近年では、地球温暖化や大気汚染などの環境問題に対する関心が益々高まっており、車両においては排気ガス中に含まれる炭化水素HCなどのエミッションの排出量を低減することが重要な課題の一つとなっている。そのためには、内燃機関の排気系に配設されている触媒の温度を素早く反応温度にまで高めることが有効な方策の一つであることから、内燃機関の始動後、触媒が活性化するまでの間、内燃機関の点火時期を遅角させる制御が一般的に行われている。同時にこの際、トルクの低下を補うために、吸気通路を大きく開放するようにスロットル弁も制御して、吸気流量を増大させている(以下、単にこれらの制御を触媒暖機制御と称す)。触媒暖機制御を行うことで、より多くの混合気をより排気行程に近い時期で燃焼させることができるため、より高い温度で排気ガスを触媒に到達させることができ、その結果、素早く触媒の温度を反応温度にまで高めることができる。
ところが、上述のようにスロットル弁で吸気通路を大きく開放すると、内燃機関の吸気系で発生する負圧が小さくなる。この場合、ブレーキブースタは内燃機関の吸気系から負圧を取り出しているため、ブレーキ操作をアシストする機能が不十分になり、その結果、運転者の操作負担が増大してしまう。これに対して、触媒暖機制御が行われているときに、エゼクタを利用すればより大きな負圧をブレーキブースタに供給できる。なお、この場合には吸気通路が比較的大きく開放されていることから、エゼクタを機能させても吸入空気量の変動度合いが相対的に減少する。このためエゼクタを機能させても、アイドリングが大きく不安定になることはない。
一方、内燃機関の水温が所定値以上になり、触媒が活性化した場合には、触媒暖機制御は不要となる。この場合、スロットル弁は燃費向上を目的としてアイドリング時の目標回転数を下げるために相応の開度に絞られる。ところが、この場合にエゼクタを機能させると、空燃比に影響が及んでアイドル回転数を目標回転数へ制御することが困難になるため、結果としてアイドリングが不安定になる虞がある。この対策として最も簡便な対策はエゼクタを機能させないことであるが、エゼクタを機能させない場合、以下に示す問題が生じる。
エゼクタはベンチュリー効果で大きな負圧を発生させる構造故に、エゼクタ内で大きな負圧を発生させる部分にあたる通路は小さく絞られている。そして、長時間に亘ってエゼクタを機能させない場合には、吸気が流通しないために、この通路に詰まりが発生しやすくなる。詰まりの原因は、例えば吸気に含まれる水分が凝縮してこの通路に溜まり、冬場に凍結してしまうことや、油分を含んだ吸気がエゼクタ内に侵入してきてこの通路の壁面に付着し、さらに油分が壁面で塵芥と結合した結果、次第に通路を閉塞するようなデポジットに生成されてしまうことなどである。なお、係る詰まりはエゼクタそのものだけでなく、エゼクタを含む負圧発生装置の流通経路全般で発生する虞がある。
これに対して内燃機関の燃焼サイクルにおいて燃料噴射が行われないときに、エゼクタを機能させるようにすれば、アイドリングに悪影響を及ぼすことなく、上述の詰まりの発生を抑制できる。そしてこのようにエゼクタを機能させるにあたっては、具体的には例えば内燃機関で行われるフューエルカット制御に応じて、エゼクタを機能させることが好適である。ところがこの場合、上述の詰まりの発生は抑制できるものの、さらに負圧作動装置の負圧を十分な大きさに確保するといった観点や、車両のドライバビリティを確保するといった観点などからは、未だ改善の余地が残されていることがわかった。
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、フューエルカット制御に応じてエゼクタを機能させる場合に、より好適にエゼクタを機能させることができる負圧発生装置の制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は車両が備える内燃機関の吸気系の吸気通路から取り出そうとする負圧よりも大きな負圧を発生させるエゼクタと、該エゼクタを機能、或いは機能停止させる状態変更手段とを有して構成される負圧発生装置を制御するための負圧発生装置の制御装置であって、前記内燃機関で行われるフューエルカット制御に応じて、前記エゼクタを機能させるように前記状態変更手段が制御されるときに、該状態変更手段が前記エゼクタを機能させるように制御されることを禁止する特定禁止制御手段を備えることを特徴とする。
