JP2007290109A - 軟質材加工用回転工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】移動される被加工材に対して回転工具を押し当てて加工する場合であっても、安定的に被加工材の表面を加工・調整できる軟質材加工用回転工具を提供する。
【解決手段】軟質材よりなる被加工材が移動され、この被加工材に対して加工を施す軟質材加工用回転工具であって、基板の表面に切刃凸部14が上方に突出するように2つ以上形成され、切刃凸部14の上面は傾斜面15とされ、この傾斜面15の辺稜部には切刃稜線部16が形成され、切刃凸部14のうち一部の切刃凸部14の傾斜面15が、少なくとも前記基板の回転の周方向の一方を向くように配置され、残りの切刃凸部14のうち少なくとも一部の切刃凸部14の傾斜面15が、少なくとも前記周方向の他方を向くように配置されていることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、多孔性の樹脂・ゴム・ポリウレタンラバー等からなるパッド、例えば、半導体ウエハの研磨用パッド等の軟質材の表面を加工・調整するための回転工具に関する。
近年、半導体産業の進展とともに、金属、半導体、セラミックスなどの表面を高精度に仕上げる加工方法の必要性が高まっており、特に、半導体ウエハでは、その集積度の向上とともにナノメーター(1/1000ミクロン)オーダーの表面仕上げが要求されてきている。このような高精度の表面仕上げに対応するために、半導体ウエハに対して、多孔性のパッド(研磨布)を用いたCMP研磨(ケミカルメカニカルポリッシュ)が一般的に行われている。CMP研磨とは、砥粒等を用いる機械的な研磨と、アルカリ液、酸性液等でエッチングする化学的研磨を組み合わせたものである。
半導体ウエハ等の研磨に用いられるパッドは、研磨時間が経過していくにつれ、目詰まりや圧縮変形を生じ、その表面状態が次第に変化していく。すると、研磨速度の低下や不均一研磨等の好ましくない現象が生じるので、パッドの表面を定期的に加工・調整することにより、パッドの表面状態を一定に保って、良好な研磨状態を維持する工夫が行われている。
このパッドを加工・調整するために用いられる軟質材加工用回転工具の一例として、特許文献1及び2に開示されているように、基板の表面に、上方に突出する複数の切刃凸部が形成されたものが提供されている。
このような軟質材加工用回転工具は、その基板の表面を、軸線回りに回転させられているパッドの表面に対して一定の荷重で押し当てることにより、この基板がパッドの回転運動にともなって回転運動を行い、パッドの表面に圧入されている切刃凸部によってパッドの表面を加工・調整していくものである。
ここで、パッドはウレタンフォームなどの軟質材で構成されており、回転工具を押し付けた際にパッドの表面が変形して逃げてしまうために、切刃凸部による加工が十分に行うことができないといった問題があった。また、切刃凸部をパッドの表面に無理やり押し付けて加工した場合には、パッドの表面がつぶれるように加工されて、パッド表面の空孔部がつぶれてしまい、半導体ウエハの研磨に使用できなくなってしまうといった問題があった。
そこで、特許文献3では、切刃凸部を方向性のある形状とし、回転工具の基板の周方向の一方(工具回転方向前方側)に向けてすべての切刃凸部を一定の配置としたものが開示されている。この回転工具では、切刃凸部の工具回転方向前方側を向く面が、基板側に向かうにしたがい漸次工具回転方向後方側へ後退するように傾斜しており、切刃凸部が工具回転方向前方側から接触するパッド表面の深い位置まで入り込める形状とされているので、パッドを効率良く加工できるものである。
特開平7−328937号公報 特開平10−44023号公報 特開2004−34266号公報
ところで、特許文献3に示された軟質材加工用回転工具を使用したパッドコンディショナーでは、回転工具が軸線回りに回転されているとともに被加工材であるパッド自体も回転移動しており、パッドと回転工具との接触方向はこれらの回転方向及び回転速度によって変化することになる。ここで、図12から図14に、被加工材であるパッドと回転工具の位置関係の一例を示す。
図12に示すように、前述のパッドコンディショナーでは、大径のパッドPがパッド回転方向Rに回転しているところに、工具回転方向Tに回転される回転工具1の切刃凸部2を押し付けるようにして加工が行われる。パッドPの中心付近(図12のX−X断面付近)では、工具回転方向Tとパッド回転方向Rとが互いに相対するように向けられるので、図13に示すように、パッドPは工具回転方向T前方側から接触することになり、切刃凸部2によってパッドPを効率良く加工することができる。
一方、パッドPの外周側(図12のY−Y断面付近)では、工具回転方向Tとパッド回転方向Rとが同一方向となる。ここで、パッドPの回転速度が回転工具1の回転速度と同じとなってパッドPと回転工具1との相対速度がゼロとなった場合にはパッドPを回転工具1にて加工することができなくなってしまうので、相対速度がゼロとならないように、パッドPの回転速度と回転工具1の回転速度とに所定の速度差が生じるように設定されている。
しかしながら、回転工具1の回転速度をパッドPの回転速度より速くしても、パッドPの内周側のような相対速度を得ることができず、また、パッドPの回転速度が回転工具1の回転速度よりも速いと、図14に示すように、パッドPが工具回転方向T後方側から切刃凸部2に接触することとなり、切刃凸部2の形状をパッドP深くまで入り込む形状に形成したにもかかわらず、パッドPの外周側では、パッドPの加工効率が低下することとなる。
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、移動される被加工材に対して回転工具を押し当てて加工する場合であっても、安定的に被加工材の表面を加工・調整できる軟質材加工用回転工具を提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するために、この発明は、軟質材よりなる被加工材が移動され、この被加工材に対して加工を施す軟質材加工用回転工具であって、基板の表面には、切刃凸部が上方に突出するように2つ以上形成され、該切刃凸部の上面は、前記基板の底面に平行な平面に対して傾斜した傾斜面とされ、該傾斜面の辺稜部には切刃稜線部が形成されており、前記切刃凸部のうち一部の切刃凸部の前記傾斜面が、少なくとも前記基板の回転の周方向の一方を向くように配置され、残りの前記切刃凸部のうち少なくとも一部の切刃凸部の前記傾斜面が、少なくとも前記周方向の他方を向くように配置されていることを特徴としている。
