JP4661098B2 - 軟質材加工用切削工具 - Google Patents
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このようなパッドコンディショナーは、その基材の表面を、軸線回りに回転させられているパッドの表面に対して一定の荷重で押し当てることにより、この基材がパッドの回転運動にともなって回転運動を行い、パッドの表面に圧入されている凸部によってパッドの表面を切削して加工・調整していくものである。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、新たに生じるパッド表面までも確実に加工・調整して、効率的に精度良くパッド表面の加工・調整を行うことができる軟質材加工用切削工具を提供することを目的としている。
したがって、主切刃稜線による主たる切削で生じた新たなパッド表面までも補助切刃稜線によって確実に加工・調整して、効率的に精度良くパッド表面の加工・調整を行うことができるため、このようなパッドによって研磨されるウエハに対して所望の面粗さ及び平坦度を付与して、製品としての歩留まりを向上させることができる。
また、本発明においては、前記基材の表面に、主台座が上方に突出して形成されているとともにこの主台座の上面に前記主切刃凸部が上方に突出して形成され、前記基材の表面に、補助台座が上方に突出して形成されているとともにこの補助台座の上面に前記補助切刃凸部が上方に突出して形成されている。
このような構成であるため、被削材としてのパッドの表面に対して、主切刃凸部や補助切刃凸部が接地して圧入したときに、主切刃凸部や補助切刃凸部の圧入によって生じた凹部状の変形領域の周囲を押さえつけて拘束することになるので、これら主切刃凸部及び補助切刃凸部の圧入によってパッド表面に生じた凹部状の変形領域の周囲すべてを、主台座の上面における周縁領域及び補助台座の上面における周縁領域によって押さえつけて拘束することができるので、主切刃凸部の主切刃稜線や補助切刃凸部の補助切刃稜線をパッド表面に対して効率的に作用させることができる。
さらに、上記補助切刃稜線による新たに生じたパッド表面の加工・調整作用を十分に得るためには、前記主切刃凸部の個数の前記補助切刃凸部の個数に対する割合が、0.125〜1.0の範囲に設定されていることが好ましい。
このとき、気相合成ダイヤモンドのコーティング層の層厚は、0.5μm〜50μmの範囲に設定されていることが好ましく、この層厚が0.5μmより小さくなると、主切刃稜線に与えられる耐摩耗性が十分ではなく、寿命が低下してしまうおそれがあり、一方、コーティング層の層厚が50μmより大きくなると、コーティング層と下地との熱膨張係数差によりクラックが生じやすくなって脆くなるおそれがある。
さらに、このとき、気相合成ダイヤモンドのコーティング層は、主切刃稜線部分だけに形成されているのでもよいが、主切刃凸部や補助切刃凸部を含むように基材の表面の全面に亘って形成されていることが好ましく、このような構成とした場合には、たとえ溶出による汚染のおそれがある材料から基材を構成したとしても、この基材の表面の全面がコーティングされていることによって、溶出による汚染を防止することができ、しかも、主切刃凸部や補助切刃凸部の強度をより向上させることが可能となる。
このとき、上記のセラミックスは、主切刃稜線部分だけを構成しているのでもよいが、主切刃凸部や補助切刃凸部を含むように基材における少なくとも表面の全面を構成していることが好ましく、このような場合には、基材の溶出による汚染を防止することができ、しかも、主切刃凸部や補助切刃凸部の強度をより向上させることが可能となる。
本第1実施形態による軟質材加工用切削工具の基材10は、軸線Oを中心として、軸線O回りに回転(回転方向T)される略円板状をなすものである。
これら複数の主台座20は、それぞれ同一形状の略正四角柱状を呈しており、略正四角形面状をなす上面21の全面が、基材10の表面11と略平行な平坦面とされるとともに、基材10の表面11からの高さH1が例えば0.25mmに設定されている。
なお、これら複数の主切刃凸部23も、主台座20と同様にそれぞれ同一形状の略正四角柱状を呈しているため、略正四角形面状をなす主台座20の上面21は、実際には、その周縁領域のみから構成された略正四角リング面状をなしている。
また、主切刃凸部23の略正四角形面状をなす上面24の全面が、基材10の表面11と略平行な平坦面とされるとともに、基材10の表面11からの高さHが0.20mm〜0.50mmの範囲に設定されており、本第1実施形態では、主切刃凸部23の上面24の高さHが例えば0.30mmに設定されている(主台座20の上面21からの高さH2が例えば0.05mmに設定されている)。
