剪断を受け第1段目スラリー液排出口(B)より排出された(n1=2)ものの内、第2段目連続乳化機構乳化部で1パスのみ剪断を受け排出された(n2=1)ものが、第2段目連続乳化機構乳化部の乳化完了液排出口(Z)よりの排出液に占める割合とを足し合わせたものである。流量(2Q− 2F)〔kg/min〕で既に第2段目連続乳化機構循環部内を循環中のスラリー液に、流量2F(=1F)〔kg/min〕で新たに第2段目スラリー液投入口(C)より第1段目連続乳化機構排出液が連続的に投入されていく。投入後の[既に第2段目連続乳化機構循環部内を循環中のスラリー液と新たに投入された第1段目連続乳化機構排出液の混合液]は充分に均一状態になるとする。このとき、[既に第2段目連続乳化機構循環部内を循環中のスラリー液と新たに投入された第1段目連続乳化機構排出液の混合液]に占める[第1段目連続乳化機構排出液]の割合は、2F/2Q〔−〕となる。[第1段目連続乳化機構排出液]中で第1段目連続乳化機構乳化部により1パスのみ剪断を受けたトナー粒子は第1段目連続乳化機構排出液に対し1W1(=1F/1Q*100)〔%〕存在し、2パスのみ剪断を受けたトナー粒子は第1段目連続乳化機構排出液に対し1W2(=1F/1Q*(1−1F/1Q)*100)〔%〕存在する。第1段目連続乳化機構乳化部で1パスのみ剪断を受けたトナー粒子が第2段目連続乳化機構乳化部にて2パスのみ剪断を受け排出される際の、乳化完了液中に含まれる割合は(1W1/100)*(2F/2Q*(1−2F/2Q)*100)〔%〕となる。第1段目連続乳化機構乳化部で2パスのみ剪断を受けたトナー粒子が第2段目連続乳化機構乳化部にて1パスのみ剪断を受け排出される際の、乳化完了液中に含まれる割合は(1W2/100)*(2F/2Q*100)〔%〕となる。この2つの式を足し合わせたものが第2段目連続乳化機構乳化部の乳化完了液排出口(Z)にて3パスのみの剪断しか受けず溢れ出してきたトナー粒子が第2段目連続乳化機構乳化部の乳化完了液排出口(Z)からの排出液に占める割合σ12W3〔%〕となる。
k段連続乳化機構から排出される、つまりは第k段目連続乳化機構の乳化完了液排出口(Z)から溢れ出す乳化完了液の中に含まれる各段目連続乳化機構乳化部の通過回数を合わせた合計通過回数をt回(=n1+n2+…+nk、但しn1,n2,…,nkは全て自然数)について、tパスのみ剪断を受けたトナー粒子の存在割合σ1kWt〔%〕の計算に対しても上記考え方を発展させて用いる。つまりは、σ1kWt〔%〕はtについての全てのn1、n2、…、nkの組み合わせにおける1kWt〔%〕の値を足し合わせたものである。例として、あるn1、n2、…、nkの組み合わせにおける1kWt〔%〕の計算方法をしめす。第1段目連続乳化機構乳化部通過回数をn1回で通過した時の第1段目連続乳化機構排出液に対する存在割合は1Wn1〔%〕(=1F/1Q*(1−1F/1Q)n1−1*100)で表される。同様に、第2段目連続乳化機構乳化部通過回数をn2回で通過した時の第2段目連続乳化機構排出液に対する存在割合は2Wn2〔%〕(=2F/2Q*(1−2F/2Q)n2−1*100)で表される。第k−1段目のそれはk−1Wn(k−1)〔%〕(=k−1F/k−1Q*(1−k−1F/k−1Q)n(k−1)−1*100)と表される。よって、第k段目の乳化完了液排出口(Z)からの排出液のうち、あるn1、n2、…、nkの組み合わせによる合計乳化部通過回数t回であるものが占める割合は(1Wn1/100)*(2Wn2/100)*…*(k−1Wn(k−1) /100)*(kF/kQ*(1−kF/kQ)nk−1*100)である。
以上のシミュレーションに基づく計算式として下記式(1)及び式(2)を表す。式(2)は式(1)中の右辺項内のWについての計算式を表し、右辺においてF、Qの各左上添字「p」は、それぞれ前記v乳化機構の番号(第p段目)を表わし、乗数としてある「np」は、第p段目の連続乳化機構内の通過回数、np〔回〕を表わす。左辺においてWの左上添字「p」は、第p段目連続乳化機構における値であることを示し、Wの右下添字「np」は第p段目連続乳化機構滞留部での通過回数np〔回〕を表わす。)
式(2)は、上記のような内容をよく表わしている。つまり、式(2)の右辺において、(1Wn1/100)は、(2F/2Q)×[1−(2F/2Q)n2−1×100]の係数(但し定数ではない)であり、かつ、かなり小さい値(少数点以下の桁)である。換言すれば、(2F/2Q)×[1−(2F/2Q)n2−1×100]に基く左辺の値(12Wt)を減少させるための係数であり、減少の幅は、(2F/2Q)×[1−(2F/2Q)n2−1×100]の値が小さいほど(第2段目連続乳化機構でのパス回数が小さいほど)大きくなり、また、[1−(2F/2Q)n2−1×100]の値が同じであれば、(1Wn/100)の値が小さいほど(第1段目連続乳化機構でのパス回数が小さいほど)大きくなる。
(ここで、式(1)中の右辺においてW、F、Qの各左上添字「1、2、…、k−1、k」は、それぞれ前記連続乳化機構の番号(第1、2、…、k−1、k段目)を表わし、Wの右下添字としてある「n1、n2、…、n(k−1)」は、それぞれ第1、2、…、k−1、k段目連続乳化機構の乳化部内の通過回数目であるn1、n2、…、n(k−1)〔回〕目、を表し、乗数としてある「nk」は、第k段目の連続乳化機構内の通過回数、nk〔回〕を表わす。左辺においてWの左上添字「1k」は、1〜k段目まで連続乳化機構を連らねたk段連続乳化機構であることを表わし、Wの右下添字「t」は該第1〜k段目まで連続乳化機構を連らねた結果、第k段目乳化機構滞留部から排出されるまでの加算通過回数目、(t=n1+n2+…nk)〔回〕目を表わす。)
