JP4651163B2 - 湿膜コイル型空気調和機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱交換器に加湿手段としての機能若しくはケミカルガス除去手段としての機能、またはその両方の機能を備えた湿膜コイル型空気調和機に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子工業や精密機械工業の工場、食品保存用の貯蔵庫、実験用動物飼育室、バイオロジカルクリーンルームなどにおいては、室内空気の温度、湿度、清浄度等の室内環境を、その室の目的に適合する状態に処理調整する空気調和機が不可欠である。この空気調和機は、主として、空気を加熱冷却するコイル、加湿する加湿器、清浄化するエアフィルタ及び送風機によって構成されている。
【0003】
ところで、近年、半導体、液晶及びハードディスクなどの製造工場において、製品の品質や歩留まりに影響を与える要因として、空気中の微粒子のみならず、ガス状の汚染物質(以下、ケミカルガスと呼ぶ)が問題となっている。このようなケミカルガスとしては、例えば、フッ化水素や塩化水素などの酸性ガスなどがある。
【0004】
しかし、かかるケミカルガスは、HEPA(high efficiencyparticulate air)フィルタやULPA(ultra lowpenetration air)フィルタのように、高い粒子捕集率をもつフィルタであっても対処し難いため、特別の対策を講ずる必要がある。
【0005】
現在、ケミカルガスを除去する方式としては、ケミカルエアフィルタと呼ばれる各種のフィルタを用いて除去する乾式方式と、液体との接触によってガスを吸収させて除去する湿式方式とがある。乾式方式は、ケミカルガスの種類によってケミカルエアフィルタの種類や処理方法及びフィルタに添着する化学物質の種類が異なる。このようなフィルタとしては、活性炭または各種の薬品類を添着した活性炭を用いた粒状、繊維状若しくはハニカム構造のもの、フィラメント構造の樹脂フォームにビーズ活性炭を担持させたもの、イオン交換機能をもたせた樹脂ろ材等がある。
【0006】
一方、湿式方式は、液滴の噴霧や空隙率が高く表面積の大きい充填材に液状物質を供給することにより、気中のケミカルガスを除去するものである。このような湿式方式としては、エアワッシャーを用いて通気中に加圧水を直接噴霧するもの、吸水性素材に対して微粒子径の水を噴霧するもの、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の多孔質膜を介して純水中にガスを吸収する拡散スクラバ法によるもの等がある。また、従来の高精度の湿度制御を行なう場合の加湿方法としては、蒸気加湿が一般的であったが、親水性の水膜を用いて比例制御を行なう方法も考案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようなケミカルガスの除去方法には、以下のような問題点があった。すなわち、ケミカルエアフィルタを用いた乾式方式は、高価であり、寿命が短い。しかも、寿命予測が困難であるため、約6ヶ月〜1年程度で交換する必要があり、ランニングコストが高い。かかる交換作業の手間に加えて、再利用が難しいため、産業廃棄物としての処理の手間がかかる。また、初期の除去性能は連続的に低下していく。そして、送風抵抗(圧力損失)が大きく、送風コストが上昇する。さらに、フィルタに対する化学添加物自身が、室内の汚染源になる可能性がある。
【0008】
一方、湿式方式の場合には、基本的に気液接触面積を増やすことが、高い除去能力に繋がる。このため、エアワッシャーを用いた場合には、水側の表面積を増す手段として、噴霧粒子径を小さくすること、あるいは噴霧水量を増やすことが行なわれている。しかし、これらは大きな噴霧水圧を必要としたり、噴霧水量を多くする必要があり、ランニングコストがかかる。また、吸水性素材に対して水を噴霧する方式の場合にも、噴霧水のキャリーオーバーを防ぐために吸水性素材を折板状とするため圧力損失が大きく、また上流側ほど水滴の捕集が多いため、下流側では濃縮されたガスが排水側に移動し難い(水の移動が少ない)などの問題点がある。さらに、拡散スクラバ法による場合には、PTFEの多孔質膜が高価であるうえに、膜を支える構造体などが空気側の有効な通風面積を減少させ、圧力損失を増やすなどの問題がある。
【0009】