ここで、フューエルカット制御に応じてエゼクタを機能させると、詰まりの発生を抑制できる反面、負圧作動装置への負圧の充填は遅れてしまうことになり、場合によっては車両のドライバビリティが損なわれてしまうこともある。この点、上記特定禁止制御手段を備えた本発明によれば、状態変更手段がエゼクタを機能させるように制御されることを適宜禁止できることから、負圧作動装置の負圧を十分な大きさに確保することや、車両のドライバビリティを確保することなどが可能になり、結果として詰まりの発生を抑制すべく、より好適にエゼクタを機能させることができる。
また本発明は前記特定禁止制御手段が、前記吸気通路と前記エゼクタとから負圧の供給を受ける負圧作動装置の負圧が十分な大きさに確保されるまでの間、前記状態変更手段が前記エゼクタを機能させるように制御されることを禁止してもよい。ここで、エゼクタを機能させた後では、内燃機関の吸入空気量が増大する結果、吸気通路から取り出そうとする負圧が低下してしまうほか、吸気通路から直接負圧を取り出す場合と比較して負圧の供給量が減少する結果、負圧の充填に時間がかかってしまう。これに対して本発明によれば、負圧作動装置の負圧が十分な大きさに確保されるまでの間、吸気通路から直接負圧を取り出すことができる。このため本発明によれば、負圧作動装置への負圧の充填が遅れてしまうことを防止できる。
なお、「負圧作動装置の負圧が十分な大きさに確保されるまでの間」は、具体的には例えば「吸気通路から取り出そうとする負圧、または負圧作動装置の負圧が所定値よりも小さくなるまでの間」で規定できる。ここでこの記載は便宜上、負圧を負の値としているものであるが、例えば負圧を大きさや絶対圧とした場合であっても、負の値に置き換えることで同様の関係が成立すれば、本発明に含まれるものである。また「負圧作動装置の負圧が十分な大きさに確保されるまでの間」は、具体的には例えば、「フューエルカット制御が開始されてから所定時間が経過するまでの間」と規定することもできる。
また本発明は前記特定禁止制御手段が、車速が所定値よりも低いときに前記状態変更手段が前記エゼクタを機能させるように制御されることを禁止してもよい。ここで、フューエルカット制御に応じてエゼクタが機能した後、エゼクタが機能停止したときには、内燃機関の吸入空気量はエゼクタを流通する吸入空気量の分だけ減少する。そしてこの吸入空気量の減少が、例えばフューエルカット制御からの復帰制御(例えば点火時期の遅角制御)が行われているときや、完全に通常制御に復帰した後に起こった場合には、内燃機関のトルクが変動する。そして、さらにこのとき車速が低い場合には、大きなトルクショックや最悪、エンストが発生する虞がある。これに対して本発明によれば、係るトルク変動の発生を防止できることから、特に車速が低いことに起因して大きなトルクショックやエンストが発生することを防止でき、この結果、車両のドライバビリティを確保できる。
また本発明は前記特定禁止制御手段が、前記フューエルカット制御に応じて前記状態変更手段が作動した後、所定期間が経過するまでの間、前記状態変更手段が、前記フューエルカット制御に応じて前記エゼクタを機能させるように制御されることを禁止してもよい。ここで、負圧発生装置の詰まりの発生を抑制するためには、必ずしもフューエルカット制御が行われる度にエゼクタを機能させる必要はないといえる。これに対して本発明によれば、フューエルカット制御に応じて状態変更手段が一度作動(状態変更手段がエゼクタを機能及び機能停止させるように制御されること)した後、所定期間が経過するまでの間はフューエルカット制御が行われてもエゼクタが機能しなくなることから、作動回数の低減によるバッテリ消費量の低減や、状態変更手段の故障低減或いは長寿命化といった観点からも、より好適にエゼクタを機能させることができる。