以上の基礎によるシュミレーションをもとに2段連続乳化機構において〔図5〕を得たわけだが、このグラフを見ると判るとおり〔図2〕では単段連続乳化機構がパス回数が少ないトナー粒子ほど多い割合を占める分布になっているのに対し、〔図5〕の2段連続乳化機構においては分布曲線が上に凸の状態を示している。この為、本発明によれば、パス回数が少ないトナー粒子の乳化完了液中存在割合を飛躍的に減らすことが可能となった。
さらには、上記の2段連続乳化機構の考え方を発展させ、連続乳化機構をさらに多く連ねたk段連続乳化機構において行ったシミュレーションでは、段数を重ねる(kが大きくなる)ほど分布がさらに寄って分布幅が狭くなり、パス回数の均一化がより顕著になることが判明した。この結果により、連続乳化機構において段数を重ねる(kが大きくなる)ほど更なる低パス回数トナー粒子の排出防止効果が得られることが確認できた。
実際、実験により確認できた低パス回数粒子の含有割合としては、k段連続乳化機構の乳化部通過回数6回までのトナー粒子排出割合加算和Σ1kW6(=σ1kW2+σ1kW3+…+σ1kW6)が、1/k≦Σ1kW6≦30/k〔%〕であること、加えてk段連続乳化機構の乳化部通過回数3回までのトナー粒子排出割合の前記加算和Σ1kW3(=σ1kW1+σ1kW2+σ1kW3)が0.5/k≦Σ1kW3≦15/k〔%〕であることが好ましいことが分かった。
また、同様に単段連続乳化機構の乳化部通過回数6回までのトナー粒子排出割合加算和ΣW6(=W1+W2+…+W6)が、1≦ΣW6≦30〔%〕であること、加えて単段連続乳化機構の乳化部通過回数3回までのトナー粒子排出割合の前記加算和ΣW3(=W1+W2+W3)が0.5/k≦ΣW3≦15/k〔%〕が好ましいことが分かった。
低パス回数のトナー粒子は径が大きくDv/Dnに悪影響を及ぼすので、例えば、連続乳化工程内に投入する液量を抑えたりとか、滞留部の容積を大きくしたりとかの手段を用いて、単純に液全体としてのパス回数を増やせば良いと思うかもしれないが、そうではない。パス回数を増やし過ぎると、液中に小さく分散されたトナー粒子同士の凝集が発生し、逆に粒子径が大きくなってしまう。つまりは適切なパス回数が存在する。そのパス回数について、本発明においては、乳化機通過平均回数という概念を用いて適切な範囲を設定する。単段連続乳化工程内へ供給される乳化前液の合計流量をF〔kg/min〕としたとき、全粒子の乳化機通過平均回数NAV〔回〕はNAV=Q/Fと表わされる。またパス回数を増やすことはすなわち投入量を減らすことになり、生産量の低減に繋がる。この面からも、乳化機通過平均回数の上限、乳化完了液中の低パス回数粒子存在割合の下限が制限される。
同様にk段連続乳化機構においては、k段連続乳化機構内の第1段目連続乳化機構へ供給される乳化前液の合計流量を1F〔kg/min〕、第2段目連続乳化機構へ供給される第1段目連続乳化機構からの排出液流量を2F〔kg/min〕、…、第k段目連続乳化機構へ供給される第k−1段目連続乳化機構からの排出液流量をkF1〔kg/min〕とした場合、1F=2F=kFが成り立ち、各段目乳化機構単独の乳化機通過平均回数1NAV、2NAV、…kNAV〔回〕は1NAV=1Q/1F、2NAV=2Q/2F、…、kNAV=kQ/kFと表わされ、各段乳化機構の合計乳化機通過平均回数1kNAV〔回〕=1NAV+2NAV+…+kNAVと表わされる。
実験の結果、k段連続乳化機構ではpNAV全てにおいて6/k〔回〕以上であり、k段連続乳化機構において各段連続乳化機構の合計乳化部通過平均回数1kNAV〔回〕=1NAv+ 2NAv…+ kNAvは6≦1kNAV≦100であることが好ましいことが分かった。
同様に単段連続乳化機構においては6≦NAV≦100であることが好ましいことが分かった。
k段連続乳化機構において、第p段目連続乳化機構の循環部と乳化部を合わせた滞留部容積に満たされるスラリー液量pV〔kg〕について、均一な粒径のトナー粒子を作るには各段のスラリー液量pV〔kg〕の最大と最小の差が10〔kg〕以下であることが好ましい。
連続乳化機構乳化部乳化機の乳化攪拌羽先端周速は、均一な粒径のトナー粒子を作るには10〜24〔m/sec〕が好ましく、またk段連続乳化機構において、各段の周速の最大と最小の差が0〜10〔m/sec〕の範囲内であることが好ましい。
これらの関係式を用いてある一定の範囲内で乳化を行なうことにより、Dv/Dnを悪化させる、低パス回数しか受けていない大粒径トナー粒子の発生を防ぎ、且つ、Dv/Dnを悪化させる、過剰パス回数によるトナー粒子同士の凝集も防ぐことができる。結果として、小粒径で粒度分布が均一化されたトナーを得ることができる。
連続乳化機構をk個連ねたk段連続乳化機構は1個だけの連続乳化機構に比べ設備コストは増加するが、液投入量すなわち乳化完了液の生産量はk倍以上となり、生産能力の大幅な向上が可能となる。加えて上記のように低パス回数粒子の排出割合も減らせる為、品質面でのメリットも大幅に向上する。
本発明に用いる乳化機としては公知の様々な機器が適用できる。例えば、ウルトラタラックス(IKΑ社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(特殊機化工業(株)製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKパイプラインホモミクサー、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工(株)製)等の連続式乳化機、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)等のバッチまたは連続両用乳化機等が挙げられる。
連続式乳化機に関しては、循環配管を用いて、乳化機内容積と循環配管内容積を合わせて滞留部容積とする。またバッチ式乳化機においても、液を投入するストックタンクをオーバーフロー形式にすることにより、ストックタンク容積を滞留部容積とした連続乳化機構を構築できる。
