JP4666796B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ビード部の耐久性を向上させた空気入りラジアルタイヤ、なかでも重荷重用ラジアルタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
荷重の作用下で転動する空気入りラジアルタイヤには、トレッド接地面と対応する部分で一対のサイドウォール部に大きな撓み変形が生じ、これにより、リムフランジより半径方向外方のビード部が幅方向外側へ倒れ込み変形する。
【0003】
タイヤビード部がこのように変形した場合には、カーカスプライの、ビードコアの周りへの折返し部の端部分に大きな剪断歪が発生することが知られており、これに対し、特開平10−6719号公報および特開平10−309909号公報等ではカーカスラインの改善が提案され、また、特開平5−16618号公報および特開平8−324214号公報ではそれぞれ、硬質部分と軟質部分とからなるスティフナ構造および、カーカスプライの折返し部の先端部分を薄肉の鞘ゴムでカバーする構成が提案されている。
さらに、特開昭63−227406号公報や特開平2−267012号公報では、カーカスプライ折返し部の端部分形状を改良して耐久性を向上させることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、近年は重荷重用ラジアルタイヤにあっても偏平化が進むとともに、タイヤの更生使用の割合および更生回数もまた増加して、タイヤビード部へのトータル入力が増えているため、上述したような従来技術によるビード部耐久性の向上では、その耐久性がなお不足するという問題があり、また、特開昭63−227406号公報、特開平2−267012号公報等によるカーカスプライの折返し端部分形状は、重荷重用ラジアルタイヤのカーカスプライのように、弾性率の高いスチールコードをプライコードとする場合には、実現が甚だ困難であるという問題があった。
【0005】
そこでこの発明は、スチールコードよりなるカーカスプライを具えるものにおいて、より一層すぐれたビード部耐久性を確実に実現できる空気入りラジアルタイヤ、とりわけそのビード部構造を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の空気入りラジアルタイヤの基本構造は、一対のビードコア間にトロイダルに延びるカーカスプライ本体部および、各ビードコアの周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻上げたカーカスプライ折返し部を有する全てのカーカスプライをスチールコードにより構成するとともに、ビードコアの外周側で、カーカスプライの本体部と折返し部との間にスティフナを配設してなるものであり、カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部によりタイヤ幅方向の内側もしくは外側に折曲させるとともに、そのくせ付け加工部の、カーカスプライの最小半径位置から測った半径方向高さL2を、折返し部外縁高さL1に対し、
L2>L1×0.5
したものである。
【0007】
ここで、カーカスプライの最小半径位置とは、タイヤを、JATMA YEAR BOOKに規定される適用リムに組付けるとともに、同YEAR BOOKに規定される最高空気圧を充填したタイヤ姿勢の下で、カーカスプライの半径が最も小さくなる点をいうものとする。
【0008】
負荷転動中の空気入りラジアルタイヤでは、先に述べたように、一対のサイドウォール部の大きな撓み変形に起因して、カーカスプライの折返し部の端部分に剪断歪が発生することになるが、解析の結果では、この歪は、カーカスプライの折返し部の延長線と、カーカスプライ本体部とのなす角に大きく影響されることが明らかになった。
【0009】
すなわち、高い空気圧が充填される重荷重用タイヤでは、それをリムに組付けた状態で空気圧を充填すると、ビード部の、カーカスプライ折返し部とリムフランジとの間に挟まれたゴムに圧縮力が生じるも、ゴムは非圧縮性材料であるため、そのゴムは、図13に矢印Aで示すように、リムフランジRFの先端方向へ、その圧縮力に応じた量だけ弾性変形することになる。この一方で、スチールコードからなるカーカスプライPの折返し部Tは、ゴムに供連れされた変形を行うことが困難であるので、折返し部Tのとくに先端部分で、それの、タイヤ幅方向外側に隣接するゴム部分に大きな剪断歪が発生する。その上、タイヤに荷重が負荷されると、ビード部Bの、図に仮想線で示すような撓み変形に起因して、リムフランジRFによるゴムの圧縮力が一層増加し、剪断歪もまた増加することになるところ、解析の結果によれば、このような剪断歪は、図に矢印Cで示すような、カーカスプライPの本体部M側からの圧縮力に基づく相殺作用によって有効に低減させることができ、この場合、カーカスプライPの折返し部Tの延長線と、本体部Mとのなす角度θがその剪断歪に大きく影響することが判明した。
