JP4672522B2 - 鋳物製造用構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳物の製造時に用いられる鋳型等の構造体及び該構造体の製法、並びに該構造体を用いた鋳物の製造方法に関する。
鋳物製造において、一般に、鋳物砂で内部にキャビティ(必要に応じて中子)を有する鋳型を成形するとともに、該キャビティに熔湯を供給する受け口、湯口、湯道及び堰(以下、これらを注湯系ともいう。)を該キャビティに通じるように成形し、更に外部に通じるガス抜き、押湯或いは揚がりは、通常鋳物砂で鋳型とともに一般的に成形したり、注湯系を耐火材料である陶管等を用いて成形しているが、特許文献1等にみられるような有機繊維、無機繊維、無機粒子及びバインダーを含有する構造体からなる湯道(ランナー)を用いて鋳型を成形し鋳物を製造する方法が提案されている。特許文献1では、特に、構造体を熱硬化させる前に、シリカ等を含有又は含浸させて用いることが記載されている。該方法は、従来の陶管に比べて鋳造する時の溶融金属の熱損失が少なく、軽量で且つ勘合部を有するため湯道の組み立て作業が簡便であり、粉塵発生や産業廃棄物が低減する等の改善効果が認められる。
特開2004−195547
しかし、特許文献1の前記構造体からなる湯道からの発生ガスに対して敏感な薄肉鋳鋼等の鋳物製造に用いた場合、比較的ガス欠陥が発生し易く鋳物品質が低下するという課題が残されていた。
本発明の課題は、鋳物品質であるガス欠陥を改善することができる鋳物製造用構造体を提供することにある。
本発明は、有機繊維、無機繊維及びバインダーを含有する構造体(I)と、該構造体(I)の表面に付着する平均粒径1〜800nmの無機粒子と、を含んで構成される鋳物製造用構造体に関する。
また、本発明は、上記本発明の鋳物製造用構造体を用いた鋳物の製造方法に関する。
また、本発明は、有機繊維、無機繊維及びバインダーを含有する構造体(I)の表面に、平均粒径1〜800nmの無機粒子を付着させる工程を有する鋳物製造用構造体の製造方法に関する。
また、本発明は、上記本発明の鋳物製造用構造体の製造方法であって、前記有機繊維、前記無機繊維及び前記バインダーを少なくとも含む原料スラリーを用いた抄造工程を有する鋳物製造用構造体の製造方法に関する。
本発明によれば、鋳物品質であるガス欠陥を改善することができる、鋳物用鋳型として好適な、鋳物製造用構造体が提供される。
以下本発明を、その好ましい形態に基づき説明する。本発明の鋳物製造用構造体は、有機繊維、無機繊維及びバインダーを含有する構造体(I)の表面に平均粒径1〜800nmの無機粒子を付着させてなる。好ましい本発明の鋳物製造用構造体は、有機繊維、無機繊維及びバインダーを含有し、構造体(I)〔好ましくは100〜300℃で熱処理された構造体(I)〕の表面に、平均粒径1〜800nmの無機粒子を含む層が形成されている。すなわち、該無機粒子が構造体(I)の表面で層を形成することが好ましい。
前記有機繊維は、構造体(I)において鋳造に用いられる前の状態ではその骨格を成し、鋳造時には溶融金属の熱によって、その一部若しくは全部が燃焼し、鋳物製造後の構造体内部にキャビティを形成する。
前記有機繊維には、木材パルプの他、フィブリル化した合成繊維、再生繊維(例えばレーヨン繊維)等が挙げられ、それらが単独で又は二種以上混合されて用いられる。これらの中でも紙繊維が好ましい。その理由は、抄造により多様な形態に成形でき、脱水、乾燥された成形体の湿態強度特性が優れ、紙繊維の入手性が容易且つ安定的で、経済的である。
前記紙繊維には、木材パルプの他、コットンパルプ、リンターパルプ、竹や藁その他の非木材パルプを用いることができる。バージンパルプ若しくは古紙パルプ(回収品)を単独又は二種以上を混合して用いることができる。入手の容易性、環境保護、製造費用の低減等の点から、特に古紙パルプが好ましい。
前記有機繊維の平均繊維長は0.8〜2mmが好ましく、0.9〜1.8mmがより好ましい。有機繊維の平均繊維長が0.8mm以上であれば成形体の表面にひびが生じたり、衝撃強度等の機械物性に劣ったりすることがなく、また、2mm以下であれば肉厚むらが発生し難くなり、表面の平滑性も良好となる。
前記有機繊維の含有量は構造体の成形容易性及びガス発生量抑制効果より、1重量部以上20重量部未満が好ましく、2〜15重量部がより好ましい。なお、本明細書において、重量部は、有機繊維、無機繊維及びバインダー(及び他の骨材も含む)の合計100重量部に対する値を意味する。有機繊維の含有量が1重量部以上であれば構造体の骨格をなす有機繊維が充分であり、構造体の成形性が良好となり、脱水後や乾燥後の構造体の強度が充分となる。また、20重量部未満であれば注湯時に燃焼ガスが大量に発生するのを防止でき、湯口から吹き戻しが発生したり、揚がり(鋳型の上部に設けた細い棒状のキャビティで、溶湯が鋳型を満たしたのち鋳型上面に上昇する部分)から炎が出たりすることを防止できる。その結果鋳造品ガス欠陥を低減でき、鋳物品質が良好となる。有機繊維種は構造体の成形性や供給性や経済性から古紙(新聞紙等)を用いることが好ましい。
