JP4659240B2 - ヒドロキシアルデヒドの製造方法 - Google Patents

ヒドロキシアルデヒドの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はヒドロキシアルデヒドの製造法、より詳細には、両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオールを酸素と反応させて対応するヒドロキシアルデヒドを効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
第1級アルコールから対応するアルデヒドを製造する方法として、クロロクロム酸ピリジウム(PCC)などを酸化剤として用いるクロム酸酸化法や、活性二酸化マンガンを酸化剤として用いる方法が知られている。しかし、これらの方法は金属化合物を多量に用いるため、経済的に不利であるとともに、後処理が煩雑であり、工業的な方法とは言えない。また、第1級アルコールをジメチルスルホキシドにより酸化して対応するアルデヒドを得る方法も知られている。しかし、この方法は悪臭の問題があり、工業的に大量生産する場合には採用しがたい方法である。
【0003】
一方、経済上及び環境保護の観点から、酸素を酸化剤としてアルコールをアルデヒドに変換する方法も提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、両末端にメチロール基を有するジオールを用いて、一方の末端のメチロール基(ヒドロキシメチル基)のみを酸素により酸化して、対応するヒドロキシアルデヒドを効率よく製造する方法はこれまでほとんど知られていない。
【0005】
従って、本発明の目的は、酸素により、両末端にメチロール基を有するジオールを酸化して対応するヒドロキシアルデヒドを効率よく得る方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、ルテニウム触媒を用いて、両末端にメチロール基を有する特定の炭素数以上のジオールを酸素と反応させると、一方の末端のメチロール基のみを酸化させて、対応するヒドロキシアルデヒドを効率よく生成させることができることを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、乾燥体であるRu/Cの存在下、両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオールを、酸素と反応させて、対応するヒドロキシアルデヒドを生成させるヒドロキシアルデヒドの製造方法である。
【0008】
本発明では、両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオールとしては、直鎖状脂肪族ジオールであることが好ましい。
なお、本明細書では、上記発明のほか、ルテニウム触媒の存在下、両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオールを、酸素と反応させて、対応するヒドロキシアルデヒドを生成させるヒドロキシアルデヒドの製造方法、についても説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
[ルテニウム触媒]
ルテニウム触媒には、ルテニウム単体及びルテニウム元素を含む化合物が含まれる。ルテニウム触媒の具体的な例として、例えば、金属ルテニウム、酸化ルテニウム、硫化ルテニウム、水酸化ルテニウム、フッ化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム、硫酸ルテニウム、ルテニウム酸又はその塩(例えば、ルテニウム酸アンモニウムなど)、過ルテニウム酸又はその塩(例えば、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウムなど)、無機ルテニウム錯体[例えば、ヒドロキシハロゲン化ルテニウム(ヒドロキシ塩化ルテニウムなど)、ヘキサアンミンルテニウムハロゲン化物(ヘキサアンミンルテニウム塩化物など)、ルテニウムニトロシル、ヘキサハロルテニウム酸又はその塩(ヘキサクロロルテニウム酸ナトリウムなど)]などの無機化合物;シアン化ルテニウム、有機ルテニウム錯体[例えば、ドデカカルボニル三ルテニウム(0)、ジカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジアセタトジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム、ルテノセンなど]などの有機化合物が挙げられる。
【0010】
なお、前記有機ルテニウム錯体において、錯体を構成する配位子としては、例えば、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、シメン(o−,m−,p−シメン)、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
【0011】
ルテニウムの価数は0〜8の何れであってもよい。好ましいルテニウムの価数は0〜4価である。
【0012】
好ましいルテニウム触媒には、金属ルテニウム、過ルテニウム酸又はその塩及びルテニウム錯体が含まれる。これらの中でも、金属ルテニウム及びルテニウム錯体が好ましい。ルテニウム触媒は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0013】
ルテニウム触媒は、触媒成分(金属ルテニウム又はルテニウム化合物)を担体に担持した担体担持型ルテニウム触媒であってもよい。特に、触媒成分として金属ルテニウムを用いる場合には、担体に担持することにより触媒活性を大幅に向上できる。担体としては、触媒担持用の慣用の担体、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、マグネシアなどの無機の金属酸化物や活性炭などが挙げられる。なかでも、触媒活性の点で活性炭が好ましい。活性炭としては、種々の原料(例えば、植物系、鉱物系、樹脂系等)から得られる活性炭を使用できる。活性炭はガス賦活炭及び薬品賦活炭の何れであってもよい。担体の比表面積は、例えば10〜3000m2/g程度、好ましくは50〜3000m2/g程度である。
【0014】
担体担持型ルテニウム触媒における触媒成分の担持量は、担体に対して、例えば0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%程度である。触媒の調製は、慣用の方法、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などにより行うことができる。
