JP4675048B2 - 硫酸糖ライブラリー - Google Patents
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Description
こうした硫酸糖の機能を代替する新たな生理活性物質を探索する試みが種々行われている。例えば、ヒト造血細胞の培養液にサイトカインを添加する際にヘパリンを共存させるとサイトカインの造血細胞増殖促進作用が大幅に増強されることが知られており、これはサイトカインとヘパリンとの間に親和性があるためとされている(非特許文献1参照)。そこで、遊離のヘパリンを用いるのではなく、動物細胞が接着する基質表面にヘパリンを固定化することにより、動物細胞近傍にサイトカインを局在化させ、より効果的に細胞培養を促進しようとする試みもなされてきた(非特許文献2参照)。また、細胞の接着基質であるポリエステル表面に酸素プラズマ放電で水酸基を導入し、これに続く数段の反応でヘパリンを共有結合により固定化する方法も開発された(非特許文献3参照)。
しかし、参考例に示したランダム硫酸化は、短工程で多くの硫酸糖誘導体を得る優れた方法ではあるが、6位が硫酸化された誘導体の生成が優先するために、6位が遊離の水酸基である硫酸糖誘導体が得られないので、短工程で、硫酸化の全ての組合せを網羅した硫酸化ヘキソピラノシル誘導体が得られる硫酸糖誘導体の製造法が望まれていた。
2、3、4および6位の水酸基が無保護のヘキソピラノシル誘導体を原料として、硫酸化剤を、例えばDMF等の適当な溶媒中、適当な当量(1から100当量)、適当な反応温度(0から100℃)および反応時間(10分から2日間)の下に反応させ、6位の水酸基のみが硫酸化された6−硫酸化ヘキソピラノシル誘導体、あるいは6位を含む水酸基が硫酸化された2,6−二硫酸化ヘキソピラノシル誘導体、3,6−二硫酸化ヘキソピラノシル誘導体、4,6−二硫酸化ヘキソピラノシル誘導体、2,3,6−三硫酸化ヘキソピラノシル誘導体、2,4,6−三硫酸化ヘキソピラノシル誘導体、3,4,6−三硫酸化ヘキソピラノシル誘導体、および、2,3,4,6−四硫酸化ヘキソピラノシル誘導体を合成する。得られた化合物は、必要に応じてシリカゲル等を用いた高性能薄層クロマトグラフィー、あるいは、アミドカラム等を用いた高性能液体クロマトグラフィー等を用いて分離・精製する。
硫酸化剤としては、糖質化合物の硫酸化に用いられるものであれば何でもよいが、例えば、三酸化イオウ−ピリジン錯体、三酸化イオウ−トリメチルアミン錯体、クロロスルホン酸−ピリジン錯体、ジシクロヘキシルカルボジイミド−硫酸等を挙げることができ、好ましくは、三酸化イオウ−ピリジン錯体、三酸化イオウ−トリメチルアミン錯体が挙げられる。
6位選択的脱硫酸化剤としては、硫酸糖の6位選択的脱硫酸化に用いられるものであれば何でもよいが、例えば、MTSTFA、BTSA、N−メチル−N−(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザン、ペプタメチルジシラザン、N,N−ジメチルアミノトリメチルシラン等を挙げることができ、好ましくは、MTSTFA、BTSAが挙げられる。
以下に、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
参考例3に従って合成した、N−(O―β―(2,6−ジ−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミド、および、N−(O―β―(3,6−ジ−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミド、および、N−(O―β―(4,6−ジ−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミドの混合物(8.4mg, 8.8μmol) をピリジン(4ml)に溶解し、アルゴン気流下、室温にて5時間撹拌した後、溶媒を留去した。残渣をピリジン(2ml)に溶解し、MTSTFA(0.14ml, 0.71mmol)を加え、アルゴン気流下、60℃で2時間撹拌した。反応液に、水(8ml)と 5mM酢酸アンモニウム/メタノール溶液(2ml)を加え、アルゴン気流下、室温で0.5時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、シリカゲル(イアトロビーズ)カラムクロマトグラフィー(クロロホルム:5mM酢酸アンモニウム/メタノール溶液:水=130:50:9)にて精製し、目的物(3.7mg, 48%)を混合物として得た。
1H−NMR(400MHz, DMSO-d6/D2O=98:2, 60℃)により、δ 4.22、4.14および4.08に、それぞれのガラクトース部分の1位のプロトンシグナルが観測され、N−(O―β―(2−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミド、および、N−(O―β―(3−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミド、および、N−(O―β―(4−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミドの生成を確認した。
(N−(O−β−(6−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミドの合成)
N−(O−β−ガラクトピラノシル−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミド(51.7mg, 0.0687mmol)をDMF2mlに溶解し、三酸化硫黄・トリメチルアミン錯体(336mg, 2.41mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、2時間撹拌した。反応液をそのままゲルろ過(LH−20、クロロホルム−メタノール,1:1)し、目的物を含む画分を濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトフィー(クロロホルム−メタノール,2:1)により精製し、目的物(14.2mg, 0.0171mmol)を得た。
MALDI−TOF/MS(マトリックス、ジヒドロキシ安息香酸):m/z 831.53 (C43H77NO12Sとして計算:831.52,[M−H]-)
(硫酸糖脂質アナログが臍帯血前駆細胞増殖に及ぼす影響)
