JP4658379B2 - 二酸化炭素中での過酸化ジアシルの合成 - Google Patents

二酸化炭素中での過酸化ジアシルの合成 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体または超臨界の二酸化炭素中でハロゲン化アシルから過酸化ジアシルを合成する分野にある。
【0002】
【従来の技術】
過酸化ジアシル類は、ポリオレフィン、特に、テトラフルオロエチレンなどのフルオロオレフィンの工業生産に通常使用される開始剤の1つである。過酸化ジアシル類は、R−(C=O)−O−O−(C=O)−Rと表すことができる。その過酸化物は分解して、フリーラジカルとして知られるRを生じ、そのラジカルはオレフィンモノマーと反応して重合サイクルを開始させる。テトラフルオロエチレンを例にとると、
R−(C=O)−O−O−(C=O)−R → 2R−(C=O)−O →2R+2CO
+CF=CF → R−CF−CF
R−CF−CF +CF=CF → R−CF−CF−CF−CF
となる。開始剤から生じるR基はポリマーの「末端基」と呼ばれる。
【0003】
過酸化ジアシル類の古典的な合成は水系合成であった。過酸化水素のアルカリ性水溶液を酸ハロゲン化物の水不混和溶液と接触させる。そのような例は、S.R.SandlerとW.KaroのPolymer Synthesis,Vol.1、p.451、1974年、フロリダ州オーランドのAcademicPress,Inc.および米国特許第5,021,516号に見られる。これは2つの液相、水相と非水相の反応である。式(1)はその反応を示すものである。
【0004】
2R−(C=O)X+H+2NaOH → R−(C=O)−O−O−(C=O)−R+2NaX+2HO (1)
(1)の化学量論から、1モルの過酸化水素が2モルのハロゲン化アシルと反応して1モルの過酸化ジアシルが得られることが明らかである。水への溶解度が低い溶媒にハロゲン化アシルを添加する。過酸化ジアシルが生成するとその溶媒中に吸収される。この方法によって、そのハロゲン化アシルと過酸化ジアシルのアルカリ性水相への暴露が最小限におさえられる。このことは望ましい。その理由は、水は出発物質の有機ハロゲン化アシルおよび生成物である過酸化ジアシルの両方を加水分解するためである。加水分解が起こると、収率が低下し、不純物である酸や過酸などの副生物が生じる。反応の終わりに、過酸化ジアシルを溶解している非水溶媒を分離し、乾燥し、必要に応じて精製する。
【0005】
二酸化炭素(CO)は、最も経済的で環境に優しい重合用非水溶媒の1つである。開始剤をCOに供給できれば、CO中での重合は簡素化される。液体または超臨界の二酸化炭素中で過酸化ジアシルを使用することは既知である(J.T.Kadla他、Polymer Preparation,vol.39,No.2,pp.835〜836,1998年)。しかし、その過酸化物は水性アルカリ過酸化物法を用いて調製され、CFCl−CFCl(CFC−113)に吸収される。次いで、その過酸化物は二酸化炭素に添加されるだけである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、二酸化炭素中での重合を簡素化する技術として、開始剤を二酸化炭素中に供給することが望まれている。したがって、本発明は、二酸化炭素中で過酸化ジアシルを直接合成する方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの形態は、液体または超臨界の二酸化炭素中で有機ハロゲン化アシルを過酸化物複合体(peroxide complex)と接触させる工程を含む過酸化ジアシルの合成方法に関する。
【0008】
本発明の第2の形態は、液体または超臨界の二酸化炭素中の有機ハロゲン化アシルからなる供給原料の流れを過酸化物複合体からなる吸着床と連続的に接触させて、液体または超臨界の二酸化炭素中の過酸化ジアシルからなる生成物の流れを生成することからなる過酸化ジアシルの連続合成方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、液体または超臨界の二酸化炭素の媒体中で有機ハロゲン化アシルを過酸化物複合体と接触させることによる、液体または超臨界の二酸化炭素中での過酸化ジアシルの合成に関する。上述のように、過酸化ジアシルの通常の合成は、水性アルカリ過酸化物とハロゲン化アシルとの反応によるものである。驚くべきことに、ルイス酸である二酸化炭素が、ハロゲン化アシルと過酸化物複合体との反応による過酸化ジアシルの生成に有効な溶媒であるということが分かった。さらに、本発明の好ましい形態は、結果として生じる過酸化ジアシルを含んでいる液体または超臨界の二酸化炭素をその反応の生成物として収集することである。この混合物を他のプロセス、例えば、二酸化炭素中での重合用開始剤を供給するのに直接使用できる。本発明のこの形態は、二酸化炭素中で過酸化ジアシルを高収率で直接合成するルートを提供するものであり、水の存在を最小限にし、および先ず他の溶媒中で過酸化ジアシルを調製し、引き続き、どんな手段であれ、その溶媒を二酸化炭素と交換するという合成ルートにおいては避けられない、いかなる他の有機溶媒をも除去することができる。
【0010】
