JP4672845B2 - 印圧ばね調整装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印圧ばね調整装置に関し、詳しくは孔版印刷装置等の印刷装置に用いられる印圧ばねユニットの印圧ばねの印圧調整を予め行うための、印刷装置本体と別体に設けられた印圧ばね調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
感熱デジタル式の孔版印刷装置等の印刷装置において、製版されたマスタを版胴の外周面に巻き付ける印刷ドラムと、給送されて来た用紙の先端部を保持する用紙クランパ(保持手段)を備え版胴の外径と略同径の圧胴(押圧手段)と、印刷ドラムの版胴外周面に対して圧胴を接離させる接離手段と、用紙クランパに向けて用紙の先端を送り出す一対のレジストローラ(レジスト手段)等とを具備した印刷装置が知られている。このような印刷装置例としては、例えば本願出願人が提案した特開2000−127593号公報等を挙げることができる。
前記圧胴は、版胴の外周に設けられているマスタの先端部をくわえるマスタクランパとの干渉を避けるために自身の外周部の一部に設けられた凹部を有することで、版胴に対する印圧のオン/オフ時の移動量を小さくすることができるため、印圧音を小さくすることができ、ひいては孔版印刷装置の騒音の低減を図ることができるという特長をもっている。
【0003】
一方、前記した印刷ドラムと、給送されて来た用紙を版胴上のマスタに押し付けるプレスローラ(押圧手段)と、印刷ドラムの版胴外周面に対してプレスローラを接離させる接離手段と、版胴とプレスローラとの間に形成される印刷部(ニップ部)に向けて用紙の先端を送り出す一対のレジストローラ等とを具備した印刷装置が知られている。このような印刷装置例としては、例えば特開平6−40137号公報等を挙げることができる。
【0004】
以下、図16、図17および図18を参照して、押圧手段として圧胴を用いた孔版印刷装置に例をとって、接離手段周りの構成およびその接離手段に組み込まれている印圧ばねの印圧調整の仕方について説明する。
図17において、符号85aは、紙面の手前側(以下、単に「前」というときがある)に配置された印刷装置本体としての本体側板を、符号85bは、紙面の奥側(以下、単に「後」というときがある)に配置された印刷装置本体としての本体側板を、それぞれ示す。
図18において、二点鎖線で示す符号51は、製版されたマスタ(図示せず)を版胴の外周面に巻き付ける印刷ドラムを、同じく二点鎖線で示す符号80は、給送されて来た用紙(図示せず)の先端部を保持する用紙クランパ(図示せず)を備え版胴の外径と略同径の圧胴(押圧手段)を、符号91は、印刷ドラム51の版胴外周面に対して圧胴80を接離させる接離手段を、それぞれ示す。
【0005】
接離手段91は、図16ないし図18に示すように、支点軸84、前後一対の揺動部材85a,85b、前後一対の軸受83,83、前後一対のカムフォロア88,88、カムシャフト89、前後一対のカム90,90、および前後一対の引張ばね92,92から主に構成されている。
【0006】
図16に示すように、圧胴80の両端部の端板80bには、圧胴軸82が固定されている。前後両端部の圧胴軸82には、これらの圧胴軸82を回転可能に支持する一対の軸受83,83が設けられている。図16において、符号80aは、印刷ドラム51の版胴外周に設けられているマスタの先端部をくわえるマスタクランパ(図示せず)との干渉を避けるための凹部を示す。なお、図16では、図の簡明化を図るため用紙クランパ(保持手段)等の図示を省略している。
【0007】
図17に示すように、前後の本体側板77a,77bには、支点軸84の各端部が取り付け・支持されている。支点軸84の両端部には、前後一対の揺動部材85a,85bの基端部が軸受を介して所定角度の範囲で回動自在に支持されている。これにより、各揺動部材85a,85bの自由端部は、支点軸84を揺動中心として支点軸84の両端部に揺動自在に支持されている。
【0008】
各揺動部材85a,85bの略中央部には、各軸受83,83を嵌合することにより、圧胴80を回転可能に支持する軸受支持部86が形成されている。これにより、圧胴80は、各揺動部材85a,85bの軸受支持部86に、各軸受83,83を嵌合させて取り付けされることにより、各軸受83,83(以下、「各軸受83」と略称する)を介して各揺動部材85a,85bに回転可能に、かつ、揺動可能に支持される。
【0009】
各揺動部材85a,85bの自由端部寄りには、各引張ばね92,92(以下、「各引張ばね92」と略称する)の他端側のフック部92bを引っ掛け・係止するばね掛け部87が折り曲げ形成されている。各引張ばね92のフック部92bは、各揺動部材85a,85bのばね掛け部87に引っ掛け・係止される。各引張ばね92の一端部92a側では、本体側板77a,77b側にねじ96で締結・固定された前後一対のブラケット78a,78bとの間で、後述するような印圧調整がなされる。引張ばね92は、印刷ドラム51の版胴外周面上の前記マスタに、図示しない用紙を介して圧胴80を圧接させる向きに印圧を加える印圧ばねとしての機能を備えている。
【0010】
また、各揺動部材85a,85bの自由端部には、前後一対のカムフォロア88,88が軸を持って回動可能に取り付け・支持されている。一方、本体側板77a,77bには、カムシャフト89の各端部が回転可能に支持されている。カムシャフト89の両端部には、各カムフォロア88,88(以下、「各カムフォロア88」と略称する)と選択的に係合する前後一対のカム90,90が取り付け・固定されている。
【0011】
各カム90,90(以下、「各カム90」と略称する)は、後述する実施形態で詳述するように印刷ドラム51および圧胴80の回転と同期して回転駆動されるようになっている。前後の各カム90は、カムシャフト89を介して同一形状のものが同一位相で連結されている。
圧胴80は、印刷ドラム51および圧胴80の回転と同期して回転駆動される各カム90により、印刷ドラム51の版胴外周面上の前記マスタから離間する非印刷位置と、各引張ばね92の付勢力により、印刷ドラム51の版胴外周面上の前記マスタに、図示しない用紙を介して圧胴80を圧接させて印圧を加える印刷位置との間で接離自在になっている。
【0012】
次に、各引張ばね92の印圧調整の仕方について説明する。
各引張ばね92の一端部92aの内周部には、図17および図18に示すように、頭部が6角状のナット93が固着されている。引張ばね92およびナット93は、引張ばね92を組付けるときの1つの構成要素(構成部品)および移動単位となっており、以下、これらを総称して引張ばね組体97という。
【0013】
各引張ばね92の一端部92aへのナット93の固着方式としては、ナット93の外周部に螺刻・形成(以下、単に「形成」という)された雄ねじを各引張ばね92の一端部92aの内周部のコイル線間にねじ込み・嵌合することで行っている。ナット93の前記雄ねじの呼びとしては、例えばM12×1.5(細目ねじ、谷径φ10.376)であり、各引張ばね92の内径としては、例えばφ10.2、線径φ1.4である。したがって、ナット93の前記雄ねじの外径部分(山の部分)を、各引張ばね92の一端部92aの内周部のコイル線間にねじ込み、その内周部を少し押し広げながら嵌合することにより、略ねじ嵌合できる寸法となっている。これにより、ナット93と各引張ばね92の一端部92aとを固着している。ナット93の内周部には、雌ねじが形成されている。
なお、各引張ばね92の一端部92aへのナット93の固着方式としては、前記方式に限らず、例えば各引張ばね92の一端部92aにナット93を溶接で固着する方式や、各引張ばね92の一端部92aの内周部に雌ねじを形成してこれにナット93の前記雄ねじを螺合・固着する方式、あるいは前記した各方式を組み合わせた固着方式等でもよい。
【0014】