前記無機繊維は、主として構造体において鋳造に用いられる前の状態ではその骨格をなし、鋳造時に溶融金属の熱によっても燃焼せずにその形状を維持する。特に、後述する有機バインダーが用いられた場合には、該無機繊維は溶融金属の熱による当該有機バインダーの熱分解に起因する熱収縮を抑えることができる。
前記無機繊維には、炭素繊維、ロックウール等の人造鉱物繊維、セラミック繊維、天然鉱物繊維が挙げられ、それらが単独で又は二以上混合されて用いられる。これらの中でも、前記の熱収縮を抑える点から高温でも高強度を有する炭素繊維を用いることが好ましい。また、製造費用を抑える点からはロックウールを用いることが好ましい。
前記無機繊維の平均繊維長は0.2〜10mmが好ましく、0.5〜8mmがより好ましい。無機繊維の平均繊維長が0.2mm以上であれば濾水が良好で構造体製造時に脱水
不良が発生するおそれがない。また、肉厚の構造体(特に、ボトルのような中空立体形状物)の製造時に抄造性が良好となる。一方、無機繊維の平均繊維長が10mm以下であれば均等な肉厚の構造体が得られ、中空の構造体の製造が容易となる。
前記無機繊維の含有量は1〜80重量部が好ましく、2〜40重量部がより好ましい。無機繊維の含有量が1重量部以上であれば特に有機バインダーを用いて製造された構造体の鋳造時の強度が充分で、当該バインダーの炭化に起因して構造体の収縮、割れ、壁面の剥離(構造体の壁面が内層と外層とに分離する現象)等が発生するおそれもない。さらに、構造体の一部あるいは鋳物砂が製品(鋳物)に混入して欠陥製品が製造されることを抑制できる。また、無機繊維の含有量が80重量部以下であれば特に抄造工程や脱水工程での構造体の成形性が良好となり、用いられる繊維による原料費用の変動の低減につながる。
前記有機繊維に対する前記無機繊維の割合(無機繊維含有量/有機繊維含有量)は、重量比で、例えば無機繊維が炭素繊維の場合には0.1〜50が好ましく0.2〜30がより好ましい。無機繊維がロックウールの場合には10〜90が好ましく20〜80がより好ましい。この重量比が前記範囲の上限値以下であれば構造体の抄造、脱水成形における成形性が良好で、脱水後の構造体の強度が充分になって抄造型から取り出すときに構造体が割れたりするのを防止できる。また、この重量比が前記範囲の下限値以上であれば有機繊維や後述の有機バインダーの熱分解に起因して構造体が収縮することを抑制できる。
また、本発明では、前記バインダーは有機バインダーと無機バインダーを使用することができる。有機バインダーとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に、可燃ガスの発生が少なく、燃焼抑制効果があり、熱分解(炭化)後における残炭率が高い等の点からフェノール樹脂を用いることが好ましい。該フェノール樹脂には、後述のような硬化剤を必要とするノボラックフェノール樹脂、硬化剤の必要ないレゾールタイプ等のフェノール樹脂が用いられる。
ノボラックフェノール樹脂を使用した場合には、硬化剤を要する。該硬化剤は水に溶け易いため、構造体の脱水後にその表面に塗工されるのが好ましい。前記硬化剤には、ヘキサメチレンテトラミン等を用いることが好ましい。最も好ましい有機バインダーとして、アルカリ触媒あるいは塩酸触媒で反応させたレゾールフェノール樹脂やクレゾールノボラックフェノール樹脂等の低遊離フェノール樹脂やエポキシ樹脂が作業環境面から最も好ましい。
また、無機バインダーとして燐酸系バインダー、珪酸塩等の水ガラス、石膏、硫酸塩、シリカ系バインダー、シリコン系バインダーを用いても良い。前記有機バインダーは単独又は二種以上混合して用いても良く、有機バインダーと無機バインダーと併用しても良い。
前記バインダーは、鋳込み前において抄造した部品を乾燥成形したときに前記有機繊維、前記無機繊維及び前記無機粒子を強固に結合させ窒素雰囲気中で1000℃に於ける減量率(TG熱分析測定で)が50重量%以下、好ましくは40重量%以下であるバインダーが好ましい。
前記バインダー(固形分)の含有量は強度保持及びガス発生量抑制効果より5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましい。
以上、ガス発生量が増大する原因は、主として前記有機繊維及び前記有機バインダーであることから両者の原料種及び配合量及び重量比率が最も重要である。
バインダーの含有量を適切にすることで、抄造後の乾燥成形時に、構造体の金型への貼り付きが防止でき構造体を金型から分離することが容易となり、硬化したバインダーの金型表面へのビルドアップ(樹脂のしみつき)を低減でき、構造体の寸法精度を向上でき、金型表面の清掃頻度も低減できる。
