JP4656441B2 - 薄膜の結晶化方法および結晶化装置 - Google Patents
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Description
従来の蛍光面の製造方法においては、赤・青・緑発光を示す粉末蛍光体をそれぞれ感光性スラリー法によって所定の位置に配置する。粉末蛍光体には、蛍光体の合成や活性化のための熱処理を既に行ったものを使用する。そのため、透明基板上に粉末の蛍光体からなる蛍光体層を形成すれば蛍光面は完成し、電子線により蛍光体を励起すると発光が得られる。
低消費電力かつパネル構造を簡単にするため、低電圧(〜5kV)で加速した電子線で蛍光体を励起して発光させる低電圧型FEDの開発が行われてきている。しかし、蛍光体が電子線の衝突によって劣化したり、蛍光体が分解した分子が陽極上で正に帯電して放出されたガスが、陰極へ加速して飛んでいき、陰極の構造物を破壊したり(アウトガス問題)、表面の電気伝導性の悪さから帯電して発光輝度が落ちる(チャージアップ問題)などの問題がある。これらの問題は、従来の高電圧型FEDでは粉末の蛍光体層の表面上にアルミニウムからなる保護層(アルミバック)を設けることで解決している。
このように、薄膜蛍光体はメタルバックを用いることが出来ない低電圧型FEDや、1画素を数十μm以下の大きさにパターニングする必要がある、超高精細FEDの蛍光面として期待されてきている。しかし、実用的には大型のガラス基板上に薄膜蛍光体の成膜を行った後で、蛍光体を結晶化する必要があるため、低温プロセスで結晶化を行う技術が求められている。
また同様に、薄膜蛍光体を使用する無機ELにおいても、蛍光体の発光輝度を向上させるために、成膜の段階で結晶化の度合いが低い薄膜蛍光体を、低温プロセスで結晶化を行う技術が必要がある。
また、比較的低温の400℃以下でMOCVDによる成膜を行い、結晶性を有する薄膜へレーザを照射して結晶性の向上を行う方法が知られている(特許文献2参照)。当該方法は比較的低温の成膜で結晶性を有し、かつ、目的結晶の成分に近い成分比率が得られる結晶系に関しては有効な手法であり、レーザ照射による結晶化と結晶性の向上を行うことができる。
外部エネルギを与えるタイミングと連動して、印加電圧を変化させると、外部エネルギの付与と電界の印加によって、電子が照射側から深さ方向へ移動したためにプラスに帯電している外部エネルギの付与側に、外部エネルギを与えないタイミングまたは付与エネルギが小さくなるのと連動して逆の電場を印加することで帯電状態を解消して、励起電子の動きを再現よく制御できるという優れた効果がある。さらに、励起電子を移動させるスピードを、印加電圧によって制御できるため、印加電圧のタイミングを制御して励起電子の到達深さをコントロールすることで、膜中で励起電子が均一に熱に変換されるようにできるという非常に優れた効果を有する。
これは、帯電防止用電極で帯電した物質を介して薄膜表面の帯電が解消されるためである。
また、外部エネルギを与える薄膜としては、上記したように蛍光体が好適である。ただし、本発明としては、薄膜材料がこれに限定されるものではなく、外部エネルギによる加熱領域をコントロールしたい種々の材料に適用が可能である。
さらに、薄膜は、基板上に直接形成されているものの他、基板と薄膜との間に透明電極などが介在して積層されているものでもよく、介在層の層数が限られるものでもない。
エネルギを与える雰囲気として、薄膜の構成材料含む雰囲気を通してエネルギを与えることで、雰囲気中の構成成分が外部エネルギによって分解して生成した帯電物質を、基板側に印加した電圧によって生じる電界によって薄膜へ付着させ、薄膜と帯電物質を反応させることができる。また、この反応のみならず、帯電成分が付着することによって、表面の帯電状態を解消するという複合的な効果を得ることもできる。
図1、図2は、本発明に係る薄膜蛍光体の製造方法における第1実施の形態を示す。先ず、図1、図2を参照して、本発明に係る薄膜を適用することが可能な、電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ)の薄膜蛍光体を備える陽極パネルについて説明する。
このようにして、薄膜蛍光体原料膜30を深さ方向にわたってほぼ結晶化させた薄膜蛍光体10にすることが可能である。
結晶化装置は、基板12上に透明電極11が形成され、その上に薄膜蛍光体原料膜30が形成された薄膜を処理対象とする。
結晶化装置は、処理対象となる上記薄膜を載置する基板載置台41を備えた処理室40を備えており、該処理室40の外部にレーザ光源50が設置され、該レーザ光源50から照射されたレーザ光52を各種光学系によって均質化やビーム形状を調整などさせて前記薄膜に照射させる光学系51を備えている。これらレーザ光源50、光学系51によって本発明のレーザ光照射手段が構成されている。なお、処理室40には、上記レーザ光52が導入される導入窓42が設けられている。
