しかし、従来の電源装置300を並列運転した場合、電源装置300,310ごとに有効電力偏差検出回路304,314を用いて、それぞれの電源装置300,310の出力を監視すると共に、信号共有線308を介して相互に有効電力偏差の情報を交換する必要がある。
そのため、いずれかの有効電力偏差検出回路304,314が正常に動作しないと、正確な電力偏差を検出することができず、電源装置全体のバランスが取れなくなってしまう。また、個々のインバータの有効電力に対する情報交換に誤りが生じても同様の問題が発生する。図13では、2つの電源装置300,310を並列運転する形態を示しているが、より複数の並列運転させる場合や遠隔配置を行うには、上記の事項はより大きな問題となる。このことは、電源装置全体の信頼性に関わる重要な課題である。
そこで、本発明では、複数台を並列に接続して並行運転する場合においても、個々の装置が自律して出力偏差を制御する自律平行運転が可能な三相電圧型交直変換装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者は、三相出力電圧を回転座標上に変換した際の各軸成分をそれぞれ独立に制御するようにした。また、三相出力電圧を回転座標上に変換する際の回転角度を電力系統の周波数に追従させるようにした。さらに、電力系統に連系して電圧源として運転可能なように内部等価インピーダンスを持たせることにした。
具体的には、本願第一発明に係る三相電圧型交直変換装置は、交流端子から見て内部等価インピーダンスを持ち、PWM指令に基づいて発生させたゲート信号のパルス幅に応じて直流電圧源からの電力を三相交流電力に変換して前記交流端子から出力する三相電圧型交直変換回路と、前記交流端子の三相出力電圧を当該三相出力電圧の振幅に関わる成分をd軸成分とし周波数差に関わる成分をq軸成分とするdq回転座標空間上に変換して出力するUM変換回路と、前記交流端子の三相出力電圧の振幅に対する電圧振幅指令値及び周波数に対する周波数指令値からなる上位指令ベクトルが入力され、入力された前記上位指令ベクトル及び前記UM変換回路からの出力電圧ベクトルに基づいて、前記交流端子の三相出力電圧の振幅及び周波数が前記上位指令ベクトルによる指令値に近づくように生成した信号を電圧指令ベクトルとして出力する上位電圧制御回路と、前記交流端子の三相出力電圧の振幅及び位相を規定する規準電圧ベクトル、前記UM変換回路からの出力電圧ベクトル並びに前記上位電圧制御回路からの電圧指令ベクトルに基づいて、前記三相出力電圧の振幅及び位相が前記規準電圧ベクトルと前記電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように生成した信号を前記PWM指令として出力する下位電圧制御回路と、前記交流端子の三相出力電圧の周波数を規定する規準周波数、及び前記UM変換回路からの出力電圧ベクトルの前記q軸成分に基づいて生成した生成値を前記UM変換回路での変換行列の回転角度に同期させる周波数制御回路と、を備える。
本願第一発明では、電圧源として動作しても電力系統に接続して運転可能なように内部等価インピーダンスを持つ。また、周波数制御回路によりUM変換回路での変換行列の回転角度に三相出力電圧の周波数差に関わる成分から生成した生成値を同期させる。これにより、当該回転角度を電力系統の周波数に追従させることができる。また、上位電圧制御回路において、電力系統の振幅及び周波数が上位指令ベクトルによる指令値に近づくように電圧指令ベクトルを生成する。これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する三相電圧型交直変換装置の三相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの偏差分を検出できる。よって、下位電圧制御回路において電力系統の振幅及び位相に一致させるように三相電圧型交直変換装置の振幅及び位相を制御して当該偏差分を補償することができる。従って、本発明に係る三相電圧型交直変換装置は、電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律平行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。
上記三相電圧型交直変換装置において、前記上位電圧制御回路は、前記上位指令ベクトルから前記UM変換回路からの出力電圧ベクトルを減算する第一減算器と、前記交流端子の三相出力電圧が前記上位指令ベクトルによる前記指令値に近づくように前記第一減算器からの出力ベクトルを増幅して前記電圧指令ベクトルとして出力する上位制御増幅器と、を備え、前記下位電圧制御回路は、前記規準電圧ベクトルを設定して出力する規準電圧ベクトル設定器と、前記上位電圧制御回路からの電圧指令ベクトルと前記規準電圧ベクトル設定器からの規準電圧ベクトルとを加算して出力する第一加算器と、前記第一加算器からの出力ベクトルから前記UM変換回路からの出力電圧ベクトルを減算する第二減算器と、前記交流端子の三相出力電圧が前記規準電圧ベクトルと前記電圧指令ベクトルとの前記合成値に近づくように前記第二減算器からの出力ベクトルを変換して出力する電圧制御器と、前記電圧制御器からの出力ベクトルを前記dq回転座標空間上からの逆変換をして前記PWM指令として出力する逆U変換器と、を備え、前記周波数制御回路は、前記規準周波数を設定する規準周波数設定器と、前記規準周波数設定器からの規準周波数を時間積分して出力する第一時間積分器と、前記UM変換回路からの出力電圧ベクトルの前記q軸成分に低域濾過要素を付加して出力するループフィルタと、前記ループフィルタからの出力値を時間積分して出力する第二時間積分器と、前記第一時間積分器からの出力値と前記第二時間積分器からの出力値とを加算して前記生成値として出力する第二加算器と、を備え、前記生成値を前記UM変換回路及び前記逆U変換器での変換行列の回転角度に同期させることが望ましい。
本発明は、本願第一発明に係る三相電圧型交直変換装置の各構成をより具体的にしたものである。本発明では、周波数制御回路のループフィルタにおいて三相出力電圧の周波数差に関わる成分であるq軸成分に低域濾過要素を付加し第二時間積分器で時間積分して出力する。また、規準周波数設定器から出力される規準周波数を第一時間積分器において時間積分した積分値に第二時間積分器からの積分値を加算して生成した生成値をUM変換回路での変換行列の回転角度に同期させる。これにより、当該回転角度を電力系統の周波数に追従させることができる。また、上位電圧制御回路の減算器においてUM変換回路からの出力電圧ベクトルと上位指令ベクトルとを減算し、電力系統の振幅及び周波数が上位指令ベクトルによる指令値に近づくように上位制御増幅器で増幅して電圧指令ベクトルを生成して出力する。これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する三相電圧型交直変換装置の三相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの偏差分を検出し、下位電圧制御回路において当該偏差分を補償することができる。具体的には、下位電圧制御回路において規準電圧ベクトル設定器からの規準電圧ベクトルに上位電圧制御回路からの電圧指令ベクトルを加算して電力系統の振幅及び周波数の偏差の補償分を追加する。また、偏差の補償分を追加したベクトルからUM変換回路からの出力電圧ベクトルを減算し、電力系統の振幅及び位相との差分を電圧制御器で規準電圧ベクトルと電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように変換して出力する。さらに、電圧制御器からの2相の出力ベクトルを逆U変換器において三相に変換し三相電圧型交直変換回路へのPWM指令として出力する。これにより、三相電圧型交直変換装置の三相出力電圧の振幅及び位相を電力系統の振幅及び位相に一致させるように制御することができる。従って、本発明に係る三相電圧型交直変換装置は、電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律平行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。
