JP4651326B2 - ポリカーボネート粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
ポリカーボネートの製造方法としては、界面重縮合法,エステル交換法が知られているが,品質等の問題から、塩化メチレンなどのハロゲン系有機溶媒を使用した界面重縮合法が主流となっている。
この界面重縮合法においては、反応終了後にポリカーボネートが溶媒に溶解したポリカーボネート溶液が得られ、該ポリカーボネート溶液からポリカーボネートを安価に単離しなければならない。このポリカーボネートを単離する方法としては、様々な方法が検討されており、例えば、ポリカーボネート溶液に貧溶媒を添加する方法(例えば、特許文献1参照)、ポリカーボネート溶液の結晶化を利用したニーダーによる粉砕方法(例えば、特許文献2参照)、温水に投入する方法(例えば、特許文献3参照)等がある。しかし、これらの方法は、いずれも、ポリカーボネートを単離する方法としては、設備費用が高くなりコスト的に問題がある。したがって、コストの低減化のために、より簡素化した単離方法が求められている。
また、ポリカーボネートに粉砕助剤として水、有機溶媒、滑剤等を使用する方法(例えば、特許文献4参照)や、貧溶剤を使用してポリカーボネートを析出させポリカーボネートを回収する方法(例えば、特許文献5参照)が提案されている。この特許文献4の方法では、特殊な粉砕機や高価な冷媒を用いずに微細な粉末が得られるが、粒径分布などについて更に改良が求められている。また、特許文献5の方法では、貧溶媒の回収に費用が掛かり,得られたポリカーボネートの嵩密度が低くなる。
(1)、ポリカーボネートを製造するに当たり、ポリカーボネート溶液からポリカーボネートを回収する際に、該ポリカーボネート溶液の溶媒の一部を蒸発除去することにより乾燥粉体に対して溶媒が10〜70質量%残留している粉体を調製し、得られた粉体を、粉砕機内が流速0.6〜30m/secの気流下となるようにガスと共に排出しながら粉砕することを特徴とするポリカーボネート粉末の製造方法。
(2)、ポリカーボネート溶液が、界面重縮合法により得られたポリカーボネートの重合・洗浄後のポリカーボネート溶液であり、溶媒が重合時に使用した溶媒である(1)のポリカーボネート粉末の製造方法。
(3)、溶媒が塩化メチレンである(1)又は(2)のポリカーボネート粉末の製造方法。
(4)、乾燥粉体に対して溶媒が10〜70質量%残留している粉体を粉砕する際に、回転部分とそれを収納するケースを有し,粉体をケースに衝突させることにより粉砕する装置を用いる(1)〜(3)の何れかのポリカーボネート粉末の製造方法。
(5)、乾燥粉体に対して溶媒が10〜70質量%残留している粉体を粉砕したのち、50〜300℃の条件下で乾燥させる(1)〜(4)の何れかのポリカーボネート粉末の製造方法。
この場合の気流速度は、通常0.6〜30m/sec、好ましくは1〜20m/sec、更に好ましくは2〜15m/secである。粉体を粉砕する場合は,その粉砕に使用されたエネルギーは熱に変換されることがあるので、これによりポリカーボネートが溶融し、連続的な処理が困難となる場合がある。このため気流下で粉砕する。粉砕する際の気流速度を0.6m/sec以上とすることにより気流下での粉砕の効果が発揮され、30m/sec以下とすることにより過剰な気流を使用することによるエネルギーロスを避けることができる。気流としては、例えば、窒素、空気、二酸化炭素などが挙げられる。
このようにして製造された粉末は、一般に行われるように、更に加熱乾燥およびペレタイズ、添加剤配合等を実施して使用できる。
なお、粉砕機から分離される気流中には,粉体から蒸発した溶媒が含まれるため,この溶媒を公知の回収方法,すなわち、凝縮、吸着といった方法で回収して、再使用することができる。また、溶媒を回収した後のガスも全部,または一部を再利用することができる。
この中、工業的に多量に粉体を処理可能であり、また連続で処理できるものとして、ロールミル、パルベライザー、ディスインテグレータなどの形式のものが好ましい。具体的な例としては、マツボーコーポレーション製のターボミル、栗本鐵工所製のクリモト式ローラミル、日清エンジニアリング製のブレードミル、ホソカワミクロン製のビクトリーミル、ホソカワミクロン製のパルベライザー等がある。
このようにして得られたポリカーボネート粉末は,必要に応じて、更に既知の方法で乾燥し,ポリカーボネート粉末の製品とすることができる。乾燥については,加熱乾燥,気流乾燥,マイクロウェーブによる方法など,いずれも使用できる。乾燥速度,残留溶媒の観点から複数の方法を併用しても良い。
