JP2010260796A - イオントフォレーシスによる毛穴ケア美容方法 - Google Patents

イオントフォレーシスによる毛穴ケア美容方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 グリシルグリシンの経皮送達を高めて、より短期間でかつ効果的に毛穴を収縮させて毛穴の目立ちを改善する。
【解決手段】 グリシルグリシンを含有する組成物を皮膚に適用した後、該皮膚にマイナス極側からのイオントフォレーシスを施す。
【選択図】図7

Description

本発明は、イオントフォレーシスを利用した美容方法およびイオントフォレーシス用の組成物に関するものである。より詳細には、イオントフォレーシスによりグリシルグリシンの経皮送達を高めて毛穴ケアを行う美容方法および組成物に関するものである。
近年、幅広い年代の女性において毛穴の目立ちに対する悩みが大きくなっており、これを改善する美容方法および皮膚外用組成物に対する関心が高まっている。毛穴の目立ちを改善する方法として、収斂化粧水や角栓の除去による対応が一般的であり、またファンデーションで隠して見た目を改善することが行われている。
しかしながら、収斂化粧水は、アルコールにより一時的に皮膚表面温度を下げたり、有機酸等により蛋白質を凝固させたりして一時的に肌を引き締めるものであるため、皮膚への負荷が大きく、また毛穴の目立ちの根本的な解決となっておらず、その効果も充分ではなかった。
また、角栓除去は毛穴につまった角栓を物理的に除去する方法であり、例えば、塩生成基を有する高分子化合物を含有した角栓除去剤(例えば、特許文献1)、水不溶性シクロデキストリンポリマーを含有した化粧料(例えば、特許文献2)、粘度が5〜80mPa・s/25℃の油分を50質量%以上含有した角栓除去用化粧料(例えば、特許文献3)等による除去が知られている。このような角栓を除去する方法では物理的な力が肌にダメージになることもあり、皮膚への副作用が問題となることがあった。またその効果も一時的で角栓がすぐに再生してしまうことや、角栓を除去すると逆に毛穴が大きくなってしまうこともあり、必ずしも効果は充分とはいえなかった。
本発明者らは、毛穴の目立つメカニズムについて鋭意検討を行い、
(1)毛孔部周囲のすり鉢状に窪んだ部分が毛穴として認識され、この部分が広いと目立つこと、
(2)さらにこのすり鉢状部分の角層が不全角化状態(本来消失しているはずの核が残存している)であること、
(3)毛穴の目立つ人は皮脂量、特に不飽和脂肪酸が多いこと、
(4)この不飽和脂肪酸は不全角化の要因になること、
(5)毛穴の目立ちは皮脂中の不飽和脂肪酸が要因となっている可能性が高いこと
等を見出し(非特許文献1)、斯かる知見に基づき、不飽和脂肪酸による不全角化を抑制する作用を有するグリシルグリシン等のアミノカルボン酸誘導体が毛穴収縮効果を有し、毛穴の目立ちを改善できることを明らかにした(特許文献4)。表皮角化細胞(ケラチノサイト)は基底層で増殖し、上層に移行して成熟して角層となる際に角化細胞内の核が消失して細胞が扁平化するが、一部で細胞内に核を有した未熟な状態で角層中に存在することがあり(不全角化)、この不全角化が角層重層剥離を起こして毛穴拡大の原因となる。グリシルグリシンは、表皮角化細胞(ケラチノサイト)のグリシンレセプターに作用して角層の不全角化を抑制することにより毛穴を収縮させることができ、毛穴の目立ちを改善できると考えられる。
しかしながら、グリシルグリシンにより毛穴の目立ちを改善するには、毛孔部周囲のすり鉢状に窪んだ部分の角層に作用させてその部分の角層の不全角化を抑制する必要があり、美容液等にグリシルグリシンを配合しても毛穴周囲の角層に吸収されて作用するグリシルグリシンの量が少なく、その毛穴収縮効果には限界があった。従って、より効果的に毛穴の目立ちを改善するために、グリシルリシンを毛孔部周囲の角層により高濃度でかつ効率的に送達させることが強く望まれていた。