また本発明は前記特定禁止制御手段が、さらに前記状態変更手段の作動時間が所定時間よりも長かった場合に、前記状態変更手段が、前記フューエルカット制御に応じて前記エゼクタを機能させるように制御されることを禁止してもよい。ここでフューエルカット制御がごく短い時間の間だけ行われた場合には、フューエルカット制御に応じた状態変更手段の作動時間も短いものとなる。この場合には、フューエルカット制御に応じて状態変更手段が作動したとしても、負圧発生装置の詰まりの発生を抑制するにあたって十分な効果が得られないことから、その後所定期間が経過するまでの間、フューエルカット制御に応じてエゼクタを機能させないと詰まりの発生が助長される虞がある。これに対して本発明によれば、さらに状態変更手段の作動時間が所定時間よりも長かった場合に上記制御の禁止が行われることから、詰まりの発生が助長される虞も抑制できる。
また本発明は車両が備える内燃機関の吸気系の吸気通路から取り出そうとする負圧よりも大きな負圧を発生させるエゼクタと、該エゼクタを機能、或いは機能停止させる状態変更手段とを有して構成される負圧発生装置を制御するための負圧発生装置の制御装置であって、前記内燃機関で行われるフューエルカット制御に応じて、前記状態変更手段が前記エゼクタを機能させるように制御された後、前記フューエルカット制御が行われている間に、前記エゼクタを機能停止させるように前記状態変更手段を制御する清掃制御終了手段を備えることを特徴とする。
ここで前述の通り、エゼクタが機能停止したときには内燃機関の吸入空気量はエゼクタを流通する吸入空気量の分だけ減少し、この吸入空気量の減少が、フューエルカット制御からの復帰制御が行われているときや、完全に通常制御に復帰した後に起こった場合にはトルクが変動することになる。これに対して本発明によれば、係るトルク変動の発生を防止できることから、車両のドライバビリティを確保できる。
本発明によれば、フューエルカット制御に応じてエゼクタを機能させる場合に、より好適にエゼクタを機能させることができる負圧発生装置の制御装置を提供できる。
図1はECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)40Aで実現されている本実施例に係る負圧発生装置の制御装置を、負圧発生装置100とともに模式的に示す図である。内燃機関50を始めとした図1に示す各構成は車両(図示省略)に搭載されている。内燃機関50の吸気系10は、エアクリーナ11と、エアフロメータ12と、電動スロットル13と、インテークマニホールド14と、内燃機関50の各気筒(図示省略)に連通する図示しない吸気ポートと、これらの構成の間に適宜配設される例えば吸気管15a、15bなどを有して構成されている。エアクリーナ11は内燃機関50の各気筒に供給される吸気を濾過するための構成であり、図示しないエアダクトを介して大気に連通している。エアフロメータ12は吸入空気量を計測するための構成であり吸入空気量に応じた信号を出力する。
電動スロットル13は、スロットル弁13aと、スロットルボディ13bと、弁軸13cと、電動モータ13dとを有して構成されている。スロットル弁13aは、内燃機関50に供給する吸入空気量を開度変化により調整するための構成である。スロットルボディ13bは、吸気通路が形成された筒状部材からなる構成であり、この吸気通路に配設されたスロットル弁13aの弁軸13cを支持する。電動モータ13dは、ECU40Aの制御の基、スロットル弁13aの開度を変更するための構成であり、この電動モータ13dにはステップモータが採用されている。電動モータ13dはスロットルボディ13bに固定されており、その出力軸(図示省略)は弁軸13cに連結されている。スロットル弁13aの開度は、電動スロットル13に内蔵された図示しないスロットル開度センサからの出力信号に基づき、ECU40Aで検出される。
なお、スロットル機構には電動スロットル13のようなスロットル弁13aをアクチュエータで駆動するスロットルバイワイヤ方式のほか、例えば電動スロットル13の代わりにワイヤなどを介してアクセルペダル(図示省略)と連動し、スロットル弁13aの開度が変更されるような機械式スロットル機構が適用されてもよい。インテークマニホールド14は、上流側で一つの吸気通路を下流側で内燃機関50の各気筒に対応させて分岐するための構成であり、吸気を内燃機関50の各気筒に分配する。