【0015】
ルテニウム触媒の使用量は、ルテニウム化合物(又は金属ルテニウム)として、基質であるジオール1モルに対して、例えば0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.6モル、さらに好ましくは0.02〜0.4モル程度である。
【0016】
なお、本発明では、助触媒として、例えばヒドロキノンなどのジオキシベンゼン類又はその酸化体を系内に存在させてもよいが、必ずしも必要ではない。
【0017】
また、本発明では、アミンを用いてもよい。アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなどのモノアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミンなどのジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリn−オクチルアミンなどのトリアルキルアミン;メタノールアミン、エタノールアミンなどのモノアルコールアミンジメタノールアミン、ジエタノールアミンなどのジアルコールアミン;トリメタノールアミン、トリエタノールアミンなどのトリアルコールアミンなどの他、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどの脂肪族アミン;N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族アミン;モルホリン、ピペリジン、ピロリジンなどの環状アミン;ピリジンなどの含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0018】
さらに、本発明では、塩基を用いることもできる。塩基には、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属有機酸塩などの塩基性有機化合物などが含まれる。また、炭酸ニッケル、炭酸パラジウムなどの遷移金属の炭酸塩なども用いることができる。
【0019】
また、本発明では、水素受容体を用いることもできる。水素受容体を用いることにより、両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオールから、水素の引き抜きをより効果的に行うことができ、前記ジオールに対応するヒドロキシアルデヒドをより容易に調製することができる場合がある。このような水素受容体としては、例えば、ヒドロキノン等のジオキシベンゼン類;メチルビニルケトン、アセトン、ベンゾールアセトン等のケトン類;ジフェニルアセチレン等のアセチレン類などが挙げられる。
【0020】
[ジオール]
反応成分(基質)として用いる両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオール(以下、「α,ω−C8<ジオール」と称する場合がある)には、両末端のメチロール基における炭素原子間に6以上の原子が介在して結合しているジオールであれば特に制限されない。このような2つのメチロール基間に介在している原子(以下、「内部原子」と称する場合がある)としては、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子などが挙げられる。内部原子は、単一の種類のみからなっていてもよく、複数の種類からなっていてもよい。内部原子としては、炭素原子、酸素原子が好ましく、特に、炭素原子が好適である。
【0021】
本発明では、内部原子は、直鎖状化合物としての形態で介在していてもよく、また、内部原子同士により構成された環状化合物を含む形態で介在していてもよい。
【0022】
なお、本発明では、基質(α,ω−C8<ジオール)は、単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0023】
α,ω−C8<ジオールにおいて、内部原子が炭素原子のみからなるジオールとしては、例えば、下記式(1)で表されるジオールが挙げられる。
【化1】
Figure 0004659240
(式(1)中、Xは炭化水素基を示す)
【0024】
前記式(1)において、Xの炭化水素基としては、2つのメチロール基における炭素原子同士を結ぶ最少の炭素原子の数が6以上である炭化水素基であれば、特に制限されない。すなわち、両端のメチロール基間に炭素原子の数が6個以上介在して形成されている基であればよい。このような炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基などが挙げられる。
【0025】
例えば、脂肪族炭化水素としては、炭素数が6以上の炭化水素基(例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルカジエニレン基、アルキニレン基など)を用いることができる。アルキレン基としては、例えば、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン基などの炭素数6以上のアルキレン基が挙げられる。また、アルケニレン基、アルカジエニレン基やアルキニレン基としては、前記アルキレン基に対応する炭素数6以上のアルケニレン基、アルカジエニレン基、アルキニレン基が挙げられる。
【0026】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基において、脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキレン基や、該シクロアルキレン基に対応するシクロアルケニレン基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、前記に例示の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。従って、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、アルキレン−シクロアルキレン基、アルキレン−シクロアルキレン−アルキレン基などが挙げられる。
【0027】
脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基において、芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度のアリレン基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、前記に例示の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。従って、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基などが挙げられる。