一方で、近年、医薬品や化粧料等に含まれる有効成分の経皮または粘膜吸収を促進させるために、イオントフォレーシス(イオン導入)の技術が利用されている。イオントフォレーシスとは、皮膚等に電極を当てて微弱な電流を流すことにより、本来皮膚に浸透しにくい成分の経皮送達を促進させる手法であり、電流によって形成される電場での同種電荷の電気反発(electro-repulsion)による力と、負に帯電している角層に吸着している陽イオンがマイナス極に引かれる際に生じるプラス極からマイナス極側への水の流れによる電気浸透流(electro-osmosis)による力によって、成分の経皮送達がもたらされると考えられている。図1に、イオントフォレーシスによる経皮送達の機序の概略を図示する。
例えば、水溶性ステロイド(特許文献5)、および局所麻酔剤としてのリドカイン塩(特許文献6)などについてイオントフォレーシスによる投与が報告されている。
また、美容業界では、美白や肌質改善のために、ヒトの胎盤の抽出成分であるプラセンタや、ビタミンCについてイオントフォレーシスが行われている。さらに、イオントフォレーシスによりトラネキサム酸の経皮送達を高めて美白および肌荒れ改善効果を高めることも報告されている(特許文献7)。
しかしながら、毛穴ケアにおけるイオントフォレーシスの効果については全く知られていなかった。
特開平5−97627号公報 特開平5−105619号公報 特開2002−241260号公報 特開2005−179342号公報 国際公開第96/011034号パンフレット 特開平10−316590号公報 特開2006−298850号公報
飯田等、第102回日本皮膚科学会総会プログラム・抄録、2003年、103、p846
本発明は、上記のような事情に鑑み、グリシルグリシンの毛孔部周囲の角層への経皮送達を高めて、より短期間でかつ効果的に毛穴を収縮させて毛穴の目立ちを改善することを目的とする。
本発明者は、皮膚に微弱電流を流したときに経付属器官(毛胞、汗腺など)を通って電流が流れやすく、そのため毛孔周辺部位に導入剤をより集積させ得ること、さらには、マイナス極側からのイオントフォレーシスにより、グリシルグリシンの経皮吸収を顕著に高めて高い毛穴収縮効果をもたらし得ることの発見に基づき、本発明を完成するに至った。これまでグリシルグリシンをイオントフォレーシスで導入し得ることは全く知られていなかった。
本発明の毛穴ケア美容方法は、グリシルグリシンを含有する組成物を皮膚に適用した後、該皮膚にマイナス極側からのイオントフォレーシスを施すことを特徴とする。
また本発明のイオントフォレーシス用組成物は、グリシルグリシンを含有し、該組成物を皮膚に適用した後、該皮膚にマイナス極側からのイオントフォレーシスが施されることを特徴とする。
グリシルグリシンをマイナス極側からのイオントフォレーシスにより導入させることにより、グリシルグリシンの毛孔部周囲の角層への送達を高めて、グリシルグリシンによる毛穴収縮効果により毛穴の目立ちをより効果的に改善することができる。
本発明のイオントフォレーシス用の組成物は、6.5から8.5のpHを有することが好ましい。斯かる範囲のpHにおいて、より安定かつ効果的にグリシルグリシンのイオントフォレーシスによる毛穴ケアを行うことができる。
本明細書において、「マイナス極側からのイオントフォレーシス」とは、組成物を接触させた皮膚にマイナス電極を当てて(すなわちマイナス極を導入極として)イオン導入すること(Cathodal IP)を意味する。
また、本明細書において「毛穴ケア」とは、毛穴の目立ちを改善することを意味し、毛穴の収縮や毛穴のきめの改善等を含む。
本発明は、イオントフォレーシスによりグリシルグリシンの毛孔部周囲の角層への送達を高めることができ、グリシルグリシンの毛穴収縮効果により短期間でかつ効果的に毛穴の目立ちを改善することができる。