有機ハロゲン化アシルはR−(C=O)Xという構造の化合物である。Xはハロゲン、すなわち、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す。最も容易に利用できるハロゲン化アシルは、一般に、塩化アシルまたはフッ化アシルである。Rは、その合成条件の下で本発明を行うのに有用な1以上の過酸化物複合体と相溶性である任意の有機基を表す。相溶性であるR基は、望ましくない生成物を生じる反応過程のまたは反応混合物の他の成分によって、またはさもなければその成分と反応することによって、酸化されやすい原子または原子基を含んでいない基である。本発明で許容できるR基には、脂肪族および脂環式の基、エーテル官能性を持ったこれらの同じ基、アリール基およびその置換基が合成条件下で本発明の1以上の過酸化物複合体と相溶性である置換アリール基が含まれる。そのR基は部分的にあるいは完全にハロゲン化されていてもよい。過ハロゲン化されている場合は、そのR基は過フッ素化された基を有するようなただ1種類のハロゲンを有してよく、または、例えば、クロロフッ素化された基を有するような数種類のハロゲンを持っていてもよい。
【0011】
R基は、−COOCH、−SOF、−CN、I、BrまたはHなどのある種の官能基または原子を含むこともできる。R基は、そのポリマーの末端に、すなわち、末端基としてそのポリマーに組み込まれている。そのポリマーを、その末端基を通じて他の分子、例えば、他のモノマーまたはポリマーとさらに反応させることができること、または金属、金属酸化物、顔料などの極性表面あるいは水またはアルコールなどの極性分子との相互作用のために末端にイオン官能性を導入して分散を促進することができることは時として有用である。上述の官能基の中には、例えば、−COOCHおよび−SOF(フルオロスルホニル基)のように加水分解、特に塩基が触媒になる加水分解および求核試薬との反応に敏感なものもある。しかし、本発明の好ましい形態には水相がないことおよび本発明を実施するのに有用な過酸化物複合体の特異性のために、これらの官能基は影響を受けず、これらのハロゲン化アシルに相当する過酸化ジアシルを製造することができる。例えば、FSOCF(C=O)Fから、FSOCF(C=O)−O−O−(C=O)CFSOFを、フッ化スルホニル官能性をスルホン酸に加水分解することなく、製造することができる。そのような加水分解に敏感な基を過酸化ジアシルに組み入れ、それによりポリマーの末端基として導入できるということが本発明による方法のさらなる利点である。
【0012】
本発明に従って過酸化ジアシルを合成する場合、通常は1つ以下の有機ハロゲン化アシルを使用することになる。2つ以上の有機ハロゲン化アシルを使用すればその反応は十分に進むだろうが、2つ以上の過酸化ジアシルが生成することになる。例えば、2つのハロゲン化アシル、A−(C=O)XおよびB−(C=O)Xを使用すると、3つの過酸化ジアシル、すなわち、A−(C=O)−O−O−(C=O)−A、B−(C=O)−O−O−(C=O)−BおよびA−(C=O)−O−O−(C=O)−Bの混合した過酸化ジアシルが予想されるだろう。それら過酸化物の割合は、有機ハロゲン化アシルの相対的な濃度および添加の順序によって、ある程度調節することができる。そのような過酸化物の混合物は、通常望ましくない。何故ならば、過酸化物が異なれば、一般に分解速度も異なるからである。しかし、混合した過酸化ジアシルを望む場合は、本発明による方法を使用し、必要に応じて、分離工程または精製工程を引き続き行うことによって、付随している不必要な過酸化物を減少または除去することができる。
【0013】
アシル基が炭化水素基である過酸化ジアシルを本発明により製造することができる。これらの炭化水素過酸化ジアシルは、炭化水素末端基の存在が許容できるまたは望ましいときにフルオロオレフィンの重合を含む、オレフィンの重合の開始に有用である。低温炭化水素開始剤が必要なときは、過酸化イソブチリルが好ましい。それはハロゲン化イソブチリル、好ましくは塩化イソブチリルから製造することができる。
【0014】
本発明による過酸化ジアシルの合成は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびフッ化ビニルなどのフルオロオレフィンを、ホモポリマーとして、あるいは相互のまたはエチレンおよびパーフルオロアルキルエチレンなどの他のオレフィンとのコポリマーとして重合する開始剤を製造するのに特に有用である。フルオロオレフィンの重合は、不安定な炭素−水素結合を持った化合物が存在すると、連鎖移動を受けやすい。したがって、開始剤にはそのような結合がないことが望ましい。さらに、フルオロポリマーを加工および使用する温度が高いので、ポリマーの末端基の熱安定性および加水分解安定性が重要である。開始剤のR基はそのような末端基の1つの供給源である。したがって、ポリマーの末端基に特別な反応性が必要な場合を除き、開始剤の連鎖移動活性を最小限にし、そしてポリマー鎖の末端基に比べて熱安定性および加水分解安定性を持った末端基を提供するために、そのR基には連鎖移動できる、またはポリマーそのものよりも熱的にまたは加水分解的に安定性が劣る結合がないということが望ましい。フッ化モノマーを重合する場合に、過ハロゲン化されたR基、しかも好ましくは過ハロゲン化されたR基がこの要求を満足させる。ハロゲン化された基およびフッ素化された基のエーテル官能性は、その酸素が過ハロゲン化されたまたは過フッ素化された炭素原子の間にある場合または過ハロゲン化アルキル基または過フッ化アルキル基で置換された炭素原子の間にある場合には、良好な熱安定性および酸化安定性を有するので、そのようなエーテル官能性も受け入れられる。