【0010】
そこでこのタイヤでは、カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部により、たとえばタイヤ幅方向の内側に折曲させることで、先の角度θを大きく確保してカーカスプライの本体部側から作用する圧縮力の増加を実現する。
【0011】
ところで、カーカスプライの折返し部の外端部分を、塑性加工によるくせ付け加工なしにカーカスプライ本体部側に曲げる場合には、図14に実線で示すように、折返し部の外側のゴム厚みを厚くすること、または、図15に実線で示すように、カーカスプライ折返し部の外端部分近傍でスティフナ厚みを薄くすることが必要になって、前者によれば発熱量の増加が不可避となり、また後者によれば、スティフナそれ自体の剪断変形量が多くなってビード部耐久性が逆に低下するという問題があった。
そしてこれらのことは、折返し部の外端部分を、くせ付け加工なしに幅方向外側に曲げる場合にもほぼ同様であり、発熱量または、スティフナの剪断変形量の増加が問題となる。
【0012】
これらの点に関し、このタイヤでは、くせ付け加工部の、カーカスプライの最小半径位置から測った半径方向高さLを、折返し部外縁の高さLに対して
>L×0.5
の範囲とすることで発熱量および、スティフナの剪断歪を有効に低減させる。
すなわち、くせ付け加工部の高さLが低すぎると、スティフナの剪断歪が大きくなって耐久性が低下することが実験的に確認されている。
【0013】
そしてこの発明の空気入りラジアルタイヤは、上述したところに加えて、カーカスプライの折返し部の外縁を通って本体部に直交する直線上での、その外縁と本体部との間の距離d1の、その外縁からビード部外表面までの距離d2に対する比を0.5〜2.0の範囲としたものである
【0014】
このようなタイヤにおいて、くせ付け加工部より半径方向外方の折曲部分および、それより半径方向内方側の、くせ付け加工部近傍部分のそれぞれをともに、タイヤ幅方向断面内でほぼ直線状に延在させた場合には、特に偏平比の呼びで70以下のラジアルタイヤに関し、周方向剛性の剛性段差を増加することなく断面内の剪断歪を低減できる利点がある。
【0015】
ここで好ましくは、折曲部分の、くせ付け加工部での折曲角度θを10〜60度の範囲とする。
折曲角度θは、それが大きくなるほど、折返し部の外端外側でのゴムの剪断歪が小さくなることが確認されており、この一方で、その角度θが大きくなるほど、先に述べたような、スティフナの剪断歪の集中が問題となるので、ここでは、その上限値を60度としている。なお、その角度θが10度未満では歪低減効果に対してコストが大きくなりすぎて実用的ではない。
また、図16に折曲角度θとコード強力との関係を示すように、スチールコードに塑性加工を施した場合、一般的に塑性加工部のコード強力は塑性加工の程度に応じて低下し、折曲角度θが60度以上でコード強力の低下は顕著となる。
【0016】
ところで、これらのことは、折返し部の外端部分を幅方向外側へ曲げた場合も同様であり、60度を限界として特にコード強力の低下が問題となる。
【0017】
また好ましくは、くせ付け加工部より半径方向外側のスチールコードを、そこを通る円周線分に対し、30度以上90度未満の周方向角度θとする。
撚り構造のスチールコードにくせ付け加工を施す場合には、そのコードの撚り張力や撚り方向、塑性変形量に応じて、くせ付け加工部より外方側部分を、円周線分に対して90度未満の角度とすることが可能であり、このことによれば、カーカスプライの折返し部の外端近傍での半径方向の剛性段差を緩和して歪の一層の低減を実現することができ、このことは角度θが小さいほど効果的である。
一方、30度未満では円周方向の剛性段差がかえって大きくなるため、逆に耐久性が低下してしまう。
【0018】
なお、カーカスプライの折返し部外端部分の、くせ付け加工部による折曲げ方向は、偏平比の呼びが75以上の場合にはタイヤ幅方向の外側とし、偏平比の呼びが70以下の場合には幅方向内側とする。
偏平比の呼びが70以下のタイヤでは、一般により高圧で使用されること、ビード部の、リムフランジによる圧縮力が大きくなることから、折返し部外端部分の、タイヤ幅方向外側に生じる剪断歪が耐久上の問題となるので、このようなタイヤでは、幅方向内側への折曲部を形成することで、前述したように、カーカスプライ本体部側からの圧縮力を利用することで歪の低減を実現する。
【0019】
一方、偏平比の呼びが75以上のタイヤでは、一般に折り返しプライの端部がリムフランジに対して半径方向外方に配置されるため、ビード部とフランジの圧縮変形によるゴムの弾性変形による影響が小さく、逆にカーカスプライの本体部からの圧縮力の影響が大きくなり、その圧縮力によって通常折り返しプライ端部の幅方向内側にセパレーションが発生する。