イオントフォレーシスによる経皮送達の機序の概略図 イオントフォレーシスによる導入剤の毛孔部周囲への集積を示す写真 in vitroイオントフォレーシス実験の概略図 グリシルグリシンの累積透過量に対するpHおよび導入極の影響を示すグラフ イオントフォレーシスによるグリシルグリシンの皮内濃度に対する影響を示すグラフ 各種基剤に配合したグリシルグリシンの累積透過量を示すグラフ グリシルグリシンのイオントフォレーシス施術による不全角化抑制効果を示すグラフ グリシルグリシンのイオントフォレーシス施術による毛穴面積縮小効果を示すグラフ 被験者の施術側に関するアンケート結果を示すグラフ 被験者の非施術側に関するアンケート結果を示すグラフ
本発明の美容方法で用いる組成物または本発明のイオントフォレーシス用の組成物はグリシルグリシンを含有する。
グリシルグリシンはカルボキシル基とアミノ基とを有する両性化合物であり、pHによって解離状態が異なり、等電点は約5.65で、Pka1は3.12、pKaは8.17である。pHを等電点より低くするとグリシルグリシンはプラスに荷電し、一方pHを等電点より高くするとマイナスに荷電する。
以下にグリシルグリシンの解離状態を示す:
本発明において、グリシルグリシンをマイナスに荷電させてマイナス電極からのイオントフォレーシスを施すことによって、その経皮吸収を顕著に高めることができる。本発明の組成物は、グリシルグリシンをマイナスに荷電させ得るpH、すなわち5.65より高いpHであればよいが、イオントフォレーシスによるグリシルグリシンの導入促進効果、ならびに安定性および安全性の観点から、本発明の組成物はpH6.5から8.5であることが好ましく、より好ましくはpH7から8である。グリシルグリシンはpHが8.5より高いと不安定になり、また角層にダメージを与える可能性が懸念される。さらに、pHが6.5より低いと経皮吸収促進効果が十分得られないことがある。
本発明の組成物におけるグリシルグリシンの配合量は、本願発明の効果を達成できる限り特に限定はされないが、組成物全量に対して、好ましくは0.5質量%〜10.0質量%であり、より好ましくは1質量%〜5質量%である。0.5質量%未満の配合量では、十分な毛穴ケア効果をもたらすことができない場合があり、また、組成物中10.0質量%を越えて配合しても、配合量の増加に見合った効果の増強が見られなくなり好ましくない。
例えばKOH、NaOH、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の有機アミン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸等、任意の塩基性物質を単独でまたは2種以上を組み合わせて配合して、本発明の組成物のpHを上述したような所望のpHに調整することができる。それら塩基性物質の配合量は所望のpHを達成できる量であり、用いる塩基性物質の種類やグリシルグリシンの配合量等によって異なり限定はされない。
本発明の組成物には、塩を配合することもできるが、Clなどの陰イオンがグリシルグリシンの競合イオンとなるため、例えばNaCl等の塩の配合量は、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは実質的に塩を含まない。
本発明における組成物は、限定はされないが、例えば、水溶液、ゲル状水溶液、水含有成型ゲル剤、ゲル状軟膏、水含有成型ゲルを担持したシート状製剤、あるいはスクワランやエステル油などの油分を含むO/Wエマルションなどの形態で提供される。
さらに、本発明における組成物は、上記した構成成分の他に、水溶液、ゲル剤やエマルション等の目的とする剤形において通常用いられている他の任意の成分を必要に応じて適宜配合することができる。そのような成分として、特に限定はされないが、例えば、保湿剤、増粘剤、アルコールなどの有機溶媒等が挙げられる。
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、フルクトース、マンノース、エリスリトール、トレハロース、キシリトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸等が挙げられる。