これに対処するため、素材自体に強度があり、親水性を持った気化式加湿器を用いて純水を滴下することにより、ケミカルガスを除去する空気調和機も提案されている。かかる空気調和機によれば、加湿素材として市販の気化式加湿器における加湿モジュールを用いることができるのでイニシャルコストが低い。また、噴霧式ではなく滴下式なので水圧が低くて済み、しかも親水性が高く表面積も大きいことから、少水量でも気液接触面積を大きくできるので、ランニングコストを低く抑えられるとともに、ケミカルガスの除去率が高くなる。さらに、加湿モジュールを多段に設けて対向流とすることにより、少ない補給水量でも高い効率の除去を実現できる。
【0010】
しかしながら、かかる場合であっても、加湿モジュールにおける親水性素材にケミカルガスを除去させることは、以下のような問題が残る。すなわち、親水性素材は、親水性を第1に考えられているため、汚れた場合の高圧洗浄に対しては、強度に難があり、薬品洗浄の際には薬品が残留する可能性がある。また、間欠運転では菌の発生などにより臭気が出る場合があり、停止時には素材が乾くまで残留運転が必要となる。さらに、加湿モジュールの設置スペースが必要となるため、所要スペースの縮小には限界がある。
【0011】
本発明は、前記のようなワッシャー及び加湿膜を用いた従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、ワッシャーや加湿モジュールを用いる必要がなく、イニシャルコスト及びランニングコストを低減することができ、所要スペースの小さい湿膜コイル型空気調和機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、空気取入口と空気供給口との間の空気流路に、熱媒によって空気との熱交換を行なう加熱用及び冷却用熱交換コイルを各々備えた空気調和機において、前記熱交換コイルは、熱媒が循環する管と、前記管に取り付けられたプレートフィンとを有し、前記プレートフィンに対して、水分を供給する給水手段が設けられ、前記給水手段は、前記プレートフィンの上部に配設された給水管を有し、前記給水管と前記プレートフィンとの間には、保水性若しくは吸水性のマットが配設され、前記熱交換コイルが、冷水循環式の冷却コイルと、温水循環式の加熱コイルから成り、前記加熱コイルの上流側と下流側に、ランアラウンドコイルを配設し、前記ランアラウンドコイルは、熱媒が循環する管と、前記管に取り付けられたプレートフィンとを有し、前記プレートフィンに対して、水分を供給する給水手段が設けられ、前記ランアラウンドコイルと前記加熱コイルとにより通過する空気を過加湿とすることを特徴とする。
【0013】
上のような請求項1記載の発明では、熱交換コイルのプレートフィンに対して、給水手段から供給された水分は、プレートフィンの表面を濡らす。これにより、通過空気が加湿されるとともに、ケミカルガスが吸収される。従って、高い強度のプレートフィンによって、加湿手段とケミカルガス除去手段を兼用させることができる。
【0015】
また、給水管とプレートフィンとの間に保水性又は吸水性のマットが配設されているので、このマットによって、プレートフィンに対して水分が均一に分散される。
【0016】
さらに、加熱コイルのプレートフィンに水を供給して表面を濡れ面とすることによって、加熱コイルに加湿手段とケミカルガス除去手段としての機能を持たせることができる。また、飽和空気よりも少しだけ温度を下げることにより、冷却コイルのプレートフィンの表面に均一に結露させ、この濡れたプレートフィンに水を供給して表面全体に行きわたらせることによって、冷却コイルにもケミカルガス除去手段としての機能を持たせることができる。このように、加熱コイルのプレートフィン表面を濡れ面とするとともに、冷却コイルのプレートフィンを均一な濡れ面とすることができるので、気液接触面積の大きなケミカルガス除去システムとすることができる。
【0017】
さらに、加熱コイルの前後にランアラウンドコイルを配設して、このプレートフィンに純水を滴下する空気調和機を構成する。かかる構成とすることによって、ランアラウンドコイル及び加熱コイルを通過する空気を容易に過加湿として、冷却コイルのプレートフィンの結露を生じさせることができるとともに、省エネルギー効果が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、湿膜コイル型空気調和機の実施の形態を、図面に基づいて具体的に説明する。
1.第1の実施の形態
1−1.参考例の構成
