JP4655446B2 - ガスケット材料および二部材間の密封構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばハードディスク装置等の電子機器を内蔵する箱体の本体と、カバーとの間を密封するシール部材として好適なガスケット、及び、そのようなガスケットを用いた二部材間の密封構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のガスケットは、例えばコンピュータのハードディスク装置等、電子機器類の外郭を構成する箱体の本体とカバーとの間を密封するために用いられる。
【0003】
図2は、この種のガスケットが装着されるハードディスク装置の箱体の本体とカバーとを、相互に分離した状態で示す略図である。
【0004】
同図2に示すように、ハードディスク装置101の外郭は、頭上面を欠いた直方体の箱体本体110と、箱体本体110の頭上面をなすカバー120と、箱体本体110及びカバー120間に挟まれて両部材110,120間を密封するガスケット(無端状のシール部材)130とを備えて構成される。
【0005】
近年、電子機器製品の小型化に伴い、このような電子機器類を内蔵する箱体も小型化する傾向があり、また、種々の高性能機器を複合的に構成して1つの箱体に収容するようになってきた。
【0006】
高性能機器は埃や揮発物等によって機能障害を起こし易いこと、高性能機器自身が発熱すること、また、箱体が小型化する傾向にあることから、この種のガスケットには、密封性能や耐熱性の向上、アウトガス発生の抑制、製造工程における組み付けの容易化といった要求が課せられる。
【0007】
例えば、特許第2517797号公報に記載されたガスケットは、金属製のカバーと、シール材としてのゴム材料とを予め接着剤で接着して一体化することにより、箱体本体とカバーとの組み付け作業を容易にしている。
【0008】
また、特許第2961068号公報に記載されたガスケットは、加硫工程が不要で、しかもリサイクルが容易なスチレン系熱可塑性エラストマーを材料とすることにより、製造工程の簡略化や製造コストの削減を図っている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特許第2517797号公報に記載のガスケットは、金属製のカバーとガスケットとを接着する工程に長時間を要する点で不利がある。さらに、材料となるフッ素ゴムの特性上、加硫成形後、ガスケットが細かくちぎれやすく、しかもゴミを付着させやすいといった不具合もあった。
【0010】
また、上記特許第2961068号公報に記載されたガスケットは、材料となるスチレン系熱可塑性エラストマーの特性上、柔らかく粘着し易いため、箱体本体及びカバーの組み付け作業時に何らかの方法でガスケットを固定しておく必要があり、そのことが組み付け作業を繁雑にしていた。また、ガスケット自体にも予め枠体を埋め込む等していなければ、組み付け後においてもガスケットの形状を安定に保持するのが難しかった。さらに、スチレン系熱可塑性エラストマーを材料とするガスケットには、高温条件下で変形し易い欠点もある。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高温耐性や防塵性能に優れ、アウトガスを発生させず、しかも密封部位への組み付けが容易なガスケットの材料、及びそのようなガスケット材料を用いた二部材間の密封構造を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ガスケット材料として、(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、(B)無水マレイン酸変性ポリプロピレン又は無水マレイン酸変性ポリブタジエン1〜20重量部と、
を含有することを特徴とする。
【0013】
上記構成のガスケット材料によれば、例えば電子機器を収容する装置内部の密閉状態を保持する上で、硬度、シール性、アウトガス性、接着性に優れた性能を発揮するガスケットや、そのようなガスケットを用いた二部材間の密封構造を得ることができる。とくに、一方の部材の金属表面にガスケットを射出成形する際、金属表面に接着剤を塗布しておかなくても金属表面とガスケットとの間に十分な接着力を確保することができるため、製造(組み付け工程)の簡略化が図られるようになる。
【0014】
また他の発明は、一方の部材の金属表面と、他方の部材の表面とが、ガスケットを挟み対峙して構成される二部材間の密封構造であって、(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、(B)無水マレイン酸変性ポリプロピレン又は無水マレイン酸変性ポリブタジエンを1〜20重量部と、を有する組成物を、一方の部材の金属表面に射出成形して一体形成されたガスケットを、他方の部材の表面に押圧して構成されることを特徴とする。
【0015】