また増粘剤としては、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、寒天、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト等が挙げられる。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が挙げられる。
さらに、例えばフェノキシエタノール、パラベン等の防腐剤や、例えばブチルヒドロキシトルエン,トコフェロール,フィチン等の酸化防止剤、さらには、必要に応じて、上述した酸または塩基性物質以外の緩衝剤またはpH調整剤等を配合してもよいが、安全性の観点から防腐剤や酸化防止剤等を含有しないことが好ましい。
本発明の美容方法において、組成物を皮膚に適用する方法は、組成物中のグリシルグリシンを経皮送達できるものであればいかなる方法を採用してもよい。例えば水溶液またはゲル状製剤またはO/Wエマルションを直接皮膚に塗布したり、あるいは例えばガーゼ等に組成物を含浸させて皮膚に適用してもよい。また、シート状の組成物を皮膚に直接貼り付けてもよい。あるいはイオントフォレーシス装置の電極構造体に一体化した薬剤貯蔵部に組成物を含ませてパッドやイオン交換膜等を介して皮膚に接触させてもよい。その適用部位も特に限定されず、顔、腕、背部、足、胸部等、体のいかなる皮膚であってもよい。
組成物を接触させた皮膚にプラス電極またはマイナス電極を当てて、イオントフォレーシスを施す。イオントフォレーシスの手法、装置、電圧の印加条件等は、通常用いられている任意のものを用いることができる。
例えば、電極としては、白金、カーボン、銀、塩化銀電極などを用いることができ、通電方法も直接型、パルス型、パルス脱分極型など任意の方法でよい。
また電流密度も限定されないが、好ましくは0.001〜0.5mA/cmであり、より好ましくは0.01〜0.4mA/cmであり、さらに好ましくは0.05〜0.3mA/cmである。0.001mA/cm未満であるとグリシルグリシンの経皮送達が十分でない場合があり、また0.5mA/cmを超えると皮膚刺激性を示す場合がある。
イオントフォレーシスの施術時間も特に限定されないが、通常0.5〜30分であり、より好ましくは1〜20分である。また、施術回数や間隔も任意であってよい。
本発明の美容方法は、イオントフォレーシスを用いたグリシルグリシンの経皮送達によって毛穴ケア効果をもたらし得るものであればよく、単独で行ってもよいし、あるいは他の任意の美容方法と組み合わせてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
1.毛孔部周囲へのイオントフォレーシスによる導入剤集積の検討
蛍光色素(フルオレセインナトリウム)を導入剤として用い、マイナス極側からのイオントフォレーシスによる導入剤の毛孔部周囲への集積について検討した。
ラボスキン(株式会社星野試験動物飼育所より購入)に蛍光色素を塗布した後、0.2mA/cmで20分間マイナス極側から電流を流した。また、対照として電流を流さないで同様に実験した(Passive)。共焦点レーザー蛍光顕微鏡で観察した。
図2に共焦点レーザー蛍光顕微鏡で観察した写真を示す。毛孔部周囲で電流が流れやすくその部位に導入剤をより集積させ得ることが示された。
2.イオントフォレーシスによるグリシルグリシンの経皮送達促進効果の検討
イオントフォレーシス実験装置としてフランツセルを用い、in vitro実験によりイオントフォレーシスによるグリシルグリシンの経皮送達促進効果について検討した。電源としてファンクションジェネレーター(FG273;KENWOOD製)を用いた。また、プラス電極としてAg電極、マイナス電極としてAgCl電極を用いた。各組成物をドナー液とし、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)をレシーバー液として用いた。図3に、in vitroイオントフォレーシス実験の概略を示す。
