以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図22は本発明の第1実施例を示すものであり、図1はスクータ型自動二輪車の側面図、図2は起立位置にあるスタンド付近の拡大側面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図3の4−4線断面図、図5はスタンドが格納位置にある状態での図2に対応した図、図6はスタンドが格納位置にある状態での図4に対応した断面図、図7はスタンドが起立位置にある状態での操作機構、駆動手段およびブレーキ装置を示す図、図8は連動ブレーキ装置の縦断面図、図9は図8の9−9線断面図、図10はスタンドが格納位置にある状態での操作機構および駆動手段の側面図、図11は図10の11矢視方向から見た斜視図、図12は図10の12矢視方向から見た斜視図、図13は図10の13−13線断面図、図14は図10の14−14線断面図、図15は図10の15−15線断面図、図16は駆動手段からの操作力が連動ブレーキ装置に入力された状態での図8に対応した縦断面図、図17は操作レバーを図10の状態から引き出し操作する途中の状態での図10に対応した側面図、図18は操作レバーを図17の状態からさらに引き出した状態での図10に対応した側面図、図19は図17の状態から操作レバーをわずかに戻した状態での図10に対応した側面図、図20は図19の状態から操作レバーを下方に揺動操作した状態での図10に対応した側面図、図21は図20の状態から操作レバーを上方に戻し操作する途中での図10に対応した図、図22は操作レバーを最上方位置まで揺動操作した状態での図10に対応した側面図である。
先ず図1において、スクータ型自動二輪車の車体フレームFは、前端にヘッドパイプ31が固着されたメインフレームパイプ32と、該メインフレームパイプ32の後端に直角に固着されるクロスパイプ33と、クロスパイプ33の両端部に前端がそれぞれ連設される左右一対のリヤフレームパイプ34…とを備える。
メインフレームパイプ32は、ヘッドパイプ31から後ろ下がりに傾斜したダウンフレーム部32aと、ダウンフレーム部32aの後端からほぼ水平にして後方に延びるロアフレーム部32bとが一体に連設されて成る。クロスパイプ33は車体フレームFの左右方向に延びるものであり、該クロスパイプ33の軸方中央部がメインフレームパイプ32の後端部に直角に固着される。
前記ヘッドパイプ31には前輪WFを跨ぐとともに該前輪WFを軸支するフロントフォーク35が操向可能に支承され、フロントフォーク35の上端には操向ハンドル36が連結される。
車体フレームFにおける両リヤフレームパイプ34…の前部には、後輪WRの前方側に配置されるエンジンEと、後輪WRの左側方に配置される伝動装置Mとから成るパワーユニットPが、リンク37を介して上下揺動可能に支承され、後輪WRはパワーユニットPの後部に軸支される。
パワーユニットPにおける伝動ケース38の後部と、左右一対のリヤフレームパイプ34…のうち左側のリヤフレームパイプ34との間にはリヤクッションユニット39が設けられる。またエンジンEにおけるシリンダヘッド40の下部から排気ガスを導く排気管41がエンジンEから後輪WRの右側方に延出されており、この排気管41は、後輪WRの右側方に配置される排気マフラー42に接続される。
エンジンEにおけるシリンダヘッド40の上部には吸気管43を介して気化器44が接続されており、この気化器44は、該気化器44よりも後方で後輪WRの左側方に配置されるエアクリーナ45に接続される。
前記車体フレームFと、前記エンジンEの一部とは、車体フレームFとともに車体29を構成する車体カバー28で覆われており、この車体カバー28の後部上に乗員用シート27が配設される。
図2〜図4において、車体フレームFにおける前記クロスパイプ33の両端は、メインフレームパイプ32の左右両側に突出しており、該クロスパイプ33の前方に間隔をあけた位置で前記メインフレームパイプ32における前記ロアフレーム部32bには、前記クロスパイプ33と平行に延びる支持パイプ46の軸方中央部が固着される。
前記メインフレームパイプ32の左側で前記クロスパイプ33および支持パイプ46間には支持ケース47が配置される。この支持ケース47は、椀状に形成された左右一対のケース半体48,49が相互に対向して複数のボルト50…で結合されて成り、前記クロスパイプ33および支持パイプ46に取付けられる。すなわち支持パイプ46およびクロスパイプ33には、前記支持ケース47のうち一方のケース半体48に当接する支持ブラケット51,52が固着されており、前記両ケース半体48,49および支持ブラケット51に挿通されるボルト55が、支持ブラケット51に固着されたウエルドナット53に螺合され、前記両ケース半体48,49および支持ブラケット52に挿通されるボルト56が、支持ブラケット52に固着されたウエルドナット54に螺合される。