また、本願第二発明に係る三相電圧型交直変換装置は、交流端子から見て内部等価インピーダンスを持ち、PWM指令に基づいて発生させたゲート信号のパルス幅に応じて直流電圧源からの電力を三相交流電力に変換して前記交流端子から出力する三相電圧型交直変換回路と、前記交流端子の三相出力電圧を前記三相出力電圧のうち1つを基準として互いに直交するα軸及びβ軸とするαβ静止座標空間上に変換するM変換回路と、前記M変換回路の出力電圧ベクトルを前記三相出力電圧の振幅に関わる成分をd軸成分とし周波数差に関わる成分をq軸成分とするdq回転座標空間上に変換して出力するU変換回路と、前記交流端子の三相出力電圧の振幅に対する電圧振幅指令値及び周波数に対する周波数指令値からなる上位指令ベクトルが入力され、入力された前記上位指令ベクトル及び前記U変換回路からの出力電圧ベクトルに基づいて、前記交流端子の三相出力電圧の振幅及び周波数が前記上位指令ベクトルによる指令値に近づくように生成した信号を前記dq回転座標空間上から前記αβ静止座標空間上へ逆U変換をして電圧指令ベクトルとして出力する上位電圧制御回路と、前記交流端子の三相出力電圧の振幅及び位相を規定する規準電圧ベクトル、前記M変換回路からの出力電圧ベクトル並びに前記上位電圧制御回路からの電圧指令ベクトルに基づいて、前記三相出力電圧の振幅及び位相が前記規準電圧ベクトルと前記電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように生成した信号を前記PWM指令として出力する下位電圧制御回路と、前記交流端子の三相出力電圧の周波数を規定する規準周波数、及び前記U変換回路からの出力電圧ベクトルの前記q軸成分に基づいて生成した生成値を前記U変換回路及び前記上位電圧制御回路での変換行列の回転角度に同期させる周波数制御回路と、を備える。
本願第二発明は、本願第一発明との対比において、下位電圧制御回路内での信号処理をαβ静止座標空間上で行う点が異なっている。本願第二発明でも、電圧源として電力系統に接続して運転可能なように内部等価インピーダンスを持つ。また、周波数制御回路によりU変換回路での変換行列の回転角度に三相出力電圧の周波数差に関わる成分から生成した生成値を同期させる。これにより、当該回転角度を電力系統の周波数に追従させることができる。また、上位電圧制御回路において、電力系統の振幅及び周波数が上位指令ベクトルによる指令値に近づくように電圧指令ベクトルを生成する。これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する三相電圧型交直変換装置の三相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの偏差分を検出できる。よって、下位電圧制御回路において電力系統の振幅及び位相に一致させるように三相電圧型交直変換装置の振幅及び位相を制御して当該偏差分を補償することができる。従って、本発明に係る三相電圧型交直変換装置は、電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律平行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。
上記三相電圧型交直変換装置において、前記上位電圧制御回路は、前記上位指令ベクトルから前記U変換回路からの出力電圧ベクトルを減算する第一減算器と、前記交流端子の三相出力電圧が前記上位指令ベクトルによる前記指令値に近づくように前記第一減算器からの出力ベクトルを増幅して出力する上位制御増幅器と、前記上位制御増幅器からの出力ベクトルを前記dq回転座標空間上から前記αβ静止座標空間上へ逆U変換をして前記電圧指令ベクトルとして出力する逆U変換器と、を備え、前記下位電圧制御回路は、前記規準電圧ベクトルを設定して出力する規準電圧ベクトル設定器と、前記上位電圧制御回路からの電圧指令ベクトルと前記規準電圧ベクトル設定器からの規準電圧ベクトルとを加算して出力する第一加算器と、前記第一加算器からの出力ベクトルから前記M変換回路からの出力電圧ベクトルを減算する第二減算器と、前記交流端子の三相出力電圧が前記規準電圧ベクトルと前記電圧指令ベクトルとの前記合成値に近づくように前記第二減算器からの出力ベクトルを変換して前記PWM指令として出力する電圧制御器と、を備え、前記周波数制御回路は、前記規準周波数を設定する規準周波数設定器と、前記規準周波数設定器からの規準周波数を時間積分して出力する第一時間積分器と、前記U変換回路からの出力電圧ベクトルの前記q軸成分に低域濾過要素を付加して出力するループフィルタと、前記ループフィルタからの出力値を時間積分して出力する第二時間積分器と、前記第一時間積分器からの出力値と前記第二時間積分器からの出力値とを加算して前記生成値として出力する第二加算器と、を備え、前記生成値を前記U変換回路及び前記逆U変換器での変換行列の回転角度に同期させることが望ましい。
本発明は、本願第二発明に係る三相電圧型交直変換装置の各構成をより具体的にしたものである。本発明では、周波数制御回路のループフィルタにおいて三相出力電圧の周波数差に関わる成分であるq軸成分に低域濾過要素を付加し第二時間積分器で時間積分して出力する。また、規準周波数設定器から出力される規準周波数を第一時間積分器において時間積分した積分値に第二時間積分器からの積分値を加算して生成した生成値をU変換回路での変換行列の回転角度に同期させる。これにより、当該回転角度を電力系統の周波数に追従させることができる。また、上位電圧制御回路の減算器においてU変換回路からの出力電圧ベクトルと上位指令ベクトルとを減算し、電力系統の振幅及び周波数が上位指令ベクトルによる指令値に近づくように上位制御増幅器で増幅し逆U変換器においてαβ静止座標空間上に変換して電圧指令ベクトルを生成する。これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する三相電圧型交直変換装置の三相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの偏差分を検出し、下位電圧制御回路において当該偏差分を補償することができる。具体的には、下位電圧制御回路において規準電圧ベクトル設定器からの規準電圧ベクトルに上位電圧制御回路からの電圧指令ベクトルを加算して電力系統の振幅及び周波数の偏差の補償分を追加する。また、偏差の補償分を追加したベクトルからM変換回路からの出力電圧ベクトルを減算し、電力系統の振幅及び位相との差分を電圧制御器で規準電圧ベクトルと電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように変換して三相電圧型交直変換回路へのPWM指令として出力する。これにより、三相電圧型交直変換装置の三相出力電圧の振幅及び位相を電力系統の振幅及び位相に一致させるように制御することができる。従って、本発明に係る三相電圧型交直変換装置は、電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律平行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。
また、本願第三発明に係る三相電圧型交直変換装置は、交流端子から見て内部等価インピーダンスを持ち、PWM指令に基づいて発生させたゲート信号のパルス幅に応じて直流電圧源からの電力を三相交流電力に変換して前記交流端子から出力する三相電圧型交直変換回路と、前記交流端子の三相出力電圧を当該三相出力電圧の振幅に関わる成分をd軸成分とし周波数差に関わる成分をq軸成分とするdq回転座標空間上に変換して出力するUM変換回路と、前記交流端子の三相出力電圧の振幅に対する電圧振幅指令値及び周波数に対する周波数指令値からなる上位指令ベクトルが入力され、入力された前記上位指令ベクトル及び前記UM変換回路からの出力電圧ベクトルに基づいて、前記交流端子の三相出力電圧の振幅及び周波数が前記上位指令ベクトルによる指令値に近づくように生成した信号を前記dq回転座標空間上から逆UM変換して電圧指令ベクトルとして出力する上位電圧制御回路と、前記交流端子の三相出力電圧の振幅及び位相を規定する規準電圧ベクトル、前記交流端子の三相出力電圧並びに前記上位電圧制御回路からの電圧指令ベクトルに基づいて、前記三相出力電圧の振幅及び位相が前記規準電圧ベクトルと前記電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように生成した信号を前記PWM指令として出力する下位電圧制御回路と、前記交流端子の三相出力電圧の周波数を規定する規準周波数、及び前記UM変換回路からの出力電圧ベクトルの前記q軸成分に基づいて生成した生成値を前記UM変換回路及び前記上位電圧制御回路での変換行列の回転角度に同期させる周波数制御回路と、を備える。
