JP4654151B2 - 加熱素子 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも、耐熱性の基材と、該耐熱性基材上に形成されたヒーターパターンを有する導電層と、該導電層上に形成された絶縁性の保護層とを有する加熱素子に関する。
半導体デバイスの製造工程における半導体ウェーハの加熱に使用されるヒーターとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニアなどの焼結セラミックスからなる耐熱性基材にモリブデン、タングステンなどの高融点金属の線や箔を発熱体として巻き付けるか接着したものが用いられてきた。
しかし、このようなヒーターでは、発熱体が金属製であるため変形や揮散が起こりやすいこと、短寿命であること、組立が煩雑であるなどの問題点があった(非特許文献1参照)。さらに耐熱性基材に焼結セラミックを使用しているため、これに含まれるバインダーが不純物となるなどの問題点もあった。
そこで、このようなヒートサイクルによる熱変形や不純物の飛散を防止するため、機械的強度が大きく高効率の加熱が可能な熱分解窒化ホウ素(PBN:Pyrolitic Boron Nitride)の耐熱性基材と、該耐熱性基材上に熱分解グラファイトの導電層を有するセラミックヒーターが開発されている(例えば、非特許文献1、特許文献1−3等参照)。
このようなヒーターの加熱素子は、例えば、図4に示すように、少なくとも、板状の耐熱性基材21にヒーターパターン3aが形成された発熱部20aと、該耐熱性基材21のヒーターパターンと同一面の周辺に給電端子3cが形成された給電端子部20cとを有する加熱素子20であって、ヒーターパターン3aには、絶縁性の保護層4が形成され、給電端子3cには給電部材あるいは電源端子5が接続される。
しかし、発熱体である熱分解グラファイトが、酸化消耗に弱いことや、水素によるメタンガス化等、プロセス中に使われる高温ガスと反応性があることから、給電のために露出した給電端子部の熱分解グラファイトが、プロセス内に残存する酸素やプロセス中の高温ガスにより消耗し、寿命が短いという問題があった。
そして、この問題解決のために、給電端子部を発熱部より遠ざける試みがなされている。例えば、給電端子が、通電により発熱するヒーターパターンを有する給電部材を介して電源端子部材に接続し、ヒーターパターンを覆う保護層をPBN等の電気絶縁性セラミックスとして、給電端子部の過熱を防いで給電端子の寿命を延ばす(特許文献4参照)等の提案がなされている。
さらに、カーボン製の給電端子部をアセンブリによって組み上げた後に保護層を形成する方法が提案されている(特許文献1、5等参照)。
しかし、このようなヒーターの加熱素子は、加熱面側に突起物があるために、被加熱物との間に空間を設ける等の必要があり、コンパクトな設計の障害となる問題があった。また、複数の部品を組み合わせてアセンブリした接続部付近の保護層には、使用によりクラックが入りやすく、クラックから導電層の腐食が始まり、寿命が短くなるという問題があった。
さらに、ハロゲン系エッチングガスを用いる等のホウ化物を腐食する環境で使用される場合、最表層がホウ化物では、耐食性が乏しく、腐食され、短寿命となるという欠点があった。
「真空」No.12、(33)、p.53記載のユニオンカーバイドサービセズ社製熱分解グラファイト/熱分解窒化硼素ヒーター 米国特許第5343022号明細書 特開平5−129210号公報 特開平6−61335号公報 特開平11−354260号公報 国際公開第WO2004/068541号パンフレット
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、高温・腐食性ガス環境下でも、腐食性ガスが透過し難く、導電層、特に給電端子部の腐食による劣化を回避できる長寿命で低製造コストの加熱素子を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも、耐熱性の基材と、該耐熱性基材上に形成されたヒーターパターンを有する導電層と、該導電層上に形成された絶縁性の保護層とを有する加熱素子であって、少なくとも前記保護層の上に窒素ガス透過率が1×10−2cm/sec以下である耐食層を有するものであることを特徴とする加熱素子が提供される。
このように、前記保護層の上に窒素ガス透過率が1×10−2cm/sec以下である耐食層を有するものであることによって、前記耐食層はガス透過率が低いものとなり、高温・腐食性ガス環境下においても腐食性ガスが透過し難くなり、導電層、特に端子部の腐食による劣化を回避できる長寿命の加熱素子とすることができる。
このとき、前記耐食層の空隙率が、7%以下であることが好ましい。
このように、耐食層の空隙率が、7%以下とすることにより、より効果的に腐食ガスの透過を抑制することができる。
