JP5473312B2 - 鋳物製造用構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳物の製造時に用いられる鋳型等の構造体の製造方法に関する。
鋳物は、一般に、木型や金型などをもとに鋳物砂で内部にキャビティを有する鋳型を形成するとともに、必要に応じて該キャビティ内に中子を配した後、該キャビティに熔湯を供給して製造されている。
木型、金型は、加工に熟練を要し高価な設備も必要で、高価で重い等の欠点とともに廃棄物処理の問題も有し、量産の鋳物のほかには使用が困難である。また、鋳物砂を用いる砂型は、通常の砂にバインダーを添加し、硬化させて形状を保持させているため、砂の再利用には、再生処理工程が必須となる上、再生処理の際にダストなどの廃棄物が発生するなどの問題も有している。加えて、中子を砂型で製造する場合は、上記課題に加え中子自身の質量のため作業性が悪く、さらには、鋳込み時の強度保持と鋳込み後の中子除去性という相反する性能が要求される。
このような課題を解決する技術として、成形性や形状保持性に優れる、有機繊維、無機繊維、無機粒子及び熱硬化性樹脂を含有する鋳物製造用構造体に係る技術が知られている。更に、複雑な形状であっても細部にわたって精度よく賦形がなされた鋳物製造用構造体を得る技術として、有機繊維、無機繊維、熱硬化性樹脂に加えて、熱膨張性粒子を含有させ、鋳物製造用構造体を得る技術(特許文献1、2参照)が開示されている。更に、ガス欠陥を改善するために、有機繊維、無機繊維及びバインダーを含有する構造体の表面に無機粒子を付着させた鋳物製造用構造体が開示されている(特許文献3参照)。
特開2006−346747号公報 特開2007−144511号公報 特開2007−21578号公報
特許文献1、2の技術は、鋳込み時の強度保持及び鋳込み後の中子除去性に効果を有するものの、複雑な形状の鋳物製造用構造体を用いて鋳物の製造を行った場合には、鋳物にガス欠陥が発生することがあった。また、特許文献3はガス欠陥を改善する技術であるが、より複雑な形状の鋳物製造用構造体を用いた場合の効果については言及されていない。よって、この課題を改善し得る手段が強く望まれていた。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複雑な形状であっても成形性に優れ、鋳物のガス欠陥を低減可能な鋳物製造用構造体を製造できる、鋳物製造用構造体の製造方法を提供することにある。
本発明は、無機粒子、無機繊維及び熱硬化性樹脂を含有する構造体(I)の表面に、鱗状黒鉛を含む塗膜を形成する工程を有する、鋳物製造用構造体の製造方法に関する。
本発明によれば、複雑な形状であっても成形性に優れ、鋳物のガス欠陥を低減可能な鋳物製造用構造体を製造できる、鋳物製造用構造体の製造方法が提供される。
本発明の構造体(I)は、無機粒子、無機繊維、熱硬化性樹脂、及び分散媒を含有するスラリー状組成物(以下、本発明に係るスラリー状組成物という場合がある)を成形型内に充填し、加熱成形する工程により得られるものが好ましい。以下、その好ましい実施形態に基づき説明する。
<スラリー状組成物>
本発明に係るスラリー状組成物は、無機粒子、無機繊維、熱硬化性樹脂、及び分散媒を含有するものである。
(i)無機粒子
本発明に係るスラリー状組成物に用いられる無機粒子としては、黒鉛、黒曜石、雲母、ムライト、シリカ、マグネシア等が挙げられる。無機粒子は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。鋳物のガス欠陥低減の観点から、黒鉛が好ましく、更に黒鉛の中でも、土状黒鉛及び人造黒鉛から選ばれる少なくとも1種が好ましく、人造黒鉛を用いることがより好ましい。
前記無機粒子の平均粒子径は、鋳物のガス欠陥低減の観点から、80μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上が更に好ましい。また、前記無機粒子の平均粒子径は、鋳物製造用構造体の熱間強度の観点から、2000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、500μm以下が更に好ましい。かかる観点から、前記無機粒子の平均粒子径は、80〜2000μmが好ましく、100〜1000μmがより好ましく、150〜500μmが更に好ましい。
ここで、無機粒子の平均粒子径は下記の第1の測定方法で測定し、算出される平均粒子径が200μm以上の場合は、その値を平均粒子径とし、算出される平均粒子径が200μm未満の場合には、下記の第2の測定方法で測定することにより求めることができる。
〔第1の測定方法〕
JIS Z2601(1993)「鋳物砂の試験方法」附属書2に規定する方法に基づいて測定し、質量累積50%をもって平均粒子径とした。前記質量累積は、各ふるい面上の粒子を、JIS Z2601(1993)解説表2に示す「径の平均Dn(mm)」とみなして計算するものとする。
〔第2の測定方法〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920)を用いて測定された体積累積50%の平均粒子径である。分析条件は下記の通りである。
・測定方法:フロー法
・屈折率:1.50(メタノールに対する相対屈折率)
・分散媒:メタノール
・分散方法:攪拌、内蔵超音波3分
・試料濃度:2mg/100cm3
また、本発明の構造体(I)は、通気度がある程度確保されていることが好ましいため、該構造体(I)の製造に用いる無機粒子の形状係数は1.0〜2.3が好ましく、1.0〜2.1であることがより好ましい。
本発明において、構造体(I)の製造に用いる無機粒子の形状係数は下記の方法で測定されたものである。
<無機粒子の形状係数測定方法>