前記支持パイプ46の両端にそれぞれ取付けられるブラケット58…には、スタンド59が回動可能に取付けられるものであり、該スタンド59は、前輪WFおよび後輪WRを接地させた姿勢での駐車状態を得るための起立位置(図1,図2および図4で示す位置)ならびに駐車状態を解除して走行可能とするための格納位置(図5および図6で示す位置)間で回動することが可能である。このスタンド59は、一端部がスタンド軸62…で前記ブラケット58…にそれぞれ回動可能に連結される左右一対の脚部60,60と、それらの脚部60,60の他端部間を連結する連結パイプ61とから成る。
前記スタンド59は、スタンド駆動手段63の作動によって起立位置および格納位置間で回動するものであり、スタンド駆動手段63は、前記スタンド59が備える左側の脚部60の長手方向中間部に固定された第1連結ピン64に一端が連結されるコイル状のスタンドばね65と、該スタンドばね65の他端が連結される第2連結ピン66が一端側に植設されるとともに前記支持ケース47に他端部が支承されるばね支持アーム67と、手動操作力を前記ばね支持アーム67に伝達する操作力伝達機構68と、起立位置にあるスタンド59をロック状態に保持するためのロック機構69とを備える。
前記操作力伝達機構68は、前記スタンド軸62…と平行な軸線を有してスタンド軸62…の後方斜め上に配置されて前記支持ケース47に回動可能に支承される第1回動軸70と、前記支持ケース47の左側方で上下に延びるとともに第1回動軸70に中間部が固定される伝達レバー71とを備え、伝達レバー71の上部には起立操作力伝達用ケーブル72が連結され、前記伝達レバー71の下部には格納操作力伝達用ケーブル73が連結される。すなわち起立操作力伝達用ケーブル72および格納操作力伝達用ケーブル73は、アウターケーブル74,76内にインナーケーブル75,77が移動自在に挿通されて成るものであり、両アウターケーブル74,76の一端部は、支持ケース47のケース半体49に固着されたケーブル支持板78に固定的に支持され、それらのアウターケーブル74,76の一端から突出したインナーケーブル75,77の一端が前記伝達レバー71にそれぞれ係合、連結される。
而して起立操作力伝達用ケーブル72が牽引されると、第1回動軸70は、図2および図4の反時計方向に回動し、格納操作力伝達用ケーブル73が牽引されると、第1回動軸70は、図2および図4の時計方向に回動することになる。
一端部の第2連結ピン66にスタンドばね65が連結されている前記ばね支持アーム67の他端は第1回動軸70に固定されており、ばね支持アーム67は第1回動軸70とともに回動する。而して起立操作力伝達用ケーブル72の牽引によって第1回動軸70およびばね支持アーム67が、図2および図4の反時計方向に回動すると、ばね支持アーム67の第2連結ピン66は、図2で明示するように、スタンド軸62…の中心および第1連結ピン64の中心を結ぶ直線LAよりも下方側の位置となり、この状態でスタンドばね65は、スタンド59を起立位置側に付勢するばね力を発揮する。また格納操作力伝達用ケーブル73の牽引によって第1回動軸70およびばね支持アーム67が、図5および図6の時計方向に回動すると、ばね支持アーム67の第2連結ピン66は、図5で明示するように、スタンド軸62…の中心および第1連結ピン65の中心を結ぶ直線LAよりも上方側の位置となり、この状態でスタンドばね65は、スタンド59を格納位置側に付勢するばね力を発揮する。
すなわちスタンド59は、前記操作力伝達機構68からばね支持アーム67に伝達される操作力によって、該ばね支持アーム67が第1回動軸70の軸線まわりに回動することによる第2連結ピン66の移動に応じたスタンドばね65のばね力によって、起立位置および格納位置間で回動することになる。
前記ロック機構69は、第1回動軸70と平行な軸線を有して前記支持ケース47に回動可能に支承されるとともに中間部に大径部80aが設けられる第2回動軸80と、アウターリング81を有するとともに前記支持ケース47内で第2回動軸80の大径部80aに装着される一方向クラッチ82と、支持ケース47のケース半体48から突出した第2回動軸80およびスタンド59間に設けられるリンク83と、前記アウターリング81の外周に等間隔に設けられる複数の係止歯部84,84…と、それらの係止歯部84,84…の1つに選択的に係合する位置ならびに係合を解除する位置間での作動を可能とした係合爪85とを備える。
前記リンク83は、前記第2回動軸80に一端部が固定される第1リンク部材86と、第1リンク部材86の他端部に一端部が回動可能に連結される第2リンク部材87とを備え、第2リンク部材87の他端部は、スタンド59における連結パイプ61に回動可能に連結される。このようなリンク83によれば、第1回動軸70の回動によってスタンド59が格納位置および起立位置間で回動するのに応じて第2回動軸80が第1回動軸70と同一方向に回動することになる。