上記構成の密封構造によれば、例えば電子機器を収容する装置内部の密閉状態を保持する上で、硬度、シール性、アウトガス性、接着性に優れた性能を得ることができる。とくに、一方の部材の金属表面にガスケットを射出成形する際、金属表面に接着剤を塗布しておかなくても金属表面とガスケットとの間に十分な接着力を確保することができるため、製造(組み付け工程)の簡略化が図られるようになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、ハードディスク装置の箱体及びカバー間を密封するためのガスケットの材料及び密封構造に適用した一実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態にかかるガスケットが装着されるハードディスク装置の箱体の本体とカバーとを、相互に分離した状態で示す略図である。
【0018】
先の従来技術と同様、本実施の形態にかかるハードディスク装置1の外郭は、頭上面を欠いた直方体の箱体本体10と、箱体本体10の頭上面をなすカバー20とを備えて構成される。カバー20としては、例えばアルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板等に、メッキ処理やアルマイト処理を施したもの、ステンレス鋼板、或いはステンレス製の制振鋼板等の各種金属板を用いることができる。カバー20の裏面(箱体本体10に対峙する側の面)には、箱体の組み付けに際して箱体本体10及びカバー20間に挟まれ、両部材10,20間を密封するガスケット(無端状のシール部材)30が接着されている。
【0019】
〔ガスケットの形成方法〕
ガスケット30は、(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、(B)無水マレイン酸変性ポリプロピレン又は無水マレイン酸変性ポリブタジエン1〜20重量部とを主成分として含有する組成物を材料とする。この組成物をカバー20の裏面に直接射出成形することで、カバー20とガスケット30を、瞬時に一体形成する。
【0020】
以下、ガスケット30の材料となる組成物に配合される各種成分について、詳述する。
【0021】
(オレフィン系熱可塑性エラストマー)
ガスケット30を組成するオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレン(PP)及びエチレン・プロピレン・ジエン・モノマー(EPDM)を主成分として、軟化剤、少量の炭素(カーボン)、老化防止剤等を含む。本実施の形態においては、三井化学製の市販材料(商品名:ミラストマー5030B)或いはAES製の市販材料(商品名:サントプレン111−45)をそのまま用いることにした。
【0022】
(無水マレイン酸変性ポリオレフィン)
ガスケット30を組成する無水マレイン酸変性ポリオレフィンのマレイン酸含有量は、好ましくは3〜15%、より好ましくは4〜12%である。なお、ここでいうマレイン酸含有量は、〔(マレイン酸部位分子量)/(無水マレイン酸の全分子量)×100〕%として定義づけられる。
【0023】
マレイン酸含有量が3%未満では、金属板に対し組成物(ガスケット30)の射出成形を行ったときに、金属板と組成物との間に十分な接着力を得ることができない懸念が生じる。また、マレイン酸含有量が15%を上回ると、組成物の物性(圧縮永久歪みや破壊物性)が低下し、実用上十分に好ましい特性を得ることができない懸念が生じる。
【0024】
無水マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリブチレン等が挙げられる。とくに、融点が高く、安定性に優れた無水マレイン酸変性ポリプロピレンや無水マレイン酸変性ポリブタジエンを使用するのが好ましい。本実施の形態においては、三井化学製の市販材料(商品名:ユーメックス1001)或いはRICON RESINS Inc.製の市販材料(商品名:RICOBOND1756)をそのまま用いることにした。
【0025】
(軟化剤)
軟化材は、40℃における動粘度が300mm2/秒以上である非芳香族系軟化剤であれば、通常のゴムや熱可塑性エラストマーの軟化剤として使用されるものでよい。例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン系オイル等の石油系軟化剤や、ひまし油、あまに油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤を用いることができる。
【0026】
(架橋剤)
架橋剤としては、主に有機パーオキサイド(有機過酸化物)を用いるのが好ましい。例えばジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキ)ヘキサン等を用いることができる。
【0027】
(その他の配合物)
