JP4651536B2 - 組換えアンチトロンビンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は遺伝子組換え技術により調製されたアンチトロンビンの生産方法に関する。また、本発明は遺伝子組換え技術により調製されたアンチトロンビンの精製方法に関する。
アンチトロンビン(アンチトロンビンIIIともいう。以下、AT)は分子量約58,000の一本鎖糖蛋白質で、主として肝臓で合成され、ヒト正常血漿中に約150mg/L存在する。ATは血液凝固の制御機構において、最も重要な機能を果たすプロテアーゼインヒビターであり、トロンビンやXa因子(aは活性化型凝固因子を示す。以下同様)、IXa因子、XIa因子、XIIa因子などのセリンプロテアーゼを阻害する活性を有している。ATはこれらセリンプロテアーゼと1分子対1分子で安定な複合体を形成することによってプロテアーゼ活性を不可逆的に阻害することが知られている。ヘパリン存在下では、ATとトロンビンの複合体の形成速度が約1000倍に活性化される(ヘパリンコファクター活性)。ATは432個のアミノ酸残基と3本のジスルフィド結合、3本または4本のN型糖鎖から構成される。
従来の技術で得られたヒト血漿由来のAT製剤(商品名ノイアート、三菱ウェルファーマなど)は先天性AT欠乏に基づく血栓形成傾向やAT低下を伴う汎発性血管内凝固症候群(DIC)などの治療薬として用いられている。これらヒト血漿由来のAT製剤は種々の方策により感染因子混入のリスクを低減しているが、ヒト血漿由来であるがために未知の感染因子混入のリスクが懸念される。そこで、遺伝子組換え技術を応用したさらに安全性の高いAT製剤の開発が望まれている。
ATは糖蛋白質であるが、一般に糖蛋白質の糖鎖組成や糖鎖構造は免疫原性、血中半減期および生物学的活性に影響を及ぼすことが知られていることから、医薬品として遺伝子組換えAT(rAT)を製造する際は、CHO細胞(Chinese hamster ovary cells)やBHK(新生仔ハムスター腎細胞:ATCC CL10)、COS−1 monkey cellsなどの哺乳動物細胞が適している。これらの動物細胞を用いたrATの発現についてはすでにいくつか報告されている(非特許文献1〜同3)。しかしながら、従来の技術によるrATの製造はいずれも生産性が低いため、実用化には到っていない。
組換え細胞の培養方法は組換え蛋白質の生産性を決定する重要な要素のひとつである。大腸菌や酵母などの微生物と比較した場合、動物細胞は組換え蛋白質生産の宿主として次のような欠点が挙げられる。すなわち、増殖速度が低い、培地が高価である、培地当たり生産量および細胞当たり生産量が低いなどである。これらの欠点に対処するために、組換え動物細胞においては、培地組成、基本的培養条件(培養温度、溶存酸素濃度、pH等)、培養細胞の高密度化、培養細胞の生存率低下抑制などが検討されている。培養細胞の高密度化または培養細胞の生存率低下抑制により生産性を改善する培養方法としてはフェドバッチ培養および灌流培養などが知られている。これらの培養方法は細胞が必要とする栄養素を枯渇させることなく補充することによって、細胞の増殖や生存率を長期間維持するものである。
動物細胞の培養において、グルコースとグルタミンは主要な炭素源およびエネルギー源として培地成分に一般に用いられている(非特許文献4)。しかしながら、グルタミンの代謝にともなって生成するアンモニアは、細胞増殖や目的蛋白質の生産を阻害することが知られている。グルタミンを流加するフェドバッチ培養においては、アンモニアの蓄積が原因となって細胞増殖が阻害され、さらに生産性も低くなることがある。フェドバッチ培養においてアンモニアの蓄積を抑制する方法としては、培地中のグルタミン濃度を低濃度に制御するグルタミンの流加方法が報告されている(非特許文献5)。また、グルタミンの代替物としてグルタミンを含むジペプチドの使用した場合もアンモニアの蓄積が抑制されると報告されている(非特許文献6)。CHO細胞は本来グルタミンシンテターゼ活性を有するため、グルタミンの代替としてグルタミン酸を用いる方法がバッチ培養で報告されている(非特許文献7)。本来グルタミンシンテターゼ活性を持たない細胞株においても、遺伝子組換え技術を用いてグルタミンシンテターゼ遺伝子を導入することによって、グルタミンを含まない培地での増殖を可能とすることができる(非特許文献8)。
哺乳動物細胞の培養において広く使われているいくつかの基礎培地としては、Dulbecco改良Eagle培地(DME)、HamsF−12、RPMI1640、Iscove改良DMEが挙げられるが、これら基礎培地に含まれる培地中のグルタミン酸濃度は0.5mM以下である。遺伝子組換え技術を用いてグルタミンシンテターゼ遺伝子とモノクローナル抗体遺伝子を導入したNSO細胞をフェドバッチ培養した報告においても培地中のグルタミン酸濃度は1mM以下であり、グルタミンは培地に添加されていない(非特許文献9)。このように動物細胞の培養に用いる培地中のグルタミン酸濃度は通常1mM以下である。なお、グルタミン酸を高濃度添加した培養法を示唆する報告がある(特許文献1)が、グルタミン酸の高濃度添加に関する具体例の記載はなく、生産する組換え蛋白質としてATには言及されていない。また、グルタミンの代替として7mMおよび6mMのグルタミン酸をそれぞれ用いるバッチ培養および連続培養の例が報告されているが(非特許文献7、同10)、これらはグルタミン酸濃度と組換え蛋白質の生産性の関係を調べたものではない。さらに、遺伝子組換え動物細胞のフェドバッチ培養において1mM以上のグルタミン酸濃度と組換え蛋白質の生産性の関係を調べた報告はこれまでにない。
培養時のpHについて通常の条件は7乃至7.2程度であるが、pH6.8以下での培養法も報告されている(非特許文献11)。ただし、生産量の向上に関する記載・示唆は見当たらない。培養温度について通常の条件は37℃であるが、低温培養によるrATの生産法が報告されている(非特許文献12)。ただし、比活性の向上に関する記載・示唆は見当たらない。
血漿由来のATよりも安全性の高いrATを安定的に供給できるようにするために、その製造手段については動物細胞を用いる方法を始め各種の方法が検討されている。例えば、宿主として酵母を用いる方法(非特許文献13)、動物細胞[特にチャイニーズ・ハムスター卵胞(CHO)細胞]を用いる方法(特許文献2)、非ヒト哺乳動物(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジなど)に発現プラスミドを導入したトランスジェニック非ヒト動物を調製してrATをその生体内で産生させて、主にそのミルクからrATを回収する方法(特許文献3)、などが報告されている。しかし、これらのrATについてpH依存的な比活性の変動を始めとする比活性に関する情報はほとんど知られていない。
CHO細胞を用いてrATを産生する際に(一時的にせよ)アルカリ性pH条件下に置くことが報告されている。また、rATの比活性そのものが報告されたものもある(非特許文献2、14、15)。しかし、いずれの場合もアルカリ性pH条件によりATの比活性が変動したり或いは低い比活性が改善するかどうかは全く開示されていない。
血漿由来のATにおいてはアルカリ性pHで安定であることが報告されている(特許文献4、同5)。しかし、これらは組換え体由来ではなく、また比活性がpH依存的に改善するかどうかは全く開示されていない。