無機粒子の形状係数測定方法として、社団法人 日本鋳造技術協会 平成15年12月研究調査報告書「鋳物砂粒形と鋳型特性」p10〜15に記載されている形状係数測定方法を用いる。即ち、測定装置として(株)キーエンス製「VH−5000」を用い、画像解析ソフトはキーエンス製「VHX−H2M」、倍率は50倍のマイクロスコープ画像を撮影し、画像解析を行い周囲長及び面積を求め、各種無機粒子の形状係数を次式の形状係数式に代入して算出する。画像撮影は、白紙の上に無機粒子を単分散させ1視野に無機粒子を5個以上乗せて行い、1つの試料につき無作為に20回の測定及び形状係数の算出を行い、その平均値を無機粒子の形状係数とする。
形状係数=(周囲長)2/(4π×面積)
本発明に係るスラリー状組成物中の前記無機粒子の含有量は、鋳物製造用構造体の熱間強度を向上させる観点から、前記無機粒子、無機繊維、及び熱硬化性樹脂(以下、「無機粒子、無機繊維、及び熱硬化性樹脂」を「スラリー状組成物の固形分材料」ともいう)の総質量中、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜85質量%、更に好ましくは50〜80質量%である。
(ii)無機繊維
本発明に係るスラリー状組成物に用いられる無機繊維としては、炭素繊維、ロックウール等の人造鉱物繊維、セラミック繊維、天然鉱物繊維が挙げられる。無機繊維は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。そして、これらの中でも、熱硬化性樹脂の炭化に伴う収縮抑制の観点から、炭素繊維が好ましく、ピッチ系やポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維がより好ましく、PAN系の炭素繊維が更に好ましい。
前記無機繊維は、鋳物製造用構造体の熱間強度の観点から、平均繊維長が好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上である。また、鋳物製造用構造体の成形性の観点から平均繊維長が好ましくは15mm以下、より好ましくは8mm以下、更に好ましくは5mm以下である。かかる観点から、前記無機繊維の平均繊維長は、好ましくは0.5〜15mm、より好ましくは1〜8mm、更に好ましくは2〜5mmである。
また、前記無機繊維は、鋳物製造用構造体の熱間強度、鋳物製造用構造体の成形性の観点から、長軸/短軸比は、好ましくは1〜5000、より好ましくは10〜2000、更に好ましくは50〜1000である。
本発明に係るスラリー状組成物中の前記無機繊維の含有量は、鋳物製造用構造体の熱間強度の観点から、無機粒子、無機繊維、及び熱硬化性樹脂の総質量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。また、鋳物製造用構造体の成形性の観点から、無機粒子、無機繊維、及び熱硬化性樹脂の総質量中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。かかる観点から、無機粒子、無機繊維、及び熱硬化性樹脂の総質量中、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。
(iii)熱硬化性樹脂
本発明に係るスラリー状組成物に用いられる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、鋳造時における熱分解ガスの発生量が少なく、燃焼抑制効果があること、熱分解(炭化)後における残炭率が25%以上と高く、構造体を鋳型に用いた場合に炭化皮膜を形成して良好な鋳肌を得ることができる点からフェノール樹脂を用いることが好ましい。
前記フェノール樹脂としては、ノボラックフェノール樹脂、レゾールタイプ等のフェノール樹脂、尿素、メラミン、エポキシ等で変性した変性フェノール樹脂等が挙げられる。中でも、レゾールタイプのフェノール樹脂を用いる事で、酸、アミン等の硬化剤を必要とせず、構造体成形時の臭気や、構造体を鋳型として用いた場合の鋳物欠陥を低減することができるので、好ましい。
本発明に係るスラリー状組成物中の前記熱硬化性樹脂の含有量は、鋳物製造用構造体の熱間強度の観点から、無機粒子、無機繊維、及び熱硬化性樹脂の総質量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。また、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、前記熱硬化性樹脂は、無機粒子、無機繊維、及び熱硬化性樹脂の総質量中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。かかる観点から、無機粒子、無機繊維、及び熱硬化性樹脂の総質量中、前記熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。
(iv)分散媒
本発明に係るスラリー状組成物に用いられる分散媒としては、水の他、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、アセトン、キシレンなどの溶剤が挙げられる。これらを単独又は二以上を混合して用いることができる。その中でも、取り扱い易さの点から、水が好ましい。後述の通り、本発明に係るスラリー状組成物が、熱膨張性粒子を含有する場合、沸点が熱膨張性粒子の膨張開始温度以上である分散媒を用いることが好ましい。