【0028】
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、炭化水素基、複素環式基、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、複素環式基などを有していてもよい。
【0029】
従って、前記式(1)で表されるジオールには、鎖状脂肪族ジオール(直鎖状脂肪族ジオール、分岐鎖状脂肪族ジオールなど)、環(例えば、非芳香族性環、芳香族性環など)を構成する2つの炭素原子にヒドロキシアルキル基(例えば、メチロール基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基など)が結合している環状炭化水素などが含まれる。α,ω−C8<ジオールとしては、鎖状脂肪族ジオール(特に直鎖状脂肪族ジオール)を好適に用いることができる。
【0030】
前記式(1)で表されるジオールのうち、例えば、1,8−ジオールの代表的な例としては、例えば、1,8−オクタンジオール、第2級のヒドロキシル基が保護された多価アルコール(例えば、第2級のヒドロキシル基が保護されたオクチトール等のアルジトール誘導体)などの鎖状ジオール;p−ベンゼンジエタノール、2,6−ナフタレンジメタノール、1,5−ナフタレンジメタノール、1,4−ナフタレンジエタノール、2−(2−ヒドロキシエチル)−5−ヒドロキシメチルナフタレン、3−(2−ヒドロキシエチルフェニル)プロパノール、3−(4−ヒドロキシメチルフェニル)プロパノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、2,5−ピリジンジエタノール、2,6−キノリンジメタノールなどの環を構成する2つの炭素原子(例えば、隣接する炭素原子など)にヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基など)が結合している芳香族又は非芳香族環状化合物などが挙げられる。
【0031】
上記では、基質として、内部原子が炭素原子のみからなるα,ω−C8<ジオールのうち1,8−ジオールについて詳述したが、1,8−ジオール以外の他の内部原子が炭素原子のみからなるα,ω−C8<ジオールについても、前記1,8−ジオールの場合と同様である。例えば、1,9−ジオールには、1,9−ノニルジオールなどが含まれる。1,10−ジオールには、1,10−デシルジオールなどが含まれる。また、1,12−ジオールとしては、1,12−ドデシルジオールなどが挙げられる。
【0032】
なお、本明細書において、1,x−ジオールとは、2つのメチロール基間に(x−2)個の原子が介在しているジオールのことを意味しており、例えば、1,8−ジオールとは、2つのメチロール基間に6個の原子が直鎖状に介在して結合しているジオールのことを示している。
【0033】
また、内部原子が炭素原子及び酸素原子からなるα,ω−C8<ジオールとしては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0034】
内部原子が、炭素原子とともに、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子のうち少なくともいずれか1つの原子とからなるα,ω−C8<ジオールとしては、例えば、前記炭素原子のみからなるα,ω−C8<ジオールとして例示の化合物のうち、芳香族炭化水素基を複素環式基とし、かつヘテロ原子がメチロール間に介在している化合物などが挙げられる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジンなどの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基は、前記炭化水素基が有していてもよい置換基を有していてもよい。
【0035】
[酸素]
酸素は分子状の酸素及び発生期の酸素の何れであってもよい。分子状酸素としては、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素を使用してもよい。操作性及び安全性のみならず経済性などの点から、空気を使用するのが好ましい。
【0036】
酸素の使用量は、基質の種類に応じて適宜選択できるが、通常、基質1モルに対して、例えば1モル以上、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。基質に対して過剰モルの酸素を使用する場合が多い。
【0037】
[反応]
反応は液相及び気相の何れで行うこともできる。液相反応の場合、反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン(トリフルオロトルエン)、クロロベンゼン、アニソール、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、安息香酸エチルなどの、ベンゼン環がハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換オキシカルボニル基などで置換されていてもよいベンセン誘導体;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロアルカン;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの鎖状または環状エーテル;酢酸などの有機酸などが挙げられる。好ましい溶媒には、ベンゼン、トルエン、トリフルオロメチルベンゼンなどの前記ベンゼン誘導体、アセトニトリルなどのニトリル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの鎖状または環状エーテル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、酢酸エチルなどのエステル、酢酸などの有機酸などが含まれる。これらの溶媒は1種で又は2種以上混合して用いられる。
【0038】
反応温度は、基質の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、0〜200℃、好ましくは10〜150℃、さらに好ましくは30〜120℃程度である。反応は常圧で行ってもよく、加圧下(例えば、1〜100atm)に行ってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行ってもよい。