各引張ばね92の一端部92aは、雄ねじが形成された長ねじ94を本体側板77a,77b側に固定された各ブラケット78a,78bの上方から挿通させ、ナット93の雌ねじに螺合させて、各ブラケット78a,78bの取り付け下面とナット93の上面との隙間95が一定となるように、隙間ゲージに相当する限界ゲージ等を用いて組付けられる。図18において、各引張ばね92の他端側のフック部92bのばね掛け部87との係止部からナット93の上面までの引張ばねユニット全体の長さLaは、圧胴80が非印刷位置を占めている状態で例えば略100mmとなるように設定されている。
【0015】
市場でのメンテナンス性を考え、一定の隙間95は、各市場で変更可能となっている。これは、ユーザの要求によって、印刷画像濃度の要求が違うためである。当然ながら、印刷画像濃度を濃くするためには、引張ばね92の長さを長くして印圧を上げた方が良いが、印刷ドラム51の耐久性については、悪くなる方向である。この辺はユーザの使い勝手、すなわち印刷画像濃度と耐久性能(耐久年数)とのどちらの優位性をとるかによる所が大きい。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述の構成において、例えば印圧としては小さい設定を望む方の地域では、通常、孔版印刷装置の印圧は、図18に示す圧胴80が非印刷位置を占めている状態における引張ばね取り付け部で略40Nの設定となっている。しかしながら、引張ばね92は、製作上のバラツキ±10%(±4N)をもっている。そのため、印刷装置本体での前後の引張ばね92の荷重(ばね力)差が大きい場合(3N〜5N以上、最大8N)、低温時でのインキの回りが悪くなり、通常、印刷用紙の操作側(図18の紙面では、印刷ドラム51の手前側)と反操作側(図18の紙面では、印刷ドラム51の奥側)の印刷画質に差が出る。
【0017】
印刷画質の差は、全ベタ画像にした場合、印圧の小さい側の印刷画像が一部抜ける現象となって現れる。この対策としては、単純に全体の印圧を大きくすれば良いように見受けられるが、このようにしたのでは前述したように、印刷ドラム51の耐久性能を落とすことにつながり、印圧をあまり大きくできず、印刷画像の安定および印刷ドラム51の耐久保証が大きな問題点となっていた。
【0018】
また、前記問題点を解決するため、下記の2点が考えられるが、やはり以下のような問題がある。
▲1▼ 図18に示す状態で、デジタルテンションゲージ等を備えた印圧測定治具を印刷装置本体に入れ、長ねじ94を回すことにより、各揺動部材85a,85bに嵌合している軸受83上での印圧(ばね荷重)測定を行い、一定のばね荷重(ばね力)になるよう調整するものである。しかし、この方式ではばね荷重は変化させられるが、同時に図18の一定厚さのゲージ(限界ゲージ)の入る寸法である隙間95も変化するため(長ねじ94を回すことにより引張ばね92のばね長さを調整するため)、メンテナンス時、再度、現地での印圧測定治具を使ってのばね力(印圧)調整作業が必要となり、現実には殆ど対応できないものとなっていた。また、印刷装置本体内部は狭く、スペースも少ないため、そのばね力(印圧)調整作業が大変であった。特に、反操作側のばね調整は大変である。
【0019】
▲2▼ 引張ばね92の製作上のバラツキは現状の製造技術ではなくせないので、引張ばね92の製作ロット毎に、ばね荷重(以下、「ばね力」というときがある)を測定して、同じ位のレベルの引張ばね92を2個1セットとして、組み込むことは考えられる。しかし、この方式では、引張ばね92の製造上の歩留まりが悪い。また、印圧のバラツキが上述したように±10%と大きく、例えばばね力36N同士の引張ばね92の組み合わせとばね力44N同士の組み合わせの引張ばね92とができる可能性があり、孔版印刷装置間の印刷画像濃度がバラツク原因となる。ばね力36N同士の引張ばね92の組み合わせを使用した孔版印刷装置では、低温環境時に印刷画像濃度が薄くなってしまい、前述の全ベタ画像では印刷ドラム51の前後両側の印刷画像が抜ける傾向にあった。
【0020】
以上の問題点をまとめると、以下のようになる。
すなわち、(1)引張ばね92の製造上のパラツキで印刷ドラム51に作用する印圧の差ができ、特に低温環境下では印圧の小さい方の印刷画像端面が一部かすれる問題点があった。
(2)(1)の問題点を改善するため、印刷装置本体内部での印圧調整が考えられるが、引張ばね92のばね長さが変動するため、市場での部品交換(メンテナンス性)は実際上不可能であり、かつ、狭いスペースでの作業を強いられるので、作業性が非常に悪い問題点があった。
(3)(1)の問題点を改善するため、引張ばね92の製作ロット毎の選別による2個1セットによる対応も考えられるが、量産性が悪く、かつ、孔版印刷装置における印圧バラツキが大きくなり、機械間の印刷画像濃度バラツキという問題点につながっていた。
【0021】
したがって、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、次の第1ないし第3の目的、またはこれらを適宜組み合わせた目的を達成することにある。
本発明の第1の目的は、印圧ばねのばね長さを変えることにより、印刷ドラムへの印圧差をできるだけ小さくして、低温環境下での印刷画像かすれ等の印刷画質の劣化をなくする。
第2の目的は、市場での対応を可能とするため、印圧調整しても印圧ばねユニット全体の取り付け長さを変えないで済む方式とする。また、印圧ばねの調整を印刷装置本体の外部で行えるようにする。
第3の目的は、印圧ばねの印圧調整を印刷装置本体の外部で行う印圧ばね調整装置により、一定の印圧に調整された印圧ばねユニットを得て、これにより機械間の印刷画像濃度のバラツキを小さくする。
つまり、本発明では、第1ないし第3の目的の達成を狙い、印刷画像濃度の向上、市場メンテナンス性の向上、印圧ばね調整装置による安定した印刷画質を得ることを最終的な目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決すると共に上述した目的を達成するために、請求項毎の発明では以下の特徴ある構成を採っている。
請求項1記載の発明は、印刷装置本体内の印刷ドラムに対して相対的に接離自在な押圧手段を該印刷ドラムに相対的に接離させる接離手段に組み込まれる前に印圧ばねの印圧調整がなされる前記印圧ばねの一端に、そのばね長さを変える調整手段を設けた印圧ばねユニットの前記印圧ばねの印圧調整を、前記印刷装置本体の外部で行うための、前記印刷装置本体と別体に設けられた印圧ばね調整装置であって、前記印圧ばねおよび前記調整手段を含む前記印圧ばねユニットの全長を一定とした状態で、前記印圧ばねの印圧調整を行うことを特徴とする
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の印圧ばね調整装置において、前記印圧ばねは、引張ばねであることを特徴とする。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の印圧ばね調整装置において、前記印圧ばねは、圧縮ばねであることを特徴とする。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載の印圧ばね調整装置において、前記印圧ばねの印圧調整後、前記印圧ばねおよび前記調整手段を含む前記印圧ばねユニットは、前記印圧ばねの調整位置で調整された前記ばね長さを固定する位置固定手段を有することを特徴とする。
【0027】
請求項記載の発明は、請求項1,2,3または4記載の印圧ばね調整装置において、前記印圧ばねユニットの全長を、前記印圧ばねユニットが前記印刷装置本体に取り付けられたときの最大長さと略同じに設定した状態で調整することを特徴とする。
ここで、「最大長さと略同じ」とは、最大長さと等しい場合の他、最大長さの設計許容公差の範囲内にある場合も含まれることを意味する。
【0028】
請求項記載の発明は、請求項1ないし5の何れか一つに記載の印圧ばね調整装置において、前記印圧ばねおよび前記調整手段を含む前記印圧ばねユニットの全長を一定に保持した状態で、そのばね力を一定範囲内に調整することを特徴とする。