また、本発明で用いる構造体の組成で前述した有機繊維、無機繊維及びバインダーの他に、構造体の中間成形体の組成原料として平均粒子径(メジアン径)で1μm以上の骨材粒子を用いても良い。該骨材粒子としては、黒曜石、シリカ、アルミナ、ムライト、マグネシア、ジルコン、クロマイト、雲母、黒鉛等の耐火物の骨材粒子が挙げられる。これらの骨材粒子は単独又は二種以上を用いても良い。好ましい平均粒子径(メジアン径)で1〜100μm、更に好ましくは1〜60μmが良い。平均粒子径が1μm以上であれば抄造時の歩留まりが良好となり、構造体の組成構成が変動することを抑制できる。また、平均粒子径が100μm以下であれば原料スラリーの分散性が良好となり、出来上がった構造体の肉厚変動が小さくなり、強度のムラが抑えられ、品質も良好となる。
また、該骨材粒子としては、融点又は熱分解温度の異なる二種類以上のものを併用することができる。特に、構造体が常温の鋳造前から鋳造中の高温に曝された場合に亘ってその形状を維持したり、鋳造時の浸炭を防止する等の観点から、低融点の骨材粒子と高融点の骨材粒子の併用が好ましい。この場合、低融点の骨材粒子としては、粘土、珪酸塩、黒曜石等が挙げられ、高融点の骨材粒子としてはシリカ、ウォラストナイト、ムライト、シャモット、アルミナ、マグネシア、ジルコン、クロマイト、雲母、黒鉛等が挙げられる。
本発明の構造体(I)には、前記有機繊維、前記無機繊維、及び前記バインダーの他に、紙力強化材を添加してもよい。紙力強化材は、構造体(I)の中間成形体にバインダーを含浸させたときに(後述)、該中間成形体の膨潤を防止する作用がある。
紙力強化材の使用量は、固形分として、前記各繊維の総重量の0.01〜2%、特に0.02〜1%が好ましい。紙力強化材の使用量が0.01%以上であれば前記の膨潤防止が充分で、添加した粉体が繊維に適切に定着する。一方、2%以下であれば構造体の成形体が金型に貼り付きにくくなる。
紙力強化材としては、ラテックス、アクリル系エマルジョン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリドアミド樹脂、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
本発明の構造体(I)には、さらに、凝集剤、着色剤等の成分を添加することもできる。
前記構造体(I)の厚みは使用目的等に応じて設定することができるが、少なくとも溶融金属と接する部分の厚みは、0.2〜5mmが好ましく、0.4〜3mmがより好ましい。この厚みが0.2mm以上であれば構造体としての強度が充分となり、鋳物砂の圧力に負けずに構造体に望まれる形状や機能を維持できる。また、この厚みが5mm以下であれば通気性が適切となり、原料費を低減でき、また成形時間も短縮でき、製造費を抑えることができる。
前記構造体(I)は、鋳造に用いられる前の状態の圧縮強度は10N以上が好ましく、30N以上がより好ましい。圧縮強度が10N以上であれば、鋳物砂で押されて変形せず、構造体としての機能を維持できる。
前記構造体(I)が水を含む原料スラリーを用いて製造された場合は、該構造体(I)の使用前(鋳造に供せられる前)の重量含水率は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。その理由は、含水率が低いほど、鋳造時の有機バインダーの熱分解(炭化)に起因するガス発生量が低下するからである。
前記構造体(I)の使用前の比重は1以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。その理由は、比重が小さいと軽量になり、構造体の取り扱い作業や加工が容易になるからである。
次に、内部が中空の構造体の例に基づいて、本発明に係る構造体(I)の製造方法を、好ましい製造方法である抄造工程を有する製造方法について説明する。この製造方法では、バインダーが熱硬化性樹脂であり、前記有機繊維、前記無機繊維及び該バインダーを含む繊維積層体を、100〜300℃で熱処理する工程を有することが好ましい。
先ず、前記有機繊維、前記無機繊維及び前記バインダーを前記所定割合で含む原料スラリーを調製する。原料スラリーは、前記繊維及びバインダーを所定の分散媒に分散させて調整する。なお、バインダーは、添加せず、成形体に含浸させてもよい。
前記分散媒としては、水、白水の他、エタノール、メタノール等の溶剤等が挙げられる。抄造・脱水成形の安定性、成形体の品質の安定性、費用、取り扱い易さ等の点から特に水が好ましい。
前記原料スラリー中の前記各繊維の合計含有量は、0.1〜4重量%が好ましく、1〜3重量%がより好ましい。原料スラリー中の前記繊維の合計含有量が4重量%以下であれば、成形体に肉厚むらが生じ難く、中空製品の場合には内面の表面性も良好となる。また、この合計含有量が0.1重量%以上であれば、成形体に局所的な薄肉部が発生することを抑制できる。
前記原料スラリーには、必要に応じて、前記紙力強化材、凝集剤、防腐剤等の添加剤を添加することができる。
次に、前記原料スラリーを用い、構造体(I)の中間成形体を抄造する。