【0039】
本発明では、水(例えば、反応系内に含まれている水や、反応で副生する水など)を系外に除去しながら(系中に水を添加することもなく)反応を行うことが好ましい。反応中に水を系外に取り除くことにより、ヒドロキシアルデヒドの生成量を増大させ、収率を高めることができる。水の除去は、例えば、ディーンスターク装置やデカンター等の水分離器などを用いて行うことができる。
【0040】
従って、溶媒としては、水を含んでいない溶媒を用いることが好ましい。
【0041】
本発明の方法では、反応により、温和な条件であっても、末端の2つのヒドロキシメチル基のうち一方のメチロール基(ヒドロキシメチル基)が酸化されて、対応するヒドロキシアルデヒドが生成する。例えば、前記式(1)で表されるジオールからは、下記式(2)で表されるヒドロキシアルデヒドが生成する。
【化2】
Figure 0004659240
(式(2)中、Xは前記に同じ)
【0042】
より具体的には、例えば、ルビジウム触媒の存在下、1,8−オクタンジオールを酸素酸化すると、温和な条件下であっても、8−ヒドロキシオクタナールが生成する。
【0043】
このように、本発明では、ジオール成分として、両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオール(α,ω−C8<ジオール)を用いているので、触媒としてルテニウム触媒を用いて酸素酸化すると、α,ω−C8<ジオールの一方の末端(片末端)のみを酸化して、ヒドロキシアルデヒドを生成させることができる。
【0044】
反応終了後、反応生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により、容易に分離精製できる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、特定の触媒を用いるため、酸素により両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオールが酸化されて、対応するヒドロキシアルデヒドが効率よく生成する。
【0046】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例1〜3及び7は参考例として、実施例5及び12は比較例として記載するものである。
【0047】
(実施例1)
触媒としてジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(Ru(PPh33Cl2):0.05ミリモル(下記α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)、α,ω−C8<ジオール(両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオール)として1,8−オクタンジオール:1ミリモル、及びトルエン:5mlからなる混合液を、酸素雰囲気下(1気圧;0.1MPa)、100℃で15時間攪拌した。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,8−オクタンジオールの転化率が84%であり、収率8%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0048】
(実施例2)
触媒としてRu(PPh33Cl2に代えて、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(Ru(p−cymene)Cl2):0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)を用いること以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が35%であり、収率4%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0049】
(実施例3)
触媒としてRu(PPh33Cl2に代えて、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(Ru(PPh342):0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)を用いること以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が87%であり、収率30%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0050】
(実施例4)
触媒としてRu(PPh33Cl2に代えて、5重量%Ru/C(乾燥体):ルテニウムとして0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対してルテニウムとして5モル%)を用いること以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が83%であり、収率24%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0051】
(実施例5)
触媒としてRu(PPh33Cl2に代えて、5重量%Ru/C(非乾燥体):ルテニウムとして0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対してルテニウムとして5モル%)を用いること以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が90%であり、収率16%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0052】
(実施例6)
触媒としてRu(PPh33Cl2に代えて、5重量%Ru/C(和光純薬社製):ルテニウムとして0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対してルテニウムとして5モル%)を用いること以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が56%であり、収率43%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0053】
(実施例7)