また、上述のrATについて医薬品として使用できる程度に高度精製することに関する情報はほとんど知られていない。rATの精製方法としては、固定化ヘパリン処理、抗体アフィニティ担体処理、硫安分画などが報告されている(非特許文献2、同15)ものの、これらはいずれも純度が低く、充分に精製されたものとは言えない。また夾雑物質の除去についても余り言及されていない。一方、固定化ヘパリン処理、溶媒交換、陰イオン交換体処理、疎水性担体処理は血漿由来ATの精製手段として既に知られているものである(特許文献6〜同8)。しかし、血漿由来蛋白と遺伝子組換え蛋白とでは夾雑物質が全く異なる(血漿由来蛋白の場合はその他の血漿蛋白が主夾雑物質であるのに対して、遺伝子組換え蛋白の場合は宿主由来または培地由来の夾雑物質が主となる)ことから、夾雑物質の各処理工程における挙動、除去の程度などについて血漿由来蛋白での知見がそのまま遺伝子組換え蛋白の場合にも当てはまることはない。
血漿由来ATを多孔性膜処理する方法が報告されている(非特許文献16)が、これはrATに関するものではなく、またその目的はウイルス除去に関するものである。また多孔性膜処理により蛋白質分子の会合を抑制する方法が報告されている(特許文献9)が、ここにはATは開示されておらず、また蛋白質の会合と濁りの関係も明らかではない。さらに免疫グロブリン製剤の調製時に多孔性膜処理を行うことにより不溶性異物を形成する核となりうる物質を除去する方法が報告されている(特許文献10)が、これは遺伝子組換え蛋白に関するものではなく、ATに関するものでもない。
特許2783294号公報 特開昭63−44898号公報 米国特許第5843705号明細書 国際公開第94/22471号パンフレット 特開平10−147538号公報 特開昭63−23896号公報 特開平1−275600号公報 特開平2−4717号公報 特開平6−279296号公報 特開平10−265406号公報 特開昭58−162529号公報 特開平5−339292号公報 特開平9−71600号公報 ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリ(J.Biol.Chem.)、1987年、262巻、14766−14772頁 同上誌、1989年、264巻、21153−21159頁 Behring Inst.Mitt.、1988年、82巻、26−34頁 Cell Biol.Int.Rep.、1982年、6巻、635−649頁 バイオテクノロジ・アンド・バイオエンジニアリング(Biotech.Bioeng.)、1994年、44巻、95−103頁 ジャーナル・オブ・バイオテクノロジ(J.Biotechnol.)、1994年、37巻、277−290頁 バイオテクノロジ・プログレス(Biotechnol.Prog.)、2000年、16巻、69−75頁 バイオ/テクノロジ(Bio/Technology)、1992年、10巻、169−175 バイオテクノロジ・プログレス、1994年、10巻、87−96頁 同上誌、2001年、17巻、1032−1041頁 バイオテクノロジ・アンド・バイオエンジニアリング(Biotech.Bioeng.)、1988年、32巻、947−965頁 エンザイム・アンド・マイクロバイアル・テクノロジ(Enzyme and Microbial Technology)、1996年、18巻、423−427頁 プロテイン・エクスペアリメント・アンド・ピュリフィケーション(Prot.Exp.Purif.)、2001年、23巻、55−65頁 バイオ/テクノロジ、1987年、5巻、720頁 バイオサイエンス・バイオテクノロジ・アンド・バイオケミストリ(Biosci.Biotech.Biochem.)、1992年、56巻4号、600−604頁 ノイアート添付文書(三菱ウェルファーマ) FEBS Lett.、1993年、335巻1号、9−12頁 アメリカン・ケミカル・ソシアティ(Am.Chem.Soc.)、1985年、9巻、197−228頁 バイオテクノロジ・アンド・バイオエンジニアリング、1997年、56巻、577−582頁 同上誌、2000年、69巻、566−576頁 BMM商品説明書(旭化成)
本発明の目的の一つは、生産量および比活性を向上させたrATの生産方法、すなわち、そのための遺伝子組換え技術を用いて形質転換されたATを産生可能な動物細胞の培養方法を提供することにある。
本発明の目的の一つは、遺伝子組換え技術により調製されたATを高度精製する方法を提供することにある。
本発明者らは上記の事情を考慮に入れて、遺伝子組換え技術を用いて形質転換されたATを産生可能な動物細胞を用いて研究を行った結果、各種培養条件のうち、pH、グルタミン酸濃度、培養温度の3つの条件が該細胞の培養およびrATの生産に重要であることを見出し、それらの条件を最適化することにより、所期の目的を達成できることを見出して、本発明のrATの生産方法を完成した。
また、本発明者らは上記の事情を考慮に入れてrATの精製方法に関する研究を開始した。ところが、遺伝子組換え技術により調製された宿主を培養することにより産生されたrATはその比活性が本来のもの(例えば、精製された血漿由来品、あるいは市販医薬品)と比べて低いことが確認された。そこで、まず、この比活性を回復させるべく各種検討を行った結果、rAT含有溶液をpH7.5以上で処理することによりrATの比活性を改善できることが判明した。さらに当該技術を基にしてrATを高度精製するため検討を行い、rATを含む培養上清を、固定化ヘパリン処理、溶媒交換、陰イオン交換体処理、高分子体の除去、多孔性膜処理を組合せて実施し、さらに少なくとも溶媒交換工程以降の工程をpH7.5以上の条件下で行うことにより、比活性が回復され、かつ高度精製されたrATを製造できることを見出した。また、本rAT含有溶液が濁りを有することが確認されたことから、この濁りを除去すべく各種処理法を検討したところ、多孔性膜処理がその効果に優れていることが判明した。これらの知見を組合せることにより本発明の精製方法を完成した。
本発明の一態様は、遺伝子組換え技術を用いて形質転換された、ATを産生可能な動物細胞を、pH6.9以下、グルタミン酸4mM以上、35℃以下を組合せた条件下で培養することを特徴とするrATの生産方法に関する。
本発明の一態様は、rATを含む培養上清を用いて、固定化ヘパリン処理、該処理液の溶媒交換、陰イオン交換体処理、高分子体の除去、平均孔径1〜100nmの多孔性膜を用いた濾過処理を行い、かつ少なくとも溶媒交換以降の工程をpH7.5以上の条件下で行う、培養上清からのrATの精製方法に関する。
なお、本発明の精製方法は以下のような発明的特徴を有する。pH7.5以上で処理することによりrATの比活性を改善する:固定化ヘパリン処理、該処理液の溶媒交換、陰イオン交換体処理、高分子体の除去処理を行うことにより、rATを高度精製する:平均孔径1〜100nmの多孔性膜を用いた濾過処理によりrAT含有溶液から濁りを除去する:精製工程の全部または一部をpH7.5以上の条件下で行うことにより、rATを高比活性の状態で回収する。
本発明の一態様は、高度精製されたrATに関する。
本発明の一態様は、高度精製されたrATを含む医薬組成物に関する。
本発明の一態様は、生産量および比活性を向上させたrATの生産方法と、rATを高度精製する方法を組合せた新規なrATの製造方法に関する。
本発明を以下に詳細を説明する。
第1図は培養pHの経時変化を示す。培養pH7.0以上(●)、培養pH6.6以上(○)。
第2図はrAT生産濃度(ヘパリンコファクター活性)の経時変化を示す。培養pHの説明は第1図と同じである。
第3図は培養pHの経時変化を示す。培養pH6.6(+)、培養pH6.8(○)、培養pH7.0(▲)、培養pH7.2(□)。
第4図はAT生産濃度(ヘパリンコファクター活性)の経時変化を示す。培養pH7.0における培養終了時のAT生産濃度を100%としたときの相対値で表示した。培養pHの説明は第3図と同じである。
第5図は培地中のグルタミン酸濃度の経時変化を示す。グルタミン酸濃度:1mM(○)、4mM(△)、8mM(□)。
