JP4658777B2 - 水溶性薬剤の経皮送達促進 - Google Patents

水溶性薬剤の経皮送達促進 Download PDF

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Description

本発明は、イオントフォレーシスの前処理により水溶性薬剤の経皮送達を促進させる美容方法、ならびにそのためのキットに関するものである。
抗酸化剤、血行促進剤、美白剤、保湿剤、ビタミン類等の様々な水溶性薬剤が各種外用剤に配合されているが、それら水溶性薬剤は単に外用塗布するのみでは経皮吸収されにくいという問題があった。
そこで従来より、歯科、眼科、泌尿器科等の医療分野で、水溶性薬剤の経皮または粘膜吸収を促進させるためにイオントフォレーシス(イオン導入)の技術が利用されている。イオントフォレーシスとは、肌に比較的低い電流(例えば10V、0.5mA/cm2程度)を数分から数時間適用することで、本来皮膚透過性が低い水溶性薬剤やペプチド性物質等の経皮送達を促進させる手法である。例えば、水溶性ステロイド(特許文献1)、および局所麻酔剤としてのリドカイン塩(特許文献2)などについてイオントフォレーシスによる投与が報告されている。
さらに近年、美容業界でも美容皮膚クリニックやエステ等において、水溶性薬剤、特にビタミンCまたはその誘導体(アスコルビン酸またはその誘導体)のイオントフォレーシスが行われるようになった。ビタミンCは粉末を単に水に溶かすだけでマイナスに荷電するため、マイナス極側からのイオントフォレーシスによってその経皮送達を高めることができる。
しかしながら、薬剤をイオン導入するには、pHや塩濃度等を調整してイオン導入可能な製剤を調製する必要があり、また全ての水溶性薬剤をイオン導入できるわけではない。さらに、単にイオン導入するのみでは水溶性薬剤の経皮送達を十分高めることができない場合があり、より簡便かつ効果的に多種多様な水溶性薬剤の経皮送達を高めることが求められていた。
国際公開第96/011034号パンフレット 特開平10−316590号公報
本発明は、上記のような事情に鑑み、より簡便かつ効果的に水溶性薬剤の経皮送達を高めることができる処理方法、ならびにそのためのキットを提供することを目的とするものである。
本発明は、水溶性薬剤を皮膚に塗布する前に、プラス極側からのイオントフォレーシス(以下Anodal IPと称する)を施して皮膚を前処理することによって、水溶性薬剤の経皮送達を顕著に高め得ることを見出し、本発明を達成するに至った。
皮膚に微弱電流を与えるとプラス極側の皮膚において保水作用が生じ、皮膚の水分量が一過性に増加することがわれわれの研究で見出された。プラス極側の皮膚における保水作用は、負に帯電している角層に吸着している陽イオンがマイナス極に引かれる際に生じるプラス極からマイナス極側への水の流れによる電気浸透流(electro-osmosis)がその1つの要因であると考えられる。図1に、微弱電流を与えた際に生じるプラス極での保水作用の機構を概説する。したがって、皮膚をAnodal IPで前処理すると皮膚が水和して水溶性薬剤の皮膚への浸透が高められると考えられる。
本発明の美容方法は、イオン性物質含有組成物を皮膚に接触させてAnodal IPを施した後、水溶性薬剤含有組成物を前記皮膚に塗布することを特徴とする。
また、本発明の経皮送達用薬剤キットは、イオン性物質含有組成物と、水溶性薬剤含有組成物とを含み、前記イオン性物質含有組成物を皮膚に接触させてAnodal IPを施した後、前記水溶性薬剤含有組成物を前記皮膚に塗布することを特徴とする。
前処理としてAnodal IPを施すことによって皮膚が水和し、その後塗布する水溶性薬剤が皮膚に浸透しやすくなる。したがって、Anodal IPの後、水溶性薬剤を塗布するだけでその経皮送達を高めることができるが、例えば水溶性薬剤がアスコルビン酸のようにマイナスに荷電するものである場合、それを塗布した後、マイナス極側からのイオントフォレーシス(以下Cathodal IPと称する)を施すことによって、水溶性薬剤の経皮送達をさらに高めることができる。
本発明の経皮送達用薬剤キットは、イオン導入器をさらに含んでいてよく、限定はされないが、例えば美容キットとすることができる。
本明細書において、「Anodal IP」とは、組成物を接触させた皮膚にプラス電極を当てて(すなわちプラス極を導入極として)イオン導入することを意味する。また、「Cathodal IP」とは、組成物を接触させた皮膚にマイナス電極を当てて(すなわちマイナス極を導入極として)イオン導入することを意味する。
本発明は、水溶性薬剤を皮膚に塗布する前に皮膚にAnodal IPを施すことによって、水溶性薬剤の経皮送達を顕著に高めることができ、短期間で効率的に高い薬剤効果をもたらすことが可能である。
