JP5362531B2 - 鋳物製造用構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳物の製造時に用いられる鋳型等の構造体の製造方法に関する。
鋳物は、一般に、木型や金型などをもとに鋳物砂で内部にキャビティを有する鋳型を形成するとともに、必要に応じて該キャビティ内に中子を配した後、該キャビティに熔湯を供給して製造されている。
木型、金型は、加工に熟練を要し高価な設備も必要で、高価で重い等の欠点とともに廃棄物処理の問題も有し、量産の鋳物のほかには使用が困難である。また、鋳物砂を用いる砂型は、通常の砂にバインダーを添加し、硬化させて形状を保持させているため、砂の再利用には、再生処理工程が必須となる上、再生処理の際にダストなどの廃棄物が発生する問題も有している。加えて、中子を砂型で製造する場合は、上記課題に加え中子自身の質量のため作業性が悪く、さらには、鋳込み時の中子の強度保持と鋳込み後の中子の除去性という相反する性能が要求される。
このような課題を解決する技術として、成形性や形状保持性に優れる、有機繊維、無機繊維、無機粒子及び熱硬化性樹脂を含有する鋳物製造用構造体に係る技術が知られている。更に、複雑な形状であっても細部にわたって精度よく賦形がなされた鋳物製造用構造体を得る技術として、有機繊維、無機繊維、熱硬化性樹脂に加えて、熱膨張性粒子を含有させ、鋳物製造用構造体を得る技術(特許文献1参照)、或いは、熱膨張性粒子の代わりに特定の鱗状黒鉛を含有させ、鋳物製造用構造体を得る技術(特許文献2参照)が開示されている。更に、ガス欠陥を改善するために、有機繊維、無機繊維及びバインダーを含有する構造体の表面に無機粒子を付着させた鋳物製造用構造体が開示されている(特許文献3参照)。また、高通気度の鋳物製造用構造体の成型とガス欠陥の低減を目的として、無機粒子、無機繊維及び熱硬化性樹脂を含有し、通気度が1〜500である鋳物製造用構造体が開示されている(特許文献4参照)。
特開2006−346747号公報 特開2007−144511号公報 特開2007−21578号公報 特開2009−195982号公報
特許文献1、2の技術は、鋳込み時の中子の強度保持及び鋳込み後の中子の除去性に効果を有するものの、複雑な形状の鋳物製造用構造体を用いて鋳物の製造を行った場合には、鋳物にガス欠陥が発生することがあった。また、特許文献3はガス欠陥を改善する技術であるが、複雑な形状の鋳物製造用構造体を用いた場合の効果については言及されていない。特許文献4は複雑な形状の鋳物製造用構造体にも適用できる鋳物のガス欠陥改善技術であるが、高い精度が要求される鋳物を製造する場合には、ガス欠陥の改善が不充分な場合があった。よって、この課題を改善し得る手段が強く望まれていた。
本発明の課題は、通気度を維持しつつ耐火性塗膜の耐剥離性が向上した鋳物製造用構造体を製造できる方法を提供することである。
本発明は、平均粒子径60〜2000μmの無機粒子、無機繊維、熱硬化性樹脂及び分散媒を含有するスラリー状組成物(以下、本発明に係るスラリー状組成物という場合がある。)から得られ、通気度が15〜500である構造体(I)の表面に、耐火性塗膜を形成する工程を有する、鋳物製造用構造体の製造方法であって、
無機粒子中、粒子径53μm以下の無機粒子の含有率が0.1〜5質量%である、
鋳物製造用構造体の製造方法に関する。
本発明によれば、通気度を維持しつつ、耐火性塗膜の耐剥離性が向上した鋳物製造用構造体を製造することができる。その結果、複雑かつ高精度を要求される形状であっても成形性に優れ、鋳物のガス欠陥を低減可能な鋳物製造用構造体を製造できる、鋳物製造用構造体の製造方法が提供される。
実施例及び比較例で製造した中空棒状品を模式的に示す斜視図である。 実施例及び比較例で用いた、中空棒状品の通気度測定方法である。
本発明に用いられる無機粒子は、無機粒子全体に対する粒子径53μm以下の無機粒子の含有率が、構造体(I)の通気度の観点から、5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。また、耐火性塗膜の耐剥離性の観点から、0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、0.4質量%以上がより好ましい。かかる観点から、無機粒子全体に対する粒子径53μm以下の無機粒子の含有率は、0.1〜5質量%であり、0.2〜3質量%が好ましく、0.4〜2質量%がより好ましい。なお、無機粒子中の粒子径53μm以下の無機粒子の含有率は、目開き53μmの篩を通過した粒子の質量を、用いた無機粒子の総質量で除したものを100倍して算出される。
本発明の構造体(I)は、本発明に係るスラリー状組成物を成形型内に充填し、加熱成形する工程により得られるものが好ましい。以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
<スラリー状組成物>
本発明に係るスラリー状組成物は、特定の無機粒子、無機繊維、熱硬化性樹脂及び分散媒を含有するものである。更に、本発明に係るスラリー状組成物は、熱膨張性粒子及び高分子化合物を含有するのが好ましい。
(i)無機粒子
本発明に用いられる無機粒子としては、黒鉛、黒曜石、雲母、ムライト、シリカ、マグネシア等が挙げられる。無機粒子は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。鋳物のガス欠陥低減の観点から、黒鉛が好ましく、更に黒鉛の中でも、土状黒鉛、鱗状黒鉛及び人造黒鉛が好ましい。
無機粒子の平均粒子径は、鋳物のガス欠陥低減の観点から60μm以上であり、80μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、120μm以上が更に好ましい。また、無機粒子の平均粒子径は、鋳物製造用構造体の熱間強度の観点から、2000μm以下であり、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。かかる観点から、無機粒子の平均粒子径は、80〜2000μmが好ましく、100〜1000μmがより好ましく、120〜500μmが更に好ましい。
