JP4672289B2 - 鋳物製造用構造体及びその製造方法、並びに鋳物 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳物の製造時に用いられる鋳型等の構造体及び該構造体の製法、並びに該構造体を用いた鋳物の製造方法に関する。
鋳物は、一般に、木型や金型などをもとに鋳物砂で内部にキャビティを有する鋳型を形成するとともに、必要に応じて該キャビティ内に中子を配した後、該キャビティに溶湯を供給して製造されている。
木型、金型の製造は、加工に熟練を要し高価な設備も必要で、高価で重い等の欠点と共に廃棄処理の問題も生じ、量産の鋳物のほかには使用が困難である。また、鋳物砂を用いた砂型は、通常の砂にバインダーを添加し、硬化させて形状を保持させているため、砂の再利用には再生処理工程が必須となる。また、再生処理の際にダストなどの廃棄物が発生するなどの問題も生じている。加えて、中子を砂型で製造する場合、上記課題に加え中子自身の重量のため取り扱いに難があり、さらには、鋳込み時の強度保持と鋳込み後の中子除去性という相反する性能が要求される。
このような課題を解決する技術として、鋳型に用いる部材を例えば、紙等の有機繊維物で成形するもの(下記特許文献1参照)、無機繊維を主成分とし、これに粘結剤として樹脂を添加して成形するもの(下記特許文献2参照)、或いはセルロース繊維に無機粉や無機繊維を添加して成形するもの(下記特許文献3参照)が知られている。また、耐熱性無機粒状物と、無機質および有機質の繊維状物質、結合材とからなる鋳型の中子形成用組成物が知られている(下記特許文献4参照)。
これらの技術は、軽量化、加工性、廃材問題については、ある程度の効果を有するものの、1)均一な鋳型成形体を得ることが困難であり、特に中空構造に均一に成形する場合の成形性が悪かったり、2)熱間強度が低いため鋳込み後の鋳物の形状保持性も十分得られなかったり、3)得られる鋳物の表面平滑性が低かったりする課題を有していた。
実開平6−86843号公報 特開平10−5931号公報 特開平9−253792号公報 特開2003−230940号公報
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、鋳物製造用構造体の成形性が良く、軽量で鋳込み時においても十分な熱間強度及び形状保持性を有し、得られる鋳物の形状保持性及び表面平滑性にも優れ、さらには鋳造後の除去性に優れる、鋳物製造用構造体並びにその製造方法、並びにこれらを用いた鋳物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、有機繊維、炭素繊維及び特定の熱硬化性樹脂に加えて、無機粒子を含む鋳物製造用構造体が、上記目的を達成し得ることを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、有機繊維、無機繊維、無機粒子及び熱硬化性樹脂を含有する鋳物製造用構造体であって、前記無機繊維が炭素繊維であり、前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂、エポキシ樹脂及びフラン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂である鋳物製造用構造体を提供するものである。ここで、本発明の鋳物製造用構造体とは、鋳物製造のために用いられる耐火性物品であり、具体的には、鋳型、鋳型の周辺部材が挙げられる。
また、本発明は、前記本発明の鋳物製造用構造体の製造方法であって、前記有機繊維、前記無機繊維及び前記無機粒子を少なくとも含む原料スラリーを用いた抄造工程を具備する鋳物製造用構造体の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
また、本発明は、前記本発明の鋳物製造用構造体を用いた鋳物の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
本発明によれば、以下の効果が奏される。
1.本発明の鋳物製造用構造体は、鋳込時においても熱間強度及び形状保持性に優れる。このため、これを用いた鋳物の製造方法では、造型の際に鋳物砂をバインダーで硬化させる必要がない。従って、鋳造後に機械的研磨により砂を再生する必要がなく、従来に比べて廃棄物を低減できる。特に、中空形状の中子に適用する場合、中子内への鋳物砂の充填が不要である。
2.本発明の鋳物製造用構造体は、鋳込み後の除去性が良好であり、従来に比べて容易に鋳物製造用構造体を除去することができる。
3.本発明の鋳物製造用構造体は、軽量であるため、取り扱いが容易である。
4.本発明の鋳物製造用構造体の製造方法では、有機繊維、無機繊維である炭素繊維、無機粒子を含む原料スラリーを抄造して製造するので、各成分がむらなく均一に分散した鋳物製造用構造体を得ることができる。従って、熱収縮に伴うひび割れ等の発生が抑えられ、高い熱間強度が得られ、表面の平滑性にも優れている。また、中空形状や複雑な立体形状とする場合にも貼り合わせ工程が不要なので、最終的に得られる鋳物製造用構造体の肉厚が均一で成形精度や機械的強度が高い。従って、成形精度の高く表面の平滑性に優れた鋳物を製造することができる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本実施形態の鋳物製造用構造体は、有機繊維、炭素繊維、無機粒子及び特定の熱硬化性樹脂を含有するものである。前記有機繊維、前記炭素繊維、前記無機粒子及び前記熱硬化性樹脂の配合比は、前記有機繊維/前記炭素繊維/前記無機粒子/前記熱硬化性樹脂=10〜70/1〜70/10〜70/5〜70(重量比率)、さらには10〜50/2〜50/20〜60/5〜50(重量比率)、特には10〜30/2〜30/30〜60/5〜40(重量比率)であることが好ましい。