N−(O−β−(6−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミド3.5mgを200 mlのエタノールに溶かし−20℃で保存した。使用時に、この保存溶液1.8mlにエタノール8.2mlを加えて希釈した後に、24穴プレートと同じ断面積で厚さ100μmに裁断したポリエステル不織布(旭化成製Y-15050、)を1枚入れた24穴プレートに1 mlずつ加え揮発させた。また、濃度による影響を検討するため、この溶液をエタノールでさらに10倍希釈して同様にポリエステル不織布にコーティングした。
動物細胞として、ヒト臍帯血からフィコール密度勾配遠心分離により得られた単核造血細胞を用いた。
予め、ヒト臍帯血単核造血細胞1×105cellsとヒト骨髄初代ストローマ細胞5×105cellsとを、無血清無サイトカイン培地X-VIVO10(BioWhittaker,Walkersville,USA)を用いて、24ウェルプレート中で37℃,5%CO2雰囲気下で1週間共培養した後、その培養上清を得た。
上記のN−(O−β−(6−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミドをコーティングした不織布、同じく10倍希釈した溶液でコーティングした不織布、または、コーティングしていない不織布、いずれかの不織布を入れた24穴プレートに、上記の培養上清を用いて、ヒト臍帯血単核造血細胞1×105 cellsを播種し、37℃、5%CO2雰囲気下で1週間培養した。
その後、培養後の不織布および培養液の両方から回収した造血細胞を集め、コロニーフォーミングユニットアッセイを行い、培養後の造血前駆細胞の濃度を計数した。
表1に示すように、培養後の造血前駆細胞濃度は、無処理の不織布に比べ、N−(O−β−(6−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミドを10倍希釈してコーティングしたものでもほぼ同等、N−(O−β−(6−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミドを1倍濃度でコーティングしたもので約1.6倍であり、明らかな増殖活性を示した。
(N−(O―β―(2,6−ジ−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミド、および、N−(O―β―(3,6−ジ−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミド、および、N−(O―β―(4,6−ジ−O−スルホガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミドの合成)
N−(O―β―(ガラクトピラノシル)−6−オキシヘキシル)−3,5−ビス(ドデシロキシ)ベンズアミド(30.0mg, 0.040mmol)をDMF(2.2ml)に溶解させ、三酸化硫黄・ピリジン錯体(32.4mg, 0.20mmol, 5当量)を加え、アルゴン気流下、室温にて2.5時間撹拌した。反応終了後、メタノール(20ml)を加え、溶媒を留去した。残渣をゲル濾過カラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール:水=108:58:1、トリエチルアミン1%)にて分取し、さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1、トリエチルアミン1%)にて精製し、目的物(27.8mg, 84%)を混合物として得た。
これらの化合物がエタノールに可溶であることを確認した。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6/D2O=98:2, 60℃)
δ 6.96 (t, J = 2.4 Hz), 6.55 (bs), 4.22 (d, J = 8.3 Hz), 4.09 (dd, J = 8.3, 9.3 Hz), 3.98 (t, J = 6.5 Hz), 3.86 (dd, J = 6.2, 10.3 Hz), 3.76 (dd, J = 6.2, 10.3 Hz), 3.70 (m), 3.64 (dd, J = 2.0, 8.6 Hz), 3.58 (t, J = 6.2 Hz), 3.50 (m), 3.47 (m), 3.20 (m), 1.69 (m), 1.53 (m), 1.41 (m), 1.29 (m), 0.85 (t, J = 6.9 Hz)
δ 6.96 (t, J = 2.4 Hz), 6.55 (bs), 4.15 (d, J = 7.6 Hz), 3.98 (t, J = 6.5 Hz), 3.95 (dd, J = 3.4, 9.6 Hz), 3.87 (bd, J = 3.4 Hz), 3.86 (dd, J = 6.2, 10.3 Hz), 3.76 (dd, J = 6.2, 10.3 Hz), 3.58 (t, J = 6.2 Hz), 3.47 (m), 3.43 (dd, J = 7.6, 9.6 Hz), 3.20 (m), 1.69 (m), 1.53 (m), 1.41 (m), 1.29 (m), 0.85 (t, J = 6.9 Hz)
δ 6.96 (t, J = 2.4 Hz), 6.55 (bs), 4.34 (d, J = 3.4 Hz), 4.06 (d, J = 7.6 Hz), 3.98 (t, J = 6.5 Hz), 3.94 (m), 3.76 (dd, J = 6.2, 10.3 Hz), 3.70 (m), 3.47 (m), 3.34 (dd, J = 3.4, 9.6 Hz), 3.20 (m), 1.69 (m), 1.53 (m), 1.41 (m), 1.29 (m), 0.85 (t, J = 6.9 Hz)
Claims (3)
- 2、3、4および6位の水酸基が、遊離の水酸基または硫酸化された水酸基のいずれかである、全ての組合せを網羅した硫酸化ヘキノピラノシルの1位に、3,5−ビス(ドデシロオキシ)ベンゾイルアミノヘキシルオキシが結合した硫酸化ヘキソピラノシル誘導体からなる硫酸糖ライブラリー。
- 請求項1に記載の硫酸糖ライブラリーを表面に固定化してなる細胞培養素材。
- 式(1)で示される硫酸化ガラクトース誘導体。
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