ここで、無機粒子又は無機粒子の混合物の平均粒子径は、下記の第一の測定方法で測定し、得られた平均粒子径の値が100μm以上の場合は、その値を平均粒子径とし、得られた平均粒子径の値が100μm未満の場合には、下記の第二の測定方法で測定した平均粒子径を採用する。
〔第一の測定方法〕
JIS Z2601(1993)「鋳物砂の試験方法」附属書2に規定する方法に基づいて測定し、質量累積50%の粒径を平均粒子径とする。前記質量累積は、各ふるい面上の粒子を、JIS Z2601(1993)解説表2に示す「径の平均Dn(mm)」とみなして計算するものとする。
〔第二の測定方法〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920)を用いて測定された体積累積50%の粒径を平均粒子径とする。分析条件は下記の通りである。
・測定方法:フロー法
・屈折率:無機粒子によって変動(LA−920付属のマニュアル参照)
・分散媒:ヘキサメタリン酸ナトリウムの0.1質量%水溶液
・分散方法:攪拌、LA−920に内蔵の超音波3分間
・試料濃度:2mg/分散媒100cm3
無機粒子中、粒子径が1〜3000μmの範囲にある粒子の比率は95〜100質量%、更に100質量%であることが好ましい。粒子径が1〜3000μmの範囲にある粒子の総量中、粒子径53μm以下の無機粒子の含有率が0.1〜5質量%であることが好ましい。
無機粒子の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、55〜85質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましく、更に65〜75質量%が好ましい。また、無機粒子の本発明に係るスラリー状組成物中の含有量は、10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、更に20〜40質量%が好ましい。
なお、本発明において、スラリー状組成物の固形分とは、特記しない限り、便宜的に、105℃において揮発しない成分とする。
無機粒子中の粒子径53μm以下の無機粒子の含有率は、篩い分けや粒度分布が既知の無機粒子の混合などにより調整できるが、本発明では、無機粒子の平均粒子径や粒度分布をより簡便に調整するために、平均粒子径の異なる複数、例えば二種の無機粒子を用いることが好ましい。例えば、無機粒子として、平均粒子径60μm以上の第一無機粒子(A)と平均粒子径60μm未満の第二無機粒子(B)とを、混合後の無機粒子の平均粒子径が60〜2000μm、且つ混合後の無機粒子全体に対する粒子径53μm以下の無機粒子の含有率が0.1〜5質量%となるように調整して用いることができる。この場合、第一無機粒子(A)と第二無機粒子(B)の質量比率は、(A)/(B)=6〜100、更に8〜100、より更に10〜90が好ましく、また、第一無機粒子(A)の平均粒子径と第二無機粒子(A)の平均粒子径が、〔(A)の平均粒子径/(B)の平均粒子径〕≧2の関係を満たすことが好ましく、2〜20の関係を満たすことがより好ましく、更に3〜10の関係を満たすことがより好ましい。
第一無機粒子(A)の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、50〜84質量%が好ましく、55〜79質量%がより好ましく、更に60〜74質量%が好ましい。第二無機粒子(B)の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、0.7〜8質量%がより好ましく、更に0.9〜7質量%がより好ましい。第一無機粒子(A)と第二無機粒子(B)の合計含有量は、本発明に係るスラリー状組成物の固形分中、55〜85質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましく、更に65〜75質量%が好ましい。
第一無機粒子(A)の本発明に係るスラリー状組成物中の含有量は、5〜59質量%が好ましく、10〜49質量%がより好ましく、更に15〜39質量%が好ましい。第二無機粒子(B)の本発明に係るスラリー状組成物中の含有量は、0.1〜8質量%が好ましく、0.1〜6.4質量%がより好ましく、更に0.2〜5.6質量%がより好ましい。第一無機粒子(A)と第二無機粒子(B)の合計含有量は、本発明に係るスラリー状組成物中、5〜65質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、更に20〜40質量%が好ましい。
(ii)無機繊維
本発明に用いられる無機繊維とは、長軸と短軸を有する無機物からなる繊維状のものを意味するが、本発明に用いられる無機繊維としては、炭素繊維、ロックウール等の人造鉱物繊維、セラミック繊維、天然鉱物繊維が挙げられる。無機繊維は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。そして、これらの中でも、熱硬化性樹脂の炭化に伴う収縮抑制の観点から、炭素繊維が好ましく、ピッチ系やポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維がより好ましく、PAN系の炭素繊維が更に好ましい。
無機繊維は、構造体(I)の熱間強度の観点から、長軸で規定される平均繊維長が好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上である。また、構造体(I)の成形性の観点から平均繊維長が好ましくは15mm以下、より好ましくは8mm以下、更に好ましくは5mm以下である。かかる観点から、無機繊維の平均繊維長は、好ましくは0.5〜15mm、より好ましくは1〜8mm、更に好ましくは2〜5mmである。
また、無機繊維は、構造体(I)の熱間強度、成形性の観点から、長軸/短軸比は、好ましくは10〜5000、より好ましくは20〜2000、更に好ましくは50〜1000である。