前記有機繊維の鋳物製造用構造体における含有量は、添加による効果が十分に発現する観点、並びに構造体の成形性及び鋳込み後の構造体の除去性に優れる観点から、10重量%以上が好ましく、鋳込み時のガス発生量を低減して鋳物の表面欠陥の発生を抑制する観点、並びに構造体の耐熱性及び鋳物の形状保持性に優れる観点から、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、30重量%以下が更に好ましい。これらのことから、前記有機繊維の鋳物製造用構造体における比率は、10〜70重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましく、10〜30重量%が更に好ましい。
また、前記炭素繊維の鋳物製造用構造体における含有量は、構造体の耐熱性低下に伴う熱収縮を抑制して鋳物の形状保持性を向上させる観点、ガスの発生量を抑制する観点から、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、構造体の成形性及び鋳込み後の構造体の除去性に優れる観点から、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、30重量%以下が更に好ましい。これらのことから、前記炭素繊維の鋳物製造用構造体における比率は、1〜70重量%が好ましく、2〜50重量%がより好ましく、2〜30重量%が更に好ましい。
さらに、前記無機粒子の鋳物製造用構造体における含有量は、後述する無機粒子の添加による効果が十分に発現する観点から、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上が更に好ましい。構造体の成形性、鋳物の形状保持性に優れる観点から、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。これらのことから、前記無機粒子の鋳物製造用構造体における比率は、10〜70重量%が好ましく、20〜60重量%がより好ましく、30〜60重量%が更に好ましい。
またさらに、前記熱硬化性樹脂の鋳物製造用構造体における含有量は、鋳物の表面の平滑性を得る観点、構造体の強度や形状保持性を向上する観点から、5重量%以上が好ましく、構造体の成型性を向上する観点、及びガス発生量を低減して鋳物の表面欠陥を抑制する観点から、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、40重量%以下が更に好ましい。これらのことから、前記熱硬化性樹脂の鋳物製造用構造体における比率は、5〜70重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましく、5〜40重量%が更に好ましい。
本発明は、炭素繊維と特定の熱硬化性樹脂とを併用する点に特徴があり、この組み合わせによって、鋳物製造用構造体の熱間強度や形状保持性が向上し、成形精度が高くしかも表面平滑性に優れた鋳物を製造することができる。本発明の効果が発現する理由は明らかではないが、炭素繊維と特定の熱硬化性樹脂とが何らかの構造を形成していることに基づくものと推察される。特に、後述するような残炭率が高い熱硬化性樹脂は、この機能が高いため、より顕著な効果が発現するものと考えられる。
前記有機繊維は、主として鋳物製造用構造体において鋳造に用いられる前の状態ではその骨格をなし、鋳物製造用構造体の成形性を向上させる成分である。また、鋳造に用いられたときには溶融金属の熱によってその一部若しくは全部が燃焼し、鋳物製造後の鋳物製造用構造体の内部に空隙を形成して鋳物製造用構造体の除去性を向上させる成分である。
前記有機繊維としては、紙繊維、フィブリル化した合成繊維、再生繊維(例えば、レーヨン繊維)等の繊維が挙げられる。有機繊維は、これらを単独で又は二種以上を選択して用いることができる。そして、これらの中でも、特に、抄造により多様な形態に成形できるほか、脱水後と乾燥後に十分な強度が得られる点から紙繊維を用いることが好ましい。
前記紙繊維としては、木材パルプ、コットンパルプ、リンターパルプ、竹やわらその他の非木材パルプが挙げられる。紙繊維は、これらのバージンパルプ若しくは古紙パルプを単独で又は二種以上を選択して用いることができる。紙繊維は、入手の容易性、環境保護、製造費用の低減等の点から、特に古紙パルプが好ましい。
前記有機繊維は、鋳物製造用構造体の成形性、表面平滑性、耐衝撃性を考慮すると、平均繊維長が0.3〜2.0mm、特に0.5〜1.5mmであるものが好ましい。
前記炭素繊維は、主として鋳物製造用構造体において鋳造に用いられる前の状態ではその骨格をなし、鋳造に用いられたときには溶融金属の熱によって燃焼せずにその形状を維持する成分である。特に、鋳物製造用構造体が溶融金属の熱によって熱分解して生じる熱収縮を抑える成分である。
前記炭素繊維としては、鋳物製造用構造体の熱分解に伴う収縮を効果的に抑える点から高温でも高強度を有するピッチ系やポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いることが好ましく、特にPAN系の炭素繊維が好ましい。これら炭素繊維は、ロックウール等の人造鉱物繊維、セラミック繊維、天然鉱物繊維等の無機繊維と組み合わせて使用することができる。
前記炭素繊維は、鋳物製造用構造体を抄造して脱水する場合の脱水性、鋳物製造用構造体の成形性、均一性の観点から平均繊維長が0.2〜10mm、特に0.5〜8mmであるものが好ましい。