また第2回動軸80よりも前方で支持ケース47のケース半体48に植設された第3連結ピン89に一端が連結されるコイルばね88の他端が、第1リンク部材86の他端部に植設された第4連結ピン90に連結される。而してスタンド59が起立位置側に回動すると、第4連結ピン90は、図2で明示するように、第2回動軸80の中心および第3連結ピン89の中心を結ぶ直線LBよりも下方側の位置となり、スタンド59がスタンドばね65のばね力によって起立位置側に回動するのに応じて第2回動軸80を時計方向に速やかに回動するばね力を第1リンク部材86に及ぼす。またスタンド59が格納位置側に回動すると、第4連結ピン90は、図5で明示するように、第2回動軸80の中心および第3連結ピン89の中心を結ぶ直線LBよりも上方側の位置となり、スタンド59がスタンドばね65のばね力によって格納位置側に回動するのに応じて第2回動軸80を反時計方向に速やかに回動するばね力を第1リンク部材86に及ぼす。
係合爪89は、第1および第2回動軸70,80と平行な軸線を有する第1支軸91を介して支持ケース47のケース半体49に回動可能に支承される。この係合爪89には、第1回動軸70がロストモーション機構92を介して連結されるものであり、該ロストモーション機構92は、第1回動軸70に相対回動可能に装着される回動部材93と、該回動部材93および前記係合爪89間を連結する連結リンク94と、第1回動軸70を囲繞して第1回動軸70および回動部材93に両端が係合されるねじりばね95とで構成される。
而してスタンド59を起立位置側に回動すべく第1回動軸70が反時計方向に回動すると、前記ロストモーション機構92を介して係合爪89が反時計方向に回動し、一方向クラッチ82のアウターリング81に設けられた係止歯84,84…の1つに係合してアウターリング81の回動を阻止し、スタンド59を格納位置側に回動すべく第1回動軸70が時計方向に回動すると、前記ロストモーション機構92を介して係合爪89が時計方向に回動して前記係止歯84との係合を解除し、それによりアウターリング81の回動が自由となる。
ところで一方向クラッチ82は、起立位置でアウターリング81の回転が阻止された状態では、起立位置から格納位置側への第2回動軸80の回動を阻止することになり、第2回動軸80がリンク83を介してスタンド59に連結されているので、起立位置にあるスタンド59がロック状態に保持される。
また前記スタンド59における両脚部60…のスタンド軸62…側の端部は連結パイプ97で連結されており、メインフレームパイプ32の右側で前記連結パイプ97およびリヤフレームパイプ34間には緩衝器96が設けられる。
図7において、前輪WFには、前輪用ブレーキケーブル98の牽引によってブレーキ作動するドラムブレーキである前輪用車輪ブレーキBFが装着され、後輪WRには、後輪用用ブレーキケーブル99の牽引によってブレーキ作動するドラムブレーキである後輪用車輪ブレーキBRが装着される。一方、操向ハンドル36の右側には、乗員が右手で操作する右側ブレーキレバー100が回動可能に取付けられ、操向ハンドル36の左側には、乗員が左手で操作するブレーキ操作子としての左側ブレーキレバー101が回動可能に取付けられており、右側ブレーキレバー100には、該右側ブレーキレバー100の回動操作によって牽引されるようにして右側ブレーキケーブル102の一端が連結され、左側ブレーキレバー101には、該左側ブレーキレバー101の回動操作によって牽引されるようにして左側ブレーキケーブル103の一端が連結される。
而して前記左側ブレーキレバー101を操作することによって左側ブレーキケーブル103が牽引されたときに、左側ブレーキケーブル102の牽引力は、連動ブレーキ装置104の働きによって前輪用ブレーキケーブル98および後輪用ブレーキケーブル99に分配され、前輪用車輪ブレーキBFおよび後輪用車輪ブレーキBRが同時に作動する。
図8および図9において、連動ブレーキ装置104は、車体フレームFのヘッドパイプ31に固定されるハウジング105と、右側ブレーキケーブル102に一端部が連結されるとともに前輪用ブレーキケーブル98が他端に連結されるようにしてハウジング105内に収納される中継部材106と、該中継部材106に一端部が回動可能に連結されてハウジング105内に収納されるイコライザ107と、中継部材106およびハウジング105間に縮設されるばね108とを備え、左側ブレーキケーブル103は前記イコライザ107の中間部に連結され、後輪用ブレーキケーブル99は前記イコライザ107の他端部に連結される。
前記ハウジング105は、一側を開放した函状のハウジング主体109と、該ハウジング主体109の開口端を塞ぐようにしてハウジング主体109に結合される蓋部材110とから成る。右側ブレーキケーブル102のインナーケーブル111は、ハウジング主体109の上壁を移動自在に貫通してハウジング104内に挿入されるものであり、そのインナーケーブル111の端部に設けられる係止駒112は、前記中継部材106の上部に設けられて上下に長く延びる上部長孔113に挿通、係合される。また前輪用ブレーキケーブル98のインナーケーブル114は、前記右側ブレーキケーブル102のインナーケーブル111と同軸上でハウジング主体109の下壁を移動自在に貫通して、前記中継部材106の下部に連結される。