また、処理室40内には、配置される薄膜の上方に位置するように帯電防止電極43が配置されており、該帯電防止電極43には、外部電源44が接続されている。
また、処理室40の外部には、電界印加手段に相当する電界印加用電源48が設置されており、該電荷印加用電源48は、前記透明電極11に接続可能となっている。
基板載置台41には、基板12、透明電極11、薄膜蛍光体原料膜30が順次積層された薄膜を載置し、透明電極11に前記電界印加用電源48の正極側を接続する。
レーザ光源50からはレーザ光52を出力し、光学系51を介してレーザ光導入窓42より薄膜蛍光体原料膜30に照射する。薄膜蛍光体原料膜30では、透明電極11と前記電界印加用電源50との接続によって深さ方向ほど電位が高くなる電界が発生している。
薄膜蛍光体原料膜30では、前記したようにレーザ光52の照射によって励起電子が生成され、上記電界に従って深さ方向に移動し、薄膜蛍光体原料膜30における所望の加熱領域が効果的に加熱される。加熱領域の深さを変えたい場合には、該電荷印加用電源48による印加電圧を変更すればよい。
また、所望により、帯電防止用電極43に外部電源44で印加すると、帯電防止用電極43で帯電した物質を介して薄膜蛍光体原料膜30表面の帯電が解消される。
上記レーザ光52の照射によって前記したように、薄膜蛍光体原料膜30は均等に結晶化されて薄膜蛍光体10が得られる。
図5(a)は、上記レーザ光をパルス状に照射する際の電界印加のタイミングチャートを示すものである。レーザ光を照射していないタイミングで、透明電極11に逆方向の電圧を与えることで、薄膜表面の電界状態を逆転させ、その結果、前記レーザ光の照射によって電子が移動してプラスに帯電している薄膜表面側に逆の電場が印加されて薄膜の帯電状態を解消する。
成膜はRFマグネトロンスパッタ法によって行い、スパッタのターゲットとしてSr0.98Eu0.02Ga2S4ターゲットを使用した。スパッタの条件としては、基板の温度を150℃まで上昇させて、圧力7×10−2TorrのAr雰囲気、投入電力を200Wとして成膜を行い、厚み約1μmの薄膜蛍光体原料膜を得た。ただし、他の製膜方法として2つの電子ビームによって2つのターゲットを加熱、蒸発させて蒸着を行う2電子ビーム蒸着法(2EB法)でも行うことができた。この場合は、基板の温度を200℃とし、ターゲットにはSr0.98Eu0.02SとGa2S3を使用してそれぞれの成膜レートをコントロールし、基板温度200℃における膜厚比率1:1程度で蒸着して約1μmの厚みの薄膜蛍光体原料膜が得られた。
上記のようにして得られた薄膜蛍光体原料膜はアモルファス状態であり、結晶化していなかった。このように結晶化していない状態では蛍光体として機能しないため、次にレーザ照射による結晶化を行った。
このように、レーザ光の照射タイミングに連動させて電界印加用電源による電界印加を変化させることで、表面の帯電を防止するとともに、深さ方向の結晶化深さを制御して、より結晶化範囲が広く、高品質な薄膜蛍光体SrGa2S4:Euを得ることが出来た。
10 薄膜蛍光体
11 透明電極
12 基板
30 薄膜蛍光体原料膜
32 光
33 励起電子
34 移動後の励起電子
48 電界印加用電源
50 レーザ光源
52 レーザ光
Claims (4)
- 基板の上層に形成されている薄膜を固相プロセスにより結晶化させる方法において、前記薄膜に深さ方向ほど電位が高くなる傾きの電界を生じさせるべく前記基板側にプラスの電圧を印加しつつ前記薄膜の表面側に外部エネルギを与え、該外部エネルギによって励起した前記薄膜の電子が前記電圧によって生じた電界により前記薄膜中を深さ方向に移動して該電子が基底状態に戻る際に励起エネルギを開放することを利用して該薄膜における加熱領域をコントロールして該薄膜を結晶化させることを特徴とする薄膜の結晶化方法。
- 前記エネルギを変化させて前記薄膜に与える際に、前記エネルギを与えないタイミングまたは低エネルギとなるタイミングに連動させて前記電圧の印加を逆方向に転換することを特徴とする請求項1に記載の薄膜の結晶化方法。
- 前記基板と前記薄膜との間に透明電極が積層されており、該透明電極を通して前記電圧の印加がなされることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜の結晶化方法。
- 基板の上層に形成されている薄膜を固相プロセスにより結晶化するための結晶化装置であって、前記薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、前記薄膜に深さ方向ほど電位が高くなる傾きの電界を生じさせるべく前記基板側にプラスの電圧を印加して前記レーザ光によって励起した薄膜中の電子を前記薄膜中の電界によって深さ方向に移動させ該電子が基底状態に戻る際に励起エネルギを開放することを利用して該薄膜における加熱領域をコントロールする電界印加手段とを備えることを特徴とする薄膜の結晶化装置。
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