JP4676387B2 - 真空蒸着用原料ユニット、真空蒸着用蒸発源および真空蒸着装置 - Google Patents
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例えば、レンズの防汚層を形成する方法として、パーフルオロポリアルキレンエーテル構造とシロキサン構造とを分子内に有している、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸着源として薄膜を生成する成膜工程を有する薄膜の製造方法が知られている(特許文献1)。
また、形状が精密なプラスチック成形品を生産する場合、その精密な形状を損なうことなく成形金型から成形品を離型することは困難である。例えば、インラインで金型表面に離型剤を塗布する場合、精密な形状を安定的に成形するための金型を得ることが難しく、サブミクロンオーダーの形状制御が必要なプラスチックレンズなどの光学部品等には適用できない。また補助材である離型剤のコストに加えて、金型に離型剤を塗布するための装置、あるいは工数が必要であり、さらに離型剤が製品に付着することが避けられないため、それを除去するための洗浄工程も必要になる。このため、コストおよび環境を悪くする。また、予め金型表面に離型を容易にするDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)やTiN(窒化チタン)系の表面処理を施して離型層を設ける場合がある(特許文献2)。しかし、いずれの離型層も成形品との離型性が不十分であり、成形品を取り出す際に形状を損なうことにより製品歩留まりが低下する。
真空蒸着法は、10-4Pa程度をこえる高真空中で、真空蒸着装置内部に設置された真空蒸着用蒸発源の原料ユニット内に充填した固体または顆粒状の薄膜原料を加熱蒸発させ、この蒸気を薄膜原料に対向配置されて一定の温度に保持された基材表面に堆積させて薄膜を形成する方法である。
真空蒸着法は、高真空下で成膜することにより蒸着時に薄膜となる高分子の構造を変化させることなく高純度な薄膜が高い成膜速度で形成できる。薄膜原料を蒸気とするためには加熱方式が多用され、その加熱方式には、抵抗加熱法、電子ビーム法、レーザ法(レーザブレーション)などがある。
上記真空蒸着法を用いた含フッ素薄膜形成方法として、レンズなど光学部材の表面に防汚性薄膜を形成する方法が開示されている(特許文献3)。
また、ナノインクプリント関連の離型に関しては、離型剤への浸漬、もしくは離型剤の蒸着等によって膜厚数nmの薄膜を形成し、離型膜として使用されている。
また、収納容器内で反応を伴って蒸着材を蒸発させる場合の昇華性物質真空蒸着装置として、蒸着物質を取り囲んで収納する収納容器を備えると共に該収納容器を窒化ほう素または酸化マグネシウムとし、蒸着物質の蒸発面積より断面積の小さいスリット状のノズルを有する蓋を収納容器に設けると共に該蓋を窒化ほう素または酸化マグネシウムとし、該蓋の該ノズルの周囲を囲んで被加熱体を設置すると共に該被加熱体をグラファイトとした真空蒸着装置が知られている(特許文献5)。
また、特に有機ケイ素化合物、フッ素含有有機ケイ素化合物などの有機化合物は長時間の保存後に薄膜形成すると、所定の目的とする薄膜が得られないという問題がある。
また、安定して薄膜が形成できない原因について研究したところ、有機材料である薄膜原料が化学的に活性であり、長時間大気雰囲気の放置により変質してしまうことが分かった。本発明はこのような知見に基づきなされたものである。
本発明の真空蒸着用原料ユニットは、薄膜原料を蒸発させて基材表面に薄膜を形成する真空蒸着装置または真空蒸着方法に用いられる薄膜原料が収納された略円筒アンプル形状の真空蒸着用原料ユニットであって、一回のバッチ処理で使用する上記薄膜原料と共に、該薄膜原料が蒸発するときの突沸を抑制する突沸抑制部材が収納され、不活性ガスまたは乾燥空気と共に密閉封止されていることを特徴とする。
上記原料ユニット内に収納される突沸抑制部材は、該薄膜原料よりも熱伝導率の大きな材料で形成されていることを特徴とする。
また、上記略円筒アンプル形状は、一回のバッチ処理で使用する上記薄膜原料量の5倍以上の内容積であり、かつアンプル先端部を切り取ったときの開口径とアンプル胴部の深さの比が0.5以下であることを特徴とする。
さらに、略円筒アンプル形状がガラス製であることを特徴とする。
また、上記伝熱筒の少なくとも原料ユニットに接する部分はグラファイトを主成分とする材料製であることを特徴とする。
特に突沸抑制部材が薄膜原料よりも熱伝導率の大きな材料で形成されているので、均一に薄膜原料を加熱できる。また、略円筒アンプル形状は、一回のバッチ処理で使用する上記薄膜原料量の5倍以上の内容積であり、かつアンプル先端部を切り取ったときの開口径とアンプル胴部の深さの比が0.5以下であるので、万一突沸が発生しても、真空蒸着用原料ユニットから飛沫が飛び出すことを抑えることができる。
