JP4671080B2 - 銅錯体アゾ染料、その製造方法及び用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反応性銅錯体アゾ染料から窒素含有求核化合物の付加又は置換によって得ることができる新規なマゼンタ染料に関する。本発明はまた、当該染料の製造方法及び本発明の染料を含むインクに関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の基礎をなす染料は、特にインクジェットプリント法を使用して紙、紡織繊維材料、プラスチックフィルム又はアルミニウム箔にプリントし、また、従来の染色法及びプリント法を使用して紡織繊維材料、木、紙、プラスチックシート又はアルミニウム箔を染色するのに特に適し、良好な耐光堅ロウ性及び高い色輝度を有する、色合いが顕著に青領域にシフトしているマゼンタ染色を生む。
【0003】
今日、特にマルチカラー印刷に使用するためのインク組成物には高い需要がある。たとえば、インクの基材である染料が可能な限り正確に三原色―黄、シアン及びマゼンタ―に一致することが非常に重要である。同時に、適当な染料の選択は、色相の純度及び再現色に望まれる輝度によって限定されるだけでなく、求められる色合いによっても限定される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、好ましくはインクジェットプリント法を使用して紙、紡織繊維材料、プラスチックフィルム又はアルミニウム箔を染色し、プリントするための、顕著に青みを帯びた赤の色合いの純粋で鮮やかな色相を生み出し、同時に、良好な耐光堅ロウ性によって際立つ新規な改良されたマゼンタ染料を提供する課題に基づく。
【0005】
今、驚くべきことに、CI反応性レッド23の特定の誘導体が、良好な耐光堅ロウ性を有する非常に鮮やかで青みを帯びたマゼンタを生み出すことがわかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
したがって、本発明は、式(1)
【0007】
【化7】
【0008】
の染料に関する。
【0009】
式中、
Zは、C10〜C20テルペンアミノ;又は非置換であるか、アルキル部分をフェニル(そのものがカルボキシ、カルバモイル、スルホ又はスルファモイルによって置換されていてもよい)、アミノ、C2〜C4アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、スルホ、スルファト、カルボキシ、カルバモイル又はスルファモイルによって置換されており、さらに、アルキル部分を1、2又は3個の酸素原子又は−NH−基によって中断されていてもよいN−モノ−C1〜C16アルキルアミノもしくはN,N−ジ−C1〜C16アルキルアミノである。
【0010】
N−モノ又はN,N−ジ−C1〜C16アルキルアミノとしてのZは、たとえば、メチルアミノ、エチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、sec−ブチルアミノ、イソブチルアミノ又はtert−ブチルアミノ、直鎖状又は分岐鎖状のペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、ノニルアミノ、デシルアミノ、ウンデシルアミノ、ドデシルアミノ、トリデシルアミノ又はテトラデシルアミノである。挙げた基は、非置換であるか、アルキル部分をたとえばフェニル(そのものがカルボキシ、カルバモイル、スルホ又はスルファモイルによって置換されていてもよい)、アミノ、C2〜C4アルカノイルアミノ、たとえばアセチルアミノもしくはプロピオニルアミノ、ヒドロキシ、スルホ、スルファト、カルボキシ、カルバモイル又はスルファモイルによって置換されている。挙げた基は、中断されていないか、アルキル部分を1〜3個の酸素又は−NH−基によって中断されている。
【0011】