トナーの体積分布から求めた体積基準の体積平均粒径(Dv)は、小さい方が細線再現性を向上させることができるため、10μm以下が好ましい。しかし、粒径が小さくなるに連れてクリーニング性が低下する。そのため、小さくとも3μm以上であることが好ましい。特に、2μm以下のトナーが20%以上存在すると、磁性キャリア又は現像ローラの表面に現像されにくい微小粒径のトナー粒子が多くなるために、その他のトナー粒子における磁性キャリア又は現像ローラとの接触・摩擦が不十分となり逆帯電性トナー粒子が多くなり、地肌汚れが生じ画像品位が低下する。
また、トナーの体積平均粒径(Dv)を個数分布から求めた個数基準の個数平均粒径(Dn)で除した値(Dv/Dn)で表わされる粒度分布は1.05〜1.25範囲であることが好ましい。粒径分布をシャープにすることで、トナー帯電量分布が均一になり、地肌かぶりを少なくすることができる。Dv/Dnが1.25を越えるとトナーの帯電量分布も広くなるために高品位な画像を得るのが困難になる。ここで示されるトナー粒子の粒径は、コールターカウンターマルチサイザー(コールター社製)を用いて、測定するトナー粒子の粒径に対応させて測定用穴の大きさが50μmのアパーチャーを選択して用い、50,000個の粒子の粒径の平均を測定することによって得られた。
本発明に用いられる樹脂としてはスチレン−アクリル樹脂、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂など通常のトナー用に用いられる樹脂であればどのようなものでも適用可能である。特に定着性の観点からフルカラー画像の再現にはポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、ポリエステル樹脂中に酸、アルコールのモノマーユニットに含まれる官能基とエステル結合以外の結合基が存在したり、またポリエステル樹脂中に構成の異なる樹脂成分が共有結合、イオン結合などで結合した状態である、変性ポリエステル樹脂が好ましい。
例えば、ポリエステル末端をエステル結合以外のもので反応させたもの。具体的には末端に酸基、水酸基と反応するイソシアネート基などの官能基を導入し、活性水素化合物とさらに反応させ末端を変性したり伸長反応させたものも含まれる。
さらに活性水素基が複数存在する化合物であればポリエステル末端同士を結合させたものも含まれる(ウレア変性ポリエステル、ウレタン変性ポリエステルなど)。
また、ポリエステル主鎖中に二重結合などの反応性基を導入し、そこからラジカル重合を起こして側鎖に炭素−炭素結合のグラフト成分を導入したり二重結合同士を橋かけしたものも含まれる(スチレン変性、アクリル変性ポリエステルなど)。
また、ポリエステルの主鎖中に構成の異なる樹脂成分を共重合させたり末端のカルボキシル基や水酸基と反応させたもの。例えば末端がカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基によって変性されたシリコーン樹脂と共重合させたものも含まれる(シリコーン変性ポリエステルなど)。
ウレア変性ポリエステル樹脂(i)としては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(Α)とアミン類(B)との反応生成物などが挙げられる。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(Α)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合生成物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させたものなどが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、ジオール(1−1)単独、またはジオール(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールΑなど);ビスフェノール類(ビスフェノールΑ、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールZなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPΑ、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、ジカルボン酸(2−1)単独、およびジカルボン酸(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(Α)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
イソシアネート基を有するプレポリマー(Α)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、および前記アミンB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、ジアミンB1、および、ジアミンB1と少量の3価以上のポリアミンB2の混合物である。
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(Α)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx](1級又は2級アミン)nの当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア変性ポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
本発明のウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