本願第三発明は、本願第一発明との対比において、下位電圧制御回路内での信号処理を三相のまま行う点が異なっている。本願第三発明でも、電圧源として電力系統に接続して運転可能なように内部等価インピーダンスを持つ。また、周波数制御回路によりUM変換回路での変換行列の回転角度に三相出力電圧の周波数差に関わる成分から生成した生成値を同期させる。これにより、当該回転角度を電力系統の周波数に追従させることができる。また、上位電圧制御回路において、電力系統の振幅及び周波数が上位指令ベクトルによる指令値に近づくように電圧指令ベクトルを生成する。これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する三相電圧型交直変換装置の三相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの偏差分を検出できる。よって、下位電圧制御回路において電力系統の振幅及び位相に一致させるように三相電圧型交直変換装置の振幅及び位相を制御して当該偏差分を補償することができる。従って、本発明に係る三相電圧型交直変換装置は、電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律平行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。
上記三相電圧型交直変換装置において、前記上位電圧制御回路は、前記上位指令ベクトルから前記UM変換回路からの出力電圧ベクトルを減算する第一減算器と、前記交流端子の三相出力電圧が前記上位指令ベクトルによる前記指令値に近づくように前記第一減算器からの出力ベクトルを増幅して前記電圧指令ベクトルとして出力する上位制御増幅器と、前記上位制御増幅器からの出力ベクトルを前記dq回転座標空間上から逆UM変換して前記電圧指令ベクトルとして出力する逆UM変換器と、を備え、前記下位電圧制御回路は、前記規準電圧ベクトルを設定して出力する規準電圧ベクトル設定器と、前記上位電圧制御回路からの電圧指令ベクトルと前記規準電圧ベクトル設定器からの規準電圧ベクトルとを加算して出力する第一加算器と、前記第一加算器からの出力ベクトルから前記交流端子の三相出力電圧を減算する第二減算器と、前記交流端子の三相出力電圧が前記規準電圧ベクトルと前記電圧指令ベクトルとの前記合成値に近づくように前記第二減算器からの出力ベクトルを変換して前記PWM指令として出力する電圧制御器と、を備え、前記周波数制御回路は、前記規準周波数を設定する規準周波数設定器と、前記規準周波数設定器からの規準周波数を時間積分して出力する第一時間積分器と、前記UM変換回路からの出力電圧ベクトルの前記q軸成分に低域濾過要素を付加して出力するループフィルタと、前記ループフィルタからの出力値を時間積分して出力する第二時間積分器と、前記第一時間積分器からの出力値と前記第二時間積分器からの出力値とを加算して前記生成値として出力する第二加算器と、を備え、前記生成値を前記UM変換回路及び前記逆UM変換器での変換行列の回転角度に同期させることが望ましい。
本発明は、本願第三発明に係る三相電圧型交直変換装置の各構成をより具体的にしたものである。本発明では、周波数制御回路のループフィルタにおいて三相出力電圧の周波数差に関わる成分であるq軸成分に低域濾過要素を付加し第二時間積分器で時間積分して出力する。また、規準周波数設定器から出力される規準周波数を第一時間積分器において時間積分した積分値に第二時間積分器からの積分値を加算して生成した生成値をUM変換回路での変換行列の回転角度に同期させる。これにより、当該回転角度を電力系統の周波数に追従させることができる。また、上位電圧制御回路の減算器においてUM変換回路からの出力電圧ベクトルと上位指令ベクトルとを減算し、電力系統の振幅及び周波数が上位指令ベクトルによる指令値に近づくように上位制御増幅器で増幅し逆UM変換器によりdq回転座標空間上からの逆変換を行って電圧指令ベクトルを生成する。これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する三相電圧型交直変換装置の三相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの偏差分を検出し、下位電圧制御回路において当該偏差分を補償することができる。具体的には、下位電圧制御回路において規準電圧ベクトル設定器からの規準電圧ベクトルに上位電圧制御回路からの電圧指令ベクトルを加算して電力系統の振幅及び周波数の偏差の補償分を追加する。また、偏差の補償分を追加したベクトルから三相出力電圧を減算し、電力系統の振幅及び位相との差分を電圧制御器で規準電圧ベクトルと電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように変換して三相電圧型交直変換回路へのPWM指令として出力する。これにより、三相電圧型交直変換装置の三相出力電圧の振幅及び位相を電力系統の振幅及び位相に一致させるように制御することができる。従って、本発明に係る三相電圧型交直変換装置は、電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律平行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。
上記第一から第三発明に係る三相電圧型交直変換装置において、前記三相電圧型交直変換回路は、前記交流端子から見て前記内部等価インピーダンスを持ち前記ゲート信号のパルス幅に応じて前記直流電圧源からの電力を三相交流電力に変換して出力する三相電圧型交直変換部と、前記三相電圧型交直変換部の三相出力電流を検出し前記三相出力電流の大きさに応じて生成した信号を出力する電流検出回路と、前記PWM指令と前記電流検出回路からの出力との差分がゼロに近づくように前記ゲート信号を発生させて出力するゲート信号発生器と、前記三相電圧型交直変換部の三相出力電圧から前記三相電圧型交直変換部での前記ゲート信号に起因する高周波成分を除去して出力する三相交流フィルタ回路と、を備えることが望ましい。
本発明では、三相交流フィルタ回路を備えることから、三相電圧型交直変換部からの出力から三相電圧型交直変換部でのゲート信号に起因する高周波成分を除去することができる。また、電流検出回路において三相電圧型交直変換部からの電流を検出し、ゲート信号発生器においてPWM指令と電流検出回路からの出力との差分がゼロに近づくようにゲート信号を発生させることで電流誤差が許容範囲内に収まるように制御することができる。
また、上記第一から第三発明に係る三相電圧型交直変換装置において、前記三相電圧型交直変換回路は、前記交流端子から見て前記内部等価インピーダンスを持ち前記ゲート信号のパルス幅に応じて前記直流電圧源からの電力を三相交流電力に変換して出力する三相電圧型交直変換部と、前記三相電圧型交直変換部の三相出力電圧を検出し前記三相出力電圧の大きさに応じて生成した信号を出力する電圧検出回路と、前記PWM指令と前記電圧検出回路からの出力との差分がゼロに近づくように前記ゲート信号を発生させて出力するゲート信号発生器と、前記三相電圧型交直変換部の三相出力電圧から前記三相電圧型交直変換部での前記ゲート信号に起因する高周波成分を除去して出力する三相交流フィルタ回路と、を備えることが望ましい。
本発明では、三相交流フィルタ回路を備えることから、三相電圧型交直変換部からの出力から三相電圧型交直変換部でのゲート信号に起因する高周波成分を除去することができる。また、電圧検出回路において三相電圧型交直変換部からの電圧を検出し、ゲート信号発生器においてPWM指令と電圧検出回路からの出力との差分がゼロに近づくようにゲート信号を発生させることで出力電圧をPWM指令に追従させることができる。