また、前記耐食層の材質が、アルミニウム、イットリウム、シリコンのいずれか、またはこれらのいずれかの化合物であることが好ましい。
このように、耐食層の材質が、アルミニウム、イットリウム、シリコンのいずれか、またはこれらのいずれかの化合物であることにより、ハロゲン系エッチングガスや酸素等の腐食環境においても安定して使用することができる。
このような化合物の例としては、前記耐食層の材質を、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、イットリア、窒化イットリウム、フッ化イットリウム、酸化珪素、窒化珪素のいずれか、またはこれらを組み合わせたものであることとすることができる。
また、前記耐食層が、CVD法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング、溶射法、ゾルゲル法のいずれか、またはこれらを組み合わせた方法により、形成されたものであることが好ましい。
このように、耐食層が、CVD法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング、溶射法、ゾルゲル法のいずれか、またはこれらを組み合わせた方法により、形成されたものであることによって、ガス透過率の低い耐食層を形成することができる。
さらに、前記耐食層は、CVD法、反応性スパッタ法、イオンプレーティングのいずれかにより、0.1μm以上20μm以下の厚さの層を形成したものであることが好ましい。
このように、前記耐食層は、CVD法、反応性スパッタ法、イオンプレーティングのいずれかの方法によれば、空隙率の低い耐食層を形成することができるので、これらの方法のいずれかによって比較的薄い0.1μm以上20μm以下の厚さの層となるように形成することにより、低コストでガス透過率の低い耐食層を形成することができる。
また、前記耐食層は、溶射法またはゾルゲル法により1μm以上100μm以下の厚さの層を形成したものであることが好ましい。
このように、前記耐食層は、溶射法またはゾルゲル法により1μm以上100μm以下の厚さの層を形成したものであることにより、低コストでガス透過率の低い耐食層を形成することができる。
さらに、前記保護層の材質が、窒化ホウ素、熱分解窒化ホウ素、窒化珪素、CVD窒化珪素、窒化アルミニウム、CVD窒化アルミニウムのいずれか、またはこれらを組み合せたものであることが好ましい。
このように、前記保護層の材質が、窒化ホウ素、熱分解窒化ホウ素、窒化珪素、CVD窒化珪素、窒化アルミニウム、CVD窒化アルミニウムのいずれか、またはこれらを組み合せたものであることとすれば、ショートの原因となる金属を含まないこれらの絶縁性の材質とすることによって、高い絶縁性で導電層を保護でき、また、高温での使用による剥離や不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスにも低コストで対応できる保護層となる。
また、前記導電層の材質が、熱分解炭素またはグラッシーカーボンであることが好ましい。
このように導電層の材質が、熱分解炭素またはグラッシーカーボンであれば、高温まで加熱可能となり、加工も容易なためヒーターパターンを蛇行パターンとして、その幅や厚さ等を変えることにより、任意の温度傾斜をつけたり、熱環境に応じた発熱分布をもたせて均熱化したりすることも容易となる。
さらに、前記耐熱性基材は、少なくとも、ヒーターパターンが形成される板状部と、該板状部の片面から突出する導電路が形成される棒状部と、該棒状部の前記板状部とは反対端に位置し給電端子が形成される先端部とが形成された一体物であり、該耐熱性基材の表面に絶縁性の誘電体層が形成され、前記導電層は、該誘電体層上に形成され、前記保護層は、前記ヒーターパターンと前記導電路の表面を覆う一体的に形成されてなるものとすることができる。
このように、前記耐熱性基材は、ヒーターパターンが形成される板状部と、該板状部の片面から突出する導電路が形成される棒状部と、該棒状部の前記板状部とは反対端に位置し給電端子が形成される先端部とが形成されたものであることにより、前記板状部に前記ヒーターパターンが形成された加熱部と、前記先端部に前記給電端子が形成された給電端子部とが、前記棒状部に前記導電路が形成された導電部によって隔てられるので、給電端子部がプロセス中の高温ガスによって消耗し難くなり長寿命となる。
また、前記耐熱性基材は、一体物であって、複数の部品を組み合わせてアセンブリしたものではないので、コンパクトで製造コストが低い上、該耐熱性基材に形成された層は、使用によってクラックが入り難く長寿命である。