まず、本実施の形態を説明するための参考例の構成を、図1〜図5を参照して説明する。すなわち、図中、左側を空気取入口、右側を空気供給口とするハウジング1の内部に、空気取入口側から、外気の塵埃を取り除くプレフィルタ2a及びフィルタ2、循環する温水によって空気を加熱する第1の加熱コイル3、循環する冷水によって空気を冷却する冷却コイル4、循環する温水によって空気を加熱する加熱コイル5、ハウジング1外へ空気を吐出す送風機6が配設されている。プレフィルタ2aとしては、比較的大きな粒子を捕集する粗塵用エアフィルタが用いられる。フィルタ2としては、例えば、中性能若しくはHEPAフィルタが用いられる。
【0020】
第1の加熱コイル3、冷却コイル4、第2の加熱コイル5には、それぞれ温水及び冷水の流量を制御するバルブ7,8,9が設けられている。また、加湿空気の供給口には、供給空気の露点温度を検出する露点温度センサ10と、供給空気の乾球温度を検出する乾球温度センサ11とが取り付けられている。
【0021】
第1の加熱コイル3、冷却コイル4及び第2の加熱コイル5は、図2に示すように、蛇行配置された銅管20に対して、銅製の長方形状のプレートフィン30が気流の方向に複数圧着され、鋼板の枠40によって固定されている。そして、銅管20の両端部には、熱源水の入口及び出口を備えたヘッダ50がそれぞれ取り付けられている。また、第1の加熱コイル3、冷却コイル4及び第2の加熱コイル5を流れる冷水及び温水は、空気流に対して対向流となるように、それぞれの冷水及び温水の入口側は、風下に設定されている。
【0022】
さらに、第1の加熱コイル3は、図3に示すように、プレートフィン30に、水平方向に長い孔31が多数形成されている。これらの孔31は、図4に示すように、水平方向に並んだ2つの孔31の間が、その下の孔31の中央に来るように、交互に配列されている。また、第1の加熱コイル3の上には、吸水性又は保水性の材質によって形成されたマット60が配設されるとともに、このマット60上に水を滴下する給水管70が設けられている。そして、図1に示すように、給水管70から、マット60を介してプレートフィン30に供給され、その後落下した水は、下部に配置された水槽71に入り、一部は排水され、一部は補給水とともにポンプ72によって給水管70に循環供給されるように、配管が接続されている。
【0023】
そして、バルブ7,8及び露点温度センサ10は、制御器12に接続されている。また、バルブ8,9及び乾球温度センサ11は、制御器13に接続されている。制御器12は、露点温度センサ10によって検出される露点温度に基づいて、第1の加熱コイル3の温水の量を制御するように構成されている。制御器13は、乾球温度センサ11によって検出される乾球温度に基づいて、第2の加熱コイル5の温水の量を制御するように構成されている。冷却コイル4に対しては、露点温度センサ10及び乾球温度センサ11の検出値に基づいて、制御器12,13による制御が行われる構成となっている。なお、ポンプ72は、ケミカルガス除去を行なう場合は常時運転を行なうが、加湿のみを行なう場合は、制御器13に接続された露点温度センサ10の検出値に基づいてON、OFF制御が行なわれる構成となっている。
【0024】
1−2.作用
1−2−1.加熱加湿時
以上のような構成を有する本実施の形態の参考例の作用を、まず、冬季のように空気の加熱加湿が必要な場合を例にして、以下に説明する。なお、図5に示したAw〜Dw、As〜Dsは、図1で示したA〜Dの位置における空気の状態に対応している。すなわち、送風機6を作動させ、第1の加熱コイル3のバルブ7を開とするとともに、ポンプ72を作動させる。ポンプ72によって送り出された水は、給水管70からマット60に対して供給され、さらにマット60から各プレートフィン30に滴下される。
【0025】
このように滴下された水は、孔31によって各プレートフィン30の全面に均一に保持される。つまり、孔31は水平方向に長いので、孔31に達した水は横に広がり、重力で下に落ち難くなる。また、上下の孔31は上記のように交互に配列されているので、上の孔31の間を落ちる水が、下の孔31の中心に入り保持される。従って、水がプレートフィン30全体に均一に行き渡る。これにより、プレートフィン30の表面が水膜で覆われた濡れ面となる。一方、落下した水は、下部に配置された水槽71にて回収されて、一部は排水され、一部は補給水とともにポンプ72によって給水管70に循環供給される。
【0026】