無機繊維の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、構造体(I)の熱間強度の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。また、無機繊維の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、構造体(I)の成形性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。かかる観点から、無機繊維の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。
無機繊維の本発明に係るスラリー状組成物中の含有量は、0.2〜24質量%が好ましく、0.4〜16質量%がより好ましく、更に1〜12質量%が好ましい。
(iii)熱硬化性樹脂
本発明に用いられる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、鋳造時における熱分解ガスの発生量が少なく、燃焼抑制効果があること、熱分解(炭化)後における残炭率が25%以上と高く、構造体を鋳型に用いた場合に炭化皮膜を形成して良好な鋳肌を得ることができる点からフェノール樹脂を用いることが好ましい。
フェノール樹脂としては、ノボラックフェノール樹脂、レゾールタイプ等のフェノール樹脂、尿素、メラミン、エポキシ等で変性した変性フェノール樹脂等が挙げられる。中でも、レゾールタイプのフェノール樹脂を用いる事で、酸、アミン等の硬化剤を必要とせず、構造体(I)成形時の臭気や、構造体を鋳型として用いた場合の鋳物欠陥を低減することができるので、好ましい。
熱硬化性樹脂の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、構造体(I)の熱間強度の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。また、熱硬化性樹脂の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。かかる観点から、熱硬化性樹脂の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。
本発明に係るスラリー状組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、構造体(I)の熱間強度の観点から、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。また、本発明に係るスラリー状組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、好ましくは12質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。かかる観点から、本発明に係るスラリー状組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは0.2〜24質量%、より好ましくは0.4〜16質量%、更に好ましくは1〜12質量%である。
(iv)分散媒
本発明に係るスラリー状組成物では、分散媒が用いられる。分散媒としては、水の他、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、アセトン、キシレンなどの溶剤が挙げられる。これらを単独又は二以上を混合して用いることができる。その中でも、取り扱い易さの点から、水が好ましい。
下記記載の熱膨張性粒子を用いる場合、沸点が熱膨張性粒子の膨張開始温度以上である分散媒を用いることが好ましい。その場合、構造体(I)が複雑な形状であり、かつ高通気度の構造体(I)を得ることで、鋳物のガス欠陥低減が可能な観点から、分散媒の沸点は、熱膨張性粒子の膨張開始温度に対し、好ましくは5〜100℃高く、より好ましくは10〜80℃高く、更に好ましくは10〜70℃高い。すなわち、分散媒の沸点と熱膨張性粒子の膨張開始温度との差〔分散媒の沸点(℃)−熱膨張性粒子の膨張開始温度(℃)〕が、好ましくは5〜100℃、より好ましくは10〜80℃、更に好ましくは10〜70℃である。
本発明に係るスラリー状組成物は、分散媒を好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%、更に好ましくは45〜65質量%含有する。従って、本発明に係るスラリー状組成物の固形分濃度は、好ましくは70〜20質量%、より好ましくは60〜30質量%、更に好ましくは55〜35質量%である。
(v)熱膨張性粒子
本発明に係る構造体(I)は熱膨張性粒子を更に含有することが好ましい。従って、本発明に係るスラリー状組成物が更に熱膨張性粒子を含有することが好ましい。熱膨張性粒子は、膨張開始温度(℃)が分散媒の沸点(℃)以下である熱膨張性粒子が好ましい。これにより、精度よく賦形がなされ、かつ高通気度の構造体(I)が得られ、鋳物のガス欠陥を低減することが可能である。更に、熱膨張性粒子は、構造体(I)の複雑な形状の成形性及び高通気度を得ることによる鋳物のガス欠陥低減の観点から、熱膨張性粒子の膨張開始温度は、分散媒の沸点に対し、好ましくは5〜100℃低く、より好ましくは10〜80℃低く、更に好ましくは10〜70℃低い。
ここで、熱膨張性粒子の膨張開始温度(℃)は、特開平11−2615号公報における体積変化開始温度(特開平11−2615号公報の段落0012等参照)であり、本発明では、昇温速度10℃/分の条件で昇温させた際の体積変化開始温度を指す。
なお、熱膨張性粒子の体積変化開始温度に幅がある場合は、当該体積変化開始温度の最小値を熱膨張性粒子の膨張開始温度とみなす。