さらに、前記導電層は、上記のようにヒーターパターンと導電路と給電端子とが形成され、該ヒーターパターンと該導電路の表面が保護層で覆われ、一体的に形成されてなるものであるので、コンパクトで製造コストが低い上、該保護層は、使用によってクラックが入り難くなり長寿命となる。
この場合、前記耐熱性基材の材質が、グラファイトであることが好ましい。
このように耐熱性基材の材質がグラファイトであれば、材料が安価で複雑な形状でも加工が容易であるため、製造コストをさらに低くできる上、耐熱性も大きい。
さらに、前記誘電体層の材質が、窒化ホウ素、熱分解窒化ホウ素、窒化珪素、CVD窒化珪素、窒化アルミニウム、CVD窒化アルミニウムのいずれか、またはこれらを組み合せたものであることが好ましい。
このように誘電体層の材質が、窒化ホウ素、熱分解窒化ホウ素、窒化珪素、CVD窒化珪素、窒化アルミニウム、CVD窒化アルミニウムのいずれか、または、これらを組み合せたものであれば、絶縁性が高く、高温での使用による不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスにも対応できる。
また、前記棒状部の長さが、10〜200mmであることが好ましい。
このように棒状部の長さを、10〜200mmとすることにより、端子部と加熱部が十分な距離をとることができるので、端子部を十分に低温化させることができ、より効果的に端子部の消耗を防ぐことができる。
さらに、前記板状部の前記棒状部が突出する側の面にヒーターパターンが形成され、該板状部の反対側の面に被加熱物を保持する静電チャックパターンが形成されたものであることが好ましい。
このように、前記板状部の前記棒状部が突出する側の面にヒーターパターンが形成され、該板状部の反対側の面に被加熱物を保持する静電チャックパターンが形成されたものであれば、被加熱体を保持しつつ加熱することができるので効率よく加熱できるとともに高精度で位置を設定することができ、イオンインプラ、プラズマエッチング、スパッタリング等の被加熱体の位置精度が要求される場合に、より正確に所望の加熱プロセスを行うことができる。
このように、本発明により、高温・腐食性ガス環境下においても腐食ガスが透過し難く、導電層、特に給電端子部の腐食による劣化を回避できる長寿命で低製造コストの加熱素子が提供される。
さらに、加熱部と給電端子部が、棒状部に導電路が形成された導電部によって隔てられるものとすれば、給電端子部がプロセス中の高温ガスによって消耗し難くなりより長寿命となる。
従来の加熱素子は、ハロゲン系エッチングガスを用いる等のホウ化物を腐食する環境で使用される場合、最表層がホウ化物では、耐食性が乏しく、腐食され、短寿命となるという欠点があった。
また、本発明者らの研究によれば、たとえ最外層に耐食性の層を施したとしても、これにガス透過性がある場合、腐食性ガスが透過して下層を腐食し、寿命を短くしてしまうことがあった。
そこで、本発明者等は、鋭意研究を重ね、耐熱性の基材と、該耐熱性基材上に形成されたヒーターパターンを有する導電層と、該導電層上に形成された絶縁性の保護層とを有する加熱素子であって、少なくとも前記保護層の上に窒素ガス透過率が1×10−2cm/sec以下である耐食層を有するものとすることによって、高温・腐食性ガス環境下でも腐食ガスが透過せず導電層や端子部の腐食による劣化を回避できる長寿命で低製造コストの加熱素子とできることに想到し、本発明を完成させた。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図1および図2は、本発明の加熱素子の概略図である。
本発明は、少なくとも、耐熱性の基材1と、該耐熱性基材上に形成されたヒーターパターン3aを有する導電層3と、該導電層上に形成された絶縁性の保護層4とを有する加熱素子10であって、少なくとも前記保護層4の上に窒素ガス透過率が1×10−2cm/sec以下である耐食層4pを有するものである。
これによって、高温・腐食性ガス環境下においても腐食ガスが透過し難くなり、導電層3の腐食を確実に防止することができるので、導電層、特に端子部の腐食による劣化を回避することができる。
ここで窒素ガス透過率の測定は、図5に示すような測定装置30を用いて行う。まず、黒鉛板31に対して耐食層と同様の測定対象の試料となる層32を形成したものを図5のように、真空引きできる測定装置30に設置する。そして黒鉛板側容器33に所定量の窒素を入れ、試料側容器34の圧力変化を計測することによって、窒素ガス透過率の測定を行う。黒鉛板としては、例えば、直径50mm厚さ10mmのものを用いることができる。
ガス透過率K(cm/sec)は、K=QL/(Δp×A)で表される。ここで、Q(atm・cm/sec)は、ガス透過量を表し、Q=(P−P)×V/tで示される。L(cm)は、試料の厚さを表す。Δp(atm)は、初期設定差圧を表し、Δp=p−pで示される。A(cm)は透過面積を表す。