前記中間成形体の抄造工程では、例えば、2個で一組をなす割型を突き合わせることにより、当該中間成形体の外形に対応した形状のキャビティが内部に形成される抄造・脱水成形用の金型を用いる。そして、該金型の上部開口部から該キャビティ内に所定量の原料スラリーを加圧注入する。これにより、該キャビティ内を所定圧力に加圧する。各割型には、その外部とキャビティとを連通する複数の連通孔をそれぞれ設けておき、また、各割型の内面は、所定の大きさの網目を有するネットによってそれぞれ被覆しておく。原料スラリーの加圧注入には例えば圧送ポンプを用いる。前記原料スラリーの加圧注入の圧力は、0.01〜5MPaが好ましく、0.01〜3MPaがより好ましい。
上述の通り、前記キャビティ内は所定圧力に加圧されているので、該原料スラリー中の分散媒は前記連通孔から金型の外へ排出される。その一方、前記原料スラリー中の固形分が前記キャビティを被覆する前記ネットに堆積されて、該ネットに繊維積層体が均一に形成される。このようにして得られた繊維積層体は、有機繊維と無機繊維が複雑に絡み合い、且つこれらの間にバインダーが介在したものであるため、複雑な形状であっても乾燥成形後においても高い保形性が得られる。また、前記キャビティ内が所定圧力に加圧されるので、中空の中間成形体を成形する場合でも、原料スラリーがキャビティ内で流動して原料スラリーが撹拌される。そのため、キャビティー内のスラリー濃度は均一化され、前記ネットに繊維積層体が均一に堆積する。
所定厚みの繊維積層体が形成された後、前記原料スラリーの加圧注入を停止し、前記キャビティ内に空気を圧入して該繊維積層体を加圧・脱水する。その後、空気の圧入を停止し、前記キャビティ内は前記連通孔を通して吸引し、弾性を有し伸縮自在で且つ中空状をなす中子(弾性中子)を該キャビティ内に挿入する。中子は、引張強度、反発弾性及び伸縮性等に優れたウレタン、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム又はエラストマー等によって形成されている。
次に、前記キャビティ内に挿入された前記弾性中子内に、加圧流体を供給して弾性中子を膨張させ、膨張した弾性中子により前記繊維積層体を該キャビティの内面に押圧する。これにより、前記繊維積層体は、前記キャビティの内面に押し付けられ、当該繊維積層体の外表面に当該キャビティの内面形状が転写されると共に該繊維積層体の脱水が進行する。
前記弾性中子を膨張させるために用いられる前記加圧流体には、例えば圧縮空気(加熱空気)、油(加熱油)、その他各種の液が使用される。また、加圧流体の供給圧力は、成形体の製造効率を考慮すると0.01〜5MPa、特に効率良く製造できる点で0.1〜3MPaが好ましい。0.01MPa以上であると繊維積層体の乾燥効率が良好で、表面性及び転写性も充分となり、5MPa以下であれば良好な効果が得られ、装置を小型化できる。
このように、前記繊維積層体をその内部からキャビティの内面に押し付けるため、キャビティの内面の形状が複雑であっても、その内面形状が精度良く前記繊維積層体の外表面に転写される。また、製造される成形体が複雑な形状であっても、各部分の貼り合わせ工程が不要なので、最終的に得られる部品には貼り合わせによるつなぎ目及び肉厚部は存在しない。
前記繊維積層体の外表面に前記キャビティの内面形状が充分に転写され且つ該繊維積層体を所定の含水率まで脱水できたら、前記弾性中子内の加圧流体を抜き、弾性中子を元の大きさまで自動的に収縮させる。そして、縮んだ弾性中子をキャビティ内より取出し、更に前記金型を開いて所定の含水率を有する湿潤した状態の繊維積層体を取り出す。上述の弾性中子を用いた繊維積層体の押圧・脱水は、必要に応じて省略し、キャビティ内への空気の圧入による加圧・脱水のみによって繊維積層体を脱水成形することもできる。
脱水成形された前記繊維積層体は、次に加熱・乾燥工程に移される。
加熱・乾燥工程では、前記中間成形体の外形に対応した形状のキャビティが形成される乾燥成形用の金型を用いる。そして、該金型を所定温度に加熱し、該金型内に脱水成形された湿潤状態の前記繊維積層体を装填する。
次に、前記抄造工程で用いた前記弾性中子と同様の弾性中子を前記繊維積層体内に挿入し、該弾性中子内に加圧流体を供給して該弾性中子を膨張させ、膨張した該弾性中子で前記繊維積層体を前記キャビティの内面に押圧する。フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等によって表面改質された弾性中子を用いるのが好ましい。加圧流体の供給圧力は、前記脱水工程と同様の圧力とすることが好ましい。この状態下に、繊維積層体を加熱・乾燥し、前記中間成形体を乾燥成形する。
乾燥成形用の前記金型の加熱温度(金型温度)は、表面性や乾燥時間の点から100〜300℃が好ましく、180〜250℃がより好ましく、200〜240℃が更に好ましい。熱処理時間は、加熱温度によって変わるため一概には言えないが、品質及び生産性等の観点から、10〜60分が好ましく、20〜40分がより好ましい。加熱温度が300℃以下であれば中間成形体の表面性が良好であり、また、100℃以上であれば中間成形体の乾燥時間も短縮できる。