このような場合には、折返し部の外端部分でのスティフナ厚みが厚い方が、折り返し本体部からの圧縮力を緩和するのに有効であり、上記圧縮歪の低減に有効であるので、ここでは、その折返し部外端部分を幅方向の外側へ折曲させる。
【0020】
すなわち、折り返しプライ端位置が低いときは圧縮力を有効に利用すべく幅方向内に曲げて、リムフランジとの圧縮変形に伴うゴムの押し出し変形をキャンセルさせるようにし、逆に折り返しプライ端位置が高いときにはプライ本体部からの圧縮力が問題となるために、プライ端を幅方向外側に曲げて圧縮歪を緩和する。
【0021】
そしてまた好ましくは、くせ付け加工部での折曲部分と、そのくせ付け加工部より半径方向内方側部分の延長線分とで挟まれる領域に緩衝ゴム、たとえばショアA硬度で75以下の緩衝ゴムを配設する。
【0022】
これによれば、剪断歪および圧縮歪がともに緩衝ゴムで有効に吸収されることによって、折返し部外端又は内端部分への歪の集中が有効に防止されることになり、このことは、くせ付け加工部より半径方向内方側に位置する折返し部およびそれの延長線分よりタイヤ幅方向の外側まで緩衝ゴムを配設してもまた同様である。なおこの場合、緩衝ゴムを、サイドゴムもしくはスティフナゴムと同一のものとしたときは、ゴム種の増加を有効に防止することができる。
【0023】
さらに、スティフナを、半径方向内方側に位置する硬質部分と、半径方向外方側に位置する軟質部分とで構成するとともに、その硬質部分の、折返し部の外縁を通って本体部に直交する直線上での厚みを、折返し部外縁でのスティフナ厚みの半分未満とした場合には、軟硬両部分をもって、スティフナゴムの発熱量の低減と、スティフナの高剛性との両立を図るに当って、折返し部の外縁近傍でのスティフナへの剪断歪の集中を有効に防止することができる。
なおここで、硬質部分はショアA硬度70以上、また軟質部分はショアA硬度で65以下とすることが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1はこの発明の実施の形態を、リム組みタイヤへの最高空気圧の充填姿勢で示す、タイヤ半部の幅方向断面図である。
ここで、リムRは、JATMA YEAR BOOKに規定される適用リムを意味するものとし、最高空気圧もまた同YEAR BOOKに規定される最高空気圧をいうものでとする。
【0025】
図中1はトレッド部、2は、トレッド部1に連なって半径方向内方に延びるサイドウォール部を、そして3は、サイドウォール部2の半径方向内端に連続するビード部をそれぞれ示し、また4は、ビード部3に配設したビードコアを示す。
ここでは、弾性率が100GPa以上のスチールコードにて形成されて、タイヤの骨格構造をなす全てのカーカスプライ5をトロイダルに延在させて配設するとともに、このカーカスプライ5を、ビードコア4間に延びる本体部6と、各ビードコア4の周りにタイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻上げた折返し部7とで構成する。
【0026】
またここでは、ビードコア4の外周側で、本体部6と折返し部7とに挟まれる位置から、硬軟二種類の部分8,9よりなるスティフナ10を半径方向外方へ高く延在させて配設するとともに、ビードコア4の周りに複数枚の、スチールもしくは有機繊維コードよりなる補強層11を、そして、折返し部7の、タイヤ幅方向の外側に、これも複数枚の、スチールもしくは有機繊維コードよりなる補強層12をそれぞれ配設する。
【0027】
ここでこのタイヤでは、折返し部7の半径方向外端部分を、くせ付け加工部13での塑性変形によって、タイヤ幅方向の内側へ折れ曲がる折曲部分7aとするとともに、そのくせ付け加工部13の、カーカスプライ5の最小半径位置MINから測った半径方向高さLを、折返し部7の外縁の同様の高さLに対し、
>L×0.5
とする。
【0028】
またこのタイヤでは、折返し部7の上記折曲部分7aおよびくせ付け加工部13より半径方向内方側部分7bの、くせ付け加工部近傍部分のそれぞれをともに、ほぼ直線状に延在させ、併せて、折曲部分7aの外縁を通って本体部6に直交する直線l上での、その外縁と本体部6との間の距離dの、その外縁からビード部外表面までの距離dに対する比d/dを0.5〜2.0の範囲とするとともに、くせ付け加工部13での、折曲部分7aの折曲角度θを10〜60度の範囲とする。
なおこの図に示すところでは、折返し部7、ひいては、折曲部分7aの延長線と、本体部6とのなす角度θは、たとえば30〜90度の範囲とすることができる。
【0029】
以上のように構成してなるタイヤにおいて、より好ましくは、カーカスプライ折返し部7の、くせ付け加工部13より半径方向外方側の折曲部分7aのスチールコードを、図2に示すように、そのくせ付け加工部13を通る円周線分CI、より正確にはその円周線分CIに引いた接線に対し、30度以上90度未満の周方向角度θとし、これにより、折返し部7の延在域と、それより外方域との剛性段差を緩和する。