アルキル部分を置換されており、さらに、アルキル部分を酸素又は−NH−によって中断されていてもよい基の例は、N−β−アミノエチルアミノ、N−β−アミノプロピルアミノ、N−β−ヒドロキシエチルアミノ、N,N−ジ−β−ヒドロキシエチルアミノ、N−2−(β−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ、N−2−〔2−(β−ヒドロキシエトキシ)エトキシ〕エチルアミノ、N−2−(β−ヒドロキシエチルアミノ)エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ、N−2−(β−アミノエチルアミノ)エチルアミノ、N−β−スルファトエチルアミノ、N−β−スルホエチルアミノ、N−カルボキシメチルアミノ、N−メチル−N−カルボキシメチルアミノ、N,N−ジカルボキシメチルアミノ、N−α−カルボキシエチルアミノ、N−β−カルボキシエチルアミノ、N−α,β−ジカルボキシエチルアミノ、N−α−カルボキシ−γ−カルバモイルプロピルアミノ、N−α−カルボキシ−β−ヒドロキシエチルアミノ、N−α−カルボキシ−β−フェニルエチルアミノ、N−α,γ−ジカルボキシプロピルアミノ、N−エチル−N−β−ヒドロキシエチルアミノ及びN−メチル−N−β−ヒドロキシエチルアミノ、特にN,N−ジ−β−ヒドロキシエチルアミノ、N−2−(β−ヒドロキシエチルアミノ)エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ、N−カルボキシメチルアミノ、N−メチル−N−カルボキシメチルアミノ、N,N−ジカルボキシメチルアミノ、N−α−カルボキシエチルアミノ、N−β−カルボキシエチルアミノ、N−α,β−ジカルボキシエチルアミノ、N−α−カルボキシ−γ−カルバモイルプロピルアミノ、N−α−カルボキシ−β−ヒドロキシエチルアミノ、N−α−カルボキシ−β−フェニルエチルアミノ及びN−α,γ−ジカルボキシプロピルアミノを含む。
【0012】
適当な非置換で中断されていない基は、好ましくは、N−モノ−C8〜C14アルキルアミノ基、特にN−モノ−C11〜C14アルキルアミノ基、たとえば、アルキル部分が分岐鎖状であり、たとえば式
【0013】
【化8】
【0014】
(式中、炭素原子の合計Ra+Rb+Rcは11〜14である)
に対応する基である。上記式の基の基礎を形成するアミンの例は、Primene(登録商標)81R(Rohm & Haas)である。
【0015】
アルキル部分を置換されており、さらに、アルキル部分を酸素又は−NH−によって中断されていてもよいN−モノ−もしくはN,N−ジ−C1〜C16アルキルアミノとしてのZは、好ましくはN−モノ−もしくはN,N−ジ−C1〜C6アルキルアミノであり、特にN−モノ−もしくはN,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノである。
【0016】
アルキル部分を置換されており、さらに、アルキル部分を酸素又は−NH−によって中断されていてもよい基が好ましい。
【0017】
C10〜C20テルペンアミノ、好ましくはC20ジテルペンアミノとしてのZは、窒素原子をテルペン炭化水素基によってモノ置換されているアミノ基である。考慮されるテルペン炭化水素基の例は、非環式、一環式又は二環式のC10テルペン、非環式、一環式、二環式又は三環式のC15セスキテルペン、非環式、一環式又は三環式のC20ジテルペン、特に三環式のC20ジテルペン、とりわけ脱水素化された三環式のC20ジテルペン、たとえばデヒドロアビエチン酸から誘導されるものである。挙げることができる、そのような脱水素化された三環式C20ジテルペンアミノ基の例は、式
【0018】
【化9】
【0019】
の基である。
【0020】
Zが、C20ジテルペンアミノ;N−モノ−C8〜C14アルキルアミノ;又はアルキル部分をフェニル(そのものがカルボキシによって置換されていてもよい)、アミノ、ヒドロキシ、スルホ、スルファト、カルボキシ又はカルバモイルによって置換されており、さらに、アルキル部分を1又は2個の酸素原子又は−NH−基によって中断されていてもよいN−モノ−C1〜C6アルキルアミノもしくはN,N−ジ−C1〜C6アルキルアミノである、本発明の染料が好ましい。
【0021】
Zが、C20ジテルペンアミノ;N−モノ−C11〜C14アルキルアミノ;又はアルキル部分をフェニル(そのものがカルボキシによって置換されていてもよい)、ヒドロキシ、スルホ、スルファト、カルボキシ又はカルバモイルによって置換されており、さらに、アルキル部分を1又は2個の酸素原子又は−NH−基によって中断されていてもよいN−モノ−C1〜C6アルキルアミノもしくはN,N−ジ−C1〜C6アルキルアミノである、本発明の染料が特に好ましい。