熱膨張性粒子としては、熱可塑性樹脂を殻壁とし、低沸点炭化水素を内包(マイクロカプセル化)したものが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・共役ジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸エステル・スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸エステル・共役ジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)、スチレン・共役ジエン共重合体及びその水素添加樹脂(SBS、SIS、SEBS、SEPS)、スチレン系エラストマー)ポリアミド系樹脂(ポリアミド、ポリアミド系エラストマー)、ポリエステル系樹脂(ポリエステル、ポリエステル系エラストマー)、ポリウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、構造体(I)の成形性の観点からアクリロニトリル共重合体が好ましい。
また、低沸点炭化水素としては、イソブタン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、ネオペンタン、プロパン、プロピレン、ブテンなどが挙げられる。低沸点化合物は、鋳物のガス欠陥低減効果(構造体(I)の通気性向上)の観点から、低沸点化合物の炭素数6以下、沸点が80℃未満の炭化水素化合物が好ましい。熱膨張性粒子は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。
熱膨張性粒子は、熱により膨張し、かつ膨張前の平均直径が、構造体(I)の成形性の観点から、好ましくは1〜60μm、より好ましくは2〜50μmであり、更に好ましくは5〜30μmである。また、80〜200℃で加熱すると、直径が3〜10倍に膨張するものが好ましい。
熱膨張性粒子の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、複雑な形状であっても細部にわたって精度よく賦形がなされた構造体(I)を得る観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、熱膨張性粒子の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、鋳物のガス欠陥低減効果に優れる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。かかる観点から、熱膨張性粒子の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%である。
熱膨張性粒子の本発明に係るスラリー状組成物中の含有量は、0.02〜12質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましく、更に0.1〜4質量%が好ましい。
本発明に係るスラリー状組成物において、無機粒子及び熱膨張性粒子の配合比は、鋳物のガス欠陥低減の観点から、無機粒子/熱膨張性粒子=15〜80(質量比率)が好ましい。この質量比率は、構造体(I)においても反映される。
(vi)水溶性高分子化合物
本発明では、構造体(I)の成形性向上の観点から、構造体(I)が更に水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。従って、本発明に係るスラリー状組成物が更に水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。ここで水溶性高分子化合物は、25℃の水100gに対して、1g以上溶解し、かつ重量平均分子量が、1万〜1000万であるものを意味し、1万〜500万であるものが好ましい。
水溶性高分子としては、天然高分子のアラビアガム、トラガントガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アルギン酸、カラギーナン、半合成高分子のメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、合成高分子のポリアクリル酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、アクリル酸系共重合体、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系、ノニオン系ポリアクリルアミド、アニオン系ポリアクリルアミド、カチオン系ポリアクリルアミド、ポリアミノアルキルメタクリレート、アクリルアミド/アクリル酸共重合体、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化マレイン酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエーテル変性シリコーン、またはこれらの変性物などを挙げることができる。これらは塩であってもよい。水溶性高分子は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。これらの中でも、水に対する増粘作用及び構造体(I)の成形性の観点から、半合成高分子、なかでも、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、カチオン化セルロース等のセルロース誘導体が好ましく、更にカルボキシメチルセルロース又はその塩が好ましい。
水溶性高分子化合物の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。また、水溶性高分子化合物の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、構造体(I)の成形性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。かかる観点から、水溶性高分子化合物の本発明に係るスラリー状組成物の固形分中の含有量は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%である。
水溶性高分子化合物の本発明に係るスラリー状組成物中の含有量は、0.02〜16質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましく、更に0.2〜4質量%が好ましい。