この構成の軟質材加工用回転工具では、切刃凸部の上面が基板の底面に平行な平面に対して傾斜した傾斜面とされ、この傾斜面の辺稜部には切刃稜線部が形成されており、この傾斜面が、少なくとも基板の回転の周方向、つまり基板の回転軌跡がなす円の径方向ではない方向を向くように配置されているので、切刃凸部の上面の最も高く突出した部分(突端部)側から被加工材が接触する際には、被加工材表面に切刃凸部が押し込まれることにより、軟質材で構成された被加工材は、前記突端部では大きく凹むように弾性変形させられ、前記突端部に連なる上面では前記傾斜面に沿うように弾性復帰されることになる。したがって、前記突端部に形成された切刃稜線部が被加工材に深く入り込むこととなり、被加工材を効率良く加工することができる。
そして、このような切刃凸部が2つ以上形成され、この切刃凸部のうちの一部の切刃凸部の傾斜面が基板回転の周方向の一方を向き、残りの切刃凸部のうち少なくとも一部の切刃凸部の傾斜面が前記周方向の他方を向くように配置されているので、被加工材が工具回転方向(前記周方向の一方)と反対側から接触する場合でも、傾斜面が回転方向前方側に向けられたいずれか一部の切刃凸部が被加工材に深く入りこんで、被加工材を効率良く加工することができる。したがって、移動する被加工材に対して回転工具が工具回転方向とは反対側から接触された場合でも、被加工材を効率良く加工することができ、加工が不十分な部分をなくすことができる。
なお、切刃凸部が被加工材に圧入され、傾斜面の辺稜部のうち最も低い部分が被加工材と接触している状態では、前記辺稜部の周辺においても傾斜面に沿って被加工材の弾性変形及び弾性復帰が生ずる。したがって、前記傾斜面の辺稜部のうち最も低い部分に形成された切刃稜線部によっても、加工効率は低いながらも被加工材を加工することができる。
ここで、切刃凸部の上面がなす傾斜面と基板と平行な平面とがなす角度θが5°よりも小さい場合には、傾斜面に沿って被加工材が変形した場合でも、切刃凸部を被加工材の深くまで入り込ませることができず、被加工材を効率良く加工することができなくなってしまうおそれがあり、前記角度θが40°よりも大きい場合には、切刃凸部自体の剛性が不足して、切刃凸部が欠損したり変形したりするおそれがある。したがって、本発明においては、切刃凸部の上面がなす傾斜面と基板に平行な平面とがなす角度θは、5°≦θ≦40°の範囲となるように規定するのが好ましい。
なお、このような効果をさらに確実に奏功せしめるには、切刃凸部の上面がなす傾斜面と基板と平行な平面とがなす角度θは、5°≦θ≦30°の範囲となるように設定することがより好ましい。
また、これら傾斜面が周方向の一方を向く切刃凸部と他方を向く切刃凸部は、前記傾斜面が傾斜する方向が前記周方向を中心として±45°の範囲内となるように配置することが好ましい。
さらに、前記傾斜面が前記周方向の一方を向く切刃凸部、および前記周方向の他方を向く切刃凸部は、それぞれ基板に形成されたすべての切刃凸部のうちの20%以上であることが好ましい。
また、前記切刃凸部を、前記基板から上方に突出された台座部の上面に配置することにより、回転工具を被加工材に押し付けた際に、被加工材が台座部によっても押さえつけられることになり、切刃凸部を被加工材のより深い位置まで安定して入り込ませることができ、回転工具による加工をさらに安定して効率良く行うことができる。
また、前記基板の前記表面に形成された作用面における前記切刃凸部の分布密度を、2.3から9.2個/cm2の範囲内となるように設定することにより、被加工材に対して作用する切刃凸部の数が確保されて効率良く加工することができるとともに、切刃凸部同士の間隔が確保されてそれぞれの切刃凸部を被加工材に深く入り込ませることができる。
なお、本願における作用面とは、前記表面において、回転工具の回転軸線中心から最も離間している切刃凸部に外接する回転工具の軸線を中心とした円と、回転工具の軸線中心に最も近接している切刃凸部に内接する回転工具の軸線を中心とした円とに挟まれた円環状の面である。
また、前記切刃凸部を、耐摩耗材料で構成することにより、切刃凸部の耐摩耗性を向上でき、長期間に亘って被加工材を安定して加工することができ、この回転工具の寿命を長くすることができる。ここで、耐摩耗性材料の具体例としては、炭化けい素(SiC)、窒化けい素(SiN)などが挙げられる。
また、前記切刃凸部の表面を、ダイヤモンド膜により被覆することにより、切刃凸部の耐摩耗性をさらに向上することができ、この回転工具の寿命をさらに長くすることができる。
また、前記切刃凸部を、前記底面と平行とされた基準面の上に形成し、前記切刃凸部の前記基準面からの高さを0.03mm以上とすることにより、切刃稜線部が被加工材に入り込む深さを十分に確保でき、パッドの加工を効率良く行うことができる。また、切刃凸部の前記高さが0.15mmを超えた場合には、高さの変化によるパッド加工の効率向上が認められないため、0.15mm以下とすることが好ましい。
また、前記切刃凸部において、前記傾斜面の全辺稜部を前記切刃稜線部とし、前記基板の前記表面に形成されたすべての前記切刃稜線部の長さの合計である総長さを、5mmから500mmの範囲内とすることにより、切刃稜線部がパッドに適度な圧力で押し付けられ、パッドの加工を効率良く行うことができる。
さらに、前記総長さを、20mmから360mmの範囲に設定すると、より効率良く加工することが可能となり、高いパッド除去レートを確保することができる。
また、前記切刃凸部の上面に、傾斜方向に沿った溝を形成することにより、スラリー(研磨液)及び削り屑が、この溝を通じて排出され、パッド表面の残留物の除去がスムーズに行うことができ、このパッドを使用した際のウェハ研磨レート及びウェハ研磨の均一性が向上する。また、スラリー(研磨液)の流れがスムーズになり、切刃凸部への削り屑の付着が抑制され、加工効率の低下を防止できる。
前記溝の幅を10μmから200μmの範囲内としてもよい。また、前記溝の深を10μmから100μmの範囲内としてもよい。さらに、前記溝の本数を1から10本の範囲内としてもよい。
このように溝の幅、深さ、本数を規定することにより、スラリーや削り屑が流れる空間を確保できるとともに、切刃凸部の強度を確保することができる。