また、上記第一から第三発明に係る三相電圧型交直変換装置において、前記交流端子の三相出力電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路の検出電流信号を当該検出電流信号の有効成分をd軸成分とし無効成分をq軸成分とするdq回転座標空間上に変換して出力する第二UM変換回路と、をさらに備え、前記三相電圧型交直変換回路は、前記交流端子から見て前記内部等価インピーダンスを持ち前記ゲート信号のパルス幅に応じて前記直流電圧源からの電力を三相交流電力に変換して出力する三相電圧型交直変換部と、前記三相電圧型交直変換部の三相出力電流を検出し前記三相出力電流の大きさに応じて生成した信号を出力する電流検出回路と、前記PWM指令と前記電流検出回路からの出力との差分がゼロに近づくように前記ゲート信号を発生させて出力するゲート信号発生器と、前記三相電圧型交直変換部の三相出力電圧から前記三相電圧型交直変換部での前記ゲート信号に起因する高周波成分を除去して出力する三相交流フィルタ回路と、を備え、前記下位電圧制御回路は、前記三相交流フィルタ回路における電流損失分を補償するように規定された電流補償ベクトルを出力するフィルタ電流補償器と、前記三相電圧型交直変換回路からの三相出力電流の電流偏差を補償するように規定された電流偏差補償ベクトルを出力するPWM電流偏差補償器と、前記第二UM変換回路からの出力電流ベクトルを前記交流端子の負荷に対する電流を補償するように所定のフィードフォワードゲインで増幅して出力するフィードフォワード増幅器と、前記フィルタ電流補償器からの電流偏差補償ベクトル、前記PWM電流偏差補償器からの電流偏差補償ベクトル及び前記フィードフォワード増幅器からの出力ベクトルを前記電圧制御器からの出力ベクトルに加算する第三加算器と、を備え、前記周波数制御回路は、前記生成値を前記第二UM変換回路での変換行列の回転角度に同期させることが望ましい。
本発明では、PWM指令をゼロ指令としたときの三相電圧型交直変換回路における電流偏差分を予めPWM電流偏差補償器において設定し、電圧制御器からの出力ベクトルに加算することで当該電流偏差を補償することができる。また、三相電圧型交直変換回路における三相交流フィルタ回路における電流損失分を予めフィルタ電流補償器において設定し、電圧制御器からの出力ベクトルに加算することで当該損失を補償することができる。さらに、交流端子の三相出力電流を検出しdq変換して得た出力電流ベクトルを予めフィードフォワード増幅器から出力し、電圧制御器からの出力ベクトルに加算することで、出力電流が変化しても安定した出力電圧を発生させることができる。
また、上記第一から第三発明に係る三相電圧型交直変換装置において、前記交流端子の三相出力電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路の検出電流信号を当該検出電流信号の有効成分をd軸成分とし無効成分をq軸成分とするdq回転座標空間上に変換して出力する第二UM変換回路と、をさらに備え、前記三相電圧型交直変換回路は、前記交流端子から見て前記内部等価インピーダンスを持ち前記ゲート信号のパルス幅に応じて前記直流電圧源からの電力を三相交流電力に変換して出力する三相電圧型交直変換部と、前記三相電圧型交直変換部の三相出力電圧を検出し前記三相出力電圧の大きさに応じて生成した信号を出力する電圧検出回路と、前記PWM指令と前記電圧検出回路からの出力との差分がゼロに近づくように前記ゲート信号を発生させて出力するゲート信号発生器と、前記三相電圧型交直変換部の三相出力電圧から前記三相電圧型交直変換部での前記ゲート信号に起因する高周波成分を除去して出力する三相交流フィルタ回路と、を備え、前記下位電圧制御回路は、前記三相交流フィルタ回路における電流損失分を補償するように規定された電流補償ベクトルを出力するフィルタ電流補償器と、前記三相電圧型交直変換回路からの三相出力電流の電流偏差を補償するように規定された電流偏差補償ベクトルを出力するPWM電流偏差補償器と、前記第二UM変換回路からの出力電流ベクトルを前記交流端子の負荷に対する電流を補償するように所定のフィードフォワードゲインで増幅して出力するフィードフォワード増幅器と、前記フィルタ電流補償器からの電流偏差補償ベクトル、前記PWM電流偏差補償器からの電流偏差補償ベクトル及び前記フィードフォワード増幅器からの出力ベクトルを前記電圧制御器からの出力ベクトルに加算する第三加算器と、を備え、前記周波数制御回路は、前記生成値を前記第二UM変換回路での変換行列の回転角度に同期させることが望ましい。
本発明では、PWM指令をゼロ指令としたときの三相電圧型交直変換回路における電流偏差分を予めPWM電流偏差補償器において設定し、電圧制御器からの出力ベクトルに加算することで当該電流偏差を補償することができる。また、三相電圧型交直変換回路における三相交流フィルタ回路における電流損失分を予めフィルタ電流補償器において設定し、電圧制御器からの出力ベクトルに加算することで当該損失を補償することができる。さらに、交流端子の三相出力電流を検出しdq変換して得た出力電流ベクトルを予めフィードフォワード増幅器から出力し、電圧制御器からの出力ベクトルに加算することで、出力電流が変化しても安定した出力電圧を発生させることができる。
本発明では、複数台を並列に接続して並行運転する場合においても、個々の装置が自律して出力偏差を制御する自律平行運転が可能な三相電圧型交直変換装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
(第1実施形態)
図1及び図2に、本実施形態に係る三相電圧型交直変換装置の概略構成図を示す。
図1に示す三相電圧型交直変換装置11は、交流端子22から見て内部等価インピーダンスを持ち、PWM指令に基づいて直流電圧源(不図示)からの電力を直流端子21で受けて三相交流電力に変換して交流端子22から出力する三相電圧型交直変換回路40と、交流端子22の三相出力電圧をdq回転座標空間上に変換して出力するUM変換回路31と、上位指令ベクトル120及びUM変換回路31からの出力電圧ベクトルに基づいて生成した信号を電圧指令ベクトルとして出力する第一上位電圧制御回路70と、規準電圧ベクトル、UM変換回路31からの出力電圧ベクトル及び第一上位電圧制御回路70からの電圧指令ベクトルに基づいて生成した信号をPWM指令として出力する第一下位電圧制御回路60と、規準周波数、及びUM変換回路31からの出力電圧ベクトルのq軸成分に基づいて生成した生成値をUM変換回路31での回転座標変換行列52の回転角度に同期させる周波数制御回路50と、を備える。
三相電圧型交直変換回路40は、PWM指令に基づいてゲート信号発生器41により発生させたゲート信号のパルス幅に応じて不図示の直流電圧源からの電力を三相交流電力に変換する。直流電圧源は、バッテリ等の単独で直流電圧を出力する電圧源、風力発電等の発電方法で発電し整流して直流電圧を出力する電圧源、又は直流コンデンサの電圧を制御して直流電圧を出力する電圧源を例示することができる。この場合、UM変換回路31の接続点と交流端子22との間にさらにブロッキングインダクタを備え、三相出力電圧のそれぞれをブロッキングインダクタを介して交流端子22から出力することとしてもよい。三相電圧型交直変換回路40でのPWM成分の交流端子22への流出を防止することができる。
図8及び図9に三相電圧型交直変換回路の概略構成図を示す。
図8に示す三相電圧型交直変換回路40−1は、交流端子22から見て内部等価インピーダンスを持ちゲート信号のパルス幅に応じて直流電圧源からの電力を直流端子21で受けて三相交流電力に変換して出力する三相電圧型交直変換部42と、三相電圧型交直変換部42の三相出力電流を検出し三相出力電流の大きさに応じて生成した信号を出力する電流検出回路43と、PWM指令と電流検出回路43からの出力との差分がゼロに近づくようにゲート信号を発生させて出力するゲート信号発生器41と、三相電圧型交直変換部42の三相出力電圧から三相電圧型交直変換部42でのゲート信号に起因する高周波成分を除去して出力する三相交流フィルタ回路45と、を備える。
また、図9に示す三相電圧型交直変換回路40−2は、図8の電流検出回路43に代えて、三相電圧型交直変換部42の三相出力電圧を検出し三相出力電圧の大きさに応じて生成した信号を出力する電圧検出回路44を備える。この場合、ゲート信号発生器41は、PWM指令と電圧検出回路44からの出力との差分がゼロに近づくようにゲート信号を発生させて出力する。
図8及び図9に示す三相電圧型交直変換部42の持つ内部等価インピーダンスは、後述するように図1の三相電圧型交直変換装置11内の制御変数により持たせることもできるし、図8及び図9の三相電圧型交直変換回路40−1,40−2の出力に抵抗、リアクトル若しくは三相変圧器又はこれらの組み合わせを接続して持たせることもできる。例えば、三相電圧型交直変換回路40−1,40−2の三相出力にそれぞれ抵抗又はリアクトルを直列に接続してもよいし、さらに抵抗を接続した場合には抵抗の後段にリアクトルをそれぞれ直列に接続してもよい。また、三相電圧型交直変換回路40−1,40−2の三相出力に三相変圧器を接続してもよい。また、三相電圧型交直変換回路40−1,40−2の三相出力にそれぞれリアクトルを接続した場合には、リアクトルの後段に三相変圧器を接続してもよい。さらに、三相電圧型交直変換回路40−1,40−2の三相出力にそれぞれ抵抗を接続し、抵抗の後段にリアクトルをそれぞれ直列に接続した場合には、当該リアクトルの後段に三相変圧器を接続してもよい。このように、三相電圧型交直変換部42が内部等価インピーダンスを持つことにより、図1の三相電圧型交直変換装置11は、電圧源として電力系統に接続して運転することが可能となる。