予め37℃に保温したセルにラボスキンを挟み、真皮層側のセルにレシーバー液7.5ml、角質層側のセルにドナー液3mlを添加した。プラス極を導入極とする場合(Anodal IP)は、ドナー液側にAg電極、レシーバー液側にAgCl電極を用い、逆にマイナス極を導入極とする場合(Cathodal IP)は、ドナー液側にAgCl電極、レシーバー液側にAg電極を用いて、0.28mA/cm、3kHz、50%dutyの条件下で30分間電流を流した。また、対照として、各組成物について電流を流さないで同様に実験した(Passive)。レシーバー液を経時的にサンプリングし、グリシルグリシンの濃度をLC−MSによる微量定量法を用いて測定して累積透過量を求めた。累積透過量は、一定面積あたりの薬物の皮膚透過量(μg/cm2)と定義される。また、セルに挟んだラボスキンのグリシルグリシン濃度を測定して皮内濃度(角層表皮濃度)を求めた。
グリシルグリシン含有組成物のpHおよび導入極の検討
表1に示す処方で、それぞれpH4.9、pH5.7およびpH8.0のグリシルグリシン含有組成物を調製した。配合量はいずれも組成物全量に対する質量%で表す。グリシルグリシンはpH4.9ではプラスに荷電し、pH5.7では見かけ上ほとんど電荷をもたず、またpH8.0ではマイナスに荷電する。
各試料につき上記の方法により、プラス極側(Anodal IP)またはマイナス極側(Cathodal IP)から電流を流しまた対照として電流を流さないで(Passive)累積透過量を求めた。
図4に、各pHおよび導入極でのグリシルグリシンの累積透過量(平均値±SD(n=3))を示す。組成物のpHを弱アルカリ(pH8.0)にして、マイナス極側からイオン導入した場合にグリシルグリシンの累積透過量が最も高く、グリシルグリシンの経皮吸収を顕著に高めることができた。一方、酸性pH(pH4.9)にしてプラス極側からイオン導入してもその経皮吸収をほとんど高めることはできなかった。
イオントフォレーシスによるグリシルグリシンの皮内濃度に対する効果の検討
下記表2に示す1.6質量%のグリシルグリシンを含有するpH5.7およびpH7.5の組成物を用い、上記と同様の実験によりマイナス極からのイオントフォレーシスを施した場合(Cathodal IP)および対照として電流を流さない場合 (Passive)において、グリシルグリシンの皮内濃度(角層表皮濃度)を測定した。
図5にセルに挟んだラボスキン中のグリシルグリシンの皮内濃度(角層表皮濃度)(平均値±SD(n=3))を示す。
組成物のpHをpH7.5にしてマイナス極側からイオン導入する(Cathodal)ことにより、電流を流さない場合(Passive)と比較して、角層表皮内のグリシルグリシン濃度を有意に高めることができた。また、pH5.7でもマイナス極側からのイオン導入により、電流を流さない場合と比較して、僅かではあるがグリシルグリシンの角層表皮内濃度を高めることができた。
イオントフォレーシスによるグリシルグリシンの経皮送達に対する基剤の影響の検討
下記表3に示すpH約7.5の様々な基剤にグリシルグリシンを配合し、上記と同様の実験方法によりマイナス極側からイオン導入して累積透過量を求めた。
図6に、各試料について、電流を流さない場合(Passive)の30分後の累積透過量を1として、マイナス極側からイオン導入した場合の30分後の累積透過量を相対的累積透過量として示す。いずれの基剤でも、マイナス極側からイオン導入することによりグリシルグリシンの累積透過量を顕著に高めることができた。
3.毛穴ケア効果の検討
下記表4に示す処方で用時調製した3%グリシルグリシン含有組成物(pH7.52)を用いて、グリシルグリシンのイオントフォレーシス施術による毛穴ケア効果について検討した。
毛穴の目立ちの悩みをもつ20代〜50代の女性(平均42.3歳)25名の顔の半面(右側)の頬および鼻に上記処方のグリシルグリシン含有組成物を塗布した後、IP50k(株式会社ジャパンエステティック協会社製)を用いてマイナス極側からイオントフォレーシスを10分間施した。反対側(左側)の半面は未処理のままであった。1週間ごとに計4回施術し、施術開始前(施術前)と最後(4回目)の施術1週間後(施術後)に、不全角化度の測定、レプリカ採取による毛穴面積の測定、画像撮影(VISIA)および医師による視感判定、ならびに被験者のアンケートを実施した。