第6図はAT生産量(ヘパリンコファクター活性×培養液量)の経時変化を示す。グルタミン酸1mMにおける培養終了時のAT生産量を100%としたときの相対値で表示した。グルタミン酸濃度の説明は第5図と同じである。
第7図はAT生産量(ヘパリンコファクター活性×培養液量)の経時変化を示す。培養37℃における培養終了時のAT生産量を100%としたときの相対値で表示した。培養温度:35℃(○)、37℃(+)。
(生産方法)
本発明のrATの生産方法は本来的には以下のような請求範囲を有する。
1) 遺伝子組換え技術を用いて形質転換された、ATを産生可能な動物細胞を、pH6.8以下、グルタミン酸4mM以上、35℃以下を組合せた条件下で培養することを特徴とするrATの生産方法。
2) 該細胞を、pH6.8以下の培養液に接触させる工程で培養する、4mM以上のグルタミン酸を含む培養液に接触させる工程で培養する、35℃以下で培養する、1)のrATの生産方法。
3) 培養様式が、培養中の細胞が培養液中に浮遊している、培養中の細胞が無血清培地中にある、培養中の細胞が哺乳動物由来の蛋白質を含まない培地中にある、培養方法がフェドバッチ培養である、の少なくとも一つを伴ってなる1)のrATの生産方法。
4) 遺伝子組換え技術を用いて形質転換された、ATを産生可能な動物細胞を、pH6.8以下、グルタミン酸4mM以上、35℃以下のうち少なくとも2つを組合せた条件下で培養することを特徴とするrATの生産方法。
5) 遺伝子組換え技術を用いて形質転換された、ATを産生可能な動物細胞を、pH6.8以下の培養液に接触させる工程で培養することにより、rATの生産量を向上させることを特徴とするrATの生産方法。
6) 遺伝子組換え技術を用いて形質転換された、ATを産生可能な動物細胞を、4mM以上のグルタミン酸を含む培養液に接触させる工程でフェドバッチ培養することにより、rATの生産量を向上させることを特徴とするrATの生産方法。
7) 動物細胞がグルタミンシンテターゼ活性を有するものである6)のrATの生産方法。
8) 遺伝子組換え技術を用いて形質転換された、ATを産生可能な動物細胞を、35℃以下でフェドバッチ培養することにより、rATの生産量および/または比活性を向上させることを特徴とするrATの生産方法。
AT遺伝子・宿主・発現系
(ヒト)AT遺伝子としては公知のものを用いることができる(特許文献11)。なおAT遺伝子としては野生型以外にも変異型のものであってもよい。変異型としては野生型のアミノ酸配列の一部を欠失・置換・付加したものであって、野生型と少なくとも同程度の生理活性を有するものであれば特に限定されない。例えば、反応部位・ヘパリン結合部位のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したもの(特許文献12)、C末端にアミノ酸・オリゴペプチドを付加したもの(特許文献13)、135位をアスパラギンからグルタミンに置換したもの(非特許文献17)などが例示される。なお変異型としては、ヘパリン非依存的なトロンビン阻害活性、あるいは高いヘパリン親和性を有するものであってもよい。
宿主(動物細胞)としては遺伝子組換え技術において公知のものを用いることができる。例えば、CHO細胞(CHO−K1細胞など)、BHK細胞、COS−7細胞、Vero細胞などの動物細胞が例示される。これらは栄養要求性株、抗生物質感受性株、ある種の変異株(ある特定遺伝子の欠損株)であってもよい。例えば、dhfr(ジヒドロ葉酸還元酵素)欠損株などの変異体などが例示される。また本発明の動物細胞としてはグルタミンシンテターゼ活性を有するものを用いることができる。
本発明のAT発現系としては、動物細胞で通常使用される発現系(プロモータ、シグナル配列など)を利用すればよい。上記のATをコードする遺伝子を発現ベクター系に導入して、発現用宿主・ベクター系を構築する。ベクターはプロモータ、シグナル配列、リボソーム結合部位、転写終結配列(ターミネータ)を有する。制御配列(エンハンサ)、RNAスプライス配列、ポリA付加部位をさらに有していてもよい。また形質転換細胞中で表現型の選択が可能となるマーカの配列を有していてもよい。さらに高生産系として、dhfr遺伝子を利用した遺伝子の増幅系などを用いることもできる。
形質転換体の調製
形質転換体は公知の方法により調製することができる。すなわち、AT遺伝子を適当な発現プラスミドに担持させた形で宿主細胞系に導入して形質転換体を調製する。発現プラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクチン法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法、ウイルスベクター法などが例示される。これらの方法によりプラスミドまたはその線状断片を宿主染色体上に導入することができる。
培地・培養・rATの生産
形質転換体を公知の方法により培養する。培地としては動物細胞培養用のものであれば特に限定されない。例えば、基本培地(例、MEM培地、DMEM培地、RPMI培地、HamF培地など)および基本培地にウシ血清などを添加した血清含有培地、血清を含まない無血清培地などが例示される。無血清培地には、哺乳動物由来の蛋白質(例、インスリン、血清アルブミン、トランスフェリンなど)を添加したもの、哺乳動物由来の蛋白質を添加しないもの(組換え蛋白質または植物由来蛋白質を用いる)、蛋白質そのものを添加しないもの(いわゆる無血清無蛋白培地であるが、蛋白質加水分解物を含むこともある)、低分子量の合成品のみを添加したもの(糖、アミノ酸、脂質、ビタミン、核酸、ミネラル、アミン類などから構成される。いわゆる人工合成培地)などを用いることもできる。
本発明の培養条件の特徴はpH6.9以下(好ましくはpH6.8以下)、グルタミン酸4mM以上、35℃以下の条件下で培養することである。各々の培養条件は培養期間中、常に満たす場合、一時的に(ある一定の時間内だけ)満たす場合の両方を概念上含む。
pHに関しては、形質転換体をpH6.9以下(好ましくはpH6.8以下)の培養液に接触させる工程で培養する様式が挙げられる。具体的には、培養期間中のpHを6.8以下に維持する態様、pHを6.7〜6.9(6.8±0.1)に設定する態様、培養期間の一部のみpH6.8以下に設定する態様などが例示される。後者としては例えば、当初pHを7.2程度とし、その後のpHを制御しない(なりゆきの)態様を取ることにより、pHを自然に6.8以下に低下させ、その後また自然にpH7.2程度まで上昇させる事例などが考えられる。いずれの場合も好ましくはpH6.6以上であることが挙げられる。本様式によりATの生産量を向上させることができる。
グルタミン酸に関して具体的には4mM以上のグルタミン酸を含む培養液に接触させる工程でフェドバッチ培養する様式が挙げられる。好ましくは7mM以上が例示される。具体的には、3〜5mM(4±1mM)に設定する態様、培養途中から4mM以上となるように設定する態様、6〜8mMに設定する態様などが例示される。グルタミン酸はナトリウム塩、カリウム塩などの塩の態様であってもよい。このとき、培養液としては遊離のグルタミンは添加しないことが好ましい。本様式によりATの生産量を向上させることができる。
培養温度に関して具体的には35℃以下でフェドバッチ培養する様式が挙げられる。温度は35℃以下、具体的には30〜35℃程度、好ましくは33〜35℃程度が例示される。本様式によりATの生産量・比活性を向上させることができる。
当該3条件(3工程:pH、グルタミン酸濃度、温度のこと)は3つともを組合せて、あるいは、そのうちの少なくとも2つを組合せて実施することができる。この場合に該3条件(3工程)は同時に実施してもよく、時間的に一部重なって(重複して)実施してもよく、また時間的に独立して(バラバラに)実施してもよい。
