JP4650221B2 - 多自由度超音波モータ - Google Patents
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例えば、特許文献1には、ベアリングを介してバネでロータに予圧をかけることによりロータをステータに加圧接触させ、この状態で互いに重ね合わされた複数の圧電素子板に駆動電圧を印加してステータに超音波振動を発生させることでロータを回転させる多自由度超音波モータが開示されている。ここで予圧とは、少なくとも圧電素子に通電しない状態でロータをステータに押しつける圧力のことをいう。
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、高トルクを実現することができる多自由度超音波モータを提供することを目的とする。
あるいは、複数のステータを、ステータ振動手段の両側に配置してステータ振動手段を挟むように構成することもできる。この場合、複数のステータは、それぞれロータをその周方向に沿って環状に囲むように配置されるリング形状から形成することができ、また、複数のステータがステータ振動手段により振動するときに形成される節位置でこれらのステータを支持することもできる。
また、好ましくは、複数のステータのうち少なくとも1つが、ロータを挟む方向に弾性を有している。
さらに、ステータ振動手段を、互いに異なる3方向の振動を生じる3対の圧電素子板から構成すれば、これら3方向の振動のうち2方向の振動を互いに位相をずらして組み合わせた合成振動を発生させることによりステータのロータとの接触部分に楕円運動を形成することができる。
実施の形態1.
図1及び図2に、この発明の実施の形態1に係る多自由度超音波モータを示す。基部ブロック1と第1のステータ2との間にステータ振動手段となる円筒状の振動子3が挟持されると共に基部ブロック1と第1のステータ2とが振動子3内に通された連結ボルト4を介して互いに連結されており、多自由度超音波モータ全体としてほぼ円柱状の外形を有している。ここで、説明の便宜上、基部ブロック1から第1のステータ2へと向かう円柱状の外形の中心軸をZ軸と規定し、Z軸に対して垂直方向にX軸が、Z軸及びX軸に対して垂直にY軸がそれぞれ延びているものとする。
振動子3は、それぞれXY平面上に位置し且つ互いに重ね合わされた平板状の第1〜第3の圧電素子部31〜33を有しており、これらの圧電素子部31〜33が絶縁シート34〜37を介してステータ2及び基部ブロック1から、また互いに絶縁された状態で配置されている。
さらに、第1のステータ2の上部にはZ軸方向に隣接して環状の第2のステータ10が配置され、この第2のステータ10の内周縁にXY平面上に位置する環状の角部11が形成されている。第2のステータ10は、多数、例えば12本の固定用ボルト12により第1のステータ2に堅固に固定されており、第1のステータ2と第2のステータ10は振動子3から与えられる振動に対して同一の振動モードで振動する単一のステータ振動体Sを形成する。
ロータ6は凹部5内の段差9及び第2のステータ10の角部11の双方に当接して挟持され、回転自在に支持されている。
第2の圧電素子部32の一対の圧電素子板32b及び32dは、2分割されることなく全体がZ軸方向(厚み方向)に膨張あるいは収縮の変形挙動を行うように分極されており、圧電素子板32bと圧電素子板32dは互いに裏返しに配置されている。
第3の圧電素子部33の一対の圧電素子板33b及び33dは、X軸方向に2分割された部分が互いに逆極性を有してそれぞれZ軸方向(厚み方向)に膨張と収縮の反対の変形挙動を行うように分極されており、圧電素子板33bと圧電素子板33dは互いに裏返しに配置されている。
まず、振動子3に対して、第1の端子31tから第1のステータ2と第2のステータ10により形成されるステータ振動体Sの固有振動数に近い周波数の交流電圧を印加すると、第1の圧電素子部31の一対の圧電素子板31b及び31dの2分割された部分がZ軸方向に膨張と収縮を交互に繰り返し、ステータ振動体SにY軸方向のたわみ振動を発生する。また、第2の端子32tからステータ振動体Sの固有振動数に近い周波数の交流電圧を印加すると、第2の圧電素子部32の一対の圧電素子板32b及び32dがZ軸方向に膨張と収縮を繰り返し、ステータ振動体SにZ軸方向の縦振動を発生する。さらに、第3の端子33tからステータ振動体Sの固有振動数に近い周波数の交流電圧を印加すると、第3の圧電素子部33の一対の圧電素子板33b及び33dの2分割された部分がZ軸方向に膨張と収縮を交互に繰り返し、ステータ振動体SにX軸方向のたわみ振動を発生する。
同様に、第2の端子32tと第3の端子33tの双方から位相を90度シフトさせた交流電圧をそれぞれ印加すると、X軸方向のたわみ振動とZ軸方向の縦振動とが組み合わされてロータ6と接触する第1のステータ2の段差9及び第2のステータ10の角部11にそれぞれXZ面内の楕円振動が発生し、摩擦力を介してロータ6がY軸回りに回転することとなる。
さらに、第1の端子31tと第3の端子33tの双方から位相を90度シフトさせた交流電圧をそれぞれ印加すると、X軸方向のたわみ振動とY軸方向のたわみ振動とが組み合わされてロータ6と接触する第1のステータ2の段差9及び第2のステータ10の角部11にそれぞれXY面内の楕円振動が発生し、摩擦力を介してロータ6がZ軸回りに回転することとなる。
このとき、第1のステータ2と第2のステータ10が単一のステータ振動体Sを形成しているので、第1のステータ2の段差9と第2のステータ10の角部11は互いに同一の振動モードで振動する。このため、ロータ6は、第1のステータ2の段差9と第2のステータ10の角部11の双方から回転力が伝達され、高トルクで回転することとなる。