本発明で用いるイオン性物質含有組成物は、Anodal IPによるイオン導入を可能にするものであれば特に限定されず、通常Anodal IPで用いられている任意のイオン導入剤を本発明において用いることができる。そのpHも、本発明の目的を達成できる限り特に限定されないが、肌への刺激の観点から好ましくはpH3.5から10.5であり、より好ましくはpH5から8.5である。例えば生理食塩水や、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、クエン酸緩衝液等の任意の緩衝液を本発明において用いてもよい。あるいは、例えばトラネキサム酸や、アルギニン等の塩基性アミノ酸のようなプラスに荷電するイオン性薬剤を含有するものであってもよい。イオン性薬剤含有組成物をAnodal IPで用いる場合、その薬剤自体の経皮吸収も顕著に高めることができ、Anodal IPの前処理による水溶性薬剤の経皮吸収促進効果と併せて相乗的効果が得られる。さらに、イオン性物質と共にアルブチンやグリセリン等のノニオン性薬剤を配合したものを用いてもよい。
本明細書において、「水溶性薬剤」とは、水に可溶性である任意の活性成分を意味し、特に限定はされないが、例えば、美白剤、抗炎症剤、抗菌剤、ホルモン剤、ビタミン類、酵素、抗酸化剤、血行促進剤、アミノ酸類、育毛用薬剤及び動植物抽出液等が挙げられる。
美白剤としては、例えばハイドロキノンα−D−グルコース、ハイドロキノンβ−D−グルコース(「アルブチン」ともいう)、ハイドロキノンα−L−グルコース、ハイドロキノンβ−L−グルコース、ハイドロキノンα−D−ガラクトース、ハイドロキノンβ−D−ガラクトース、ハイドロキノンα−L−ガラクトース、ハイドロキノンβ−L−ガラクトース等のハイドロキノン誘導体;コウジ酸及びその誘導体;例えばL−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−硫酸エステルなどのL−アスコルビン酸モノエステル類や、L−アスコルビン酸2−グルコシドなどのL−アスコルビン酸グルコシド類、あるいはこれらの塩等のL−アスコルビン酸及びその誘導体;例えばトラネキサム酸、トラネキサム酸の二量体〔例えば、塩酸トランス−4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等〕、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体〔例えば、トランス−4−アミノメチルシクロへキサンカルボン酸4’−ヒドロキシフェニルエステル、等〕、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体〔例えば、2−(トランス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸およびその塩、等〕、トラネキサム酸のアミド体〔例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミドおよびその塩、トランス−4−(p−メトキシベンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、トランス−4−グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩〕等のトラネキサム酸及びその誘導体;エラグ酸及びその誘導体;例えばサリチル酸、3−メトキシサリチル酸およびその塩、4−メトキシサリチル酸およびその塩、5−メトキシサリチル酸およびその塩等のサリチル酸およびその誘導体;レゾルシン、4−n−ブチルレゾルシノールなどのアルキルレゾルシノール、およびこれらの塩等のレゾルシノール誘導体;美白作用を有する植物抽出物などが例示される。
抗炎症剤としては、グリチルリチン酸塩(例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム等)、アラントインなどが挙げられる。
抗菌剤としては、例えばレゾルシン、イオウ、サリチル酸、ジンクピリチオン、感光素101号、感光素102号、オルトビロックス、ヒノキチオールなどが挙げられる。
ホルモン剤としては、例えばオキシトシン、コルチコトロピン、バソプレッシン、セクレチン、ガストリン、カルシトニンなどが挙げられる。
ビタミン類としては、例えばビタミンB6、ビタミンB6塩酸塩等のビタミンB6誘導体、ビタミンB2、ビタミンB12、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等のニコチン酸誘導体、パントテニールエチルエーテルなどが挙げられる。