前記炭素繊維は、鋳物製造用構造体の熱分解に伴う熱収縮を効果的に抑える機能を有している。
前記無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ムライト、マグネシア、ジルコニア、雲母、黒鉛、黒曜石等の耐火度800〜4000℃、好ましくは1000〜4000℃の無機粒子が挙げられ、耐熱性、構造体成型時の離型性の点からは黒鉛が好ましい。これらの無機粒子は単独で又は二種以上を併用しても良い。
また、炭素当量が4.2%以下、更には4.0%以下の溶融金属から鋳物を製造する場合は、構造体に含まれる又は溶融金属の熱による熱分解で生成する炭化物膜が低炭素当量の溶融金属へ溶解するのを防止する点、更には構造体の外側や中空中子内に鋳物砂を配した場合には、鋳物表面への砂の付着を防止して得られる鋳物の表面平滑性をより向上させる点などから、無機粒子としては、耐火度800〜2000℃の無機粒子を使用することが好ましい。炭素当量が4.2%以下の溶融金属から鋳物を製造する場合は、軟化時の粘度が高く、溶融金属への炭素皮膜の溶解防止効果が特に高い点から、鋳鉄には黒曜石が好ましく、鋳鋼、ステンレス鋼にはムライト粉が好ましい。
特に、本発明では、無機粒子として、黒曜石と、黒曜石以外の鉱物粒子(以下、鉱物粒子という)とを併用することにより、これを用いた構造体から製造した鋳物の寸法精度が顕著に向上する。当該鉱物粒子としては、耐火度が1200℃以上のものが好ましく、シリカ(例えば耐火度1650℃以上)、アルミナ(例えば耐火度1700℃以上)、ムライト(例えば耐火度1650℃以上)、マグネシア(例えば耐火度2500℃)、ジルコン(例えば耐火度2000℃以上)、クロマイト(例えば耐火度1950℃以上)、黒鉛(例えば耐火度3300℃以上)等が挙げられる。なお、これらの鉱物粒子は単独で又は二種以上を併用しても良い。黒曜石と上記鉱物粒子の併用は、炭素当量が4.2%以下、更には4.0%以下の溶融金属から鋳物を製造する場合に、より好ましい。従って、本発明により、炭素当量が4.2%以下の溶融金属から鋳物を製造するための構造体であって、有機繊維、炭素繊維、黒曜石と黒曜石以外の鉱物粒子との組み合わせからなる無機粒子、及び熱硬化性樹脂を含有する鋳物製造用構造体が提供される。
黒曜石と上記鉱物粒子を併用する場合、構造体の強度及びそれを用いて製造した鋳物の寸法精度より、黒曜石(1)と黒曜石以外の鉱物粒子(2)の配合比率は、重量比率で、(1)/(2)=10/90〜90/10、更に25/75〜75/25が好ましい。
ここで、無機粒子の耐火度は、ゼーゲルコーンを用いた測定方法(JIS R2204)で測定される。なお、一般的な黒曜石の耐火度は、1200〜1250℃である。
無機粒子は、平均粒子径が200μm以下のものを用いることが好ましい。黒曜石と上記鉱物粒子を併用する場合も、それぞれ平均粒子径が200μm以下のものを用いることが好ましい。また、特に、鋳造する溶融金属の鋳込温度に対し±300℃、特に±200℃の耐火度を有する無機粒子が好ましい。
ここで、無機粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920を用いて測定された体積累積50%の平均粒子径である。分析条件は下記の通りである。
・測定方法:フロー法
・屈折率:無機粒子よって変動(LA−920添付のマニュアル参照)
・分散媒:イオン交換水+ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1%混合
・分散方法:攪拌、内蔵超音波3分
・試料濃度:2mg/100cc
なお、炭素当量が4.2%以下の鋳物材質としては、鋳物材質FC−300以上の強度の鋳鉄、鋳鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。ここで炭素当量とは、鋳鉄では〔C(%)+Si(%)/3〕、鋳鋼では〔C+(1/6)Mn+(1/24)Si+(1/40)Ni+(1/5)Cr+(1/4)Mo+(1/14)V〕%で与えられ、一般的な鋳造材質の炭素当量は、例えば、中江秀雄著「鋳造工学」p20、産業図書、1995年に記載されている。
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、常温強度及び熱間強度を維持させると共に、鋳物の表面粗度を向上させるために必要な成分であり、塗型剤を塗布した砂型と同等の表面平滑性が得られ、塗型剤を使用しなくても良いほどである。従来のアルコール系塗型剤等使用時の着火乾燥が困難な有機繊維等を含有する本発明の鋳物製造用構造体に重要な性能である。
斯かる性能を有する前記熱硬化性樹脂には、特に、可燃ガスの発生が少なく、燃焼抑制効果があり、熱分解(炭化)後における残炭率が25%以上と高く、鋳造時に炭素皮膜を形成するために良好な鋳肌を得ることができる点からフェノール系樹脂を用いることが好ましい。なお、残炭率は、示査熱分析により還元雰囲気下(窒素雰囲気下)にて1000℃に加熱後の残留重量により求めることができる。
前記フェノール樹脂としては、ノボラックフェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂、ビスフェノールAやビスフェノールFのフェノール樹脂、尿素、メラミン、エポキシなどで変成した変性フェノール樹脂等が挙げられるが、好ましくはノボラックフェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂、ビスフェノールAのレゾール樹脂又はこれらの変性樹脂である。
熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂中、前記ノボラックフェノール樹脂を使用した場合に必要となる硬化剤は、水に溶け易いため、湿式抄造による場合には特に成形体の脱水後に塗工することが好ましい。前記硬化剤には、ヘキサメチレンテトラミン等を用いることが好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられ、好ましくはフェノール又はo−クレゾールのノボラック型エポキシ樹脂である。また、該エポキシ樹脂の硬化剤としては、アミン、酸無水物、フェノールノボラック等が挙げられ、好ましくはフェノールノボラックである。更に必要に応じてトリフェニルフォスフィン等の硬化触媒を用いることができる。
前記フラン樹脂としては、フルフリルアルコールを主原料とする樹脂が挙げられ、ホルムアルデヒドや尿素等で変性されていてもよい。また、該フラン樹脂の硬化剤としては、キシレンスルホン酸、硫酸、リン酸等の酸性化合物が用いられる。
前記熱硬化性樹脂は、単独で又は二以上を選択して用いることもでき、さらにはアクリル系樹脂やポリビニルアルコール系樹脂等と併用することもできる。特に、本発明の鋳物製造用構造体を中空中子に適用する場合には、熱硬化性樹脂(特に残炭率が15%以上、特には25%以上)を使用することで、高い熱間強度が得られ、中空中子としての機能を十分に発揮できる。
前記熱硬化性樹脂は、前記有機繊維、前記炭素繊維又は前記無機粒子にコーティングしたり、粉末化又は乳化して原料スラリー中に添加したりし、抄造後乾燥成形したときに前記有機繊維、前記炭素繊維及び前記無機粒子を結合させるもの、成形体の抄造後に含浸させ、乾燥又は硬化させることで鋳物製造用構造体の強度を高め、鋳込み時に溶融金属の熱によって炭化させて強度を維持するものなど、その後の鋳込み時の溶融金属の熱によって炭化して炭素皮膜を形成し、鋳物製造用構造体の強度の維持と鋳物の表面平滑性の向上に寄与し得るものであれば含有させる形態はいずれでもよい。
本実施形態の鋳物製造用構造体には、前記有機繊維、前記炭素繊維、前記無機粒子及び前記熱硬化性樹脂に加えて、必要に応じ、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂等の紙力強化材、ポリアクリルアミド系等の凝集剤、着色剤等の他の成分を適宜の割合で添加することができる。
本実施形態の鋳物製造用構造体は、表面粗度(Ra)が20μm以下、特には3〜15μm、更には5〜10μm以下とするのが好ましい。斯かる表面粗度とすることで、得られる鋳物の表面の平滑性をより優れたものとすることができる。ここで、表面粗度は、後述の実施例のように市販の測定装置で測定することができる。
本実施形態の鋳物製造用構造体の厚さは、その用いられる部分に応じて適宜設定することができるが、少なくとも溶融金属と接する部分における厚さが、0.2〜5mm、特に0.4〜2mmであることが好ましい。厚さが0.2mm以上であれば、鋳物砂を充填して造型するときに要する十分な強度が得られ、鋳物製造用構造体、特に、中子等の構造体の形状機能が維持できるので好ましい。また、厚さが5mm以下であれば、鋳込み時のガス発生量が低減されて鋳物の表面欠陥も発生しにくくなるほか、成形時間も短縮でき、製造費を低減できるので好ましい。
本実施形態の鋳物製造用構造体は、鋳造に用いられる前の状態において、抗折強度が5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。
本実施形態の鋳物製造用構造体は、水を分散媒とした原料スラリーを用いた抄造工程を経て製造したときには、鋳込み時のガス発生量を極力抑える点から、鋳造に用いられる前の状態において、含水率(重量含水率)が10%以下、特には8%以下であることが好ましい。
本実施形態の鋳物製造用構造体は、軽量性と、造型作業や二次加工のし易さの点でから、鋳造に用いられる前の状態において、その比重が1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。
本実施形態の鋳物製造用構造体は、内面に鋳物製品形状のキャビティーを有する主型、その主型に入れて使用する中子、或いは湯道などの注湯系部材等に適用することができるが、本発明の鋳物製造用構造体が表面平滑性に優れており、良好な鋳肌の鋳物を得ることができるため、主型や中子への適用が好ましい。特に、熱間の圧縮強度にも優れ、高い形状保持性を有し且つ鋳込み後の除去性にも優れているため、中子として、特には中空形状でも高い形状保持性を有し、鋳物砂の充填が不要となる中空中子へ適用することが好ましい。
本実施形態の鋳物製造用構造体を鋳物の製造に用いると、従来のように、主型の周りに充填する鋳物砂、中空中子にバックアップの目的で充填する鋳物砂を必ずしもバインダーで硬化させる必要がないので、鋳物砂の再生が容易となる利点も生じる。
次に、本発明の鋳物製造用構造体の製造方法を、その好ましい実施形態として上述した実施形態の鋳物製造用構造体の製造方法に基づいて説明する。
本実施形態の製造方法では、前記有機繊維、前記炭素繊維、前記無機粒子及び前記熱硬化性樹脂を前記所定配合比で含む原料スラリーを調製し、該原料スラリーを用いた湿式抄造法によって所定形状の繊維積層体を抄造し、脱水、乾燥して鋳物製造用構造体を製造する。
前記原料スラリーの分散媒としては、水、白水の他、エタノール、メタノール等の溶剤等が挙げられ、これらの中でも抄造・脱水の安定性、品質の安定性、費用、取り扱い易さ等の点から特に水が好ましい。
前記原料スラリーにおける前記分散媒に対する前記各繊維及び無機粒子の合計の割合は、0.1〜3重量%、特に0.5〜2重量%であることが好ましい。原料スラリー中の前記繊維及び粒子の合計割合が多すぎると肉厚むらが生じやすくなる。特に中空品の場合には内面の表面性が悪くなる場合がある。逆に、少なすぎると局所的な薄肉部が発生する場合がある。