本発明に係るスラリー状組成物が、熱膨張性粒子を含有する場合、分散媒は、複雑な形状の鋳物製造用構造体であり、かつ高通気度である鋳物製造用構造体を得ることで、鋳物のガス欠陥低減が可能な観点から、分散媒の沸点は、熱膨張性粒子の膨張開始温度に対し、好ましくは5〜100℃高く、より好ましくは10〜80℃高く、更に好ましくは10〜70℃高い。すなわち、前記分散媒の沸点と前記熱膨張性粒子の膨張開始温度との差〔分散媒の沸点(℃)−熱膨張性粒子の膨張開始温度(℃)〕が、好ましくは5〜100℃、より好ましくは10〜80℃、更に好ましくは10〜70℃である。
本発明に係るスラリー状組成物は、分散媒を好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%、更に好ましくは45〜65質量%含有する。
(v)熱膨張性粒子
本発明に係るスラリー状組成物は、膨張開始温度(℃)が分散媒の沸点(℃)以下である熱膨張性粒子を含有することが好ましい。これにより、精度よく賦形がなされ、かつ高通気度の鋳物製造用構造体が得られ、鋳物のガス欠陥を大きく低減することが可能である。更に、前記熱膨張性粒子は、鋳物製造用構造体の複雑な形状の成形性及び高通気度を得ることによる鋳物のガス欠陥低減の観点から、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度は、前記分散媒の沸点に対し、好ましくは5〜100℃低く、より好ましくは10〜80℃低く、更に好ましくは10〜70℃低い。
ここで、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(℃)は、特開平11−2615号公報における体積変化開始温度(特開平11−2615号公報の段落0012等参照)であり、本発明では、昇温速度10℃/分の条件で昇温させた際の体積変化開始温度を指す。
なお、熱膨張性粒子の体積変化開始温度に幅がある場合は、当該体積変化開始温度の最小値を熱膨張性粒子の膨張開始温度とみなす。
前記熱膨張性粒子としては、熱可塑性樹脂を殻壁とし、低沸点炭化水素を内包(マイクロカプセル化)したものが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・共役ジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸エステル・スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸エステル・共役ジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)、スチレン・共役ジエン共重合体及びその水素添加樹脂(SBS、SIS、SEBS、SEPS)、スチレン系エラストマー)ポリアミド系樹脂(ポリアミド、ポリアミド系エラストマー)、ポリエステル系樹脂(ポリエステル、ポリエステル系エラストマー)、ポリウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。前記熱可塑性樹脂は、鋳物製造用構造体の成形性の観点からアクリロニトリル共重合体が好ましい。
また、前記低沸点炭化水素としては、イソブタン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、ネオペンタン、プロパン、プロピレン、ブテンなどが挙げられる。低沸点化合物は、鋳物のガス欠陥低減効果(鋳物製造用構造体の通気性向上)の観点から、前記低沸点化合物の炭素数6以下、沸点が80℃未満の炭化水素化合物が好ましい。熱膨張性粒子は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。
前記熱膨張性粒子は、熱により膨張し、かつ膨張前の平均直径が、成形性の観点から、好ましくは1〜60μm、より好ましくは2〜50μmであり、更に好ましくは5〜30μmである。また、80〜200℃で加熱すると、直径が3〜10倍に膨張するものが好ましい。
本発明に係るスラリー状組成物中の前記熱膨張性粒子の含有量は、複雑な形状であっても細部にわたって精度よく賦形がなされた鋳物製造用構造体を得る観点から、スラリー状組成物の固形分材料の総質量に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、前記熱膨張性粒子の含有量は、鋳物のガス欠陥低減効果に優れる観点から、スラリー状組成物の固形分材料の総質量に対し、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。かかる観点から、前記熱膨張性粒子の含有量は、スラリー状組成物の固形分材料の総質量中、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%である。なお、本発明に係るスラリー状組成物が熱膨張性粒子を含有する場合、その量は、スラリー状組成物の固形分材料の総質量に含めるものとする。
(vi)水溶性高分子化合物
本発明に係るスラリー状組成物は、鋳物製造用構造体の成形性向上の観点から、水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。ここで水溶性高分子化合物は、25℃の水100gに対して、1g以上溶解し、かつ重量平均分子量が、1万〜1000万であるものを意味し、1万〜500万であるものが好ましい。