酵素としては、例えばトリプシン、塩化リゾチーム、キモトリプシン、セミアルカリプロテナーゼ、セラペプターゼ、リパーゼ、ヒアルロニダーゼなどが挙げられる。
抗酸化剤としては、例えばチオタウリン、グルタチオン、カテキン、アルブミン、フェリチン、メタロチオネインなどが挙げられる。
血行促進剤としては、例えばアセチルコリン誘導体、セファランチン、塩化カルブロニウム等が挙げられる。
アミノ酸類としては、例えばセリン、メチオニン、トリプトファン等が挙げられる。
育毛用薬剤としては、センブリエキス、アセチルコリン誘導体、セファランチン、塩化カルプロニウム等の血行促進剤、トウガラシチンキ、カンタリスエキス、ノニル酸バニルアミド等の局所刺激剤、ピリドキシン若しくはその誘導体等の抗脂漏剤、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノール、ジンクピリチオン、感光素101号、感光素102号、オルトピロックス、ヒノキチオール等の抗菌剤、感光素301号、プラセンタエキス、ビオチン等の代謝賦活剤、セリン、メチオニン、トリプトファン等のアミノ酸類、ビタミンB2、B12、パントテン酸若しくはその誘導体などのビタミン類等が挙げられる。
動植物抽出物のうち植物抽出物としては、例えば、茶エキス、イザヨイバラエキス、オウゴンエキス、ドクダミエキス、オウバクエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、キナエキス、ユキノシタエキス、クララエキス、コウホネエキス、ウイキョウエキス、サクラソウエキス、バラエキス、ジオウエキス、レモンエキス、シコンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、スギナエキス、セージエキス、タイムエキス、海藻エキス、キューカンバエキス、チョウジエキス、キイチゴエキス、メリッサエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、モモエキス、桃葉エキス、クワエキス、ヤグルマギクエキス、ハマメリスエキス、カンゾウエキス、イチョウエキス、イチヤクエキス、センブリエキス、トウガラシチンキエキス、カンタリスエキスなどが挙げられる。また、動物抽出物としては、プラセンタエキス、コラーゲンなどが好ましく用いられる。
水溶性薬剤がマイナスに荷電している場合、塗布後Cathoda IPを施すことによってその経皮送達をさらに促進させることができる。そのようなマイナスに荷電する水溶性薬剤として、限定はされないが、例えばアスコルビン酸や、両性化合物であるトラネキサム酸等が挙げられる。トラネキサム酸は単に水に溶解させただけではほとんど解離しておらずイオン導入することはできないが、pHを3.5から6.5の弱酸性にするとプラスに荷電しAnodal IPによって経皮送達を顕著に高め得ることができ、一方pH8.5から10.5の弱アルカリ性にするとマイナスに荷電してCathodal IPによって経皮送達を高めることができる。
尚、本明細書において、アスコルビン酸には薬学上許容されるその誘導体および塩が含まれる。アスコルビン酸誘導体として、例えばアスコルビン酸リン酸、アスコルビン酸2グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸または2-O-エチルアスコルビン酸等のエチルアスコルビン酸(ビタミンCエチル)等が挙げられ、また塩としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。安定性に優れていることから、例えばアスコルビン酸リン酸ナトリウムやアスコルビン酸リン酸マグネシウム等のアスコルビン酸リン酸塩を用いることが好ましい。
本発明で用いる水溶性薬剤含有組成物は、上述したような水溶性薬剤の1種または2種以上を含有する。また、水溶性薬剤の配合量は、特に限定はされないが、例えば、組成物全量に対して、好ましくは0.001質量%から10質量%、より好ましくは0.005質量%から5質量%、さらに好ましくは0.01質量%から1質量%である。
本発明で用いるイオン性物質含有組成物および水溶性薬剤含有組成物の剤形は本発明の目的を達成できる限り限定されず、例えば、水溶液、ゲル状水溶液、水含有成型ゲル剤、ゲル状軟膏、水含有成型ゲルを担持したシート状製剤、あるいはスクワランやエステル油などの油分を含むO/Wエマルションなどの任意の形態で提供される。
さらに、それら組成物は、本発明の目的を達成できる限り、上述した構成成分の他に、目的とする剤形において通常用いられている他の任意の成分を必要に応じて適宜配合することができる。そのような成分として、特に限定はされないが、例えば、保湿剤、増粘剤、アルコールなどの有機溶媒等が挙げられる。
