図1は企業内ネットワーク1の全体的な構成の例を示す図、図2は画像形成装置2のハードウェア構成の例を示す図、図3は操作パネル20fの例を示す図、図4は画像形成装置2の機能的構成の例を示す図、図5はユーザプロファイル7に含まれる情報の例を示す図、図6は個人用アドレス帳情報7dの例を示す図である。
企業内ネットワーク1は、複数の支店または営業所などを有する企業のイントラネットであって、図1に示すように、複数の支店ネットワーク10および通信回線16などによって構成される。各支店ネットワーク10は、通信回線16を介して互いに接続されている。通信回線16として、インターネット、専用線、または公衆回線などが用いられる。
以下、企業内ネットワーク1を、A支店およびB支店の2つの支店を有する企業Xに適用した場合を例に説明する。また、各支店には、それぞれ複数の部署が設けられているものとする。
支店ネットワーク10は、支店用のローカルエリアネットワーク(LAN)であって、A支店およびB支店のそれぞれに設けられている。以下、A支店およびB支店のそれぞれの支店ネットワーク10を「支店ネットワーク10A」および「支店ネットワーク10B」と区別して記載することがある。
支店ネットワーク10は、画像形成装置2、端末装置3、スイッチングハブ4、およびルータ5などによって構成される。これらの装置には、ユニークなIPアドレスが付されている。以下、説明の簡単のため、1つの支店には画像形成装置2が1台だけ設けられているものとする。また、A支店およびB支店にそれぞれ設置されている画像形成装置2を、「画像形成装置2A」および「画像形成装置2B」と区別して記載することがある。
画像形成装置2および端末装置3は、自らの所属する支店ネットワーク10の中のスイッチングハブ4の所定のポートにツイストペアケーブルによって繋がれている。これにより、同じ支店ネットワーク10の中にある画像形成装置2と端末装置3とは、互いに通信を行うことができる。スイッチングハブ4として、無線LAN用の装置が用いられることもある。
各支店ネットワーク10のルータ5は、通信回線16を介して互いに接続されている。これにより、支店ネットワーク10を構成する画像形成装置2および端末装置3は、他方の支店ネットワーク10を構成する画像形成装置2および端末装置3と通信を行うことができる。ルータ5は、企業内ネットワーク1のセキュリティの保護のために、FTP(File Transfer Protocol)による通信を禁止している。HTTP(Hypertext Transfer Protocol)による通信は認めている。よって、異なる支店ネットワーク10に設けられている装置同士は、HTTPによる通信を行うことはできるが、FTPによる通信を行うことはできない。同じ支店ネットワーク10に設けられている装置同士は、HTTPによる通信もFTPによる通信も行うことができる。
画像形成装置2は、コピー、スキャナ、ファックス、ネットワークプリンティング、ドキュメントサーバなどの様々な機能を集約した、画像に関連する種々の処理を行う画像処理装置である。複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)などと呼ばれることもある。
ネットワークプリンティングの機能によると、画像データを端末装置3から受信して画像を用紙に印刷することができる。「ネットワークプリンタ機能」または「PCプリント機能」などと呼ばれることもある。また、ドキュメントサーバの機能によると、画像形成装置2を使用する各ユーザに、「ボックス」または「個人ボックス」などと呼ばれる、パーソナルコンピュータにおけるフォルダまたはディレクトリなどに相当する記憶領域が与えられる。そして、ユーザは、自分のボックスに画像ファイルなどのドキュメントデータを保存しておくことができる。係る機能は、「ボックス機能」と呼ばれることもある。
図2に示すように、画像形成装置2は、CPU20a、RAM20b、ROM20c、不揮発性記憶媒体20d、制御用回路20e、操作パネル20f、スキャナ20g、印刷装置20h、および通信インタフェース20jなどによって構成される。
スキャナ20gは、原稿の用紙(以下、単に「原稿」と記載することがある。)に描かれている写真、文字、絵、図表などの画像を光学的に読み取って画像データを生成する装置である。印刷装置20hは、スキャナ20gで読み取った画像または端末装置3などから送信されてきた画像データに基づいて画像を用紙に印刷する装置である。
操作パネル20fは、図3に示すように、ディスプレイ20f1および複数の操作ボタンからなる操作ボタンユニット20f2などによって構成される。
操作ボタンユニット20f2は、数字、文字、または記号などを入力するための複数のキー、押下されたキーを認識するセンサ、および認識したキーを示す信号をCPU20aに送信する送信用回路などによって構成される。
ディスプレイ20f1は、この画像形成装置2を操作するユーザに対してメッセージまたは指示を与えるための画面、ユーザが所望する処理の種類および処理条件を入力するための画面、および処理の結果を示す画面などを表示する。本実施形態では、ディスプレイ20f1として、タッチパネルが用いられる。したがって、ディスプレイ20f1は、ユーザが指で触れたタッチパネル上の位置を検知し、検知結果を示す信号をCPU20aに送信する機能を備えている。
このように、操作パネル20fは、画像形成装置2を直接操作するユーザのためのユーザインタフェースの役割を果たしている。なお、端末装置3には、画像形成装置2に対して指令を与えるためのアプリケーションプログラムおよびドライバがインストールされている。したがって、ユーザは、端末装置3によって画像形成装置2を遠隔的に操作することができる。
図2の通信インタフェース20jは、画像形成装置2または端末装置3と通信を行うためのNIC(Network Interface Card)および企業内ネットワーク1の外部のファックス端末などと通信を行うためのモデムなどである。
制御用回路20eは、不揮発性記憶媒体20d、スキャナ20g、印刷装置20h、通信インタフェース20j、および操作パネル20fなどの装置を制御するための回路である。