【0022】
Zが、アルキル部分をフェニル、ヒドロキシ、カルボキシ又はカルバモイルによって置換されており、さらに、アルキル部分を酸素又は−NH−によって中断されていてもよいN−モノ−C1〜C4アルキルアミノ又はN,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノである、本発明の染料がとりわけ好ましい。
【0023】
本発明の染料の好ましい実施態様では、式(1)の染料は、式(2)の染料に対応する。
【0024】
【化10】
【0025】
式中、Zは、上記の定義及び好ましい意味である。
【0026】
式(1)の染料が式(2)の染料であり、Zが、アルキル部分をフェニル、ヒドロキシ、カルボキシ又はカルバモイル、好ましくはヒドロキシ、カルボキシ又はカルバモイルによって置換されており、さらに、アルキル部分を酸素又は−NH−によって中断されていてもよいN−モノ−C1〜C4アルキルアミノ又はN,N−ジ−C1〜C4アルキルアミノである、本発明の染料が特に好ましい。
【0027】
式(1)の染料が式(2)の染料であり、Zが、N,N−ジ−β−ヒドロキシエチルアミノ、N−2−(β−ヒドロキシエチルアミノ)エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ、N−カルボキシメチルアミノ、N−メチル−N−カルボキシメチルアミノ、N,N−ジカルボキシメチルアミノ、N−α−カルボキシエチルアミノ、N−β−カルボキシエチルアミノ、N−α,β−ジカルボキシエチルアミノ、N−α−カルボキシ−γ−カルバモイルプロピルアミノ、N−α−カルボキシ−β−ヒドロキシエチルアミノ、N−α−カルボキシ−β−フェニルエチルアミノ又はN−α,γ−ジカルボキシプロピルアミノである、本発明の染料がとりわけ好ましい。
【0028】
本発明はまた、式(3)
【0029】
【化11】
【0030】
(式中、Xは、ビニル又は−CH2−CH2−Uであり、Uは、アルカリ性条件下で脱離可能な基である)
の化合物を、少なくとも等モル量の式(4)
Z−H (4)
(式中、Zは、上記の定義及び好ましい意味である)
の化合物と反応させる、式(1)の染料の製造方法に関する。
【0031】
アルカリ性条件下で脱離可能な基Uとしては、たとえば、−Cl、−Br、−F、−OSO3H、−SSO3H、−OCO−CH3、−OPO3H2、−OCO−C6H5、−OSO2−C1〜C4アルキル又は−OSO2−N(C1〜C4アルキル)2が考慮される。Uは、好ましくは−Cl、−OSO3H、−SSO3H、−OCO−CH3、−OCO−C6H5又は−OPO3H2、特に−Cl又は−OSO3H、とりわけ−OSO3Hの基である。
【0032】
式(3)及び(4)の化合物は、公知であるか、そのもの公知である方法にしたがって製造することができる。式(3)の化合物は、たとえばCI反応性レッド23である。
【0033】
過剰の、たとえば1.2〜20倍、好ましくは1.5〜10倍の過剰モルの式(4)の化合物を使用することが有利である。
【0034】
反応は、有利には、塩基、たとえばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート又は水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、好ましくはアルカリ金属水酸化物、たとえば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムの存在又は酸、たとえば硫酸、氷酢酸もしくは三フッ化ホウ素の存在、好ましくは塩基の存在で実施する。
【0035】
式(4)の脂肪族アミン類のいくつかは、穏やかな条件の下で、場合によっては塩基又は酸の存在なしで加えるのに十分に塩基性である。反応条件は、特に、式(4)の化合物の求核性によって支配される。反応は、有利には10〜100℃で、好ましくは15〜75℃で、特に20〜50℃で実施する。これらの依存性は一般に知られており、文献で十分に記載されている。