また、前記の軟質材加工用回転工具をCMP研磨用パッドを加工・調整してコンディショニングするパッドコンディショナーに使用した場合には、パッドの表面全体を安定して加工することができ、パッド表面の調整を効率良く確実に行うことができる。
このように、本発明によれば、移動される被加工材に対して回転工具を押し当てて加工する場合であっても、安定的に被加工材の表面を加工・調整できる軟質材加工用回転工具を提供することができる。
本発明の第1の実施の形態について説明する。図1から図3に第1の実施形態である軟質材加工用回転工具を示す。
軟質材加工用回転工具の基板11は、SiC(炭化けい素)で構成され、軸線を中心として、工具回転方向Tに向けて回転される概略円板状をなしており、互いに平行な、かつ、それぞれ前記軸線に対して直交する表面11A及び底面11Bを有している。基板11の表面11Aにおける中央領域を除いた径方向外周側の周縁領域には、上方に向けて突出する少なくともひとつの台座部12が形成されており、本実施形態では、図1に示すように、上方に向けて突出する複数の台座部12が周方向で略等間隔に配置されるとともに千鳥配置となるように複数列形成されている。
これらの複数の台座部12は、それぞれ同一形状の正四角柱状を呈しており、略正方形面状をなす上面が台座面13とされ、台座面13の全面が基板11の底面11Bと略平行な平坦面とされている。これら複数の台座部12の台座面13の高さ(基板11の表面11Aからの高さ)は、互いに等しくされている。
また、複数の台座部12のそれぞれの台座面13(平坦面)において、その周縁領域(台座部12における台座面13と周面(側面)とが交差してできる略正方形状の交差稜線14を含むような周縁領域)のうち少なくとも工具回転方向T前方側(略円板状をなす基板11の軸線から径方向外周側へ向かって延びる直線よりも前方側)及び後方側(略円板状をなす基板11の軸線から径方向外周側へ向かって延びる直線よりも後方側)の領域を除いた領域に、上方に突出する少なくともひとつの切刃凸部14が形成されている。
本実施形態では、図3に示すように、複数の台座部12のそれぞれの台座面13において、その周縁領域のうちの工具回転方向T前方側及び後方側だけでなく、周縁領域のうちの(基板11の)径方向内周側及び外周側の領域を含む周縁領域すべてを除いた中央領域に、上方に突出するひとつの切刃凸部14が形成されている。
なお、これら複数の切刃凸部14も、台座部12と同様にそれぞれ同一形状の正四角柱状を呈しているため、略正方形断面状をなす台座部12の台座面13は、実際には、その周縁領域のみから構成された略正四角リング面状をなしている。
このように、ひとつの台座部12のそれぞれに対して、その台座面13の中央領域にひとつの切刃凸部14が上方に突出して形成されているため、これら台座部12及び切刃凸部14は、外径の大きな略正四角柱状をなす台座部12と外径の小さな略正四角柱状をなす切刃凸部14とが同軸に接続されたような2段突起状をなしており、基板11の表面11Aには、複数の台座部12と同じ数だけ、複数の切刃凸部14が存在することになる。
ここで、これらの切刃凸部14は、基板11の表面11Aに形成された作用面Sにおいて、切刃凸部14の分布密度が2.3から9.2個/cmとなるように配置されている。なお、作用面Sとは、基板11の軸線中心から最も離間している切刃凸部14と外接する前記軸線を中心とした円C1と、前記軸線中心に最も近接している切刃凸部14と内接する前記軸線を中心とした円C2とに挟まれた円環状の面である。
そして、切刃凸部14の上面部15は、図2及び図3に示すように、基板11の底面11Bに平行な平面に対して傾斜した傾斜面とされており、この上面部15がなす傾斜面と基板11の底面11Bに平行な平面とがなす角度θは、5°≦θ≦40°となるように、より望ましくは5°≦θ≦30°となるように設定されている。
また、切刃凸部14の4つの側面は台座面13から略垂直に延びており、この4つの側面と上面部15(傾斜面)との交差稜線、つまり上面部15の全ての辺稜部に切刃稜線部16が形成されている。
切刃凸部14は台座面13の上に形成されており、全ての切刃凸部14の台座面13からの高さは互いに等しくされており、台座面13の表面11Aからの高さが互いに等しくされていることから、全ての切刃凸部14の表面11Aからの高さも互いに等しくされている。なお、本実施形態では、台座面13が基準面とされ、この基準面(台座面13)からの切刃凸部14の高さが0.03mmから0.15mmの範囲内となるように設定されている。
複数形成された切刃凸部14のうちの一部の切刃凸部14は、傾斜面とされた上面部15を、少なくとも基板11の周方向の一方側、つまり径方向ではない方向を向くように配置され、残りの切刃凸部14のうちの少なくとも一部の切刃凸部14が、少なくとも基板11の周方向の他方側を向くように配置されており、本実施形態においては、図2に示すように、となりあう切刃凸部14がそれぞれ反対側を向くように、かつ、基板11の周方向に沿って上面部15が向くように配置されている。つまり、上面部15が周方向の一方側を向く切刃凸部14と他方側を向く切刃凸部14とが、各列において同数ずつ交互に配設されているのである。
また、基板11の表面11Aと一体に形成された切刃凸部14における少なくとも上面部15には、気相合成ダイヤモンド膜17がコーティングされており、本実施形態においては、複数の切刃凸部14を含む基板11の表面11Aの全面が、気相合成ダイヤモンド膜17でコーティングされ、その膜厚は0.5μmから50μmとされている。
このような気相合成ダイヤモンド膜17は、前記のような複数の台座部12と複数の切刃凸部14とを有する基板11に対して、例えば、マイクロ波プラズマを利用する方法や熱フィラメントを利用する方法等の公知の方法を用いることにより、複数の台座部12及び複数の切刃凸部14とを含む基板11の表面11Aの全面に亘って形成される。
このように構成された軟質材加工用回転工具は、基板11の底面11Bにステンレスや樹脂等からなる板材が貼り付けられたり、基板11がステンレス等の板材に形成された凹みに焼き嵌めされたりして組み付けられてから、実際の加工に用いられることになる。