【0030】
ところで、折曲部分7aの折れ曲がり方向は、偏平比の呼びが70以下のタイヤでは、図示のように、タイヤ幅方向の内側とすることが、カーカスプライ5の本体部側からの圧縮力を利用する上で好ましく、偏平比の呼びが75以上のタイヤでは、図3に示すようにタイヤ幅方向の外側とすることが、カーカスプライ5の本体部側からの圧縮力を緩和して、圧縮歪を低減させる上で好ましい。
【0031】
また好ましくは、折曲部分7aと、くせ付け加工部13より半径方向内方側部分7bの延長線分とで挟まれる領域に、図1および3に斜線を施して示すように、たとえばショアA硬度が75以下の緩衝ゴム14を配設して、折返し部7、より直接的には折曲部分7aの外端部分への剪断歪および圧縮歪の発生を緩和する。
【0032】
なお、スティフナ10を、図示のように、半径方向内方側に位置する硬質部分8と、半径方向外方側に位置する軟質部分9とで構成する場合には、図3に例示するように、折曲部分7aの外縁を通ってカーカスプライ本体部6に直交する直線l上でのその硬質部分8の厚みtを、その直線l上でのスティフナ厚みdの1/2未満とした場合には、折曲部分7aの外縁近傍でのスティフナ10への剪断歪の集中を有効に防止することができる。
ところで、ここでいうスティフナ厚みは、図1に示すところでは距離dに相当する。
【0033】
このようなタイヤにおいて、折返し部7の、図1に示すような幅方向内側への折曲部分7aの折曲角度θをパラメータとして、サイズが285/60 R22.5の重荷重用ラジアルタイヤにつき、折曲部分7aの外端近傍でその幅方向外側でのゴムの剪断歪を求めたところ図4に示す通りとなり、また、ビード部の耐久性指数を求めたところ図5に示す通りとなった。
【0034】
図4によれば、折曲角度θが大きくなるにつれて、剪断歪が小さくなることが明らかである。しかるに、その角度θが大きくなりすぎると、スティフナ10への剪断歪の集中が余儀なくされる他、コード強力の低下を招くため、折曲角度θの上限値は60度とすることが好ましい。そしてこれによれば、図5に示すように、すぐれた耐久性を発揮させることができる。
さらに、同サイズのタイヤにおいて、図2に示す周方向角度θをパラメータとして、周方向剪断歪(γrc)および断面内剪断歪(γrz)を求めたところ図6に示す通りとなり、また、ビード部の耐久性指数を求めたところ図7に示す通りとなった。
【0035】
ここで図6によれば、折曲角度θの減少につれて周方向剪断歪(γrc)が漸増し、断面内剪断歪(γrz)が漸減することにより、折曲角度θによって、各々の歪を制御できることが解り、図7によれば、折曲角度θの上記変化に基づき、結果として本検討の構造においては、ビード部耐久性が大きく向上することが解る。
【0036】
【実施例】
実施例1
サイズが285/60 R22.5の重荷重用ラジアルタイヤであって、ビード部の基本構造を図8に示すものとした実施例タイヤのそれぞれにつき、ビード部の耐久試験を行ったところ表1に示す結果を得た。
なお表中の比較例1、2および3はそれぞれ、図9、10および11に示すビード部構造を有するものとした。
【0037】
また、上記耐久試験は、最高空気圧を900kPa、適用リムを9.00×22.5とするとともに、最大負荷能力3150kgの1.5倍の負荷を作用させて、半径1.7mのドラム試験機により、60km/hの速度で、ビード部が破壊するまでタイヤを負荷転動させることにより行って、比較例1のタイヤの試験結果をコントロールとして指数評価し、指数値が大きいほど耐久性にすぐれるものとした。
なお、比較例および実施例タイヤはいずれも偏平比の呼びが60であるので、折曲部を、タイヤ幅方向内側に折り曲げた。
【0038】
【表1】
Figure 0004666796
【0039】
表1によれば、実施例タイヤはいずれも、比較例に比してよりすぐれたビード部耐久性を発揮し得ることが明らかである。
【0040】
実施例2
サイズが11R22.5の重荷重用ラジアルタイヤであって、図3に示すビード部構造を有する実施例タイヤと、図12に示すビード部構造を有する比較例とのそれぞれに対し、先に述べたと同様の耐久試験を行ったところ、表2に示す結果を得た。
この試験に当っては、充填空気圧を、最高空気圧である700kPa、適用リムを7.50×22.5とするとともに、負荷を、最大負荷能力2725kgの1.5倍とした。
【0041】
【表2】
Figure 0004666796
【0042】
表2によれば、実施例タイヤでは、ビード部耐久性が顕著に向上することが解る。
【0043】
【発明の効果】
以上に述べたところから明らかなように、この発明によれば、カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部によりタイヤ幅方向の内側もしくは外側に折曲させるとともに、そのくせ付け加工部の半径方向高さを特定することで、ビード部の耐久性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態をタイヤの半部について示す幅方向断面図である。