培養時間としては10〜500時間程度が挙げられる。また必要に応じて通気や攪拌を加えることもできる。培養様式としてはバッチ培養、フェドバッチ培養、連続培養、灌流培養などを用いることができる。好ましくはフェドバッチ培養を用いる。また、培養中の細胞の存在形態により、付着培養(培養中の細胞が担体中に付着している)、浮遊培養(培養中の細胞が培養液中に浮遊している)があり、いずれの方法を用いてもよい。好ましくは浮遊培養を用いる。
その他の培養条件(細胞密度、培地組成、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、攪拌速度、培地の流加速度など)は動物細胞の種類に応じて適当なものを適宜選択すればよい。
単離・精製
培養によりrATを生産させた後に、形質転換体またはその培養物(培養液、培養上清)からrATを得ることができる。
rATは公知の方法により精製することができる。例えば、限外濾過、ゲル濾過、イオン交換体処理、アフィニティ担体処理などが挙げられる。
(精製方法)
本発明のrATの精製方法は本来的には以下のような請求範囲を有する。
1) rATを含む培養上清を用いて、固定化ヘパリン処理、該処理液の溶媒交換、陰イオン交換体処理、高分子体の除去、平均孔径1〜100nmの多孔性膜を用いた濾過処理を行い、かつ少なくとも溶媒交換以降の工程をpH7.5以上の条件下で行う、培養上清からのrATの精製方法。
2) 多孔性膜処理を行う前にさらに限外濾過を行う1)の精製方法。
3) rATを含む培養上清を用いて、固定化ヘパリン処理、該処理液の溶媒交換、陰イオン交換体処理、高分子体の除去、平均孔径1〜100nmの多孔性膜を用いた濾過処理を行う、培養上清からのrATの精製方法。
4) 精製工程の全部またはその一部をpH7.5以上の条件下で行う、rATの精製方法。
5) rAT含有溶液をpH7.5以上で処理することにより、rATの比活性を改善する、rATの精製方法。
6) rAT含有溶液を、平均孔径1〜100nmの多孔性膜を用いて濾過処理することにより、該溶液から濁りを除去する、rATの精製方法。
AT遺伝子、宿主発現系
(ヒト)AT遺伝子としては公知のものを用いることができる。なおAT遺伝子としては野生型以外にも変異型のものであってもよい。変異型としては野生型のアミノ酸配列の一部を欠失・置換・付加したものであって、野生型と少なくとも同程度の生理活性を有するものであれば特に限定されない。例えば、反応部位・ヘパリン結合部位のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したもの、C末端にアミノ酸・オリゴペプチドを付加したもの、135位をアスパラギンからグルタミンに置換したものなどが例示される(関連文献はいずれも上記のとおり)。また宿主発現系としてはATにおいて公知のものを用いることができる。例えば、酵母[例えば、サッカロマイセス属(サッカロマイセス・セレビシエなど)、ピキア属(ピキア・パストリスなど)、クルイベロマイセス属など]、動物細胞(例えば、CHO細胞、BHK細胞、COS−7細胞、Vero細胞など)、昆虫細胞、カビ(アスペルギルス属など)などが例示される。これらは栄養要求性株、抗生物質感受性株、ある種の変異株(ある特定遺伝子の欠損株)であってもよい。また、トランスジェニック非ヒト動物(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジなど)を用いることができる。好ましくは宿主として動物細胞を用いる。より好ましくは宿主としてCHO細胞を用いる。
rATの調製
公知の方法により調製することができる。すなわち、AT遺伝子を適当な発現プラスミドに担持させた形で宿主発現系に組込んで形質転換体を調製する。
さらに形質転換体を培養してrATを生産する。その培養条件(細胞密度、培地組成、pH、温度、時間、溶存酸素量、二酸化炭素量、攪拌速度、培地の流加速度など)は宿主発現系に応じて適当なものを選択すればよい。pH・温度・時間は一般的にはpH5〜8(好ましくはpH6〜7.3)、10〜45℃、10〜500時間程度が例示される。また培養様式はバッチ培養、フェドバッチ培養、連続培養のいずれでもよい。
上記の通常条件での培養により産生された(あるいは培養上清中の)rAT(含有画分)は、ATの蛋白質濃度(例えば、逆相クロマトグラフィーで定量できる)を用いて比活性を計算した場合、当該比活性は本来の水準(例えば、精製された血漿由来品では6.5〜7.5U/mg程度であるのに対して)より低い値を示す。具体的には比活性3〜6U/mg程度である。また当該rAT(含有画分)は、pH7.5以上のアルカリ性pHで処理することにより比活性が上昇(回復)し、さらに当該処理を行った後に酸性pH条件下に置いた場合、アルカリ性pH処理により回復された比活性が逆に低下してしまうという性質を有する。
本発明のrATは以下の処理工程により高度精製される。
前処理
培養液から宿主細胞を取り除き、培養上清のみを回収する。必要に応じて1〜10U/mL程度に濃縮する。また、0.45μm程度の濾過処理を行ってもよい。
固定化ヘパリン処理
本処理はrATを精製するために行うものであり、rAT含有溶液を固定化ヘパリンに接触させてATを吸着させた後に溶出させる工程である。固定化ヘパリンはヘパリンを不溶性担体に結合したものである。不溶性担体としては、アガロース(商品名セファロース)、デキストラン(商品名セファデックス)、親水性ビニルポリマー(商品名トヨパール)などが例示される。ヘパリンを不溶性担体に結合させる方法は公知の方法に準じて行うことができる。また、市販品を用いることもできる。
rATと固定化ヘパリンの接触条件としては、pH6〜8、伝導度10〜40mS/cm程度が例示される。接触後にrATを吸着した固定化ヘパリンを一旦洗浄することが好ましい。洗浄条件としてはpH6〜8、塩濃度0.15〜0.65M程度が例示される。具体的には0.15〜0.65Mの塩化ナトリウムなどが用いられる。さらに溶出条件としてはpH6〜8、塩濃度1〜3M程度が例示される。具体的には2.5〜3.5Mの塩化ナトリウムなどが用いられる。
溶媒交換
本処理はrAT含有溶液の溶媒組成を変更するために行う工程である。具体的にはハイドロキシアパタイト処理、透析、限外濾過などが例示される。いずれの場合も、溶媒をpHが7.5以上となるように交換する。具体的にはpH7.5〜10程度であることが好ましく、より好ましくはpH7.5〜9程度である。塩濃度は特に限定されないが、好ましくは0.01〜0.5M程度である。例えば、0.1Mのリン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液(pH8)などが例示される。
ハイドロキシアパタイト処理を行う場合は、rAT含有溶液をハイドロキシアパタイトに接触させた後に、吸着したrATを交換すべき溶媒で溶出・回収すればよい。ハイドロキシアパタイト処理を行う場合、交換すべき溶媒は、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸緩衝液などを用いる。
限外濾過・透析を行う場合は、外液として交換すべき溶媒を用い、rAT含有溶液を処理すればよい。
陰イオン交換体処理
本処理はrAT含有溶液を陰イオン交換体と接触することにより、主にDNAを除去するために行う工程である。
陰イオン交換体は陰イオン交換基を不溶性担体に結合したものである。陰イオン交換基としては、DEAE(ジエチルアミノエチル)、QAE(四級アミノエチル)、Q(四級アンモニウム)などが例示される。また、不溶性担体としては、アガロース(商品名セファロース)、デキストラン(商品名セファデックス)、親水性ビニルポリマー(商品名トヨパール)などが例示される。陰イオン交換基を不溶性担体に結合させる方法は公知の方法に準じて行うことができる。また、市販品を用いることもできる。