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、フルクトース、マンノース、エリスリトール、トレハロース、キシリトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸等が挙げられる。
また増粘剤としては、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、寒天、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト等が挙げられる。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が挙げられる。
さらに、例えばフェノキシエタノール、パラベン等の防腐剤や、例えばブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤、さらには、必要に応じて、上述した物質以外に緩衝剤またはpH調整剤等を配合してもよいが、安全性の観点から防腐剤や酸化防止剤等を含有しないことが好ましい。
本発明の美容方法において、組成物を皮膚に接触または塗布する方法は、本発明の目的が達成される限り特に限定されず、例えば水溶液またはゲル状製剤またはO/Wエマルションを直接皮膚に塗布したり、あるいは例えばガーゼ等に組成物を含浸させて皮膚に適用してもよい。また、シート状の組成物を皮膚に直接貼り付けてもよい。あるいはイオントフォレーシスを行う場合、イオントフォレーシス装置の電極構造体に一体化した薬剤貯蔵部に組成物を含ませてパッドやイオン交換膜等を介して皮膚に接触させてもよい。その適用部位も特に限定されず、顔、腕、背部、足、胸部等、体のいかなる皮膚であってもよい。
イオントフォレーシスでは、組成物を接触または塗布した皮膚にプラス電極またはマイナス電極を当てて微弱電流を与える(Anodal IPまたはCathodal IP)。イオントフォレーシスの手法、装置、電圧の印加条件等は、通常用いられている任意のものを用いることができる。
例えば、電極としては、白金、カーボン、銀、塩化銀電極などを用いることができ、通電方法も直接型、パルス型、パルス脱分極型など任意の方法でよい。
また電流密度も限定されないが、好ましくは0.001〜0.5mA/cm2であり、より好ましくは0.01〜0.4mA/cm2であり、さらに好ましくは0.05〜0.3mA/cm2である。0.001mA/cm2未満であると経皮送達促進効果が十分得られない場合があり、また0.5mA/cm2を超えると皮膚刺激性を示す場合がある。
Anodal IPおよびCathodal IPの施術時間も特に限定されないが、1施術当り、通常0.5〜60分であり、より好ましくは1〜30分である。
本発明において、イオン性物質含有組成物を皮膚に接触させてAnodal IPを施した後、通常すぐに水溶性薬剤含有組成物を前記皮膚に塗布するが、Anodal IPの後、水溶性薬剤を塗布する前に皮膚を洗浄して皮膚上のイオン性物質含有組成物を除去してもよい。皮膚を洗浄する方法や手段は特に限定されず、例えば単に皮膚を布やウェットティッシュ等で拭いて皮膚上の組成物を除去してもよく、あるいは水または洗剤等で洗浄してもよい。また、Anodal IPの施術と水溶性薬剤の塗布との間隔は、本発明の効果を達成できる限り特に限定はされないが、通常10分以内であり、より好ましくは5分以内であり、さらに好ましくは約3分以内である。
本発明の美容方法は、単独で行ってもよいし、あるいは他の任意の美容方法と組み合わせてもよい。例えば、水溶性薬剤が美白剤、抗炎症剤、抗酸化剤等である場合、例えば、α−ヒドロキシ酸、トリクロロ酢酸、サリチル酸、またはフェノール等の化学物質を皮膚に塗布して皮膚表層部を一定の深さで剥離させるケミカルピーリング施術後の皮膚に本発明の美容方法を適用することによって、ケミカルピーリングによる乾燥、炎症、肌荒れ等を効果的に軽減することができ、また相乗的な美白および美肌効果をもたらすことができる。
本発明の経皮送達用薬剤キットは、上記のイオン性物質含有組成物および水溶性薬剤含有組成物の他に、イオン導入器をさらに含んでいてよい。導入剤等とイオン導入器をセットにすることによって、施術がより簡便になり、例えば自宅での施術も可能となる。本明細書において「イオン導入器」は、プラス極とマイナス極の電極を介して皮膚に0.001〜0.5mA/cm2程度の微弱電流を流し得るものであれば特に限定されず、通常イオントフォレーシスで用いられている任意のものを用いることができる。また、より手軽かつ簡便に微弱電流を皮膚に適用できることから、シート型の微小電池をパッチシートに埋め込んだものを本発明において用いてもよい。例えば、3Vの電池を組み込んだパッチシートを、電極を被覆するハイドロゲルを介して単に皮膚に貼り付けるのみで微弱電流を与えることができ、貼り付ける電極の位置を入れかえることによって、Anodal IPとCathodal IPを切りかえることができ、また、シートを剥がすことによって簡単に処理を中止できる。その場合、皮膚に接触するハイドロゲル中に上記のイオン性物質含有組成物や水溶性薬剤含有組成物を配合させてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