【0036】
本発明の染料中のスルホ基は、遊離スルホン酸の形態又は好ましくはその塩、たとえばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩もしくはアンモニウム塩の形態にあるか、有機アミン塩、たとえばトリエタノールアンモニウム塩又は本発明の染料の製造に適した式(4)のアミンZ−Hの塩の形態にある。アミン基Zに関して上記した定義及び好ましい意味が同様に当てはまる。
【0037】
アルミニウムシート又は箔のプリントに特に適している、式
【0038】
【化12】
【0039】
(式中、炭素原子の合計Ra+Rb+Rcは11〜14である)
のアミン(たとえばPrimene(登録商標)81R、Rohm & Haas)の塩を特に挙げるべきである。
【0040】
したがって、本発明はまた、Zが、アルカリ性条件下で脱離可能な基;C10〜C20テルペンアミノ;又は非置換であるか、アルキル部分をフェニル(そのものがカルボキシ、カルバモイル、スルホ又はスルファモイルによって置換されていてもよい)、アミノ、C2〜C4アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、スルホ、スルファト、カルボキシ、カルバモイル又はスルファモイルによって置換されており、さらに、アルキル部分を1、2又は3個の酸素原子又は−NH−基によって中断されていてもよいN−モノ−C1〜C16アルキルアミノもしくはN,N−ジ−C1〜C16アルキルアミノである式(1)の、式
【0041】
【化13】
【0042】
(式中、炭素原子の合計Ra+Rb+Rcは11〜14である)
のアミンの塩の形態にある染料に関する。
【0043】
アルカリ性条件下で脱離可能な基としてのZは、Uに関して上記した定義及び好ましい意味である。Zはまた、式(1)に関して上記した定義及び好ましい意味である。
【0044】
本発明はまた、Zが、上記の定義及び好ましい意味である式(1)の染料を含むインク、たとえば水性インクに関する。
【0045】
インクに使用される染料は、好ましくは、低い塩含量を有するべきである。すなわち、染料の質量を基準にして0.5質量%未満の総塩含量を有するべきである。製造の結果及び/又はその後の希釈剤の添加の結果として塩含量が比較的高い染料は、たとえば膜分離法、たとえば限外ろ過、逆浸透又は透析によって脱塩することができる。
【0046】
インクは、インクの全質量を基準にして1〜35質量%、特に1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%の染料の総含量を有することが好ましい。下限としては、1.5質量%、好ましくは2質量%、特に3質量%が好ましい。
【0047】
インクは、有機溶媒、たとえば水混和性有機溶媒、たとえばC1〜C4アルコール類、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール及びイソブタノール;アミド類、たとえばジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド;ケトン類もしくはケトンアルコール類、たとえばアセトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール;エーテル類、たとえばテトラヒドロフラン及びジオキサン;窒素含有複素環式化合物、たとえばN−メチル−2−ピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン;ポリアルキレングリコール類、たとえばポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール;C2〜C6アルキレングリコール類及びチオグリコール類、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,5−ベンタンジオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びジエチレングリコールモノブチルエーテル;さらなるポリオール類、たとえばグリセロール及び1,2,6−ヘキサントリオールならびに多