Q=(P−P)×V/tにおいて、P(atm)は、試料側容器34の初期内圧を表し、P(atm)は、ガス透過後の試料側容器34の内圧を表す。V(cm)は、試料側容器34の内部容積を表す。t(sec)は、透過時間を表す。
Δp=p−pにおいて、p(atm)は、黒鉛板側容器33の圧力を表す。
また、耐食層4pの空隙率は、7%以下であることが好ましい。これにより効果的に腐食ガスの透過を抑制することができる。
耐食層4pの空隙率は、耐食層4pの構成成分で占められていない空隙の部分の割合をいい、空隙率の測定は成膜による重量増と顕微鏡観察によるボイド計測と厚さ測定により行うことができる。
耐食層4pの材質は、ガス非透過性と耐熱性があるものであればよいが、アルミニウム、イットリウム、シリコンのいずれか、またはこれらのいずれかの化合物であることが好ましい。これにより、ハロゲン系エッチングガスや酸素等の腐食環境においても安定して使用することができる。すなわち、アルミニウム、イットリウム金属として用いたり、あるいは、アルミニウム、イットリウム、もしくは、シリコンのいずれかの化合物としては、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、イットリア、窒化イットリウム、フッ化イットリウム、酸化珪素、窒化珪素のいずれか、またはこれらを組み合わせたものを用いることができ、これらのいずれか一つ以上を複合したものを用いてもよい。
耐食層4pは、CVD法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング、溶射法、ゾルゲル法のいずれか、またはこれらを組み合わせた方法により、形成することができる。
例えば、CVD法、反応性スパッタ法、イオンプレーティングのいずれかの方法によれば、空隙率の低い耐食層を形成することができるので、これらの方法のいずれかによって比較的薄い0.1μm以上20μm以下の厚さの層となるように形成することにより、低コストでガス透過率の低い耐食層を形成することができる。
また、溶射法またはゾルゲル法によって1μm以上100μm以下の比較的厚い層となるように形成することによっても、低コストでガス透過率の低い耐食層を形成することができる。
例えばゾルゲル法によりイットリア層を形成する際に、イットリアゾル液を基材上に塗布して乾燥し、焼成すれば、均一なイットリア層を得ることができる。イットリアゾル液としてはイットリアを含有する化合物を有するゾル液であれば制限が無く、公知のゾル液を使うことができる。例えば、所定量のイットリウムを含む化合物を溶媒に溶解させ、さらに、水と酸とを添加して一定の温度にし調整して得られるイットリアゾル液を挙げることができる。化合物の具体的な例としては、塩化イットリウム等のハロゲン化イットリウム、イットリウム亜ハロゲン酸塩イットリウム有機酸、イットリウムアルコキシドおよびイットリウム錯体等のイットリウム化合物を挙げることができる。
ここで、上記のように図6に示すような測定装置30を用いて、例えば、反応性スパッタ法、CVD法、溶射法、ゾルゲル法で形成した層の透過率測定し、上記のように重量増と顕微鏡観察によるボイド計測と厚さ測定により空隙率を測定した一例の結果を以下に示す。
Figure 0004654151
耐食層4pは、このように層の材質や形成方法、形成条件、および厚さ等を調整したり、複数層を積層することによって、窒素ガス透過率が1×10−2cm/sec以下となるように、ヒーターパターンを有する導電層上に形成された保護層の上に形成することによって、高温・腐食性ガス環境下でも導電層の腐食による劣化を回避できる長寿命で低製造コストの加熱素子とできる。
さらに、保護層4の材質としては、窒化ホウ素、熱分解窒化ホウ素、窒化珪素、CVD窒化珪素、窒化アルミニウム、CVD窒化アルミニウムのいずれか、またはこれらを組み合せたものとするのが好ましい。このように、ショートの原因となる金属を含まないこれらの絶縁性の材質とすることによって、高い絶縁性で導電層を保護でき、また、高温での使用による剥離や不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスにも低コストで対応できる保護層となる。
導電層3の材質が、熱分解炭素またはグラッシーカーボンであれば、高温まで加熱可能となり、加工も容易なためヒーターパターンを蛇行パターン等として、その幅や厚さを変えることにより、任意の温度傾斜をつけたり、熱環境に応じた発熱分布をもたせて均熱化したりすることも可能となるので好ましい。特に、熱分解グラファイトであれば、さらに低製造コストであるので好ましいが、通電により発熱する耐熱性の高い材質であれば他の材質であってもよい。ヒーターパターン形状は図1のような蛇行パターン(ジグザグパターン)に限定されるものではなく、例えば同心円状の渦巻パターンであってもよい。