【0015】
フルオロ有機ハロゲン化アシル、すなわち、R基が少なくとも部分的にフッ素化されているハロゲン化アシル、および特にパーフルオロ有機ハロゲン化アシルが容易に反応して相当する過酸化ジアシルを生成することが本発明による過酸化ジアシル合成のさらなる利点である。本発明に有用なパーフルオロ有機ハロゲン化アシルの一例がパーフルオロ(2−メチル−3−オキサ−ヘキサノイルフルオリド)であり、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)二量体酸フッ化物およびDAFとしても知られている。これは式、すなわち、
CFCFCFOCF(CF)(C=O)F
を有する。他の適当なパーフルオロ有機ハロゲン化アシルには、CFCFCF(C=O)Cl(ヘプタフルオロブチリルクロリド)およびCFCF(C=O)F(ペンタフルオロプロピオニルフルオリド)が含まれる。
【0016】
本発明を実施するのに有用な過酸化物複合体には、a)本明細書で無機複合体と呼ばれる過酸化水素と無機化合物の複合体、およびb)本明細書で有機過酸化物複合体と呼ばれる過酸化水素と有機分子との複合体が含まれる。これらの複合体には、過酸化水素がその化合物の単離を可能にするのに十分な強さの結合によって無機化合物または有機化合物と結合されているそれらの物質が含まれているが、その結合は過酸化水素の成分またはそれが複合体を作っている化合物の成分の間でそれらよりも弱いまたは性質が異なる可能性がある。この判定基準によって、単離可能で組成NaCO・11/2を有する「過炭酸ナトリウム」が過酸化水素の複合体であるのに対して、過酸化水素の水溶液は、濃度とともに変わる水和度を持っている可能性があるものの、複合体ではないということが分かる。本明細書で使用されている用語としての複合体は、過酸化物の元素がその分子の欠かせない部分であると報告されている過ホウ酸ナトリウムなどの化合物も含んでいる。本発明による複合体には、効果がないことが分かっているモノ過硫酸カリウム(KHSO)などの、過硫酸塩またはモノ過硫酸塩は含まれていない。過硫酸塩中の酸素と硫黄結合の安定性は非常に高いので過硫酸塩はこの合成に必要な過酸化水素成分を供給できない。これらの条件以外には、その複合体の構造に関して何も含まれていない。複合体は、その過酸化物が弱いまたは強い結合により結合されている、過酸化水素と無機化合物または有機分子との結合体であってもよい。あるいは、複合体は、その過酸化物の成分がその化合物または分子の構造に組み込まれているが、酸ハロゲン化物との反応に利用できる過酸化物と化合物または分子との反応生成物であってもよい。ある種の複合体の場合には、その構造は未知であることがある。その複合物は乾燥していることが好ましい。その複合物は無水であることがより好ましい。「乾燥」という用語は、結晶化の水が存在してもよいが、本質的に水がないことを意味する。「無水」は、結晶化の水も含めて水がないことを意味する。多くの過酸化物複合体およびその合成は米国特許第5,820,841号に記載されている。
【0017】
過酸化物複合体は液体または超臨界の二酸化炭素に実質的に不溶であり、反応中は固相として存在するのが好ましい。そのような過酸化物複合体は反応後にろ過によって容易に除去されるか、あるいは液体または超臨界の二酸化炭素中のハロゲン化アシルが通過する吸着床の形で使用される。同様に、その消費された複合体が反応後に不溶性で固相に残っていることも好ましい。
【0018】
本発明による過酸化ジアシルの合成に便利な無機過酸化物複合体の中には、過炭酸塩および過ホウ酸塩がある。これらはナトリウム塩として最も容易に利用でき、洗剤産業で使用されている。例えば、カリウム塩といった、過炭酸塩または過ホウ酸塩の他のアルカリ金属塩も本発明の方法に使用することが可能である。例えば、カルシウム塩などのアルカリ土類の過炭酸塩および過ホウ酸塩は、簡単に利用できないのであまり望ましくはないが、本発明の方法によれば有用であると予想されるということは、当業者なら理解するだろう。本発明の目的にとっては、アルカリ金属およびアルカリ土類の過炭酸塩および過ホウ酸塩は両方とも過酸化ジアシルの合成に有用であるが、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。便宜上、過炭酸の塩および過ホウ酸の塩を、本明細書では過炭酸塩および過ホウ酸塩と呼ぶことにする。
【0019】
過炭酸ナトリウム、NaCO・11/2は水分によって加水分解される。そして本発明による過酸化ジアシルの合成で最良の結果を得るには、その過炭酸塩を乾燥状態に保つべきである。過ホウ酸ナトリウムは、NaBO・HOとして存在し、時には過ホウ酸ナトリウム一水和物と呼ばれることもあるが、Na(B)であると報告され、したがって無水塩である。同様に、いわゆる過ホウ酸ナトリウム四水和物は三水和物、すなわち、Na(B)・3HOであると報告されている。その誤称の過ホウ酸ナトリウム一水和物が本発明の実施に使用されるべき好ましい形態である。