本発明においては、前記ウレア変性ポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、未変性ポリエステル(ii)をトナーバインダー成分として含有させることもできる。未変性ポリエステル(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は未変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。したがって、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比(i)/(ii)は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
本発明において、トナーバインダーとなるこれらの樹脂ののガラス転移点(Tg)は通常50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。トナーバインダーの貯蔵弾性率(G’)としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。トナーバインダーの粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
本発明の着色剤としては公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、Α、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラセンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトポン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
本発明で用いる着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
本マスターバッチはマスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練してマスターバッチを得ることができる。この際着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。またいわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには三本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
また、トナーバインダー、着色剤とともに離型剤としてワックスを含有させることもできる。本発明のワックスとしては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。本発明のワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
本発明のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンPー51、含金属アゾ染料のボントロンSー34、オキシナフトエ酸系金属錯体のEー82、サリチル酸系金属錯体のEー84、フェノール系縮合物のEー89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTPー302、TP一415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRΑー901、ホウ素錯体であるLRー147(日本カ一リット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
本発明において帯電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。より好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤、離型剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
これらの樹脂、着色料、さらには必要に応じて添加される帯電制御剤等を混合分散させる。この混合分散には通常の攪拌による混合機、より好ましくは高速回転体とステータを有すホモジナイザー、高圧ホモジナイザーの他ボールミル、ビーズミル、サンドミルといったメディアを用いた分散機など内容物が充分に均一分散される装置が適する。
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
乳化機を用いて、これら樹脂、着色料等の均一分散体のトナー粒子を水系媒体中に作成する。この乳化の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。回転羽根を有する乳化機としては、特に限定されるものではなく、乳化機、分散機として一般に市販されているものであれば使用することができる。例えば、ウルトラタラックス(IKΑ社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(特殊機化工業(株)製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKパイプラインホモミクサー、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工(株)製)等の連続式乳化機、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)等のバッチまたは連続両用乳化機等が挙げられる。
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。乳化時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合(例えばフィード又は乳化のうち一方が連続式で他方のみ間歇式のとき)は、通常0.1〜5分である。乳化時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは10〜98℃である。高温なほうが、樹脂、着色料等の均一分散体の粘度が低く、乳化が容易なことが多い点で好ましい。