前記ばね108は、ハウジング主体109の上壁および中継部材106の上部間に縮設されるものであり、右側ブレーキレバー100の非操作状態で右側ブレーキケーブル102に牽引力が作用していない状態では、前記中継部材106はばね108のばね力によってハウジング主体109の下壁に押しつけられた状態にあり、この際、右側ブレーキケーブル102におけるインナーケーブル111の端部に設けられた係止駒112は上部長孔113内の上部にある。したがって右側ブレーキレバー100を操作して右側ブレーキケーブル102が牽引されると、係止駒112が上部長孔113の上端壁に当接して中継部材106をばね108のばね力に抗して上方に押し上げることになり、前輪用ブレーキケーブル98が牽引されることによって前輪用車輪ブレーキBFがブレーキ作動することになる。
前記上部長孔113の下方で前記中継部材106には上下に延びる下部長孔115が設けられており、前記イコライザ107の一端に設けられる連結軸116が下部長孔115に挿通、係合される。また左側ブレーキケーブル103のインナーケーブル117は、ハウジング主体109の上壁を移動自在に貫通してハウジング104内に挿入されるものであり、そのインナーケーブル117はイコライザ107の中間部に連結される。さらに後輪用ブレーキケーブル99のインナーケーブル118は、ハウジング主体109の下壁を移動自在に貫通して前記イコライザ107の他端に連結される。而して右側ブレーキレバー100および左側ブレーキレバー101の非操作状態で右側および左側ブレーキケーブル102,103に牽引力が作用していない状態では、前記連結軸116は、下部長孔115内の上部にある。したがって左側ブレーキレバー101を操作して左側ブレーキケーブル103が牽引されると、イコライザ107は、連結軸116を支点として図8の反時計方向に回動しつつばね108のばね力に抗して中継部材106を上方に引き上げるようにして上方に移動することになり、それにより後輪用ブレーキケーブル99および前輪用ブレーキケーブル98がともに牽引され、後輪用車輪ブレーキBRおよび前輪用車輪ブレーキBFが連動してブレーキ作動することになる。この際、右側用ブレーキケーブル102の係止駒112は中継部材106の上方への移動に応じて上部長孔113内を下方に相対変位するだけであり、右側用ブレーキケーブル102に影響が及ぶことはない。
前記連動ブレーキ装置104の上方で車体フレームFのヘッドパイプ31には、手動操作を可能とした操作レバー120を有する操作機構121が配設されており、前記操作レバー120を操作するのに応じた駆動手段122の働きによって、前記スタンド59および前記後輪用車輪ブレーキBRが作動する。
図10〜図14において、前記連動ブレーキ装置104の上方で前記ヘッドパイプ13にはブラケット123が固定されており、このブラケット123は、自動二輪車の左右方向に間隔をあけて対向する対向板部124a,125aをそれぞれ有する第1および第2支持部材124,125が相互に結合されて成る。
前記操作レバー120は、一直線状に延びる棒状部120aの一端に屈曲部120bが直角にかつ一体に連設されて成り、屈曲部120bには把持部材126が装着される。しかも第1および第2支持部材124,125の対向板部124a,125a間に操作レバー120が配置される。
而して前記操作機構121は、前記操作レバー120と、該操作レバー120の棒状部120aにおける中心軸に沿う方向での移動を可能として前記操作レバー120を支承するとともに前記ブラケット123の第1支持部材124に回動可能に支承されるレバー支持部材127とで構成される。
レバー支持部材127の一端には支持板部127aが直角にかつ一体に連設されており、該支持板部127aとの間に間隔をあけた位置で前記レバー支持部材127には支持板128が固着される。而して操作レバー120の棒状部120aは、ブッシュ129,130を介して前記支持板部127aおよび前記支持板128を移動自在に貫通する。また前記支持板部127aおよび前記支持板128間には、操作レバー120の棒状部120aおよびレバー支持部材127間に配置されるようにしてガイド部材131が固着されており、操作レバー120における棒状部120aの中心軸に沿う方向に長く延びて前記ガイド部材131に設けられるガイド孔132に、前記棒状部120aにその一直径線に沿うようにして挿通、固定されるガイドピン133が挿入される。
前記レバー支持部材127の他端部は、前記操作レバー120の棒状部120aにおける中心軸と直交する軸線を有して第2支持部材125の対向板部125aに固定される第2支軸134で回動可能に支承される。