ハウジング1の空気取入口(A点)から流入した外気は、プレフィルタ2a及びフィルタ2を介して塵埃が濾過された後、第1の加熱コイル3によって加熱されるとともに、上記のように水分を保持し、濡れ面となったプレートフィン30を通過する際に加湿される(B点)。これにより、図5のAwとBwとを結ぶ実線で示すように乾球温度及び相対湿度が推移する。加熱加湿された空気は、さらに第2の加熱コイル5によって加熱され(D点)、送風機6によって供給口から供給される。これにより、図5のBwとDwを結ぶ実線で示すように、絶対湿度は一定で、乾球温度が上昇する顕熱変化が起こる。
【0027】
なお、供給空気の絶対湿度が、室内設定温湿度を満たす値となるように、第1の加熱コイル3における温水の流量は、供給口に設置された露点温度センサ10によって検出される露点温度値に基づいて、制御器12がバルブ7の開度を比例制御することによって調節され、第2の加熱コイル5における温水の流量は、供給口に設置された乾球温度センサ11によって検出される乾球温度値に基づいて、制御器13がバルブ9の開度を比例制御することによって調節される。
【0028】
また、空気がプレートフィン30を通過する際には、上記の従来技術で示した湿式方式や気化式加湿器を用いたケミカルガスの除去と同様の原理によって、その濡れ面における水分がケミカルガスを吸収する。
【0029】
1−2−2.冷却除湿時
次に、夏季などの空気の冷却除湿が必要な場合について、以下に説明する。まず、送風機6を作動させるとともに、冷却コイル4のバルブ8を開とする。ハウジング1の空気取入口(A点)から流入した外気は、プレフィルタ2a及びフィルタ2を介して塵埃が濾過された後、冬季加熱加湿時と同じように、第1の加熱コイル3により加湿とケミカルガス除去が行なわれる(B点)。これにより、図5のAsとBsとを結ぶ一点鎖線で示すように乾球温度及び相対湿度が推移する。なお、この場合はバルブ7が閉となっており、第1の加熱コイル3への温水は供給されない。
【0030】
この後、空気は冷却コイル4によって冷却され(C点)、送風機6によって供給口から供給される。これにより、図5のBsとCsを結ぶ一点鎖線で示すように、乾球温度及び相対湿度が推移する。この場合には、冷却コイル4におけるプレートフィン30の面の結露水が、均一な濡れ面を形成することから、非常に高いケミカルガス除去性能が得られる。
【0031】
冷却コイル4における冷水の流量は、供給口に設置された露点温度センサ10及び乾球温度センサ11に基づいて、供給空気の絶対湿度が、室内設定温湿度を満たす値となるように、制御器12,13がバルブ8の開度を比例制御することによって調整される。なお、室内温度との関係で、さらに加熱が必要となる場合には、バルブ9が開とされて、上述と同様に、第2の加熱コイル5による加熱が行なわれる(D点)。これにより、図5のCsとDsを結ぶ一点鎖線で示すように、絶対湿度は一定で、乾球温度が上昇する顕熱変化が起こる。
【0032】
また、冬季及び夏季以外の中間季においては、外気と室内設定温度に合わせて、露点温度センサ10の検出値に基づく第1の加熱コイル3及び冷却コイル4の流量制御、乾球温度センサ11の検出値に基づく冷却コイル4の流量制御及び第2の加熱コイル5の流量制御が行なわれる。
【0033】
1−3.効果
以上のような本実施の形態の参考例によれば、加湿及びケミカルガスの吸収を、金属製のプレートフィン30を水膜で覆われた濡れ面とすることによって行なうことができるので、材質に経年変化がなく、水を連続補給することで寿命劣化のないケミカルガス吸収が可能となる。また、金属製のプレートフィン30に対しては、高圧洗浄によって容易に洗浄することができ、薬品洗浄の場合にも薬品の残留を容易に除去することができる。
【0034】
そして、加湿器とガス吸収装置を兼用させているので、省スペース化と低コスト化を実現できる。特に、加湿器やガス吸収装置を別途設けずに、プレートフィン30に孔31を形成し、給水管70とマット60を配設するだけで構成できるので、イニシャルコストを大幅に低減できる。また、水の供給は滴下式なので、高い水圧を必要とせず、プレートフィン30の表面積が大きく気液接触面積が大きいことから、大量の水を必要とせず、ランニングコストを節約することができる。
【0035】
また、プレートフィン30は金属製であるため、停止時の乾燥運転は非常に短時間で処理することが可能である。また、間欠運転時の臭気の発生の問題もなくなる。特に、プレートフィン30を銅製としているので、高い抗菌性を持たせることができる。さらに、プレートフィン30に形成された複数の孔31によって、供給水が均一に行き渡り、水膜で覆われた濡れ面とすることができるので、均一かつ安定した加湿効率及びケミカルガスの吸収効率を得ることができる。特に、プレートフィン30に対する水の滴下は、吸水性又は保水性のマット60を介して行なうので、給水管70によって直接撒布する場合に比べて、水分が均一に行き渡る。