つまり、この主切刃凸部23の主切刃稜線25の高さHが0.20mm〜050mmの範囲に設定されているのであり、本第1実施形態では、主切刃凸部23の主切刃稜線25の高さHが例えば0.30mmに設定されている(主台座20の上面21からの高さH2が例えば0.05mmに設定されている)。
これら複数の補助台座30は、それぞれ同一形状の略正四角柱状を呈しており、略正四角形面状をなす上面31の全面が、基材10の表面11と略平行な平坦面とされるとともに、基材10の表面11からの高さh1が例えば0.20mmに設定されている。
なお、これら複数の補助切刃凸部33も、補助台座30と同様にそれぞれ同一形状の略正四角柱状を呈しているため、略正四角形面状をなす補助台座30の上面31は、実際には、その周縁領域のみから構成された略正四角リング面状をなしている。
また、補助切刃凸部33の略正四角形面状をなす上面34の全面が、基材10の表面11と略平行な平坦面とされるとともに、基材10の表面11からの高さhが主切刃凸部23の上面24の高さH(基材10の表面11からの高さH)に対して60%〜95%の範囲に設定されており、本第1実施形態では、補助切刃凸部33の上面34の高さhが例えば0.25mmに設定されている(補助台座30の上面31からの高さh2が例えば0.05mmに設定されている)。
つまり、この補助切刃凸部33の補助切刃稜線35の高さhが主切刃凸部23の主切刃稜線25の高さHに対して60%〜95%の範囲に設定されているのであり、本第1実施形態では、補助切刃凸部33の補助切刃稜線35の高さhが例えば0.25mm(=主切刃凸部23の主切刃稜線25の高さHに対して80%)に設定されている(補助台座30の上面31からの高さh2が例えば0.05mmに設定されている)。
これにより、少なくとも主切刃凸部23における主切刃稜線25部分が、ビッカース硬さ13GPa以上の硬さを有する耐摩耗性材料で構成されることとなる。
(1)
4a族、5a族、6a族のうちのいずれかの金属もしくはシリコンの炭化物、窒化物もしくは炭窒化物、
4a族、5a族、6a族のうちのいずれかの金属とシリコンとの炭化物、窒化物もしくは炭窒化物、
シリコン、
のうちのいずれか1種、または、これらの複合体。
(2)
4a族、5a族、6a族のうちのいずれかの金属もしくはシリコンの炭化物、窒化物もしくは炭窒化物のうちの少なくとも1種と、
鉄、ニッケルもしくはコバルトのうちの少なくとも1種との複合体よりなる超硬合金。
(3)
シリコンもしくはアルミニウムの窒化物もしくは酸化物のうちのいずれか1種、
または、これらの複合体。
そして、組み付けられた状態の軟質材加工用工具は、その基材10の表面11を、軸線回りに回転させられている多孔性の樹脂・ゴム・(独立気泡を有する)ポリウレタンラバーなどからなるパッドの表面に対して一定の荷重で押し当てることにより、基材10がパッドの回転運動にともなって軸線O回りの回転運動(回転方向T)を行う。
なお、主切刃稜線25及び補助切刃稜線35にて生成される切屑は、主切刃凸部23及び補助切刃凸部33同士の間に位置する隙間や主台座20及び補助台座30同士の間に位置する隙間などを介して排出される。
そのため、主切刃稜線25による主たる切削で生じたパッド表面までも補助切刃稜線35によって確実に加工・調整して、効率的に精度良くパッド表面の加工・調整を行うことができることになり、このようなパッドによって研磨された後のウエハに対して所望の面粗さ及び平坦度を付与して、製品としての歩留まりを向上させることができる。
しかしながら、あまり数多くの種類の高さhの補助切刃稜線35が存在していたとしても、それによって得られる上述の効果が必ず向上するわけではないため、補助切刃稜線35の高さhは例えば1種類〜2種類程度にしておくのが適当である。
一方、主切刃稜線25の高さHが0.50mmよりも大きくなると、この主切刃稜線25の強度が損なわれてしまうおそれがあり、また、補助切刃稜線35の高さhが主切刃稜線25の高さHに対する割合が95%よりも大きくなると、主切刃稜線25による切削で新たに生じたパッド表面を補助切刃稜線35によって加工・調整することができなくなってしまうおそれがある。
なお、主切刃稜線25の高さHは0.25mm〜0.40mmの範囲に設定されていることがより好ましく、補助切刃稜線35の高さhの主切刃稜線25の高さHに対する割合は75%〜95%の範囲に設定されていることがより好ましい。
ここで、この個数割合が0.125よりも小さくなると、補助切刃凸部33の個数が必要以上に多くなりすぎるおそれがあり、逆に、この個数割合が1.0よりも大きくなると、補助切刃凸部33の個数が少なくなりすぎて、新たに生じたパッド表面の加工・調整を十分に行うことができなくなってしまうおそれがある。