また、一回のバッチ処理で使用できる薄膜原料量を収納できる内容積の真空蒸着用原料ユニットなので、薄膜原料を使用後保存する必要がなくなる。そのため、蒸着時は、未使用の薄膜原料を開封して使用することになるので、真空蒸着法により有機薄膜を安定的に成膜することができる。
特に原料ユニットに接する部分はグラファイトを主成分とする材料とするので、熱伝導性に優れ、より均一に薄膜原料を加熱することができる。
原料ユニット4は、薄膜原料11を収納して保管するものであり、また薄膜形成の際は原料ユニット4ごと加熱され、ルツボの役割をする。
不活性ガスとして具体的には、窒素が好適に用いられる。
上記含フッ素有機化合物の中で、パーフルオロ系高分子が好ましく、更に少なくとも1個の二重結合もしくは三重結合炭素、−COOH基、または、−Si(OR)3基を分子内に含むことが好ましい。Rは炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。このパーフルオロ系高分子を用いることにより、基板との密着性に優れる。
本発明の真空蒸着用原料ユニットは、上記原料ユニットのアンプル5内に、薄膜原料11と共に、あらかじめ突沸抑制部材12が収納されている。
真空蒸着用蒸発源は、上述の真空蒸着用原料ユニット4と、この原料ユニット4の周囲に熱を伝達する伝熱筒6と、この伝熱筒6を加熱するための熱源である加熱装置10とから構成される(図1参照)。
また、伝熱筒6の少なくとも原料ユニット4のアンプル5と接する部分は、アンプル5と凝着しない材料であることが好ましく、グラファイトを主成分とする材料であることが好ましい。あるいは、金属の表面にグラファイトをコーティングしたものであってもよい。
伝熱筒6はその周囲を、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などの高融点金属のフィラメント、シーズヒーター、赤外線ランプヒーターなどを用いた加熱装置10で覆われることにより加熱される。
真空蒸着用蒸発源は、真空容器2内に二つ以上複数設けられていてもよい。この場合、各原料ユニットのアンプルが開口した側に対向して、基材が配置される。
上記の真空蒸着装置内で、薄膜原料を真空中で加熱、蒸発させ、基材表面で凝固および固化させることにより、基材表面に薄膜を形成する。
(1)被膜基材の脱脂洗浄:被膜基材を予め洗浄する。洗浄はアセトンなどによる有機溶剤による洗浄、イソプロピルアルコール(IPA)などによるブラシ洗浄、その他超音波洗浄などを基材の種類に応じて行なう。
(2)ターゲットおよび被膜基材のセッティング:薄膜原料および突沸抑制部材が収納された原料ユニット4のアンプル5の先端部5aを折って開封し、伝熱筒6に装着する。また、基材8を保持板7に装着する。
(3)真空蒸着装置の排気:装置内圧が 10-2 〜 10-4 Pa となるまで排気する。装置内圧は 5 ×10-3 Pa 以下とすることが好ましい。
(5)成膜後の後処理:薄膜を堆積させた後に、薄膜の強度および密着力を向上させるために、約50℃で1時間程度熱処理することが望ましい。
薄膜として実用的な範囲は 50 〜 1000 nm であり、好ましくは、 10 〜 50 nm である。また、成膜された含フッ素薄膜の対水接触角は 90° をこえることができ、精密金型としての十分な撥水性を有している。
基材として精密成形用の金型(SUS304製)を、含フッ素化合物としてサイトップ(旭硝子社製)をそれぞれ準備して、上述した真空蒸着装置を用いて以下の方法で含フッ素薄膜を有する基材を製造した。
原料となるサイトップ、0.020 gと突沸抑制部材であるグラファイト製フェルト、0.030 gの入った原料ユニットのアンプル先端部を折って真空蒸着装置内の伝熱筒に装着し、基材を原料ユニットのアンプル開口部から 200 mm 離れた保持板にセットして、真空容器内を 5×10-3 Pa以下に排気し、伝熱筒の加熱装置を室温から 500 ℃まで昇温速度 10 ℃/ 1 分で加熱した。
なお、原料ユニットは窒素ガスで封入して室温に1ヶ月保存したもの(実施例1)、室温に6ヶ月保存したもの(実施例2)を使用した。
成膜後に 50 ℃で 1 時間の熱処理を行ない、室温大気中に 12 時間放置した後、含フッ素薄膜の膜厚と金型表面の接触角を測定した。
ここで、膜厚はエリプソメータにより測定した。また、接触角は液滴体積 1 ± 0.2 mm3 、室温、の条件における液滴法により、各種液体に対する接触角を測定した。測定に用いた液体は、水( 72.8 mN/m)、グリセリン( 63.4 mN/m)、ジヨードメタン( 50.8 mN/m)およびn−ヘキサデカン( 27.5 mN/m)である。