本発明の第1の実施の形態は、前記図1〜図5に示す参考例を変形したものであって、図10に示すように、第1の加熱コイル3の前後、すなわちフィルタ2側と冷却コイル4側とにランアラウンドコイル90が配設されている。このランアラウンドコイル90は、熱媒を循環させるための管と、この管に取り付けられたプレートフィンとを有し、このプレートフィンには、水分を供給する給管70が設けられている。このランアラウンドコイル90と第11の加熱コイル3により通過する空気を過加湿とする。
その結果、この第1の実施の形態によれば、ランアラウンドコイル90を有していることより、ランアラウンドコイル90及び第1の加熱コイル3を通過する空気を容易に過加湿として、冷却コイル4のプレートフィンの結露を生じさせることができるとともに、省エネルギー効果が得られる。
【0036】
2.第2の実施の形態
2−1.参考例の構成
次に、第2の実施の形態を、図6、図7の参考例を参照して以下に説明する。すなわち、この参考例においては、冷却コイル4が、上記の第1の実施の形態における第1の加熱コイル3と同様に、プレートフィン30に多数の孔31が形成され、マット60を介して給水管70からの水が供給可能に構成されている。そして、水槽71は、冷却コイル4の下部もカバーしている。なお、その他の構成は、上記の第1の実施の形態の参考例と同様である。
【0037】
2−2.作用
以上のような本実施の形態の参考例の作用効果を以下に説明する。なお、図7に示したAw〜Dw、As〜Dsは、図6で示したA〜Dの位置における空気の状態に対応している。すなわち、冬季のように空気の加熱加湿が必要な場合には、送風機6を作動させ、第1の加熱コイル3のバルブ7を開とするとともに、ポンプ72を作動させる。ポンプ72によって送り出された水は、給水管70から第1の加熱コイル3及び冷却コイル4におけるマット60に対して供給され、さらにマット60から各プレートフィン30に滴下される。
【0038】
このように滴下された水は、上記の第1の実施の形態と同様に、各プレートフィン30の全体に行き渡るので、ハウジング1の空気取入口(A点)から流入した外気は、プレフィルタ2a及びフィルタ2を介して塵埃が濾過された後、第1の加熱コイル3によって加熱されるとともに、上記のように水膜に覆われたプレートフィン30を通過する際に加湿される(B点)。これにより、図7のAwとBwとを結ぶ実線で示すように乾球温度及び相対湿度が推移する。加熱加湿された空気は、冷却コイル4を通過する際に、上記のように水分を保持したプレートフィン30によって加湿される(C点)。これにより、図7のBwとCwとを結ぶ実線で示すように、乾球温度及び相対湿度が推移する。
【0039】
このように加湿された空気は、さらに第2の加熱コイル5によって加熱され(D点)、送風機6によって供給口から供給される。これにより、図7のCwとDwを結ぶ実線で示すように、絶対湿度は一定で、乾球温度が上昇する顕熱変化が起こる。また、空気が第1の加熱コイル3及び冷却コイル4のプレートフィン30を通過する際に、その濡れ面における水分がケミカルガスを吸収する。なお、夏季などの空気の冷却除湿が必要な場合や中間季についての制御は、上記の第1の実施の形態と同様である。
【0040】
2−3.効果
以上のような本実施の形態の参考例によれば、第1の加熱コイル3のみならず、冷却コイル4におけるプレートフィン30に対しても水を供給して、加湿及びケミカルガスの除去を行なうことができるので、加湿効率及びケミカルガスの除去効率が上昇する。
本発明の第2の実施の形態は、前記図6、図7に示す参考例を変形したものであって、図10に示すように、第1の加熱コイル3の前後、すなわちフィルタ2側と冷却コイル4側とにランアラウンドコイル90が配設されている。このランアラウンドコイル90は、熱媒を循環させるための管と、この管に取り付けられたプレートフィンとを有し、このプレートフィンには、水分を供給する給水管70が設けられている。このランアラウンドコイル90と第1の加熱コイル3により通過する空気を過加湿とする。
その結果、この第2の実施の形態によれば、ランアラウンドコイル90を有していることより、ランアラウンドコイル90及び第1の加熱コイル3を通過する空気を容易に過加湿として、冷却コイル4のプレートフィンの結露を生じさせることができるとともに、省エネルギー効果が得られる。