ヒーターパターン3aは、板状部1a上において、誘電体層2と保護層4との間に形成され、通電による発熱によって、目的の被加熱物を加熱するための十分な熱を提供するものである。図1、図2のように、導電路3bに接続する電流の導入部が1対であってもよいが、これを2対以上とすることにより、2ゾーン以上の独立したヒーター制御も可能となる。
ヒーターパターン3aは、図1(B)や図2(B)のように板状部1aの棒状部1bが突出する面の反対側の面に形成されることが好ましいが、目的に応じて図3(B)のように板状部1aの棒状部1bが突出する側の面に形成されてもよいし、両面に形成されてもよい。
耐熱性基材1は、少なくとも、ヒーターパターン3aが形成される板状部1aと、該板状部の片面から突出する導電路3bが形成される棒状部1bと、該棒状部の前記板状部1aとは反対端に位置し給電端子3cが形成される先端部1cとが形成された一体物であり、該耐熱性基材1の表面に絶縁性の誘電体層2が形成され、前記導電層3は、該誘電体層2上に形成され、前記保護層4は、前記ヒーターパターン3aと前記導電路3bの表面を覆う一体的に形成されてなるものであることが好ましい。
このように、板状部1aにヒーターパターン3aが形成された加熱部10aと、先端部1cに給電端子3cが形成された給電端子部10cとが、導電路3bが形成された棒状部1bによって隔てられるので、給電端子部10cにおいて露出した給電端子3cが低温化してプロセス中の高温ガスによって消耗し難くなり長寿命となる。
また、前記耐熱性基材1は、一体物であって、複数の部品を組み合わせてアセンブリしたものではないので、コンパクトで製造コストが低い上、該耐熱性基材1に形成された層は、使用によってクラックが入り難く長寿命である。
さらに、前記導電層3は、上記のようにヒーターパターン3aと導電路3bと給電端子3cとが形成され、該ヒーターパターン3aと該導電路3bの表面が保護層4で覆われ、一体的に形成されてなるものであるので、コンパクトで製造コストが低い上、該保護層4は、使用によってクラックが入り難くなり長寿命となる。
耐熱性基材1の材質は、グラファイトであれば、材料が安価で複雑な形状でも加工が容易であるため、製造コストをさらに低くできる上、耐熱性も大きいので好ましいが、耐熱性があれば窒化ホウ素焼結体等の他の材質であってもよい。
板状部1aは、誘電体層2とヒーターパターン3aと保護層4が形成されて加熱部10aとなるものであればよく、図1,2のような必ずしも円板状である必要はなく、多角形の板状であってもよい。
棒状部1bは、板状部1aの片面から突出し、図1(C)に示すように誘電体層2と導電路3bと保護層4およびさらにその上に耐食層4pが形成されて導電部10bとなるものであればよく、図1,2のように必ずしも円柱状である必要はなく、多角柱であってもよい。また、棒状部1bは、図1のように1本であっても、図2のように2本、または、それ以上であってもよい。この図2の加熱素子は、ヒーターパターン3aが板状部1aの両面に形成されたものであり、2本の棒状部1bによって通電され加熱される。
棒状部1bの長さを10〜200mmとすることにより、端子部と加熱部が十分な距離をとることができるので、端子部を十分に低温化させることができ、より効果的に端子部の消耗を防ぐことができる。
誘電体層2の材質が、窒化ホウ素、熱分解窒化ホウ素、窒化珪素、CVD窒化珪素、窒化アルミニウム、CVD窒化アルミニウムのいずれか、または、これらを組み合せたものであることが好ましい。これにより、絶縁性が高く、高温での使用による不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスにも対応できる。
導電層3は、板状部1aではヒーターパターン3aが形成され、前記棒状部1bでは導電路3bが形成され、前記先端部1cでは給電端子3cが形成されており、該ヒーターパターン3aと該導電路3bの表面が保護層4で覆われ、一体的に形成されてなるものとすれば、コンパクトで製造コストが低い加熱素子となる。その上、導電層3が複数の部品を組み合わせたものではないので、剥離し難く、また、保護層4が、使用によって部品の接続部付近にクラックが入ることもなく長寿命である。その上、本発明では保護層4の上に耐食層4pが形成されているので、腐食ガスが内部に透過して、導電層を劣化させることもない。
さらに、図3のように静電気を供給する電極パターンである静電チャックパターン6を設けることにより、被加熱物を保持できるようにしてもよい。特に、図3(B)のように板状部1aの棒状部1bが突出する側の面にヒーターパターン3aが形成され、図3(A)のように板状部1aの反対側の面に被加熱物を保持する静電チャックパターン6が形成されたものであれば、被加熱体を確実に保持しながら加熱することができるので高精度で加熱位置を設定することができ、イオンインプラ、プラズマエッチング、スパッタリング等の被加熱体の位置精度が要求される場合に、より正確に所望の加熱プロセスを行うことができる。