in vitro皮膚透過実験でのAnodal IPの前処理の効果の検討
Anodal IPの前処理による水溶性薬剤の経皮送達促進効果についてin vitro皮膚透過試験で検討した。
水溶性薬剤としてアスコルビン酸リン酸ナトリウム(Sodium ascorbyl-2-phosphate:以下APSと略す)(昭和電工株式会社)を用い、表1に示す処方でAPS製剤を調製した。APSはマイナスに荷電しており、Cathodal IPによって導入することも可能である。配合量は製剤全量に対する質量%で表す:
Figure 0004658777
実験方法
in vitro 皮膚透過実験
in vitro経皮透過実験は、垂直型セル(フランツセル)を用いて実施した。ヘアレスマウス皮膚(星野試験動物飼育所)をフランツセルに装着し、角層に面したドナー側には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.5)(タカラバイオ株式会社)または薬剤配合製剤を3ml添加し、真皮に面したレシーバー側にはPBSを7.5ml満たした。ファンクションジェネレーター(FG273;KENWOOD製)を電源として、Ag/AgCl電極を組み込み、0.28mA/cm2になるようにデジタルマルチメーターで確認しながら実験を行った。プラス極を導入極とする場合(Anodal IP)は、ドナー液側にAg電極、レシーバー液側にAgCl電極を用い、逆にマイナス極を導入極とする場合(Cathodal IP)は、ドナー液側にAgCl電極、レシーバー液側にAg電極を用いて、0.28mA/cm2で30分間電流を流した。またpassiveでは電流を流さなかった。図2に、in vitro皮膚透過実験の概略を示す。また、表2に実験スケジュールを示す:
Figure 0004658777
APS(passive)(前処理なし)では、Anodal IPによる前処理なしでAPS製剤を電流負荷しないで導入し、APS(passive)(前処理あり)では、PBSのAnodal IPで30分間前処理した後、APS製剤を電流負荷しないで導入した。また、APS(Cathodal IP)(前処理なし)では、Anodal IPによる前処理なしでAPS製剤をCathodal IPで導入し、APS(Cathodal IP)(前処理あり)では、PBSのAnodal IPで30分間前処理した後、APS製剤をCathodal IPで導入した。実験終了後皮膚を採取し、熱剥離法により角層および表皮(角層表皮)と真皮の2層に分離し、イオン交換水にて37℃で16時間抽出し、各々の層におけるAPSの皮膚中濃度をLC-MSにより測定した。
APSの角層表皮濃度の結果を図3に示す。APSの角層表皮濃度は、APS(passive)(前処理なし)で0.41μg/cm2であったのに対し、APS(passive) (前処理あり)では1.27μg/cm2であり、Anodal IPで前処理することによってAPSの経皮吸収が有意に高められた。さらに、APSの角層表皮濃度は、APS(Cathodal IP)(前処理なし)で1.54μg/cm2であるのに対し、APS(Cathodal IP)(前処理あり)では3.24μg/cm2と顕著に高められ、APSをCathodal IPで導入する場合も、皮膚をAnodal IPで前処理することによってその導入効果が顕著に高められた。図示はしていないが、APSの真皮濃度でも同様の傾向が認められた。
上記の結果から、Aathodal IPで皮膚を前処理することによって、その皮膚に塗布した水溶性薬剤の経皮送達を顕著に高めることができ、特に、水溶性薬剤がマイナスに荷電している場合Cathodal IPを施すことによってより高い経皮送達を達成し得ることが示唆された。
以下に、本発明の美容方法またはキットにおいて用いられるイオン性物質含有組成物および水溶性薬剤含有組成物の処方例を示す。尚、配合量は全て組成物全量に対する質量%で表す。本発明において下記の処方のイオン性薬剤含有組成物および水溶性薬剤含有組成物を任意に組み合わせて用いることができる。
イオン性物質含有組成物(処方例1)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 97.6
トラネキサム酸 2.0
クエン酸(食品) 0.4
pH 4.9