前記繊維積層体が、充分に乾燥したら、前記弾性中子内の前記加圧流体を抜き、該中子を縮ませて当該繊維積層体から取り出す。そして、前記金型を開いて、前記中間成形体を取り出す。この中間成形体は熱硬化性樹脂が熱処理により硬化し、構造体(I)として使用される。
このようにして得られる構造体(I)は、弾性中子によって押圧されているため、内表面及び外表面の平滑性が高い。このため、成形精度も高く、嵌合部やネジ部を有する場合にも精度の高い構造体が得られる。したがって、これらの嵌合部やネジ部で連結された構造体は湯漏れを確実に抑えることができ、その中を湯がスムーズに流れる。また、鋳造時の該構造体の熱収縮率も5%未満となるため、構造体のひび割れや変形等による湯漏れを確実に防ぐことができる。
得られた中間成形体には、必要に応じて、さらにバインダーを部分的又は全体に含浸させることができる。
中間成形体に含浸させるバインダーとしては、レゾールタイプフェノール樹脂、シリカ系バインダー等が挙げられる。
中間成形体にバインダーを含浸させ、原料スラリー中に含ませない場合には原料スラリーや白水の処理が簡便になる。
熱硬化性バインダーを含浸させた後、中間成形体を所定温度で加熱乾燥し、熱硬化性バインダーを熱硬化させて構造体(I)の製造を完了する。
次に、構造体(I)〔好ましくは100〜300℃で熱処理された構造体(I)〕の表面に無機粒子が付着した、好ましくは無機粒子を含む層(以下付着層という)を形成した、本発明の構造体の製造方法を詳細に説明する。
構造体(I)の表面に無機粒子を付着させた状態としては、本発明の効果発現の観点から、構造体(I)の表面が50%以上、更に80%以上、特に90%以上、無機粒子で被覆されていることが好ましい。
本発明で用いる該無機粒子の平均粒径は、1〜800nmの範囲であり、被覆性能(無機粒子液体の液垂れによる垂れ筋)及びガス欠陥改善効果から、無機粒子の粒子径は1〜600nmが好ましく、更に5〜300nm、最も好ましい粒子径は10〜30nmである。通常、これらの固形分は10〜60重量%であり、被覆性能である液切れ性から30〜50重量%が好ましい。なお、本発明で用いる該無機粒子の平均粒径は、後述の実施例記載の測定法により求めることができる。
該無機粒子はシリカ、アルミナが挙げられる。前記構造体(I)の表面に該無機粒子を含有する付着層が形成される場合、該付着層の厚み(乾燥後の構造体の表面に無機粒子を付着した断面の無機粒子の肉厚)は、鋳物品質であるガス欠陥防止能抑制及び被覆の垂れ性能から、1〜800μmが好ましく、更に5〜500μm、特に10〜100μmが好ましい。なお、付着層の厚みは、後述の実施例記載の測定法により求めることができる。
また、構造体(I)の表面に付着させる、更には無機粒子を含む付着層の形成方法として、当該無機粒子を含む分散液を用いた、刷毛塗布、スプレー塗布、静電塗装、焼付塗装、ぶっ掛け塗布、浸漬塗布等の方法が挙げられるが、付着層の厚みの均一性、効率的及び経済的に鋭意検討を行った結果、浸漬塗布が最も好ましい。浸漬塗布の工程を詳細に説明すると、構造体(I)を該無機粒子を含む分散液を所定量入れた浴槽に浸漬(どぶ漬け)する。浸漬温度(分散液温度)は5〜40℃の範囲が好ましく、更に好ましくは15〜30℃、更に好ましくは20〜30℃の範囲で且つ恒温になるように設備設定することが最も好ましい。また、生産性の面から浸漬時間は1〜60秒の範囲が好ましく、バッチ又は連続的に浸漬することができる。このように、構造体(I)(好ましくは予め100〜300℃で熱処理した構造体(I))表面に該無機粒子を付着したものを、より強固な付着状態とするには乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥方法としてヒーターによる熱風乾燥、遠赤外乾燥、マイクロ波乾燥、過熱蒸気乾燥等が挙げられるが、特に限定されるものではない。熱風乾燥機を用いて乾燥させる場合は乾燥炉内中心部の乾燥温度については100〜500℃の範囲が好ましく、更に有機繊維やバインダーの熱分解による影響及び発火による安全性から、150〜230℃の範囲が最も好ましい。
本発明の構造体は、鋳物砂内及びバックアップ粒子(鋳物砂の替わりにショット玉やその他の粒子)内に配し、湯道(注湯系)や揚がり湯道として使用することができ、鋳物欠陥であるガス欠陥を改善する鋳物を製造することができ、特にガス欠陥の発生し易い鋳鋼鋳物の製造に適している。
すなわち、本発明の構造体に係る構造体(I)の原料やその組成比率を適正化し、且つ構造体(I)の表面に好ましくは無機粒子を含む付着層を形成することにより、鋳物のガス欠陥を改善できる鋳物製造用構造体を提供することができる。本発明により、鋳物のガス欠陥が改善される理由として定かではないが、熔湯に曝された構造体自体のガス発生量を制御すること及び構造体の表面に無機粒子を付着することによりガス発生のタイミングが遅延し、溶融金属へのガス浸入が緩慢するからと推定される。