前記水溶性高分子には、天然高分子のアラビアガム、トラガントガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アルギン酸、カラギーナン、半合成高分子のメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、合成高分子のポリアクリル酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、アクリル酸系共重合体、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系、ノニオン系ポリアクリルアミド、アニオン系ポリアクリルアミド、カチオン系ポリアクリルアミド、ポリアミノアルキルメタクリレート、アクリルアミド/アクリル酸共重合体、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化マレイン酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエーテル変性シリコーン、またはこれらの変性物などを挙げることができる。これらは塩であってもよい。水溶性高分子は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。これらの中でも、水に対する増粘作用及び鋳物製造用構造体の成形性の観点から、半合成高分子、なかでも、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、カチオン化セルロース等のセルロース誘導体が好ましく、更にカルボキシメチルセルロース又はその塩が好ましい。
本発明に係るスラリー状組成物中の前記水溶性高分子の含有量は、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、スラリー状組成物の固形分材料の総量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。また、前記水溶性高分子の含有量は、鋳物製造用構造体の成形性の観点から、スラリー状組成物の固形分材料の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。かかる観点から、前記水溶性高分子の含有量は、スラリー状組成物の固形分材料の総量に対して好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%である。なお、本発明に係るスラリー状組成物が水溶性高分子化合物を含有する場合、その量は、スラリー状組成物の固形分材料の総質量に含めるものとする。
(vii)その他
本発明に係るスラリー状組成物において、前記無機粒子及び前記熱膨張性粒子の配合比は、鋳物のガス欠陥低減の観点から、前記無機粒子/前記熱膨張性粒子/=40/15〜80/0.1(質量比率)が好ましい。
本発明に係るスラリー状組成物において、前記無機粒子、前記無機繊維、前記熱硬化性樹脂、前記熱膨張性粒子、前記水溶性高分子化合物の配合比(質量比率)は、鋳物製造用構造体の熱間強度、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、好ましくは前記無機粒子/前記無機繊維/前記熱硬化性樹脂/前記熱膨張性粒子/前記水溶性高分子化合物=40〜90/1〜20/1〜30/0.1〜15/0.1〜20(質量比率)、より好ましくは55〜85/2〜18/2〜18/0.5〜12/0.5〜10(質量比率)、更に好ましくは50〜80/5〜15/5〜15/0.5〜5/1〜5(質量比率)である(ただし、上記質量比率に用いる各成分の数値の合計は100である。)。
本発明に係るスラリー状組成物は、より複雑な形状の鋳物製造用構造体における成形性、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、有機繊維の含有量が少ない方が好ましい。この観点から、前記有機繊維とスラリー状組成物の固形分材料の総量の配合比(質量比率)が、好ましくは前記有機繊維/スラリー状組成物の固形分材料の総量=0.1(質量比率)以下、より好ましくは0.05(質量比率)以下である。更に、前記スラリー状組成物に有機繊維を含有しないことが、よりさらに好ましい。
<鋳物製造用構造体の製造方法>
本発明の鋳物製造用構造体の製造方法は、構造体(I)の表面に鱗状黒鉛を含む塗膜を形成する工程を有するものであるが、かかる構造体(I)は上記の製法で得られたものが好ましい。従って、本発明の鋳物製造用構造体の製造方法は、前記無機粒子、前記無機繊維、前記熱硬化性樹脂、及び前記分散媒、好ましくは更に、前記熱膨張性粒子、及び前記水溶性高分子化合物を含有するスラリー状組成物を成形型内に充填し、加熱成形して構造体(I)を製造する工程〔以下、工程(1)という〕と、構造体(I)の表面に鱗状黒鉛を含む塗膜を形成する工程〔以下、工程(2)という〕と、を有することが好ましい。
本発明の鋳物製造用構造体の製造方法において、工程(1)に使用する成形型は、例えば、図1に示す中空棒状品に対応したキャビティを有する主型と中空を形成する心材とを備えることによって構成される。成形型の温度は、分散媒の蒸発、熱硬化性樹脂の硬化や熱膨張性粒子の膨張を考慮して、100〜300℃、更に120〜250℃程度に加熱される。成形型にはゲートの開閉手段を設けることにより、スラリー状組成物が成形型に充填される。充填圧力は、エア圧力を手段にした場合は、0.5〜3MPa程度が好適である。
本発明の鋳物製造用構造体の製造方法において、工程(1)は前記スラリー状組成物を成形型内に充填し、加熱成形するものであり、好ましくは加熱成形する工程において前記スラリー状組成物を100〜300℃、更に120〜250℃に加熱し、前記熱硬化性樹脂を硬化させる。
次に、成形型に充填された前記本発明に係るスラリー状組成物は、成形型の加熱により発生した分散媒由来の蒸気及び熱硬化性樹脂由来のガス等を成形型外へ放出させつつ乾燥させ、冷却後、必要に応じてトリミング、薬剤の塗布等を行うことによって、本発明の鋳物製造用構造体となる構造体(I)を製造することができる。
次に、構造体(I)〔好ましくは100〜300℃で熱処理された構造体(I)〕の表面に鱗状黒鉛を含む塗膜が形成された、本発明の構造体の製造方法を詳細に説明する。