前記原料スラリーには、必要に応じて、前記紙力強化材、前記凝集剤、防腐剤等の添加剤を適宜の割合で添加することができる。
前記繊維積層体の抄造工程では、例えば、2個で一組をなす割型を突き合わせることにより、当該鋳物製造用構造体の外形に略対応した形状を有し且つ外部に向けて開口するキャビティが内部に形成される金型を用いる。各割型には、外部とキャビティとを連通する多数の連通孔を設けておくとともに、各割型の内面を所定の大きさの網目を有するネットによって被覆しておく。そして、該金型のキャビティ内に所定量の原料スラリーを圧送ポンプ等を用いて注入する一方で前記連通孔を通して液体分を吸引排出し、前記ネットに原料スラリーの固形分を堆積させる。前記原料スラリーの加圧注入の圧力は、0.01〜5MPa、特に0.01〜3MPaであることが好ましい。
所定量の原料スラリーの注入により、前記ネット上に所定厚みの繊維積層体が形成されたら、原料スラリーの加圧注入を停止し、前記キャビティ内に空気を圧入して繊維積層体を所定の含水率に脱水する。
次に、前記繊維積層体を乾燥成形する。この乾燥成形工程では、一組の割型を突き合わせることにより成形すべき鋳物製造用構造体の外形に対応した形状を有し且つ外部に向けて開口するキャビティが形成される乾燥型を用いる。そして、該乾燥型を所定温度に加熱し、脱水された前記繊維積層体を該乾燥型内に装填する。上述のような表面粗度を有する鋳物製造用構造体を得るためには、乾燥型のキャビティの形成面の表面粗度(Ra)を15μm以下、特には10μm以下、さらには3μm以下とすることが好ましい。
次に、弾性を有し伸縮自在で且つ中空状をなす中子(弾性中子)を前記キャビティ内に挿入し、該中子内に加圧流体を供給して該中子を該キャビティ内において膨らませる。そして、前記繊維積層体を該キャビティの形成面に押圧し、該キャビティの内面形状を転写しながら乾燥する。中子には、例えば、ウレタン、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム又はエラストマー製のものを用いる。
前記中子を膨張させる前記加圧流体としては、例えば圧縮空気(加熱空気)、油(加熱油)、その他各種の液が挙げられる。加圧流体を供給する圧力は、0.01〜5MPa、特に0.1〜3MPaであることが好ましい。
前記乾燥型の加熱温度(金型温度)は、乾燥時間、焦げによる表面性の低下を考慮すると180〜250℃、特に200〜240℃であることが好ましい。
前記繊維積層体の乾燥後、前記中子内の前記加圧流体を抜き、該中子を縮ませて当該繊維積層体から取り出す。そして、前記乾燥型を開いて乾燥成形された鋳物製造用構造体を取り出す。
得られた鋳物製造用構造体には、強度を向上させるために必要に応じて、コロイダルシリカ、エチルシリケート、水ガラス等を部分的又は全体に含浸させ、コーティングすることができる。
このようにして得られる鋳物製造用構造体は、有機繊維、炭素繊維、無機粒子及び熱硬化性樹脂の各成分がむらなく均一に分散しているため、熱収縮に伴うひび割れ等の発生が抑えられ、高い熱間強度が得られ、表面の平滑性にも優れている。
また、前記繊維積層体がその内部から前記中子で乾燥型のキャビティの形成面に押し付けられて成形されているため、内表面及び外表面の平滑性が高い。このため、鋳物の製造に用いた場合には、得られる鋳物は特に表面平滑性に優れたものとなる。またさらに、中空形状や複雑な立体形状とする場合にも貼り合わせ工程が不要なので、最終的に得られる鋳物製造用構造体には貼り合わせによる継ぎ目及び肉厚部は存在しない。この点においても、肉厚が均一で成形精度や機械的強度が高く、精度の高く表面の平滑性に優れた鋳物を製造することができる。従って、主型や中子は勿論、嵌合部やネジ部を有する湯道等の構造体の製造にも適用することができる。
また、鋳物製造用構造体は、予め150〜300℃、特には150〜250℃で熱処理を行い、熱硬化性樹脂の硬化を進めることが好ましい。このような熱処理を行うことで、より優れた形状保持性を有する鋳物製造用構造体が得られる。特に、鋳物の材質や形状によりガス欠陥の発生が懸念される場合にも好適である。斯かる熱処理による熱硬化性樹脂の硬化度は、下記の熱硬化性樹脂のアセトン不溶分量で30%以上、特には80%以上とすることが好ましい。
前記熱硬化性樹脂の不溶分量は、具体的には、次のように求められる。
すなわち、前記鋳物製造用構造体から試料約5gを採取し、ミルで粉砕して重量(a)を精秤する。この粉砕試料をアセトンとともに容器に加えて十分に振とうさせた後、常温で放置する。次いで、前記容器に前記粉砕試料が残らないようにして、該粉砕試料をろ紙(重量(c))で十分にろ過し、ろ過した該粉砕試料を該ろ紙とともに乾燥してそれら(粉砕試料及びろ紙)の重量(b)を精秤する。そして、得られた各重量(a)〜(c)及び前記粉砕試料中の前記熱硬化性樹脂以外の成分の理論重量(d)に基づいて、下記式から前記熱硬化性樹脂の不溶分量(%)を求める。
不溶分量%=100−(a−(b−c))×100/(a−d)
次に、本発明の鋳物の製造方法を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。
本実施形態の製造方法では、上述のようにして得られた所定の鋳物製造用構造体を鋳物砂内の所定位置に埋設して造型する。鋳物砂には、従来からこの種の鋳物の製造に用いられている通常のものを特に制限なく用いることができる。なお、鋳物砂はバインダーで硬化させなくてもよいが、必要に応じて硬化させてもよい。鋳物製造用構造体が中空中子の場合には中子内に鋳物砂の充填は不要であるが、充填することもできる。