触媒としてRu(PPh33Cl2に代えて、4重量%Ru(PPh33Cl2/C:ルテニウムとして0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対してルテニウムとして5モル%)を用いること以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が72%であり、収率4%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0054】
実施例1〜7より、ルテニウム触媒を用いることにより、1,8−オクチルジオールなどのα,ω−C8<ジオールから、8−ヒドロキシオクタナールなどのヒドロキシアルデヒドを生成させることができた。なお、実施例4〜5において、触媒として用いたルテニウム触媒としての担体担持型ルテニウム触媒では、担体としての活性炭の活性度合いが異なるために、収率などが異なっていると思われる。
【0055】
(実施例8)
触媒として5重量%Ru/C(乾燥体):5ミリモル、α,ω−C8<ジオールとして1,8−オクタンジオール:1ミリモル、トルエン:5ml、およびアミンとしてトリエチルアミン:0.2ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対して20モル%)からなる混合液を、酸素雰囲気下(1気圧)、60℃で15時間攪拌した。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,8−オクタンジオールの転化率が60%であり、収率26%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0056】
(実施例9)
アミンとしてトリエチルアミンに代えて、トリヘキシルアミン:0.2ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対して20モル%)を用いること以外は、実施例8と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が81%であり、収率23%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0057】
(実施例10)
アミンとしてトリエチルアミンに代えて、ピリジン:0.2ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対して20モル%)を用いること以外は、実施例8と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が87%であり、収率22%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0058】
(実施例11)
触媒として5重量%Ru/C(乾燥体):5ミリモル、α,ω−C8<ジオールとして1,8−オクタンジオール:1ミリモル、及びトルエン:5mlからなる混合液を、酸素雰囲気下(1気圧)、100℃で15時間攪拌した。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,8−オクタンジオールの転化率が84%であり、収率34%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0059】
(実施例12)
触媒として5重量%Ru/C(乾燥体)に代えて、5重量%Ru/C(非乾燥体):5ミリモルを用いること以外は、実施例11と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が90%であり、収率22%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0060】
(実施例13)
さらに、ヒドロキノン:0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)を用いること以外は、実施例11と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が80%であり、収率48%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0061】
(実施例14)
触媒として5重量%Ru/C(乾燥体)に代えて、Ru(PPh33Cl2:5ミリモルを用いるとともに、さらに、ヒドロキノン:0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)を用いること以外は、実施例11と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が75%であり、収率6%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた
【0062】
(実施例15)
さらに、ヒドロキノン:0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)を用いるとともに、反応温度を60℃とすること以外は、実施例11と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が75%であり、収率52%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0063】
実施例8〜10はアミンを用いた場合である。また、実施例11〜15はヒドロキノンを用いた場合について比較するための例である。ヒドロキノンを用いることにより、ある程度収率が向上しているように思われる。
【0064】
(実施例16)
触媒として5重量%Ru/C(乾燥体):0.05ミリモル(下記α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)、α,ω−C8<ジオールとして1,8−オクタンジオール:1ミリモル、トルエン:5ml、及びヒドロキノン:0.05ミリモル(α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)からなる混合液を、酸素雰囲気下(1気圧)、60℃で15時間攪拌した。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,8−オクタンジオールの転化率が49%であり、収率44%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0065】
(実施例17)