すなわち操作機構121は、第1および第2の動きを含む複数の相互に異なる動きをするように単一の前記操作レバー120を操作し得るように構成されるものであり、この第1実施例では、前記第1の動きが、前記操作レバー120における棒状部120aの中心軸に沿う該操作レバー120の直線運動であり、前記第2の動きが、前記操作レバー120の前記中心軸に直交する第2支軸134の軸線まわりの揺動運動である。
而して前記ブラケット123の第1支持部材124における対向板部124aには、操作レバー120における棒状部120aの他端側に設けられたピン135を、前記第1および第2の動きに応じてガイドするガイド孔136が設けられるものであり、このガイド孔136は、前記ピン135を操作レバー120の直線運動時にガイドする直線状ガイド部136aと、操作レバー120の揺動運動時に前記ピン135をガイドするようにして前記直線状ガイド部136aの端部に連なる円弧状ガイド部136bとから成り、円弧状ガイド部136aは第2支軸134の軸線を中心とする円弧に沿うように形成される。
前記駆動手段122は、前記操作機構121におけるレバー操作部材127の他端部に一体に形成されるドラム137と、操作レバー120の直線運動に連動すべく操作レバー120に連動、連結される連動作動部材としての連動アーム138とを備え、連動アーム138の中間部は、第2支軸134と平行な軸線を有して第1および第2支持部材124,125の対向板部124a,125a間に設けられる第3支軸139で回動可能に支承される。
前記ドラム137の外周には、起立操作力伝達用ケーブル72および格納操作力伝達用ケーブル73のインナーケーブル75,77が巻き掛け、係合される。すなわち起立操作力伝達用ケーブル72および格納操作力伝達用ケーブル73のアウターケーブル74,76は、前記ブラケット123における第2支持部材125の下部に固定されており、それらのアウターケーブル74,76の端部から突出したインナーケーブル75,77が前記ドラム137の外周に相互に反対側から巻き掛け係合される。
而して起立操作力伝達用ケーブル72のインナーケーブル75は、操作レバー120を第2支軸134の軸線まわりに下方に揺動操作することで、前記ドラム137が図10の時計方向に回動するのに応じて牽引力が作用する方向から前記ドラム137に巻き掛け、係合され、格納操作力伝達用ケーブル73のインナーケーブル77は、操作レバー120を第2支軸134の軸線まわりに上方に揺動操作することで、前記ドラム137が図10の反時計方向に回動するのに応じて牽引力が作用する方向から前記ドラム137に巻き掛け、係合される。
前記操作レバー120における棒状部120aの他端部には、図13で明示するように、前記連動アーム138の下部を挿入せしめるスリット140が設けられるとともに、そのスリット139を横断する連結ピン141が設けられ、連結ピン141は連動アーム138の下部に設けられた連結孔142に挿入、連結される。またブラケット123の第2支持部材125および連動アーム138間には戻しばね143が設けられており、この戻しばね143は、連動アーム138を第3支軸139の軸線まわりに図10の時計方向に回動付勢するばね力を発揮し、連動アーム138から前記操作レバー120には該操作レバー120を引き込む方向に付勢するばね力が作用することになる。
前記連結孔142は、前記操作レバー120の非揺動操作時には操作レバー120の引き出し操作に応じて第3支軸139の軸線まわりに図10の反時計方向に連動アーム138を回動するような操作力が連結ピン141から連動アーム138に伝達されるものの、操作レバー120の引き出し操作後の揺動操作時には前記連結ピン141が連結孔142内で自由に動き得るように形成される。
前記連動アーム138の上部には、伝動ケーブル144の一端部が連結される。該伝動ケーブル144は、アウターケーブル145内にインナーケーブル146が移動自在に挿通されて成るものであり、第2支持部材125の上部に固定された前記アウターケーブル145の一端部から突出したインナーケーブル146の一端に設けられる係止駒147が、連動アーム138の上部に係合、連結される。すなわち操作レバー120の引き出し操作におうじて連動アーム138が図10の反時計方向に回動したときに前記伝動ケーブル144が牽引されることになる。
再び図8および図9に注目して、前記伝動ケーブル144は、連動ブレーキ装置104側に延出されるものであり、伝動ケーブル144におけるアウターケーブル145の他端部は、連動ブレーキ装置104の歯105に固定されたケーブル支持板151に固定され、前記アウターケーブル145の他端から突出したインナーケーブル146の他端に設けられる係止駒152は、連動ブレーキ装置104におけるハウジング105の上方に配置される可動部材153に係合、連結される。しかも可動部材153およびケーブル支持板151間には、伝動ケーブル144の緩みを防止するためのばね154が縮設される。
前記可動部材153には、前記ハウジング105の両側に配置される連結板155,155の上部が連結ピン156で連結され、両連結板155,155の下部間に、前記ハウジング105におけるハウジング主体109および蓋部材110に上下に延びるようにしてそれぞれ設けられた挿通孔157,158に挿通される係合ピン159の両端が支持される。