この樹脂、着色料等の均一分散体内にて、樹脂が伸長または架橋反応を起こし、トナーバインダーとなる。
トナーバインダーの重合反応例について述べる。樹脂、着色料等の均一分散体内では、プレポリマー(Α)とアミン類(B)が反応し、トナーバインダーとなるウレア結合で変性されたポリエステルを得る。プレポリマー(Α)とはポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下で150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して得られる水酸基を有するポリエステルに4、0〜140℃にてポリイソシアネート(3)を反応させたイソシアネート基を有するものである。ポリイソシアネート(3)を反応させる際およびプレポリマー(Α)とアミン類(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
伸長または架橋反応時間は、プレポリマー(Α)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
また、トナー組成物の油相の粘度を低くし、乳化可能とするために、変性ポリエステル(i)やプレポリマー(Α)が可溶の揮発性溶剤を使用する。該溶剤は沸点が100℃未満の揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。その他アルコール、水等の水性媒体に溶解可能な溶剤を併用することによりトナー形状をさらに調節することもできる。トナー組成物100部に対する溶剤の使用量は、通常10〜900部である。
トナー粒子は、水系媒体中で例えば上記の様にイソシアネート基を有するプレポリマー(Α)とその他の樹脂、着色料等のトナー組成物からなる分散体を、アミン類(B)と反応させて形成しても良いし、もしくはあらかじめ製造した変性ポリエステル(i)を用いても良い。
水系媒体中にトナー粒子を安定させて作るため、分散剤を用いることもある。使用できる分散剤の種類としては様々な物が挙げられる。以下、分散剤の種類について述べる。
固体微粒子分散剤は水系媒体中で水に難溶の固体状で存在するものであり、平均粒径が0.01から1μmの微粒子のものが好ましい。
無機の固体微粒子分散剤の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
さらに好ましくはリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、コロイド状酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いることができる。特に水中(又は水混和性溶媒を含む水中)でリン酸ナトリウムと塩化カルシウムを塩基性下反応させて合成したヒドロキシアパタイトが好ましい。
有機物の固体微粒子分散剤としては低分子有機化合物の微結晶や高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるメタクリル酸等のカルボキシル基を有すモモノマーと共重合されたポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
固体微粒子分散剤を水中で調整後、リン酸三カルシウム塩などの酸に溶解可能な無機物質はあらかじめ塩酸等を必要量加え、部分的に溶解しておく。酸の添加量は無機物質を完全に溶解できる量の0.01%から10%が好ましく、より好ましくは0.1%から5%である。
カルボキシル基を有す(メタ)アクリル酸と共重合された高分子微粒子などのアルカリに溶解可能なものを用いた場合は、水酸化ナトリウム等の塩基を必要量加え、部分的に溶解しておく。アルカリの添加量は無機物質を完全に溶解できる量の0.01%から10%が好ましく、より好ましくは0.1%から5%である。
その他、乳化重合時併用もしくは後で加える分散剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αーオレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやNーアルキルーN,Nージメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
またフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3一[オメガーフルオロアルキル(C6〜C11)オキシ〕ー1ーアルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3ー[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)一Nーエチルアミノ]ー1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、NープロピルーN一(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)ーNーエチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