原料となるサイトップを、原料ユニットのアンプルに密閉保存することなく、室温大気雰囲気で1ヶ月放置して使用した以外は実施例1と同じ条件で成膜した。薄膜原料の一部は蒸発せずにアンプル内に固形物として残留した。
成膜後に、50 ℃で 1 時間の熱処理を行ない、室温大気中に 12 時間放置した後、実施例1と同様に、膜厚と接触角を測定した。
基材として直径 100 mm のSiウエハを、含フッ素化合物としてサイトップをそれぞれ準備して、上述した真空蒸着装置を用いて以下の方法で含フッ素薄膜を有する基材を作製した。
原料となるサイトップ、0.12 gと突沸抑制部材であるグラファイト製フェルト、0.03 gの入った原料ユニットのアンプル先端部を折って真空蒸着装置内の伝熱筒に装着し、基材を原料ユニットのアンプル開口部から 200 mm 離れた保持板にセットして、真空容器内を 5×10-3 Pa以下に排気し、伝熱筒の加熱装置を室温から 500 ℃まで昇温速度 10 ℃/ 1 分で加熱した。
なお、原料ユニットのアンプルは、アンプル内容積が原料の5倍で、開口径と深さの比が0.5であるものを使用した。
突沸抑制部材としてグラファイト製フェルトの代わりにスチールウールを使用すること以外は実施例3と同じ条件で、含フッ素薄膜を有する基材を作製した。
アンプル内容積が原料の2倍であること以外は実施例3と同じ条件で、含フッ素薄膜を有する基材を作製した。
アンプルの開口径と深さの比が1であること以外は実施例3と同じ条件で、含フッ素薄膜を有する基材を作製した。
突沸抑制部材としてグラファイト製フェルトを使用せず、アンプル内容積が薄膜原料の2倍で、開口径と深さの比が1であること以外は、実施例3と同じ条件で、含フッ素薄膜を有する基材を作製した。
原料となるサイトップ、0.020 gと突沸抑制部材であるグラファイト製フェルト、0.030 gをパイレックス(登録商標)製アンプルに入れ、真空蒸着装置内の伝熱筒に装着し、真空容器内を 5×10-3 Pa以下に排気し、伝熱筒の加熱装置を室温から 500 ℃まで昇温速度 10 ℃/ 1 分で加熱することにより、含フッ素有機薄膜を成膜した。
ここで、グラファイト製伝熱筒を使用した。
銅合金製伝熱筒を使用したこと以外は、実施例7と同じ条件で含フッ素有機薄膜を成膜した。
2 真空容器
3 排気装置
4 原料ユニット
5 アンプル
6 伝熱筒
7 保持板
8 基材
9 バルブ
10 加熱装置
11 薄膜原料
12 突沸抑制部材
Claims (7)
- 薄膜原料を蒸発させて基材表面に薄膜を形成する真空蒸着装置または真空蒸着方法に用いられる薄膜原料が収納された略円筒アンプル形状の真空蒸着用原料ユニットであって、
一回のバッチ処理で使用する前記薄膜原料と共に、該薄膜原料が蒸発するときの突沸を抑制する突沸抑制部材が収納され、不活性ガスまたは乾燥空気と共に密閉封止されていることを特徴とする真空蒸着用原料ユニット。 - 前記突沸抑制部材は、前記薄膜原料よりも熱伝導率の大きな材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の真空蒸着用原料ユニット。
- 前記略円筒アンプル形状は、一回のバッチ処理で使用する前記薄膜原料量の5倍以上の内容積であり、かつアンプル先端部を切り取ったときの開口径とアンプル胴部の深さの比が0.5以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の真空蒸着用原料ユニット。
- 略円筒アンプル形状がガラス製であることを特徴とする請求項3記載の真空蒸着用原料ユニット。
- 薄膜原料を蒸発させて基材表面に薄膜を形成する真空蒸着装置内に設置される真空蒸着用蒸発源であって、
この真空蒸着用蒸発源は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の真空蒸着用原料ユニットと、この原料ユニットの周囲に熱を伝達する伝熱筒と、この伝熱筒を加熱するための熱源とを備えることを特徴とする真空蒸着用蒸発源。 - 前記伝熱筒の少なくとも前記原料ユニットに接する部分はグラファイトを主成分とする材料製であることを特徴とする請求項5記載の真空蒸着用蒸発源。
- 薄膜原料を蒸発させて基材表面に薄膜を形成する装置内に真空蒸着用蒸発源が設置されている真空蒸着装置であって、
前記薄膜原料が有機物であって、前記真空蒸着用蒸発源が請求項5または請求項6記載の真空蒸着用蒸発源であることを特徴とする真空蒸着装置。
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