不揮発性記憶媒体20dは、フラッシュメモリまたはハードディスクなどのような、不揮発性の、書換え可能な、大容量の記憶媒体である。不揮発性記憶媒体20dには、その画像形成装置2の設置されている支店のいずれかの部署に所属する従業員(ユーザ)ごとの個人ボックスKBのための領域が設けられている。個人ボックスKBには、その所有者であるユーザを識別するための情報(例えば、ユーザID)が対応付けられている。つまり、ユーザIDは、個人ボックスKBのボックス名としても用いられる。また、その画像形成装置2が設置されている支店にある部署ごとの部署アドレス帳情報8が記憶されている。部署アドレス帳情報8には、その部署を識別するための識別情報(例えば、部署名)が対応付けられている。部署アドレス帳情報8の内容については、後に説明する。
さらに、不揮発性記憶媒体20dには、図4に示すようなユーザ識別情報取得部201、ユーザ認証部202、ユーザプロファイル要求部203、ユーザプロファイル受信部204、ユーザプロファイル管理部205、ドキュメントデータ受信部206、ジョブ実行制御部207、ネットワーク環境判別部211、個人ボックス管理部212、アドレス変換部213、画面表示制御部214、ドキュメントデータ送信部215、ユーザプロファイル送信部221、およびユーザプロファイルデータベース230などの各機能を実現するためのプログラムおよびデータなどが格納されている。これらのプログラムは必要に応じてRAM20bに読み出され、CPU20aによってプログラムが実行される。これらのプログラムまたはデータの一部または全部を、ROM20cに記憶させておいてもよい。または、図4に示す機能の一部または全部を、制御用回路20eによって実現するようにしてもよい。
ユーザプロファイルデータベース230にはユーザプロファイル7が記憶されている。ユーザプロファイル7は、その画像形成装置2が設置されている支店のいずれかの部署に所属するユーザ(従業員)ごとに1つずつ与えられており、それを与えられたユーザのユーザIDと対応付けられている。
ユーザプロファイル7には、図5に示すように、所属部署情報7a、パスワード情報7b、ジョブ履歴情報7c、個人用アドレス帳情報7d、個人用端末装置情報7e、使用カウンタ情報7f、およびジョブチケット情報7gなどの情報が含まれている。
所属部署情報7aは、そのユーザプロファイル7に係るユーザが所属する部署の識別情報である。パスワード情報7bは、そのユーザのみが知り得るパスワード(キーワード)を示しており、そのユーザが企業内ネットワーク1のいずれかの装置を使用する際のユーザ認証のために用いられる。
ジョブ履歴情報7cは、そのユーザが過去に画像形成装置2に実行させたジョブの履歴すなわちログを示している。使用カウンタ情報7fは、そのユーザが画像形成装置2にジョブを実行させることによって消費したコピー用紙の枚数、通話料金、モノクロ印刷の回数、およびカラー印刷の回数などを示している。
個人用端末装置情報7eは、そのユーザが業務で使用する端末装置3に関する情報であって、例えば、端末装置3のMACアドレス、IPアドレス、およびそのユーザのその端末装置3におけるユーザ名などを示している。
ジョブチケット情報7gは、コピー、スキャン、またはファックスなどのジョブを実行する際のデフォルトの処理条件を示す。ユーザは、自分がよく指定する処理条件をジョブチケット情報7gに設定しておくことにより、画像形成装置2の操作の手間を軽減することができる。そのほか、ジョブチケット情報7gには、ログインした直後にどの画面を表示させるのかなどを設定しておくことができる。
個人用アドレス帳情報7dは、そのユーザがよくデータを送信する送信先(宛先)の名称およびアドレスが記載されている。本実施形態では、図6(a)〜(c)に示すように、3種類の個人用アドレス帳情報7dを用意することができる。以下、図6(a)〜(c)の各個人用アドレス帳情報7dを、それぞれ、個人ボックスアドレス帳情報7d1、端末装置アドレス帳情報7d2、ファックスアドレス帳情報7d3と区別して記載することがある。
図6(a)の個人ボックスアドレス帳情報7d1は、画像形成装置2に設けられている個人ボックスKBが送信先であるメンバを集めたアドレス帳である。その画像形成装置2自身に設けられている個人ボックスKBを記載する場合は、アドレスとして、例えば「U001」のように、ボックス名だけを記載すればよい。一方、他の画像形成装置2に設けられている個人ボックスKBについては、アドレスとして、例えば「192.168.1.2/U001」のように、当該他の画像形成装置2のIPアドレスなどの識別情報をボックス名とともに記載しておく必要がある。
図6(b)の端末装置アドレス帳情報7d2は、端末装置3に設けられているフォルダが送信先であるメンバを集めたアドレス帳であり、アドレスとして、端末装置3のIPアドレスおよびフォルダ名が示される。なお、画像形成装置2は、個人ボックスアドレス帳情報7d1に示される個人ボックスKBおよび端末装置アドレス帳情報7d2に示される端末装置3に対しては、FTPまたはHTTPのいずれかのプロトコルによってデータを送信する。また、デフォルトのプロトコルとして、FTPが用いられるものとする。
図6(c)のファックスアドレス帳情報7d3は、企業内ネットワーク1の外部のファックス端末が送信先であるものを集めたアドレス帳であり、アドレスとして、ファックス番号(電話番号)が示される。なお、画像形成装置2は、これらのファックス端末に対して、ファックスプロトコルによってデータを送信する。
企業Xのシステム管理者は、従業員が入社するときに、画像形成装置2または端末装置3を操作して、その従業員のユーザプロファイル7を生成するための作業を行う。すると、後に説明するユーザプロファイル管理部205によって、その従業員の配属先の支店に設置されている画像形成装置2のユーザプロファイルデータベース230に、その従業員のユーザプロファイル7が新規に登録される。
ユーザプロファイル7に含まれる情報のうち、パスワード情報7b、個人用アドレス帳情報7d、およびジョブチケット情報7gについては、そのユーザプロファイル7を所有するユーザ(従業員)が画像形成装置2または端末装置3を操作してその内容を変更することができる。所属部署情報7aおよび個人用端末装置情報7eについては、システム管理者がその内容を変更しまたは削除することができる。ジョブ履歴情報7cおよび使用カウンタ情報7fについては、画像形成装置2が、そのユーザから指令されたジョブを実行するごとにその内容を更新する。