本発明に係るスラリー状組成物において、無機粒子、無機繊維、熱硬化性樹脂の配合比(質量比率)は、鋳物製造用構造体の熱間強度、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、好ましくは無機粒子/無機繊維/熱硬化性樹脂=40〜90/1〜20/1〜30、好ましくは55〜85/2〜18/2〜18(質量比率)、更に好ましくは50〜80/5〜15/5〜15(質量比率)である(但し、上記質量比率に用いる各成分の数値の合計は100である。)。また、熱膨張性粒子及び水溶性高分子化合物を用いる場合、本発明に係るスラリー状組成物において、無機粒子、無機繊維、熱硬化性樹脂、熱膨張性粒子、水溶性高分子化合物の配合比(質量比率)は、鋳物製造用構造体の熱間強度、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、好ましくは無機粒子/無機繊維/熱硬化性樹脂/熱膨張性粒子/水溶性高分子化合物=40〜90/1〜20/1〜30/0.1〜15/0.1〜20(質量比率)、より好ましくは55〜85/2〜18/2〜18/0.5〜12/0.5〜10(質量比率)、更に好ましくは50〜80/5〜15/5〜15/0.5〜5/1〜5(質量比率)である(但し、上記質量比率に用いる各成分の数値の合計は100である。)。これらの質量比率は、構造体(I)においても反映される。
本発明に係るスラリー状組成物は、高精度かつ複雑な形状の構造体(I)における成形性、鋳物のガス欠陥低減効果の観点から、有機繊維の含有量が少ない方が好ましい。この観点から、有機繊維とスラリー状組成物の固形分の総量の配合比(質量比率)が、好ましくは有機繊維/スラリー状組成物の固形分の総量=0.1(質量比率)以下、より好ましくは0.05(質量比率)以下である。更に、スラリー状組成物に実質的に有機繊維を含有しないことが好ましい
<鋳物製造用構造体の製造方法>
本発明の鋳物製造用構造体の製造方法は、構造体(I)の表面に耐火性粒子を含む塗膜を形成する工程を有するものであるが、かかる構造体(I)は本発明に係るスラリー状組成物を成形型内に充填し、加熱成形する工程より得られたものが好ましい。従って、本発明の鋳物製造用構造体の製造方法は、無機粒子〔好ましくは前述の第一無機粒子(A)と第二無機粒子(B)〕、無機繊維、熱硬化性樹脂、及び分散媒、好ましくは更に、熱膨張性粒子、及び水溶性高分子化合物を含有するスラリー状組成物を成形型内に充填し、加熱成形して構造体(I)を製造する工程〔以下、工程(1)という〕と、構造体(I)の表面に耐火性塗膜を形成する工程〔以下、工程(2)という〕と、を有することが好ましい。
本発明の鋳物製造用構造体の製造方法において、工程(1)に使用する成形型は、例えば、図1に示す中空棒状品に対応したキャビティを有する主型と中空を形成する心材とを備えることによって構成される。成形型の温度は、分散媒の蒸発、熱硬化性樹脂の硬化や熱膨張性粒子の膨張を考慮して、120〜250℃程度に加熱される。成形型にはゲートの開閉手段を設けることにより、スラリー状組成物が成形型に充填される。充填圧力は、エア圧力を手段にした場合は、0.5〜3MPa程度が好適である。
本発明の鋳物製造用構造体の製造方法において、工程(1)はスラリー状組成物を成形型内に充填し、加熱成形するものであり、好ましくは加熱成形する工程においてスラリー状組成物を120〜250℃に加熱し、熱硬化性樹脂を硬化させる。
次に、成形型に充填された本発明に係るスラリー状組成物は、成形型の加熱により発生した分散媒由来の蒸気及び熱硬化性樹脂由来のガス等を成形型外へ放出させつつ乾燥させ、冷却後、必要に応じてトリミング、薬剤の塗布等を行うことによって、本発明の鋳物製造用構造体となる構造体(I)を製造することができる。
本発明の製造方法に用いられる構造体(I)は、無機粒子、無機繊維及び熱硬化性樹脂を含有するものである。好ましくは、本発明の構造体(I)は、熱膨張性粒子及び/又は水溶性高分子化合物を含有する。
本発明に用いられる構造体(I)の通気度は、鋳物のガス欠陥低減効果に優れる観点から、好ましくは15以上、安定した鋳物のガス欠陥低減効果発現の観点から、より好ましくは20以上、更に好ましくは25以上である。また、本発明の構造体(I)の通気度は、鋳物のガス欠陥低減効果に優れる観点と構造体(I)が鋳込み時においても十分な熱間強度を有する観点から、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下である。かかる観点から、構造体(I)の通気度は、好ましくは15〜120、より好ましくは20〜100、更に好ましくは25〜80である。
構造体(I)の通気度は、例えば、
(1)本発明に係るスラリー状組成物中の分散媒を増加させることで、構造体(I)の密度を低減する、
(2)熱膨張性粒子を用いる場合は熱膨張性粒子の膨張開始温度が分散媒の沸点に対し、5〜100℃低いものを選択する(熱膨張性粒子の膨張開始温度と分散媒の沸点を適切に調節する)、
ことで数値を大きく、すなわち通気度を向上できる。さらに、熱膨張性粒子の膨張開始温度と分散媒の沸点の適切な調節は、構造体(I)の密度を下げるよりも通気度向上に対する効果が大きい。尚、通気度は、実施例記載の測定方法により求めることができる。
本実施形態の構造体(I)の厚みは、その用途、及び構造体(I)における部位に応じて適宜設定することができるが、溶融金属と接する部分における厚みは、好ましくは0.2〜5mm、より好ましくは0.2〜4mm、更に好ましくは0.4〜3mmである。厚みが0.2mm以上であれば、鋳込み時に鋳物製造用構造体の形状機能を維持しやすく、5mm以下であれば、鋳込み時における熱分解ガス発生量が低減され、鋳物の表面欠陥が発生しにくくなる。
次に、構造体(I)〔好ましくは100〜300℃で熱処理された構造体(I)〕の表面に耐火性塗膜を形成する工程について詳細に説明する。この工程は前述の工程(2)として実施できる。
本発明では、構造体(I)を被覆する耐火性塗膜を形成する。耐火性塗膜は耐火性粒子を含有する塗膜である。耐火性粒子は被覆性向上の観点から黒鉛が好ましく、なかでも鱗状黒鉛が好ましい。