その他の配合物として、ゴム、その他の熱可塑性エラストマーに通常配合されるようなりん片状無機充填剤を用いることができる。より具体的には、クレー、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム等を用いることができる。また、粉末状固体充填剤、例えば各種の金属紛、ガラス紛、セラミック粉、粒状或いは粉末ポリマー等を用いることができる。また、例えば安定剤、粘着付与剤、離型剤、顔料、難燃剤、滑剤等を添加してもよい。また、強度や剛性を高めるべく、短繊維等を添加してもよい。
【0028】
上記各種の配合物は、加熱混練機、例えば一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、プラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー等を用いて溶融混練する。そしてさらに、有機パーオキサイド等の架橋剤、架橋助剤等を添加して、これらの添加成分を同時に混合し、加熱溶融混練する。また、高分子有機材料と軟化剤とを混練した熱可塑性材料を予め用意し、この予め用意した熱可塑性材料を種類の異なる高分子材料に更に混ぜ合わせるといった工程に従ってもよい。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0030】
表1に示す条件に従いガスケットサンプル(実施例1〜7)を作成し、各比較例1〜3とともに評価を行った。
【0031】
【表1】
【0032】
ただし、表1中において、
A:オレフィン系熱可塑性エラストマー
(商品名:ミラストマー5030B,三井化学製)
B:オレフィン系熱可塑性エラストマー
(商品名:サントプレン111−45,AES製)
C:スチレン系熱可塑性エラストマー
(商品名:CJ103,クラレプラスチック製)
D:無水マレイン酸変性ポリプロピレン
(商品名:ユーメックス100,三井化学製1)
E:無水マレイン酸変性ポリブタジエン
(商品名:RICOBOND1756,RICON RESINS Inc.製)
【0033】
〔ガスケットサンプルの作成方法〕
各実施例にかかる熱可塑性エラストマー組成物のサンプルを得るために、表1中に示す配合率(重量部)の配合物を所定量計量して、二軸押出機[(株)神戸製鋼所製:ハイパーKTX46]を用い、設定温度210〜180℃、回転速度150rpmの条件で混合押出しを行った。また、こうして得られた組成物サンプルを、射出成形機[川口鉄工(株)製:KM−80]を用い、設定温度210〜180℃、射出速度0.5秒、射出出力100MPa、サイクルタイム30秒にてテストシート(150mm×150mm×2mm)成形し、硬度、アウトガス性等の試験に供した。
【0034】
また、予めカバー形状(例えばカバー20の形状)に附型されたアルミニウム板(無電解ニッケルメッキ2〜5μm処理:以下、単にカバーという)に接着剤を塗布した部品を金型にインサートしておき、射出速度0.5秒、射出出力100MPa、サイクルタイム30秒でカバー表面にガスケットを形成した。このカバー一体型ガスケットを、シール性試験、接着性試験、成形性試験に供した。
【0035】
〔評価方法及び結果〕
(1)硬度測定
厚さ2mmのテストシートを3枚重ね合わせ、JIS K6253の測定方法に準じて硬度測定を行った。
【0036】
(2)シール性試験
カバーに一体形成されたガスケットを実機リーク試験機に装着した状態で、80℃、168時間、熱処理を行った後室温に戻し、試験機内部から5kPaの正圧下に30秒間晒した後、15秒後に漏洩(リーク)が発生するか否かを試験した。本試験では、以下の評価基準に従い判定を行った。
【0037】
リーク無し:○
リーク有り:×
ガスケット材料の圧縮永久歪性が劣る場合や、ガスケット形状に欠陥がある場合にはリークが発生する。
【0038】
(3)接着性試験
カバーに一体化されたガスケット接着面に約1mmの貫通ハガレをつくり、そのハガレ部位にSUS製ワイヤーを通して垂直引張り荷重をかけ、ハガレ長が約10mmに拡大するときの荷重(はくり荷重)を測定した。本試験では、以下の評価基準に従い判定を行った。
【0039】
はくり荷重100(kPa)以上:○
はくり荷重100(kPa)未満:×
はくり荷重が100(kPa)以上のものは、実際の使用環境でも十分高い接着力を保証する。
【0040】
(4)アウトガス性試験
50mm×3mm×2mmの短冊状のテストピースを120℃、1時間熱抽出し、そのときのアウトガス量(μ/g)を測定した。本試験では、以下の評価基準に従い判定を行った。
【0041】
アウトガス量50(μ/g)未満:○
アウトガス量50(μ/g)以上:×
アウトガス量が50(μ/g)以上であるものは、ハードディスク装置用のガスケットとして好ましくない。
【0042】
表1中に示す比較例1のように、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを配合しない材料でガスケットを形成した場合、ガスケットと金属板との接着性が極めて悪かった。
