JP2559545B2 - 孔版印刷機のインク滲出装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、孔版印刷機のインク滲
出装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の孔版印刷機のインク滲出装置１０
０に付いて、図７、図８により説明する。図に示す様に
インクを内部に収納したシリンダー１０１は、その外周
に巻着した孔版原紙１０２を固定する装着装置を備えた
部分１０３が平面状の側面視Ｄ形状になっており、イン
クは、シリンダー１０１内のインク滲出装置である固定
腕１０４と揺動可能腕１０５に支えられたインク滲出ロ
ーラー１０６によって、シリンダー１０１外部へ押出さ
れる。押出されたインクは、シリンダー１０１のスクリ
ーン１０７を通過して孔版原紙１０２を通り、加圧バネ
１０８によってシリンダー１０１方向に付勢されたプレ
スローラー１０９に押されて印刷用紙１１０に転写され
る。

【０００３】シリンダー１０１は、上述の様に側面視Ｄ
型で、孔版原紙１０２の装着装置を備えた部分１０３だ
け内側に円周に弦を描く状態で装着板が取り付けられて
いて、完全な円筒形を保っていないので、シリンダー１
０１回転中は、インク滲出ローラー１０６がこの部分を
逃げる必要がある。インク滲出ローラー１０６が逃げる
区間は、装着板を取り付けた部分１０３にあるインク注
入用の孔部（図示せず）わずか後方から、シリンダー１
０１の回転開始部の前方までの区間である。インク滲出
ローラー１０６の逃げる方法としては、シリンダー１０
１内部両端に取り付けたカム１１１が、インク滲出装置
１００の揺動腕となる揺動可能腕１０５を跳ね上げて前
述の区間を逃している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで従来のインク
滲出装置１００では図１０に示す様に、シリンダー１０
１の回転方向に対して楔方向に組み立てられた固定腕１
０４と揺動腕（リンク）１０５を用いている。これは図
９の順方向のリンク式に比べて、シリンダー１０１内側
への力の加わり方は、ローラー１０６の食い込み力を発
生させ、大きな圧力と共にインクをシリンダー１０１の
外側へ押し出している。このため、必然的にシリンダー
１０１内部には大きな負荷が加わる事になり、孔版印刷
の機構全体に影響を及ぼす虞があるために、規定回数以
上にインク滲出装置１００の使用が出来なかった。

【０００５】そこで通常の使用としては、インク滲出装
置１００の固定腕１０４を規定角度回転させる事で、イ
ンク滲出装置を解除し、インクの浸透圧のみで供給が行
われている。そのため印刷原稿に一部にベタ部等があっ
た場合等、局地的にインク供給量が増すと、需要と供給
のバランスが崩れて印刷画像にムラが発生する可能性が
ある。

【０００６】又、インクの流れは必ずしもシリンダー１
０１内側に均一な流れを示す訳ではなく、インクの流道
が発生した場合、流道以外の部分へのインク供給が断た
れてしまい、前例同様印刷画像にムラが発生する原因と
なってしまっている。尚、従来のインク滲出装置１００
では、インキングのｏｎ、ｏｆｆ、即ち強制インク滲出
の有無のみで、インク温度、粘度に対するインクの供給
量の調整は不可能であった。以上の様に従来のインク滲
出装置１００のままでは、インクの供給、管理が不可能
であり、安定したインク供給、鮮明な印刷画像等は困難
となる。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明は、支持軸によってシリンダーを孔版印刷機本
体側に支持し、このシリンダーの外周に孔版原紙を巻着
して、シリンダー内部に設けたインク滲出装置によって
インクの供給を行う孔版印刷機において、支持軸をシリ
ンダー内部で左右２本に分離し、この分離した左右の支
持軸に夫々固定腕を取り付け、この各固定腕の他端を支
持軸と平行な連結棒で連結し、この連結棒に、連結棒を
支軸として揺動する押し出し板を取付け、この押し出し
板の先端部がシリンダー内周面に押圧する状態で当接
し、この押し出し板のシリンダー内周面への押圧力を調
整可能にした。

【０００８】

【作用】上記手段によれば、連結棒に取り付けた押し出
し板はシリンダー内の完全に円筒形でない部分に対して
も揺動調整されて当接するので、シリンダー内部の特定
部分にだけ大きな負荷がかかる事がない。

【０００９】

【実施例】次に本発明の実施例を添付した図面により説
明する。最初に図１により本発明のインク滲出装置を適
用した孔版印刷機に付いて一通り説明しておく。この孔
版印刷機１は、製版から印刷迄を一貫して行う一体型で
あり、本体２内部には製版機構３、給紙機構４、印刷機
構５、排版機構６等を備えている。尚、勿論本発明のイ
ンク滲出装置は、製版は別に行う一体型でない孔版印刷
機の印刷機構に適用する事も出来る。

【００１０】製版機構３では、１００版分位の分量をロ
ール状に巻いたロールマスター原紙７を製版部８のサー
マルヘッド９と押えローラ１０の間に導き、図示せざる
ＣＰＵからの指示で所望の製版が行われる。製版された
孔版原紙１１は、１対の送りローラ１２で送られてシリ
ンダー１３の外周に巻き付けられ、端部がカッター１４
で切断される。

【００１１】製版機構３の下には、給紙機構４の給紙台
１５が設けられ、印刷用紙１６が載置されている。印刷
用紙１６は、送りローラ１７と上下ローラ１８により１
枚ずつ、孔版原紙１１の巻き付けられたシリンダー１３
とプレスローラ１９の間に送られる。