本処理の態様としては、非吸着(パス)画分を回収する方法、rATを一旦、吸着させた後に、溶出・回収する方法、両者を併用する方法が挙げられる。いずれの場合も、接触条件としては、pHが7.5以上であればよい。具体的にはpH7.5〜10程度であることが好ましく、より好ましくはpH7.5〜9程度である。塩濃度は特に限定されないが、好ましくは0.01〜0.5M程度である。例えば、0.1Mのリン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液(pH8)などが例示される。
第一の方法の場合は接触条件をそのまま維持して、非吸着画分を回収する。第二の方法の場合は接触条件を適当な時期(rATはまだ溶出していない時期)に変更してrATを溶出・回収する。その溶出条件としては、pH5〜7程度、塩濃度0.01〜0.5M程度が例示される。例えば、生理食塩液(0.15Mの塩化ナトリウム)などが例示される。第三の方法の場合は、パス画分回収法(第一の方法)と溶出法(第二の方法)のいずれを先に行ってもよい。
高分子体除去
高分子体(ATよりも高分子量のものであることを意味する。rATの重合体も概念上含まれる)を除去する工程である。具体的には疎水性担体処理、固定化ヘパリン再処理などが例示される。疎水性担体処理を行う場合は、rAT含有溶液を疎水性担体処理用の担体に接触させて、非吸着画分を回収することにより高分子体を除去する。
疎水性担体処理用の担体は、疎水性基を不溶性担体に結合したものである。疎水性基としては、アルキル基(炭素数4〜18、例えば、ブチル基、オクチル基、オクタデシル基など)、フェニル基などが例示される。また、不溶性担体としては、アガロース(商品名セファロース)、デキストラン(商品名セファデックス)、親水性ビニルポリマー(商品名トヨパール)などが例示される。疎水性基を不溶性担体に結合させる方法は公知の方法に準じて行うことができる。また、市販品を用いることもできる。
疎水性担体処理用の担体への接触条件としては、pHが7.5以上であればよい。具体的にはpH7.5〜10程度であることが好ましく、より好ましくはpH7.5〜9程度である。塩濃度は特に限定されないが、好ましくは0.5〜3M程度である。例えば、0.5〜3M程度の硫酸アンモニム、硫酸ナトリウムなどの無機塩を添加した、0.01〜0.5M程度(具体的には0.1M)のリン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液(pH8)などを用いる。
疎水性担体処理を行う場合は、その処理後に溶媒を交換する。そのpHは7.5以上であればよい。具体的にはpH7.5〜10程度であることが好ましく、より好ましくはpH7.5〜9程度である。塩濃度は特に限定されないが、好ましくは0.01〜0.5M程度である。例えば、0.1Mのリン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液(pH8)などが例示される。
固定化ヘパリン再処理を行う場合は上述の1回目の操作に準じて行えばよい。
限外濾過
本発明においては多孔性膜処理を行う前に限外濾過を行うことが好ましい。本処理はエンドトキシン除去および後の多孔性膜処理時の目詰り予防のために行うものである。限外濾過は100〜500キロダルトン(kD)程度の分画分子量を有する限外濾過膜を用いて行われる。限外濾過膜の材質としてはポリスルホン系、セルロース系などが挙げられる。また市販のものを用いてもよい。例えば、ザルトリウス社のザルトコン(商品名)などが挙げられる。
また2種以上の分画分子量の異なる限外濾過膜を併用してもよい。この場合は、上記の100〜500kD程度の分画分子量を有する限外濾過膜および1〜50kD程度の分画分子量を有する限外濾過膜を組合せて用いることができる。
多孔性膜処理
本工程は本来のウイルス除去を目的とする他に、rAT含有溶液に含まれる濁りを除去するために行われる。本発明で使用される多孔性膜の素材としては特に制限されないが、好ましくは再生セルロースが挙げられる。その形状としては中空糸状、シート状等が挙げられるが、好ましくは中空糸状である。例えば、該再生セルロースの多孔性中空糸は、好ましくはセルロース銅アンモニア溶液からのミクロ相分離法(非特許文献18)により調製される。
多孔性膜の平均孔径は1〜100nm、好ましくは10〜75nm、より好ましくは10〜50nm、特に好ましくは35±2nmまたは15±2nmであり、膜厚は好ましくは35±3.5μmまたは27±3μmであり、その膜は好ましくは多重層構造である。多孔性膜が中空糸状である場合は、内径は好ましくは330±30μmである。
多孔性膜が中空糸状の場合には、好ましくはモジュールの態様で使用される。該モジュールは膜面積が好ましくは0.001〜1.0mである多孔性中空糸膜とこれを充填するための容器およびこれらを一体化するための接着剤により構成される。
多孔性膜による濾過処理は例えば、以下のようにして行われる。まず、rAT含有溶液を準備する。そのpHとしては少なくとも7.5であればよい。具体的にはpH7.5〜10程度であることが好ましく、より好ましくはpH7.5〜9程度である。塩濃度としては0.01〜0.5M程度が例示される。蛋白濃度としては1〜100mg/mL程度が例示される。
本処理を行うに当たり、予めrAT含有溶液に通常医薬品に用いられる薬理的に許容される添加剤(例えば、担体、賦形剤、希釈剤等)、安定化剤、製薬上必要な成分を添加してもよい。例えば、糖(ブドウ糖、果糖などの単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖などの二糖類、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコールなど)、無機塩(塩化ナトリウムなど)、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸など)またはその塩(ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ土類金属塩、カルシウム塩などのアルカリ金属塩)、非イオン系界面活性剤[ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体(商品名プルロニック)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名トウイーン)など]が例示される。その添加量は糖0.1〜40%(w/v)程度、無機塩、有機酸またはその塩0.1〜10%(w/v)程度、非イオン系界面活性剤0.01〜1%(w/v)程度である。
上記のrAT含有溶液を、多孔性膜を用いて濾過処理を行う。この時の濾過圧力は好ましくは0.1〜1kgf/cm程度である。また、処理温度は好ましくは4〜50℃程度である。
濾過処理の態様としては、液体にひずみ速度を与えながら濾過するクロスフロー濾過法(循環式)とひずみ速度を与えずに濾過するデッドエンド濾過法(非循環式)があり、いずれでもよい。
アルカリ性pH処理
本発明においては低比活性(例えば、3〜6U/mg程度の比活性)のrATをpH7.5以上で処理することによりその比活性を回復させることができる。pH条件としては具体的には7.5〜10程度であることが好ましく、より好ましくはpH7.5〜9程度である。具体的には、水酸化ナトリウム液、水酸化カリウム液、リン酸二ナトリウム液、リン酸二カリウム液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液などを用いればよい。伝導度(塩濃度)としては0.01〜300mS/cm(0.01〜0.5M)程度が例示される。蛋白濃度としては0.1〜350mg/mL程度、好ましくは1〜100mg/mL程度が例示される。処理時間としては1〜10時間程度が挙げられる。また、当該処理は一つの処理工程として単独で実施してもよいが、rATの処理工程(精製工程)の最中において当該処理が結果的に行われる態様であってもよい。例えば、rATをカラムクロマトグラフィーにより処理する際にアルカリ性pH条件で接触させる、あるいは溶出・展開させる、などの態様であっても差し支えない。