【0029】
請求項記載の発明は、請求項1ないし6の何れか一つに記載の印圧ばね調整装置において、前記印圧ばねの印圧調整するときの前記ばね力を測定するための印圧測定手段を、前記印圧ばねの他端側に有することを特徴とする。
印圧測定手段の具体例としては、指針を有するアナログテンションゲージやデジタルテンションゲージが用いられる。ばね力(ばね荷重)の値を読み取る視認性および作業性を向上するという点からは、デジタルテンションゲージが好ましく用いられる。
【0030】
請求項記載の発明は、請求項1ないし7の何れか一つに記載の印圧ばね調整装置において、前記印圧ばねの印圧調整後、前記印圧ばねおよび前記調整手段を含む前記印圧ばねユニットは、前記印圧ばねの調整位置で固定されることを特徴とする。
【0032】
請求項1における「印刷ドラムに対して相対的に接離自在な押圧手段」とは、印刷ドラムに対して押圧手段を押し付けて印刷を行う押圧手段接離方式と、押圧手段に対して印刷ドラムを押し付けて印刷を行う印刷ドラム接離方式と、それらの併用方式とがある。押圧手段接離方式の具体例としては、後述する発明の実施の形態における圧胴およびその接離手段や、プレスローラおよびその接離手段が挙げられる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、単に「実施形態」という)を説明する。図16ないし図18に示した従来の技術例や実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一符号を付すことによりその説明を省略する。図において一対で構成されていて特別に区別して説明する必要がない構成要素は、説明の簡明化を図る上から、その片方を適宜記載することでその説明に代えるものとする。また、図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。各図に示されている構成要素を説明するに当たっては、図の紙面の手前側や左側を前側と、図の紙面の奥側や右側を後と説明するときがある。
(実施形態1)
まず、図1ないし図6を参照して、本発明の第1の実施形態(以下、単に「実施形態1」という)の後述する印圧ばね調整装置で印圧調整される印圧ばねユニットを説明する。
図1に示すように、印圧ばねとしての引張ばね2の印圧調整が後述するようになされる印圧ばねユニットとしての引張ばねユニット1は、引張ばね2の一端部2aに、そのばね長さを変える調整手段としての調整ねじ4を有する。引張ばね2は、従来例の引張ばね92に対して、互換性があり同様のものであるが、説明の便宜上から敢えて符号を変えている。
【0034】
図1に示す引張ばねユニット1は、組付け調整完了の状態を示している。引張ばねユニット1は、図16ないし図18に示した従来の引張ばね92と同様の引張ばね2と、引張ばね2の一端部2aの内周部にねじ嵌合(以下、「略螺合」というときがある)すると共に、その内周部に雌ねじ3bを形成されたナット3と、ナット3の雌ねじ3bと螺合する雄ねじ4aをその外周部に形成された調整ねじ4と、引張ばね2の印圧調整後、引張ばね2の調整位置で調整されたばね長さを固定する位置固定手段としてのロックナット5から主に構成されている。
【0035】
引張ばねユニット1の組付けは、次のように行われる。先ず、図3(a),(b),(c)に示す引張ばね2にナット3をねじ込む。ねじ込み量Lcは、実施例的には7mmに設定されている。このねじ込み量Lcは、後述するようにナット3の雄ねじ3aとねじ嵌合して実質的に伸びないようにナット3で固定される範囲を示すものであり、この意味で引張ばね2の有効巻き数は、引張ばね2の一端から他端までの総巻数からねじ込み量Lcの巻数を差し引いたものとなる。図1および図3に示す引張ばね2は、自由長さLbの状態を示しており、この自由長さLbとしては例えば約47.8mmに設定されている。
【0036】
ナット3は、図4(a),(b)に示すように、その外周部に引張ばね2の前記一端部に略螺合(ねじ嵌合)する雄ねじ3aを備え、その内周部には雌ねじ3bが形成されている。雄ねじ3aおよび雌ねじ3bの呼びの一例としては、図4(a),(b)に括弧を付して示している。ナット3の雄ねじ3aを引張ばね2の一端部2aに組むと、図2に示す状態になる。
各引張ばね2の一端部2aへのナット3の固着方式としては、従来と同様に、ナット3の雄ねじ3a(例えばM12×1.5の細目ねじ、谷径φ10.376)を各引張ばね2の一端部2aの内周部(内径としては、例えばφ10.2、線径φ1.4)のコイル線間にねじ込み・嵌合することで行っている。したがって、ナット3の前記雄ねじの外径部分(山の部分)を、各引張ばね2の一端部2aの内周部のコイル線間にねじ込み、その内周部を少し押し広げながら嵌合することにより、略ねじ嵌合できる寸法となっている。これにより、ナット3と各引張ばね2の一端部2aとを固着している。
【0037】
次いで、ナット3の雌ねじ3bに螺合する調整ねじ4を、ロックナット4と共に組付けると、略図1に示す状態となる。調整ねじ4は、図5(a),(b),(c)に示すように、その外周部にナット3の雌ねじ3bに螺合する雄ねじ4aが形成されている。また、調整ねじ4の内周部には、従来例と同様の図9および図10等に示す長ねじ94に螺合する雌ねじ4bが形成されている。雄ねじ4aおよび雌ねじ4bの呼びの一例としては、図5(a),(b),(c)に括弧を付して示している。
ロックナット5は、図6(a),(b)に示すように、その内周部に調整ねじ4の雄ねじ4aと螺合する雌ねじ5aが形成されている。雌ねじ5aの呼びの一例としては、図6(a)に括弧を付して示している。ロックナット5は、印圧調整後に位置固定するので、この状態ではフリーの状態となっている。この仮組立ての状態で、引張ばねユニット1の印圧ばねの印圧調整を、印刷装置本体の外部で行うための、印刷装置本体と別体に設けられた印圧ばね調整装置としての印圧調整治具6に取り付けて印圧調整を行う。
【0038】
印圧調整治具6の1例を図7および図8に示す。この印圧調整治具6は、引張ばねユニット1の調整ねじ4の頭部を支持する受け部7と、引張ばねユニット1のフック部2bを引っ掛ける固定部11を取り付けたデジタルテンションゲージ8と、受け部7、デジタルテンションゲージ8、ストッパ部材9および固定部11を固定する基台12から主に構成されている。
【0039】
デジタルテンションゲージ8は、引張ばねユニット1の引張ばね2の印圧調整するときのばね力を測定するための印圧測定手段としての機能・構成を有する。デジタルテンションゲージ8は、引張ばねユニット1の引張ばね2の引っ張り力で動かないように、ストッパ部材9により、位置を規制されている。
【0040】
引張ばねユニット1を印圧調整治具6に上述したように取り付けセットしたときの引張ばねユニット1の全長Laと、引張ばねユニット1が印刷装置本体に取り付け・組み込まれたときの最大長さLa’(図10参照)とは、同じになるように印圧調整治具6の前記した各部品の位置が調整されて組付けされている。図7では、括弧を付して示す100mmの位置が設定寸法である。なお、設定寸法は、前述したとおりであるが、ユーザの要求で変動するものである。
【0041】
次に、引張ばねユニット1の引張ばね2の印圧調整作業について説明する。
先ず、仮組立てされた引張ばねユニット1を印圧調整治具6に上述したとおりにセットする。次に、調整ねじ4の頭部を、ねじ回し工具(例えばスパナ等)で回転させると、引張ばね2のフック部2bはデジタルテンションゲージ8の固定部11に掛けられて回り止めされていて殆ど回転しないため、調整ねじ4の雄ねじ4a部分はナット3の雌ねじ3a(図3(a)参照)にねじ込まれて行く。その結果、引張ばねユニット1の全長Laは変化しないが、引張ばね2のばね長さだけは図7に示す矢印10の方向に伸ばされて印圧は上がって行く。この印圧の上昇は、デジタルテンションゲージ8に表示され、設定値になるまで、調整ねじ4で調整することができる。設定値に印圧調整が完了すると、最後に、その位置で調整ねじ4とナット3とのねじ締結によるゆるみが発生しないように、ロックナット5で締め付け固定する。