ブレーキ装置20はブレーキペダル21と、ブレーキブースタ(負圧作動装置)22と、マスターシリンダ23と、ホイルシリンダ(図示省略)とを有して構成されている。運転者が車輪の回転を制動するために操作するブレーキペダル21は、ブレーキブースタ22の入力ロッド(図示省略)と連結されている。ブレーキブースタ22は、ペダル踏力に対して所定の倍力比でアシスト力を発生させるための構成であり、内部でマスターリシンダ23側に区画された負圧室(図示省略)が、エゼクタ30を介してインテークマニホールド14の吸気通路に接続されている。ブレーキブースタ22は、さらにその出力ロッド(図示省略)がマスターシリンダ23の入力軸(図示省略)と連結されており、マスターシリンダ23は、ペダル踏力に加えてアシスト力を得たブレーキブースタ22からの作用力に応じて油圧を発生させる。マスターシリンダ23は、油圧回路を介して各車輪のディスクブレーキ機構(図示省略)に設けられたホイルシリンダ夫々に接続されており、ホイルシリンダはマスターシリンダ23から供給された油圧で制動力を発生させる。なお、ブレーキブースタ22は気圧式のものであれば特に限定されるものではなく、一般的なものであってよい。
エゼクタ30は、吸気系10、より具体的にはスロットル弁13aよりも下流側にあるインテークマニホールド14から取り出そうとする負圧(以下、単にインマニ負圧と称す)よりもさらに大きな負圧を発生させてブレーキブースタ22の負圧室に供給するための構成である。エゼクタ30は、流入ポート31aと流出ポート31bと負圧供給ポート31cとを有している。これらのうち、負圧供給ポート31cがエアホース5cでブレーキブースタ22の負圧室に接続されている。また、流入ポート31aは吸気管15aの吸気通路にエアホース5aで、流出ポート31bはインテークマニホールド14の吸気通路にエアホース5bで、電動スロットル13、より具体的にはスロットル弁13aを挟むようにして夫々接続されている。これによって、電動スロットル13を迂回するバイパス路Bが、エゼクタ30を含んでエアホース5aと5bとで形成される。なお、エゼクタ30が機能していない場合、ブレーキブースタ22の負圧室には、インテークマニホールド14の吸気通路から、エアホース5b、エゼクタ30の流出ポート31b及び負圧供給ポート31c、エアホース5c夫々を介して負圧が供給される。また、ブレーキブースタ22の負圧室に充填された負圧を、以下単にブースタ負圧と称す。
エアホース5aには、VSV(バキュームスイッチングバルブ)1を介在させている。VSV1は、ECU40Aの制御の基、バイパス路Bを連通、遮断するための構成であり、本実施例では2ポジション2ポートのノーマルクローズドソレノイドバルブを採用している。但し、これに限られず、VSV1は他の適宜の電磁弁などであってよく、さらに例えば流路の遮蔽度合いを制御可能な流量調整弁などであってもよい。また、このVSV1はバイパス路Bを連通、遮断することで、エゼクタ30を機能、或いは機能停止させるための構成となっている。本実施例では、VSV1で状態変更手段を実現している。
図2はエゼクタ30の内部構成を模式的に示す図である。エゼクタ30は内部にディフューザ32を備えている。ディフューザ32は、先細テーパ部32aと、末広テーパ部32bと、これらを連通する通路にあたる負圧取出部32cとで構成されている。先細テーパ部32aは、流入ポート31aに対向するようにして開口しており、末広テーパ部32bは、流出ポート31bに対向するようにして開口している。また、負圧取出部32cは、負圧供給ポート31cに連通している。流入ポート31aには、流入してきた吸気を先細テーパ部32aに向けて噴射するノズル33が配設されており、ノズル33から噴射された吸気はディフューザ32を流通し、さらに流出ポート31bからエアホース5bに流出する。この際、ディフューザ32で高速噴流が生起されることにより、ベンチュリー効果で負圧取出部32cに大きな負圧が発生し、さらにこの負圧は負圧供給ポート31cからエアホース5cを介して負圧室に供給される。このようなエゼクタ30の機能により、ブレーキブースタ22は、インテークマニホールド14から取り出す場合よりも大きな負圧を得ることができる。