乾燥温度は50〜300℃、好ましくは60〜250℃である。乾燥温度を50℃以上とすることにより、ポリカーボネートを効率良く乾燥することができ、また、300℃以下とすることにより、分解や溶融による乾燥時のトラブルを防止できる。
また、このようにして得られたポリカーボネート粉末を押出機等を使用してペレット化することや、この際に添加剤等を添加したペレットとすることも可能である。
本発明のポリカーボネート粉末は、高品質のポリカーボネートを提供する新しい製造方法である固相重合法に適合するポリカーボネート粉末として用いることもできる。特に、粉体成形用途に用いる場合は、できるだけ球形で、安息角が35°以下の粉末が、成形時の粉末流動性が良く好ましい。
本発明によるポリカーボネート粉末は、平均粒径が360〜560μmであることから、仕上げの乾燥性が良好で、ハンドリングも良好である。また、嵩密度が0.4〜0.7g/mlと均質で高いことから、粉体成形用途や固相重合法において充填効率が高く、作業性、機器のサイズダウンによるコストダウンが可能であり、有利に用いることができる。
なお、以下の実施例で用いたポリカーボネートのタフロンFN2200Aは界面重縮合法により製造されたものである。
ポリカーボネートとして出光石油化学(株)製 タフロンFN2200Aを使用した。これをトクヤマ(株)製 工業用塩化メチレン(MC)に溶解し,濃度23質量%のポリカーボネート溶液とした。このポリカーボネート溶液を次のような方法で処理した。
先ず、粉体を製造するための容器として,幅250mm,長さ1050mm,軸径65mmの回転軸2本が水平に取り付けられ,軸2本には,外径200mmの螺旋翼を取り付けたものを使用した。該容器の外側にはジャケットが設けられスチームを利用して加熱できる構造となっている。また容器の底面は,2本の軸の外径に併せて,双腕状となっており,螺旋翼の外径と容器のクリアランスは10mmとなっている。また軸は,異方向に回転し内側に向けて噛み合わさるようになっている。
運転が安定した時点で,この粉体中に含まれる塩化メチレン濃度を測定したところ,13.2質量%であった。また、この粉体について別途約1kgをステンレス製バットに受け,真空加熱乾燥機で8時間,120℃で乾燥し,得られた乾燥粉体の粒径分布などを測定した。その結果、粉体の重量平均径は680μm,8メッシュ(2.38mm)以上の粗い粉体は,全重量に対し,10.8質量%存在し,4メッシュ(4.76mm)以上の粗い粉体は,全重量に対し,5.6質量%存在することが分かった。
この機器を使用して回転数7250rpmで得られた粉体の粉砕を実施した。粉体の投入量は1.2kg/minであり,粉砕機下部で粉体温度を測定したところ,32℃となっており,また粉体と共に排出されるガス量は3.5m3/minであり,機器内のクリアランス部における平均流速は18m/secと計算された。
このようにして粉砕処理をした粉末の約20Lを130℃に加熱した窒素気流乾燥機に仕込み,6時間の乾燥を実施した。乾燥後粉末の平均粒径を測定すると,420μmであり8メッシュ以上の粗大粒子は存在しなかった。また乾燥後粉末について,残留溶媒量を測定したところ,全粒分析で15質量ppmであり、乾燥性能も優れていることが分かった。更に粉体特性として安息角(JIS R−9301−2−2)を測定したところ,34度となり流動性も優れたものであった。
粉体製造の条件(溶媒含量)および粉砕処理の条件(粉体供給速度)を、第1表に示す如く変更した以外は実施例1と同様に処理して粉体を作成した。得られた粉末の平均粒径、粒径分布、乾燥後の残留溶媒含量および嵩密度を第1表に示す。
なお、第1表中の粉砕機のVP−1は(株)ホソカワミクロン製 のビクトリーミルVP−1である。
実施例1において得られたポリカーボネート粉体(溶媒含量13.2質量%)を使用して,実施例1と同様の粉砕機で粉砕した。但し回転数を5000rpmとし、粉体供給装置の全体をシールされたフードで囲い,粉体と同時に気流を吸い込まないようした。粉体の投入速度は1.2kg/minであり,また粉末と共に排出されるガス量は,出口で囲いを設け,排出されるガス量を測定したところ0.5m3/minであり,粉砕機内のクリアランス部における気流の平均流速は計算により0.1m/secとなる。処理開始して約23分後,本体に振動が観測され,本体に取り付けた温度計の指示が,32℃から68℃まで上昇し,運転に支障が出てきたため,一旦粉砕機を停止し,開放して内部を点検した。その結果,粉砕機内部でポリカーボネートが粉砕による熱で溶融し、粉砕機の回転部分およびその近傍にポリカーボネートが付着し、連続してポリカーボネート粉体をノズルから供給することができなくなっていた。(第1表中*で示す。)