【0041】
3.第3の実施の形態
3−1.参考例の構成
第3の実施形態を、図8の参考例を参照して以下に説明する。すなわち、この参考例は、熱交換器として夏季と冬季で通水を切り替えて使用する冷温水兼用コイル80のみが設けられ、ハウジング1の小形化が図られている。そして、冷温水兼用コイル80におけるプレートフィン30には、上記の第1の加熱コイル3と同様に多数の孔31が形成され、マット60を介して給水管70からの水が供給可能に設けられている。そして、冷温水兼用コイル80の下部に落下した水は、水槽71に回収されて、一部は排水され、一部は補給水とともにポンプ72によって給水管70に循環供給されるように配管が接続されている。
【0042】
冷温水兼用コイル80の流量を調節するバルブ81は、室内に設けられたサーモスタッドTの検出値に基づいて、図示しない制御器によって制御されるように構成されている。また、ポンプ72によって供給される給水管70からの滴下水の流量は、室内に設けられたヒューミディスタッドHの検出値に基づいて、図示しない制御器によってインバータ制御されるように構成されている。
【0043】
3−2.作用効果
以上のような本実施の形態の参考例によれば、冬季のように空気の加熱加湿が必要な場合には、送風機6を作動させ、冷温水兼用コイル80のバルブ81を開として温水を供給するとともに、ポンプ72を作動させる。ポンプ72によって送り出された水は、給水管70から冷温水兼用コイル80におけるマット60に対して供給され、さらにマット60から各プレートフィン30に滴下される。
【0044】
このように滴下された水は、上記の第1の実施の形態の参考例と同様に、各プレートフィン30全体に行き渡るので、ハウジング1の空気取入口から流入した外気は、ランアラウンドコイル90及び冷温水兼用コイル80によって加熱されるとともに、そのプレートフィン30を通過する際に加湿される。これにより、乾球温度及び相対湿度が上昇する。なお、夏季などの空気の冷却除湿が必要な場合や中間季についての制御は、上記の第1の実施の形態の参考例と同様である。
【0045】
本実施の形態の参考例は、熱交換器を、1台の冷温水兼用コイル80としたので、複数台の熱交換器を設ける場合に比べて、小形化を実現でき、設置スペースを大幅に縮小することができる。なお、給水管70からの滴下水量の制御は、給水管70へ水を供給する配管を複数接続し、それぞれに設けられた電磁弁の開閉を制御する方法や、ポンプ72を複数台設置し、それぞれのON、OFFを制御する方法によって行なうことも可能である。
本発明の第3の実施の形態は、前記図8に示す参考例を変形したものであって、図10に示すように、第1の加熱コイル3(図8における冷温水兼用コイル80)の前後、すなわちフィルタ2側と送風機6側とにランアラウンドコイル90が配設されている。このランアラウンドコイル90は、熱媒を循環させるための管と、この管に取り付けられたプレートフィンとを有し、このプレートフィンには、水分を供給する給水管70が設けられている。このランアラウンドコイル90と第1の加熱コイル3(図8における冷温水兼用コイル80)により通過する空気を過加湿とする。
その結果、この第3の実施の形態によれば、ランアラウンドコイル90を有していることより、ランアラウンドコイル90及び第1の加熱コイル3(図8における冷温水兼用コイル80)を通過する空気を容易に過加湿として、省エネルギー効果が得られる。
【0046】
4.他の実施の形態
本発明は上記のような実施の形態に限定されるものではない。すなわち、主として加湿を目的とする空気調和機の場合には、プレートフィンの濡れ性はあまり必要とせず、必ずしもプレートフィンに特別な加工を施さなくともよい。例えば、プレートフィンに孔を形成しない以外は、上記の第1の実施の形態と同様の空気調和機を構成することもできる。かかる場合の温度及び湿度制御の一例を図5の点線に示す。なお、図5に示した▲1▼〜▲3▼は、図1で示した▲1▼〜▲3▼の位置における空気の状態に対応している。
【0047】
この実施の形態によれば、給水管70からマット60に対して供給された水が、さらにマット60から各プレートフィン30に滴下され、各プレートフィン30に沿って落下する。そして、ハウジング1の空気取入口(▲1▼点)から流入した外気は、プレフィルタ2a及びフィルタ2を介して塵埃が濾過された後、第1の加熱コイル3によって加熱されるとともに、上記のようにプレートフィン30に沿って落下する水滴の間を通過する際に加湿される(▲2▼点)。これにより、図5の▲1▼と▲2▼とを結ぶ点線で示すように乾球温度及び相対湿度が推移する。加熱加湿された空気は、さらに第2の加熱コイル5によって加熱され(▲3▼点)、送風機6によって供給口から供給される。これにより、図5の▲2▼と▲3▼を結ぶ点線で示すように、絶対湿度は一定で、乾球温度が上昇する顕熱変化が起こる。