更に、ガス欠陥を改善する鋳物を製造する観点から、構造体(I)における熔湯に接する表面側に該無機粒子を付着、好ましくは付着層を形成することが望ましい。その際、構造体(I)における熔湯に接しない表面側には該無機粒子を付着させない、つまり、構造体(I)における熔湯に接する表面側にのみ、該無機粒子を付着、好ましくは付着層を形成するほうが好ましい。
その場合の構造体(I)の熔湯に接する表面に該無機粒子を付着させる、更には無機粒子を含む付着層を形成する方法としては、該無機粒子を含む分散液を用いた刷毛塗布、スプレー塗布が好ましい。
構造体(I)における熔湯に接する表面側に該無機粒子を付着、好ましくは付着層を形成し、構造体(I)における熔湯に接しない表面側には該無機粒子を付着させない構造体を用いることにより、更に鋳物のガス欠陥が改善される。その理由は定かではないが、熔湯に接する表面側に付着、好ましくは付着層を形成している該無機粒子が熔湯側へ進入するガスをバリアし、かつ、熔湯に接しない表面側から鋳型側へガスを排除できている結果によるものと推定される。
本発明の構造体中における有機繊維、無機繊維及びバインダー(及び他の骨材を含む)の総重量は、50重量%以上が好ましく、80重量%であることがより好ましく、90重量%が更に好ましい。
本発明の構造体中における平均粒径1〜800nmの無機粒子の重量は、0.1〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。
本発明の構造体の用途として、前述したキャビティを有する鋳型に又は発泡スチロール模型を使用する、所謂フルモールド鋳造法、或いは粘結剤を使用しない消失模型鋳造法或いは鋳型とする主型や中子等の鋳造分野或いは耐熱性等を要求される他分野で本発明の構造体を使用することができ、用途は特に限定されるものではないが、特に湯口用ランナーや揚がり用ランナーあるいは中子用として好適である。
以下の実施例及び比較例で用いた評価方法を説明する。
<鋳造用構造体のガス発生量測定>
ガス発生量は、ガス発生量測定装置(測定機器名:No.682 GAS PRESSURE TESTER HARRY W.DIETERT CO.製)を用いて測定した。すなわち、炉内の温度を1000℃に設定しておき、測定サンプル重量0.1gを下3桁まで正確に質量(mg単位)を測定し、測定しようとするサンプルをサンプル台に載せ、測定機器のマニアルに従いガス発生量を測定する。ガス発生量はガス発生速度の積分値でプログラム計算され、経過時間が30秒後のガス発生量で計算する。尚、ガス発生速度及びガス発生量の解析コンピューターは島津製作所製のクロマトパックC−R4Aを用いた。
<無機粒子の平均粒子径の測定方法>
無機粒子の平均粒子径D(nm)は、窒素吸着法(BET法)による測定で得られた比表面積S(m2/g)から、D=2720/Sとして算出する。
<鋳物のガス欠陥>
後述の方法により鋳造された平板状鋳物部品のガス欠陥発生状況を判定するため、X線で撮影し鋳物内部のガス欠陥を以下の基準で判定した。
判定基準
◎:平板状鋳物部品のガス欠陥発生が認められないもの
○:平板状鋳物部品のガス欠陥発生が僅か認められるが補修が不要なもの
△:平板状鋳物部品のガス欠陥発生が多少認められ、補修が必要なるもの
×:平板状鋳物部品のガス欠陥発生が多く認められ、補修ができないもの
<付着層の厚みの測定>
無機粒子を含む付着層の厚みは、鋳造用構造体の断面をEPMA分析(無機粒子元素の面分析及び線分析)を行うことで測定した。
〔実施例1〜4〕
下記原料スラリーを用いて所定の繊維積層体を抄造した後、該繊維積層体を脱水、乾燥し、湯口用のランナー(ストレート管とエルボ管、構造体(I)に相当)を得た。なお、構造体(I)の組成は表1に示す通りとした。
<原料スラリーの調製>
下記配合の有機繊維と無機繊維を水に分散させて約1%(水に対し、有機繊維及び無機繊維の合計重量が1重量%)のスラリーを調整した後、該スラリーに骨材粒子とバインダーと下記凝集剤を添加し、表1記載の構造体(I)を得ることができるように有機繊維、無機繊維、及びバインダー等を配合し、それぞれの原料スラリーを調製した。
〔原料スラリーの配合〕
・有機繊維:新聞古紙(平均繊維長1mm、フリーネス150cc)
・無機繊維:炭素繊維(東レ(株)社製、商品名「トレカチョップ」)、繊維長3mm)・バインダー:フェノール樹脂(旭有機材工業(株)社製、SP1006LS)
・骨材粒子(黒曜石、平均粒径30μm)
・凝集剤:ポリアクリルアミド系凝集剤(三井サイテック社製、A110)
・紙力強化剤:カルボキシメチルセルロースの1%水溶液
・分散媒:水
上記成分をビータにかけ、有機繊維、無機繊維、骨材粒子及びバインダーが表1の重量混合比になるよう水スラリーを得た。該スラリーから作られる繊維積層体のフリーネスは300ccであった。なお、凝集剤、紙力強化剤は、有機繊維、無機繊維、バインダー及び骨材粒子の合計を100重量部(固形分換算)として、それぞれ1重量部(固形分換算)となるようにスラリーに配合した。