このように、印圧調整治具6では、引張ばねユニット1の全長Laを一定に保持した状態で、引張ばね2の有効巻数部分のばね長さを変えることにより、ばね力を一定範囲内に調整するものである。
【0042】
前記設定寸法は、引張ばねユニット1が印刷装置本体に取り付け・組み込まれたときの最大長さLa’(図10参照)に伸ばされる寸法で、印圧を決定した方が良い。その理由は、ナット3を引張ばね2にねじ込むが、当然ながら、ナット3の雄ねじ3aの端面部はねじ山が薄くなり、強度が低くなるため、ダレやすくなる。そのため、初期印圧設定値より、使用後の印圧が若干低くなる傾向にある。もし、前記設定寸法を引張ばねユニット1が印刷装置本体に取り付け・組み込まれたときの最大長さLa’(図10参照)より小さい寸法に設定すると、使用時の引張ばね2の引っ張り力(ばね力)が設定時よりも大きく作用するため、ナット3の雄ねじ3aのねじ山部がますますダレるため、使用するにつれて印圧が小さくなって行くからである。
その減少印圧は、引張ばね2のバラツキ±10%に比較すると、はるかに小さいが、機械間のバラツキをなくし、ユーザに安定した製品を供給するためには、この減少分も十分考慮することが重要である。
【0043】
また、機械の構成部品の製作誤差による印圧のバラツキもあるが、せいぜい、±0.5mm程度であり、引張ばね2のばね定数が1N/mmから印圧バラツキは±0.5Nとなり、従来のバラツキと比較して、十分小さい値である。なお、前述の引張ばね取付部での前後の印圧差3N(引張ばね2で±1.5N)以内であれば、印刷画像のカスレのないことが確認試験で確認されている。
【0044】
なお、図1の右側に3角形の頂点で示したばね力=53.5N±0.5Nは、印圧調整治具6で印圧調整がなされロックナット5でその調整位置が固定されて組付け完了された引張ばねユニット1の全長La=100mmのときの設計許容公差を含むばね力の設定値を示している。図1の右側に3角形の下辺で示したばね力=(8.15N)は、印圧調整がなされた引張ばねユニット1の自由長さLb=(47.8mm)のときの初張力の参考値を示している。
【0045】
次に、図9、図10および図15を参照して、印圧調整治具6で印圧調整がなされロックナット5でその調整位置が固定されて組付け完了された引張ばねユニット1を印刷装置本体内の接離手段79に組み込む際の作業手順およびその接離手段の動作を説明する。
図9、図10および図15に示す接離手段79は、図16ないし図18に示した従来例の接離手段91と比較して、接離手段91の引張ばね組体97に代えて、印圧調整治具6で印圧調整がなされロックナット5でその調整位置が固定されて組付け完了された引張ばねユニット1を用いて組付けることが主に相違する。引張ばねユニット1以外の構成は、従来例と同じである。
【0046】
印圧調整治具6で上述したように印圧調整がなされた引張ばねユニット1は、各引張ばね2のフック部2bが各揺動部材85a,85bのばね掛け部87に引っ掛け・係止される。また、印圧調整がなされた引張ばねユニット1は、各引張ばね2の一端部2a側では長ねじ94を本体側板77a,77b側に固定された各ブラケット78a,78bの上方から挿通させて、調整ねじ4の雌ねじ4bに螺合することで締結される。そして、長ねじ94をスパナ等のねじ回し工具で回転させて、図9に示すように各ブラケット78a,78bの取り付け下面と調整ねじ4の上面との隙間95が一定となるように、所定の隙間95の寸法分、余して組付ける。所定の隙間95は、限界ゲージでのセットとなる。また、所定の隙間95は、ユーザ要求による調整分である。
【0047】
印圧調整がなされた引張ばねユニット1の上述した組付けた後の動作について、まず図10を参照して説明する。図示しないメインモータの駆動により、印刷ドラム51および圧胴80の回転駆動と同期して、カムシャフト89を介して各カム90が各引張ばねユニット1の引張ばね2の付勢力(ばね力)に抗して回転駆動され、各揺動部材85a,85bのカムフォロア88が、カムシャフト89の各カム90の最大径部に当接すると、このときの引張ばねユニット1は最大長さ(最大印圧)となっている。この状態では、圧胴80は印刷ドラム51の版胴外周面とは当接していない。すなわち、従来例で説明したように、圧胴80は非印刷位置を占めていて、印刷ドラム51および圧胴80共に、通常はホームポジションを占めている状態にある(図15参照)。
【0048】
次に、印刷状態を図9を参照して説明する。カムシャフト89の各カム90が回転し、各揺動部材85a,85bのカムフォロア88と各カム90の最小径部とが対向する範囲(実際は圧胴80と印刷ドラム51が用紙を介して接するためカムフォロア88と各カム90の最小径部との間には隙間Ldが生じる)にくると、各引張ばねユニット1の引張ばね2の付勢力(ばね力)によって、各揺動部材85a,85bの自由端部が支点軸84を揺動中心として上方向に揺動して、圧胴80が印刷ドラム51の版胴外周面上の製版済みのマスタ(図示せず)に圧接する方向へ変位して印刷位置を占め、印刷が可能となる。この時、引張ばねユニット1の全長Laは、最小寸法(最小印圧)となる。
【0049】
このように、実施形態1では、印刷装置本体の外部の印刷装置本体と別体に設けられた印圧調整治具6で、引張ばねユニット1の引張ばね2の印圧をすべて同じ設定長さで同じ印圧に調整できるため、印圧のバラツキが小さくなって、市場でのメンテナンスに対応できると共に、印刷画像濃度のバラツキの小さい安定した孔版印刷装置の提供が可能となる。
【0050】
なお、引張ばねユニット1を構成する際、引張ばね2の一端部2aへのナット3の固着方式としては、上述したねじ嵌合に限らず、例えばナット3を引張ばね2の一端部2aの内周部に溶接等で固着する方式や、各引張ばね2の一端部2aの内周部に雌ねじを形成してこれにナット3の雄ねじ3aを螺合・固着する方式や、ナット3の形状を大きくして引張ばね2の一端部2aの外周部に溶接等で固着する方式や、あるいは前記した各方式を組み合わせた固着方式等でもよい。但し、溶接による固着方式では、熱歪みや溶接品質による耐久性能を考慮する必要がある。
【0051】
次に、図15を参照して、印刷装置の一例としての孔版印刷装置の全体構成および動作について、従来例で説明しなかった技術事項を補足しながら説明する。
図15に示す孔版印刷装置は、製版されたマスタ2を外周面に巻き付ける円筒状の版胴を備えた印刷ドラム51と、印刷ドラム51の右方に配設されマスタ52を製版し搬送する製版装置54と、印刷ドラム51の内部に配設され印刷ドラム51上のマスタ52にインキを供給するインキ供給装置72と、印刷ドラム51の下方に配設され給送されて来た用紙53の先端部を挾持・保持する保持手段としての用紙クランパ81を備え、印刷ドラム51の外周面上のマスタ52に用紙53を押し付ける押圧手段としての圧胴80と、印刷ドラム51の版胴外周面上の製版済みのマスタ52に用紙53を押し付けるために印圧を加える印圧装置58と、圧胴80の右方に配設され用紙53の先端を圧胴80の用紙クランパ81に向けて給送する給紙装置55と、圧胴80の左方に配設され印刷された用紙53を排出・排紙する排紙装置56と、使用済みのマスタを印刷ドラム51の版胴外周面上から剥離・排版する排版装置57とを具備している。
【0052】
印刷ドラム51は、多孔構造の支持円筒体とその外周面に巻装された複数層のメッシュスクリーン(図示せず)とを有し、支軸70の周りに回転可能に支持されている。印刷ドラム51は、図示を省略した駆動系を介してメインモータ(図示せず)により回転される。印刷ドラム51の外周面には、製版装置54で穿孔・製版されたマスタ52の先端部を挾持するマスタクランパ71が配置されている。
【0053】