【0048】
また、プレートフィンに孔を形成しない以外は、上記の第2の実施の形態と同様の空気調和機を構成することもできる。かかる場合の温度及び湿度制御の一例を図7の点線に示す。なお、図7に示した▲1▼〜▲4▼は、図6で示した▲1▼〜▲4▼の位置における空気の状態に対応している。
【0049】
この実施の形態によれば、給水管70からマット60に対して供給された水が、さらにマット60から加熱コイル3及び冷却コイル4における各プレートフィン30に滴下され、各プレートフィン30に沿って落下する。そして、ハウジング1の空気取入口(▲1▼点)から流入した外気は、プレフィルタ2a及びフィルタ2を介して塵埃が濾過された後、第1の加熱コイル3によって加熱されるとともに、上記のようにプレートフィン30に沿って落下する水滴の間を通過する際に加湿される(▲2▼点)。これにより、図7の▲1▼と▲2▼とを結ぶ点線で示すように乾球温度及び相対湿度が推移する。
【0050】
加熱加湿された空気は、冷却コイル4を通過する際に、上記のようにプレートフィン30に沿って落下する水滴によって加湿される(▲3▼点)。これにより、図7の▲2▼と▲3▼とを結ぶ点線で示すように、乾球温度及び相対湿度が推移する。このように加湿された空気は、さらに第2の加熱コイル5によって加熱され(▲4▼点)、送風機6によって供給口から供給される。これにより、図7の▲3▼と▲4▼を結ぶ点線で示すように、絶対湿度は一定で、乾球温度が上昇する顕熱変化が起こる。
【0051】
また、プレートフィンに特別な加工を施さない場合であっても、相対湿度に応じて、空気調和機内のプレートフィン全体に結露が起こり、全てが塗れ面となる。この結露水を分析すると、ケミカル成分濃度は非常に高く、単なるケミカルガス汚染物質の結露凝縮だけでなく、プレートフィン面の濡れによるケミカルガスの吸収が起きていることが分かる。但し、結露水のケミカル成分濃度は非常に高いため、結露水のみによるケミカルガス吸収では不十分であり、この状態にさらに水を滴下することによって、均一に濡れた大きな吸収面を得れば、ケミカルガスの吸収効率を向上させることができる。
【0052】
従って、例えば、プレートフィンに孔を形成しない以外は、上記の第2の実施の形態と同様の空気調和機を以下のように制御することによっても、高いケミカルガス除去効果を得ることができる。かかる場合の温度及び湿度制御の一例を図9に示す。なお、図9に示した▲1▼〜▲4▼は、図6で示した▲1▼〜▲4▼の位置における空気の状態に対応している。
【0053】
この実施の形態によれば、給水管70からマット60に対して供給された水が、さらにマット60から加熱コイル3及び冷却コイル4における各プレートフィン30に滴下される。そして、ハウジング1の空気取入口(▲1▼点)から流入した外気は、プレフィルタ2a及びフィルタ2を介して塵埃が濾過された後、第1の加熱コイル3によって加熱されるとともに、上記のようにプレートフィン30に沿って落下する水滴の間を通過する際に加湿される(▲2▼点)。このとき、冷却コイル4のプレートフィン30に十分に結露が生じるように、加湿量を多くしていわば過加湿の状態とする。これにより、図9の▲1▼と▲2▼とを結ぶ実線で示すように乾球温度及び相対湿度が推移する。
【0054】
加熱加湿された空気は、冷却コイル4を通過する際に冷却除湿され、プレートフィン30の全体に均一に結露が生じ、大面積の均一な濡れ面が形成される。同時に、プレートフィン30には補給水が滴下されているので、高いケミカルガスの除去効果を得ることができる(▲3▼点)。これにより、図9の▲2▼と▲3▼とを結ぶ実線で示すように、乾球温度及び相対湿度が推移する。このように過加湿後、冷却除湿された空気は、さらに第2の加熱コイル5によって加熱され(▲4▼点)、送風機6によって供給口から供給される。これにより、図9の▲3▼と▲4▼を結ぶ実線で示すように、絶対湿度は一定で、乾球温度が上昇する顕熱変化が起こる。なお、除湿期においては、上記のような過加湿制御を行なわなくとも、冷却コイル4のプレートフィン30には、全体に均一に結露が起こる。従って、この状態で連続的に補給水を滴下することによって、高いケミカルガスの除去効果を得ることができる。
【0056】