【0020】
本発明の有機過酸化物複合体には、二酸化炭素にある程度の溶解性を有する可能性のあるもの、または少なくとも二酸化炭素からの分離を困難にするのに十分な揮発性を有する可能性のあるものが含まれる。好ましい有機複合体は、不溶性でその残留物が二酸化炭素に不溶性であり、しかも合成の間に固相として存在する複合体である。従って、それらの有機複合体は過酸化ジアシル溶液から容易に分離される。それらの有機複合体は不安定な原子または基がなく、あるいは本発明によるプロセスの反応物または生成物と反応できる結合がないことが、特に、そのような反応がその有機分子を分解し、そしてそのような分解生成物が反応混合物に入り込む場合には、さらに望ましい。
【0021】
尿素/過酸化水素付加物(尿素・H)はより好ましい有機過酸化物複合体である。それは市販されている(米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich Chemical社製)。これは固体で、本明細書で指定されている溶媒に本質的に不溶であり、そして万一少量がフィルタを通して、または他の手段によって過酸化ジアシル溶液の中に運び込まれても、尿素は、遊離基の連鎖移動に対して活性ではないので、重合には殆どまたは全く影響を持たないだろう。
【0022】
有機過酸化物複合体の顕著な利点は、反応混合物に金属イオンを導入しないことであり、従って反応剤による金属イオンがない過酸化ジアシルを生じることである。重合では、有機過酸化物複合体から製造されたそのような過酸化ジアシルがポリマーの中に金属イオンを導入することはないだろう。半導体産業などの高純度が要求されるある種の用途には、金属含有量が少ない、または金属イオンがないポリマー、特にフルオロポリマーが必要とされている。
【0023】
本発明の過炭酸塩、過ホウ酸塩および尿素/過酸化水素付加物の、および反応後に残っているその炭酸塩、ホウ酸塩および尿素の重要な性質は、二酸化炭素へのそれらの不溶性であり、そしてその合成の間に固相の中にあることである。それらは固体であるために、反応混合物からろ過によって容易に分離することができる。同じ理由で、過炭酸塩、過ホウ酸塩および尿素/過酸化水素付加物を過酸化ジアシルの連続合成用の固定床に使用することができる。
【0024】
反応の温度は、反応を速くすることの重要性と熱分解による過酸化ジアシルの過度の損失を防止する必要性との釣り合いをとるように選択される。過酸化ジアシル類は半減期(過酸化ジアシルの半分が消費される時間で、温度の関数)が異なるので、反応温度は異なるが、有用な温度は約−40℃から約40℃の範囲である。HFPO二量体過酸化物、ヘプタフルオロブチリルパーオキシド、イソブチリルパーオキシドおよびビス[パーフルオロ(フルオロスルホニル)アセチル]パーオキシドなどの過酸化物の場合、約−20℃から約20℃の温度範囲が一般的であり、約−10℃から約10℃が好ましく、そして過炭酸ナトリウムまたは過ホウ酸ナトリウムを使用する時は約−5℃から約5℃がより好ましい。これらの過酸化ジアシルを製造するのに尿素/過酸化水素付加物を使用する時は、約0℃から約10℃がより好ましい温度である。熱分解による過酸化ジアシルの損失は、反応時間を反応温度における過酸化ジアシルの半減期の数分の1かに保持することによって最も少なくすることができる。反応時間は、反応温度における過酸化ジアシルの半減期の4分の1以下であることが好ましい。
【0025】
ハロゲン化アシルの残留物は生成物である過酸化ジアシル中では不純物であり、さらに腐食を引き起こす可能性のある酸の供給源でもあるため、できるだけ多くの過酸化ジアシルを生じるようにその合成を行うことが望ましい。収率は少なくとも約25%であることが好ましく、少なくとも約50%であることがより好ましく、少なくとも約70%であることがさらにより好ましく、そして少なくとも約90%であることが最も好ましい。
【0026】
本発明に従って溶媒として使用される二酸化炭素は、好ましい過酸化ジアシルの合成用の好ましい反応温度において液体状態にあるだろう。しかし、反応を二酸化炭素の臨界温度である31℃より高い温度で実施することを望む場合、実施は可能であるが、その場合、二酸化炭素は超臨界状態にある。
【0027】
本発明により過酸化ジアシルをバッチ方式で合成する場合、反応物である有機ハロゲン化アシルを二酸化炭素からなる媒体を含んでいる容器中で過酸化物複合体と混合する。驚くべきことに、その過酸化物複合体中の過酸化物のハロゲン化アシルに対するモル比が高くなるにつれて、過酸化ジアシルの収率が増加することが分かる。そのモル比は少なくとも約1対1であることが好ましい。そのモル比が少なくとも約2対1であることがより好ましい。そのモル比が少なくとも約4対1であることが最も好ましい。その過酸化物複合体の過酸化物含有量はその複合体の性質によって決まるので、1モルの過酸化物またはその等価物を含んでいる複合体の重量は検討される複合体の組成によって決まることになる。
【0028】