なお、部署アドレス帳情報8についても、個人用アドレス帳情報7dと同様に、個人ボックスアドレス帳情報81、端末装置アドレス帳情報82、およびファックスアドレス帳情報83の3種類を用意することができる。部署アドレス帳情報8の変更および削除は、その部署アドレス帳情報8に係る部署に所属するユーザが行うことができる。部署アドレス帳情報8には、その部署の複数のメンバが共通してデータを送信することがある送信先を登録しておくことができる。
図4のユーザプロファイル管理部205は、ユーザプロファイル7をその画像形成装置2自身の(つまり、ローカルの)ユーザプロファイルデータベース230に登録しまたは削除し、要求されたユーザプロファイル7をローカルのユーザプロファイルデータベース230から呼び出し、またはローカルのユーザプロファイルデータベース230に記憶されているユーザプロファイル7の内容を変更しまたは削除するなど、ユーザプロファイル7に関する管理の処理を行う。
ユーザ識別情報取得部201は、これから画像形成装置2を使用しようとするユーザのユーザIDおよびパスワードを取得するための処理を行う。ユーザ認証部202は、そのユーザが正規のユーザであるか否かの認証すなわちユーザ認証のための処理を行う。
ユーザプロファイル要求部203は、ユーザ認証の対象のユーザのユーザプロファイル7が、ローカルのユーザプロファイルデータベース230に記憶されていない場合に、これをその画像形成装置2に送信するように他の画像形成装置2に対して要求する処理を行う。ユーザプロファイル受信部204は、他の画像形成装置2から送信されて来たユーザプロファイル7を受信するための処理を行う。つまり、ユーザプロファイル要求部203およびユーザプロファイル受信部204によって、ローカルにない必要なユーザプロファイル7を他の画像形成装置2からダウンロードする処理がなされる。
ユーザプロファイル送信部221は、他の画像形成装置2から要求されたユーザプロファイル7を当該他の画像形成装置2に送信するための処理を行う。
ネットワーク環境判別部211は、通信回線16の状況およびその画像形成装置2自身と他の画像形成装置2との間の通信の環境など、企業Xの企業内ネットワーク1のネットワーク環境に関する判別の処理を行う。
個人ボックス管理部212は、ローカルの不揮発性記憶媒体20dに個人ボックスKBを新たに生成し、ローカルの不揮発性記憶媒体20dに存在する個人ボックスKBにデータを追加し、その個人ボックスKBからデータを呼び出しまたは削除し、ローカルの不揮発性記憶媒体20dから個人ボックスKBを削除し、または個人ボックスKBに記憶されているデータに関する情報(例えば、データ名、データ量、または作成日など)を抽出するなど、個人ボックスKBの管理に関する処理を行う。そのほか、他の画像形成装置2の不揮発性記憶媒体20dに設けられている個人ボックスKBおよびその中のデータを、ローカルの不揮発性記憶媒体20dに移動させるための処理も行う。
ドキュメントデータ受信部206は、他の画像形成装置2から送信されて来たドキュメントデータなどのデータを受信するための処理を行う。ドキュメントデータ送信部215は、他の画像形成装置2から要求されたドキュメントデータなどのデータを当該他の画像形成装置2に送信するための処理を行う。
アドレス変換部213は、ダウンロードしたユーザプロファイル7に含まれる個人用アドレス帳情報7dに示されるアドレスを、その画像形成装置2の環境および属性に応じて修正(変換)する処理を行う。
画面表示制御部214は、所定のタイミングで所定の画面を操作パネル20fのディスプレイ20f1に表示させるための処理を行う。例えば、誰も画像形成装置2にログインしていないときは、ユーザIDおよびパスワードを入力するためのログイン用画面を表示させる。または、ユーザが所定のボタンを押した場合に、コピー、スキャン、またはファックス送信などのジョブの実行指令およびその処理条件を入力するためのジョブ指定画面を表示させる。
ジョブ実行制御部207は、従来と同様に、その画像形成装置2にログインしたユーザが操作パネル20fを操作して指定した処理内容(処理の種類および条件)の通りにジョブが実行されるように、その画像形成装置2のハードウェアおよびソフトウェアなどを制御する。
図1の端末装置3には、前に述べたように、画像形成装置2に対応したアプリケーションプログラムおよびドライバがインストールされている。端末装置3として、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、またはPDA(Personal Digital Assistant)などが用いられる。
次に、図4に示す画像形成装置2の各部の処理内容を、ユーザのログイン時の処理、ジョブの実行に関する処理、ユーザプロファイル7および個人ボックスKBの移動に関する処理、およびユーザのログアウト時の処理に大別して、さらに詳細に説明する。
〔ユーザのログイン時の処理〕
図7は一方の画像形成装置2から他方に画像形成装置2にユーザプロファイル7を提供する際の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
これから画像形成装置2を使用しようとするユーザは、その画像形成装置2からユーザ認証を受け、その画像形成装置2にログインしなければならない。そこで、ユーザは、画像形成装置2のディスプレイ20f1(図3参照)にログイン用画面が表示されている状態で、操作ボタンユニット20f2を操作して自分のユーザIDおよびパスワードを入力する。
すると、図4のユーザ識別情報取得部201は、そのユーザIDおよびパスワードを取得する。ユーザプロファイル管理部205は、取得されたユーザIDに対応するユーザプロファイル7をローカルのユーザプロファイルデータベース230から呼び出す。