マスタクランパ71は、支持円筒体の外周面の母線に沿って設けられた強磁性体よりなるステージ(図示せず)に対向し、マスタクランパ軸を介して回動可能に支持されていて、前記ステージと対向する面に磁石を貼着されて構成されている。マスタクランパ71は、印刷ドラム51が所定の回転位置を占めたときに、開閉装置(図示せず)により駆動力を伝達されて開閉される。
【0054】
製版装置54は、芯管61にロール状に巻かれて形成されたマスタロール60からマスタ52を繰り出し可能に支持するロール支持部材62と、マスタ52を搬送するプラテンローラ63と、プラテンローラ63に対して接離自在に設けられたサーマルヘッド64と、プラテンローラ63の下流側に設けられ、マスタ52を切断する上下一対のカッタ66と、マスタ52の先端をマスタクランパ71へ向けて送り出す上下一対の給版ローラ69,69(以下、「給版ローラ対69」という)とから主に構成されている。
【0055】
プラテンローラ63は、その軸を回転自在に支持されており、パルスモータ65により所定の周速度で回転駆動され、マスタ52をサーマルヘッド64に押圧しながら搬送する。
サーマルヘッド64は、マスタ52の幅方向に1列に配列された複数の発熱素子を有し、周知の接離機構(図示せず)によって、プラテンローラ63に接離自在に設けられている。サーマルヘッド64は、図示しない原稿を読み取る原稿読み取り部のA/D変換部および製版制御部で処理されて送出されるデジタル画像信号に基づきマスタ52を選択的に加熱穿孔し、穿孔画像を形成する機能を有する。
上方のカッタ66は、カッタ駆動モータ67で回転される偏心カム68により上下動され、マスタ52を切断する。
【0056】
インキ供給装置72は、印刷ドラム51と同方向に同期して回転し、印刷ドラム51の内周面にインキを供給するインキローラ73と、インキローラ73と僅かな間隙を置いて平行に配置され、インキローラ73との間にインキ溜まり75を形成するドクターローラ74と、インキ溜まり75へインキを供給する支軸70を兼ねるインキ供給管70とを有している。インキローラ73、ドクターローラ74は、支軸70に固定された側板にそれぞれ回転自在に支持されている。インキ溜まり75からインキローラ73の外周面に供給されたインキは、印刷ドラム51の版胴内周面とインキローラ73の外周面とに僅かに隙間を設けているために、印刷ドラム51の版胴内周面に供給される。インキは、適宜の位置に配置されたインキパックからインキポンプにより圧送され、支軸70の供給穴よりインキ溜まり75へ供給される。
【0057】
印圧装置58は、前記したインキローラ73、圧胴80および接離手段79から主に構成されている
胴80は、その外径寸法(直径)を印刷ドラム51の外径寸法(直径)と等しく形成されていて、印刷ドラム51が1回転したとき、圧胴80も1回転する。このため、給送されて来た用紙53の先端部を挾持する用紙クランパ81を圧胴80上に設けることができ、用紙53の先端を用紙クランパ81に突き当てながら給紙することで、用紙53に対する印刷レジスト精度を向上することができる。圧胴80および印刷ドラム51の大きさは、実施例的にいうと外径寸法=180mm、その長さ300mmのものを採用している。
【0058】
図15における紙面の奥側に位置する圧胴80の圧胴軸82に対向する本体側板77bには、圧胴80に回転を伝える図示しないカップリングが回転可能に支持されている。図15における紙面の奥側の圧胴軸82には、前記カップリングに係合するハンドル部材が取り付けられている。また、カップリング側には、印刷ドラム51の回転力を伝える歯付の圧胴側プーリ(図示せず)が固定されていて、この圧胴側プーリと印刷ドラム51の奥側の端板に取付けられた歯付の版胴側プーリとの間には、歯付ベルト(図示せず)が巻き掛けられている。一方、印刷ドラム51の奥側の端板には、前記版胴側プーリと同軸的に別のプーリが取付けられている。これにより、前記メインモータの回転力が前記歯付ベルトを介して前記別のプーリに伝達され、順次、前記版胴側プーリ、前記歯付ベルト、前記圧胴側プーリ、前記カップリング、前記ハンドル部材と伝達されることによって、圧胴80は、印刷ドラム51との押圧位置が同じとなるように、かつ、印刷ドラム51の周速度と同じ周速度で反時計回り方向に回転される。
【0059】
圧胴80の外周部には、印刷ドラム51の外周面に接触する円筒部と、印刷ドラム51におけるマスタクランパ71との衝突を避けるためにD字状にくぼんだ凹部80aとが形成されている。
圧胴80の凹部80aには、用紙53の先端部を挾持・保持する用紙クランパ81が設けられている。用紙クランパ81にはマグネットを用いたクランプ方式が採用されていると共に、用紙クランパ81は、凹部80aに配置された用紙クランパ軸にその基端部を固定されていて、スプリング(図示せず)により常に閉じる向きに付勢されている。用紙クランパ81は、本体側板77b側に配設された図示を省略したカムにより所定のタイミングで開き、用紙53の先端部をくわえた後閉じることで、圧胴80の外周面上に用紙53が保持されるようになっている。
【0060】
上述した接離手段79を構成している引張ばね2を備えた引張ばねユニット1は、圧胴80を印刷ドラム51に押圧する印圧力を発生させている。圧胴80の印刷ドラム51に対する押圧力を均一に働かせるために、圧胴80の両端にある揺動部材85a,85bの1つ1つに引張ばね2を備えた引張ばねユニット1をそれぞれ取り付けてある。
なお、前記したメインモータを備えた駆動系の詳細構成は、例えば特開平9−216448号公報の図1ないし図5等に示されているものと同じものを用いてもよい。
【0061】
印刷ドラム51の左側には排版装置57が配設されており、この排版装置57は、すでに印刷ドラム51に巻装されている使用済みのマスタ52を印刷ドラム51の外周面から剥離し、収納する。
圧胴80の左側近傍には、排紙装置56が配置されている。排紙装置56は、印刷された用紙53を剥離・案内する排紙爪110と、排紙爪110で剥離・案内された用紙53を搬送する、搬送ローラ前111と搬送ローラ後112との間に張設された搬送ベルト113と、吸引ファン(図示せず)とから構成されている。搬送ベルト113は、モータ等により印刷ドラム51の周速度よりも速い搬送速度で駆動されるように設定されている。排紙装置56の左側には、排出された用紙53を積載する排紙台114が設けられている。
【0062】
圧胴80の右方には、給紙装置55が配置されている。給紙装置55は、用紙53を1枚ずつ分離して上下一対のレジストローラ120に向けて用紙53の先端を給送する後述する給紙手段と、この給紙手段により給送されてきた用紙53をレジストローラ対120および圧胴80の用紙クランパ81に案内する上下一対のガイド板121と、給紙手段により給送されてきた用紙53の先端部にたわみを形成させた後、圧胴80の用紙クランパ81に向けて所定のタイミングで送り出す上下一対のレジストローラ120と、用紙53を積載して昇降可能な給紙台122と、この給紙台122上に積載された用紙53の先端を揃える給紙前面板119とから主に構成されている。
前記給紙手段は、呼出しローラ116、分離ローラ117および分離パッド118から構成されている。
【0063】
分離ローラ117および呼出しローラ116は、図示しないステッピングモータからなる給紙モータにより回転駆動される。レジストローラ対120は、レジストモータ102は、図示しないステッピングモータからなるレジストモータにより回転駆動される。
【0064】
上述のように構成された孔版印刷装置の動作について、上述した接離手段79の動作以外の動作に焦点を当てて説明する。なお、この孔版印刷装置では、用紙クランパ81を備えた圧胴80を用いているため、本願出願人が例えば特開平11−58916号や特開平11−309934号公報等で提案したような特有の給紙制御構成を有し、これにより特有の給紙制御が行われるが、この内容は既に公知であり本願の要旨とするところではないのでその説明を省略する。
【0065】