図1の三相電圧型交直変換回路40を図8又は図9に示す構成とすることにより、三相電圧型交直変換装置11は、三相交流フィルタ回路45(図8及び図9)を備えることから、三相電圧型交直変換部42からの出力から三相電圧型交直変換部42でのゲート信号に起因する高周波成分を除去することができる。また、電流検出回路43又は電圧検出回路44において三相電圧型交直変換部42からの電流又は電圧を検出し、ゲート信号発生器41においてPWM指令と電流検出回路43又は電圧検出回路44からの出力との差分がゼロに近づくようにゲート信号を発生させることで電流誤差が許容範囲内に収まるように制御すること、或いは出力電圧をPWM指令に追従させることができる。
ここで、図10に、図8及び図9における三相電圧型交直変換部の概略構成図を示す。また、図11に、図8及び図9における三相交流フィルタ回路の概略構成図を示す。
図10に示す三相電圧型交直変換部42は、6個の自己消弧型スイッチ46g−46lと、6個のダイオード46a−46fと、を備え、三相ブリッジを構成する。自己消弧型スイッチ46g−46lは、入力信号のオン/オフに応じてスイッチのオン/オフを切替る素子で、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を例示できる。三相電圧型交直変換部42は、図8又は図9に示すゲート信号発生器41からの指令に応じて6つのスイッチのオン/オフを6つの自己消弧型スイッ46g−46lごとにパルス信号により切替えることで、直流電圧源23からの電力を三相交流電力に変換して3つの交流端子24,25,26から出力することができる。出力電圧は、パルス信号のパルス幅を変えることで変化させることができる。なお、図10において直流端子21−1,21−2は、概略図である図1の直流端子21に対応する。
図11に示す三相交流フィルタ回路45は、図8又は図9の三相電圧型交直変換部42からの三相出力を入力側の交流端子24,25,26で受けて出力側の交流端子22−1,22−2,22−3から出力する間で、各相における電流を制御する電流制御用インダクタ47d,47e,47fと、各相間に接続された抵抗47a,47b,47cと、コンデンサ47g,47h,47iと、を有する。電流制御用インダクタ47d,47e,47f、抵抗47a,47b,47c及びコンデンサ47g,47h,47iの各容量は、出力側の交流端子22−1,22−2,22−3からの出力信号の周波数特性に応じて適宜定めることができる。なお、抵抗47a,47b,47cはなくてもよい。図8及び図9の三相電圧型交直変換回路40−1,40−2では、三相交流フィルタ回路45として図11の三相交流フィルタ回路45を適用して三相電圧型交直変換部42でのゲート信号に起因する高周波成分を除去することができる。なお、図11において交流端子22−1,22−2,22−3は、概略図である図1の交流端子22に対応する。
図1のUM変換回路31は、以下の数式(1)から(3)により、交流端子22の三相出力電圧を当該三相出力電圧の三相出力電圧の振幅に関わる成分をd軸成分とし周波数差に関わる成分をq軸成分とするdq回転座標空間上に変換して出力する。数式(3)では、UM変換回路31に入力される三相出力電圧を(Va,Vb,Vc)とし、UM変換回路31からの出力電圧ベクトル(d軸成分,q軸成分)を(Vd,Vq)とした。図1では、UM変換回路31は、周波数制御回路50、第一下位電圧制御回路60及び第一上位電圧制御回路70にそれぞれ出力する。ここで、数式(1)〜(3)によりUM変換の演算を行うにあたり交流端子22の三相出力電圧を検出することになる。この場合、三相出力電圧のうち三相とも検出することとしてもよいが、三相出力電圧はいずれか2つの電圧が定まれば残りの1つの電圧が定まるため、UM変換回路31は、三相出力電圧のうちいずれか2つを検出することとしてもよい。また、UM変換回路31の前段にローパスフィルタを備え、UM変換回路31への三相出力電圧をローパスフィルタを介して検出することとしてもよい。三相出力電圧からPWM成分を除去して三相電圧型交直変換装置11の制御を安定化させることができる。また、UM変換回路31の後段にローパスフィルタを備え、UM変換回路31からの出力電圧ベクトルをローパスフィルタを介して出力することとしてもよい。UM変換回路31からの出力電圧ベクトルからPWM成分を除去して三相電圧型交直変換装置11の制御を安定化させることができる。
周波数制御回路50は、交流端子22の三相出力電圧の周波数を規定する規準周波数、及びUM変換回路31からの出力電圧ベクトルのq軸成分に基づいて生成した生成値をUM変換回路31での回転座標変換行列52の回転角度に同期させる。具体的には、図2に示すように、ループフィルタ53において三相出力電圧の周波数差に関わる成分であるq軸成分に低域濾過要素を付加し第二時間積分器55で時間積分して出力する。ループフィルタ53において付加する低域濾過要素は、一次遅れ要素等の遅れ要素を例示できる。これにより、フィードバックループを安定化させることができる。
また、規準周波数設定器51から出力される規準周波数を第一時間積分器54において時間積分した積分値に第二時間積分器55からの積分値を加算器56において加算して生成した生成値57をUM変換回路31での回転座標変換行列52の回転角度に同期させる。これにより、当該回転角度を電力系統の周波数に追従させることができる。同期させるには、第一時間積分器54からの積分値と第二時間積分器55からの積分値とを加算した生成値57を数式(3)のθdqとする。
ここで、UM変換回路31では、前述したように三相出力電圧の周波数差に関わる成分(q軸成分)を出力する。そのため、UM変換回路31での信号処理は、三相出力電圧と第一時間積分器54からの積分値と第二時間積分器55からの積分値とを加算した生成値57との位相を比較する位相比較処理に相当すると考えられる。また、第一時間積分器54からの積分値と第二時間積分器55からの積分値とを加算することによる信号処理は、ループフィルタ53からの出力電圧に応じて生成値の値を可変するVCO(Voltage Controlled Oscillator)の信号処理に相当すると考えられる。そのため、UM変換回路31及び周波数制御回路50は、全体として、第一時間積分器54からの積分値と第二時間積分器55からの積分値とを加算した生成値57が交流端子22の三相出力電圧の周波数に同期するPLLとしての動作を行っていると考えられる。そのため、同期を維持する周波数範囲(同期保持範囲(ロックレンジ))と周波数引込み範囲(キャプチャレンジ)は、PLLの場合と同様にして求めることができる。
図1の第一上位電圧制御回路70には、交流端子22の三相出力電圧の振幅に対する電圧振幅指令値及び周波数に対する周波数指令値からなる上位指令ベクトル120が入力される。そして、入力された上位指令ベクトル120及びUM変換回路31からの出力電圧ベクトルに基づいて、交流端子22の三相出力電圧の振幅及び周波数が上位指令ベクトル120による指令値に近づくように生成した信号を電圧指令ベクトルとして出力する。具体的には、図2に示すように、減算器71においてUM変換回路31からの出力ベクトルと上位指令ベクトル120とを減算し、電力系統の振幅及び周波数が上位指令ベクトル120による指令値に近づくように第一上位制御増幅器72で増幅して電圧指令ベクトルを生成して出力する。これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する三相電圧型交直変換装置11の三相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの偏差分を検出できる。ここで、第一上位制御増幅器72では、減算器71からの出力ベクトルに低域濾過要素を付加することとしてもよい。これにより、フィードバックループを安定化させることができる。また、第一上位制御増幅器72の後段にさらにリミッタを備え、第一上位制御増幅器72からの出力ベクトルをリミッタを介して出力することとしてもよい。過出力を防止して制御を安定化させることができる。