また本発明のアルカリ性pHでの処理はrATが生産されたばかりの状態(つまり培養液または培養上清)であっても、それらをある程度精製した粗精製段階であっても、または、さらに精製を行った後の精製段階であっても、そのいずれの段階で行ってもよい。好ましくは、未精製段階で行うよりも、粗精製段階または精製段階で行う方が比活性回復の効果をより発揮することができる。
ウイルス不活化処理
本発明においては必要に応じて、公知のウイルス不活化処理を行うことができる。例えば、液状加熱(パスツリ)処理、乾燥加熱処理、SD(デタージェント)処理などを単独で、あるいは組合せて用いることが例示される。当該処理時には公知の安定化剤の存在下に行ってもよい。安定化剤としては、糖(単糖類、二糖類、糖アルコールなど)、アミノ酸またはその塩、中性塩、有機酸またはその塩、界面活性剤などが例示される。添加濃度も公知の範囲で適宜選択すればよい。また、処理条件としてはウイルスが実質的に不活化される条件下であればよい。具体的には、液状加熱の場合は50〜80℃で10分〜20時間程度、乾燥加熱処理の場合は50〜100℃で10分〜100時間程度、SD処理の場合は10〜50℃で10分〜10時間程度が例示される。ウイルス不活化処理を精製工程のどの段階で行うかについては任意に選択することができる。
得られた精製物の性状
本発明により調製された精製物(rAT)は比活性が6.5U/mg以上と高度に精製されており、他の夾雑物質は充分に除去できている。また、多孔性膜処理により濁りも除去できている。
(製造方法)
本発明では、上述のrATの生産方法および精製方法を組合せることにより、生産量と比活性を向上させ、さらに高度精製されたrATを製造することができる。本製造方法においては、生産量としては培地1L当たり少なくとも1gのrATを(最高では2g程度)、比活性としては6.5U/mg以上を実現できる。また高度精製に関しては、純度99%以上、夾雑物質として、rATが100〜200U/mLの溶液であるときに、宿主由来蛋白含量が1ng/mL以下、DNA含量が10ng/mL以下を実現することができる。
本発明のrATは、AT製剤としての適応症である血液凝固阻止、凝固異常亢進の補正、具体的には血栓形成傾向、汎発性血管内凝固症候群(DIC)の治療を目的として臨床上用いることができる他、例えば、妊娠中毒症、胎盤血流、抗炎症、敗血症、重症敗血症などの公知の医薬用途にも適用することができる。
本発明の利点、特徴および可能な範囲については、例示的な実施形態を参照にしながら以下に詳細に記載するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
(生産方法に関する実施例の部)
ATの活性はヘパリンコファクター活性(U)を指標とした。1Uは健常人の血漿1mL中に存在するATの活性量に相当する。該活性は合成発色基質(商品名S−2238)を用いた市販の測定キット(テストチームAT・2キット、第一化学薬品)により測定した。またATとしての蛋白質濃度はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いた逆相クロマトグラフィー(RPC)で定量した。逆相クロマトグラフィーは逆相カラムを用いて以下の条件で行った。逆相カラムはR2/10カラム(2.1×50mm、ポロス社)を、HPLCはBeckman−Coulter HPLC(Beckman社)を、移動相は0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)を含む水−アセトニトリルの直線勾配法を、検出は220nmの吸光度を、各々用いた。対照には血漿由来AT(商品名ノイアート、三菱ウェルファーマ)を用いた。該活性値を該蛋白質濃度で除したものを比活性(U/mg)と表示した。以下同様。
参考例
ヒトATのcDNAは特許文献11に開示された塩基配列を用いた。ヒトATのcDNAをhCMV−MIEプロモータの支配下に発現するプラスミドを構築した。本プラスミドをCHO−K1細胞にトランスフェクションした。得られた形質転換体の中からATの生産能が高いクローン(A株、B株、C株)を選択し、以下の実施例に供した。
3L容培養槽2台に生細胞密度2.2×10cells/mL、培養液量2LとなるようにAT産生CHO細胞A株を播種して培養を行った。ここで1台の培養槽は培養期間中pHが7.0以上を維持するように0.5mol/L NaHCOを添加して調節し、他の1台はpH6.6以上で培養を行った。両培養槽とも培養温度37℃、溶存酸素濃度80mmHg以上、溶存二酸化炭素濃度38mmHg、撹拌速度60rpmに制御した。培地は市販の無血清培地であるExCell302培地(JRH Biosciences社)に以下の成分を添加して用いた。すなわち、アラニン9mg/L、アスパラギン一水和物85.22mg/L、アスパラギン酸13mg/L、グルタミン酸75mg/L、プロリン11.5mg/L、セリン10mg/L、アデノシン7mg/L、シチジン7mg/L、グアノシン7mg/L、チミジン0.24mg/L、ウリジン7mg/L、ペニシリン100,000単位/L、ストレプトマイシン100mg/Lを添加した。
培養液を1日1回サンプリングし、サンプリングした培養液を遠心し、得られた培養上清を使用してAT活性を測定した。
両培養槽とも初発pH7.14で培養を開始した。pH6.6以上で培養した条件では培養73時間目にpH6.63まで低下した後、培養188時間目にpH7.12まで上昇した(第1図)。pH7.0以上で培養した条件では培養44時間目にpH7.02まで低下し、培養145時間目にはpH7.6まで上昇した。AT生産濃度はpH6.6以上で培養した条件がpH7.0以上で培養した条件よりも4倍以上高かった(第2図)。結果を表1にまとめた。
Figure 0004651536
3L容培養槽4台に生細胞密度1.5×10cells/mL、培養液量1.45LとなるようにAT産生CHO細胞B株を播種して培養を行った。培養pHをそれぞれ6.6、6.8、7.0および7.2に設定し、培養期間中pHが設定値±0.07になるように1mol/L塩酸または0.5mol/L NaHCOを用いてpHを調節した(第3図)。いずれの培養槽も培養温度、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、撹拌速度は、実施例1と同一条件で制御した。培地は市販の無血清培地であるExCell302GS培地(JRH Biosciences社、#61215)にペニシリン100,000単位/L、ストレプトマイシン100mg/Lを添加して用いた。この培地は遊離のグルタミンを含まず、約1mMのグルタミン酸を含んでいる。以下特に記述しない場合はこの培地を用いた。
培養期間中グルコース濃度が0.7g/Lを維持するように流加用培地を連続的に添加した。流加用培地は非特許文献19に開示されたものを改変して用いた。流加用培地の改変は非特許文献20などに準じて行った。
生存率が90%未満となった時点で培養を終了した。培養pH7.0と7.2は216時間目に培養を終了し、培養pH6.6は240時間目、培養pH6.8は288時間目に培養を終了した。AT生産濃度は培養pH6.8に制御した条件で最も高くなった(第4図)。pH6.8におけるAT生産濃度はpH7.0における生産濃度より20%高かった。結果を表2にまとめた。
Figure 0004651536