図示しない原稿読み取り部に原稿がセットされ、図示しない製版スタートキーが押されることにより、図15に示すようにホームポジションを占めていた印刷ドラム51が回転し、使用済みのマスタ52が印刷ドラム51の外周面から排版装置57により剥離され廃棄される。その後、印刷ドラム51は、マスタクランパ71が図15において略右横に位置する給版位置を占めた位置で停止し、前記マスタクランパ軸が回動されて、マスタクランパ71が開かれ、給版待機状態となる。
【0066】
次いで、製版装置54のパルスモータ65が駆動されることにより、プラテンローラ63が回転され始め、マスタ52が繰り出されつつ搬送される。一方、前記原稿読み取り部においてスキャナ(図示せず)が作動することにより、原稿の画像が読み取られ、前記A/D変換部および前記製版制御部で処理されて送出されるデジタル画像信号によって、サーマルヘッド64の発熱素子が選択的に発熱され、マスタ52が画像情報に応じて選択的に加熱穿孔され始める。
【0067】
マスタ52が、プラテンローラ63の回転により搬送され、マスタ52の先端部が、給版待機状態で拡開しているマスタクランパ71へ向けて送出される。パルスモータ65のステップ数がある設定値に達すると、マスタクランパ軸が回動されることでマスタクランパ71が閉じられて、製版済みのマスタ52の先端部がマスタクランパ71に挾持される。
【0068】
このクランプ動作と同時に印刷ドラム51と圧胴80とが、マスタ52の搬送速度と略同じ周速度で回転され、印刷ドラム51の外周面に製版済みのマスタ52が巻装されていく。印刷ドラム51の外周面に製版済みのマスタ52が所定長さ巻装されると、印刷ドラム51、圧胴80、プラテンローラ63の回転が停止する。この停止動作と同時に、カッタ駆動モータ67が回転されて偏心カム68が上方のカッタ66を下降させ、マスタ52を切断する。そして印刷ドラム51が再び時計回り方向に回転され、切断されたマスタ52の後端(図示せず)が、製版装置54から引き出され、印刷ドラム51の外周面に製版済みのマスタ52が完全に巻き取られる。
【0069】
続いて、用紙53の搬送手順について説明する。
圧胴80が、反時計回り方向に回転し、所定の回転位置まで回転されたとき前記給紙モータが回転駆動される。これにより、分離ローラ117は時計回り方向に回転されると同時に、呼出しローラ116の同方向の回転により用紙53が給送され、分離ローラ117と分離パッド118とで用紙53の重送が防止されて、最上位の1枚の用紙53だけがレジストローラ対120に向けて送られる。そして、用紙53の先端がレジストローラ対120のニップ部に衝突して所定量の湾曲たわみが形成された時点で、前記給紙モータの回転が停止されることにより、分離ローラ117と呼出しローラ116とが停止する。
【0070】
次いで、圧胴80がさらに反時計回り方向に回転し、所定の回転位置まで回転されたとき前記レジストモータと同時に前記給紙モータが回転駆動される。これにより、レジストローラ対120が回転され、圧胴80の用紙クランパ81に向けて用紙53の先端の給送を開始し、分離ローラ117を同時に低速で少しの間回転させることで用紙53のたわみが急激に消滅するときに生じる騒音を低減している。
【0071】
なお、圧胴80は、前記メインモータからの駆動によって、操作パネル等に設けられている印刷速度設定キー(図示せず)により設定された設定印刷速度値に応じた回転速度(周速度)で回転している。用紙53は、圧胴80の周速度の1.4倍の送り速度で搬送され、圧胴80の用紙クランパ81が閉じようとしたとき、用紙クランパ81に追いつき、圧胴80の周速度と同じ速度になる。
圧胴80の用紙クランパ81は、所定のタイミングで開く。このタイミングに合わせ、圧胴80の用紙クランパ81は、用紙53の先端部をくわえ・挾持した後、用紙クランパ81は閉じられ、こうして圧胴80は、用紙53を圧胴80の外周面に保持したまま回転し、用紙53の先端部が印刷ドラム51の外周面と圧胴80の外周面との間に搬送される。
【0072】
印刷ドラム51の外周面と圧胴80の外周面との間に搬送された用紙53に対して、接離手段79の引張ばね2を備えた各引張ばねユニット1により圧胴80が印刷ドラム51の外周面に押圧する上向きに揺動変位されることでニップ部が形成されると共に、圧胴80の外周面が用紙53を印刷ドラム51の外周面に対して押圧し所定の印圧を加える。
こうして、圧胴80の外周面の押圧によって、回転する印刷ドラム51の外周面に巻装された製版済みのマスタ52に用紙53が連続的に押圧されることにより、製版済みのマスタ52が印刷ドラム51の外周面に密着すると共に、印刷ドラム51の開孔部分から製版済みのマスタ52の穿孔部分へとインキが滲み出てきて用紙53の表面に転移され、孔版印刷が行われる。
このとき、インキローラ73も印刷ドラム51の回転方向と同一方向に回転する。インキ溜まり75のインキは、インキローラ73の回転によりインキローラ73の表面に付着され、インキローラ73とドクターローラ74との間隙を通過する際にその量を規制され、印刷ドラム51の内周面に供給される。
【0073】
圧胴80がさらに回転し、排紙爪110の手前の用紙排出位置で用紙クランパ81が開放されると、印刷された用紙53が排紙爪110により剥離され、搬送ベルト113で搬送されて排紙台114上に排出積載される。こうして、製版済みのマスタ52にインキを充填する所謂版付けが行われると共に、印刷ドラム51が圧胴80から離間して初期状態に復帰し、印刷待機状態となる。
印刷終了後、オペレーターは排出された印刷物を目視して、印刷画像品質の確認や印刷画像位置の確認等を行い、これらがオーケーであれば、図示しないテンキーで印刷枚数を設定し、図示しない印刷スタートキーを押下することにより、給紙、印刷および排紙の各工程が設定した印刷枚数分繰り返して行なわれ、孔版印刷の全工程が終了する。
(実施形態1の変形例1)
図11に、実施形態1の変形例1を示す。この変形例1は、図1、図7等に示した引張ばねユニット1に代えて、引張ばねユニット21の印圧調整を上記印圧調整治具で行うことのみ相違する。引張ばねユニット21は、図1、図7等の引張ばねユニット1と比較して、図1、図7等のナット3に代えて、調整位置で固定可能なナット23を有することおよびロックナット5を除去したことのみ相違する。
【0074】
ナット23は、図1、図7等のナット3と比較して、その頭部の長さをナット3のそれよりも長く形成されていて、図示しない押しねじをナット23に形成した雌ねじ23bに螺合させて、前記押しねじで調整ねじ4の外周部に固定できるようになっていることが相違する。このようにしても、図1、図7等のロックナット5を用いた場合と同じ利点および後述する効果を奏することは明らかである。なお、符号23aは、引張ばね2の一端部2aの内周部にねじ嵌合するナット23の雄ねじを示す。
(実施形態1の変形例2)
図12に、実施形態1の変形例2を示す。この変形例2は、図1、図7等に示した引張ばねユニット1に代えて、引張ばねユニット31の印圧調整を上記印圧調整治具で行うことのみ相違する。引張ばねユニット31は、図1、図7等の引張ばねユニット1と比較して、引張ばね2のフック部2bに代えて、引張ばね2の他端部2cを固定する他端固定部材32を引張ばね2の他端部2cに固着したことが主に相違する。
【0075】
他端固定部材32の外周部には、引張ばね2の一端部2aと同様に、引張ばね2の他端部2cにねじ嵌合する雄ねじ32aが形成されている。他端固定部材32の端部には、取付孔34を形成された取付板33が固着されている。取付板33の取付孔34は、図1、図7等のフック部2bの代用であり、図9や図10に示す各揺動部材85a,95bのばね掛け部87に代えたピンねじ等の締結手段により、他端固定部材32の取付板33を揺動可能に取り付けるものである。
このようにしても、図9、図10の引張ばねユニット1のフック部2bによる各揺動部材85a,85bのばね掛け部87に対する係止状態と同様にすることができ、同じ利点および後述する効果を奏することは明らかである。また、他端固定部材32を引張ばね2の他端部2cの内側で移動可能に略螺合(ねじ嵌合等)させ、印圧調整後、固着してもよい。引張ばね2の他端部と他端固定部材32との固着手段は、前記ねじ嵌合による締結・固定に限らず、溶接等でもよいことはいうまでもない。