以上のような本発明の加熱素子10は、加熱部10a上に被加熱物である半導体ウェーハ等を載置し、電源端子5により電気的に接続して加熱することにより、高温・腐食性ガス環境下においても腐食ガスが透過し難いので、導電層、特に給電端子部の腐食による劣化を回避できる長寿命で低製造コストの加熱素子とすることができる。
さらに、加熱部10aと、給電端子部10cとが、棒状部1bに導電路3bが形成された導電部10bによって隔てられるものとすれば、給電端子部10cが低温化してプロセス中の高温ガスによって消耗し難くなり長寿命となる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1のような、厚さ10mm外径250mmの板状部1aの片面の中央から、直径30mm長さ100mmの棒状部1bと、該棒状部1bの板状部1aとは反対側に直径60mm厚さ10mmの小さい円板で電源端子5に接続できる4つの直径6mmの穴を形成した先端部1cとが形成された一体物でカーボン製の耐熱性基材1を用意した。
この耐熱性基材1を熱CVD炉内に設置してその表面に、反応ガスとしてアンモニアと三塩化硼素を4:1の容量混合比で流し、1900℃、1Torrの条件下で反応させて、この表面に厚さ0.3mmの熱分解窒化硼素からなる誘電体層2を形成した。
次にメタンガスを1800℃、3Torrの条件下で熱分解させて、厚さ0.1mmの熱分解グラファイトからなる導電層3を形成した。導電層3は、板状部1aでは加熱面側にヒーターパターン3aを形成し、その側面と裏面と棒状部1bでは導電路3bを形成し、先端部1cでは給電端子3cを形成するように加工した。この場合、給電端子3cは2つとし、残り2つの孔は使用しなかった。
そして、給電端子部3cにマスクを施して、再び熱CVD炉内に設置し、反応ガスとしてアンモニアと三塩化硼素を4:1の容量混合比で流し、1900℃、1Torrの条件下、ヒーターパターン3aと導電路3bの表面上に厚さ0.1mmの熱分解窒化硼素からなる絶縁性の保護層4を形成した。
さらに、その上に、耐食層4pとして反応性スパッタ法により窒化アルミニウムを20μm形成して加熱素子10を製造した。
また、図5に示すような測定装置30を用いて同様に作製した試料の窒素ガス透過率の測定を行った。まず、黒鉛板31に対して耐食層と同じ測定対象の試料となる層32を形成し、図5のように真空引きできる測定装置30に設置した。そして黒鉛板側容器33に所定量の窒素を入れ、試料側容器34の圧力変化を計測することによって、窒素ガス透過率の測定を行ったところ、前記の表1のように、透過率は1x10−5cm/secと十分に小さいものだった。
さらに試料となる層32の成膜による重量増と顕微鏡観察によるボイド計測と厚さ測定から、窒化アルミニウム層の空隙率は2%であると計測され、十分に小さいものだった。
以上のように製造した加熱素子10を電気的に接続して1x10−4Paの真空中で加熱したところ、1.5kwの電力で加熱部10aを300℃に加熱できた。その際、給電端子部10cは150℃となり、加熱部10aより大幅に低温化することができた。
ここにCFを導入し1x10−2Paとしたが200時間置いても変化無く加熱でき、高温・腐食性ガス環境下においても腐食ガスが透過し難いので、導電層、特に給電端子部の腐食による劣化を回避できることが確認された。
(実施例2)
図2のように、厚さ10mm外径250mmの板状部1aの片面の両端部、2箇所に一対の直径20mm長さ50mmの棒状部1bと、該棒状部1bの板状部1aとは反対側にM10の深さ10mmメスネジ穴が形成されて電気的接続をネジにより行えるようにした先端部1cとが形成された一体物でカーボン製の耐熱性基材1を形成した。
この耐熱性基材1を熱CVD炉内に設置してその表面に、反応ガスとしてアンモニアと三塩化硼素を4:1の容量混合比で流し、1900℃、1Torrの条件下で反応させて、この表面に厚さ0.3mmの熱分解窒化硼素からなる誘電体層2を形成した。
次にメタンガスを1800℃、3Torrの条件下で熱分解させて、厚さ0.1mmの熱分解グラファイトからなる導電層3を形成した。導電層3は、板状部1aでは加熱面側にヒーターパターン3aを形成し、先端部1cでは給電端子3cを形成するように加工した。
そして、給電端子部3cにマスクを施して、再び熱CVD炉内に設置し、反応ガスとしてアンモニアと三塩化硼素を4:1の容量混合比で流し、1900℃、1Torrの条件下、ヒーターパターン3aと導電路3bの表面上に厚さ0.1mmの熱分解窒化硼素からなる絶縁性の保護層4を形成した。