また、例えば、プレートフィンに親水性を持たせる方法としては、耐久性やコスト面を考慮すると、上記の実施の形態のように多数の孔を形成する方法が適しているが、以下のような方法も適用可能である。例えば、プレートフィンへ親水性塗料を塗布したり、親水性のコーティングを施すことが考えられる。但し、かかる方法は、剥離や劣化等の可能性がある。また、二酸化チタンに光を照射することが考えられる。但し、かかる方法は、プレートフィンの間隔等を考慮すると困難性が残る。
【0057】
また、他の実施の形態として、上記の実施の形態で示したプレートフィンへ供給する水に、界面活性剤を添加したり、半導体の洗浄に用いられる超純水の活性水若しくは機能水を使用することも可能である。かかる場合には、プレートフィンへ供給される水の表面張力が低いので、プレートフィンとの親水性が向上し、供給水が均一に行き渡り、均一かつ安定した加湿効率及びケミカルガスの吸収効率を得ることができる。なお、この場合には、プレートフィンに特別な加工を施さなくともよいが、上記の実施の形態で示した親水性を高める加工を施すことによって、さらに親水性を向上させることができる。
【0058】
また、上述の熱交換用のコイルは、プレートフィンを備えたものであれば、その種類を問わない。プレートフィンの材質は、上記の実施の形態に限定するものではない。例えば、アルミニウムを用いることもできる。但し、抗菌性を考慮すると銅製が望ましく、さらに、銀イオンを添着することによって抗菌性を高めることもできる。
【0059】
プレートフィンに形成する孔の大きさや形状、数も、親水性、保水性を持たせることができるものであればよく、上記の実施の形態で示したものには限定されない。プレートフィンや銅管の数や形状も上記の実施の形態で示したものには限定されない。さらに、熱交換用のコイルの数は、設計の段階で自由に変更可能であり、例えば、加熱コイルと冷却コイルとを一台づつ設けたものであってもよい。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、加湿又はケミカルガス除去用として専用の湿膜を用いる必要がなく、冷却又は加熱コイルのプレートフィンを利用することにより、イニシャルコスト及びランニングコストを低減することができ、所要スペースの小さい湿膜コイル型空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の湿膜コイル型空気調和機の第1の実施の形態の参考例を示す構成図である。
【図2】図1の参考例における加熱コイル及び冷却コイルを示す斜視図である。
【図3】図1の参考例における加熱コイルの内部構成を示す斜視図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図1の参考例における温度及び湿度制御の一例を示す湿り空気線図である。
【図6】本発明の湿膜コイル型空気調和機の第2の実施の形態の参考例を示す構成図である。
【図7】図6の参考例における温度及び湿度制御の一例を示す湿り空気線図である。
【図8】本発明の湿膜コイル型空気調和機の第3の実施の形態の参考例を示す構成図である。
【図9】本発明の他の実施の形態における温度及び湿度制御の一例を示す湿り空気線図である。
【図10】本発明の第1〜第3の実施の形態におけるランアラウンドコイルの配設状態を示す構成図である。

Claims (1)

  1. 空気取入口と空気供給口との間の空気流路に、熱媒によって空気との熱交換を行なう加熱用及び冷却用熱交換コイルを各々備えた空気調和機において、
    前記熱交換コイルは、熱媒が循環する管と、前記管に取り付けられたプレートフィンとを有し、前記プレートフィンに対して、水分を供給する給水手段が設けられ、
    前記給水手段は、前記プレートフィンの上部に配設された給水管を有し、前記給水管と前記プレートフィンとの間には、保水性若しくは吸水性のマットが配設され、
    前記熱交換コイルが、冷水循環式の冷却コイルと、温水循環式の加熱コイルから成り、
    前記加熱コイルの上流側と下流側に、ランアラウンドコイルを配設し、前記ランアラウンドコイルは、熱媒が循環する管と、前記管に取り付けられたプレートフィンとを有し、前記プレートフィンに対して、水分を供給する給水手段が設けられ、前記ランアラウンドコイルと前記加熱コイルとにより通過する空気を過加湿とすることを特徴とする湿膜コイル型空気調和機。
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