図1の第一下位電圧制御回路60は、交流端子22の三相出力電圧の振幅及び位相を規定する規準電圧ベクトル、UM変換回路31からの出力電圧ベクトル並びに第一上位電圧制御回路70からの電圧指令ベクトルに基づいて、三相出力電圧の振幅及び位相が規準電圧ベクトルと電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように生成した信号をPWM指令として出力する。また、規準電圧ベクトルは、第一規準電圧ベクトル設定器61により予め設定する。この規準電圧ベクトルは二相で交流端子22の三相出力電圧の振幅と位相の規準となる。
具体的には、図2に示すように、第一規準電圧ベクトル設定器61において予め設定された規準電圧ベクトルに第一上位電圧制御回路70からの電圧指令ベクトルを加算器62において加算して電力系統の振幅及び位相の偏差の補償分を追加する。また、UM変換回路31からの出力電圧ベクトルを減算器63において減算し、電力系統の振幅及び位相との差分を第一電圧制御器64で規準電圧ベクトルと電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように変換して出力する。さらに、第一電圧制御器64からのdq空間上の出力ベクトルを第一逆U変換器65においてαβ空間上に変換し三相電圧型交直変換回路40へのPWM指令として出力する。これにより、第一上位電圧制御回路70で検出した偏差分を補償すると共に、三相電圧型交直変換装置11の三相出力電圧の振幅及び位相を電力系統の振幅及び位相に一致させるように三相電圧型交直変換装置11の振幅及び位相を制御することができる。第一電圧制御器64は、例えば増幅器を適用することができる。ここで、減算器63と第一電圧制御器64との間にさらにローパスフィルタを備え、減算器63からの出力ベクトルをローパスフィルタを介して出力することとしてもよい。PWM成分を除去して第一電圧制御器64での制御を安定化させることができる。また、減算器63と第一電圧制御器64との間(この位置にローパスフィルタを備えた場合は、ローパスフィルタと第一電圧制御器64との間)にさらに電圧リミッタを備え、減算器63からの出力ベクトルを電圧リミッタを介して出力することとしてもよい。三相電圧型交直変換装置11の起動時の出力電圧の過渡変動を抑制することができる。また、第一電圧制御器64と第一逆U変換器65との間(後述のフィルタ電流補償器、PWM電流偏差補償器及びフィードフォワード増幅器を設けた場合には、これらの出力を加算する加算器と第一逆U変換器65との間)にさらに電流リミッタを備え、第一電圧制御器64からの出力ベクトルを電流リミッタを介して出力することとしてもよい。三相電圧型交直変換装置11のスイッチングデバイスに流れる過電流を定常時、過渡時共に防止することができる。
図3に、他の形態に係る三相電圧型交直変換装置の概略構成図を示す。
図3の三相電圧型交直変換装置11は、図2に示す三相電圧型交直変換装置11に交流端子22の三相出力電流を検出する電流検出回路34と、電流検出回路34の検出電流信号をdq回転座標空間上に変換して出力するUM変換回路35と、をさらに備え、第一電圧制御器64からの出力ベクトルにさらにフィルタ電流補償器66、PWM電流偏差補償器67及びフィードフォワード増幅器68からの出力ベクトルを加算器69において加算した形態である。この場合、三相電圧型交直変換回路40は、図8又は図9で説明したいずれかの三相電圧型交直変換回路40−1,40−2を適用することができる。そのため、図3では、図8又は図9のいずれかの三相電圧型交直変換回路40−1,40−2が適用されているものとする。また、UM変換回路35でのdq変換は、数式(1)から(3)で説明した座標変換と同様である。つまり、UM変換回路35は、電流検出回路34の検出電流信号を当該検出電流信号の有効電力に関わる成分をd軸成分とし無効電力に関わる成分をq軸成分として出力する。
フィルタ電流補償器66は、三相電圧型交直変換回路40内の三相交流フィルタ回路45(図8又は図9)における電流損失分を補償するように規定された電流補償ベクトルを出力する。これにより、三相電圧型交直変換装置11では、図8又は図9の三相交流フィルタ回路45における電流損失分を予めフィルタ電流補償器66において設定し、第一電圧制御器64からの出力ベクトルに加算することで当該損失を補償することができる。また、PWM電流偏差補償器67は、三相電圧型交直変換回路40からの三相出力電流の電流偏差を補償するように規定された電流偏差補償ベクトルを出力する。これにより、三相電圧型交直変換装置11では、PWM指令をゼロ指令としたときの三相電圧型交直変換回路40における電流偏差分を予めPWM電流偏差補償器67において設定し、第一電圧制御器64からの出力ベクトルに加算することで当該損失を補償することができる。また、フィードフォワード増幅器68は、UM変換回路35からの出力電流ベクトルを交流端子22を流れる電流を補償するように所定のフィードフォワードゲインで増幅して出力する。これにより、三相電圧型交直変換装置11では、電流検出回路34において交流端子22の三相出力電流を検出しdq変換することで三相出力電流の有効・無効成分を検出し、それらの値をフィードフォワード増幅器68をとおして、第一電圧制御器64からの出力ベクトルに加算することで負荷電流が変化しても安定した出力電圧を発生することができる。
ここで、図3に示す三相電圧型交直変換装置に図8の三相電圧型交直変換回路を適用した場合の電圧制御特性について説明する。
図8の三相電圧型交直変換部42での電流アンプとしてのゲインをGPWMとし、ゼロ指令ベクトルに対する三相電圧型交直変換部42からの三相出力電流の電流偏差を−GPWMM1[D](但し、[ ]は明細書本文中においてベクトルを意味するものとする。以下同様である。)とする。ここで、M1はαβ空間から三相成分への変換行列で以下の数式(4)で表される。
−GPWMM1[D]は、電流検出回路43で検出した電流の大きさに応じて出力した信号をゲート信号発生器41に帰還させたことにより生じる固有な値である。また、三相交流フィルタ回路45を流れる三相電流を[ip]とする。この場合、図3のPWM電流偏差補償器67での電流補償分はU[D]である。また、図3において第一電圧制御器64を増幅器とし、当該増幅器のフィードバックゲインをα、フィードフォワード増幅器68でのフィードフォワードゲインをβとする。また、上位指令ベクトル120を[Vmu]とし、第一上位制御増幅器72のゲインをκとする。交流端子22の三相出力電流を[is]、三相出力電圧を[V]とする。また、第一規準電圧ベクトル設定器61での規準電圧ベクトルを[Vc]とする。なお、図8の三相交流フィルタ回路45での電流損失分をゼロとし、三相交流フィルタ回路45のインピーダンスをZFとする。上記前提の下で図3の第一下位電圧制御回路60からのPWM指令[j]は、以下のように導出できる。
上記数式(5)から三相出力電圧Vに関して次の式が導出できる。
上記数式(6)から、図8に示す三相電圧型交直変換回路40−1の内部等価インピーダンスを以下の数式(7)で表すことができる。つまり、図3の三相電圧型交直変換装置11内の制御パラメータα、β及びκにより、三相電圧型交直変換回路40−1の三相電圧型交直変換部42に内部等価インピーダンスを持たせることができる。
以上説明したように、図1から図3の三相電圧型交直変換装置11は、内部等価インピーダンスを持つことから、電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、周波数設定回路、第一上位電圧制御回路及び第一下位電圧制御回路を備えるため、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律平行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。
ここで、図3に示す三相電圧型交直変換装置11(規準電圧:200V,規準周波数:50Hz)を電圧振幅:200V,周波数:52Hzの電圧源と系統連系させた場合の動作例について説明する。
図3の回路条件として上記数式(5)から(7)に関連する各回路定数を以下の表1と規定した。表1において、第一上位制御増幅器72に一次遅れ要素を付加することとし、その時定数をd軸成分についてTvd,q軸成分についてTvqで表記する。第一上位制御増幅器72の増幅率をd軸成分についてKvd,q軸成分についてKvqで表記する。また、周波数制御回路50のループフィルタ53では低域濾過要素として一次遅れ要素を付加することとし、その時定数をTaで表記する。