而して前記係合ピン159は、左側ブレーキケーブル103のインナーケーブル117のイコライザ107への連結部と、後輪用ブレーキケーブル99のインナーケーブル118のイコライザ107への連結部との間で、前記イコライザ107の下部に係合、連結される。
したがって操作レバー120を引き出して伝動ケーブル144を牽引すると、図16で示すように、イコライザ107は、連結軸116を支点として図16の反時計方向に回動しつつばね108のばね力に抗して中継部材106を上方に引き上げるようにして上方に移動することになり、それにより後輪用ブレーキケーブル99および前輪用ブレーキケーブル98がともに牽引され、後輪用車輪ブレーキBRおよび前輪用車輪ブレーキBFが連動してブレーキ作動することになる。
前記駆動手段122には、操作レバー120を引き出すことによる直線運動に応じた前記連動アーム138の回動位置を規制するとともに、前記スタンド59を起立位置から格納位置に作動せしめるべく操作レバー120を揺動運動させるのに応じて前記連動アーム138の回動規制を解除するようにしたラチェット機構160が設けられる。
前記ラチェット機構160は、操作レバー120の第1の動きである直線運動のうち引き出し動作に応じて前記連動アーム138に係合して連動アーム138の位置を規制する係合部材161を有する。この係合部材161は、前記連動アーム138の上部に設けられた複数のラチェット歯162,162…側に配置されてV字状に分岐した一対の腕部161a,161bを有して略Y字状に形成されるものであり、両腕部161a,161bの一方に前記ラチェット歯162,162…の1つに係合し得る係合爪163が設けられる。また係合部材161に設けられた長孔165に、ブラケット123の第2支持部材125に固定された軸164が遊嵌される。しかも第2支持部材125および係合部材161間には、ばね166が設けられる。
ところで、スタンド59が格納位置にある図10の状態から図17の状態を経て図18で示す位置まで操作レバー120を引き出すと、連動アーム138が第3支軸139の軸線まわりに時計方向に回動し、前輪用車輪ブレーキBFおよび後輪用車輪ブレーキBRがともにブレーキ作動するのであるが、この間、前記ばね166は係合部材161をその係合爪163をラチェット歯162,162…の1つに係合させる方向に回動付勢するものであり、図18で示すように、操作レバー120を最大限引き出したときには係合爪163がラチェット歯162,162…の1つに係合し、連動アーム138の回動位置が保持されることになる。
而して操作レバー120を最大限引き出した状態から図19で示すように、操作レバー120をわずかに戻すと、それに応じて連動アーム138も図19の時計方向にわずかに回動し、ラチェット歯162に係合している係合部材161は、軸164が挿通されている長孔165によって許容される範囲内で移動し、その係合部材161の移動に伴ってばね166の係合部材161への連結部が変位することにより、図19の状態では、ばね166のばね力はラチェット歯162との係合を解除する側にわずかなばね力を発揮するようになる。
ブラケット123における第1支持部材124の対向板部124aには、一端部をガイド孔136における円弧状ガイド部136bに突出させ得る規制アーム167の中間部が第4支軸168を介して回動可能に支承されており、この規制アーム167の他端部は、前記対向板部124aに設けられた規制孔169に挿入され、第1支持部材124および規制アーム167間には、該規制アーム167の一端部を前記円弧状ガイド部136aに突出させるべく第4支軸168の軸線まわりに図10,図17〜図19の反時計方向に規制アーム167を付勢するばね170が設けられる。
而して前記規制孔169は、規制アーム167の一端部を円弧状ガイド部136aに突出させる位置と、規制アーム167の一端部を円弧状ガイド部136bから退避させる位置との間で前記規制アーム167を回動させ得るように形成される。
而して図19で示す位置から操作レバー120を下方に回動すると、操作レバー120のピン135は前記円弧状ガイド部136bに突出している規制アーム167に当接するが、規制アーム167はばね170のばね力に抗して図19の時計方向に回動して円弧状ガイド部136bから退避し、前記ピン135は、図20で示すように、円弧状ガイド部136bの下部まで移動することになる。このような操作レバー120の下方への揺動動作によってスタンド59が起立位置に回動することになる。