構造体(I)の表面に鱗状黒鉛を含む塗膜が形成された状態としては、本発明の効果発現の観点から、構造体(I)の表面が50%以上、更に80%以上、より更に90%以上、当該塗膜で被覆されていることが好ましい。
本発明で用いる鱗状黒鉛は構造体(I)から発生するガスの遮蔽性、構造体(I)との密着性などの観点から、平均粒子径が5〜100μmであることが好ましく、更に10〜80μmが好ましく、より更に20〜70μmが好ましい。
前記構造体(I)の表面に形成される鱗状黒鉛を含む塗膜の厚み(乾燥後の構造体の表面に鱗状黒鉛を含む塗膜を付着した断面の鱗状黒鉛を含む塗膜の肉厚)は、鋳物品質であるガス欠陥の低減効果及び被覆の垂れ性能から、1〜800μmが好ましく、更に5〜500μm、より更に50〜300μmが好ましい。なお、鱗状黒鉛を含む塗膜の厚みは、後述の実施例記載の測定法により求めることができる。
また、構造体(I)の表面への鱗状黒鉛を含む塗膜の形成方法として、鱗状黒鉛を含む分散液(塗液組成物)を用いた塗布、例えば刷毛塗布、スプレー塗布、静電塗装、焼付塗装、ぶっ掛け塗布、浸漬塗布等の方法が挙げられるが、付着層の厚みの均一性、効率的及び経済的に鋭意検討を行った結果、浸漬塗布が最も好ましい。浸漬塗布の工程を詳細に説明すると、構造体(I)を、鱗状黒鉛を含む分散液(塗液組成物)を所定量入れた浴槽に浸漬(どぶ漬け)する。浸漬温度(分散液温度)は5〜40℃の範囲が好ましく、更に好ましくは15〜30℃、更に好ましくは20〜30℃の範囲で且つ恒温になるように設備設定することが最も好ましい。また、生産性の面から浸漬時間は1〜60秒の範囲が好ましく、バッチ又は連続的に浸漬することができる。また、鱗状黒鉛を含む塗膜の膜厚を調整するために、鱗状黒鉛を含む分散液を塗布した構造体(I)に、振動テーブル等で振動を与えることができる。このように、構造体(I)(好ましくは予め100〜300℃で熱処理した構造体(I))表面に鱗状黒鉛を付着したものを、より強固な付着状態とするには乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥方法としてヒーターによる熱風乾燥、遠赤外乾燥、マイクロ波乾燥、過熱蒸気乾燥等が挙げられるが、限定されるものではない。熱風乾燥機を用いて乾燥させる場合は乾燥炉内中心部の乾燥温度については100〜500℃の範囲が好ましく、更に有機物やバインダーの熱分解による影響及び発火による安全性から105〜300℃の範囲が最も好ましい。なお分散媒としては、水、アルコール等が挙げられ、水が好ましい。また、分散媒は鱗状黒鉛100質量部に対して、20〜100質量部、更に25〜70質量部用いられることが好ましい。
鱗状黒鉛を含む塗膜は、鋳物製造用構造体の耐熱性向上の観点から、更に粘土鉱物を含有することが好ましい。また、粘土鉱物を、鱗状黒鉛を含む塗膜を得るための分散液(塗液組成物)に配合することで、適度な粘度を付与することができる。粘土鉱物としては、層状ケイ酸塩鉱物、複鎖構造型鉱物などが挙げられ、これらは天然、合成を問わない。層状ケイ酸塩鉱物としては、スメクタイト属、カオリン属、イライト属に属する粘土鉱物、例えばベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、活性白土、木節粘土、ゼオライト等が挙げられる。複鎖構造型鉱物としては、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト等が挙げられる。好ましくは、アタパルジャイト、ベントナイト、スメクタイト群より選ばれる一種以上が挙げられる。粘土鉱物は、鱗状黒鉛100質量部に対して、1〜30質量部、更に3〜20質量部用いられることが好ましい。
また、鱗状黒鉛を含む塗膜を形成する際に水溶性バインダーを用いることが、鋳物製造用構造体の常温強度、耐熱性向上の観点から好ましい。従って、本発明の製造方法は、鱗状黒鉛及び水溶性バインダーを含む塗液組成物を前記構造体(I)の表面に塗布する工程を有することが好ましい。水溶性バインダーとしては、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂、水溶性多糖類、酢酸ビニル樹脂又はその共重合体、硫酸塩、珪酸塩、燐酸塩等の水溶性無機バインダ−などが挙げられる。好ましくは、アラビアガム、水溶性フェノール樹脂及びリン酸アルミニウムからなる群より選ばれる一種以上が挙げられる。水溶性バインダーは、鱗状黒鉛100質量部に対して、有効分換算で、1〜30質量部、更に1〜20質量部用いられることが好ましい。なお、水溶性バインダーについて、「水溶性」とは、25℃の水100gに対して、3g以上溶解することをいう。
これら粘土鉱物及び/又は水溶性バインダーは、鱗状黒鉛を含む分散液(塗液組成物)の調製時に配合して用いることが好ましい。
本発明に係る塗液組成物は黒鉛を含有し、前記で述べた理由により、好ましくは、更に粘土鉱物及び/又は水溶性バインダーを含有する。
本発明に係る塗液組成物は、前記で述べたように、黒鉛、粘土鉱物及び水溶性バインダー等の固形分材料に水やアルコール等の分散媒を添加して、攪拌してスラリー状に製造する。得られた塗液組成物は、水やアルコール等の分散媒で適度に希釈して構造体(I)に前記した手段で塗布する。その後、乾燥工程を経て塗膜が構造体(I)の表面に形成され、本発明の鋳物製造用構造体が得られる。
本発明により製造された鋳物製造用構造体は、鋳物砂内及びバックアップ粒子(鋳物砂の替わりにショット玉やその他の粒子)内に配し、主型、中子、湯道(注湯系)や揚がり湯道として使用することができ、鋳物欠陥であるガス欠陥を低減した鋳物を製造することができる。