本発明に従って連続反応で過酸化ジアシルを調製するためには、液体または超臨界の二酸化炭素中の有機ハロゲン化アシルからなる供給原料の流れを、過酸化物複合体からなる吸着床と連続的に接触させて、液体または超臨界の二酸化炭素中に過酸化ジアシルを含む生成物の流れを生成させる。その吸着床は過酸化物複合体および必要に応じて不活性材料を充填したカラムの形態であってもよい。その不活性材料の目的は流量および温度の制御を円滑にするためであろう。上述のように、その合成は過酸化ジアシルの高収率を達成するように実行されるべきである。過酸化ジアシルを必要に応じて製造し、速やかに消費することができるので、連続法が好ましい。もし望むなら、その液体または超臨界の二酸化炭素中の過酸化ジアシルを収集して、その形態で直接有利に使用することができる。連続法では、新鮮な過酸化ジアシルを常に利用することができ、過酸化ジアシルを貯蔵する必要がなくなることは確かであるが、連続法は一般に低い温度が要求され、したがって停電および装置の故障に弱い。さらに、いかなる酸化剤を用いる場合であっても、手元にある過酸化ジアシルの量を最少にすることが適切なやり方である。バッチ法および連続法の両方を実施例で実証する。
【0029】
本発明に従って製造される過酸化ジアシルを二酸化炭素中で重合を開始するのに使用することができる。しかし、二酸化炭素中のその開始剤を別の溶媒に添加して二酸化炭素を気化させることによってその開始剤を都合よく前記溶媒に移すことができるということが二酸化炭素中での開始剤の製造における利点の1つである。残っている微量の二酸化炭素は必要に応じて、例えば、窒素を用いてまたは減圧下で散布することによって除くことができる。この「溶媒移動法」を用いて、その過酸化ジアシルの合成に適切に使用できない溶媒中においてでさえも、任意の望ましい濃度の過酸化ジアシル溶液を安全にしかも容易に製造することができる。このように、本発明による二酸化炭素中の過酸化ジアシル合成は各種溶媒中の開始剤溶液の供給源となり得る。
【0030】
【実施例】
(用語解説)
HFPO=ヘキサフルオロプロピレンオキシド
HFPO二量体過酸化物=
CFCFCFOCF(CF)(C=O)OO(C=O)(CF)CFOCFCFCF
HFPO二量体酸フッ化物=CFCFCFOCF(CF)(C=O)F
DAF=HFPO二量体酸フッ化物
Vertrel(登録商標)XF=CFCFHCHFCFCF(2,3−ジヒドロパーフルオロペンタン)であり、米国デラウェア州ウィルミントンのデュポン社から入手できる。
【0031】
(試験方法)
本発明の方法により生成した過酸化ジアシルを以下の標準手順を用いて過酸化物滴定により分析する。ゆるく栓をした三角フラスコ中で、25mlの氷酢酸に数グラムのドライアイスを加える。これはその系から酸素を追い出すために行う。70mlの脱酸素水中に30gのヨウ化カリウムを溶かした溶液5.0mlを添加し、次いで、分析すべき過酸化物溶液5.0mlを添加する。その混合物を30分間攪拌して過酸化物をヨウ素と反応させ、100mlの脱酸素水を添加し、そして濃いヨウ素色を持った反応混合物を0.1規定のチオ硫酸ナトリウムで薄い黄色になるまで滴定する。次いで、ヨウ素指示薬のThyodene(登録商標)(Fisher Scientific社製)を0.5g添加して反応混合物を青色にする。0.1規定のチオ硫酸ナトリウムを用いて無色の終点になるまで滴定を続ける。その過酸化物のモル濃度は、その反応に添加された0.1規定のチオ硫酸ナトリウム溶液のml総数の0.01倍である。
【0032】
(実施例1)
液体二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の合成
へら状の攪拌器とディップチューブを備えた300mlのステンレス製オートクレーブを、乾燥窒素をパージしながら、数時間にわたり100℃に過熱することにより乾燥する。乾燥した過炭酸ナトリウム(NaCO・11/2)(2g(12.7mmol))を加えて、そのオートクレーブを密閉し、真空排気して、約−20℃に冷却する。
【0033】
別に、1リットルのステンレス製シリンダに5.2ml(24.7mmol)のHFPO二量体酸フッ化物(DAF)を充填する。そのシリンダをドライアイスで冷却して、真空排気し、約220gの二酸化炭素を入れる。それから、そのシリンダを直径が1/8インチ(3.2mm)のステンレス管を用いてオートクレーブに接続する。そのシリンダを逆さにして、シリンダの内容物を全てオートクレーブに移す。オートクレーブを予め真空にし冷やしておくと、うまく移すことができる。約199gのHFPO二量体酸フッ化物/液体二酸化炭素混合物をステンレス製シリンダからオートクレーブの中に移す。
【0034】
そのオートクレーブの内容物を、0℃で4時間にわたり、毎分5000rpmで攪拌する。この間に、温度は−2℃から0.5℃まで緩やかに変動する。オートクレーブの内圧は、−2℃で477psi(3.29MPa)から0.5℃で520psi(3.59MPa)まで変動する。約4時間後に、内容物を攪拌しながら、オートクレーブを−27℃まで冷やす。−27℃まで冷やすと、オートクレーブの内圧は184psi(1.27MPa)に下がる。1リットルの耐圧シリンダを真空排気して、液体窒素浴中で冷却する。次いで、そのシリンダを、長さ18インチ(45cm)直径1/8インチ(3.2mm)のステンレス管を用いて、オートクレーブのディップチューブの出口に接続する。それから、オートクレーブの内容物をディップチューブを通してステンレス製シリンダの中に出す。移し終わったとき、シリンダの圧力は0.2atm(20kPa)である。シリンダ頂部のバルブを取り外して、二酸化炭素中の過酸化ジアシルをVertrel(登録商標)XFの中へと移して反応収率の測定を容易にすることができるように100mlのVertrel(登録商標)XFを添加する。バルブをシリンダの上に戻す。シリンダを液体窒素浴から取り出す。そのシリンダの内容物を、急速な二酸化炭素の発生が止むまで温めるようにする。二酸化炭素の発生は、シリンダのバルブを周期的に開閉して圧力変化に注意することによって判断する。