実施例1と同様のポリカーボネートと塩化メチレンを使用して,実施例1と同様に調製し,ポリカーボネート溶液を作成した。
次に,ポリカーボネート粉体を作るための容器として竪型で,ダブルヘリカル翼の攪拌機を有する,内容積60LのSUS304製容器を用いた。この容器は,外周にジャケットを有し,内容物を加熱できる構造となっている。また,ポリカーボネート溶液の供給口は,本体の下部で,内部に粉体を仕込んだ場合,粉体層中に開口部が位置する構造となっている。
この容器に、粉体の出光石油化学(株)製タフロンFN2200A:20kgを容器内に仕込み,内部粉体を攪拌しつつ,ポリカーボネート溶液を60L/hrで供給口から供給した。
なお,内部の粉体温度を容器上部から差し込んだ温度計によって測定し,粉体温度が平均して49.5℃になるようスチームの供給量を調整した。容器の上部からは,蒸発した溶媒が得られ,程なく粉体のレベルが上昇してきた。容器の横位置には,攪拌翼の上端に位置する高さで粉体の抜き出し口が設けられており,ここから粉体が得られる。
充分粉体温度が安定した後,粉体をサンプリングした。得られた粉体について120℃に加熱した真空乾燥機で乾燥を行い,粉体について物性を測定したところ,平均粒径は,1950μmで,粒子形状はほぼ球状であり,粒径分布はほとんど同一径のもであった。また,得られた粉体の溶媒含量を乾燥法で求めたところ,43質量%であった。
更に、この粉砕機からの粉末を内容積120Lのディスク型回転乾燥機を使用して,連続的に乾燥処理を実施した。この時粉体の供給量は3kg/hrであり平均滞留時間は約8時間とした。
乾燥後の粉末について,残溶媒量を測定したところ,20質量ppmであり,嵩密度は0.53g/mlであった。更に粒径を測定したところ,平均粒径520μmであり,非常に粒径の揃ったものであった。
粉体製造の条件(溶媒含量)および粉砕処理の条件(粉体供給速度)を、第1表に示す如く変更した以外は実施例2と同様に処理して粉末を作成した。得られた粉末の平均粒径、粒度分布、乾燥後の残留溶媒含量および嵩密度を第1表に示す。なお、実施例7では粉砕機にマツボーコーポレーション製のターボミルT−25を用いた。
実施例4において,粉体を製造中の平均粉体温度を68℃とする以外は同様にして粉体製造を実施した。このようにして得られた粉体を,窒素気流下で,120℃,5hrの乾燥を実施したところ,粉体中の溶媒含量が1.8質量%であった。
さらに、この粉体を実施例1と同じ粉砕機を使用して粉砕処理を実施した。粉体供給速度を1.2kg/minとして粉砕処理を開始したが,電流値が機器の設定値(200V,30A)をオーバーするため,粉体供給速度を低下させ,0.6kr/hrで粉砕処理を実施した。運転を開始後,除々に本体に取り付けた温度計の指示が上昇をし始め,約30分後に60℃を超えたので,運転を停止した。
得られた粉末について,平均粒径を測定したところ,880μmであった。 残留溶媒が少ない粉体を処理する場合は,処理量が大きく低下することが分かった。
Claims (5)
- ポリカーボネートを製造するに当たり、ポリカーボネート溶液からポリカーボネートを回収する際に、該ポリカーボネート溶液の溶媒の一部を蒸発除去することにより乾燥粉体に対して溶媒が10〜70質量%残留している粉体を調製し、得られた粉体を、粉砕機内が流速0.6〜30m/secの気流下となるようにガスと共に排出しながら粉砕することを特徴とするポリカーボネート粉末の製造方法。
- ポリカーボネート溶液が、界面重縮合法により得られたポリカーボネートの重合・洗浄後のポリカーボネート溶液であり、溶媒が重合時に使用した溶媒である請求項1に記載のポリカーボネート粉末の製造方法。
- 溶媒が塩化メチレンである請求項1又は2に記載のポリカーボネート粉末の製造方法。
- 乾燥粉体に対して溶媒が10〜70質量%残留している粉体を粉砕する際に、回転部分とそれを収納するケースを有し,粉体をケースに衝突させることにより粉砕する装置を用いる請求項1〜3の何れかに記載のポリカーボネート粉末の製造方法。
- 乾燥粉体に対して溶媒が10〜70質量%残留している粉体を粉砕したのち、50〜300℃の条件下で乾燥させる請求項1〜4の何れかに記載のポリカーボネート粉末の製造方法。
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