すなわち、本発明の構造体に係る構造体(I)の原料やその組成比率を適正化し、且つ構造体(I)の表面に鱗状黒鉛を含む塗膜を形成することにより、鋳物のガス欠陥を改善できる鋳物製造用構造体を提供することができる。本発明により、鋳物のガス欠陥が改善される理由として定かではないが、熔湯に接する表面側に付着、好ましくは付着層を形成している鱗状黒鉛が熔湯側へ進入するガスをバリアし、かつ、熔湯に接しない面から鋳型外へガスを排除できている結果によるものと推定される。
その場合の構造体(I)の熔湯に接する表面に鱗状黒鉛を含む層を形成する方法としては、鱗状黒鉛を含む分散液(塗液組成物)を用いた浸漬塗布、刷毛塗布、スプレー塗布が好ましい。
本発明により製造される鋳物製造用構造体中における無機粒子、無機繊維及び熱硬化性樹脂並びに必要に応じて用いられる材料の総質量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
本発明により製造される鋳物製造用構造体中における鱗状黒鉛の質量は、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。
本発明により製造される鋳物製造用構造体の用途として、前述したキャビティを有する鋳型に又は発泡スチロール模型を使用する、所謂フルモールド鋳造法、或いは粘結剤を使用しない消失模型鋳造法或いは鋳型とする主型や中子等の鋳造分野或いは耐熱性等を要求される他分野で本発明の構造体を使用することができ、湯口用ランナーや揚がり用ランナーあるいは中子用として好適である。
<鋳物製造用構造体>
本発明の製造方法によって得られた鋳物製造用構造体は、無機粒子及び無機繊維、熱硬化性樹脂を含有するものであり、好ましくは更に熱膨張性粒子及び水溶性高分子化合物を含有するものである。また、表面に存在する鱗状黒鉛及び粘土鉱物、更には水溶性バインダーも含むものである。
鱗状黒鉛を含む塗膜が形成された鋳物製造用構造体の通気度は、熔湯側へ進入するガスをバリアする効果の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
なお、鱗状黒鉛を含む塗膜が形成される前の構造体(I)の通気度は、鱗状黒鉛を含む塗膜でバリアされたガスの鋳型外への排出効果の観点から、好ましくは1〜500、より2〜500、より更に好ましくは6〜120、更に好ましくは15〜100である。
前記構造体(I)の通気度は、例えば、(1)構造体(I)の密度を低減する、(2)前記熱膨張性粒子の膨張開始温度が前記分散媒の沸点に対し、5〜100℃低いものを選択する(前記熱膨張性粒子の膨張開始温度と分散媒の沸点を適切に調節する)ことで、数値を大きくできる、すなわち通気度を向上できる。さらに、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度と分散媒の沸点の適切な調節は、鋳物製造用構造体の密度を下げるよりも通気度向上に対する効果が大きい。尚、通気度は、実施例記載の測定方法により求めることができる。
本発明により得られた鋳物製造用構造体の厚みは、その用途、及び構造体における部位に応じて適宜設定することができるが、溶融金属と接する部分における厚みは、好ましくは0.2〜5mm、より好ましくは0.2〜4mm、更に好ましくは0.4〜3mmである。前記厚みが前記下限値以上であれば、鋳込み時に鋳物製造用構造体の形状機能が維持でき、前記上限値以下であれば、鋳込み時における熱分解ガス発生量が低減され、鋳物の表面欠陥が発生しにくくなる。
本発明により得られた鋳物製造用構造体は、内面に鋳物製品形状のキャビティを有する主型、主型に入れて使用する中子、或いは湯道などの注湯系部材、フィルター保持具等に適用することができるが、本発明の鋳物製造用構造体は表面平滑性に優れており、良好な鋳肌の鋳物を得ることができるため、主型や中子への適用が好ましい。なかでも本発明の鋳物製造用構造体は、鋳物のガス欠陥低減効果に優れる為、注型時に熔湯金属に覆われてガス欠陥が発生しやすくなる中子への適用に適しており、中空中子への適用により適している。
<鋳物の製造方法>
次に、本発明の製造方法によって得られた鋳物製造用構造体を用いた鋳物の製造方法を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。本実施形態の鋳物の製造方法では、上述のようにして得られた鋳物製造用構造体を鋳物砂内の所定位置に埋設して造型する。鋳物砂には、従来からこの種の鋳物の製造に用いられている通常のものを制限なく用いることができる。
そして、注湯口から溶融金属を注ぎ入れ、鋳込みを行う。このとき、本発明の構造体は、熱間強度が維持され、鋳物製造用構造体の熱分解に伴う熱収縮が小さいため、各鋳物製造用構造体のひび割れや、鋳物製造用構造体自体の破損が抑制され、溶融金属の鋳物製造用構造体への差込みや鋳物砂などの付着も生じにくい。
鋳込みを終えた後、所定の温度まで冷却し、鋳枠を解体して鋳物砂を取り除き、さらにブラスト処理によって鋳物製造用構造体を取り除いて鋳物を露呈させる。この時、前記硬化性樹脂が熱分解しているため、鋳物製造用構造体の除去処理は容易である。その後必要に応じて鋳物にトリミング処理等の後処理を施して鋳物の製造を完了する。
更に好ましい鋳物の製造方法としては、本発明の鋳物製造用構造体を中空中子として使用する態様であり、鋳型内に中空中子を、中空中子の開口部の少なくとも1つが鋳型外に開放するように配置し、次いで、鋳型内に溶融金属を注湯する方法が挙げられる。
具体的には、図3に示すように、図1の中空中子を主型に配置し、ケレンにより中空中子を支持し、中空中子の開口部の1つが鋳型外に開放するように配置し、次いで、鋳型内に溶融金属を注湯して鋳物を製造する方法が挙げられる。尚、中空中子の開口部の1つが鋳型外に開放するように配置する方法としては、主型に中空中子の中空部と連通するように開口部を備える方法でもかまわない。