【0035】
二酸化炭素がもはや急速に発生しなくなり、シリンダの側面にある霜が解氷の最初の徴候を示したら(約30〜45分)、バルブをシリンダの頂部から取り外す。曇った灰色/青色の流体であるシリンダの内容物をドライアイスで冷やしたポリエチレン瓶の中に注ぐ。
【0036】
この時点で300mlのオートクレーブを開くと、オートクレーブの底に白い固形物の残渣および壁面に少量の白い膜が見られる。目視検査により、オートクレーブ内に残された固形物の量は、最初に添加された過炭酸ナトリウムの量とほぼ同体積であると観察される。
【0037】
反応器から回収される灰色/青色の流体は体積で85mlである。5.0mlについて過酸化物滴定すると、0.1規定のチオ硫酸塩を5.95ml必要とする。この滴定はHFPO二量体過酸化物の41%の収率に相当する。
【0038】
80mlである残りの灰色/青色の流体を−78℃から室温まで温め、分離用ロートの中で水を用いて3回洗浄する。この水洗浄により、HFPO二量体過酸化物と同様にして滴定される、未反応の過炭酸ナトリウムおよび過酸化水素が除去される。ところで、その溶液の5mlの分割量は、過酸化物滴定で0.1規定のチオ硫酸塩を6.40ml必要とする(過酸化物の濃度が上昇しているのは、水による洗浄の間にVertrel(登録商標)XF溶媒がある程度蒸発することを反映している可能性がある)。
【0039】
(実施例2)
液体二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の連続合成
150mlのステンレス製シリンダを真空排気して、7.90gのパーフルオロ(2−メチル−3−オキサ−ヘキサノイル)フルオリド(CFCFCFOCF(CF)COF)(「DAF」)および50gの二酸化炭素を充填する。圧力計を備えたそのシリンダを逆さにして、天秤に固定されたスタンドに置く。直径1/16インチ(1.6mm)のステンレス管をそのシリンダから、直径約0.56cm、長さが10cmのステンレス製カラムの頂部まで接続する。そのカラムには10.0gの過炭酸ナトリウムを詰め込む。そのカラムの底にあるガラスウールの栓がカラム内に過炭酸ナトリウムを保持する。そのカラムを0℃の定温浴に浸す。短い長さの1/16インチ(1.6mm)ステンレス管がそのカラムの底部にあるバルブから、ゴムの隔壁を通って、ドライアイス/アセトンのスラリーに浸されている冷トラップの中に通じており、そして大気中に出ている。そのトラップは約50gのVertrel(登録商標)XFを含んでいる。
【0040】
そのシリンダのバルブを開いて液体のDAF/CO混合物をカラムに充填させる。それから、カラムの底部と冷トラップとの間のバルブを少し開いて、0.154g/分の速度でカラムを通過する材料の制御された流れを可能にする。カラムの空間体積は6.0mlである。その空間体積を、カラムを通る材料の流速で割った値が接触時間とする。その接触時間は39分である。カラムからの非揮発性流出液はその冷トラップに吸収されて、Vertrel(登録商標)XFの溶液を生成する。そのトラップは低温なので、生成した過酸化ジアシルが保存され、その溶媒がその後の生成物分析に都合のよい媒体を提供する。そのCOの大部分は自然にトラップから大気中に排出される。実験の終わりに、冷トラップを氷水中で0℃まで温め、トラップの重量が一定になるまで激しく攪拌して残っているCOを除去する。その冷トラップからの溶液の分割量を過酸化物滴定すると、4.81gの過酸化物が生成していることを示す。その本質は、過酸化ジアシルのカルボニル基による赤外スペクトルの1858cm−1および1829cm−1の吸収から確認される。集めた生成物中に残っているDAFの量は、酸フッ化物のカルボニル基による1881cm−1の赤外吸収の強度から決定されるとおりに、2.19gである。これらのデータから、過酸化物の収率は68.7%と計算される。
【0041】
(実施例3)
液体二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の連続合成
4.74gのDAFがシリンダに充填され、その供給速度は0.129g/分であり、接触時間が46分であること以外、手順および装置は実施例2に記載のとおりである。集められた生成物は4.02gであり、0.67gがカラムに残っている。その生成物は2.94gの過酸化物と1.41gの回収されたDAFからなっている。収率は67.6%である。
【0042】
(実施例4)
液体二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の連続合成