なお、主切刃凸部23の個数の補助切刃凸部33の個数に対する割合は0.2〜1.0の範囲に設定されていることがより好ましい。
そのため、パッドの表面に対して主切刃凸部23及び補助切刃凸部33が接地して圧入したときには、これら主切刃凸部23及び補助切刃凸部33の圧入によってパッド表面に生じた凹部状の変形領域の周囲すべてを、主台座20の上面21における周縁領域及び補助台座30の上面31における周縁領域によって押さえつけて拘束することができるので、主切刃凸部23の主切刃稜線25及び補助切刃凸部33の補助切刃稜線35をパッド表面に対して効率的に作用させることが可能となっている。
ここで、この層厚tが、0.5μmより小さくなると、主切刃稜線25及び補助切刃稜線35に与えられる耐摩耗性が十分ではなくなり、一方、層厚tが、50μmより大きくなると、コーティング層と下地との熱膨張係数差によりクラックが生じやすくなって脆くなるおそれがある。
なお、この層厚tは、5μm〜30μmの範囲に設定されていることがより好ましい。
しかしながら、本第1実施形態による軟質材加工用工具では、その基材10の表面11の全面に亘って、気相合成ダイヤモンド12のコーティング層が形成されていることから、たとえ、(2)のような、溶出による汚染のおそれがある材料を用いて基材10を構成したとしても、そのような汚染の心配が生じることがない。
このような場合であっても、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。ここで、基材10を構成する材料であるセラミックスに関しては、主台座20及び主切刃凸部23や補助台座30及び補助切刃凸部33の形成しやすさ、実用に耐えるための機械的特性、寿命(耐摩耗性)や化学的安定性等の観点から、例えば、SiC、SiNやアルミナなどが挙げられる。
例えば、具体例として、以下に示す本発明の第2〜第11実施形態のようなものであってもよい(上述した第1実施形態と同様の部分については説明を省略する)。
図5に示す本発明の第4実施形態では、基材10の表面11における周縁領域に、複数の主二段突起23Aと複数の補助二段突起33Aとが、周方向で略等間隔かつ交互に配置された3列を構成するように形成されている。
図7に示す本発明の第6実施形態では、基材10の表面11における周縁領域に、複数の主二段突起23Aが、周方向で略等間隔に配置された1列を構成するように形成され、かつ、複数の補助二段突起33Aが、上記複数の主二段突起23Aのそれぞれの周囲を例えば6つずつで囲むように形成されている。
図10に示す本発明の第9実施形態では、基材10の表面11における周縁領域に、複数の主二段突起23Aが、周方向で略等間隔に配置された1列を構成するように形成され、かつ、複数の補助二段突起33Aと複数の補助二段突起33Bとが、周方向で略等間隔かつ交互に配列された2列を構成するとともに、上記複数の主二段突起23Aのそれぞれに対応する径方向内周側に位置するように形成されている。
図12に示す本発明の第11実施形態では、基材10の表面11における周縁領域に、複数の主二段突起23Aが、所定の一方向に配列された複数列を構成するように形成され、かつ、複数の補助二段突起33Aが、上記一方向に配列された複数列を構成するように形成され、かつ、複数の補助二段突起33Bが、上記一方向に配列された複数列を構成するように形成されていて、さらに、これら主二段突起23Aがなす複数列と補助二段突起33Aがなす複数列と補助二段突起33Bがなす複数列とが交互に配置されている。
また、各実施形態においては、主台座20の上面21及び主切刃凸部23の上面24や補助台座30の上面31及び補助切刃凸部33の上面34に存在する平坦面が、基材10の表面11と略平行なものとなっているが、基材10の表面11に対して多少の傾斜を有するようなものであってもよい。
さらに、各実施形態では、主切刃凸部23及び主台座20からなる二段突起や補助切刃凸部33及び補助台座30からなる二段突起が、基材10の表面11から突出形成されているが、これに限定されることはなく、例えば主切刃凸部23及び補助切刃凸部33のうちの少なくとも一方が、直接、基材10の表面11から突出形成されていても構わない。
〈試験1〉
試験工具として、基材10の表面11に主二段突起(主切刃凸部23及び主台座20)が120個形成され、表面11の全面が気相合成ダイヤモンド12でコーティングされた軟質材加工用切削工具(比較例)と、基材10の表面11に主二段突起と補助二段突起(補助切刃凸部33及び補助台座30)あるいは補助一段突起(補助切刃凸部33)とがそれぞれ120個ずつ形成され、表面11の全面が気相合成ダイヤモンド12でコーティングされた軟質材加工用切削工具(実施例1〜5)とを用意した。
比較例及び実施例に共通して、略円板状をなす基材10の直径を4インチとし、主二段突起、補助二段突起、補助一段突起の形状及び寸法(単位mm)を以下の表1に示すようにした。