構造体(I)の表面に耐火性塗膜が形成された状態としては、本発明の効果発現の観点から、構造体(I)の表面が50%以上、更に80%以上、より更に90%以上、当該塗膜で被覆されていることが好ましい。
構造体(I)の表面に形成された耐火性塗膜の厚みは、鋳物品質であるガス欠陥の低減効果及び被覆の垂れ性能の観点から、1〜800μm、更に5〜500μm、より更に50〜300μmであることが好ましい。尚、耐火性塗膜の厚みは、実施例記載の測定方法により求めることができる。
耐火性粒子は構造体(I)から発生するガスの遮蔽性、構造体との密着性の観点から、平均粒子径が5〜100μmであることが好ましく、更に10〜80μmが好ましく、より更に20〜70μmが好ましい。
また、構造体(I)の表面の耐火性塗膜は、耐火性粒子と分散媒とを含む分散液(以下、耐火粒子含有塗液ともいう)の塗布により形成される。塗布方法としては、例えば刷毛塗布、スプレー塗布、静電塗装、焼付塗装、ぶっ掛け塗布、浸漬塗布等の方法が挙げられるが、付着層の厚みの均一性、及び経済的観点から、浸漬塗布が好ましい。浸漬塗布の工程を詳細に説明すると、鋳物製造用構造体を、耐火性粒子含有塗液を所定量入れた浴槽に浸漬(どぶ漬け)する。浸漬時の耐火粒子含有塗液の温度は5〜40℃の範囲が好ましく、更に好ましくは15〜30℃、更に好ましくは20〜30℃の範囲で且つ恒温になるように設備設定することが好ましい。また、生産性の面から浸漬時間は1〜60秒が好ましく、バッチ又は連続的に浸漬することができる。また、耐火性粒子を含む塗膜の膜厚を調整するために、耐火性粒子含有塗液を塗布した構造体に、振動テーブル等で振動を与えることができる。また、構造体(I)〔好ましくは予め100〜300℃で熱処理した構造体(I)〕表面に塗布された耐火性粒子を、より強固に付着させるために乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としてヒーターによる熱風乾燥、遠赤外乾燥、マイクロ波乾燥、過熱蒸気乾燥等が挙げられるが、限定されるものではない。熱風乾燥機を用いて乾燥させる場合は乾燥温度は100〜500℃が好ましく、有機物やバインダーの熱分解や発火を抑止する観点から105〜300℃の範囲が好ましい。なお耐火粒子含有塗液の分散媒としては、水、アルコール等が挙げられ、水が好ましい。また、かかる分散媒は耐火性粒子100質量部に対して、20〜100質量部、更に25〜70質量部用いられることが好ましい。
耐火性塗膜は、鋳物製造用構造体の耐熱性向上の観点から、更に粘土鉱物を含有することが好ましい。また、粘土鉱物を、耐火性塗液含有塗液に配合することで、適度な粘度を付与することができる。粘土鉱物としては、層状ケイ酸塩鉱物、複鎖構造型鉱物などが挙げられ、これらは天然、合成を問わない。層状ケイ酸塩鉱物としては、スメクタイト属、カオリン属、イライト属に属する粘土鉱物、例えばベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、活性白土、木節粘土、ゼオライト等が挙げられる。複鎖構造型鉱物としては、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト等が挙げられる。好ましくは、アタパルジャイト、ベントナイト、スメクタイト群より選ばれる一種以上が挙げられる。粘土鉱物は、耐火性粒子100質量部に対して、1〜30質量部、更に3〜20質量部用いられることが好ましい。
また、耐火性塗膜を形成する際に水溶性バインダーを用いることが、鋳物製造用構造体の常温強度、耐熱性向上の観点から好ましい。従って、本発明の製造方法は、耐火性粒子、水溶性バインダー及び分散媒を含む塗液組成物を構造体(I)の表面に塗布する工程を有することが好ましい。水溶性バインダーとしては、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂、水溶性多糖類、酢酸ビニル樹脂又はその共重合体、硫酸塩、珪酸塩、燐酸塩等の水溶性無機バインダーなどが挙げられる。好ましくは、アラビアガム、水溶性フェノール樹脂及びリン酸アルミニウムからなる群より選ばれる一種以上が挙げられる。水溶性バインダーは、耐火性粒子100質量部に対して、1〜30質量部、更に1〜20質量部用いられることが好ましい。なお、水溶性バインダーについて、「水溶性」とは、25℃の水100gに対して、3g以上溶解する性質を有することをいう。
これら粘土鉱物及び/又は水溶性バインダーは、耐火性粒子含有塗液の調製時に配合して用いることが好ましい。
本発明に係る耐火性粒子含有塗液は耐火性粒子を含有し、前述の理由により、好ましくは、更に粘土鉱物及び/又は水溶性バインダーを含有する。
本発明に係る耐火粒子含有塗液は、前述の通り、耐火性粒子、粘土鉱物及び水溶性バインダー等の固形分に水やアルコール等の分散媒を添加して、攪拌してスラリー状に製造する。得られた塗液は、水やアルコール等の分散媒で適度に希釈して構造体(I)に前記した手段で塗布する。その後、乾燥工程を経て塗膜が構造体(I)の表面に形成され、本発明の鋳物製造用構造体が得られる。
本発明において、鋳物製造用構造体の熔湯に接する表面に耐火性塗膜を形成する方法としては、耐火性粒子含有塗液を用いた浸漬塗布、刷毛塗布、スプレー塗布が好ましい。
本発明により製造された鋳物製造用構造体は、鋳物砂内及びバックアップ粒子(鋳物砂の替わりにショット玉やその他の粒子)内に配し、主型、中子、湯道(注湯系)や揚がり湯道として使用することができ、鋳物欠陥であるガス欠陥を低減した鋳物を製造することができる。
すなわち、本発明の鋳物製造用構造体に係る構造体(I)の原料やその組成比率を適正化し、且つ構造体(I)の表面に耐火性塗膜を形成することにより、鋳物のガス欠陥を改善できる鋳物製造用構造体を提供することができる。本発明により、鋳物のガス欠陥が改善される理由として定かではないが、熔湯に接する表面側に付着、好ましくは付着層を形成している耐火性粒子が構造体から発生するガスの熔湯側への進入を抑制し、かつ、熔湯に接しない面から該ガスを鋳型外へ排除できるためと推定される。