(実施形態2)
図13および図14に、実施形態2を示す。
実施形態2は、図1、図7等に示した引張ばねユニット1に代えて、印圧ばねとしての圧縮ばね42の印圧調整が後述するようになされる印圧ばねユニットとしての圧縮ばねユニット41を用いること、実施形態1の印圧調整治具6に代えて、仮組立ての状態の圧縮ばねユニット41の圧縮ばね42の印圧調整を、印刷装置本体の外部で行うための、印刷装置本体と別体に設けられた印圧ばね調整装置としての印圧調整治具36を用いること、および実施形態1において印圧調整がなされた引張ばねユニット1を備えた接離手段79に代えて、印圧調整がなされた圧縮ばねユニット41を備えた接離手段76を用いることが主に相違する。
この実施形態2は、端的に説明すると、実施形態1で用いた引張ばねユニット1と比較して、圧縮ばね42を備えた圧縮ばねユニット41を用いるものであり、図14に示すように各揺動部材85a,85bへの取付方向およびばね荷重(ばね力)の方向が圧縮で作用するというように反対になるだけであり、実施形態1と同様の利点および後述する効果を奏するものである。
但し、各揺動部材85a,85bに接する面では、圧縮ばねユニット41の圧縮ばね42がいわゆる胴曲がりを生じて倒れないように倒れ防止用のばねガイド44を設けたり、あるいは、長ねじ94の寸法を引張ばねユニット1で用いたよりも長くして圧縮ばね42の倒れを防止したりすることが必要になる。また、圧縮ばね42の反力を受けるため、抜け止め部材50も必要となる。
【0076】
図13に示す圧縮ばねユニット41は、組付け調整中の状態を示している。圧縮ばねユニット41は、圧縮ばね42と、圧縮ばね42の一端部42aの内周部に略螺合(ねじ嵌合)すると共に、その内周部に雌ねじ3bを形成されたナット3と、実施形態1と同様の調整ねじ4と、圧縮ばね42の印圧調整後、圧縮ばね42の調整位置で調整されたばね長さを固定する位置固定手段としての実施形態1と同様のロックナット5から主に構成されている。
【0077】
圧縮ばねユニット41の組付けは、実施形態1と略同様に行われる。なお、圧縮ばね42の有効巻き数は、圧縮ばね42の一端から他端までの総巻数からねじ込み量の巻数を差し引いたものとなる。
【0078】
印圧調整治具36の1例を図13に示す。この印圧調整治具36は、圧縮ばねユニット41の調整ねじ4の頭部を押える押し部材47と、この押し部材47に一体的に形成されていて、調整ねじ4の頭部を案内すると共にその抜け止めも兼ねる抜け止めガイド47aと、調整ねじ4の雄ねじ4a部分を案内するガイド部材48と、押し部材47およびガイド部材48を固設していて図13の左右方向に移動可能な移動部材46と、この移動部材46を左右方向に直線的に移動するように案内支持するリニアガイド37と、移動部材46の一側壁に係合して移動部材46を左右方向に移動させるための送りリンク38と、送りリンク38を回転可能に支持する回転支持部材38aと、移動部材46の移動を所定位置で止めるストッパ部材45と、圧縮ばね42の他端部の内部に嵌入して圧縮ばね42の回転および倒れ(胴曲がり)を防止するための回り止めガイド49と、圧縮ばねユニット41の圧縮ばね42のばね力を測定する実施形態1と同様のデジタルテンションゲージ8と、リニアガイド37、回転支持部材38a、ストッパ部材45、およびデジタルテンションゲージ8を固定する基台12から主に構成されている。
【0079】
デジタルテンションゲージ8は、圧縮ばねユニット41の圧縮ばね42の印圧調整するときのばね力を測定するための印圧測定手段としての機能・構成を有する。デジタルテンションゲージ8は、切り換えることにより、コンプレッションゲージとしても働く。
【0080】
圧縮ばねユニット41を図13に示すように印圧調整治具36に上述したように取り付けセットしたときの圧縮ばねユニット41の全長Laと、圧縮ばねユニット41が印刷装置本体に取り付け・組み込まれたときの最大長さLa’(図14参照)とは、同じになるように印圧調整治具36の前記した各部品の位置が調整されて組付けされている。
【0081】
圧縮ばねユニット41の圧縮ばね42の印圧調整作業について説明する。
先ず、仮組立てされた圧縮ばねユニット41を印圧調整治具36に上述したとおりにセットする。次に、調整ねじ4の頭部を、ねじ回し工具(例えばスパナ等)で回転させると、圧縮ばね42の他端部42bはデジタルテンションゲージ8に取り付けられた回り止めガイド49で回り止めされていて殆ど回転しないため、調整ねじ4の雄ねじ4a部分はナット3の雌ねじ3a(図3(a)参照)にねじ込まれて行く。その結果、圧縮ばねユニット41の全長Laは変化しないが、圧縮ばね42のばね長さだけは図13に示す矢印13の方向に縮められて印圧は上が3て行く。この印圧の上昇は、デジタルテンションゲージ8に表示され、設定値になるまで、調整ねじ4で調整することができる。設定値に印圧調整が完了すると、最後に、その位置で調整ねじ4とナット3とのねじ締結によるゆるみが発生しないように、ロックナット5で締め付け固定する。
このように、印圧調整治具36では、圧縮ばねユニット41の全長Laを一定に保持した状態で、圧縮ばね42の有効巻数部分のばね長さを変えることにより、ばね力を一定範囲内に調整するものである。
【0082】
次に、図13および図14を参照して、印圧調整治具36で印圧調整がなされロックナット5でその調整位置が固定されて組付け完了された圧縮ばねユニット41を印刷装置本体内の接離手段76に組み込む際の作業手順およびその接離手段の動作を説明する。
図14に示す実施形態2の接離手段76は、実施形態1の接離手段79と比較して、接離手段79の引張ばねユニット1に代えて、印圧調整治具36で印圧調整がなされロックナット5でその調整位置が固定されて組付け完了された圧縮ばね42を備えた圧縮ばねユニット41を用いて組付けること、圧縮ばね42の倒れ防止用のばねガイド44を各揺動部材85a,85bの下面に固設したこと、および圧縮ばね42の反力による抜け止め防止用の抜け止め部材50を有すること、ブラケット78a,78bに代えて、ブラケット43a,43bを用いることが主に相違する。
【0083】
印圧調整治具36で上述したように印圧調整がなされた圧縮ばねユニット41は、各圧縮ばね42の他端部が各揺動部材85a,85bに固設されたばねガイド44に嵌入される。また、印圧調整がなされた圧縮ばねユニット41は、各圧縮ばね42の一端部42a側では長ねじ94を本体側板77a,77b側に固定された各ブラケット43a,43bの下方から挿通させてから、抜け止め部材50に挿通させて、調整ねじ4の雌ねじ4bに螺合することで締結される。そして、長ねじ94をスパナ等のねじ回し工具で回転させて、図14に示すように各ブラケット43a,43bの取り付け上面と調整ねじ4の下面との隙間95が一定となるように、所定の隙間95の寸法分、余して組付ける。所定の隙間95は、限界ゲージでのセットとなる。また、所定の隙間95は、ユーザ要求による調整分でもある。
【0084】
印圧調整がなされた圧縮ばねユニット41の上述した組付けた後の動作については、圧縮ばね42のばね力の作用が引張ばね2の場合と比べて圧縮側で作用するだけの違いであり、容易に実施できて自明であるからその説明を省略する。
【0085】
このように、実施形態2では、印刷装置本体の外部の印刷装置本体と別体に設けられた印圧調整治具36で、圧縮ばねユニット41の圧縮ばね42の印圧をすべて同じ設定長さで同じ印圧に調整できるため、印圧のバラツキが小さくなって、市場でのメンテナンスに対応できると共に、印刷画像濃度のバラツキの小さい安定した孔版印刷装置の提供が可能となる。
【0086】
なお、圧縮ばねユニット41を構成する際、圧縮ばね42の一端部42aへのナット3の固着方式としては、上述したねじ嵌合に限らず、例えばナット3を圧縮ばね42の一端部42aの内周部に溶接したり、圧縮ばね42の一端部42aに雌ねじを形成しての螺合等で固着してもよい。あるいは、ナット3の形状を大きくして圧縮ばね42の一端部42aの外周部に溶接等で固着してもよい。但し、溶接による固着方式では、熱歪みや溶接品質による耐久性能を考慮する必要がある。