そして、ユーザ認証部202は、取得されたパスワードと呼び出されたユーザプロファイル7のパスワード情報7bに示されるパスワードとを照合することによって、そのユーザが正規のユーザであるか否かの判別を行う。つまり、両パスワードが一致すれば、正規のユーザである旨の認証を与える。そして、画像形成装置2へのログインを認める。これにより、そのユーザは、ログアウトするまでの間、画像形成装置2を使用することができるようになる。一方、両パスワードが一致しなければ、不正なユーザであると判別し、ログインを認めない。この場合は、そのユーザは、その画像形成装置2を使用することができない。
ところで、その画像形成装置2が設置されている支店とは別の支店のいずれかの部署に所属するユーザ(従業員)のユーザプロファイル7は、通常は、その画像形成装置2のローカルのユーザプロファイルデータベース230には記憶されていない。したがって、このままでは、ユーザ認証部202は、出張などの用事で他の支店から訪れたユーザのユーザ認証を行うことができない。
そこで、ユーザ識別情報取得部201によって取得されたユーザIDに対応するユーザプロファイル7がローカルのユーザプロファイルデータベース230に記憶されていない場合は、ユーザプロファイル要求部203は、そのユーザIDに対応するユーザプロファイル7をその画像形成装置2に送信するように、他の画像形成装置2に対して要求する。そして、そのユーザプロファイル7をユーザプロファイル受信部204が受信すると、ユーザ認証部202は、そのユーザプロファイル7を用いて、他の支店から訪れたそのユーザのユーザ認証を行う。
ここで、A支店のいずれかの部署に所属するユーザがB支店に訪れて画像形成装置2Bを使用しようとした場合を例に、ユーザプロファイル7のやり取りの手順を、図7を参照して説明する。
B支店に訪れたユーザは、画像形成装置2Bにログインするために、自分のユーザIDおよびパスワードを画像形成装置2Bに入力する。すると、前に説明したように、画像形成装置2Bにおいて、そのユーザIDに対応するユーザプロファイル7をローカルのユーザプロファイルデータベース230の中から検索する処理がユーザプロファイル管理部205によって実行される。しかし、他の支店のユーザのユーザプロファイル7は、通常は、見つからない。そこで、そのような場合は、画像形成装置2Bのユーザプロファイル要求部203は、他の支店の画像形成装置2(ここでは、画像形成装置2A)に対して、そのユーザIDに対応するユーザプロファイル7があるか否かの確認を行う(#101)。
確認を求められた画像形成装置2Aのユーザプロファイル管理部205は、そのユーザIDに対応するユーザプロファイル7が画像形成装置2A自身のユーザプロファイルデータベース230に記憶されているか否かを確認し、その結果を画像形成装置2Bに対して回答する(#102)。
画像形成装置2Bにおいて、そのユーザプロファイル7が記憶されている旨の回答が画像形成装置2Aから得られた場合は(#103でYes)、ユーザプロファイル要求部203は、そのユーザプロファイル7を画像形成装置2Bに送信するように画像形成装置2Aに対して要求する(#104)。
要求を受けた画像形成装置2Aにおいて、ユーザプロファイル管理部205はそのユーザプロファイル7をローカルのユーザプロファイルデータベース230から呼び出し、ユーザプロファイル送信部221は、そのユーザプロファイル7を画像形成装置2Bに送信する(#105)。
そして、画像形成装置2Bにおいて、ユーザプロファイル受信部204は、画像形成装置2Aから送信されて来たユーザプロファイル7を受信し、ユーザ認証部202は、そのユーザプロファイル7を用いて、B支店に訪れたそのユーザのユーザ認証を行う。また、ユーザプロファイル受信部204は、そのユーザが所属する部署の部署アドレス帳情報8も、画像形成装置2Aからダウンロードし、不揮発性記憶媒体20dに一時的に記憶させる。そのユーザが所属する部署は、ダウンロードしたユーザプロファイル7の所属部署情報7aに示されている。したがって、その所属部署情報7aを画像形成装置2Aに対して提示することによって、必要な部署アドレス帳情報8をダウンロードすればよい。
ユーザプロファイル管理部205は、ダウンロードしたユーザプロファイル7をユーザプロファイルデータベース230に記憶させる。ユーザプロファイル7は、ユーザプロファイルデータベース230に一時的に記憶される場合もあれば、指令のない限りずっと記憶される場合もある。これについては、後に説明する。
さらに、ユーザプロファイル管理部205は、画像形成装置2Aに対して、そのユーザプロファイル7の使用を禁止するように通知する。すると、画像形成装置2Aのユーザプロファイル管理部205は、そのユーザプロファイル7の使用を禁止する。これにより、そのユーザIDによる二重ログインが排除される。
一方、画像形成装置2Bにおいて、B支店に訪れたユーザが入力したユーザIDに対応するユーザプロファイル7が記憶されていない旨の回答を画像形成装置2Aから受けた場合は(#103でNo)、ユーザ認証部202は、そのユーザのユーザ認証を行うことができない。よって、そのユーザのログインを拒否する。
なお、本実施形態の企業XはB支店以外にはA支店しか支店を有していないので、図7では、画像形成装置2Aに対してのみ、ユーザプロファイル7の有無の確認、ユーザプロファイル7の送信の要求、およびユーザプロファイル7の使用の禁止の通知の各処理を行う場合を説明したが、A支店以外にも支店がある場合は、画像形成装置2Bは、これらの支店の画像形成装置2に対しても、同様の処理を行う。そして、これらの支店の画像形成装置2は、画像形成装置2Bからの要求に従って、画像形成装置2Aと同様の処理を行う。そして、画像形成装置2Bは、他のいずれかの画像形成装置2からユーザプロファイル7が得られれば、それを用いてユーザ認証を行う。他のいずれの画像形成装置2からもユーザプロファイル7が得られなかった場合は、ユーザのログインを拒否する。
〔ジョブの実行に関する処理〕
図8はジョブ指定画面HG2の例を示す図、図9はアドレス帳画面HG3の例を示す図、図10はボックスデータ一覧画面HG4の例を示す図である。
図4に戻って、ユーザのログインを認めた後、画面表示制御部214は、そのユーザのユーザプロファイル7のジョブチケット情報7gに基づいて画面の表示を行う。すなわち、前に述べたように、ジョブチケット情報7gには、ログインした直後に表示させるべき画面が設定されている。そこで、画面表示制御部214は、ユーザのログイン後、ジョブチケット情報7gに示される画面を初期画面として最初に表示させる。ただし、ダウンロードしたユーザプロファイル7のジョブチケット情報7gを使用する場合は、初期画面の前に別の画面(図11参照)を表示させる場合がある。これについては、後に説明する。