そして、組み付けられた状態の軟質材加工用回転工具は、その基板11の表面11Aを、パッド回転方向Rに向けて回転させられている多孔性の樹脂・ゴム・(独立気泡を有する)ポリウレタンラバー等からなるパッドPの表面に略平行に対向させて一定の荷重で押し当てることにより、基板11がパッドPの回転運動にともなって工具回転方向Tに向けて前記表面11A及び底面11Bに垂直な回転軸線回りに回転運動を行い、パッドP表面に接地して圧入している複数の切刃凸部14に形成された切刃稜線部16で、被加工材としてのパッドP表面を加工する。
実際には、切刃稜線部16をコーティングしている気相合成ダイヤモンド膜17が、パッドPの表面を加工することになる。このように切刃稜線部16(気相合成ダイヤモンド膜17)によってパッドPが加工された際に生成する加工屑は、切刃凸部14同士の間に位置する隙間や台座部12同士の間に位置する隙間等から排出される。
なお、パッドPの回転速度が軟質材加工用回転工具の回転速度と同じとなってパッドPと軟質材加工用回転工具との相対速度がゼロとなると、パッドPを加工することができなくなってしまうので、パッドPの回転速度は、軟質材加工用回転工具の回転速度と所定の速度差が生じるように設定されている。
前記構成の軟質材加工用回転工具では、切刃凸部14の上面部15が傾斜面とされ、この上面部15(傾斜面)の辺稜部に切刃稜線部16が形成されており、上面部15が基板11の周方向を向くように配置されているので、切刃凸部14の前方側(最も高く突出した部分側)からパッドPが接触するときには、図4に示すように、パッドPの表面に切刃凸部14が押し込まれて、パッドPが、切刃凸部14のうち最も高く突出された部分(突端部)が押し当てられた部分では大きく凹むように弾性変形させられ、切刃凸部14の前記突端部に連なる上面部15では、上面部15がなす傾斜面に沿うように弾性復帰されている。よって、切刃凸部14がパッドPに深く入り込むこととなり、パッドPを効率良く加工することができる。
そして、切刃凸部14が複数形成され、切刃凸部14のうちの一部の切刃凸部14は、切刃凸部14の上面部15が基板11の周方向の一方を向くように配置されるとともに、残りの切刃凸部14は、その上面部15が周方向の他方を向くように配置されているので、パッドPが高速で回転されて工具回転方向T(基板の周方向の一方)の後方側からパッドPが接触する場合でも、上面部15が工具回転方向T前方側(基板の周方向の一方)に向けられた切刃凸部14がパッドPに深く入りこんでパッドPを加工することができる。つまり、パッド回転方向Rに回転移動されるパッドPが回転工具に対して工具回転方向T後方側から接触する場合でも、いずれかの一部の切刃凸部14は、前記突端部パッド回転方向Rに対向するように配置され、この切刃凸部14がパッドP表面に深く入り込むことによってパッドPを効率良く加工することができ、加工が不十分な部分をなくすことができるのである。
しかも、本実施形態では、傾斜面とされた上面部15が周方向の一方を向く切刃凸部14と、他方を向く切刃凸部14とが交互に設けられていて、すなわち、これらが基板11に設けられる切刃凸部14のそれぞれ50%の数とされており、したがって、パッドPが周方向のいずれの方向に回転されても、確実に効率の良い加工を促すことができる。なお、このようにすべての切刃凸部14の上面部15が周方向の一方と他方とに向けられていなくても、例えば上面部15が基板11の径方向を向く切刃凸部14が含まれていても良いが、上述の効果を奏するためには、上面部15が周方向の一方あるいは他方を向く切刃凸部14は、それぞれ基板11に形成されたすべての切刃凸部14のうちの20%以上の数とされるのが好ましい。
また、切刃凸部14の上面部15がなす傾斜面と、基板11の底面11Bに平行な平面、すなわち基板11の前記回転軸線に垂直な平面とがなす角度θが5°≦θ≦40°の範囲となるように、望ましくは5°≦θ≦30°の範囲となるように設定されているので、切刃凸部14の剛性を確保できて切刃凸部14が欠損することを防止できるとともに、パッドPを上面部15がなす傾斜面に沿って弾性復帰させることで切刃凸部14をパッドPに深く入り込ませることができ、パッドPを効率良く確実に加工することができる。
さらに、本実施形態では、上面部15が周方向の一方または他方を向く傾斜面とされた切刃凸部14において、上面部15の辺稜部のうち前記突端部に形成された切刃稜線部16Aが基板11の径方向に延びるように配置されており、基板11の表面に対向する方向から見て前記切刃稜線部16Aに直交する方向に上面部15が前記角度θで傾斜するように形成されている。したがって、前記切刃稜線部16A及び上面部15は基板11の回転に伴い、径方向においては一様にパッドPに深く入り込んでゆくこととなるので、本実施形態によれば、均一なパッドPの加工が可能である。ただし、これら上面部15が周方向の一方または他方を向く傾斜面とされた切刃凸部14においては、上面部15が前記角度θで傾斜する方向、すなわち傾斜面が基板11の底面11Bに平行な平面に対して最大の角度で傾斜する方向は、基板11の表面11Aに対向する方向から見て基板11の回転中心を中心として切刃凸部14の前記切刃稜線部16Aに交差する円の該切刃稜線部16Aとの交点における接線と必ずしも厳密に一致していなくてもよく、この交点から傾斜面が最大の角度で傾斜する方向と前記接線方向とがなす角度が45°以下とされていれば良い。
また、切刃凸部14が基板11から上方に突出された台座部12の台座面13に形成されているので、回転工具をパッドP表面に押し付けた際に、この台座部12によってもパッドPが押さえつけられることになり、切刃凸部14をパッドPのより深い位置まで安定して入り込ませることができ、回転工具による加工をさらに安定して効率良く行うことができる。
また、切刃凸部14がパッドPに入り込む深さは、台座部12の台座面13とパッドP表面との接触により決まるので、台座面13からの上面部15の高さを調整することにより加工速度を制御し、精度良くパッドPを加工することができる。
また、切刃凸部14が、基板11の表面11Aに形成された作用面Sにおいて分布密度が2.3から9.2個/cmとなるように配置されているので、パッドPに対して作用する切刃凸部14の数が確保されて効率良く加工することができるとともに、切刃凸部14同士の間隔が確保され、それぞれの切刃凸部14をパッドPに深く入り込ませて効率良く加工することができる。すなわち、切刃凸部14の前記分布密度が9.2個/cmを超えると、各切刃凸部14への荷重が不足し、前記分布密度が2.3個/cmより少ないと切刃として作用する部分が不足してパッドPを効率良く加工できなくなるのである。