<抄造・脱水工程>
抄造型として、前記の構造体(ストレート管とエルボ管)に対応するキャビティ形成面を有する金型を用いた。該金型のキャビティ形成面には所定の目開きのネットが配され、キャビティ形成面と外部とを連通する多数の連通孔が形成されている。なお、該金型は、一対の割型からなる。前記原料スラリーをポンプで循環させ、前記抄紙型内に所定量のスラリーを加圧注入する一方で、前記連通孔を通してスラリー中の水を除去し、所定の繊維積層体を前記ネットの表面に堆積させた。所定量の原料スラリーの注入が完了したら、加圧エアーを抄造型内に注入し、該繊維積層体を脱水した。加圧エアーの圧力は、0.2MPa、脱水に要した時間は約30秒であった。
<硬化剤被覆工程>
前記バインダーの15%(重量比)に相当する量の硬化剤(ヘキサメチレンテトラミン)を水に分散させ、これを得られた繊維積層体の全面に、均一に被覆した。
<乾燥工程>
乾燥型として、前記の構造体(ストレート管とエルボ管)対応するキャビティ形成面を有する金型を用いた。当該金型にはキャビティ形成面と外部とを連通する多数の連通孔が形成されている。なお、該金型は一対の割型からなる。前記硬化剤を被覆した前記繊維積層体を抄造型から取り出し、それを220℃に加熱された乾燥型に移載した。そして、乾燥型の上方開口部から袋状の弾性中子を挿入し、密閉された乾燥型内で当該弾性中子内に加圧流体(加圧空気、0.2MPa)を該弾性中子に注入して該弾性中子を膨らませ、該弾性中子で前記繊維積層体を乾燥型の内面に押しつけて、当該乾燥型の内面形状を該繊維積層体表面に転写させつつ乾燥させた。所定時間(180秒)の加圧乾燥を行った後、弾性中子内の加圧流体を抜いて当該弾性中子を収縮させて乾燥型内から取り出し、成形体を乾燥型内から取り出して冷却した。
<付着層の形成>
続いて、熱硬化された構造体の表面に無機粒子(日産化学工業(株)製:スノーテックス40、平均粒径15nm)を含む付着層が形成された構造体を製造するため、30Lの容器に、20kgの無機粒子分散液(スノーテックス40を40重量部、水を60重量部含有する分散液)体を入れ、前記熱硬化された構造体(ストレート管とエルボ管)を浸漬塗布(液温20℃で30秒間)した後、無機粒子が付着された構造体を取り出し、15分間液切れをさせた。その後180℃で30分間、熱風乾燥機で乾燥させ、無機粒子を含む付着層が形成された構造体を得た。
<ランナーの組立て工程と鋳型作製及び鋳造工程>
得られた構造体を用いて、鋳造用のランナー(湯道)として組立てるため、嵌合部のあるストレート管1個(直径φ50mm/長さ300mm)と嵌合部のあるエルボ管(直径φ50mm/長さ100mm)2個からなるランナーを嵌合し、平板状鋳物部品になるキャビティ部(平板状鋳物の形状は縦500mm×幅300mm×厚さ30mmで上部は引け防止用の保温材を設置)に該ランナーを設けたフラン樹脂鋳型を造型した。そして24時間後に、鋳鋼鋳物(材質:SC−830・鋳込み温度1600℃)を鋳造した。
〔比較例1〕
比較例1は、構造体の表面に無機粒子が付着していない以外は実施例2(表1)と同様である。
〔実施例5〜7及び比較例2〕
実施例2において、無機粒子として表2に示す無機粒子を用いた以外は同様にして構造体を製造し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。なお、実施例2の結果も表2に併記した。
〔実施例8〜12〕
実施例2において、無機粒子として日産化学工業(株)製「スノーテックス40」(平均粒径15nm)を用い、分散液(残部は水)中の無機粒子濃度を表3に示す通りとし、また、分散液への浸漬回数を表3に示す通りとして、それ以外は同様にして構造体を製造した。その際、浸漬塗布の都度乾燥を繰り返した。乾燥条件は1回につき180℃、30分間であった。得られた構造体を用いて、ガス発生量について実施例2と同様の評価を行った。結果を表3に示す。なお、付着層を形成しない比較例1の結果も表3に併記した。
〔参考例〕
前記の通り、無機粒子を含む付着層の厚みは、鋳造用構造体の断面をEPMA分析(Si元素の面分析及び線分析)を行うことで測定したが、その手順の概略を、実施例10と比較例1について、図1、2に模式的に示した。実施例10では、図1左下のEPMA(Electron Probe Micro-Analysis)による線分析(Si K核)から、構造体表面の無機粒子を含む付着層のシリカ成分の厚みは約24μmであり、図1右下のEPMAによる面分析から、無機粒子であるシリカ成分により構造体表面に付着層が形成されていることがわかる。
〔実施例13〕
実施例1と同様にして、表4に示す組成で構造体(I)(ストレート管とエルボ管)を得た。また、実施例2の付着層の形成方法を下記の方法に変更した以外は同様にして構造体を得た。
<付着層の形成>