本発明により、通気性を維持しつつ耐火性塗膜の耐剥離性が改善される理由は定かではないが、粒子径53μm以下の無機粒子の含有量が適切であるため、耐火性塗膜に接する表面側に粒子径53μm以下の無機粒子が存在して表面平滑性を向上し、耐火性塗膜の被覆性を良好にしている結果によるものと推定できる。粒子径53μm以下の無機粒子は構造体(I)に過剰に含まれると、通気性を低下させるが、軽量、微細であるために、通気性を殆ど低下させない程度の微量な含有量であっても、構造体(I)の成形時に、蒸発していく分散媒とともに構造体(I)の表面付近に優先して配置され、耐火性塗膜の耐剥離性に大きく影響すると推定する。
本発明により製造される鋳物製造用構造体中における無機粒子、無機繊維及び熱硬化性樹脂並びに必要に応じて用いられる材料の総質量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
本発明により製造される鋳物製造用構造体中における耐火塗膜に由来する耐火性粒子の質量は、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。
本発明により製造される鋳物製造用構造体は、前述したキャビティを有する鋳型に適しており、発泡スチロール模型を使用する所謂フルモールド鋳造法、或いは粘結剤を使用しない消失模型鋳造法で好適に用いられる。例えば、湯口用ランナー、揚がり用ランナー、主型あるいは中子用として好適である。また、耐熱性を要求される他分野でも使用することができる。
本発明の製造方法によって得られた鋳物製造用構造体は、無機粒子及び無機繊維、熱硬化性樹脂を含有するものであり、好ましくは更に熱膨張性粒子及び水溶性高分子化合物を含有するものである。また、表面に粘土鉱物も含み得るものである。
耐火性塗膜が形成された鋳物製造用構造体の通気度は、熔湯側へのガスの進入を抑制する観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
本発明により得られた鋳物製造用構造体の厚みは、その用途、及び構造体における部位に応じて適宜設定することができるが、溶融金属と接する部分における厚みは、好ましくは0.2〜5mm、より好ましくは0.2〜4mm、更に好ましくは0.4〜3mmである。厚みが0.2mm以上であれば、鋳込み時に鋳物製造用構造体の形状機能が維持でき、5mm以下であれば、鋳込み時における熱分解ガス発生量が低減され、鋳物の表面欠陥が発生しにくくなる。
本発明により得られた鋳物製造用構造体は、内面に鋳物製品形状のキャビティを有する主型、主型に入れて使用する中子、或いは湯道などの注湯系部材、フィルター保持具等に適用することができるが、本発明の鋳物製造用構造体は表面平滑性に優れており、良好な鋳肌の鋳物を得ることができるため、主型や中子への適用が好ましい。なかでも本発明の鋳物製造用構造体は、鋳物のガス欠陥低減効果に優れる為、注湯時に熔湯金属に覆われてガス欠陥が発生しやすくなる中子への適用に適しており、中空中子への適用により適している。
実施例1〜3、比較例1〜5
<スラリー状組成物の調製>
無機粒子71g、無機繊維12g、熱硬化性樹脂10g、水溶性高分子化合物5g及び熱膨張性粒子2gからなる原料100gに水175gを添加し、20〜50℃において2000rpmで7.5分間攪拌して、スラリー状組成物を得た(固形分濃度は36.4質量%)。尚、表1に示すそれぞれの成分は、下記の通りである。
[無機粒子]
〔第一無機粒子(A)〕
人造黒鉛1:(株)中越黒鉛工業所製「G‐30」、平均粒子径234μm、粒子径53μm以下の粒子の含有率は、0.01質量%以下(検出限界以下)
人造黒鉛2:伊藤黒鉛工業(株)製「AGB+200」、平均粒子径168μm、粒子径53μm以下の粒子の含有率は、0.01質量%以下(検出限界以下)
土状黒鉛:(株)中越黒鉛工業所製「AE−1」、平均粒子径425μm、粒子径53μm以下の粒子の含有率10質量%
〔第二無機粒子(B)〕
鱗状黒鉛:伊藤黒鉛工業(株)製「SRP98−100」、平均粒子径39μm、粒子径53μm以下の粒子の含有率60質量%
[無機繊維]
炭素繊維:PAN炭素繊維(三菱レーヨン(株)製、商品名「パイロフィルチョップドファイバー」、平均繊維長3mm)
[熱硬化性樹脂]
フェノール樹脂1:群栄化学工業(株)製「レヂトップPGA−2165」(レゾールタイプ)
フェノール樹脂2:エア・ウォーター(株)製「ベルパールS−890」(レゾールタイプ)
[熱膨張性粒子]
熱膨張性粒子1:松本油脂製薬(株)製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−48D」、膨張開始温度120℃(アクリロニトリル共重合体タイプ)
[水溶性高分子化合物]
CMC1:第一工業製薬(株)製「セロゲンMP−60」、重量平均分子量:37万〜40万、25℃の水100gに対して、3g以上溶解(カルボキシメチルセルロースタイプ)
CMC2:第一工業製薬(株)製「HE−1500F」、重量平均分子量:33万〜36万、25℃の水100gに対して、3g以上溶解(カルボキシメチルセルロースタイプ)
<構造体(I)の製造>
図1に示す中空棒状品に対応するキャビティを有する主型と中空を形成する芯材を備える成形金型(上下金型)のキャビティ表面に、3秒間離型剤を噴霧し、上記で調製した鋳物製造用構造体用組成物をエア圧力1MPaで、160℃に加熱された成形金型へ充填した。5分間加熱することにより、外形11mm(中空部径5mm)×長さ380mmの図1に示す中空棒状品〔構造体(I)〕を得た。
<耐火性粒子含有塗液の調製>
耐火性粒子100質量部、粘土鉱物5質量部、水溶性バインダー20質量部からなる原料と、水[水の量は、該固形分と水との混合物の針入度200〔(株)離合社製800S−01、25℃で測定〕となる量とする]とを混練機にて15分間混練し、ペースト状〔針入度200、(株)離合社製800S−01、25℃で測定〕の耐火性粒子含有塗液を得た。それぞれの成分は、下記の通りである。
[耐火性粒子]
鱗状黒鉛:伊藤黒鉛工業(株)製「SRP98−100」、平均粒子径39μm