なお、負圧取出部32cと負圧供給ポート31cとの間の内部流路と、流出ポート31bと負圧供給ポート31cとの間の内部流路と、ブレーキブースタ22のエアホース5c接続部とに設けられた逆止弁34は、夫々逆流を防止するためのものである。また、エゼクタ30は図2に示す内部構造を備えるものに限られず、その他の異なる内部構造を備えるエゼクタをエゼクタ30の代わりに適用してよい。本実施例では負圧発生装置100はVSV1とエゼクタ30とを有して実現されており、この負圧発生装置100はさらに具体的にはエアホース5a、5b及び5cと逆止弁34とを有して構成されている。
ECU40Aは、図示しないCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを有して構成されるマイクロコンピュータ(以下、単にマイコンと称す)や入出力回路などを有して構成されている。ECU40Aは主として内燃機関50を制御するための構成であり、本実施例ではVSV1や電動スロットル13なども制御している。ECU40AにはVSV1や電動スロットル13のほか、各種の制御対象が接続されている。また、ECU40Aにはスロットル開度センサや、車速を検出するための車速センサ71や、内燃機関50の水温を検出するための水温センサ72や、内燃機関50の回転数NEを検出するためのクランク角センサ73などの各種のセンサが接続されている。
ROMはCPUが実行する種々の処理が記述されたプログラムを格納するための構成であり、本実施例では内燃機関50制御用のプログラムのほかに、種々の条件のもと、エゼクタ30を機能、或いは機能停止させるようにVSV1を制御する(以下、単にVSV1を開く、或いは閉じるとも称す)ためのVSV1制御用のプログラムなども格納している。VSV1はこのVSV1制御用プログラムによって、基本的に冷間時(例えば75℃以下)に開かれるとともに、温間時に閉じられる。なお、フューエルカット(以下、単にF/Cと称す)制御用のプログラムは内燃機関50制御用のプログラムの一部として構成されており、このF/C制御用のプログラムは、回転数NEがある程度高い状態でアクセルペダルが開放された場合にF/Cを行うように作成されている。また、これらのプログラムは一体として組み合わされていてもよい。
VSV1制御用プログラムは、内燃機関で行われるF/C制御に応じて、F/C制御が開始されたときにVSV1を開く清掃制御用プログラムを有して構成されている。さらに本実施例ではVSV1制御用プログラムが、上記の清掃制御用プログラムに基づき、F/C制御に応じてVSV1が開かれるときに、VSV1が開かれることを禁止する特定禁止制御用プログラムを有して構成されている。この特定禁止制御用プログラムは、必要なブレーキ性能を確保すべく、ブースタ負圧が十分な大きさに確保されるまでの間、VSV1が開かれることを禁止するように作成されており、さらに本実施例では具体的にはインマニ負圧が所定値βよりも小さくなるまでの間、VSV1が開かれることを禁止するように作成されている。本実施例ではマイコンと上述の各種のプログラムとで各種の制御手段や検出手段や判定手段などが実現されており、特にマイコンと特定禁止制御用プログラムとで特定禁止制御手段が実現されている。
次にECU40Aで行われる処理を図3に示すフローチャートを用いて詳述する。ECU40Aは、ROMに格納された前述の各種のプログラムに基づき、CPUがフローチャートに示す処理を極短い時間で繰り返し実行することで、F/C制御に応じてVSV1が開かれることを禁止する。CPUは水温が所定値α(例えば75℃)を超えたか否かを判定する処理を実行する(ステップS11)。すなわち、本ステップで温間時であるか否かが判定される。否定判定であれば冷間時であるため、CPUはVSV1を開くための処理を実行する(ステップS14)。一方、ステップS11で肯定判定であれば、CPUはF/C中であるか否かを判定する処理を実行する(ステップS12)。否定判定であれば、特段の処理を要しない温間時であるため、CPUはVSV1を閉じるための処理を実行する(ステップS15)。