イオン性物質含有組成物(処方例2)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 98.5
ヒアルロン酸Na 1.0
フェノキシエタノール 0.5
pH 6.5

イオン性物質含有組成物(処方例3)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 96.1
アルブチン 3.0
クエン酸 0.08
クエン酸Na 0.32
フェノキシエタノール 0.5
pH 6.5

イオン性物質含有組成物(処方例4)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 94.1
グリセリン 5.0
クエン酸 0.08
クエン酸Na 0.32
フェノキシエタノール 0.5
pH 6.5

イオン性物質含有組成物(処方例5)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 94.1
1,3−ブチレングリコール 5.0
クエン酸 0.08
クエン酸Na 0.32
フェノキシエタノール 0.5
pH 6.5


水溶性薬剤含有組成物(処方例1)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 96.7
アスコルビン酸 2.0
KOH(試薬) 0.8
フェノキシエタノール 0.5
pH 6.1

水溶性薬剤含有組成物(処方例2)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 91.0
アスコルビン酸リン酸ナトリウム 8.0
クエン酸 0.5
フェノキシエタノール 0.5
pH 8.0

水溶性薬剤含有組成物(処方例3)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 97.1
アスコルビン酸グルコシド 2.0
KOH(試薬) 0.4
フェノキシエタノール 0.5
pH 6.5

水溶性薬剤含有組成物(処方例4)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 97.2
3−0−エチルアスコルビン酸 2.0
クエン酸Na 0.3
フェノキシエタノール 0.5
pH 6.5

水溶性薬剤含有組成物(処方例5)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 97.1
トラネキサム酸 2.0
クエン酸 0.4
フェノキシエタノール 0.5
pH 5.0

水溶性薬剤含有組成物(処方例6)
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 96.1
アルブチン 3.0
クエン酸 0.08
クエン酸Na 0.32
フェノキシエタノール 0.5
pH 6.5
上記処方例のイオン性物質含有組成物のAnodal IPを施した後、水溶性薬剤含有組成物を皮膚に塗布することによって、あるいはさらにCathodal IPを施すことによって、水溶性薬剤の経皮送達を顕著に高めることができ、短期間で効率的に高い薬剤効果をもたらすことができる。
プラス極側から微弱電流を与えた際に生じるプラス極での保水作用の機構を示す概略図 in vitro経皮送達実験の概略図 Anodal IPの前処理による水溶性薬剤の経皮送達への影響を示すグラフ。

Claims (3)

  1. イオン性物質含有組成物を皮膚に接触させてプラス極側からのイオントフォレーシス(Anodal IP)を施した後、マイナスに荷電した水溶性薬剤(医薬用を除く)を含有する組成物を前記皮膚に塗布することを特徴とする美容方法(医療行為を除く)
  2. 前記塗布の後、マイナス極側からのイオントフォレーシス(Cathodal IP)を施すことをさらに含む請求項1記載の美容方法。
  3. 前記水溶性薬剤がアスコルビン酸であることを特徴とする請求項1または2記載の美容方法。
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