3L容培養槽3台に生細胞密度2.6×10cells/mL、培養液量1LとなるようにAT産生CHO細胞C株を播種して培養を開始した。ここで使用する無血清培地は実施例2と同じものを用いた。さらに培養液中の初発グルタミン酸濃度が、それぞれ1、4及び8mMとなるようにグルタミン酸ナトリウムを添加した。全培養槽についてpH6.8とし、培養温度、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、撹拌速度は実施例1と同一条件にて運転した。
培養液は1日1回サンプリングし、サンプリングした培養液を遠心し、得られた培養上清を使用してグルタミン酸濃度およびAT活性を測定した。
培養液中のグルコース濃度が2g/Lに維持されるようにフェドバッチ用培地を連続的に添加した。流加用培地は実施例2と同じものを用いた。該流加用培地を用いることによって、培養期間中にアラニン以外のアミノ酸が枯渇することはなかった。さらに、培養液中のグルタミン酸濃度がそれぞれ、1、4および8mMに維持されるように流加用培地のグルタミン酸濃度を調整した。具体的には流加用培地中のグルタミン酸量をグルコース1モル当たり、それぞれ0.075モル、0.181モルおよび0.265モルの比で含まれるように調整することにより、培養液中のグルタミン酸濃度を1、4および8mMに維持することができた(第5図)。グルタミン酸濃度は細胞増殖に影響を及ぼさなかった。ATの生産量(AT活性×培養液量)を測定し、グルタミン酸1mMの場合におけるATの生産量を100%として第6図に示した。グルタミン酸濃度4mMおよび8mMではグルタミン酸濃度1mMと比較してATの生産量がそれぞれ18%および22%増加した。結果を表3にまとめた。
Figure 0004651536
3L容培養槽2台に生細胞密度1.9×10cells/mL、培養液量1LとなるようにAT産生CHO細胞C株を播種して培養を行った。それぞれの培養槽を35℃および37℃で運転した。全ての培養槽について培養pH6.8とし、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、撹拌速度は実施例1と同一条件にて運転した。無血清培地は実施例2と同じものを用いた。さらに培養液中の初発グルタミン酸濃度が7.5mMとなるようにグルタミン酸ナトリウムを添加した。
培養液中のグルコース濃度が2g/Lに維持されるように流加用培地を連続的に添加した。流加用培地は実施例2と同じものを用いた。培養液は1日1回サンプリングし、サンプリングした培養液を遠心し、得られた培養上清を使用してAT活性を測定した。
結果を第7図と表4に示す。AT生産量(AT活性×培養液量)は培養335時間目まで増加していた(第7図)。本発明によれば従来法(培養温度37℃)に比較してATの生産量が向上した。
Figure 0004651536
実施例4に準じて実験を行った。3L容培養槽3台を用い、それぞれの培養槽を33℃、35℃および37℃で運転した。培養335時間目の培養上清中のAT蛋白質濃度を逆相クロマトグラフィーで測定し比活性を調べた結果、培養温度が低いほど比活性が高くなった(表5)。
Figure 0004651536
(精製方法に関する実施例の部)
ATの活性はヘパリンコファクター活性(U)を指標とした。1Uは健常人の血漿1mL中に存在するATの活性量に相当する。該活性を、合成発色基質S−2238を用いた市販の測定キット(テストチームAT・2キット、第一化学薬品)により測定した。また、ATとしての蛋白量(重量、mg)はELISA法もしくは逆相クロマトグラフィー法により測定した。ELISA法はウサギ由来抗ヒトATポリクローナル抗体(DAKO社)、西洋ワサビ由来POD標識ヒツジ由来抗ヒトAT IgG(アフィニティ精製品、CEDALANE社)および発色試薬を用いて行われた。該活性値を該蛋白量で除したものを比活性(U/mg)と表示した。以下同様。
CHO細胞にAT発現プラスミドを導入して調製した形質転換体を無血清培地中で培養してrATを生産させた。培養条件はpH7.2、37℃、300時間とした。この培養濃縮液を、0.45μmのフィルターで濾過処理した後に、固定化ヘパリン[親水性ビニルポリマー(商品名トヨパール)にヘパリンを固定化したもの]処理してrATを精製した。すなわち、0.15Mの塩化ナトリウムで洗浄し、3Mの塩化ナトリウムで溶出した。当該溶出液を、ハイドロキシアパタイトカラムにアプライし、0.1Mのリン酸二カリウム液(pH8)で溶出した。当該溶出液を陰イオン交換体(DEAE−アガロース、商品名DEAE−セファロース)カラムにアプライし、非吸着画分を回収した。当該画分に硫酸アンモニウムを1Mとなるように添加し、疎水性クロマト(フェニル−親水性ビニルポリマー、商品名フェニル−トヨパール)カラムにアプライし、非吸着画分を回収した。当該画分を分画分子量30kDの限外濾過膜(商品名ザルトリウス)を用いて限外濾過し、溶媒を、0.5%塩化ナトリウムを含む0.52%クエン酸ナトリウム液(pH7.75)に交換した。さらに分画分子量100kDの限外濾過膜(商品名ザルトコン、ザルトリウス社)で濾過処理して、パス画分を回収した。平均孔径15nmの多孔性膜(商品名プラノバ15、旭化成)を用いて濾過処理を行った。これは、多孔性中空糸として平均孔径15±2nm、膜面積0.001〜1.0m、中空糸内径330±30μm、膜厚27±3μm、150層以上の多重層構造であり、銅アンモニア法再生セルロースを原料とした多孔性中空糸(ベンベルグ・マイクロポラス・メンブラン、BMM)をモジュール化したBMMモジュールである。このBMMモジュールは、ポリウレタン系接着剤により高圧蒸気滅菌可能なポリカーボネート製のプラスチック容器内に一体化されており、モジュール内には注射用蒸留水が充填されている。プラノバを構成する各種材料の安全性は、日本薬局方の定める方法により確認されている(非特許文献21)。
100〜200U/mLに濃縮したrAT含有溶液をpH7.75となるように調整した。濾過圧力0.5kgf/cmで1〜5時間の膜濾過処理(空気圧を用いたデッドエンド濾過法)を行った。冷却後に0.45μmのフィルターで濾過処理を行い、保存用容器に分注した(精製品A)。
実施例6において多孔性膜処理を行っていないものを同様に調製した(精製品B)。
実施例6の陰イオン交換体の代わりに陽イオン交換体処理を行った。すなわち、当該rAT含有溶液をハイドロキシアパタイトカラムにアプライし、0.1Mのリン酸二カリウム液(pH7.5)で溶出した。当該溶出液をpH6.5に調整して陽イオン交換体(スルホプロピル−アガロース、商品名SP−セファロース)カラムにアプライし、0.15M塩化ナトリウム液で溶出・回収した。その後に限外濾過により濃縮した(精製品C)。
実施例8の精製品CをpH7.75の緩衝液で希釈し、室温で4時間放置した。
実施例2の培養方法(pH6.8)に準じてrATを生産し、得られたrATを含む培養液を用いて、実施例6の精製方法に準じてrATを精製した。
実施例10において、精製工程中のハイドロキシアパタイト処理の代わりに透析処理を行い、交換すべき溶媒として(つまり陰イオン交換時に)リン酸二カリウム液の代わりにリン酸二ナトリウム液を用い、疎水性クロマト処理の代わりに固定化ヘパリン再処理(条件は1回目に同じ)を行う以外は、実施例10に準じて精製を行い、rATの精製品を調製した。
実施例4(培養温度35℃)に準じて培養を行ってrATを生産し、得られたrATを含む培養液を用いて、実施例6の精製方法に準じてrATを精製した。
培養液に対して、5%(w/v)クエン酸、2M塩化ナトリウムおよび30%(w/v)ソルビトールの存在下に60℃10時間の液状加熱処理を行うことを追加する以外は全て実施例11に準じて精製を行い、rATの精製品を調製した。