一方、ステップS12で肯定判定であれば、CPUはインマニ負圧が所定値βよりも小さいか否かを判定する処理を実行する(ステップS13A)。この所定値βは、実験などによりF/C制御を開始した後、ブースタ負圧が十分な大きさに確保されたときの値を把握することで決定できるが、F/C制御が開始されたときのブースタ負圧の大きさや回転数NEの大きさ(換言すればインマニ負圧の大きさ)に関わらず、ブースタ負圧を十分な大きさに確保できる値に設定されることが好ましい。ここで、F/C制御が行なわれている間はインマニ負圧が増大する(負の値として小さくなる)が、上記のように所定値βを設定することにより、インマニ負圧が所定値βよりも小さくなったことを以って、この間にブースタ負圧も既に十分な大きさに確保されたと推定できる。
したがってステップS13Aで肯定判定であれば、ブースタ負圧が既に十分な大きさに確保されたと推定できることから、CPUはVSV1を開くための処理を実行する(ステップS14)。一方、ステップS13Aで否定判定であれば、CPUはVSV1を閉じるための処理を実行する(ステップS15)。これにより、インマニ負圧が所定値βよりも小さくなるまでの間は、インマニ負圧がブレーキブースタ22に充填されることから、ブースタ負圧が不足した状態でエゼクタ30が機能した結果、ブレーキブースタ22への負圧の充填が遅れてしまうことを防止できる。
図4はF/C制御を行ったときのインマニ負圧及びブースタ負圧の変化の様子をグラフで示す図である。図4ではこれらの変化を、F/C制御開始とともにエゼクタ30を機能させた場合(図4でエゼクタ有りと称す)と、エゼクタ30を機能させなかった場合(図4でエゼクタ無しと称す)とについて夫々示しており、さらにECU40Aでエゼクタ30を開かなかった場合(図4でエゼクタ有り、ECU40Aと称す)のインマニ負圧も同時に示している。図4において、F/C制御はおよそ時間1.2秒で開始されている。このときエゼクタ30を機能させなかった場合、インマニ負圧は時間が経過するとともに次第にその大きさが大きくなっていくことがわかる。一方、F/C制御開始とともにエゼクタ30を機能させた場合には、内燃機関50の吸入空気量がエゼクタ30を流通する分だけ増大することから、インマニ負圧もその分低下してしまうことがわかる。
またエゼクタ30による負圧の供給量はインテークマニホールド14から負圧を直接取り出す場合よりも小さいものとなっている。このため、同一の負圧で見た場合に、エゼクタ30を機能させた場合にはエゼクタ30を機能させなかった場合と比較して、ブースタ負圧の充填が遅れてしまうことがわかる。これに対して図4では十分な大きさのブースタ負圧が−50kPaになっており、さらにこれに対応する所定値βが−72kPaになっている。このため、ECU40AによればF/C制御が開始されてからインマニ負圧が−72kPaよりも小さくなるまでの間は、エゼクタ30が開かれないことから、ブースタ負圧を速やかに−50kPaに確保することができ、この結果、ブースタ負圧の充填に遅れが生じることを防止できる。
なお、図3に示すフローチャートにおいて、例えばステップS13Aでインマニ負圧の代わりに、ブースタ負圧が所定値よりも小さいか否かを判定し、否定判定であった場合にステップS15に進むようにしてもよい。これは、特定禁止制御用プログラムをブースタ負圧が所定値よりも小さくなるまでの間、VSV1が開かれることを禁止するように作成することで実現できる。またブースタ負圧は例えばブレーキブースタ22に負圧室の負圧を検知できる圧力センサを設けるとともに、この圧力センサの出力を検出することで検出できる。この場合にはブースタ負圧を検知するための圧力センサが必要になる代わりに、ブースタ負圧が十分な大きさになったか否かをより正確に把握できる。
また図3に示すように、ステップS13Aでインマニ負圧が所定値βよりも小さいか否かを判定する代わりに、F/C制御が開始されてから所定時間T1が経過したか否かを判定し、否定判定であった場合にステップS15に進むようにしてもよい。これは、特定禁止制御用プログラムをF/C制御が開始されてから所定時間T1が経過するまでの間、VSV1が開かれることを禁止するように作成することで実現できる。またこれは、F/C制御が開始された後、所定時間が経過すれば、インマニ負圧が増大する結果、ブースタ負圧も十分な大きさに確保される関係にあることに鑑みたものである。したがって所定時間T1は係る関係のもと、実験などによりF/C制御が開始されるときのブースタ負圧の大きさや回転数NEの大きさに関わらず、ブースタ負圧を十分な大きさに確保できる値を把握することで、決定されることが好ましい。