また、切刃凸部14が耐摩耗材料であるSiCで構成されるとともに、切刃凸部14の表面が気相合成ダイヤモンド膜17でコーティングされているので、切刃凸部14の耐摩耗性が向上されており、長期間に亘ってパッドPを安定して加工することができ、この回転工具の寿命を長くすることができる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5及び図6に本発明の第2の実施形態である軟質材加工用回転工具を示す。なお、第1の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
この軟質材加工用回転工具の基板11は、第1の実施形態と同様にSiC(炭化けい素)で構成されるとともに概略円板状をなしており、互いに平行な表面11A及び底面11Bを有している。この基板11の表面11Aにおける中央領域を除いた径方向外周側の周縁領域には、上方に向けて突出する切刃凸部14が、基板11の表面11Aに直接形成されている。この切刃凸部14は、図5に示すように、格子状に配列されている。
これらの複数の切刃凸部14の上面部15は、図6に示すように、基板11の底面11Bに平行な平面に対して傾斜した傾斜面とされ、切刃凸部14の4つの側面は台座面13から略垂直に延びており、この4つの側面と上面部15(傾斜面)との交差稜線、つまり
、上面部15の辺稜部に切刃稜線部16が形成されている。なお、すべての切刃凸部14の最も高く突出した部分の高さ(基板11の表面11Aからの高さ)は互いに等しくされている。
なお、これら複数の切刃凸部14も、図5に示す基板11の表面11Aに形成された作用面Sにおいて、分布密度が2.3から9.2個/cmとなるように配置されている。
そして、本実施形態では、格子状に配列された全ての切刃凸部14は、その上面部15が、表面11Aに対向する平面視において同一の方向(図5に図示したD方向)を向くように、つまり、上面部15の辺稜部のうち最も高く突出された部分に形成された切刃稜線部16Aがこの同一方向とは反対向きの方向(図5に図示したC方向)を向いて互いに平行に延びるように配置されている。
このように切刃凸部14を形成することにより、図5における領域Iに存在する切刃凸部14は、傾斜面とされた上面部15が工具回転方向Tを中心として±45°の範囲内となるように配置され、領域IIIに存在する切刃凸部14は、傾斜面とされた上面部15が工具回転方向Tの反対方向を中心として±45°の範囲内となるように配置されることになる。そして、領域Iに存在する切刃凸部14及び領域IIIに存在する切刃凸部14は、それぞれ基板11に形成されたすべての切刃凸部14のうちの25%を占めることになる。
この構成の軟質材加工用回転工具では、領域Iに存在する切刃凸部14の上面部15が工具回転方向Tを中心として±45°の範囲内となるように配置され、領域IIIに存在する切刃凸部14の上面部15が工具回転方向Tの反対方向を中心として±45°の範囲内となるように配置されているので、パッドPが高速で回転されて工具回転方向Tの後方側からパッドPが接触する場合でも、上面部15が工具回転方向Tに向けられた切刃凸部14(領域IIIに存在する切刃凸部14)がパッドPに深く入りこんでパッドPを加工することができ、加工が不十分な部分をなくすことができる。
さらに、これら領域I及び領域IIIに存在する切刃凸部14が、それぞれ基板11に形成されたすべての切刃凸部14のうちの25%を占めているので、工具回転方向Tの前方側あるいは後方側からパッドPが接触する際のパッドPの加工を確実に行うことができる。
また、このような構成の軟質材加工用回転工具は、切刃凸部14を格子状に配置して、全ての切刃凸部14の上面部15が、図5に図示したD方向を向くように形成することにより形成できるので、この軟質材加工用回転工具を比較容易に製作することができる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図7及び図8に本発明の第3の実施形態である軟質材加工用回転工具を示す。なお、第1の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
この軟質材加工用回転工具の基板11は、概略円板状をなしており、互いに平行な表面11A及び図示されない底面を有している。この基板11の表面11Aにおける径方向外周側の周縁領域には、複数のチップ20が、周方向に等間隔で配置されている。本実施形態では、図7に示すように、15個のチップ20が、24°間隔で配置されている。
このチップ20は、SiC(炭化けい素)で構成され、チップ20の上面は、四角形面とされ、基板11の底面と平行になるように配置されている。このチップ20の上面がなす四角形の4つ角部には、上方に向けて突出する台座部12がそれぞれ設けられており、ひとつの台座部12にひとつの切刃凸部14が形成されている。すなわち、ひとつのチップ20上には、4つの切刃凸部14が形成されており、基板11全体で60個の切刃凸部を具備している。
切刃凸部14の上面部15は、チップ20の上面に平行な平面に対して傾斜しており、ひとつのチップ20に形成された切刃凸部14の上面部15は、同じ方向を向くように形成されている。そして、このようなチップ20が、切刃凸部14の上面部15が工具回転方向T前方側を向くようにしたものと、工具回転方向T後方側を向くようにしたものが交互に配置されている。
なお、これら複数の切刃凸部14も、図7に示す基板11の表面11Aに形成された作用面Sにおいて、分布密度が2.3から9.2個/cmとなるように配置されている。
この構成の軟質材加工用回転工具では、切刃凸部14がチップ20上に形成されており、このチップ20を基板11の表面11Aに固定しているので、このチップ20のみを加工して切刃凸部14を形成することができ、切刃凸部14を精度良く成形することができる。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図9及び図10に本発明の第4の実施形態である軟質材加工用回転工具を示す。なお、第1の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態においては、切刃凸部14は概略正四角柱状をなし、その上面部15が傾斜させられている。そして、この上面部15には、上面部15の傾斜方向に沿った1本の溝30が形成されている。