実施例1〜9、比較例1〜4
<スラリー状組成物の調製>
無機粒子、無機繊維、熱硬化性樹脂、水溶性高分子化合物及び熱膨張性粒子の組成及び配合率(質量比率)が表1に示すようなスラリー状組成物の固形分材料100gを攪拌混合により調製した後、このスラリー状組成物の固形分材料に水175gを添加し、20〜40℃において2000rpmで10分間攪拌して、スラリー状組成物の固形分材料濃度が36.4質量%(スラリー状組成物中、スラリー状組成物の固形分材料が36.4質量%)、水分濃度が63.6質量%(スラリー状組成物中、水分が63.6質量%)であるスラリー状組成物を調製した。尚、表1に示すそれぞれの成分は、下記の通りである。
[無機粒子]
土状黒鉛:(株)中越黒鉛工業所製「AE−1」、平均粒子径425μm、形状係数2.05
人造黒鉛:(株)中越黒鉛工業所製「G−30」、平均粒子径210μm、形状係数1.78
[無機繊維]
炭素繊維:PAN炭素繊維(三菱レーヨン(株)製、商品名「パイロフィルチョップドファイバー」、平均繊維長3mm)
[熱硬化性樹脂]
フェノール樹脂:エア・ウォーター(株)製「ベルパールS−890」(レゾールタイプ)
[熱膨張性粒子]
熱膨張性粒子:松本油脂製薬(株)製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−48D」、膨張開始温度120℃
[水溶性高分子化合物]
CMC(1):カルボキシルメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製「セロゲンMP−60」、重量平均分子量:37万〜40万、25℃の水100gに対して、3g以上溶解)
CMC(2):カルボキシルメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製「HE−1500F」、重量平均分子量:33万〜36万、25℃の水100gに対して、3g以上溶解)
<構造体(I)の製造>
図1に示す中空棒状品に対応するキャビティを有する主型と中空を形成する心材を備える成形型に、上記で調製したスラリー状組成物をエア圧力1MPaで、160℃に加熱された成形型へ充填した。5分間加熱することにより、外形11mm(中空部径5mm)×長さ380mmの図1に示す中空棒状品〔構造体(I)〕を得た。
<構造体(I)及び鋳物製造用構造体の通気度測定方法>
JIS Z2601(1993)「鋳物砂の試験方法」に基づいて規定された、「消失模型用塗型剤の標準試験方法」(平成8年3月 社団法人日本鋳造工学会関西支部)の「5.通気度測定法」に従い、当該刊行物(24ページ図5−2)に記載された通気度測定装置(コンプレッサー空気通気方式)と同等原理の装置を用いて測定した。通気度Pは「P=(h/(a×p))×v」で表わされる。式中はそれぞれ、h:試験片厚さ(cm)、a:試験片断面積(cm2)、p:通気抵抗(cmH2O)、v:空気の流量(cm3/min)である。
ここで、試験片厚さは前記中空棒状品〔構造体(I)又は鋳物製造用構造体〕の肉厚すなわち「(外径−中空部直径)/2」とし、試験片断面積は「中空部直径×円周率×長さ」とした。
測定に際して、図2に示すとおり通気度試験器には前記中空棒状品の中空部に漏れなく接続できるようゴムチューブ及び接続冶具(パッキン)を取り付け、更に前記中空棒状品の中空部の片端に前記接続冶具を隙間無く接続し、他方の片端を空気の漏れを防ぐためパッキンで塞ぎ、測定を行った。
<鱗状黒鉛を含む塗液組成物の調製>
鱗状黒鉛、粘土鉱物、水溶性バインダーの組成及び配合率(質量比率)が表1に示すような固形分材料と、水[水の量は、該固形分材料と水との混合物の針入度200〔(株)離合社製800S−01、25℃で測定〕となる量とする]とを混練機にて15分間混練し、ペースト状〔針入度200、(株)離合社製800S−01、25℃で測定〕の組成物(表中、塗液組成物と表記する)を得た。尚、表1に示すそれぞれの成分は、下記の通りである。
[鱗状黒鉛]
鱗状黒鉛(1)1:BP8083(Bogala Graphite Lanka Limited)、平均粒子径56μm
鱗状黒鉛(2):伊藤黒鉛工業(株)製「SRP−100」、平均粒子径33μm
[粘土鉱物]
ベントナイト:クニミネ工業(株)製、商品名「クニゲルVA」
アタパルジャイト:林化成(株)製、商品名「アタゲル50」
合成スメクタイト:クニミネ工業(株)製、商品名「スメクトンSA」
[水溶性バインダー]
アラビアガム:三栄薬品貿易(株)製、商品名「アラビアガム末KC」
アルカリフェノール樹脂:花王クエーカー(株)製、商品名「カオーステップS−660」
第1リン酸アルミニウム:太平化学産業(株)製、商品名「50%第一リン酸アルミニウム液」
<鱗状黒鉛を含む塗膜の形成>
上記のペースト状の塗液組成物を水で希釈して、表1に示すような濃度(ボーメ度)に調整し、前記構造体(I)を浸漬塗布(液温23℃、5秒間)した後、鱗状黒鉛を含む塗膜(未乾燥状態)が付着した構造体(I)を取り出した。その後105℃で60分間(表1中、塗布後乾燥条件と表記する)、熱風乾燥機で乾燥させ、鱗状黒鉛を含む塗膜が形成された鋳物製造用構造体を得た。
<鱗状黒鉛を含む塗膜の厚み測定方法>
鱗状黒鉛を含む塗膜形成前の構造体(I)と鱗状黒鉛を含む塗膜形成後の鋳物製造用構造体の厚みをダイヤルゲージで測定し、構造体(I)の厚みとの差で鱗状黒鉛を含む塗膜の厚みを求めた(下記式参照)。各厚みは10箇所測定し、その平均を求めた。
鱗状黒鉛を含む塗膜の厚み=〔鋳物製造用構造体の厚み−構造体(I)の厚み〕/2
なお、実施例2では、鱗状黒鉛を含む塗膜(未乾燥状態)が付着した構造体(I)を取り出した後、振とう器(ヤマト科学(株)製、タッチミキサMT−31)上で約10秒間振動させ、余分な付着層を落とした以外は、実施例1と同様にして鋳物製造用構造体を得た。