また、インマニ負圧は例えばインマニ負圧を検知できる圧力センサをインテークマニホールド14に設けるとともに、この圧力センサの出力を検出することで検出できる。但しこれに限られず、例えば内燃機関50の運転状態(例えば回転数NE及び負荷)などに基づき、インマニ負圧を推定することでインマニ負圧を求めてもよい。以上により、フューエルカット制御に応じてエゼクタを機能させる場合に、より好適にエゼクタを機能させることができるECU40Aを実現できる。
本実施例に係るECU40Dは、ROMに格納されたVSV1制御用のプログラムが異なっている点以外、ECU40Aと同一となっている。なお、ECU40Dが適用されている車両の各構成は、ECU40AがECU40Dに変更される点以外、図1に示した各構成と同一となっている。本実施例ではVSV1制御用のプログラムが、特定禁止制御用プログラムを有して構成されていない点と、F/C制御に応じてVSV1が開かれた後、F/C制御が行われている間に(換言すればF/C制御からの復帰制御が行われるときまでの間に)、VSV1を閉じるための清掃制御終了用プログラムを有して構成されている点以外、実施例1で前述したVSV1制御用プログラムと同一のものとなっている。
この清掃制御終了用プログラムは、本実施例では具体的には回転数NEが所定回転数Nよりも小さくなったときに、VSV1を閉じるように作成されている。なお、本実施例に係るVSV1制御用プログラムは、さらにF/C制御に応じてVSV1が開かれるときに、VSV1が開かれることを禁止するための特定禁止制御用プログラム(例えば実施例1から3までで前述した特定禁止制御用プログラム)を有して構成されていてもよい。本実施例では清掃制御終了用プログラムとマイコンとで清掃制御終了手段が実現されており、ECU40Dで負圧発生装置の制御装置が実現されている。
次にECU1Dで行われる処理を図7に示すフローチャートを用いて詳述する。なお、図7に示すフローチャートはステップS13AがステップS13Dに変更されている点以外、実施例1で前述した図3に示すフローチャートと同一のものとなっている。このため本実施例では特にステップS13Dについて詳述する。ステップS12の肯定判定に続いて、CPUは回転数NEが所定回転数Nよりも大きいか否かを判定する処理を実行する(ステップS13D)。この所定回転数Nは、F/C制御からの復帰制御が行われる回転数(F/C復帰回転数)よりも所定値aだけ大きな値に設定されている。これにより、F/C制御が行われている間にVSV1を閉じて清掃制御を終了することが可能になる。
ステップS13Dで肯定判定であれば、CPUはVSV1を開くための処理を実行する(ステップS14)。一方、ステップS13Dで否定判定であれば、回転数NEが所定回転数Nよりも小さくなったと判断され、CPUはVSV1を閉じるための処理を実行する(ステップS15)。これにより、例えばF/C制御からの復帰制御が行われているときに、内燃機関50の吸入空気量がエゼクタ30を流通する吸入空気量の分だけ減少することで、トルクが変動することを防止できる。したがって、これにより車両のドライバビリティを確保できる。
なお、図7に示すように、ステップS13Dで回転数NEが所定回転数Nよりも大きいか否かを判定する代わりに、F/C制御が行われてから所定時間T4が経過していないか否かを判定し、否定判定であった場合にステップS15に進むようにしてもよい。これは、清掃制御終了用プログラムをF/C制御が開始されてから所定時間T4が経過したときに、VSV1を閉じるように作成することで実現できる。またこれは、F/C制御が開始された後、所定時間が経過すれば、回転数NEが所定回転数Nまで低下する関係にあることに鑑みたものである。したがって、所定時間T4は係る関係のもと、例えば回転数NEがF/C制御が開始される回転数のうち、最も小さい回転数であった場合でも、F/C制御が開始された後、回転数NEが所定回転数Nよりも低くならない値に設定されることが好ましい。以上により、フューエルカット制御に応じてエゼクタを機能させる場合に、より好適にエゼクタを機能させることができるECU40Dを実現できる。
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。