価アルコール類のC1〜C4アルキルエーテル類、たとえば2−メトキシエタノール、1−メトキシプロパノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕−エタノール及び2−〔2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ〕エタノール;好ましくはN−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコール、グリセロール又は特に1,2−プロピレングリコールを、通常、インクの全質量を基準にして2〜30質量%、特に5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%の量で含むことができる。
【0048】
インクはまた、可溶化剤、たとえばε−カプロラクタムを含むことができる。
【0049】
インクは、とりわけ粘度を調節するための、天然又は合成起源の増粘剤を含むことができる。
【0050】
挙げることができる増粘剤の例は、市販のアルギン酸塩増粘剤、デンプンエーテル類又はイナゴマメ穀粉エーテル類、特に単独のアルギン酸ナトリウム又は変性セルロース、たとえばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、特に、好ましくは20〜25質量%のカルボキシメチルセルロースと混合したアルギン酸ナトリウムである。挙げることができる合成増粘剤は、たとえば、ポリ(メタ)アクリル酸又はポリ(メタ)アクリルアミド類に基づくものである。
【0051】
インクは、そのような増粘剤を、たとえば、インクの全質量を基準にして0.01〜2質量%、特に0.01〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%の量で含む。
【0052】
インクはまた、緩衝物質、たとえばホウ砂、ホウ酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩又はクエン酸塩を含むことができる。挙げることができる例は、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含む。これらは、たとえば4〜9、特に5〜8.5のpH値を設定するために、特に、インクの全質量を基準にして0.1〜3質量%、好ましくは0.1〜1質量%の量で使用される。
【0053】
インクは、さらなる添加物として界面活性剤又は保湿剤を含むことができる。
【0054】
適当な界面活性剤は、市販のアニオン又は非イオン界面活性剤を含む。本発明のインクにおける保湿剤としては、たとえば、0.1〜30質量%、特に2〜30質量%の量の、尿素又は乳酸ナトリウム(有利には50%〜60%水溶液の形態にある)とグリセロール及び/又はプロピレングリコールとの混合物が考慮される。
【0055】
1〜40mPa・s、特に1〜20mPa・s、好ましくは1〜10mPa・sの粘度を有するインクが好ましい。
【0056】
インクはまた、通例の添加物、たとえば消泡剤又は特に真菌及び/又は細菌の増殖を抑止する物質を含むことができる。このような添加物は通常、インクの全質量を基準にして0.01〜1質量%の量で使用される。
【0057】
インクは、個々の成分をたとえば所望量の水に混入することにより、通例の方法で製造することができる。
【0058】
本発明のインクは、インクが小さな孔から小滴の形状でしぼり出され、その小滴が画像が形成される基材上に送られるタイプの記録システムにおける使用に特に適している。適当な基材は、たとえば紡織繊維材料、紙、プラスチック又はアルミニウム箔である。適当な記録システムは、たとえば、紙もしくは紡織材料のプリントに使用するための市販のインクジェットプリンタ又は筆記具、たとえば万年筆もしくはボールペン、特にインクジェットプリンタである。
【0059】
使用の性質に依存して、たとえば、インクの粘度又は他の物理的性質、特に、当該基材への親和性に影響を及ぼすような性質を調節する必要があるかもしれない。紡織繊維材料、紙又はプラスチックフィルムにプリントするには、水性インクを使用することが好ましい。
【0060】