そして、注湯口から溶融金属を注ぎ入れ、鋳込みを行う。このとき、前記炭素繊維及び熱硬化性樹脂によって熱間強度が維持され、鋳物製造用構造体の熱分解に伴う熱収縮が抑えられるため、各鋳物製造用構造体にひび割れが生じたり、鋳物製造用構造体自体が破損したりすることもほとんどなく、溶融金属の鋳物用構造体への差込みや鋳物砂などの付着もほとんど生じることがない。また、炭素当量4.2%以下の溶融金属を用いて鋳物を製造する場合であっても該溶融金属の熱によって前記無機粒子が軟化し、鋳物製造用構造体が熱分解して生成される炭素を溶融金属から隔離できるため、低炭素当量の溶融金属への炭素の溶解が防止される。このため、鋳物の表面平滑性を維持できるとともに、得られる鋳物の炭素当量を所定範囲で安定に保つことができる。
鋳込みを終えた後、所定の温度まで冷却し、鋳枠を解体して鋳物砂を取り除き、さらにブラスト処理によって鋳物製造用構造体を取り除いて鋳物を露呈させる。この時、前記有機繊維が熱分解しているため、鋳物製造用構造体の除去処理は容易である。その後必要に応じて鋳物にトリミング処理等の後処理を施して鋳物の製造を完了する。
本実施形態の鋳物の製造方法は、前記有機繊維、前記炭素繊維、前記無機粒子及び前記熱硬化性樹脂を含む鋳物製造用構造体を用いるので、前記炭素繊維及び熱硬化性樹脂によって熱間強度が維持することができ、寸法精度や表面の平滑性に優れる鋳物を製造することができる。また、炭素当量4.2%以下の溶融金属を用いて鋳物を製造する場合であっても前記無機粒子の軟化によって、鋳物製造用構造体の熱分解で生じる炭化物の低炭素当量の溶融金属への溶解を防止することができる。また、前記有機繊維などの熱分解によって鋳物構造体の内部に空隙を形成して鋳込み後の当該鋳物製造溶構造体の除去を容易に行うことができるので、従来に比べて廃棄物処理を簡便に行うことができるほか、その廃棄物の発生量も大幅に抑えることができる。また、鋳物砂をバインダーで硬化させる必要がないため、鋳物砂の再生処理も簡便なものとなる。
本発明は上述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更することができる。
本発明の鋳物製造用構造体は、前記実施形態のように、立体的な中空形状の鋳物製造用構造体を形成する上では、湿式抄造法によって成形体を抄造し、脱水、乾燥成形工程を経て鋳物製造用構造体を製造することが好ましいが、前記原料スラリーを抄紙してシート状の成形体を形成し、これを紙管として巻き上げて鋳物製造用構造体を製造することもできる。
また、乾燥成形後に最終的な形状に対応した鋳物製造用構造体が得られるように製造することが好ましいが、乾燥後に得られた成形体を切断して分割し、分割された部品どうしを嵌合や螺合等で連結できる形態で製造することもできる。この場合、予め端部や分割部分に嵌合や螺合部を有する形態で成形しておくことが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
表1に示す材料組成の鋳物製造用構造体を下記実施例1〜7及び比較例1〜3のように作製し、得られた鋳物製造用構造体の重量、表面粗度(Ra)及び熱硬化性樹脂の不溶分量を測定するとともに、該鋳物製造用構造体の成形性を下記のように評価した。また、得られた鋳物製造用構造体を用いて鋳物を製造し、鋳物の形状保持性(鋳物製造用構造体の形状保持性)、鋳物の表面平滑性、鋳込み後の鋳物製造用構造体の除去性を下記のように評価した。それらの結果を表1に合わせて示した。
〔実施例1〕
<原料スラリーの調製>
下記有機繊維、炭素繊維及び無機粒子を表1に示す配合で水に分散させた約1重量%のスラリーを調製した後、該スラリーに下記熱硬化性樹脂粉末及び適量の下記凝集剤を添加し、原料スラリーを調製した。
有機繊維:新聞古紙(平均繊維長1mm、フリーネス(CSF)150cc)
無機繊維:PAN系炭素繊維(東レ(株)製「トレカチョップ」、繊維長3mm、収縮率0.1%)
無機粒子:黒曜石(キンセイマテック社製「ナイスキャッチ」、平均粒子径30μm)
熱硬化性樹脂:ノボラックフェノール樹脂(旭有機材工業(株)製「SP1006LS」、残炭率38%)
凝集剤:ポリアクリルアミド系凝集剤(三井サイテック社製「A110」)
<鋳物製造用構造体の抄造成形>
抄造型には、φ40×100mmに対応するキャビティ形成面(表面粗度(Ra)0.9μm)を有する一対の割型で、当該キャビティ形成面に所定の目開きのネットが配され、キャビティ形成面と外部とを連通する多数の連通孔が形成されたものを用いた。そして、前記原料スラリーをモーノポンプで循環させ、前記抄造型内に所定量のスラリーを加圧注入する一方で、前記連通孔を通じて排水し、所定の繊維積層体を前記ネットの表面に堆積させた。所定量の原料スラリーの注入を完了した後、該繊維積層体が堆積された抄造型内に0.2MPaの加圧エアーを約30秒間供給し、該繊維積層体を脱水した。得られた繊維積層体の全面に、前記熱硬化性樹脂の15%(重量比)の硬化剤(ヘキサメチレンテトラミン)を水に分散させた液を均一に塗布した。次いで、繊維積層体を抄造型から取り出し、220℃に加熱された乾燥型に移した。乾燥型には、φ40×100mmに対応するキャビティ形成面を有する一対の割型で、該キャビティ形成面と外部とを連通する多数の連通孔が形成されたものを用いた。乾燥工程では、前記乾燥型の上方開口部から袋状の弾性中子を挿入し、密閉された該乾燥型内で該弾性中子内に加圧流体(加圧空気、0.2MPa)を供給して該弾性中子を膨らませた。そして、前記繊維積層体を該乾燥型の内面に押しつけて、該乾燥型の内面形状を転写させつつ該繊維積層体を乾燥した。所定時間(180秒)の加圧乾燥を行った後、前記弾性中子内の加圧流体を抜いて該弾性中子を収縮させて前記乾燥型内から退避させた。そして、得られた成形体を前記乾燥型から取り出して冷却し、図1に示す形態で、表1に示した組成で重量約7g、肉厚1.2mmの中空中子1を得た。