[粘土鉱物]
アタパルジャイト:林化成(株)製、商品名「アタゲル50」
[水溶性バインダー]
第一リン酸アルミニウム:太平化学産業(株)製、商品名「50%第一リン酸アルミニウム液」
<耐火性塗膜の形成>
上記のペースト状の耐火性粒子含有塗液を水で希釈して、耐火性粒子含有塗液のボーメ度を42に調整し、前記構造体(I)を浸漬塗布(液温23℃、5秒間)した後、耐火性粒子含有塗液(未乾燥状態)が付着した構造体(I)を取り出した。常温にて3時間、自然乾燥させ、その後200℃で30分間、熱風乾燥機で乾燥させ、耐火性塗膜が形成された鋳物製造用構造体を得た。
<測定>
(1)耐火性塗膜の厚み
耐火性塗膜形成前の構造体(I)の厚みと耐火性塗膜形成後の鋳物製造用構造体の厚みをダイヤルゲージで測定し、両者の差から耐火性塗膜の厚みを求めた(下記式参照)。各厚みは10箇所測定し、その平均を求めた。結果を表1に示す。
耐火性塗膜の厚み=〔鋳物製造用構造体の厚み−構造体(I)の厚み〕/2
(2)耐火性塗膜の質量
耐火性塗膜形成前の構造体(I)の質量と耐火性塗膜形成後の鋳物製造用構造体の質量を測定し、両者の差から耐火性塗膜の質量を求めた(下記式参照)。
耐火性塗膜の質量=鋳物製造用構造体の質量−構造体(I)の質量
<評価>
(1)構造体(I)の通気度
JIS Z2601(1993)「鋳物砂の試験方法」に基づいて規定された、「消失模型用塗型剤の標準試験方法」(平成8年3月 社団法人日本鋳造工学会関西支部)の「5.通気度測定法」に従い、当該刊行物(24ページ図5−2)に記載された通気度測定装置(コンプレッサー空気通気方式)と同等原理の装置を用いて測定した。通気度Pは「P=(h/(a×p))×v」で表わされる。式中はそれぞれ、h:試験片厚み(cm)、a:試験片断面積(cm2)、p:通気抵抗(cmH2O)、v:空気の流量(cm3/min)である。
(2)耐火性塗膜の耐剥離性
耐火性塗膜が形成された鋳物製造用構造体に、幅50mm、長さ185mmの粘着テープ(日東工業(株)製:日東テープ)を巻きつけ、十分接着させ、再びその粘着テープを剥がした。その粘着面に剥離した耐火性塗膜の質量を正確に測定し、この質量を剥離前の耐火性塗膜の質量で除算(下記式参照)して、剥離量(%)とした。結果を表1に示す。
剥離量(%)=〔剥離した耐火性塗膜の質量/耐火性塗膜の質量〕×100
ここで、試験片厚みは前記中空棒状品〔構造体(I)〕の肉厚すなわち「(外径−中空部直径)/2」とし、試験片断面積は「中空部直径×円周率×長さ」とした。
測定に際して、図2に示すとおり通気度試験器には前記中空棒状品の中空部に漏れなく接続できるようゴムチューブ及び接続冶具(パッキン)を取り付け、更に前記中空棒状品の中空部の片端に前記接続冶具を隙間無く接続し、他方の片端を空気の漏れを防ぐためパッキンで塞ぎ、測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005362531
1) 質量%は、スラリー状組成物の全固形分中の質量%を示す。
2) (A)の平均粒子径/(B)の平均粒子径を示す。
3) カッコ内は耐火性塗膜の厚さ(μm)を示す。
表1に示すように、粒子径53μm以下の粒子の含有率が0.1〜5質量%の範囲にある無機粒子を用いたスラリー状組成物から成型した構造体(I)である実施例1〜3は、構造体(I)の通気性、耐火性塗膜の耐剥離性の両立において、比較例1〜5より優れていることが分かる。ここで、第一無機粒子が同一である実施例1〜3と比較例1〜2に注目する。第二無機粒子の配合量の増加に伴い、粒子径53μm以下の粒子の含有率が5質量%を超えると、通気性の指標である通気度は15を下回る。また、実施例1と比較例3の対比から、耐火性塗膜の耐剥離性は、第一無機粒子に第二無機粒子を僅かに配合するのみで大きく改善されることがわかる。すなわち、比較例3のように粒子径53μm以下の粒子が全く存在しないと剥離量は増加し耐剥離性は悪いものとなる。比較例4も同様である。これにより、無機粒子中の53μm以下の無機粒子の存在量を適切にすることで、構造体(I)の通気性、耐火性塗膜の耐剥離性が両立でき、この鋳物製造用構造体を用いて鋳物の製造を行うことで鋳物のガス欠陥を改善できることがわかる。

Claims (6)

  1. 平均粒子径60〜2000μmの無機粒子、無機繊維、熱硬化性樹脂及び分散媒を含有するスラリー状組成物から得られ、通気度が15〜500である構造体(I)の表面に、耐火性塗膜を形成する工程を有する、鋳物製造用構造体の製造方法であって、
    無機粒子中、粒子径53μm以下の無機粒子の含有率が0.1〜5質量%である、
    鋳物製造用構造体の製造方法。
  2. 無機粒子として、平均粒子径の異なる第一無機粒子(A)と第二無機粒子(B)とを用い、(A)の平均粒子径と(B)の平均粒子径が〔(A)の平均粒子径/(B)の平均粒子径〕≧2である請求項1記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  3. 構造体(I)が更に水溶性高分子化合物を含有する請求項1又は2記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  4. 構造体(I)が更に熱膨張性粒子を含有する請求項1〜3の何れか1項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  5. 無機粒子が、土状黒鉛、鱗状黒鉛及び人造黒鉛から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3の何れか一項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
  6. 構造体(I)が、無機粒子、無機繊維、熱硬化性樹脂及び分散媒を含有するスラリー状組成物を成形型内に充填し、加熱成形する工程により得られたものである、請求項1〜5の何れか一項記載の鋳物製造用構造体の製造方法。
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