この軟質材加工用回転工具を用いてパッドを加工する場合には、図11に示すように、パッドP表面と溝30とによってスラリー及び削り屑が流通する流通路が画成され、これらスラリー及び削り屑の排出が促進される。よって、切刃凸部14に削り屑等が付着することを抑制でき、パッドPの加工を効率良く行うことができる。
なお、本実施形態においては、切刃凸部14及び台座部12が形成される基板11またはチップ20をSiC(炭化けい素)で構成したものとして説明したが、基板11またはチップ20を構成する材料に関しては、気相合成ダイヤモンド膜17の生成のしやすさと、台座部12及び切刃凸部14の形成のし易さと、実用に耐えるための機械的特性との観点から、例えば、以下に示すようなものが適しており、これらの材料で構成されていれば良い。
(1)
4a族、5a族、6a族のうちのいずれかの金属もしくはシリコンとの炭化物、窒化物もしくは炭窒化物、
4a族、5a族、6a族のうちのいずれかの金属とシリコンとの炭化物、窒化物もしくは炭窒化物、
シリコン、のうちのいずれか1種、または、これらの複合体。
(2)
4a族、5a族、6a族のうちのいずれかの金属もしくはシリコンとの炭化物、窒化物もしくは炭窒化物のうちの少なくとも1種と、
鉄、ニッケルもしくはコバルトのうちの少なくとも1種との複合体からなる超硬合金。
(3)
シリコンもしくはアルミニウムの窒化物もしくは酸化物のうちいずれか1種、またはこれらの複合体。
また、本実施形態では、切刃凸部14の形状を略正四角柱状としてその上面部15を四角形の一辺からこの一辺と対向する他辺に向けて傾斜した傾斜面としたものとしたが、これに限定されることはなく、例えば、図12に示すように切刃凸部を略円柱状として傾斜面を形成したものであっても良い。また、図13に示すように、切刃凸部14の形状を略四角柱状として、ひとつの角部を前記突端部としてこの角部から対角線方向に向けて傾斜面を形成したものであっても良い。さらには、図14に示すように、切刃凸部の上面部を、互いに交差して上方に凸となる2つの傾斜面で構成して、さらにこれらの傾斜面の交差稜線の一端が前記突端部となるように傾斜させたものであっても良い。
さらに、第4の実施形態では、切刃凸部14の形状を略正四角柱状としてその上面部15に1本の溝30を形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば、図15及び図16に示すように、円柱状をなす切刃凸部の上面に溝30を設けても良い。あるいは、図17及び図18に示すように、切刃凸部14の形状を略四角柱状として、ひとつの角部を前記突端部としてこの角部から対角線方向に向けて傾斜面を形成したものに複数の溝30を形成してもよい。さらに、図19及び図20に示すように、切刃凸部の上面部を、互いに交差して上方に凸となる2つの傾斜面で構成して、さらにこれらの傾斜面の交差稜線の一端が前記突端部となるように傾斜させたものに複数の溝30を形成しても良い。
さらに、本実施形態では、基板11の表面11Aに台座部12と切刃凸部14との2段凸部が形成されたもので説明したが、切刃凸部14のみの1段凸部が形成されたものであっても良い。この場合には前記表面11Aが基準面とされる。
また、台座部12や切刃凸部14の個数、配置、基板11の直径等は、加工条件などを考慮して適宜設定することが好ましい。
以下に、本発明の一例を用いて比較試験を行うことにより、本発明の有効性を検証した結果を示す。
試験工具として、炭化けい素(SiC)で構成された直径100mmの基板の表面外周部に台座部が円周上等間隔で放射状に60個設けられ、各台座部の台座面に切刃凸部が1つ形成されたものを供した。ここで、台座部は、一辺が1.0mm、高さが0.3mmの正四角柱状とし、切刃凸部は、一辺が0.15mm、切刃凸部の最も高く突出された部分の高さHが0.05mmの概略正四角柱状とした。そして、この基板上に形成された切刃稜線部の総長さLは9mmとした。また、これら台座部と切刃凸部の表面には、膜厚がおよそ20μmの気相合成ダイヤモンド膜をコーティングした。
比較例1として、切刃凸部の上面部を基板の底面に対して平行としたものを試験に供した。
比較例2として、切刃凸部の上面部を基板の底面に対して角度θ=10°で傾斜した傾斜面とし、この傾斜面を基板の径方向、つまり基板の周方向ではない方向に向くように切刃凸部を配置したものを試験に供した。
比較例3として、切刃凸部の上面部を基板の底面に対して角度θ=10°で傾斜した傾斜面とし、すべての切刃凸部の傾斜面が基板の周方向の一方(工具回転方向後方側)を向くように配置したものを試験に供した。
本発明例1として、切刃凸部の上面部を基板の底面に対して角度θ=5°で傾斜した傾斜面とし、この傾斜面が基板の周方向の一方(工具回転方向後方側)を向くようにされた切刃凸部と、前記傾斜面が基板の周方向の他方(工具回転方向前方側)を向くようにされた切刃凸部とを周方向で交互に配置したものを試験に供した。
本発明例2として、切刃凸部の上面部を基板の底面に対して角度θ=10°で傾斜した傾斜面とし、この傾斜面が基板の周方向の一方(工具回転方向後方側)を向くようにされた切刃凸部と、前記傾斜面が基板の周方向の他方(工具回転方向前方側)を向くようにされた切刃凸部とを周方向で交互に配置したものを試験に供した。
試験機として研磨装置(ムサシノ電子製MA−300)を用い、被加工材として発泡ウレタン質パッド(Rodel社製IC1400)を用い、研磨スラリーとしてSiOスラリー(Cabot社製SS−25)を用いた。
試験条件は、プラテン回転数(ウレタンパッドの回転数)を45rpm、回転工具の回転数を43rpm、荷重を39.2N、スラリー流量を25ml/minとして、パッドの加工を行った。
評価項目であるパッド除去レートは、まず、事前に発泡ウレタン質パッドの高さを測定しておき、この発泡ウレタン質パッドを加工試験に供し、加工後の発泡ウレタン質パッドの高さを測定し、加工前後の発泡ウレタン質パッドの高さの変化を加工時間で除して計算した。
また、加工後の発泡ウレタン質パッドの高さを径方向の複数の点で測定することにより、パッド断面形状を確認した。
図15にパッド除去レートと加工時間との関係を示す。比較例1及び比較例2では、試験初期から除去レートが10μm/h以下であり、実質的にパッドが加工されていないことが確認された。これは上面が基板の底面と平行な切刃凸部を有する回転工具では、切刃凸部の圧入の際に生じたパッドの変形により、切刃稜線部とパッド表面との接触を十分に確保できないこと、および、切刃凸部の上面全体でパッド表面と接触するために切刃稜線部に荷重が集中しないことによるものである。