【図2】 折曲部分のスチールコードの、円周方向線分に対する角度を示す説明図である。
【図3】 この発明の他の実施の形態を示すビード部断面図である。
【図4】 折曲角度の剪断歪に及ぼす影響を示すグラフである。
【図5】 折曲角度のビード部耐久性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図6】 周方向角度の、折り返しプライ端部の周方向剪断歪および断面内剪断歪に及ぼす影響を示すグラフである。
【図7】 周方向角度の、ビード部耐久性に及ぼすグラフである。
【図8】 実施例タイヤの基本的なビード部構造を示す横断面図である。
【図9】 比較例1のタイヤのビード部構造を示す横断面図である。
【図10】 比較例2のタイヤのビード部構造を示す横断面図である。
【図11】 比較例3のタイヤのビード部構造を示す横断面図である。
【図12】 比較例4のタイヤのビード部構造を示す横断面図である。
【図13】 剪断歪の発生態様を示すビード部横断面図である。
【図14】 カーカスプライ本体部側から作用する圧縮力の増加の一態様を示すビード部の略線横断面図である。
【図15】 カーカスプライ本体部側から作用する圧縮力の増加の他の態様を示すビード部の略線横断面図である。
【図16】 折曲角度とコード強力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 ビードコア
5 カーカスプライ
6 本体部
7 折返し部
7a 折曲部分
7b 半径方向内方側部分
8 硬質部分
9 軟質部分
10 スティフナ
11,12 補強層
13 くせ付け加工部
14 緩衝ゴム
R リム
,L 高さ
,d 距離
スティフナ厚み
θ 折曲角度
θ 交角
θ 周方向角度
BH ビードヒール
l 直線
CI 円周線分

Claims (7)

  1. 一対のビードコア間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコアの周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻上げた折返し部とを有するカーカスプライをスチールコードにより構成するとともに、ビードコアの外周側で、カーカスプライの本体部と折返し部との間にスティフナを配設してなる空気入りラジアルタイヤであって、
    カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部によりタイヤ幅方向の内側もしくは外側に折曲させるとともに、そのくせ付け加工部の、カーカスプライの最小半径位置から測った半径方向高さLを、折返し部外縁の高さLに対し、
    >L×0.5
    としてなり、
    くせ付け加工部より半径方向外方の折曲部分および、それより半径方向内方側の、くせ付け加工部近傍部分のそれぞれをともに、タイヤ幅方向断面内でほぼ直線状に延在させてなる空気入りラジアルタイヤ。
  2. 一対のビードコア間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコアの周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻上げた折返し部とを有するカーカスプライをスチールコードにより構成するとともに、ビードコアの外周側で、カーカスプライの本体部と折返し部との間にスティフナを配設してなる空気入りラジアルタイヤであって、
    カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部によりタイヤ幅方向の内側もしくは外側に折曲させるとともに、そのくせ付け加工部の、カーカスプライの最小半径位置から測った半径方向高さL を、折返し部外縁の高さL に対し、
    >L ×0.5
    としてなり、
    折返し部の外縁を通って本体部に直交する直線上での、その外縁と本体部との間の距離d の、その外縁からビード部外表面までの距離d に対する比をd /d を0.5〜2.0の範囲としてなる空気入りラジアルタイヤ。
  3. 一対のビードコア間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコアの周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻上げた折返し部とを有するカーカスプライをスチールコードにより構成するとともに、ビードコアの外周側で、カーカスプライの本体部と折返し部との間にスティフナを配設してなる空気入りラジアルタイヤであって、
    カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部によりタイヤ幅方向の内側もしくは外側に折曲させるとともに、そのくせ付け加工部の、カーカスプライの最小半径位置から測った半径方向高さL を、折返し部外縁の高さL に対し、
    >L ×0.5
    としてなり、
    くせ付け加工部より半径方向外方側のスチールコードを、そこを通る円周線分に対し、30度以上90度未満の周方向角度θ としてなる空気入りラジアルタイヤ。
  4. 一対のビードコア間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコアの周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻上げた折返し部とを有するカーカスプライをスチールコードにより構成するとともに、ビードコアの外周側で、カーカスプライの本体部と折返し部との間にスティフナを配設してなる空気入りラジアルタイヤであって、
    カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部によりタイヤ幅方向の内側もしくは外側に折曲させるとともに、そのくせ付け加工部の、カーカスプライの最小半径位置から測った半径方向高さL を、折返し部外縁の高さL に対し、
    >L ×0.5
    としてなり、
    偏平比の呼びが75以上の場合に、くせ付け加工部より半径方向外方側部分をタイヤ幅方向外側へ折曲させてなる空気入りラジアルタイヤ。
  5. 一対のビードコア間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコアの周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻上げた折返し部とを有するカーカスプライをスチールコードにより構成するとともに、ビードコアの外周側で、カーカスプライの本体部と折返し部との間にスティフナを配設してなる空気入りラジアルタイヤであって、
    カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部によりタイヤ幅方向の内側もしくは外側に折曲させるとともに、そのくせ付け加工部の、カーカスプライの最小半径位置から測った半径方向高さL を、折返し部外縁の高さL に対し、
    >L ×0.5
    としてなり、
    偏平比の呼びが70以下の場合に、その半径方向外方側部分をタイヤ幅方向内側へ折曲させてなる空気入りラジアルタイヤ。
  6. 一対のビードコア間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコアの周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻上げた折返し部とを有するカーカスプライをスチールコードにより構成するとともに、ビードコアの外周側で、カーカスプライの本体部と折返し部との間にスティフナを配設してなる空気入りラジアルタイヤであって、
    カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部によりタイヤ幅方向の内側もしくは外側に折曲させるとともに、そのくせ付け加工部の、カーカスプライの最小半径位置から測った半径方向高さL を、折返し部外縁の高さL に対し、
    >L ×0.5
    としてなり、
    くせ付け加工部での折曲部分と、そのくせ付け加工部より半径方向内方側部分の延長線分とで挟まれる領域に緩衝ゴムを配設してなる空気入りラジアルタイヤ。
  7. 一対のビードコア間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコアの周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて巻上げた折返し部とを有するカーカスプライをスチールコードにより構成するとともに、ビードコアの外周側で、カーカスプライの本体部と折返し部との間にスティフナを配設してなる空気入りラジアルタイヤであって、
    カーカスプライの折返し部の半径方向外端部分を、くせ付け加工部によりタイヤ幅方向の内側もしくは外側に折曲させるとともに、そのくせ付け加工部の、カーカスプライの最小半径位置から測った半径方向高さL を、折返し部外縁の高さL に対し、
    >L ×0.5
    としてなり、
    スティフナを、半径方向内方側に位置する硬質部分と、半径方向外方側に位置する軟質部分とで構成するとともに、その硬質部分の、折返し部の外縁を通って本体部に直交する直線上での厚みを、折返し部外縁でのスティフナ厚みの半分未満としてなる空気入りラジアルタイヤ。
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