続いて、熱硬化された構造体の表面に無機粒子(日産化学工業(株)製:スノーテックス40、平均粒径15nm)を含む付着層が熔湯に接する表面に形成された構造体を製造するため、30Lの容器に、20kgの無機粒子分散液(スノーテックス40を40重量部、水を60重量部含有する分散液)体を入れ、前記熱硬化された構造体(ストレート管とエルボ管)のキャビティ内部(熔湯に接する表面)に無機粒子分散液を流量が毎分1L/分の循環式スプレーで、スプレー塗布(液温20℃で30秒間)した後、無機粒子が付着された構造体を取り出し、15分間液切れをさせた。その後180℃で30分間、熱風乾燥機で乾燥させ、熔湯に接する表面に無機粒子を含む付着層(厚み24μm)が形成された構造体を得た。
<ランナーの組立て工程と鋳型作製及び鋳造工程>
得られた構造体を用いて、図3に示す鋳造用ランナー(湯道)として組立てるため嵌合部のあるエルボ管(直径φ50mm)2個からなるものと嵌合部のある直管(直径φ50mm、長さ150mm)1個からなるランナー31を嵌合し、ドーナツ状鋳物部品になるキャビティ部32(形状は外径240mm、内径140mm、厚さ30mm、揚がり付)に該ランナーを設けた水溶性フェノール樹脂鋳型を造型した。そして24時間後に鋳鋼鋳物(SCS-13 鋳込み温度1600〜1540℃)を鋳造した。
造型に使用した砂はフリーマントル新砂で、鋳込み重量20kg、鋳型重量100kgであり、樹脂は花王クエーカー(株)製カオーステップS-660を1.5重量%(対砂)、硬化剤は花王クエーカー(株)製QX-140を20重量%(対樹脂)用いた。
<鋳物試験片のX線写真撮影とその内部ガス欠陥部面積の画像解析>
上記鋳物試験片のランナー部及び揚がり部を切断した後、X線透過装置「6MeVライナック」で写真撮影を行った。その鋳物試験片の内部ガス欠陥部面積を測定するため、その透過写真を使用し、画像解析ソフトに「Winroof」で内部ガス欠陥部面積を算出した。内部ガス欠陥部面積が小さい程、ガス欠陥の少ない高品質な鋳物である。結果を表4に示す。なお、実施例2で得られた構造体(熔湯に接しない表面も無機粒子の付着層が形成されている)を用いて得られた鋳物についても同様の評価を行った結果も併記した。
実施例10の構造体の断面SEM写真とEPMAによる線分析チャート及び面分析画像 比較例1の構造体の断面SEM写真とEPMAによる線分析チャート及び面分析画像 実施例13における鋳造工程を示す概略図

Claims (10)

  1. 有機繊維、無機繊維及びバインダーを含有する構造体(I)と、該構造体(I)の表面に付着する平均粒径1〜600nmの無機粒子と、を含んで構成される鋳物製造用構造体であって、
    前記構造体(I)の表面に前記無機粒子を含む層が形成されており、該層の厚みが10〜800μmであり、
    有機繊維、無機繊維及びバインダーの合計100重量部(他の骨材を含む場合はその量も含む)に対して、有機繊維を1重量部以上20重量部未満、無機繊維を1〜80重量部、バインダーを5〜50重量部(固形分として)含有する、
    鋳物製造用構造体。
  2. 前記バインダーが熱硬化性樹脂であり、構造体(I)において前記熱硬化性樹脂が熱処理により硬化している請求項1記載の鋳物製造用構造体。
  3. 前記無機粒子が、シリカ及びアルミナから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の鋳物製造用構造体。
  4. 前記構造体(I)における熔湯に接する表面に前記無機粒子が付着している、請求項1〜の何れかに記載の鋳物製造用構造体。
  5. 前記構造体(I)が、平均粒子径(メジアン径)で1μm以上の骨材粒子を含有する、請求項1〜の何れか1項記載の鋳物製造用構造体。
  6. 請求項1〜の何れかに記載の鋳物製造用構造体を用いた鋳物の製造方法。
  7. 有機繊維、無機繊維及びバインダーを含有する構造体(I)の表面に、平均粒径1〜600nmの無機粒子を付着させる工程を有する、請求項1〜の何れか1項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  8. 前記バインダーが熱硬化性樹脂であり、前記有機繊維、前記無機繊維及び該バインダーを含む繊維積層体を、100〜300℃で熱処理する工程を有する請求項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  9. 前記無機粒子の付着を、前記無機粒子を分散させた分散液に前記構造体(I)を接触させることにより行う請求項又は記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  10. 前記有機繊維、前記無機繊維及び前記バインダーを少なくとも含む原料スラリーを用いた抄造工程を有する請求項の何れか1項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
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