図7に、この発明の実施の形態2に係る多自由度超音波モータを示す。この多自由度超音波モータは、図1に示した実施の形態1の多自由度超音波モータにおいて、環状の角部11が内周縁に形成された第2のステータ10の代わりに、環状の板バネ13aを有する第2のステータ13を用いたものである。環状の板バネ13aはロータ6を挟む方向に弾性を有しており、板バネ13aの内周縁13bがXY平面上に位置してロータ6の表面に当接している。
実施の形態1の多自由度超音波モータと同様に、第2のステータ13は12本の固定用ボルト12により第1のステータ2に堅固に固定されており、第1のステータ2と第2のステータ13が同一の振動モードで振動する単一のステータ振動体Sを形成している。
このとき、板バネ13aの内周縁13bがロータ6の表面に弾力的に当接しているので、ロータ6と第1のステータ2の段差9及び第2のステータ13の板バネ13aの内周縁13bとの間の摩擦力が増加し、ロータ6の回転トルクの増大がなされることとなる。
図8に、この発明の実施の形態3に係る多自由度超音波モータを示す。この多自由度超音波モータは、図7に示した実施の形態2の多自由度超音波モータにおいて、凹部5内に環状の段差9が形成された第1のステータ2の代わりに、凹部5内に環状の板バネ14aが形成された第1のステータ14を用いたものである。この第1のステータ14の板バネ14aと第2のステータ13の板バネ13aは共にロータ6を挟む方向に弾性を有しており、板バネ14aの内周縁14bと板バネ13aの内周縁13bがそれぞれXY平面上に位置してロータ6の表面に当接している。
実施の形態1及び2の多自由度超音波モータと同様に、第2のステータ13は12本の固定用ボルト12により第1のステータ14に堅固に固定されており、第1のステータ14と第2のステータ13が同一の振動モードで振動する単一のステータ振動体Sを形成している。
このとき、第1のステータ14の板バネ14aの内周縁14bと第2のステータ13の板バネ13aの内周縁13bがそれぞれロータ6の表面に弾力的に当接しているので、ロータ6と第1のステータ14の板バネ14aの内周縁14b及び第2のステータ13の板バネ13aの内周縁13bとの間の摩擦力が増加し、ロータ6の回転トルクの増大がなされる。
図9及び10に、この発明の実施の形態4に係る多自由度超音波モータを示す。上述した実施の形態1〜3の多自由度超音波モータでは、第1のステータ2あるいは14と第2のステータ10あるいは13が固定用ボルト12によって互いに一体に形成され、振動子3の一方の側に配置されていたが、この実施の形態4の多自由度超音波モータでは、第1のステータ15と第2のステータ16が振動子17を挟んで振動子17の両側に配置されている。
なお、第1のステータ15及び第2のステータ16が振動子17によって振動するときに形成される節位置で固定具20により第1のステータ15及び第2のステータ16を支持すれば、これら第1のステータ15及び第2のステータ16の振動に与える影響を最小限に抑えながら、この実施の形態4に係る多自由度超音波モータを支持することができる。
また、上記実施の形態において、第1のステ―タ2,15及び第2のステータ10,13,16とロータ6との接触は段差9や角部11のような角部であったが、この構成に限らない。楕円運動が伝達できれば平面で接触するようにしても曲面で接触しても良いし、環状でなくてもよい。
また、上記実施の形態では、3方向のうちの2方向を選択して振動を発生させていたが、3方向に対応した圧電素子全てに交流電圧を印加し、各方向の振動の位相や振幅を制御して合成振動を発生させてもよい。
Claims (9)
- 互いに対向して配置される複数のステータと、
前記複数のステータにより挟持される略球体状のロータと、
前記複数のステータに共通に設けられると共に前記複数のステータを互いに同一の方向の駆動力を発生するように振動させて前記ロータを回転させる1つのステータ振動手段と
を備えることを特徴とする多自由度超音波モータ。 - 前記複数のステータは、前記ステータ振動手段の一方の側に配置されると共に互いに一体に形成された請求項1に記載の多自由度超音波モータ。
- 前記複数のステータは、前記ステータ振動手段を挟んで前記ステータ振動手段の両側に配置された請求項1に記載の多自由度超音波モータ。
- 前記複数のステータは、それぞれ前記ロータをその周方向に沿って環状に囲むように配置されるリング形状を有する請求項3に記載の多自由度超音波モータ。
- 前記複数のステータが前記ステータ振動手段により振動するときに形成される節位置でこれらステータを支持する請求項3または4に記載の多自由度超音波モータ。
- 前記複数のステータのうち少なくとも1つは、周方向の複数箇所でのみ前記ロータの表面に接触する請求項1〜5のいずれか一項に記載の多自由度超音波モータ。
- 前記複数箇所は、前記ロータに対して互いに対称の位置にある請求項6に記載の多自由度超音波モータ。
- 前記複数のステータのうち少なくとも1つは、前記ロータを挟む方向に弾性を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の多自由度超音波モータ。
- 前記ステータ振動手段は、互いに異なる3方向の振動を生じる3対の圧電素子板を有し、これら3方向の振動のうち少なくとも2方向の振動を互いに位相をずらして組み合わせた合成振動を発生させることにより前記ステータの前記ロータとの接触部分に楕円運動を形成する請求項1〜8のいずれか一項に記載の多自由度超音波モータ。
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