本発明のインクを使用してプリントすることができる紙の例は、市販のインクジェット紙、写真紙、光沢紙及びプラスチックコーティング紙、たとえばEpsonインクジェット紙、Epson写真紙、Epson光沢紙、Epson光沢フィルム、HP特殊インクジェット紙、Encad写真光沢紙及びIlford写真紙を含む。本発明のインクを使用してプリントすることができるプラスチックフィルムは、たとえば透明又は乳白/不透明である。適当なプラスチックフィルムは、たとえば3M透明フィルムである。光沢紙、たとえばEpson光沢紙が好ましい。
【0061】
考慮される紡織繊維材料は、特に、窒素含有又はヒドロキシ基含有繊維材料、たとえばセルロース、絹、羊毛又は合成ポリアミド類の紡織繊維材料である。
【0062】
アルミニウム箔の例は、表面処理した箔、たとえばビニルコーティングしたアルミニウム箔である。
【0063】
したがって、本発明はまた、Zが、上記の定義及び好ましい意味である式(1)の染料を含むインクを使用することを含む、特にインクジェットプリント法によって紡織繊維材料、紙、プラスチック又はアルミニウム箔にプリントする方法に関する。
【0064】
水性インクを使用する、紡織繊維材料、紙又はプラスチックフィルムにプリントするためのインクジェットプリント法が好ましい。
【0065】
インクジェットプリント法では、個々のインク小滴を制御される方法でノズルから基材に吹き付ける。このために、主として、連続インクジェット法及びオンデマンド滴下法を使用する。連続インクジェット法では、小滴は連続的に形成され、プリントに必要のない小滴は捕集容器に運ばれ、再循環される。しかし、オンデマンド滴下法では、小滴は、必要に応じて形成され、プリントされる。すなわち、小滴は、プリントに必要な場合にだけ形成される。小滴の形成は、たとえば、ピエゾインクジェットヘッド又は熱エネルギー(バブルジェット)によって起こすことができる。本発明の方法には、ピエゾインクジェットヘッドによるプリントが好ましい。また、本発明の方法には、連続インクジェット法によるプリントが好ましい。
【0066】
本発明のインクは、マルチカラープリントのマゼンタ成分として特に適している。
【0067】
得られるプリントは、特に、良好な耐光堅ロウ性及び高い色輝度によって際立つ。
【0068】
本発明の染料はまた、そのもの公知である方法、たとえば浸漬法、ローラプリント法又はフィルムプリント法によってヒドロキシ基含有及び窒素含有繊維材料、紙及びアルミニウムシートもしくはアルミニウム箔を染色し、プリントするのに適している。本発明の染料はまた、木の染色又は媒染に適している。
【0069】
繊維材料の例は、絹、羊毛、合成ポリアミド繊維及びポリウレタンならびにすべての種のセルロース系繊維材料である。セルロース系繊維材料は、たとえば、天然セルロース繊維、たとえば木綿、リネン及び大麻ならびにセルロース及び再生セルロースである。本発明の染料はまた、混紡布、たとえば木綿とポリエステル繊維又はポリアミド繊維との混合物に含まれるヒドロキシ基含有繊維を染色又はプリントするのに適している。前記紡織材料は、多様な加工形態、たとえば繊維、糸、織布又はメリヤス布の形態にあることができる。
【0070】
アルミニウムシート又は箔の例は、表面処理されたシート又は箔、たとえばビニルコーティングされたアルミニウムシート又は箔である。
【0071】
したがって、本発明はまた、紡織繊維材料、特にヒドロキシ基含有もしくは窒素含有繊維材料、木、紙、アルミニウムシート又はアルミニウム箔の染色又はプリントにおける本発明の染料の用途に関する。
【0072】
本発明の染料は、一般に通例の、場合によっては事前に調製されている形態、たとえば吸尽法のための染料水溶液の形態又はスクリーンプリント法で使用するためのプリントペーストの形態で、染色又はプリントに使用することができる。
【0073】
良好な万能の性質、特に良好な耐光堅ロウ性及び高い色輝度を有する染色及びプリントが得られる。ヒドロキシ基含有又は窒素含有繊維材料に対する染色及びプリントはまた、摩擦、濡れ及び濡れ摩擦に対する良好な堅ロウ性によって際立つ。
【0074】
【実施例】
以下の例が本発明を説明するのに役立つ。温度は摂氏で記す。別段明記しない限り、部は質量部であり、%は質量%をいう。質量部と容量部との関係は、キログラムとリットルとの関係と同じである。