商品名としては、サーフロンSー111、S−112、Sー113(旭硝子社製)、フロラードFCー93、FCー95、FCー98、FCーl29(住友3M社製)、ユニダインDS一101、DSーl02(タイキン工莱社製)、メガファックFーll0、Fーl20、F一113、Fー191、Fー812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF一102、l03、104、105、112、123Α、123B、306Α、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは三級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6一C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンSーl21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDSー202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEFーl32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF一300(ネオス社製)などが挙げられる。
高分子系保護コロイドにより分散液滴の安定化を調節しても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、αーシアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β一ヒドロキシエチル、メタクリル酸β一ヒドロキシエチル、アクリル酸βーヒドロキシプロビル、メタクリル酸β一ヒドロキシプロピル、アクリル酸γーヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ一ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3ークロロー2一ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、Nーメチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、残りの固体微粒子分散剤を溶解洗浄除去するほうがトナーの帯電面等の点から好ましい。
このような乳化によりトナーを作るが、ときにできあがったトナーの粒度分布幅が想定よりも広い(Dv/Dnが悪い)ことがある。本発明では、乳化時の条件に制限を加えることにより、Dv/Dnの悪化を防いでいるが、通常はその広い粒度分布幅を持ったトナーを所望の粒度分布幅にするため、乳化工程以降の例えば洗浄や乾燥等の工程を経させた後、所望のシャープな粒度分布になるよう湿式もしくは乾式分級する。その際の分級機としてはサイクロン、デカンター、遠心分離機、エルボージェット等を用いている。そこで得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることもある。
乳化にてトナーを作った後もしくはさらに湿式分級も行なった後、トナー粒子表面もしくは内部に含有されている前記有機溶剤や分散剤など、トナーとするために不要な物質を取り除く洗浄作業が行なわれる。洗浄水として使用するのは低電気伝導度を有するイオン交換水が好ましい。また、これらの不要な物質を洗浄除去するために、洗浄水中に酸やアルカリを混入することもある。
さらに工程中で凝集したトナー粒子を元の微粒子に解砕する工程を経た後、篩にかけて残存する粗粒子を取り除く工程を経る。
このようにして得られた乾燥後のトナーの粉体を帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、クリーニング性向上剤などの外添剤とともに混合し、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で外添剤等を固定化、融合化させ、複合体粒子をつくる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5mμ〜2μm(2nm)であることが好ましく、特に5mμ〜500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような流動化剤は表面処理を行なって、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、Dvが0.01から1μmのものが好ましい。
本発明のトナーを2成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いれば良く、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100重量部に対してトナー1〜10重量部が好ましい。磁性キャリアとしては、粒子径20〜200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。また、被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。またポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用できる。また必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。
図7は、本発明のトナーを充填したトナー収納容器(2)を搭載する画像形成装置についての1例を示したものであって、画像形成装置本体内に装着された現像部(1)と、この現像部(1)に補給される本発明のトナーを充填したトナー収納容器(2)と、この両者を接続する現像剤送流手段(3)を示す部分断面図である。
図7において、現像部(1)は、本発明のトナー(D)を収容した本発明のトナー収納容器(2)を搭載した現像ハウジング(4)と、トナー(D)を攪拌混合する第1及び第2の攪拌スクリュー(5)、(6)と、現像ローラ(7)とを有していて、当該現像ローラ(7)が、潜像担持体の感光体(8)に対向して配置されている。感光体(8)は、矢印で示す方向に回転駆動され、その表面に静電潜像が形成される。図中、符号(126)は、接続部材(124)の上にフィルター(125)を介して又は介さず嵌合されたキャップである。感光体(8)の周囲には、図示していない帯電手段、露光手段、転写手段、除電手段、クリーニング手段等、その他の公知のユニットが配置されたものである。