次に、1.00μm以下の欠陥数については、実施例1〜5で検出された欠陥数が比較例よりも減少しており、とくに実施例1,3,4では欠陥数が比較例の1/2程度まで大幅に減少している。これは、補助切刃稜線35による作用でパッド屑、研磨屑やスラリー残渣が除去されたこと、またパッド表面の平滑性が向上することによりパッド表面に残留するそれら加工屑が減少すること、等に起因した効果である。
次に、膜厚分布についても、欠陥数の傾向と同様に、実施例1〜5で効果が見られ、とくに実施例1,3,4で優れた効果が見られた。これは、補助切刃稜線35によるパッド表面の調整でこのパッド表面の平坦性が改善されたことに起因した効果である。
以上の結果から、本発明の一例である実施例1〜5(とくに補助切刃稜線35の高さhが主切刃稜線25の高さHの60%〜95%の範囲に設定された実施例1,3,4)において、補助切刃稜線35によるパッド表面の調整効果で研磨レートの低下が生じるが実用上問題なく、研磨屑、スラリー残渣の除去とパッド表面の平滑性向上による欠陥の抑制、パッド表面の平坦性の改善による膜厚分布の抑制などの効果を得ることができるのが分かる。
試験工具として、基材10の表面11に主二段突起が120個形成され、表面11の全面が気相合成ダイヤモンド12でコーティングされた軟質材加工用切削工具(比較例)と、基材10の表面11に主二段突起と少なくとも1種類の高さhの補助切刃稜線35を有する補助二段突起あるいは補助一段突起とがそれぞれ120個ずつ形成され、表面11の全面が気相合成ダイヤモンド12でコーティングされた軟質材加工用切削工具(実施例1〜8)とを用意した。
比較例及び実施例に共通して、略円板状をなす基材10の直径を4インチとし、主二段突起、補助二段突起、補助一段突起の形状及び寸法(単位mm)を以下の表3に示すようにした。
11 基材の表面
20 主台座
23 主切刃凸部
25 主切刃稜線
30 補助台座
33 補助切刃凸部
35 補助切刃稜線
Claims (9)
- 基材の表面に、複数の主台座が上方に突出して形成されているとともに、これら主台座のそれぞれの上面における周辺領域すべてを除いた中央領域に、主切刃稜線を有する1つの主切刃凸部が上方に突出して形成されることにより、前記主台座と該主台座よりも外径の小さな前記主切刃凸部とが同軸に接続された複数の主二段突起が形成され、
前記基材の表面に、複数の補助台座が上方に突出して形成されているとともに、これら補助台座のそれぞれの上面における周辺領域すべてを除いた中央領域に、前記主切刃稜線よりも低い高さの補助切刃稜線を有する1つの補助切刃凸部が上方に突出して形成されることにより、前記補助台座と該補助台座よりも外径の小さな前記補助切刃凸部とが同軸に接続された複数の補助二段突起が形成されていることを特徴とする軟質材加工用切削工具。 - 請求項1に記載の軟質材加工用切削工具であって、
前記主切刃稜線の高さが、0.20mm〜0.50mmの範囲に設定されていることを特徴とする軟質材加工用切削工具。 - 請求項1または請求項2に記載の軟質材加工用切削工具であって、
前記補助切刃稜線の高さの前記主切刃稜線の高さに対する割合が、60%〜95%の範囲に設定されていることを特徴とする軟質材加工用切削工具。 - 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の軟質材加工用切削工具であって、
前記主切刃凸部の個数の前記補助切刃凸部の個数に対する割合が、0.125〜1.0の範囲に設定されていることを特徴とする軟質材加工用切削工具。 - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の軟質材加工用切削工具であって、
少なくとも前記主切刃稜線部分が、耐摩耗性材料で構成されていることを特徴とする軟質材加工用切削工具。 - 請求項5に記載の軟質材加工用切削工具であって、
少なくとも前記主切刃稜線部分が、気相合成ダイヤモンドでコーティングされていることを特徴とする軟質材加工用切削工具。 - 請求項6に記載の軟質材加工用切削工具であって、
前記基材の表面の全面が、前記気相合成ダイヤモンドでコーティングされていることを特徴とする軟質材加工用切削工具。 - 請求項5に記載の軟質材加工用切削工具であって、
少なくとも前記主切刃稜線部分が、セラミックスで構成されていることを特徴とする軟質材加工用切削工具。 - 請求項8に記載の軟質材加工用切削工具であって、
前記基材の少なくとも表面の全面が、前記セラミックスで構成されていることを特徴とする軟質材加工用切削工具。
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