上記表1の回路条件の下、まず、図3の第一上位電圧制御回路70から第一下位電圧制御回路60への電圧指令ベクトルの(電圧振幅指令値,周波数指令値)を(200V,0V)として三相電圧型交直変換装置11を無負荷で駆動させる。その0.06秒後、電圧振幅:200V,周波数:52Hzの電圧源と系統連系させた。この時、インバータ電圧は30度系統よりも遅れるものとした。
図12は、図3に示す三相電圧型交直変換装置11を電圧振幅:200V,周波数:52Hzの電圧源と系統連系させた場合の出力電圧を含む時間波形を示した図である。図12(a)は、図3の交流端子22の端子間電圧、及び系統電圧のそれぞれの波形を示した図で、図12(b)は図3の交流端子22の三相出力電圧のd軸成分及びq軸成分の波形を示した図である。図12(c)は、三相電圧型交直変換装置11の交流端子22を流れる電流を表した図である。なお、図12(a),(b),(c)において時間軸は一致している。
図12(a)の波形から、0.06秒まで50Hzでdq変換していたものが、0.06秒において系統連系した後、52Hzの角速度でdq座標が回転し、200Vの直流に信号変換が行われていることがわかる。また、図12(b)の波形から0.06秒において系統連系した時点で生じた電力偏差を約15ミリ秒で自動的に補正して系統連系運転を開始していることがわかる。
(第2実施形態)
図4及び図5に、本実施形態に係る三相電圧型交直変換装置の概略構成図を示す。
図4に示す三相電圧型交直変換装置12は、交流端子22から見て内部等価インピーダンスを持ち、PWM指令に基づいて直流電圧源(不図示)からの電力を三相交流電力に変換して交流端子22から出力する三相電圧型交直変換回路40と、交流端子22の三相出力電圧をαβ静止座標空間上に変換するM変換回路32と、M変換回路32の出力電圧ベクトルをdq回転座標空間上に変換して出力するU変換回路33と、上位指令ベクトル120及びU変換回路33からの出力電圧ベクトルに基づいて生成した信号を電圧指令ベクトルとして出力する第二上位電圧制御回路90と、規準電圧ベクトル、M変換回路32からの出力電圧ベクトル並びに第二上位電圧制御回路90からの電圧指令ベクトルに基づいて生成した信号をPWM指令として出力する第二下位電圧制御回路80と、規準周波数、及びU変換回路33からの出力電圧ベクトルのq軸成分に基づいて生成した生成値をU変換回路33での回転座標変換行列52の回転角度に同期させる周波数制御回路50と、を備える。本実施形態に係る三相電圧型交直変換装置12は、第1実施形態で説明した三相電圧型交直変換装置11と比較して、第二下位電圧制御回路80内での信号処理をαβ静止座標空間上で行う点が異なっている。また、図4及び図5において、図1及び図2と符号が同一の構成要素は、相互に同一のものを示すため、説明は省略する。
M変換回路32は、交流端子22の三相出力電圧のうち1つを基準として互いに直交するα軸及びβ軸とするαβ静止座標空間上に変換する。変換行列は、上記数式(2)により表記できる。また、U変換回路33は、M変換回路32の出力電圧ベクトルを三相出力電圧の振幅に関わる成分をd軸成分とし周波数差に関わる成分をq軸成分とするdq回転座標空間上に変換して出力する。変換行列は、上記数式(1)により表記できる。そのため、U変換回路33からの出力は、M変換回路32を介しているため、図1のUM変換回路31からの出力と同質のベクトルが出力される。また、M変換回路32の前段にローパスフィルタを備え、三相出力電圧をM変換回路32へローパスフィルタを介して入力することとしてもよい。三相出力電圧からPWM成分を除去して三相電圧型交直変換装置12の制御を安定化させることができる。U変換回路33の後段にローパスフィルタを備え、U変換回路33からの出力電圧ベクトルをローパスフィルタを介して出力することとしてもよい。U変換回路33からの出力電圧ベクトルからPWM成分を除去して三相電圧型交直変換装置12の制御を安定化させることができる。また、M変換回路32の接続点と交流端子22との間にさらにブロッキングインダクタを備え、三相出力電圧をブロッキングインダクタを介して交流端子22から出力することとしてもよい。三相電圧型交直変換回路40が発生するPWM成分が交流端子22に流出するのを防止することができる。
図4の第二上位電圧制御回路90は、交流端子22の三相出力電圧の振幅に対する電圧振幅指令値及び周波数に対する周波数指令値からなる上位指令ベクトル120が入力される。そして、入力された上位指令ベクトル120及びU変換回路33からの出力電圧ベクトルに基づいて、交流端子22の三相出力電圧の振幅及び周波数が上位指令ベクトル120による指令値に近づくように生成した信号を電圧指令ベクトルとして出力する。具体的には、図5に示すように、減算器92においてU変換回路33からの出力ベクトルと上位指令ベクトル120とを減算し、電力系統の振幅及び周波数が上位指令ベクトル120による指令値に近づくように第二上位制御増幅器93で増幅し第一逆U変換器91においてαβ静止座標空間上に変換して電圧指令ベクトルを生成する。これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する三相電圧型交直変換装置の三相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの偏差分を検出できる。ここで、第二上位制御増幅器93では、減算器92からの出力ベクトルに低域濾過要素を付加することとしてもよい。フィードバックループを安定化させることができる。また、第二上位制御増幅器93と第一逆U変換器91の後段にさらにリミッタを備え、第二上位制御増幅器93からの出力ベクトルをリミッタを介して出力することとしてもよい。過出力を防止して制御を安定化させることができる。
図4の第二下位電圧制御回路80は、交流端子22の三相出力電圧の振幅及び位相を規定する規準電圧ベクトル、M変換回路32からの出力電圧ベクトル並びに第二上位電圧制御回路90からの電圧指令ベクトルに基づいて、三相出力電圧の振幅及び位相が規準電圧ベクトルと電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように生成した信号をPWM指令として出力する。具体的には、図5に示すように、第一規準電圧ベクトル設定器81において予め設定された規準電圧ベクトルに第二上位電圧制御回路90からの電圧指令ベクトルを加算器82において加算して電力系統の振幅及び周波数の偏差の補償分を追加する。また、M変換回路32からの出力電圧ベクトルを減算器83において減算し、電力系統の振幅及び位相との差分を第二電圧制御器84で規準電圧ベクトルと電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように変換して三相電圧型交直変換回路40へのPWM指令として出力する。これにより、第二上位電圧制御回路90で検出した偏差分を補償すると共に、三相電圧型交直変換装置12の三相出力電圧の振幅及び位相を電力系統の振幅及び位相に一致させるように三相電圧型交直変換装置12の振幅及び位相を制御することができる。第二電圧制御器84は、例えば増幅器を適用することができる。ここで、減算器83と第二電圧制御器84との間にさらにローパスフィルタを備え、減算器83からの出力ベクトルをローパスフィルタを介して出力することとしてもよい。PWM成分を除去して第二電圧制御器84での制御を安定化させることができる。また、減算器83と第二電圧制御器84との間(この位置にローパスフィルタを備えた場合は、ローパスフィルタと第二電圧制御器84との間)にさらに電圧リミッタを備え、減算器83からの出力ベクトルを電圧リミッタを介して出力することとしてもよい。三相電圧型交直変換装置12の起動時の出力電圧の過渡変動を抑制することができる。また、第二電圧制御器84の後段(後述するように前述の図3のフィルタ電流補償器66、PWM電流偏差補償器67及びフィードフォワード増幅器68を設けた場合には、これらからの出力を加算する加算器の後段)にさらに電流リミッタを備え、第二電圧制御器84からの出力ベクトルを電流リミッタを介して出力することとしてもよい。三相電圧型交直変換装置12のスイッチングデバイスに流れる過電流を定常時、過渡時共に防止することができる。