また、実施例4、6〜9では、鱗状黒鉛を含む塗膜(未乾燥状態)が付着した構造体(I)を取り出した後、200℃で30分間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして鋳物製造用構造体を得た。
<鋳物の鋳造>
図3に示すように図1の中空棒状品(中空中子)を主型に配置した鋳型を使用し、下記熔湯を注入して下記形態の鋳物を鋳造した。
熔湯:鋳鉄 JIS FC300相当、熔湯温度1400℃
鋳物の形態:外径54mm、長さ280mm、中空部径11mmの中空棒状
鋳型(主型):シェルモールド鋳型で鋳物中心線を水平分割面とした上下割型
<鋳物の評価>
中子から発生して熔湯に浸入したガスは、その浮力により上方に移動する傾向がある。そのため鋳物欠陥は、ガスの発生源である中子に接する面のほかに、浮上したガスが到達する鋳物の上面に発生しやすい。そこで、図3により得られた鋳物の評価部位については、主型の上型側表面(鋳物外側表面の上半分)と、中子面(鋳物中空部の中子に接する面)に、それぞれ発生する欠陥数を集計することによって評価した。欠陥の判定は、主型の上型側表面についてはそのまま目視で、中子面については鋳物を軸方向に切断してから目視で、それぞれ発生した欠陥の個数を集計した。集計すべき欠陥は、下記の3種類である。
・「焼着・差込み欠陥」:鋳型組成物が鋳物に固着したものであって、鋳物表面から突出しているもの
・「ピンホール欠陥」:比較的小さな球状で気泡状の巣であり、直径1mm以上のもの
・「クレーター状欠陥」:浅い凹みであって直径3mm以上のもの
評価結果の判定は、「主型の上型側表面」および「中子面」における前記3種類の欠陥個数の合計をもって評価し、欠陥個数の合計が3個以下を合格とする。
比較例1
構造体(I)の表面に鱗状黒鉛を含む塗膜を形成せずに、他は実施例1と同様にして鋳物製造用構造体を得た。得られた鋳物製造用構造体を用いて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2
構造体(I)の表面に鱗状黒鉛を含む塗膜を形成せずに、他は実施例8と同様にして鋳物製造用構造体を得た。得られた鋳物製造用構造体を用いて実施例8と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
鱗状黒鉛(1)に代えて、土状黒鉛〔帝研化工(株)製、商品名「土状80%」平均粒径22μm〕を用いた以外は、実施例1と同様にして鋳物製造用構造体を得た。得られた鋳物製造用構造体を用いて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、便宜的に表1では鱗状黒鉛の欄に土状黒鉛を示した。
比較例4
鱗状黒鉛(1)に代えて、黒曜石〔キンセイマテック(株)製、商品名「ナイスキャッチフラワー」平均粒子径27μm〕を用いた以外は、実施例1と同様にして鋳物製造用構造体を得た。得られた鋳物製造用構造体を用いて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、便宜的に表1では鱗状黒鉛の欄に黒曜石を示した。
Figure 0005473312
表1に示すように、実施例1〜9は鱗状黒鉛を含む塗膜の効果で、塗布後の通気度が低く抑えられている。これら効果により構造体から熔湯へ浸入するガスが抑制されていると推察され、鋳物の欠陥数は3個以下(合格)となった。これに対して比較例1〜4は、構造体の通気度が高いことで、構造体から熔湯へ浸入するガスが多いと推察され、鋳物の欠陥数は5〜25個(不合格)となった。
実施例及び比較例で製造した中空棒状品を模式的に示す斜視図である。 実施例及び比較例で用いた、中空棒状品の通気度測定方法である。 実施例及び比較例で用いた鋳型を示す概略図である。

Claims (8)

  1. 無機粒子、無機繊維及び熱硬化性樹脂を含有する構造体(I)の表面に、平均粒子径が5〜100μmである鱗状黒鉛を含む塗膜を形成する工程を有する、鋳物製造用構造体の製造方法。
  2. 鱗状黒鉛を含む塗膜が更に粘土鉱物を含有する、請求項1記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  3. 鱗状黒鉛及び水溶性バインダーを含む塗液組成物を前記構造体(I)の表面に塗布する工程を有する請求項1又は2記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  4. 水溶性バインダーが、アラビアガム、フェノール樹脂及びリン酸アルミニウムからなる群より選ばれる一種以上である請求項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  5. 鋳物製造用構造体が中子である請求項1〜4の何れか1項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  6. 無機粒子の平均粒子径が150〜500μmである請求項1〜5の何れか1項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  7. 無機粒子の形状係数が1.0〜2.3である請求項1〜6の何れか1項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  8. 構造体(I)の表面に形成される鱗状黒鉛を含む塗膜の厚みが50〜300μmである請求項1〜7の何れか1項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
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