手順および装置は実施例2に記載のとおりである。供給速度は0.0697g/分、接触時間は86分である。集められた生成物は7.01gであり、1.53gがカラムに残っている。その生成物は6.23gの過酸化物と0.43gの回収されたDAFからなっている。収率は93.56%である。
【0043】
(実施例5)
液体二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の連続合成
カラム周囲の浴の温度を10℃に維持し、供給速度は0.165g/分であり、接触時間が32分であること以外、手順および装置は実施例2に記載のとおりである。集められた生成物は5.87gであり、1.89gがカラムに残っている。その生成物は5.36gの過酸化物と0.43gの回収されたDAFからなっている。収率は91.3%である。
【0044】
(実施例6)
液体二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の連続合成
カラム周囲の浴の温度を15℃に維持し、供給速度は0.242g/分であり、接触時間が20分であること以外、手順および装置は実施例2に記載のとおりである。集められた生成物は5.92gであり、1.69gがカラムに残っている。その生成物は5.13gの過酸化物と1.02gの回収されたDAFからなっている。収率は83.4%である。
【0045】
(実施例2から6の要約)
表1は過酸化ジアシルの連続合成についての各実施例の結果をまとめて示している。収率は、接触時間が長くなるにつれて、または反応温度が高くなるにつれて上昇する。
【0046】
【表1】
Figure 0004658379
【0047】
(実施例7)
尿素/過酸化水素付加物を使用する二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の合成
ジャケットの付いた体積が125mlのオートクレーブを60℃に加熱して、数時間にわたり窒素でパージする。次いで、そのオートクレーブを室温まで冷却して、過酸化物滴定により35.0%のHを含んでいる尿素/過酸化水素付加物(Aldrich Chemical社製)を3.0g(30.9mmolのH等価物)窒素流の下で添加する。そのオートクレーブを密閉し、真空排気して、−20℃まで冷却する。16.0gのHFPO二量体酸フッ化物(48.2mmol)および60gの二酸化炭素を充填されたシリンダをそのオートクレーブに接続して、シリンダの内容物をオートクレーブの中に移す。次いで、オートクレーブの温度を0℃まで上昇させ、同時に内容物を6時間にわたり攪拌する。オートクレーブの底部の出入り口に、尿素および未使用の尿素/過酸化水素付加物を保持するために15ミクロンの孔を内蔵している焼結金属フィルタを取り付ける。オートクレーブの内容物を、ドライアイス/アセトン浴に浸してある正確に計量し窒素でフラッシングした冷トラップの中に排出する。そのトラップは約50gのVertrel(登録商標)XFを含んでいた。二酸化炭素の大部分が大気中に排出されているので、反応混合物を吸収するのにその溶媒を使用する。これはまた、室温および大気圧で反応混合物の赤外分析するのに都合のよい媒体を提供する。
【0048】
冷トラップおよびその内容物を、残っている二酸化炭素をVertrel(登録商標)XF溶液から放出させるために振りながら、氷浴で0℃まで温める。トラップを乾燥して計量し、得られた生成物溶液の重量を測定するのに使用する。それから、その溶液の一部を液体用赤外セルに入れ、そのスペクトルを測定する。予め、同じ液体セルで得られたVertrel(登録商標)XFの標準スペクトルを、生成混合物のスペクトルから引く、そしてHFPO二量体過酸化物については1858cm−1と1829cm−1、HFPO二量体酸フッ化物については1880cm−1そしてHFPO二量体酸については1774cm−1に存在するバンドの強度を測定する。既知濃度の溶液から測定された検量線を用いて、生成混合物のスペクトルにある適切な赤外線バンドの強度から各化合物の量を計算する。13.35gの重さを有する生成混合物の中に、60.6%のHFPO二量体過酸化物、36.5%のHFPO二量体酸フッ化物および3.0%のHFPO二量体酸があることが判った。
【0049】
(実施例8)
尿素/過酸化水素付加物を使用する二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の合成
オートクレーブの温度を5℃まで上げる以外は、実施例7に示されている手順を使用する。15.32gの重さを有する生成混合物の中に、83.0%のHFPO二量体過酸化物、12.5%のHFPO二量体酸フッ化物および4.5%のHFPO二量体酸があることが判った。
【0050】
(実施例9)
尿素/過酸化水素付加物を使用する二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の合成
オートクレーブの温度を10℃に上げ、そして攪拌を3時間続けること以外は、実施例7に示されている手順を使用する。12.36gの重さを有する生成混合物の中に、76.1%のHFPO二量体過酸化物、15.5%のHFPO二量体酸フッ化物および8.4%のHFPO二量体酸があることが判った。
【0051】
(実施例10)
尿素/過酸化水素付加物を使用する二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の合成