また、ジョブチケット情報7gには、ジョブを実行する際の、そのユーザにとってのデフォルトの処理条件が示されているが、画面表示制御部214は、そのデフォルトの処理条件が予め指定された状態でジョブ指定画面を表示させる。例えば、コピージョブを指定するためのジョブ指定画面を表示する場合は、ジョブチケット情報7gに示されるデフォルトのコピー条件(用紙の種類、片面コピーか両面コピーか、カラーコピーかモノクロコピーか、ステープル仕上げの有無、パンチ穴仕上げの有無、2in1または4in1などの集約印刷を行うか否かなど)が予め指定された状態で表示する。ユーザは、操作パネル20fを操作することによって、操作ボタンユニット20f2の表示を、コピージョブを指定するためのジョブ指定画面、ファックス送信ジョブを指定するためのジョブ指定画面、スキャンジョブを指定するためのジョブ指定画面など、自分の所望するジョブの種類に対応したジョブ指定画面に自由に切り換えることができる。
しかし、他の画像形成装置2からダウンロードしたユーザプロファイル7のジョブチケット情報7gに示されるデフォルトの処理条件の全部または一部が、画像形成装置2の仕様に合わない場合がある。例えば、ジョブチケット情報7gにはデフォルトの処理条件として4in1の集約印刷が示されているが、その画像形成装置2には、4in1の集約印刷の機能が備わっていない場合などである。
このような場合は、ユーザプロファイル管理部205は、そのデフォルトの処理条件に最も近い処理条件でありかつその画像形成装置2に備わっている機能によって実現可能である処理条件に、ジョブチケット情報7gを書き換えて修正する。例えば、デフォルトの処理条件として4in1の集約印刷が示されているにも関わらず、その画像形成装置2にその機能が備わっていない場合は、2in1の集約印刷を示すように、そのデフォルトの処理条件を修正する。そして、画面表示制御部214は、書き換えられたジョブチケット情報7gに示される処理条件が予め指定された状態で、ジョブ指定画面を表示する。
ユーザは、自分の所望するジョブに対応するジョブ指定画面に切り換え、そのジョブ指定画面が表示された状態で自分の所望する処理条件を指定することによって、画像形成装置2に対してジョブの実行指令を与えることができる。上述の通り、ジョブ指定画面にはそのユーザが普段よく指定する処理条件が予め指定されているので、ユーザは、必要に応じてこれを自分の所望する内容に変更すればよい。そして、変更後、所定のボタンを押すなどして、処理条件を確定させる。
すると、ジョブ実行制御部207は、従来と同様に、ユーザが指定した処理内容(処理の種類および条件)の通りにジョブが実行されるように、画像形成装置2のハードウェアおよびソフトウェアなどを制御する。
また、ユーザは、原稿をスキャンして画像データを入力しその画像データを個人ボックスKBに送信するスキャンジョブ(以下、「SCAN TO BOXジョブ」と記載する。)を所望する場合は、自分のユーザプロファイル7の個人ボックスアドレス帳情報7d1または自分の所属する部署の部署アドレス帳情報8の個人ボックスアドレス帳情報81に登録されているメンバの中から今回の画像データの送信先を選択して指定することができる。
すなわち、ユーザが所定の操作を行うと、ディスプレイ20f1には、図8に示すような、SCAN TO BOXジョブの指定を行うためのジョブ指定画面HG2が画面表示制御部214によって表示される。ここで、ユーザは、そのジョブ指定画面HG2の中のボタンを押してスキャンの解像度およびカラーに関する処理条件の指定を行う。さらに、原稿の画像データの送信先を指定する。送信先を個人ボックスアドレス帳情報7d1(図6(a)参照)または個人ボックスアドレス帳情報81に示されるメンバの中から選択したい場合は、「アドレス帳」ボタンを押す。
すると、ディスプレイ20f1の表示が、画面表示制御部214によって、ジョブ指定画面HG2から図9のようなアドレス帳画面HG3に切り換えられる。アドレス帳画面HG3には、そのユーザのユーザプロファイル7の個人ボックスアドレス帳情報7d1または所属する部署の部署アドレス帳情報8に示されるメンバのごとのボタンが設けられている。ボタンには、そのメンバの名称が記されている。ここで、ユーザは、自分の所望する送信先の名称のボタンを押して選択し、「OK」ボタンを押す。これにより、原稿の画像データの送信先として、アドレス帳画面HG3で選択された名称に対応するアドレスが指定される。また、ディスプレイ20f1の表示が、再びジョブ指定画面HG2に切り換えられる。
そして、ユーザが「Start」ボタンを押すと、ジョブ実行制御部207は、指定された処理条件でジョブが実行されるように、画像形成装置2の各部の制御を開始する。
同様に、ユーザは、原稿をスキャンして画像データを入力しその画像データを端末装置3に送信するジョブ(以下、「SCAN TO PCジョブ」と記載する。)を所望する場合は、自分の端末装置アドレス帳情報7d2または自分の所属する部署の端末装置アドレス帳情報82に登録されている名称を送信先の候補として操作パネル20fに表示させ、その中から送信先を選択して指定することができる。または、外部のファックス端末に画像データをファックス送信するジョブ(以下、「ファックス送信ジョブ」と記載する。)を所望する場合は、自分のファックスアドレス帳情報7d3または自分の所属する部署のファックスアドレス帳情報83の登録されている名称を送信先の候補として操作パネル20fに表示させ、その中から送信先を選択して指定することができる。
ところで、他の支店から訪れたユーザから指令されたSCAN TO BOXジョブを実行する際に、ユーザが選択した送信先のアドレスとして、個人用アドレス帳情報7dまたは部署アドレス帳情報8に示されるアドレスをそのまま用いると、画像データが上手く送信できないことがある。なぜなら、そのようなユーザの個人用アドレス帳情報7dおよび所属する部署アドレス帳情報8は、他の支店の画像形成装置2からダウンロードしたものであるが、その中には、当該他の画像形成装置2におけるローカルなアドレスつまり相対的なアドレスが含まれているからである。