一方、比較例3、本発明例1及び本発明例2では、加工時間が10時間経過時点でもパッド除去レートは50μm/h以上であり、パッドを長時間安定して加工できることが確認された。
図16に比較例3、本発明例1及び本発明例2で加工した後のパッドの断面形状を示す。比較例3では、パッド外周側部分にほとんど加工されていない部分が存在することが確認される。一方、本発明例1及び本発明例2では、パッドの径方向全長にわたって十分加工されており、加工が不十分な部分は確認されない。
したがって、本試験により、本発明例1、2によれば、パッド除去レートが長時間安定しているとともに、パッド全面を十分に加工できることが確認された。
次に、メタル研磨用スラリーを用いてパッドを研磨した際のパッド除去レートを比較した。上記の比較例1〜3、本発明例1,2に加えて、以下の本発明例3〜6を試験に供した。本発明例3〜6は、切刃凸部の配置を本発明例1,2と同様とし、本発明例3は、切刃凸部の上面部と基板の底面とがなす角度θ=20°、本発明例4は前記角度θ=25°、本発明例5は前記角度θ=30°、本発明例6は前記角度θ=35°とした。
試験機として研磨装置(ムサシノ電子製MA−300)を用い、被加工材として発泡ウレタン質パッド(Rodel社製IC1400)を用い、メタル研磨用スラリーとして、市販の硝酸鉄系スラリー(3%H添加)を用いた。
試験条件は、プラテン回転数(ウレタンパッドの回転数)を45rpm、回転工具の回転数を43rpm、荷重を39.2N、スラリー流量を25ml/minとして、パッドの加工を行った。
図17にパッド除去レートと加工時間との関係を示す。比較例1及び比較例2では、試験初期から除去レートが20μm/h以下であり、メタル研磨スラリーを使用した場合でも、パッドが実質的に加工されないことが確認された。
一方、比較例3、本発明例1〜6では、加工時間が25時間経過時点でもパッド除去レートは50μm/h以上であった。
また、初期のパッド除去レートは、前記角度θが大きいほど高くなる傾向にあるが、前記角度θ=35°とした本発明例6では、使用開始から10時間経過後、切刃稜線部の摩耗及び損傷により、他の発明例より顕著なパッド除去レートの低下を生じた。この条件下においては、上記角度θを5°〜30°の範囲内としたときに、パッド除去レートが長時間安定していることが確認された。
次に、酸化膜用スラリーを用いてパッドを研磨した際のパッド除去レートを比較した。上記の比較例1〜3、本発明例1、2、4、6に加えて、以下の本発明例7,8を試験に供した。本発明例7,8は、切刃凸部の配置を本発明例1〜6と同様とし、本発明例7は、切刃凸部の上面部と基板の底面とがなす角度θ=40°、本発明例8は前記角度θ=45°とした。
なお、酸化膜用スラリーはメタル研磨用スラリーよりも腐食性が弱いものである。
試験機として研磨装置(ムサシノ電子製MA−300)を用い、被加工材として発泡ウレタン質パッド(Rodel社製IC1400)を用い、酸化膜用スラリーとして、KOH系のコロイダルシリカを用いた。
試験条件は、プラテン回転数(ウレタンパッドの回転数)を45rpm、回転工具の回転数を43rpm、荷重を39.2N、スラリー流量を25ml/minとして、パッドの加工を行った。
図18にパッド除去レートと加工時間との関係を示す。比較例1及び比較例2では、試験初期から除去レートが20μm/h以下であり、酸化膜用スラリーを使用した場合でも、十分なパッド加工速度が得られないことが確認された。
一方、比較例3、本発明例1〜6では、加工時間が25時間経過時点でもパッド除去レートは50μm/h以上であった。
また、酸化膜用スラリーを使用した場合には、前記角度θ=35°とした本発明例6でもパット除去レートの急激な低下は認められず、前記角度θ=45°とした本発明例8では、使用開始から20時間経過後、切刃稜線部の摩耗及び損傷によるパッド除去レートの急激な低下が確認された。この条件下においては、上記角度θを5°〜40°の範囲内としたときに、パッド除去レートが長時間安定していることが確認された。
次に、切刃凸部のうち最も高く突出された部分の高さHとパット除去レートとの関係を確認するための試験を行った。本発明例2(前記高さH=0.05mm)に加えて、以下の本発明例9〜14を試験に供した。本発明例9は、切刃凸部の配置や前記角度θを本発明例2と同様とし、前記高さH=0.01mmとし、本発明例10は前記高さH=0.03mm、本発明例11は前記高さH=0.08mm、本発明例12は前記高さH=0.1mm、本発明例13は前記高さH=0.15mm、本発明例14は前記高さH=0.2mmとした。
試験機として研磨装置(ムサシノ電子製MA−300)を用い、被加工材として発泡ウレタン質パッド(Rodel社製IC1400)を用い、メタル研磨用スラリーとして、市販の硝酸鉄系スラリー(3%H添加)を用いた。
試験条件は、プラテン回転数(ウレタンパッドの回転数)を45rpm、回転工具の回転数を43rpm、荷重を39.2N、スラリー流量を25ml/minとして、パッドの加工を行った。
図19にパッド除去レートと加工時間との関係を示す。前記高さHが高くなるにつれて、パット除去レートが高くなる傾向にあり、特に、前記高さH=0.01mmとされた本発明例9では、切刃稜線部のパッドに入り込む深さが浅くなり、パッド除去レートが低くなることが確認された。また、前記高さH=0.1mm以上である本発明例12、13、14は、切刃稜線部のパッドに入り込む深さが十分深く、パット除去レートは高く安定しており、前記高さによる変化はほとんど認められない。したがって、今回の実験条件下においては、前記高さHは、0.03mm〜0.15mmの範囲内とすることが好ましい。
次に、切刃稜線部の総長さLとパット除去レートとの関係を確認するための試験を行った。試験には、以下の本発明例15〜19を用いた。本発明例15は、切刃凸部の配置や前記角度θ、前記高さHを本発明例2と同様として基板上に形成された切刃稜線部の総長さL=3mmとし、本発明例16は前記総長さL=25mm、本発明例17は前記総長さL=150mm、本発明例18は前記総長さL=400mm、本発明例19は前記総長さL=800mmとした。
試験機として研磨装置(ムサシノ電子製MA−300)を用い、被加工材として発泡ウレタン質パッド(Rodel社製IC1400)を用い、メタル研磨用スラリーとして、市販の硝酸鉄系スラリー(3%H添加)を用いた。