【0075】
例1
水50部中アスパラギン酸14.8部の中性溶液を、室温で、水50部中、式(101)
【0076】
【化14】
【0077】
の染料7.5部の溶液に加え、15%水酸化ナトリウム溶液によってpHを10に調節した。反応を完了させるため、これらの条件下で数時間攪拌を実施した(薄層クロマトグラフィーによってモニタ)。次に、16%塩酸で反応混合物をpH8に調節し、ろ過によって透明にし、透析によって脱塩し、凍結乾燥させて染料5.2部を得た。この染料は、遊離酸の形態で式(102)
【0078】
【化15】
【0079】
に対応し、羊毛、絹及び紙に対し、良好な耐光堅ロウ性及び高い色輝度を有する明澄で顕著に青みを帯びたマゼンタの色合いのプリント又は染色を生み出した。
【0080】
例2
式(101)の染料6.7部を室温で水100部に溶解し、N−メチルグリシン1.52部を加えた。15%水酸化ナトリウム溶液で得られた溶液のpHを10に調節し、反応混合物を50℃に加熱した。反応を完了させるため、これらの条件下で約1時間攪拌を実施した(薄層クロマトグラフィーによってモニタ)。次に、16%塩酸で反応混合物をpH8に調節し、ろ過によって透明にし、透析によって脱塩し、凍結乾燥させて染料6.3部を得た。この染料は、遊離酸の形態で式(103)
【0081】
【化16】
【0082】
に対応し、羊毛、絹及び紙に対し、良好な耐光堅ロウ性及び高い色輝度を有する明澄で顕著に青みを帯びたマゼンタの色合いのプリント又は染色を生み出した。
【0083】
例3〜12
例1又は2に記載した手順と同様にして、アスパラギン酸又はN−メチルグリシンの代わりに式Z−Hの化合物を使用することにより、一般式
【0084】
【化17】
【0085】
(式中、Zは、表1に記す定義である)
の染料を製造した。
【0086】
【表1】
【0087】
これらの染料は、羊毛、絹及び紙に対し、良好な耐光堅ロウ性及び高い色輝度を有する明澄で顕著に青みを帯びたマゼンタの色合いのプリント及び染色を生み出した。
【0088】
例13
水90部中、式(101)の染料3.4部の溶液を、pH10及び0〜10℃で、2N水酸化ナトリウムの添加によってビニル化した。得られた溶液に、0〜5℃で、0.6モルPrimene(登録商標)81R水溶液27.4部をたっぷり1時間かけて滴下したのち、2N水酸化ナトリウム溶液の添加によってpHを10に維持しながら温度を徐々に80℃まで上げた。反応が完了すると(薄層クロマトグラフィーによってモニタ)、反応混合物をまず室温まで冷まし、次に、混合物をさらに約0℃まで冷却し、水性塩酸(16%)によってpHを6.5に調節した。得られた沈殿物を氷水で洗浄したのち、真空中で乾燥させて、塩形態で式(104)
【0089】
【化18】
【0090】
(式中、炭素原子の合計Ra+Rb+Rcは11〜14である)
に対応する染料3.8部を得た。この染料は、アルミニウムシート又はアルミニウム箔に対し、良好な耐光堅ロウ性を有する明澄な赤の色合いでプリントした。
【0091】
例14
水90部中、式(101)の染料3.4部の溶液を1N水酸化ナトリウム溶液でpH4.5に調節した。得られた溶液に、0〜5℃で、0.6モルPrimene(登録商標)81R水溶液18.2部を1.5時間かけて滴下した。その温度で反応混合物を夜通し攪拌したのち、固体反応塊から液状成分をデカントして除去した。残渣を繰り返し水洗したのち、エタノールに溶解し、蒸発によって濃縮し、真空中40〜50℃で乾燥させて、式(101)の染料3.4部をトリプリメン塩形態
【0092】
【化19】
【0093】
(式中、炭素原子の合計Ra+Rb+Rcは11〜14である)
で得た。この染料は、アルミニウムシート又はアルミニウム箔に対し、良好な耐光堅ロウ性を有する明澄な赤の色合いでプリントした。
例で得られた化合物の吸収極大を以下の表に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
応用例1
例1の染料3.55部を蒸留水100部に溶解し、ろ過した。そうして得られたインクを使用して、オンデマンド滴下インクジェットプリンタを使用して、市販のインクジェット紙、写真紙又は光沢フィルム(たとえばEpson光沢フィルム)にプリントした。