スタンド59を起立位置から格納位置に回動するにあたっては、図20の状態から操作レバー120を上方に揺動動作せしめるが、この際、操作レバー120に設けられたピン135が、図21で示すように、円弧状ガイド部136bに突出している規制アーム167の一端部に下方から当接して規制アーム167を図20の反時計方向に回動しようとする。しかるに規制アーム167が反時計方向に回動することは規制孔169で規制されているので、ピン135が規制アーム167の一端部を乗り越えるようにわずかに操作レバー120をわずかに引き出す操作が必要となる。この操作レバー120のわずかな引き出し操作によって連動アーム138は第3支軸139の軸線まわりに図21の反時計方向にわずかに回動しようとする。この際、ラチェット機構16におけるばね166のばね力はラチェット歯162との係合を解除する側に係合部材161をわずかに付勢するばね力を発揮しているだけであるので、連動アーム138はラチェット歯162への係合爪163の係合を解除して、図21の反時計方向にわずかに回動する。すなわちスタンド59を起立位置から格納位置に作動せしめるべく操作レバー120を上方に揺動運動させるのに応じて前記ラチェット機構160は、前記連動アーム138の回動規制を解除することになる。
前記操作レバー120を図22で示すように、最上方位置まで揺動操作して操作レバー120から手を離すと、操作レバー120は、戻しばね143のばね力によって図10で示す位置まで戻ることになり、これにより前輪用車輪ブレーキBFおよび後輪用車輪ブレーキBRのブレーキ作動状態も解除されることになる。
しかも前記操作機構121は、図7で示すように、操作レバー120の非操作状態ならびにスタンド59を起立位置とした操作完了状態のいずれの状態でも、側面視で車体29における車体カバー28の投影面積内に操作レバー120が位置するようにして車体フレームFのヘッドパイプ31に取付けられる。
次にこの第1実施例の作用について説明すると、手動操作を可能とした操作レバー120を有して車体29に取付けられる操作機構121が、第1および第2の動きを含む複数の相互に異なる動きをするように単一の操作レバー120を操作し得るように構成され、その操作レバー120の操作に応じてスタンド59ならびに前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRを連動させる駆動手段122は、操作レバー120の第1の動きに応じて前記前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRをブレーキ作動せしめるとともに前記操作レバー120の第2の動きに応じてスタンド59を格納位置から起立位置に作動せしめるように構成されている。
したがって単一の操作レバー120を用いながら前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRのブレーキ操作ならびにスタンド59の作動操作を独立させることができ、操作の単純化を図るとともに部品点数の増加を抑えることができ、しかもブレーキ作動調整およびスタンド作動調整を個別に行うことができる。
また操作レバー120の第1の動きが、操作レバー120の中心軸に沿う直線運動であり、前記操作レバー120の第2の動きが、操作レバー120の前記中心軸に直交する軸線まわりの揺動運動であるので、前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRに伝達される操作力を操作レバー120の直線運動で発生させることになり、二輪車の特性によってブレーキ操作時に大きな力を必要とする場合でも回転運動に比べて楽に操作することができる。またスタンド59を作動せしめる操作力を操作レバー120の揺動運動で発生させるようにすることにより、小さな力で操作することが可能となる。
また操作機構121は、前記スタンド59を起立位置側に作動せしめる方向で前記操作レバー120の操作するときに、該操作レバー120が前記第1の動きに続いて第2の動きをするように構成されているので、スタンド59を起立位置に作動せしめる際には前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRが作動していることになり、自動二輪車の固定状態でスタンド59の起立操作を確実かつ容易に行うことができる。
また操作機構121は、操作レバー120と、直線運動および揺動運動をすることを可能として前記操作レバー120を支承して車体に取付けられるブラケット123とを備えるものであり、操作レバー120に設けられたピン135を該操作レバー120の直線運動時にガイドする直線状ガイド部136aと、操作レバー120の揺動運動時に前記ピン135をガイドするようにして前記直線状ガイド部136aの端部に連なる円弧状ガイド部136bとが、前記ブラケット123の第1支持部材124に設けられるので、操作レバー120に設けられるピン135と、相互に連なってブラケット123に設けられる直線状ガイド部136aおよび円弧状ガイド部136bとから成る簡単な構成で、操作レバー120が第1の動きをして前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRを作動せしめた後に、スタンド59を起立位置に作動せしめるようにすることができる。