さらに、その上に耐食層4pとして、プラズマ溶射法により10μmのイットリア層を形成した後に、大気熱CVD法により2μmのイットリア層を形成し、2層の耐食層を有する加熱素子10を製造した。
また、実施例1と同様にこれらの複合イットリア層を同様に作製した試料の窒素ガスの透過率を測定したところ、上記の表1に示すように、1x10−4cm/secと十分に小さいものだった。
さらに実施例1と同様に、試料の層の形成による重量増と顕微鏡観察によるボイド計測と厚さ測定を行い耐食層の空隙率を求めた。その結果、上記の表1に示すように、プラズマ溶射法により形成した10μmのイットリア層の空隙率は7%であり、大気熱CVD法により形成された2μmのイットリア層の空隙率は2%あると計測され、十分に小さいものだった。
以上のように製造した加熱素子10を電気的に接続して1x10−4Paの真空中で加熱したところ、1.5kwの電力で加熱部10aを400℃に加熱できた。その際、給電端子部10cは150℃となり、加熱部10aより大幅に低温化することができた。
ここにCFを導入し1x10−2Paとしたが200時間置いても表面の消耗量は0.1μmと非常に小さく、高温・腐食性ガス環境下においても導電層の腐食による劣化を回避できることが確認された。
(実施例3)
実施例2と同様の加熱素子10で、耐食層4pとして、プラズマ溶射法により30μmのイットリア層を形成した。
そして、実施例2と同様に、耐食層の窒素ガス透過率、空隙率を求めたところ、上記の表1に示すように、1x10−2cm/sec、7%であり、ガス透過率が低く、空隙率が低いものであった。さらに、実施例2と同様に加熱実験およびCF導入実験を行ったところ、実施例2とほぼ同様の結果が得られ、本発明の効果を奏することが確認された。
(比較例)
図4のように、厚さ10mm外径250mmの板状の基材21の表面の両端部に、M10の深さ10mmメスネジ穴が形成されて電気的接続をネジにより行えるようにした一体物でカーボン製の耐熱性基材21を形成した。M10のネジ部は0.4mm大き目にしておき、後に電気的接続をネジにより行えるようにした。
この耐熱性基材21を熱CVD炉内に設置してその表面に、反応ガスとしてアンモニアと三塩化硼素を4:1の容量混合比で流し、1900℃、1Torrの条件下で反応させて、この表面に厚さ0.3mmの熱分解窒化硼素からなる誘電体層2を形成した。
次にメタンガスを1800℃、3Torrの条件下で熱分解させて、厚さ0.1mmの熱分解グラファイトからなる導電層3を形成した。導電層3は、基材の加熱面側にヒーターパターン3aを形成し、両端部では給電端子3cを形成するように加工した。
そして、給電端子部3cにマスクを施して、再び熱CVD炉内に設置し、反応ガスとしてアンモニアと三塩化硼素を4:1の容量混合比で流し、1900℃、1Torrの条件下、ヒーターパターン3aの表面上に厚さ0.1mmの熱分解窒化硼素からなる絶縁性の保護層4を形成した。
その上に、耐食層として、ゾルゲル法により、イットリアゾル液を塗布、乾燥、焼成して、厚さが40μmで均一なイットリア層を形成して、加熱素子を完成させた。
また、実施例1と同様に窒素ガス透過率の測定を行ったところ、上記の表1に示すように2x10−2cm/secと大きい結果だった。
さらに実施例1と同様に、試料の成膜による重量増と顕微鏡観察によるボイド計測と厚さ測定を行い耐食層の空隙率を求めたところ、上記の表1に示すように10%と大きい結果だった。
このようにして製造した図4の加熱素子20を、電気的に接続して1x10−4Paの真空中で加熱したところ、1.5kwの電力で500℃に加熱できた。その際、給電端子部は400℃とほとんど加熱を防止することができなかった。
また1.0kwの電力で500℃に加熱してCFを導入したところ、50時間したところで最表面の層であるイットリア層が剥げ、下地の窒化ホウ素が消失して、ヒーターパターン3aや導電路3b等の導電層3にクラックが入り断線した。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
本発明の加熱素子の一例(実施例1)の概略図である。(A)加熱素子の断面図である。(B)加熱素子から保護層を取り除いたものの斜視図である。(C)加熱素子の導電部の部分断面図(図1(A)の点線部分)の拡大図である。(D)耐熱性基材の断面図である。(E)耐熱性基材の斜視図である。 本発明の加熱素子の他の一例(実施例2)の概略図である。(A)加熱素子の断面図である。(B)加熱素子から保護層を取り除いたものの斜視図である。(C)耐熱性基材の断面図である。(D)耐熱性基材の斜視図である。 静電チャックパターンを形成した本発明の加熱素子の一例の概略図である。(A)加熱素子の断面図である。(B)加熱素子から耐食層および保護層を取り除いたものの下方からの斜視図である。 従来の加熱素子の一例(比較例)の概略図である。(A)加熱素子の断面図である。(B)耐熱性基材に導電層が形成された部分の全体の斜視図である。(C)耐熱性基材の断面図である。(D)耐熱性基材の斜視図である。 ガス透過率を測定するための測定装置を示す説明図である。