反応中に発生するフッ化水素を吸収するために、尿素/過酸化水素付加物と一緒に2.9gの尿素をオートクレーブに添加して刺激性の少ない塩基として使用すること以外は、実施例7に示されている手順を使用する。また、オートクレーブの温度は5℃まで上げる。7.11gの重さを有する生成混合物の中に、81.4%のHFPO二量体過酸化物、15.4%のHFPO二量体酸フッ化物および3.2%のHFPO二量体酸があることが判った。
【0052】
(実施例11)
尿素/過酸化水素付加物を使用する二酸化炭素中でのHFPO二量体過酸化物の合成
オートクレーブに充填する尿素/過酸化水素付加物の量は5.0g(51.5mmolの過酸化水素等価物)であり、そしてオートクレーブの温度を5℃まで上げる以外は、実施例7に示されている手順を使用する。16.39gの重さを有する生成混合物の中に、87.8%のHFPO二量体過酸化物、6.4%のHFPO二量体酸フッ化物および5.8%のHFPO二量体酸があることが判った。
【0053】
(実施例7から11の要約)
表2は尿素/過酸化水素付加物を使用して過酸化ジアシルの合成についての実施例の結果をまとめて示している。収率は、接触時間が長くなるにつれて、または反応温度が高くなるにつれて上昇する。尿素/過酸化水素付加物のフッ化アシル(DAF)に対する割合を上げると収率が上昇する。添加された尿素は殆どまたは全く影響を及ぼさない。
【0054】
【表2】
Figure 0004658379
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、液体または超臨界の二酸化炭素中で過酸化ジアシルを安全かつ容易に高収率で製造することが可能となる。その結果、二酸化炭素中での重合に過酸化ジアシルの開始剤溶液として直接使用できる。また、二酸化炭素中に含まれる過酸化ジアシルをそのまま他の溶媒に移した後に二酸化炭素を除くことで種々の開始剤溶液を得ることが可能となる。
以下に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 液体または超臨界の二酸化炭素中で、有機ハロゲン化アシルを過酸化物複合体と接触させる工程を含むことを特徴とする過酸化ジアシルの合成方法。
2. 過酸化ジアシルを含む液体または超臨界の二酸化炭素を収集する工程をさらに含むことを特徴とする1.に記載の方法。
3. 前記過酸化物複合体は、無機過酸化物複合体および有機過酸化物複合体ならびにその混合物からなる群から選ばれることを特徴とする1.に記載の方法。
4. 前記過酸化物複合体は、液体または超臨界の二酸化炭素に実質的に不溶性で、反応の間にわたって固相として存在することを特徴とする1.に記載の方法。
5. 前記過酸化物複合体は、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、尿素/過酸化水素付加物およびその混合物からなる群から選ばれることを特徴とする1.に記載の方法。
6. 前記過酸化物複合体中の過酸化水素の有機ハロゲン化アシルに対するモル比が、少なくとも約1対1であることを特徴とする1.に記載の方法。
7. 前記方法を約−40℃から約40℃の間の反応温度で実施することを特徴とする1.に記載の方法。
8. 前記方法を約−20℃から約20℃の間の反応温度で実施することを特徴とする1.に記載の方法。
9. 前記方法を、約−10℃から約10℃の間の反応温度で実施することを特徴とする1.に記載の方法。
10. 前記方法を、反応時間が反応温度における前記過酸化ジアシルの半減期の4分の1以下であるように選ばれる反応温度で実施することを特徴とする1.に記載の方法。
11. 前記有機ハロゲン化アシルは、フルオロ有機ハロゲン化アシル類からなる群から選ばれることを特徴とする1.に記載の方法。
12. 前記有機ハロゲン化アシルは、パーフルオロ有機ハロゲン化アシル類からなる群から選ばれることを特徴とする1.に記載の方法。
13. 前記有機ハロゲン化アシルは、ハロゲン化イソブチリルであることを特徴とする1.に記載の方法。
14. 液体または超臨界の二酸化炭素中の有機ハロゲン化アシルからなる供給原料の流れを過酸化物複合体からなる吸着床と連続的に接触させ、液体または超臨界の二酸化炭素中に過酸化ジアシルを含む生成物流を生成する工程を含むことを特徴とする過酸化ジアシルの連続合成方法。
15. 前記過酸化物複合体は、過ホウ酸塩、過炭酸塩、尿素/過酸化水素付加物およびその混合物からなる群から選ばれることを特徴とする14.に記載の方法。
16. 前記生成物流を収集する工程をさらに含むことを特徴とする14.に記載の方法。

Claims (2)

  1. 液体または超臨界の二酸化炭素中で、有機ハロゲン化アシルを過酸化物複合体と接触させる工程を含むことを特徴とする過酸化ジアシルの合成方法。
  2. 液体または超臨界の二酸化炭素中の有機ハロゲン化アシルからなる供給原料の流れを過酸化物複合体からなる吸着床と連続的に接触させ、液体または超臨界の二酸化炭素中に過酸化ジアシルを含む生成物流を生成する工程を含むことを特徴とする過酸化ジアシルの連続合成方法。
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