【0096】
応用例2
a)市販のアルギン酸塩増粘剤150g/l、尿素50g/l及び酒石酸アンモニウム水溶液(強度25%)50g/lを含む水性染液で絹布をパッド染色し(液吸収率90%)、乾燥させた。
【0097】
b)a)にしたがって前処理した絹布に、オンデマンド滴下ピエゾインクジェットヘッドを使用して、
例1の染料5質量%、
1,2−プロピレングリコール20質量%及び
水75質量%
を含有するインクAでプリントした。プリントを乾燥させ、飽和蒸気中102℃で固着させたのち、徹底的に洗浄した。
【0098】
応用例3
a)炭酸ナトリウム30g/lを含有する染液でつや出し木綿サテンをパッド染色し(液吸収率70%)、乾燥させた。
【0099】
b)工程a)にしたがって前処理した木綿サテンに、オンデマンド滴下インクジェットヘッド(バブルジェット)を使用して、
例1の染料15質量%、
1,2−プロピレングリコール15質量%
ホウ砂0.5質量%及び
水69.5質量%
を含有する、2mPa・sの粘度を有する水性インクでプリントした。プリントを完全に乾燥させ、飽和蒸気中102℃で4分間固着させ、冷温ですすぎ、沸騰状態で洗浄し、再度すすぎ、乾燥させた。
【0100】
応用例4
a)例13の染料8質量%、
ニトロセルロースA400 8質量%、
ケトン樹脂SK6質量%、
フタル酸ジブチル1質量%、
1−メトキシプロパノール20質量%、
メチルイソブチルケトン20質量%及び
無水エタノール37質量%
から、溶媒を互いに混合し、樹脂をそれに溶解し、最後に染料をそれに溶解することにより、プリントインクを製造した。このプリントインクを使用して、ビニルコーティングしたアルミニウムシート又はアルミニウム箔にスクリーンプリントした。
【0101】
応用例5
羊毛メリヤス糸10部を、水100部あたり例1の染料0.8部、硫酸ナトリウム0.5部及び酢酸ナトリウム2部を含有する染浴に入れて30℃で攪拌し、酢酸(80%)でpH値を4.5に調節した。45分かけて染液を沸騰させ、沸騰温度でさらに45〜70分間維持した。その後、染色された材料を取り出し、冷水で徹底的にすすぎ、乾燥させた。
【0102】
応用例6
例1にしたがって得た染料3部を、すばやく攪拌しながら、5%アルギン酸ナトリウム増粘剤50部、水27.8部、尿素20部、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム1部及び炭酸水素ナトリウム1.2部を含有するストック増粘剤100部中に散布した。こうして得られたプリントペーストを使用して木綿布にプリントした。乾燥させ、得られたプリントされた布を飽和蒸気中102℃で2分間蒸熱した。その後、プリントされた布をすすぎ、所望により沸騰状態でソーピングし、再度すすぎ、乾燥させた。
Claims (5)
- 請求項1記載のインクジェットプリント法用インクを使用することを含む、インクジェットプリント法によって紙、紡織繊維材料、プラスチックフィルム又はアルミニウム箔にプリントする方法。
- 式(1)
Uは、
−Cl、−Br、−F、−OSO 3 H、−SSO 3 H、−OCO−CH 3 、−OPO 3 H 2 、−OCO−C 6 H 5 、−OSO 2 −C 1 〜C 4 アルキル又は−OSO 2 −N(C 1 〜C 4 アルキル) 2 ;
C10〜C20テルペンアミノ;又は
非置換であるか、アルキル部分をフェニル(フェニルそのものがカルボキシ、カルバモイル、スルホ又はスルファモイルによって置換されていてもよい)、アミノ、C2〜C4アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、スルホ、スルファト、カルボキシ、カルバモイル又はスルファモイルによって置換されており、さらに、アルキル部分を1、2又は3個の酸素原子又は−NH−基によって中断されていてもよいN−モノ−C1〜C16アルキルアミノもしくはN,N−ジ−C1〜C16アルキルアミノである)の、Primene(登録商標)81Rのアミンの塩の形態にある染料。
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