例えば、図6(a)に示すような個人ボックスアドレス帳情報7d1がA支店の画像形成装置2AからB支店の画像形成装置2Bにダウンロードされたとする。この個人ボックスアドレス帳情報7d1には、「U012」のようにボックス名だけがアドレスとして示されるものがあるが、これは、前に述べたように、個人ボックスKBの設置場所すなわち画像形成装置2Aの識別情報が省略されている。
しかし、画像形成装置2Bは、このようなボックス名だけのアドレスが画像データの送信先としてそのまま指定されると、画像形成装置2Bに設けられている個人ボックスKBであると認識してしまうので、上手く画像データを個人ボックスKBに送信することができない。
そこで、アドレス変換部213は、ユーザが指定したアドレスが相対的なものであれば、これを絶対的なアドレスに変更する。例えば、「U012」を「192.168.1.2/U012」のように変換する。
そして、ジョブ実行制御部207は、アドレス変換部213によって変換されたアドレスを用いて、画像データを個人ボックスKBに送信する処理を実行する。
アドレス変換部213による変換処理は、ジョブ実行制御部207によってジョブの実行処理がなされるごとに必要に応じて実行してもよいし、他の画像形成装置2からユーザプロファイル7または部署アドレス帳情報8をダウンロードしたときに実行するようにしてもよい。
また、SCAN TO BOXジョブまたはSCAN TO PCジョブの際に、企業内ネットワーク1の環境によっては、画像データを上手く送信先に送信できないことがある。例えば、FTPによる通信を禁止するようにルータ5が設定されている環境下において、画像形成装置2がFTPによって他の支店の装置に画像データを送信しようとしても、失敗する。そこで、ジョブ実行制御部207は、送信先が他の支店の装置である場合は、画像データの送信に使用するプロトコルをFTPからHTTPに変更する。
また、ユーザは、従来と同様に、自分の個人ボックスKBに記憶されているドキュメントデータなどのデータを使用して、書類の印刷または転送などのジョブを画像形成装置2に実行させることができる。この際に、ユーザは、図10のような、自分の個人ボックスKBに記憶されているデータの一覧を示すボックスデータ一覧画面HG4の中から、自分の使用したいデータを選択することができる。なお、ボックスデータ一覧画面HG4の中の1つのボタンは、個人ボックスKBに記憶されているデータのいずれか1つに対応している。ボタンの名称は、データ名(ファイル名)を示している。
しかし、前に述べたように、ユーザの個人ボックスKBは、そのユーザが所属する(つまり、ホームの)画像形成装置2の不揮発性記憶媒体20dに設けられている。そこで、ユーザがホーム以外の支店の画像形成装置2において自分の個人ボックスKBに記憶されているデータを使用する場合は、これを使用可能にするために、画像形成装置2は、例えば次のような処理を行う。
A支店のユーザが今、B支店の画像形成装置2Bにログインしているとする。画像形成装置2Bは、ユーザが所定の操作を行うと、ボックスデータ一覧画面HG4を表示するための処理を開始する。すなわち、画像形成装置2Bにおいて、個人ボックス管理部212は、そのユーザのユーザIDと同じボックス名を有する個人ボックスKBをローカルの不揮発性記憶媒体20dから検索する。しかし、前に述べたように、他の支店から訪れているユーザの個人ボックスKBは見つからない。そこで、個人ボックス管理部212は、A支店の画像形成装置2Aに対して、そのユーザのユーザIDを提示して、個人ボックスKBに格納されているデータの一覧情報を要求する。
すると、画像形成装置2Aにおいて、個人ボックス管理部212は、提示されたユーザIDと同じボックス名を有する個人ボックスKBの中のデータの情報を抽出し、一覧情報を生成する。そして、これを、要求元である画像形成装置2Bに送信する。
画像形成装置2Bにおいて、画面表示制御部214は、画像形成装置2Aから送信されて来た一覧情報に基づいてボックスデータ一覧画面HG4を表示する。いずれかのデータに対応するボタンが押されると、そのデータが選択されたことを認識する。そして、ジョブを実行する際に、ドキュメントデータ受信部206は、選択されたそのデータを画像形成装置2Aから受信し、ジョブ実行制御部207は、そのデータを用いてジョブを実行する。
つまり、この場合のボックスデータ一覧画面HG4の各ボタン(ただし、「OK」ボタンおよび「Cancel」ボタンを除く)は、ハイパーリンクのような役割を果たしている。
ジョブ実行制御部207によってジョブが実行された後、ユーザプロファイル管理部205は、そのジョブの指令を与えたユーザのユーザプロファイル7のジョブ履歴情報7cに今回のジョブの履歴を書き加える。また、今回のジョブで消費したコピー用紙の枚数、通話料金、モノクロ印刷の回数、およびカラー印刷の回数などを使用カウンタ情報7fに加算する。
〔ユーザプロファイル7および個人ボックスKBの移動に関する処理〕
図11はプロファイル移動選択画面HG1の例を示す図、図12はユーザプロファイル7および個人ボックスKBの移動処理の流れの例を説明するフローチャートである。
前に説明したように、ユーザ認証部202がユーザのログインを認めた後、画面表示制御部214は、通常は、そのユーザのユーザプロファイル7のジョブチケット情報7gに基づいて初期画面の表示を行う。
ただし、他の画像形成装置2からダウンロードしたユーザプロファイル7を使用してそのユーザのユーザ認証を行った場合は、画面表示制御部214は、初期画面を表示する前に、図11に示すようなプロファイル移動選択画面HG1を表示させ、今回のその画像形成装置2の使用が一時的なものであるのか、それとも今後はその画像形成装置2をメインに使用するのかを選択させる。ユーザは、出張などの一時的な用事でその画像形成装置2を使用する場合は「一時使用」ボタンを押して前者を選択する。転勤などのために今後はその画像形成装置2をメインに使用することになった場合は「メイン使用」ボタンを押して後者を選択する。