【００１２】印刷機構５は、前述のシリンダー１３とプ
レスローラ１９を備え、プレスローラ１９が、送られて
きた印刷用紙１６を孔版原紙１１の巻き付けられたシリ
ンダー１３に押し付ける事で印刷が行われる。印刷され
た印刷用紙１６は、本体２の外部に設けられた図示せざ
る排紙台に１枚ずつ積み上げられて行く。排紙機構６
は、不用になった孔版原紙１１を爪２０で剥がして排版
ボックス２１に収納する。

【００１３】次に上述の印刷機構５に適用した本発明の
インク滲出装置２２について説明する。シリンダー１３
に巻着した孔版原紙１１を固定するための図示せざる装
着装置のある側面視Ｄ型形状の部分２３には、図２に示
す様に内周部分を跨ぐ様に、薄い板状のバネで表面に孔
が穿設されたステンレス材の板２４が取り付けてある。
このバネの板２４によってシリンダー１３内部の形状
は、限りなく楕円に近いものとなり、後述するインク滲
出装置２２でインキングの際、このインク滲出装置２２
の機構と相俟って、インク滲出装置２２への負荷が軽減
される。

【００１４】シリンダー１３の左右の側壁２５中心部に
は、図３に示す様にパイプ状の支持軸２６、２７がシリ
ンダー１３内で左右に分離して、夫々側壁２５外部に延
出する形で取り付けてある。各々の支持軸２６、２７の
先端部は、夫々図示せざる本体２側のフレームに固定さ
れている。

【００１５】図４に示す様にシリンダー１３内の各支持
軸２６、２７に、夫々固定腕２９、３０の一端を固定
し、各々の固定腕２９、３０の他端を、支持軸２６、２
７と平行な連結棒３１によって一体に固定する。連結棒
３１に、連結棒３１を支軸として揺動可能なバネ性を持
った薄いステンレス製の押し出し板３２を取り付ける。

【００１６】図４に示す様にこの押出し板３２の基部に
設けたスプリングフック孔３９、３９と、支持軸２６、
２７との間に夫々スプリング３８、３８を係止する。こ
のスプリング３８、３８に引かれて、インク滲出装置２
２としての押し出し板３２の先端部３２ａがシリンダー
１３内周面を押圧する状態で当接し、常時インキング状
態が保たれる。

【００１７】図３、図４に示す様に押し出し板３２の左
右方向中央部には、ワイヤーフック３３が設けられ、こ
のワイヤーフック３３の孔３４を挿通して左右対称に支
持軸２６、２７間にワイヤー３５が取り付けてある。ワ
イヤー３５は、支持軸２６内を摺動自在の調整軸３６に
フック３７を介して取り付けてある。

【００１８】図５に示す様にこのワイヤー３５を調整軸
３６を外部から回動操作するレバー２８（図３参照）に
よって引張り、ワイヤーフック３３が上昇すると、スプ
リング３８、３８による押し出し板３２の先端部３２ａ
のシリンダー１３内周面への押圧力が弱められ、インク
４０の供給量が減少する。

【００１９】図６に示す様に外部からレバー２８を回動
操作してワイヤー３５を弛めると、ワイヤーフック３３
が下降して、スプリング３８、３８による押し出し板３
２の 先端部３２ａのシリンダー１３内周面への押圧力が
強められ、インク４０の供給量が増加する。

【００２０】押し出し板３２は、スプリング力と、ワイ
ヤーフック３３の上昇によって先端部３２ａ付近のしな
りが変化し、シリンダー１３内周面との接触面積の変化
と、上記の様にワイヤーフック３３の上下動によって押
し出し板３２を揺動させて加圧力を調整することによっ
て、インク４０の滲出量を調整しインク４０の供給量を
調節する。

【００２１】このインク滲出装置２２としての押し出し
板３２からは、従来の機構にあったカム、揺動腕、ロー
ラー等が取り去られることになるため、全体の質量の軽
減が実現される。又、本体２側の調整軸３６の回転でイ
ンク滲出装置２２の加圧が制御されるため、図示せざる
本体操作パネル上での調整設定が可能となる。

【００２２】

【発明の効果】以上詳述した様に本発明によれば、 イ
ンク滲出装置を制御することにより、インクの供給、管
理が可能となり、安定したインク供給によって鮮明な印
刷画像を保証出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のインク滲出装置を適用した孔版印刷機
の断面図

【図２】同じくインク滲出装置の側断面図

【図３】同じく正断面図

【図４】インク滲出装置の斜視図

【図５】インク滲出装置の作用を説明する図

【図６】インク滲出装置の作用を説明する図

【図７】従来のインク滲出装置の側断面図

【図８】同じく従来のインク滲出装置の側断面図

【図９】シリンダーの回転方向に対して楔方向のリンク
式のインク滲出装置を示す図

【図１０】同じくシリンダーの回転方向に対して順方向
のリンク式のインク滲出装置を示す図

【符号の説明】

１…孔版印刷機，２…孔版印刷機本体，１１…孔版原
紙，１３…シリンダー，２６…支持軸，２７…支持軸，
２９…固定腕，３０…固定腕，３１…連結棒，３２…押
し出し板。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 支持軸によってシリンダーを孔版印刷機
   本体側に支持し、このシリンダーの外周に孔版原紙を巻
   着して、シリンダー内部に設けたインク滲出装置によっ
   てインクの供給を行う孔版印刷機において、 前記支持軸をシリンダー内部で左右２本に分離し、 この分離した左右の支持軸に夫々固定腕を取り付け、 この各固定腕の他端を支持軸と平行な連結棒で連結し、 この連結棒に、連結棒を支軸として揺動する押し出し板
   を取付け、 この押し出し板の先端部がシリンダー内周面に押圧する
   状態で当接し、 この押し出し板のシリンダー内周面への押圧力を調整可
   能にした、 ことを特徴とする孔版印刷機のインク滲出装置。