また前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRに個別に連なる前輪用および後輪用ブレーキケーブル98,99が、左側ブレーキレバー101の操作に応じて作動するイコライザ107に連結され、前記操作レバー120の第1の動きに応じて駆動手段122から出力される操作力が、イコライザ107をブレーキ作動側に作動せしめるべく該イコライザ107に入力されるので、簡単な構造で前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRを操作レバー120の第1の動きによって同時にブレーキ作動せしめることができる。
さらに操作レバー120は、その非操作状態ならびにスタンド59を起立位置とした操作完了状態のいずれの状態でも、側面視で車体29の投影面積内に位置するように配置されるので、二輪車への乗員の乗降動作時に、操作レバー120が邪魔になることはなく、乗員の乗降動作に操作レバー120が影響を与えることはない。
図23〜図25は本発明の第2実施例を示すものであり、図23は非操作状態での操作機構および駆動手段の縦断側面図、図24は操作レバーが第1の動きをしたときの図23に対応した図、図25は操作レバーが第2の動きをしたときの図23に対応した図である。
操作レバー180は、一直線状に延びる棒状部180aの一端に屈曲部180bが直角にかつ一体に連設されて成り、屈曲部180bには把持部材126が装着される。而して操作機構181は、前記操作レバー180と、該操作レバー180の棒状部180aにおける中心軸に沿う方向での移動を可能として前記操作レバー180を支承するとともに前記中心軸に直交する平面に沿う軸線まわりの回動を可能として固定のブラケット183に支承されるレバー支持筒184とで構成される。而して操作レバー180の棒状部180aは、前記レバー支持筒184に回転可能に挿通される。
駆動手段182は、前記操作レバー180の他端部に固定されるドラム185と、前記操作レバー180の棒状部180aにおける中心軸に直交する平面に軸線を有する第5支軸186の軸線まわりに回動することを可能としてブラケット183に回動可能に支承されるアーム187とを備え、該アーム187にはレバー支持筒184が固定される。すなわち操作レバー180は第5支軸186の軸線まわりに回動可能である。
前記ドラム185には、伝動ケーブル144のインナーケーブル146が巻き掛け、係合されており、操作レバー180がその中心軸まわりに回転すると、伝動ケーブル144が牽引され、第1実施例と同様にして、前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRがブレーキ作動する。
また前記ドラム185およびレバー支持筒184間で操作レバー180の棒状部180aには規制部材188が固定されており、この規制部材188は、操作ケーブル180を中心軸まわりに回転しない状態で該操作レバー180を下方に揺動作動せしめたときには、前記ブラケット183に設けられたストッパ183aに上方から当接することで操作レバー180の下方への揺動動作を規制する。しかも規制部材188には、図24で示すように、操作レバー180を回転操作したときに前記ストッパ183aに対応する位置となる凹部188が設けられており、この状態では、操作レバー180の下方への揺動動作が可能となる。
前記アーム187には、起立操作力伝達用ケーブル72および格納操作力伝達用ケーブル73のインナーケーブル75,77が係合、連結される。起立操作力伝達用ケーブル72および格納操作力伝達用ケーブル73のアウターケーブル74,76は、前記ブラケット183の下部に固定されており、それらのアウターケーブル74,76の端部から突出したインナーケーブル75,77が前記アーム187に連結される。
而して起立操作力伝達用ケーブル72のインナーケーブル75は、操作レバー180を、図25で示すように、第5支軸186の軸線まわりに下方に揺動操作することによって牽引力が作用するようにして前記アーム187に連結され、格納操作力伝達用ケーブル73のインナーケーブル77は、操作レバー180を第5支軸186の軸線まわりに上方に揺動操作することによって牽引力が作用するようにして前記アーム187に連結される。
この第2実施例によれば、操作レバー180の第1の動きが、該操作レバー180における棒状部180aの中心軸まわりの回転運動であり、第2の動きが、操作レバー180の前記中心軸に直交する平面に沿う軸線まわりの揺動運動であるので、前輪用および後輪用車輪ブレーキBF,BRに伝達される操作力を操作レバー180の回転運動で発生させ、スタンド59を作動せしめる操作力を操作レバー180の揺動運動で発生させるようにすることにより、小さな力で操作することを可能としつつ操作機構181の構造を簡略化することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。