試験条件は、プラテン回転数(ウレタンパッドの回転数)を45rpm、回転工具の回転数を43rpm、荷重を39.2N、スラリー流量を25ml/minとして、パッドの加工を行った。
図20にパッド除去レートと加工時間との関係を示す。前記総長さL=3mmとした本発明例15及び前記総長さL=800mmとした本発明例19では、パッド除去レートが40μm/h以下と低くなることが確認された。これは、切刃稜線部の総長さが短い場合には、パッドを加工する切刃稜線部が不足するためであり、前記総長さが長い場合には、それぞれの切刃稜線部に加わる荷重が低下してしまうためである。したがって、本条件下においては、基板上に形成された切刃稜線部の総長さLは5mm〜500mmの範囲内に設定することが好ましい。
本発明の第1の形態である軟質材加工用回転工具の基板の上面図である。 図1におけるZ−Z断面図である。 図1における台座部及び切刃凸部の斜視図である。 図1の軟質材加工用回転工具でパッドを加工している状態の説明図である。 本発明の第2の形態である軟質材加工用回転工具の基板の上面図である。 図5におけるV−V断面図である。 本発明の第3の形態である軟質材加工用回転工具の基板の上面図である。 図7におけるチップの斜視図である。 本発明の第4の形態である軟質材加工用回転工具の切刃凸部を示す図である。 図9に示す切刃凸部の正面図である。 図9に示す軟質材加工用回転工具でパッドを加工している状態の説明図である。 切刃凸部の他の形状例を示す図である。 切刃凸部の他の形状例を示す図である。 切刃凸部の他の形状例を示す図である。 切刃凸部の他の形状例を示す上面図である。 図15に示す切刃凸部の側面図である。 切刃凸部の他の形状例を示す上面図である。 図17に示す切刃凸部の側面図である。 切刃凸部の他の形状例を示す上面図である。 図19に示す切刃凸部の正面図である。 従来の軟質材加工用回転工具を用いたパッドコンディショナーの一例を示す図である。 図21におけるX−X断面図である。 図21におけるY−Y断面図である。 実施例1の試験結果であるパッド除去レートを示す図である。 実施例1の試験結果であるパッド断面形状を示す図である。 実施例2の試験結果であるパッド除去レートを示す図である。 実施例3の試験結果であるパッド除去レートを示す図である。 実施例4の試験結果であるパッド除去レートを示す図である。 実施例5の試験結果であるパッド除去レートを示す図である。
符号の説明
11 基板
12 台座部
14 切刃凸部
15 上面部(傾斜面)
16 切刃稜線部
17 気相合成ダイヤモンド膜(ダイヤモンド膜)
20 チップ
30 溝

Claims (13)

  1. 軟質材よりなる被加工材が移動され、この被加工材に対して加工を施す軟質材加工用回転工具であって、
    基板の表面には、切刃凸部が上方に突出するように2つ以上形成され、該切刃凸部の上面は、前記基板の底面に平行な平面に対して傾斜した傾斜面とされ、該傾斜面の辺稜部には切刃稜線部が形成されており、
    前記切刃凸部のうち一部の切刃凸部の前記傾斜面が、少なくとも前記基板の回転の周方向の一方を向くように配置され、残りの前記切刃凸部のうち少なくとも一部の切刃凸部の前記傾斜面が、少なくとも前記周方向の他方を向くように配置されていることを特徴とする軟質材加工用回転工具。
  2. 前記傾斜面と前記底面に平行な平面とのなす角度θが、5°≦θ≦40°の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の軟質材加工用回転工具。
  3. 前記切刃凸部が、前記基板から上方に突出された台座部の上面に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軟質材加工用回転工具。
  4. 前記基板の前記表面に形成された作用面における前記切刃凸部の分布密度が、2.3から9.2個/cmの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の軟質材加工用回転工具。
  5. 前記切刃凸部が、耐摩耗材料で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の軟質材加工用回転工具。
  6. 前記切刃凸部の表面が、ダイヤモンド膜により被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の軟質材加工用回転工具。
  7. 前記切刃凸部は、前記底面と平行とされた基準面の上に形成されており、前記切刃凸部の前記基準面からの高さが0.03mmから0.15mmの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の軟質材加工用回転工具。
  8. 前記切刃凸部においては、前記傾斜面の全辺稜部が前記切刃稜線部とされ、前記基板の前記表面に形成されたすべての前記切刃稜線部の長さを合計した総長さが、5mmから500mmの範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の軟質材加工用回転工具。
  9. 前記切刃凸部の上面には、傾斜方向に沿った溝が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の軟質材加工用回転工具。
  10. 前記溝の幅が、10μmから200μmの範囲内とされていることを特徴とする請求項9に記載の軟質材加工用回転工具。
  11. 前記溝の深さが、10μmから100μmの範囲内とされていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の軟質材加工用回転工具。
  12. 前記溝の本数が、1から10本の範囲内とされていることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の軟質材加工用回転工具。
  13. CMP研磨用パッドをコンディショニングするパッドコンディショナーに備えられたことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の軟質材加工用回転工具。
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