ユーザプロファイル管理部205は、「一時使用」ボタンが押された場合は、そのユーザプロファイル7を所定の期間だけローカルのユーザプロファイルデータベース230に記憶させておく。そして、その所定の期間が経過したら、ユーザプロファイル7をローカルのユーザプロファイルデータベース230から削除する。
一方、「メイン使用」ボタンが押された場合は、ユーザプロファイル7をダウンロードした画像形成装置2(つまり、現在ユーザがログインしている画像形成装置2)およびそのユーザプロファイル7の送信元の画像形成装置2は、そのユーザのユーザプロファイル7および個人ボックスKBを後者から前者へ移動させるための処理を行う。以下、画像形成装置2Bにログインしているユーザのユーザプロファイル7および個人ボックスKBを画像形成装置2Aから画像形成装置2Bに移動させる場合を例に、両画像形成装置2の処理の手順を、図12を参照して説明する。
画像形成装置2Bにおいて、ユーザプロファイル管理部205は、画像形成装置2Aからダウンロードしたユーザプロファイル7をローカルのユーザプロファイルデータベース230にそのユーザのユーザIDと対応付けて記憶させる(#121)。ただし、ここでは、一時使用の場合と異なり、記憶しておく所定の期間(以下、「有効期限」と記載する。)を設けない。そして、画像形成装置2Aに対して、そのユーザプロファイル7を削除するように指令を与える(#122)。
指令を受けた画像形成装置2Aにおいて、ユーザプロファイル管理部205は、そのユーザプロファイル7をローカルのユーザプロファイルデータベース230から削除する(#123)。そして、削除が完了した旨を画像形成装置2Bに対して通知する(#124)。
画像形成装置2Bにおいて、個人ボックス管理部212は、そのユーザの個人ボックスKBを新規に生成するとともに(#125)、画像形成装置2Aに現在設けられているそのユーザの個人ボックスKBに記憶されているドキュメントデータなどのデータをすべて画像形成装置2Bに送信するように、画像形成装置2Aに対して要求する(#126)。
画像形成装置2Aにおいて、ドキュメントデータ送信部215は、画像形成装置2Bから要求されたデータを画像形成装置2Bに送信する(#127)。そして、個人ボックス管理部212は、そのユーザの個人ボックスKBを、これに記憶されているデータごと画像形成装置2Aから削除する(#128)。
画像形成装置2Bにおいて、ドキュメントデータ受信部206は、要求したデータを画像形成装置2Aから受信し、個人ボックス管理部212は、そのデータを、ステップ#125で生成したそのユーザの個人ボックスKBに記憶させる(#129)。
なお、ダウンロードした部署アドレス帳情報8は、「一時使用」ボタンが押された場合も「メイン使用」ボタンが押された場合も、不揮発性記憶媒体20dに一時的に記憶し、有効期間の経過後に削除する。
〔ユーザのログアウト時の処理〕
画像形成装置2は、その画像形成装置2に現在ログイン中であるユーザがログアウトの操作を行った場合またはそのユーザが最後に操作を行ってから所定の時間が経過した場合は、そのユーザをその画像形成装置2からログアウトさせる。これにより、ユーザは、再びユーザ認証を受けなければ、その画像形成装置2を使用することができなくなる。
また、今回のログインの際にユーザ認証部202が使用したそのユーザのユーザプロファイル7がユーザプロファイルデータベース230に一時的に記憶されている場合(つまり、そのユーザが今回のログインの際に図11のプロファイル移動選択画面HG1の「一時使用」ボタンを押した場合)は、ユーザプロファイル管理部205は、他の画像形成装置2に対して、そのユーザプロファイル7の使用の禁止を解除するように指令する。すると、他の画像形成装置2のユーザプロファイル管理部205は、そのユーザプロファイル7の使用の禁止を解除する。
なお、前に説明したように、ユーザプロファイル管理部205は、一時的にユーザプロファイルデータベース230に記憶されているユーザプロファイル7を有効期限の経過後に削除するが、その前に、そのユーザプロファイル7の中のジョブ履歴情報7cおよび使用カウンタ情報7fを、その送信元である他の支店の画像形成装置2に送信しておく。当該他の支店の画像形成装置2のユーザプロファイル管理部205は、ローカルのユーザプロファイルデータベース230に記憶しているユーザプロファイル7のジョブ履歴情報7cおよび使用カウンタ情報7fに、受信したジョブ履歴情報7cおよび使用カウンタ情報7fの内容を書き加える。
図13および図14は画像形成装置2の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
次に、ユーザが操作を開始してから終了するまでの間における画像形成装置2の処理の流れを、ユーザがB支店の画像形成装置2Bを操作する場合を例に、フローチャートを参照して説明する。
図13において、画像形成装置2Bは、ログイン用画面を表示しているときにユーザがユーザIDおよびパスワードを入力すると、そのユーザIDおよびパスワードを取得し(#1)、ローカルのユーザプロファイルデータベース230にそのユーザIDに対応するユーザプロファイル7が記憶されているか否かをチェックする(#2)。
そのユーザプロファイル7が記憶されている場合は(#2でYes)、そのユーザプロファイル7のパスワード情報7bに示されるパスワードと、ステップ#1で取得したパスワードとを照合することによって、そのユーザの認証を行う(#3)。認証できた場合は(#4でYes)、そのユーザのログインを認め、図14のステップ#15に進んで、ユーザの指令に従ってジョブを実行する。ステップ#15以降の処理については、後に説明する。認証できなかった場合は(#4でNo)、ステップ#1に戻って、再度、ログイン用画面を表示し、ユーザIDおよびパスワードが入力されるのを待つ。
一方、ステップ#1で取得されたユーザIDに対応するユーザプロファイル7がローカルのユーザプロファイルデータベース230に記憶されていない場合は(#2でNo)、そのユーザプロファイル7を画像形成装置2Bに送信するように、他の画像形成装置2に対して要求する(#5)。要求の処理の手順は、前に図7で説明した通りである。また、ユーザプロファイル7とともに、そのユーザの所属する部署の部署アドレス帳情報8も要求し受信する。