本発明のプロセスカートリッジは、本発明のトナーを使用し、感光体及び現像手段と、、帯電手段、クリーニング手段より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであることを特徴とする。
図8に本発明のプロセスカートリッジを有する画像形成装置の概略構成を示す。
図において、(101)はプロセスカートリッジ全体を示し、(10)は感光体、(20)は帯電手段、(40)は現像手段、(60)はクリーニング手段を示す。このプロセスカートリッジは、複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成する。
また、本発明のトナーはキャリアを使用しない1成分系の磁性トナー或いは、非磁性トナーとしても用いることができる。
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。
(原材料の調整)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30:三洋化成工業製)11部・スチレン138部、メタクリル酸138部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エテレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液]とする。
さらに[微粒子分散液]83部に水990部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7):三洋化成工業製)37部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相]とする。
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールΑエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールΑプロピレンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[低分子ポリエステル]を得た。
冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールΑエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールΑプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリツト酸22部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応させ[中間体ポリエステル]を得た。次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[α油相]を得た。
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行ない、[ケチミン化合物]を得た。
水1200部、カーボンブラック(Printex35、デクサ社製)540部〔DBP吸油量=42ml/100mg、pH=9.5〕、ポリエステル樹脂1200部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕、[マスターバッチ]を得た。
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[低分子ポリエステル]378部、カルナバWΑX11O部、CCΑ(サリチル酸金属錯体E−84:オリエント化学工業)22部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ]500部、酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液]を得た。
[原料溶解液]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、WΑXの分散を行なった。次いで、[低分子ポリエステル]の65%酢酸エチル溶液1324部を加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WΑX分散液]を得た。
[顔料・WΑX分散液]664部、[ケチミン化合物]5.9部を容器に入れ、ディスパザーにて充分に混合し [β油相]を得る。
(使用設備・機器)
本発明を行なうにあたり使用した設備・機器は図1(図3)の単段連続乳化設備及び、図4(図6)の2段連続乳化設備概略図に示した。それぞれの機器の役割は前述のとおりである。
まず、今回の全ての実施例、比較例で共通条件となる、すなわち、図1、図4の設備(装置)において、連続乳化循環配管(008)内に[α油相]と、[β油相]と、[水相]の混合液が送られる過程を説明する。[α油相]用タンク(001)内の[α油相]および[β油相]用タンク内(002)の[β油相]は、それぞれ送液ポンプ(004)(ロータリーポンプ)にてスタテッィクミキサー(005)へ送り込まれる。送液量は[α油相]7.4部に対し、[β油相]を60.4部となるように調整する。ここで充分に混合され一様になったもの([油相]と呼ぶ)は、同様に[水相]用タンク(003)から送り出された[水相]101.6部と合流し連続乳化循環配管(008)内に投入される。