【0043】
また、比較例2のように、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを多量配合すると硬度が過剰に高くなり、シール性が低下する。
【0044】
また、比較例3のように、オレフィン系熱可塑性エラストマーに替え、スチレン系熱可塑性エラストマーを配合した材料で形成したガスケットは、低硬度ではあるものの、耐熱性に劣り、100℃以上の高温条件下でシール性が著しく低下する。また、アウトガスが多く発生する。
【0045】
このように、比較例1〜3として示す条件下で作成されたガスケットは、ハードディスク装置用のガスケットとして求められる上記性能の何れかについて、欠点を有することになった。
【0046】
これに対し、表1中の実施例1〜7として示す条件下で作成されたガスケット(カバー一体型ガスケット)が、硬度、シール性、アウトガス性及び接着性において、優れた性能を発揮することが明らかとなった。
【0047】
以上説明したように、実施例1〜7に代表される本実施の形態のガスケット材料、或いはそのようなガスケット材料を用いた二部材間の密封構造によれば、一方の部材(本実施の形態ではカバー)にガスケットを射出成形することにより、カバーとガスケットとを一体形成するに際して、予めカバーに接着剤を塗布しなくとも、カバーとガスケットとの間に十分な接着性を得ることができる(カバーへの接着剤塗布作業を省くことができる)。しかも、上記実施の形態にかかるガスケット材料は、ゴム弾力性に優れ、低硬度であり、高密封性、高耐熱性、低アウトガス性、低湿度透過性といった特性を有するため、結果として高い防塵性能も併せ備えることになっている。
【0048】
すなわち、本実施の形態によれば、例えば使用継続に伴う温度上昇が避け難く、また、埃等の侵入を極度に嫌う電子機器を収容するような外郭部材間の密封構造において、高い防塵性能や低アウトガス性等、ガスケット(或いは二部材間の密封構造)として好ましい性能を、製造工程の簡易化と両立して図ることができるようになる。
【0049】
なお、上記実施の形態では、ガスケットの接着面をカバー側に配置する構成を適用することにしたが、ガスケットの接着面を箱体本体の開口部周縁の面に配置する構成を適用してもよい。
【0050】
また、上記実施の形態に代表される本発明のガスケットや、これを用いた密封構造は、特に、高い防塵性を要求されるハードディスク装置に対し好適に適用される。しかしこれに限らず、通常のガスケット材やパッキン材、或いはこれらを用いた密封構造として気密性を確保する必要のあるその他の装置や部位に使用して、本実施の形態に準ずる効果を奏することはできる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、例えば電子機器を収容する装置内部の密閉状態を保持する上で、硬度、シール性、アウトガス性に優れた密封構造を、簡易に実現できる。
【0052】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態であるガスケットを適用したハードディスク装置の外郭をなす箱体の分解斜視図。
【図2】 ハードディスク装置の外郭をなす箱体の分解斜視図。
【符号の説明】
1 ハードディスク装置(箱体)
10 箱体本体
20 カバー
30 ガスケット
Claims (2)
- (A)ポリプロピレン及びエチレン・プロピレン・ジエン・モノマーを主成分とするオレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、(B)無水マレイン酸変性ポリプロピレン1〜20重量部と、
を含有するガスケット材料であって、
無水マレイン酸変性ポリプロピレンの、〔(マレイン酸部位分子量)/(無水マレイン酸の全分子量)×100〕%として定義づけられるマレイン酸含有量が3〜15%であることを特徴とするガスケット材料。 - 一方の部材の金属表面と、他方の部材の表面とが、ガスケットを挟み対峙して構成される二部材間の密封構造であって、
(A)ポリプロピレン及びエチレン・プロピレン・ジエン・モノマーを主成分とするオレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、(B)無水マレイン酸変性ポリプロピレンを1〜20重量部と、を有し、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの、〔(マレイン酸部位分子量)/(無水マレイン酸の全分子量)×100〕%として定義づけられるマレイン酸含有量が3〜15%である組成物を、一方の部材の金属表面に射出成形して一体形成されたガスケットを、他方の部材の表面に押圧して構成される
ことを特徴とする二部材間の密封構造。
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