符号の説明
1…耐熱性基材、 1a…板状部、 1b…棒状部、 1c…先端部、 2…誘電体層、
3…導電層、 3a…ヒーターパターン、 3b…導電路、 3c…給電端子、
4…保護層、 4p…耐食層、 5…電源端子、 6…静電チャックパターン、
10…加熱素子、 10a…加熱部、 10b…導電部、 10c…給電端子部。

Claims (13)

  1. 少なくとも、耐熱性の基材と、該耐熱性基材上に形成されたヒーターパターンを有する導電層と、該導電層上に形成された絶縁性の保護層とを有する加熱素子であって、少なくとも前記保護層の上に窒素ガス透過率が1×10−2cm/sec以下である耐食層を有するものであり、
    前記耐熱性基材は、少なくとも、ヒーターパターンが形成される板状部と、該板状部の片面から突出する導電路が形成される棒状部と、該棒状部の前記板状部とは反対端に位置し給電端子が形成される先端部とが形成された一体物であり、該耐熱性基材の表面に絶縁性の誘電体層が形成され、前記導電層は、該誘電体層上に形成され、前記保護層は、前記ヒーターパターンと前記導電路の表面を覆う一体的に形成されてなるものであることを特徴とする加熱素子。
  2. 前記耐食層の空隙率が、7%以下であることを特徴とする請求項1に記載の加熱素子。
  3. 前記耐食層の材質が、アルミニウム、イットリウム、シリコンのいずれか、またはこれらのいずれかの化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱素子。
  4. 前記耐食層の材質が、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、イットリア、窒化イットリウム、フッ化イットリウム、酸化珪素、窒化珪素のいずれか、またはこれらを組み合わせたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱素子。
  5. 前記耐食層が、CVD法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング、溶射法、ゾルゲル法のいずれか、またはこれらを組み合わせた方法により、形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の加熱素子。
  6. 前記耐食層は、CVD法、反応性スパッタ法、イオンプレーティングのいずれかにより、0.1μm以上20μm以下の厚さの層を形成したものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の加熱素子。
  7. 前記耐食層は、溶射法またはゾルゲル法により1μm以上100μm以下の厚さの層を形成したものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の加熱素子。
  8. 前記保護層の材質が、窒化ホウ素、熱分解窒化ホウ素、窒化珪素、CVD窒化珪素、窒化アルミニウム、CVD窒化アルミニウムのいずれか、またはこれらを組み合せたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の加熱素子。
  9. 前記導電層の材質が、熱分解炭素またはグラッシーカーボンであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の加熱素子。
  10. 前記耐熱性基材の材質が、グラファイトであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の加熱素子。
  11. 前記誘電体層の材質が、窒化ホウ素、熱分解窒化ホウ素、窒化珪素、CVD窒化珪素、窒化アルミニウム、CVD窒化アルミニウムのいずれか、またはこれらを組み合せたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の加熱素子。
  12. 前記棒状部の長さが、10〜200mmであることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の加熱素子。
  13. 前記板状部の前記棒状部が突出する側の面にヒーターパターンが形成され、該板状部の反対側の面に被加熱物を保持する静電チャックパターンが形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の加熱素子。
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