図5に示す三相電圧型交直変換装置12は、図3で説明したフィードフォワード増幅器68並びにこれに必要な電流検出回路34及びM変換回路32、フィルタ電流補償器66、並びにPWM電流偏差補償器67をさらに有して、これらの回路からの出力を第二下位電圧制御回路80内で第二電圧制御器84からの出力ベクトルに加算することもできる。この場合、図3と同様に図5の三相電圧型交直変換回路40は、図8又は図9で説明したいずれかの三相電圧型交直変換回路40−1,40−2を適用するものとする。
以上説明したように、図4及び図5の三相電圧型交直変換装置12は、内部等価インピーダンスを持つことから電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、周波数制御回路50、第二上位電圧制御回路90及び第二下位電圧制御回路80を備えるため、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律平行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。
(第3実施形態)
図6及び図7に、本実施形態に係る三相電圧型交直変換装置の概略構成図を示す。
図6に示す三相電圧型交直変換装置13は、交流端子22から見て内部等価インピーダンスを持ち、PWM指令に基づいて直流電圧源(不図示)からの電力を三相交流電力に変換して交流端子22から出力する三相電圧型交直変換回路40と、交流端子22の三相出力電圧をdq回転座標空間上に変換して出力するUM変換回路31と、上位指令ベクトル120及びUM変換回路31からの出力電圧ベクトルに基づいて生成した信号を電圧指令ベクトルとして出力する第三上位電圧制御回路110と、規準電圧ベクトル、交流端子22の三相出力電圧並びに第三上位電圧制御回路110からの電圧指令ベクトルに基づいて生成した信号をPWM指令として出力する第三下位電圧制御回路100と、規準周波数、及びUM変換回路31からの出力電圧ベクトルのq軸成分に基づいて生成した生成値をUM変換回路31での回転座標変換行列52の回転角度に同期させる周波数制御回路50と、を備える。本実施形態に係る三相電圧型交直変換装置13は、第1実施形態で説明した三相電圧型交直変換装置11と比較して、第三下位電圧制御回路100内での信号処理を三相のまま行う点が異なっている。また、図6及び図7において、図1及び図2と符号が同一の構成要素は、相互に同一のものを示すため、説明は省略する。
第三上位電圧制御回路110には、交流端子22の三相出力電圧の振幅に対する電圧振幅指令値及び周波数に対する周波数指令値からなる上位指令ベクトル120が入力される。そして、入力された上位指令ベクトル120及びUM変換回路31からの出力電圧ベクトルに基づいて、交流端子22の三相出力電圧の振幅及び周波数が上位指令ベクトルによる指令値に近づくように生成した信号を電圧指令ベクトルとして出力する。ここで、UM変換回路31及び第三下位電圧制御回路100の前段にローパスフィルタを備え、三相出力電圧をローパスフィルタを介して検出することとしてもよい。三相出力電圧からPWM成分を除去して三相電圧型交直変換装置13の制御を安定化させることができる。また、UM変換回路31の後段にローパスフィルタを備え、UM変換回路31からの出力電圧ベクトルをローパスフィルタを介して出力することとしてもよい。UM変換回路31からの出力電圧ベクトルからPWM成分を除去して三相電圧型交直変換装置13の制御を安定化させることができる。また、UM変換回路31の接続点と交流端子22との間にさらにブロッキングインダクタを備え、三相出力電圧のそれぞれをブロッキングインダクタを介して交流端子22から出力することとしてもよい。三相電圧型交直変換回路40でのPWM成分が交流端子22に流出するのを防止することができる。
具体的な構成は、図7に示すように、減算器112においてUM変換回路31からの出力ベクトルと上位指令ベクトル120とを減算し、電力系統の振幅及び周波数が上位指令ベクトル120による指令値に近づくように第三上位制御増幅器113で増幅し、逆UM変換器111においてdq回転座標空間上からの逆変換を行って電圧指令ベクトルを生成する。これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する三相電圧型交直変換装置13の三相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの偏差分を検出できる。ここで、第三上位制御増幅器113では、減算器112からの出力ベクトルに低域濾過要素を付加することとしてもよい。フィードバックループを安定化させることができる。また、第三上位制御増幅器113と逆UM変換器111との間にさらにリミッタを備え、第三上位制御増幅器113からの出力ベクトルをリミッタを介して出力することとしてもよい。過出力を防止して制御を安定化させることができる。
図6の第三下位電圧制御回路100は、交流端子22の三相出力電圧の振幅及び位相を規定する規準電圧ベクトル、交流端子22の三相出力電圧並びに第三上位電圧制御回路110からの電圧指令ベクトルに基づいて、三相出力電圧の振幅及び位相が規準電圧ベクトルと電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように生成した信号をPWM指令として出力する。また、規準電圧ベクトルは、第二規準電圧ベクトル設定器101により予め設定する。この規準電圧ベクトルは、交流端子の三相出力電圧の振幅と位相の規準となる。
具体的には、図7に示すように、第二規準電圧ベクトル設定器101において予め設定された規準電圧ベクトルに第三上位電圧制御回路110からの電圧指令ベクトルを加算器102において加算して電力系統の振幅及び周波数の偏差の補償分を追加する。また、交流端子22の三相出力電圧ベクトルを減算器103において減算し、電力系統の振幅及び位相との差分を第三電圧制御器104で規準電圧ベクトルと電圧指令ベクトルとの合成値に近づくように変換して三相電圧型交直変換回路40へのPWM指令として出力する。これにより、第三上位電圧制御回路110で検出した偏差分を補償すると共に、三相電圧型交直変換装置13の三相出力電圧の振幅及び位相を電力系統の振幅及び位相に一致させるように三相電圧型交直変換装置13の振幅及び位相を制御することができる。第三電圧制御器104は、例えば増幅器を適用することができる。ここで、減算器103と第三電圧制御器104との間にさらにローパスフィルタを備え、減算器103からの出力ベクトルをローパスフィルタを介して出力することとしてもよい。PWM成分を除去して第三電圧制御器104での制御を安定化させることができる。また、減算器103と第三電圧制御器104との間(この位置にローパスフィルタを備えた場合は、ローパスフィルタと第三電圧制御器104との間)にさらに電圧リミッタを備え、減算器103からの出力ベクトルを電圧リミッタを介して出力することとしてもよい。三相電圧型交直変換装置13の起動時の出力電圧の過渡変動を抑制することができる。また、第三電圧制御器104の後段(後述するように前述の図3のフィルタ電流補償器66、PWM電流偏差補償器67及びフィードフォワード増幅器68を設けた場合には、これらからの出力を加算する加算器の後段)にさらに電流リミッタを備え、第三電圧制御器104からの出力ベクトルを電流リミッタを介して出力することとしてもよい。三相電圧型交直変換装置13のスイッチングデバイスに流れる過電流を定常時、過渡時共に防止することができる。
図7に示す三相電圧型交直変換装置13は、図3で説明したフィードフォワード増幅器68及びこれに必要な電流検出回路34、フィルタ電流補償器66、並びにPWM電流偏差補償器67をさらに有して、これらの回路からの出力を第三下位電圧制御回路100内で第三電圧制御器104からの出力ベクトルに加算することもできる。この場合、図3と同様に図7の三相電圧型交直変換回路40は、図8又は図9で説明した三相電圧型交直変換回路40−1,40−2を適用するものとする。
以上説明したように、図6及び図7の三相電圧型交直変換装置13は、内部等価インピーダンスを持つことから電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、周波数制御回路50、第三上位電圧制御回路110及び第三下位電圧制御回路100を備えるため、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律平行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。