さらに、水:2ミリモル用いること以外は、実施例16と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が59%であり、収率49%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0066】
(実施例18)
さらに、水:4ミリモル用いること以外は、実施例16と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が85%であり、収率32%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0067】
(実施例19)
触媒として5重量%Ru/C(和光純薬社製):0.05ミリモル(下記α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)、α,ω−C8<ジオールとして1,8−オクタンジオール:1ミリモル、トルエン:5ml、及びモレキュラーシーブ0.01ミリモルをからなる混合液を、酸素雰囲気下(1気圧)、60℃で15時間攪拌したところ、1,8−オクタンジオールの転化率が58%であり、収率49%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0068】
実施例16〜19は、水の有無に関する例である。水が系内に含まれていると、収率が低下するようである。従って、反応系内の水は脱水した方が、反応性が高まると思われる。
【0069】
(実施例20)
触媒として5重量%Ru/C(和光純薬社製):0.05ミリモル(下記α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)、α,ω−C8<ジオールとして1,8−オクタンジオール:1ミリモル、トルエン:5ml、及び塩基として炭酸ニッケル(少量)からなる混合液を、酸素雰囲気下(1気圧)、60℃で15時間攪拌した。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,8−オクタンジオールの転化率が52%であり、収率44%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0070】
(実施例21)
触媒として5重量%Ru/C(和光純薬社製):0.05ミリモル(下記α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)、α,ω−C8<ジオールとして1,8−オクタンジオール:1ミリモル、トルエン:5ml、及び水素受容体としてアセトン:1当量(α,ω−C8<ジオールのヒドロキシル基に対して)からなる混合液を、酸素雰囲気下(1気圧)、60℃で15時間攪拌した。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,8−オクタンジオールの転化率が64%であり、収率49%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0071】
(実施例22)
触媒として5重量%Ru/C(和光純薬社製):0.05ミリモル(下記α,ω−C8<ジオールに対して5モル%)、α,ω−C8<ジオールとして1,8−オクタンジオール:1ミリモル、及び溶媒としてトルエン:5mlからなる混合液を、酸素雰囲気下(1気圧)、60℃で15時間攪拌した。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,8−オクタンジオールの転化率が49%であり、収率44%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0072】
(実施例23)
溶媒としてトルエンに代えて、トリフルオロトルエン(TFT):5mlを用いること以外は、実施例22と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が80%であり、収率70%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0073】
(実施例24)
溶媒としてトルエンに代えて、アセトニトリル:5mlを用いること以外は、実施例22と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が37%であり、収率30%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0074】
(実施例25)
溶媒としてトルエンに代えて、テトラヒドロフラン:5mlを用いること以外は、実施例22と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が26%であり、収率25%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0075】
(実施例26)
溶媒としてトルエンに代えて、ジオキサン:5mlを用いること以外は、実施例22と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が33%であり、収率26%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0076】
(実施例27)
溶媒としてトルエンに代えて、ジイソプロピルエーテル:5mlを用いること以外は実施例22と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が65%であり、収率23%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。
【0077】
(実施例28)
溶媒としてトルエンに代えて、アセトン:5mlを用いること以外は、実施例22と同様の操作を行ったところ、1,8−オクタンジオールの転化率が36%であり、収率15%で8−ヒドロキシオクタナールが得られた。

Claims (2)

  1. 乾燥体であるRu/Cの存在下、両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオールを、酸素と反応させて、対応するヒドロキシアルデヒドを生成させるヒドロキシアルデヒドの製造方法。
  2. 両末端にメチロール基を有し、かつ該2つのメチロール基間に6以上の原子が結合しているジオールが、直鎖状脂肪族ジオールである請求項1記載のヒドロキシアルデヒドの製造方法。
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