不全角化度の測定
上述したように、表皮角化細胞(ケラチノサイト)が核を有した未熟な状態(有核細胞)で角層中に存在することがあり(不全角化)、この不全角化が角層重層剥離を起こして毛穴拡大の原因となる。従って、毛穴ケア効果の1つの指標として不全角化抑制効果を評価した。
施術部位および非施術部位の角層を35mmプラスチックマウント(みなと照会)にカットテープNo.660(ニチバン)を貼付したものにより採取した。採取した角層テープを直接、サクラ/ヘマトキシリン3G(サクラ精機)、10μg Hoechst33342(Molecular Probes)/1mLPBSで30分間染色、水洗したのち観察した。
図7に、施術後の有核細胞数(n=25;平均値±SE)を示す。非施術部位では季節にともない有核細胞が増加するのに対し、施術部位においては、それを抑制する傾向が認められた。本発明により角化細胞の不全角化を効果的に抑制できることが示された。
毛穴面積の測定
施術前と施術後に頬部レプリカ(シルフロ)を採取し、広視野共焦点顕微鏡HD100D(レーザーテック社)を用いた3次元解析システム(大栗ら、第103回日本皮膚科学会総会プログラム・抄録、2004年、104、p601)により、すり鉢状部分の面積を計測した。
3.34mm×3.34mmのレプリカ計測部位内で毛穴部位として認識されたすり鉢状部分の面積(mm2)の合計を求めた。1.5mm以下の部分は除外した。
図8に、施術前の毛穴面積に対する施術後の毛穴面積の比率(%)(平均値±SE)を示す。施術側では施術により毛穴面積が施術前と比較して有意に減少(87%)したが、一方、非施術側では102%であり変化しなかった。本発明のグリシルグリシンのイオントフォレーシスにより、毛穴面積を有意に縮小させることができた。
医師による視感判定
施術前と施術後の診察時、専門医師が毛穴の状態を下記の判定基準により視感判定した:
[判定基準]
1.かなりよくなった:毛穴の大きさが小さくなり、状態も改善した
2.よくなった :毛穴の大きさが小さくなり、状態が良くなったようだ
3.ややよくなった :毛穴の大きさが小さくなった.状態が良くなった気がする
4.変わらない :毛穴の大きさ、状態は変わらない
5.悪くなった :毛穴が悪化した
視感判定の結果を表5に示す:
医師の視感判定により、施術側では25名中19名(76%)において毛穴の症状の改善が認められた。
被験者へのアンケートの実施
施術後、肌状態および毛穴の状態等について被験者全員にアンケートを実施した。図9Aおよび9Bにアンケート結果を示す。
施術側について、85%の被験者が毛穴の開きが小さくなったと感じており、被験者の感想においても、高い毛穴改善効果が認められた。
以上の結果から、グリシルグリシン含有組成物を皮膚に適用してマイナス極側からイオントフォレーシスを施すことによって、高い毛穴ケア効果をもたらし得ることが示された。その毛穴ケア効果は従来技術での臨床試験の結果より顕著に優れたものであり、4回の施術により、グリシルグリシンを2ヶ月連用した場合とほぼ同程度の効果を達成できた。

Claims (5)

  1. グリシルグリシンを含有する組成物を皮膚に適用した後、該皮膚にマイナス極側からのイオントフォレーシスを施すことを特徴とする、毛穴ケアの美容方法。
  2. 前記組成物のpHが6.5から8.5であることを特徴とする請求項1記載の美容方法。
  3. イオントフォレーシス用の組成物であって、グリシルグリシンを含有し、該組成物を皮膚に適用した後、該皮膚にマイナス極側からのイオントフォレーシスが施されることを特徴とする組成物。
  4. pHが6.5から8.5であることを特徴とする請求項3記載のイオントフォレーシス用組成物。
  5. 毛穴ケアに使用される請求項3または4記載のイオントフォレーシス用組成物。
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