<鋳物の鋳造>
図2に示すような直管状の鋳物10に対応したキャビティを有する主型を鋳物砂で造型し、その中に、得られたφ40×100mmの前記中空中子1を配し、中子1内には鋳物砂を充填せずに造型し、鋳物材質FC−300、鋳込温度1380℃で鋳物を製造した。
〔鋳物製造用構造体の表面粗度の測定〕
乾燥成形後の鋳物製造用構造体の表面粗度をテーラーホブソン社製「Surtronic 10」により測定した。
〔鋳物製造用構造体の樹脂不溶分量の測定〕
鋳物製造用構造体の熱硬化性樹脂の不溶分量を上述の測定方法に基づいて下記条件で測定した。
溶媒:アセトン(50g)
容器:100ccスクリュー管
振とう時間:10分間
放置時間:常温12時間
乾燥温度:60℃
乾燥時間:30分
〔鋳物製造用構造体の成形性の評価〕
乾燥成形後の鋳物製造用構造体の形状を目視で判断し、その成形性を下記三段階によって評価した。
○:乾燥型の形状が寸法精度良く転写されている。
△:寸法精度は劣るが、乾燥型の形状がほぼ転写されている。
×:乾燥型の形状がほとんど転写されていない。
〔鋳造後における鋳物の形状保持性の評価〕
鋳造後の鋳物の形状保持性を目視で判断し、下記四段階で評価した。
◎:鋳物製造用構造体の形状が非常に寸法精度良く転写されている。
○:鋳物製造用構造体の形状が寸法精度良く転写されている。
△:寸法精度は劣るが、ほぼ鋳物製造用構造体の形状が転写されている。
×:鋳物製造用構造体の形状がほとんど転写されていない。
〔鋳物表面の平滑性の評価〕
得られた鋳物の前記鋳物製造用構造体に接していた部分の表面粗度(Ra)を測定し、下記三段階で表面の平滑性を評価した。なお鋳物の表面粗度は、テーラーホブソン社製「Surtronic 10」により測定した。
○:15μm以下
△:15超〜50μm未満
×:50μm以上
〔鋳造後の鋳物製造用構造体の除去性の評価〕
鋳造後の鋳物製造用構造体の除去性を下記三段階で評価した。
○:容易に除去できる。
△:除去がやや困難
×:除去困難
〔実施例2〕
黒曜石を合成ムライトMM(平均粒子径30μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして重量7g、厚さ1.2mmの中空中子を得た。そして、この中空中子を用い、鋳物材質をSC−460、鋳込温度を1550℃とした以外は、実施例1と同様にして鋳物を鋳造した。
〔実施例3〕
無機繊維に下記炭素繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして重量7g、厚さ1.2mmの中空中子を得た。そして、この中空中子を用い、実施例1と同様にして鋳物を鋳造した。
炭素繊維:ピッチ系炭素繊維(呉羽化学工業製「クレカチョップT−106」、繊維長4mm、収縮率1.5%)
〔実施例4〕
熱硬化性樹脂を市販のフェノールーレゾール樹脂(残炭率35%)を用いた以外は、実施例1と同様にして重量7g、厚さ1.2mmの中空中子を得た。そして、この中空中子を用い、実施例1と同様にして鋳物を鋳造した。
〔実施例5〕
図2に示す直管状の鋳物10に対応したキャビティを有する主型を実施例1と同様にして形成し、厚さ1.2mm、重さ9gの主型を得た。そして、該主型を用い、実施例1と同様にして鋳物を製造した。
〔実施例6〕
実施例1の中空中子を窒素雰囲気下200℃で1時間の熱処理した後、実施例1と同様にして鋳物を鋳造した。
〔実施例7〕
無機粒子として、鱗状黒鉛−185(購入先:不二鉱材(株)、平均粒径80μm)を用い、熱硬化性樹脂としてo−クレゾールノボラックエポキシ樹脂/ノボラックフェノール樹脂を用い、表1に示す配合で実施例6と同様にして厚さ1.2mm、重さ7gの中空中子を得た。そして、この中空中子を用い、鋳物材質をFCD−600、鋳込温度を1380℃とした以外は、実施例1と同様にして鋳物を鋳造した。
〔比較例1〕
鋳物製造用構造体の材料組成を表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして鋳物を鋳造した。
〔比較例2〕
鋳物製造用構造体の材料組成を表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして中空中子を得た。得られた中空中子にさらにポリビニルアルコールを含浸させて重量7g、厚さ1.2mmの中空中子を得た。この中空中子を用い、実施例1と同様にして鋳物を鋳造した。
〔比較例3〕
フラタリーサンドを元砂としたシェル砂を用い、実施例1と同様の形状の中空中子(重量約200g)を作製し、実施例1と同様にして鋳物を鋳造した。
Figure 0004672289
表1に示すように、実施例1〜7では、鋳物製造用構造体の成形性も良好であり、軽量で、比較例3と同等以上に鋳込み後の鋳物製造用構造体の形状保持性および表面平滑性が良好であった。さらに、抄造後の鋳物製造用構造体の除去性も実施例1〜7の何れも良好であった。これに対し、無機粒子を添加していない比較例1では、鋳物製造用構造体は成形できるものの、得られる鋳物の形状保持性、表面平滑性は悪かった。また、熱硬化性樹脂を用いない比較例2では、鋳物製造用構造体は成形できるが、熱間強度が不足しているため、鋳物の形状保持性及び表面平滑性も悪かった。
表2に示す材料組成の鋳物製造用構造体を下記実施例8〜16及び比較例4〜6のように作製し、得られた鋳物製造用構造体の重量、表面粗度(Ra)及び熱硬化性樹脂の不溶分量を測定するとともに、該鋳物製造用構造体の成形性を上記と同様に評価した。また、得られた鋳物製造用構造体を用いて鋳物を製造し、鋳物の表面平滑性、鋳込み後の鋳物製造用構造体の除去性を上記と同様に評価し、鋳物の内径寸法精度を以下のように評価した。それらの結果を表2に合わせて示した。