ここで、図5では、合流した[油相]と[水相]は既に連続乳化配管内にて高速循環しているスラリー液と合流し、乳化機(007)(パイプラインホモミキサー;T.K.パイプラインホモミクサー2SL型、特殊機化工業(株)製)にて剪断力を受け、乳化される。このとき、[水相]媒体中に微小な[油相]トナー粒子が存在する乳化状態のスラリー液となる。このスラリー液は乳化機(007)(パイプラインホモミキサー)の排出口側から排出される。この例においては連続乳化機構及び2段連続乳化機構に設置されている全ての乳化機(007)(パイプラインホモミキサー)の回転数は一定値8400rpmとし、全ての滞留容積も12.5〔kg〕で一定とした。また、[α油相]と[β油相]と[水相]の送液量は前記の混合割合にて送液し送液量は条件振りした。これは、[α油相]と[β油相]と[水相]の混合液の送液量は上記液投入量1F、2Fに影響するからである。各段目連続乳化機構における循環流量を条件振りする為、流量調整バルブ(010)を用いて循環配管内流量を調節し、条件振り項目とした。また、液に加えられるせん断エネルギーによる液温上昇を冷却器により抑え、常時23℃を維持した。
(A参考例)及び(A比較例)
単段連続乳化設備(図1に示される)を用いて、循環配管内流量条件、循環配管への投入液量条件を振って実験を行なった。
(B実施例)及び(B比較例)
2段連続乳化設備(図4に示される)を用いて、循環配管内流量条件、循環配管への投入液量条件を振って実験を行なった。この際前述の様に、第1段目乳化機と第2段目乳化機の回転数は一定値8400rpm、第1段目滞留容積と第2段目滞留容積は12.5〔kg〕に統一した。
(評価方法)
以上の実施例、参考例および比較例により得た、それぞれのトナー回収タンク(009)内の乳化完了液に含まれる粒子のDvおよび、Dv/Dnを測定した。粒子のDv及びDv/DnはコールターマルチサイザーIII(コールター社製)を用い、パーソナルコンピューター(IBM社製)を接続し専用解析ソフト(コールター社製)を用いてデータ解析した。Kd値は10μmの標準粒子を用いて設定し、アパーチャカレントはオートマティックの設定で行なった。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NαCl水溶液を調製する。その他に、ISOTON−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、100μmアパーチャーチューブを用いて、2μm以上のトナー粒子の体積、個数を5万カウント測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明に係わるDv及びDnを求めた。Dv/Dnが1.0に近いほど粒度分布がシャープである。
ついで本発明で製造したシャープな粒度分布のトナーの画像特性を評価する為、この混合液を攪拌棒および温度計付の容器に移し、ラウリル硫酸ナトリウムを0.3部加え、30分室温下で攪拌溶解した。ついで30℃、50mmHgの減圧下で溶剤を除去した。各実施例、比較例の乳化完了液にそれぞれ35%濃塩酸を120部加えた後に、濾別、得られたケーキを蒸留水に再分散してろ過する操作を3回繰り返し洗浄した。その後40℃24時間減圧乾燥し粒子を得た。得られた粒子100部に疎水性シリカ0.7部と、疎水化酸化チタン0.3部を加えヘンシェルミキサーにて混合した。これら外添剤処理を施したトナー5部とシリコーン樹脂を被覆した平均粒子径が40μmの銅−亜鉛フェライトキャリア95部からなる現像剤を調製した。帯電量は、トナーの十分な現像性を得ることと逆帯電トナーによる地汚れを防止する為に、絶対値で15〜25(μc/g)程度になるように攪拌時間と速度を調節し、現像剤を作成した。
今回評価した画像特性項目である、細線再現性はこの現像剤を中間転写方式の市販カラー複写機(イマジオカラー5000;リコー社製)の定着オイル部分を除去した改造機に入れ、画像占有率7%の印字率でリコー社製6000ペーパーを用いてランニングを実施して行なった。そのときの初期10枚目の画像と3万枚目の画像の細線部を原稿と比較し、光学顕微鏡で100倍で拡大観察し、ラインの抜けの状態を段階見本と比較しながら5段階で評価した。いずれも ◎ > ○ > ● > △ > × の順に画像品質が高い。特に×の評価は製品として採用できないレベルである。表1に(A参考例)及び(A比較例)を、表2に(B実施例)及び(B比較例)の評価結果をそれぞれ示す。
表1から判る様に、本発明における、低パス回数トナー粒子の乳化完了液中含有率の規格範囲を満たすものは規格外のものに比べて乳化後のDv/Dn値がより1.0に近く、粒度分布がシャープになっていることが解る。低パス回数トナー粒子の乳化完了液中含有率が規格値よりもさらに低い場合、乳化後のDv/Dn値粒度分布ともに悪化の傾向がある。これは、乳化パス回数過大(NAV値が大きい)ため、トナー粒子同士の凝集が起こったためである。これら得られたトナーを用いた画像品質評価では乳化後のDv/Dn値がより1.0に近く、粒度分布がシャープになっている(A参考例)の方が(A比較例)に対して、全般的に良い結果を出している。
2段連続乳化機構を用いた実験結果である、表2(B実施例)及び(B比較例)の評価結果でも、やはり(B実施例)の方が(B比較例)に対して、全般的にDv/Dn値、粒度分布がよく、画像品質評価も良い結果となっている。
連続乳化機構に比べ、2連続乳化機構の方がDv値が小さく、Dv/Dn値が良い結果となっている。これは二連続乳化機構のパス回数分布曲線が〔図5〕に示す様に上に凸の様相を示している為、連続乳化機構のパス回数分布曲線〔図2〕に比べ、全体的なパス回数の分布範囲が集約されていることによる。このため、多くの粒子に比較的均一なパス回数が与えられ、粒径の揃った、かつ低パス回数の粗大トナー粒子が少ないものが得られている。
また、2段連続乳化機構は連続乳化機構を2つ連ねたものだが、その最適(画像品質が良好な条件)の処理量は連続乳化機構のみ比べ2倍以上と成っている。2段連続乳化機構の方が、トナー品質、生産性ともに優れている。