培養液に対して、0.3%(w/v)トリ−N−ブチルホスフェート(TNBP)および1%(w/v)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名トウイーン80)の存在下に30℃で6時間のSD(デタージェント)処理を行うことを追加する以外は全て実施例11に準じて精製を行い、rATの精製品を調製した。
実験例1
実施例で調製された各精製品(精製品A、B、C)の性状分析を行った。分析法は以下の通り:純度はゲル濾過分析(GPC)により、SDS−PAGE、ウェスタンブロッティング、回収率は逆相HPLC(RPC)で収量を測定し培養液中のrAT量に対する百分率として、不純物のうち、CHO由来蛋白質はELISA(Cygnus社)、DNAはピコグリーン(モレキュラ・プローブ社)により、比活性はヘパリンコファクター活性を測定し当該活性を収量で除した値として、外観は目視により、各々観察した。結果を表6に示す。
Figure 0004651536
実験例2
精製品C(比活性約4.8U/mg)を、pH5.0および7.75の緩衝液に希釈し、室温で4時間放置した。結果を表7に示す。
Figure 0004651536
実験例3
溶液のpH7.4〜8.0の間でrAT(精製品C)の比活性の変動を調べた。結果を表8に示す。
Figure 0004651536
実験例4
低比活性のrATを分析用フェニルカラムで分析したところ、3つのピークに分かれた。各々のピークの比活性を測定すると、溶出順に、6.1〜6.5、3.3〜4.4、0.2〜0.6(単位はいずれもU/mg)となった。そこで、この状態で各ピーク(ピークI、II、IIIとする)の組成比を測定し、当該rATをpH8またはpH6.5で処理して同様にフェニルカラムで分析して、各ピークの組成比を同様に測定した。結果を表9に示す。
Figure 0004651536
pH8処理ではピークIの組成比が上昇し、ピークIIの組成比は逆に低下した。ピークIIIは変化しなかった。またpH6.5処理ではピークIの組成比は低下し、ピークIIおよびIIIの組成比が上昇した。これらの結果から、ピークIおよびIIはpHに依存して比活性が可逆的に変動すること、ピークIIIはpHには依存しないこと、pH6.5処理により不活化されたものを含むこと、が示唆された。比活性に関する知見を加味すると、これらの3つのピークは、ピークIがrATの活性体、ピークIIが半活性体、ピークIIIは不活性体に相当するものであろうと推測された。
実験例5
精製品A(比活性7.3U/mg)をpH6.5の緩衝液に溶解し、室温で4時間放置したところ、比活性は6.0U/mgに低下した。これに水酸化ナトリウム液を加え、pH8.0に上げて室温で4時間放置したところ、比活性は7.0U/mgであった。この結果から、本発明においては調製されたrATのうちpHに依存して可逆的な性状(活性)を有するものがrATの比活性に影響することが判明した。
実施例4に準じて培養実験を行った。pH6.8、グルタミン酸ナトリウム7mM、35℃の条件下で培養した。培養360時間目にATの生産量は培地1L当たり約1.4gに達した。
本発明の生産方法によれば、AT産生可能な動物細胞を培養する際にその培養条件を最適化することにより、生産量および比活性の向上したrATを生産することができる。従って、本発明の生産方法を用いることにより、動物細胞由来のrATを安定的に医療の場に提供できるものと期待される。
また本発明の精製方法によれば、組換え技術により調製された低比活性ATを本来の水準にまで比活性を回復させた上で高度精製することができる。従って、本発明の技術を応用すれば、より医薬品として性状の優れたrATを安定的に医療の場に提供することが可能となる。
なお、本出願は、特願2003−112236号および特願2003−175694号を優先権主張して出願されたものである。

Claims (15)

  1. 遺伝子組換え技術を用いて形質転換された、アンチトロンビンを産生可能な動物細胞を、以下のいずれか一つの態様で培養することを特徴とする組換えアンチトロンビン(以下rAT)の生産方法:
    1)pH6.9以下の培養液に接触させる工程で培養する、
    2)pH6.9以下かつグルタミン酸4mM以上の培養液に接触させる工程で培養する、
    3)pH6.9以下かつ35℃以下の培養液に接触させる工程で培養する、
    4)pH6.9以下、グルタミン酸4mM以上かつ35℃以下の培養液に接触させる工程で培養する。
  2. 培養様式が、培養中の細胞が培養液中に浮遊している、培養中の細胞が無血清培地中にある、培養中の細胞が哺乳動物由来の蛋白質を含まない培地中にある、培養方法がフェドバッチ培養である、の少なくとも一つを伴ってなる請求項1に記載の生産方法。
  3. 動物細胞がグルタミンシンテターゼ活性を有するものである、請求項1または2に記載の生産方法。
  4. rATが野生型、あるいは変異型である請求項1から3のいずれかに記載の生産方法。
  5. pH6.9以下、グルタミン酸4mM以上、35℃以下の各培養条件は、培養期間中、常に満たす、または、一時的に(あるいは一定の時間だけ)満たす、のいずれかである請求項1から4いずれか一つに記載の生産方法。
  6. pH6.9以下の培養液に接触させる工程で培養する様式が、培養期間中のpHを6.8以下に維持する、pH6.7〜6.9に設定する、または、培養期間の一部のみpH6.8以下に設定する、のいずれかであり、しかも、いずれの場合の培養期間中は常にpH6.6以上である請求項1から5のいずれか一つに記載の生産方法。
  7. グルタミン酸が塩の態様でないグルタミン酸である、あるいは塩の態様であるグルタミン酸である、請求項1から6のいずれかに記載の生産方法。
  8. 4mM以上のグルタミン酸を含む培養液に接触させる工程で培養する様式が、培養期間中常にグルタミン酸を3〜5mMに設定する、培養途中からグルタミン酸を4mM以上となるように設定する、または、培養期間中常にグルタミン酸を6〜8mMに設定する、のいずれかである請求項1から7のいずれかに記載の生産方法。
  9. 遺伝子組み換え技術を用いて形質転換された、アンチトロンビンを産生可能な動物細胞を、pH6.9以下の培養液に接触させる培養工程から得られた培養上清中に存在するrATの精製方法であって、以下のいずれかの態様で処理することを特徴とする方法:
    1)rATを含む培養上清を用いて、固定化ヘパリン処理、該処理液の溶媒交換、陰イオン交換体処理、高分子体の除去、かつ少なくとも溶媒交換以降の工程をpH7.5以上の条件で行い、培養上清からrATを精製する、
    2)rATを含む培養上清を用いて、固定化ヘパリン処理、該処理液の溶媒交換、陰イオン交換体処理、高分子体の除去、平均孔径1〜100nMの多孔性膜を用いた濾過処理を行い、かつ少なくとも溶媒交換以降の工程をpH7.5以上の条件下で行い、培養上清からrATを精製する。
  10. 多孔性膜処理を行う前にさらに限外濾過を行う、請求項9に記載の培養上清からの精製方法。
  11. 精製工程の全部またはその一部をpH7.5以上の条件で行う請求項9または10に記載の精製方法。
  12. rATが野生型である、あるいは変異型である請求項9から11のいずれかに記載の精製方法。
  13. さらにウイルス不活化処理を行う請求項9から12のいずれかに記載の精製方法。
  14. 遺伝子組換え技術を用いて形質転換された、ATを産生可能な動物細胞を培養してrATを生産する工程および産生したrATを精製する工程を含むrATの製造方法において、請求項1〜8のいずれか一つに記載の生産方法または請求項9〜13のいずれか一つに記載の精製方法を実施する該製造方法。
  15. rATが野生型である、あるいは変異型である請求項14記載の製造方法。
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