〔実施例8〜16〕
<原料スラリーの調製>
下記有機繊維、無機繊維及び無機粒子を表2に示す配合で水に分散させた約1重量%のスラリーを調製した後、該スラリーに下記熱硬化性樹脂粉末及び適量の下記凝集剤を添加し、原料スラリーを調製した。
有機繊維:新聞古紙(平均繊維長1mm、フリーネス(CSF)150cc)
無機繊維:PAN系炭素繊維(東レ(株)製「トレカチョップ」、繊維長3mm、収縮率0.1%)
無機粒子:黒曜石(キンセイマテック社製「ナイスキャッチ」、平均粒子径30μm)
鉱物粒子:ムライト(耐火度1700℃、平均粒子径30μm)、アルミナ(耐火度1775℃、平均粒子径32μm)、及び黒鉛(鱗状黒鉛−185、購入先:不二鉱材(株)、平均粒径80μm)
熱硬化性樹脂:ノボラックフェノール樹脂(旭有機材工業(株)製「SP1006LS」、残炭率38%)
凝集剤:ポリアクリルアミド系凝集剤(三井サイテック社製「A110」)
<構造体の抄造成形>
前記実施例1等と同様の方法により、図1に示す形態で、表2に示した組成、重量の肉厚1.2mmの中空中子1を得た。
<鋳物の鋳造>
図2に示すような直管状の鋳物10に対応したキャビティを有する主型を鋳物砂で造型し、その中に、得られたφ40×100mmの前記中空中子1を配し、中子1内には鋳物砂を充填せずに造型し、表2に示す鋳物材質、鋳込温度で鋳物を製造した。
〔鋳物の内径寸法精度の評価〕
上記鋳造法により得られた鋳物10を定盤の上に縦置き設置し、内径寸法測定機(LED寸法測定センサー、キーエンス社製)によりし、円筒内部の上部、中央部、下部の3点で中空部の内径を測定し、それぞれの真円(この場合は直径40mmの円)に対する差をもって内径寸法精度を評価した。すなわち、鋳物10において中空部が真円である場合、内径寸法の誤差は0であり、0に近いほど、寸法精度が高いことを意味する。表2には、差の最大値と最小値の幅を表記した。
〔比較例4〕
構造体の材料組成を表2に示す組成に変更した以外は、実施例8と同様にして鋳物を鋳造した。
〔比較例5〕
構造体の材料組成を表2に示す組成に変更した以外は、実施例8と同様にして中空中子を得た。得られた中空中子にさらにポリビニルアルコールを含浸させて重量7g、厚さ1.2mmの中空中子を得た。この中空中子を用い、実施例8と同様にして鋳物を鋳造した。
〔比較例6〕
フラタリーサンドを元砂としたシェル砂を用い、実施例8と同様の形状の中空中子(重量約200g)を作製し、実施例8と同様にして鋳物を鋳造した。
Figure 0004672289
表2に示すように、実施例8〜14では、構造体である中空中子の表面粗度も良好であり、軽量で、比較例6と同等以上に鋳込み後の鋳物の寸法精度および表面平滑性が良好であった。さらに、抄造後の中空中子の除去性も実施例8〜14の何れも良好であった。これに対し、無機粒子を添加していない比較例4では、中空中子は成形できるものの、得られる鋳物の形状保持性、表面平滑性は悪かった。また、熱硬化性樹脂を用いない比較例5では、中空中子は成形できるが、熱間強度が不足しているため、鋳物の形状保持性及び表面平滑性も悪かった。更に、実施例8〜14のように黒曜石と鉱物粒子とを組み合わた無機粒子を用いると、実施例15及び16のように無機粒子として鉱物粒子のみを用いる場合よりも、更に鋳物の寸法精度及び表面粗度が向上する。
本発明の鋳物製造用構造体を中空中子に適用した一実施形態を用いて製造された鋳物を模式的に示す斜視図である。 前記実施形態の中空中子を用いて製造された鋳物を模式的に示す斜視図である。
符号の説明
1 中空中子(構造体)
10 鋳物

Claims (10)

  1. 有機繊維、無機繊維、無機粒子及び熱硬化性樹脂を含有する鋳物製造用構造体であって、
    鋳物製造用構造体における含有量が、有機繊維10〜50重量%、無機繊維2〜50重量%、無機粒子20〜60重量%及び熱硬化性樹脂5〜50重量%であり、
    前記無機繊維が炭素繊維であり、前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂、エポキシ樹脂及びフラン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂である
    鋳物製造用構造体。
  2. 厚さが0.2〜5mmである請求項1記載の鋳物製造用構造体。
  3. 表面粗度(Ra)が20μm以下である請求項1又は2記載の鋳物製造用構造体。
  4. 前記鋳物製造用構造体が中子である請求項1〜3の何れかに記載の鋳物製造用の構造体。
  5. 前記中子が中空である請求項4記載の鋳物製造用構造体。
  6. 炭素当量が4.2%以下の溶融金属から鋳物を製造するための構造体である請求項1〜5の何れか1項記載の鋳物製造用構造体。
  7. 前記無機粒子が、耐火度800〜2000℃の無機粒子である請求項6記載の鋳物製造用構造体。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の鋳物製造用構造体の製造方法であって、前記有機繊維、前記無機繊維及び前記無機粒子を少なくとも含む原料スラリーを用いた抄造工程を具備する鋳物製造用構造体の製造方法。
  9. 請求項1〜7の何れかに記載の鋳物製造用構造体を用いる鋳物の製造方法。
  10. 請求項1〜7の何れかに記載の鋳物製造用構造体を用いて鋳造される鋳物。
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