【0087】
本発明の実施形態は、上述した実施形態や変形例等に限らず、押圧手段としてプレスローラを用いた場合の印圧装置や接離手段に適用できる他、印圧ばねを使用している印刷装置であればどのような印圧方式のものであっても応用することができる。
以上述べたとおり、本発明を実施例を含む特定の実施形態や変形例等について説明したが、本発明の構成は、上述した実施形態や変形例等に限定されるものではなく、これらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【0088】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、上述したような従来技術の有する諸問題点を解決して新規な印圧ばね調整装置を提供することができる。請求項ごとの効果を挙げれば次のとおりである。
請求項1ないし記載の発明によれば、上記構成により、印圧ばねを印刷装置本体に取り付ける前に、印圧ばね調整装置により、印圧ばねユニットの全長を一定にした状態で、あるいはこれに加えて印刷装置本体に取り付けられたときの最大長さと略同じに設定した状態で、印圧測定手段(例えばデジタルテンションゲージ)の例えば表示を見ながらばね力を一定範囲内に調整する印圧調整作業ができるため、印圧ばね製造上のバラツキを吸収することができ、その結果、バラツキの小さい安定した印圧ばねユニットの供給が可能となる。したがって、押圧手段が印刷ドラムに相対的に圧接する際に作用する印圧ばね同士の印圧差がなくなり、印刷画像濃度のバラツキが小さくなって、低温時の印圧差による画像抜け等の印刷画質の劣化等をなくすことができると共に、印圧ばねユニット全体の取り付け時の全長も一定でかつ印圧も一定となるため、市場での部品交換等のメンテナンス性も向上する。さらに、印刷装置本体に取り付けられたときの最大長さと略同じ長さでの調整のため、調整手段が例えば調整ねじからなる場合においてねじ部のダレによる印圧の減少を小さく抑えることができ、機械間のバラツキが小さい安定した製品の供給ができる。加えて、印刷装置本体と別体に設けられた印刷装置本体の外部で印圧ばね調整装置による印圧ばねの印圧調整ができるため、量産性に優れていると共に、スペース的にも楽な安定した作業ができる。
【0091】
請求項記載の発明によれば、上記構成により、印圧調整後の印圧ばねユニットの調整手段の位置決めができて、ゆるみに伴うばね長さの変動による印圧のバラツキを押さえ、さらに安定した機械間のバラツキをなくした製品の供給ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1で用いる引張ばねユニットの調整完了状態を示す正面図である。
【図2】 図1における引張ばねユニットの組付け途中の半完成品であって、引張ばねにナットを組み込んだ状態を示す正面図である。
【図3】 (a)は、図1における引張ばねユニットを構成する引張ばねの平面図、(b)は、同引張ばねの正面図、(c)は、同引張ばねの左側面図である。
【図4】 (a)は、図1における引張ばねユニットを構成するナットの平面図、(b)は、同ナットの正面図である。
【図5】 (a)は、図1における引張ばねユニットを構成する調整ねじの正面図、(b)は、同調整ねじの平面図、(c)は、図5(a)のSA−SAの断面図である。
【図6】 (a)は、図1における引張ばねユニットを構成するロックナットの平面図、(b)は、同調整ねじの正面図である。
【図7】 引張ばねユニット用の印圧調整治具の平面図である。
【図8】 図7の要部の正面図である。
【図9】 実施形態1における印刷状態時の印圧装置および接離手段周りを示す要部の正面図である。
【図10】 実施形態1における非印刷状態時の印圧装置および接離手段周りを示す要部の正面図である。
【図11】 変形例1で用いる引張ばねユニットを示す部分断面図である。
【図12】 変形例2で用いる引張ばねユニットを示す断面図である。
【図13】 (a)は、実施形態2で用いる圧縮ばねユニットおよびその印圧調整を行う印圧調整治具の平面図、(b)は、同印圧調整治具の正面図である。
【図14】 (a)は、実施形態2における非印刷状態時の印圧装置および接離手段周りを示す要部の正面図、(b)は、図14(a)をZ方向から見たときの底面図、(c)は、図14(a)をZ方向から見たときのブラケットのみを示す底面図である。
【図15】 版印刷装置の全体の構成図である。
【図16】 従来の圧胴周りの要部を示す斜視図である。
【図17】 従来の接離手段の構成内容を示す分解斜視図である。
【図18】 従来における非印刷状態時の印圧装置および接離手段周りを示す要部の正面図である。
【符号の説明】
1、21,31 印圧ばねユニットとしての引張ばねユニット
2 印圧ばねとしての引張ばね
3 引張ばねユニットおよび圧縮バネユニットを構成するナット
4 調整手段としての調整ねじ
5 位置固定手段としてのロックナット
6,36 印圧ばね調整装置の一例としての印圧調整治具
8 印圧測定手段としてのデジタルテンションゲージ
41 印圧ばねユニットとしての圧縮ばねユニット
42 印圧ばねとしての圧縮ばね
51 印刷ドラム
52 マスタ
53 用紙
76,79 接離手段
77a,77b 印刷装置本体としての本体側板
80 押圧手段としての圧胴
94 長ねじ
95 隙間
La 印圧ばねユニットの全長
La’ 最大長さ
X 用紙搬送方向

Claims (8)

  1. 印刷装置本体内の印刷ドラムに対して相対的に接離自在な押圧手段を該印刷ドラムに相対的に接離させる接離手段に組み込まれる前に印圧ばねの印圧調整がなされる前記印圧ばねの一端に、そのばね長さを変える調整手段を設けた印圧ばねユニットの前記印圧ばねの印圧調整を、前記印刷装置本体の外部で行うための、前記印刷装置本体と別体に設けられた印圧ばね調整装置であって、
    前記印圧ばねおよび前記調整手段を含む前記印圧ばねユニットの全長を一定とした状態で、前記印圧ばねの印圧調整を行うことを特徴とする印圧ばね調整装置
  2. 請求項1記載の印圧ばね調整装置において、
    前記印圧ばねは、引張ばねであることを特徴とする印圧ばね調整装置
  3. 請求項1記載の印圧ばね調整装置において、
    前記印圧ばねは、圧縮ばねであることを特徴とする印圧ばね調整装置
  4. 請求項1,2または3記載の印圧ばね調整装置において、
    前記印圧ばねの印圧調整後、前記印圧ばねおよび前記調整手段を含む前記印圧ばねユニットは、前記印圧ばねの調整位置で調整された前記ばね長さを固定する位置固定手段を有することを特徴とする印圧ばね調整装置
  5. 請求項1,2,3または4記載の印圧ばね調整装置において
    前記印圧ばねユニットの全長を、前記印圧ばねユニットが前記印刷装置本体に取り付けられたときの最大長さと略同じに設定した状態で調整することを特徴とする印圧ばね調整装置。
  6. 請求項1ないし5の何れか一つに記載の印圧ばね調整装置において、
    前記印圧ばねおよび前記調整手段を含む前記印圧ばねユニットの全長を一定に保持した状態で、そのばね力を一定範囲内に調整することを特徴とする印圧ばね調整装置。
  7. 請求項1ないし6の何れか一つに記載の印圧ばね調整装置において、
    前記印圧ばねの印圧調整するときの前記ばね力を測定するための印圧測定手段を、前記印圧ばねの他端側に有することを特徴とする印圧ばね調整装置。
  8. 請求項1ないし7の何れか一つに記載の印圧ばね調整装置において、
    前記印圧ばねの印圧調整後、前記印圧ばねおよび前記調整手段を含む前記印圧ばねユニットは、前記印圧ばねの調整位置で固定されることを特徴とする印圧ばね調整装置。
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