要求したユーザプロファイル7を、いずれかの画像形成装置2から受信することができたら(#6でYes)、そのユーザプロファイル7のパスワード情報7bに示されるパスワードとステップ#1で取得したパスワードとを照合することによって、そのユーザの認証を行う(#7)。認証できなかった場合は(#8でNo)、ステップ#1に戻って、再度、ログイン用画面を表示し、ユーザIDおよびパスワードが入力されるのを待つ。また、要求したユーザプロファイル7をいずれの画像形成装置2からも受信することができなかった場合も同様に(#6でNo)、ステップ#1に戻って、ユーザIDおよびパスワードが入力されるのを待つ。
他の画像形成装置2から受信(ダウンロード)したユーザプロファイル7を用いてユーザの認証ができた場合は(#8でYes)、そのユーザのログインを認める。そして、そのユーザプロファイル7に含まれる情報を、画像形成装置2Bにおいてそのまま使用することができるか否かを判別する(#9)。本実施形態では、個人ボックスアドレス帳情報7d1(図6(a)参照)および使用カウンタ情報7fをそのまま使用することができるか否かを判別する。
個人ボックスアドレス帳情報7d1については、相対的なアドレスが示されている場合に、そのまま使用することができないと判別する。この場合は(#9でNo)、その相対的なアドレスを絶対的なアドレスに変更して修正する(#10)。例えば、「U012」を「192.168.1.2/U012」のように変換する。
また、使用カウンタ情報7fについては、それに示される処理条件によるジョブが画像形成装置2Bにおいて実現不能である場合に、そのまま使用することができないと判別する。この場合は(#9でNo)、その処理条件を、それに最も近くかつ画像形成装置2Bにおいて実現可能なものに変換する。例えば、処理条件として4in1の集約印刷が示されているにも関わらず、画像形成装置2Bにその機能が備わっていない場合は、その処理条件を、2in1の集約印刷などを示すように修正する。なお、どのような処理条件がジョブチケット情報7gに示されている場合にどのような処理条件に修正すべきかは、定義ファイルなどに予め設定しておき、これを不揮発性記憶媒体20dなどに記憶させておけばよい。そして、修正処理の際にこれを呼び出して参照すればよい。
また、ユーザのログイン後、図11のプロファイル移動選択画面HG1を表示し、今回の画像形成装置2Bの使用が一時的なものであるか、それとも今後は画像形成装置2Bをメインに使用するのかを、ユーザに選択させる(図14の#11)。ユーザが前者を選択した場合は(#12でYes)、図13のステップ#5でダウンロードしたユーザプロファイル7をローカルのユーザプロファイルデータベース230に一時的に記憶させる(#13)。つまり、有効期限を定めて記憶させる。一方、ユーザが後者を選択した場合は(#12でNo)、そのユーザのユーザプロファイル7を、元の画像形成装置2から画像形成装置2Bに移動させる。また、そのユーザの個人ボックスKBおよびその中のデータも、当該元の画像形成装置2から画像形成装置2Bに移動させる。ユーザプロファイル7および個人ボックスKBなどの移動の処理は、前に図12で説明した通りである。なお、そのユーザの所属する部署の部署アドレス帳情報8は、一時的な使用か否かに関わらず、有効期限になるまで不揮発性記憶媒体20dに一時的に記憶させておく。
ステップ#13またはステップ#14の処理の後、または、図13のステップ#4でYesの場合に、画像形成装置2Bは、二重ログインを防止するために、ログインしたユーザのユーザプロファイル7の使用を禁止するように他の画像形成装置2に対して指令する(#15)。
そして、画像形成装置2Bは、ログインしたユーザのユーザプロファイル7のジョブチケット情報7gに基づいて、そのユーザが予め指定している画面を初期画面として表示する(#16)。これにより、ユーザは、自分の所望するジョブを画像形成装置2Bに実行させることができるようになる。ユーザは、自分の所望するジョブの種類に応じて適宜、ジョブ指定画面を切り換えることができる。そして、適当なジョブ指定画面が表示された状態で、自分の所望するジョブの処理条件を指定する。また、SCAN TO BOXジョブ、SCAN TO PCジョブ、またはファックス送信ジョブを所望する場合は、自分のユーザプロファイル7または部署アドレス帳情報8に登録されているメンバの中から送信先を選択して指定することができる(図9参照)。
画像形成装置2Bは、ユーザが指定した処理内容に基づいてジョブを実行する(#18)。ただし、SCAN TO BOXジョブまたはSCAN TO PCジョブの実行を試みたが、データ送信が不能な場合は、プロトコルを変更する。例えば、画像形成装置2Bが設けられているB支店の支店ネットワーク10Bの外の画像形成装置2または端末装置3にデータ送信を行おうとしている場合は、プロトコルをFTPからHTTPに変更してリトライする。
画像形成装置2Bは、そのユーザがログアウトするまで、ステップ#16〜#18の処理を必要に応じて実行する。
ユーザがログアウトしたら(#19でYes)、画像形成装置2Bは、そのユーザのユーザプロファイル7の使用を解除するように、他の画像形成装置2に対して指令する(#20)。
また、図13および図14のフローチャートとは別に、画像形成装置2Bは、ユーザプロファイル7および部署アドレス帳情報8の有効期限を監視している。そして、適宜、有効期限切れのユーザプロファイル7および部署アドレス帳情報8を削除する。
なお、上に述べたように、画像形成装置2Bは、一時的に画像形成装置2Bを使用する他の支店のユーザのユーザプロファイル7およびそのユーザの所属する部署の部署アドレス帳情報8を、有効期限が過ぎるまで記憶しておく。よって、これらのユーザプロファイル7および部署アドレス帳情報8を当該他の支店の画像形成装置2から一度ダウンロードしたら、有効期限前までは、再度ダウンロードする必要はない。
本実施形態によると、ユーザが普段使用する画像形成装置2の設定を、ユーザがときどき使用する画像形成装置2に的確に適用することができる。特に、本実施形態の画像形成装置2は、他の画像形成装置2から取得したユーザプロファイル7の内容を、画像形成装置2の仕様または環境などに応じて書き換えるので、両画像形成装置2の仕様または環境が異なる場合であっても、このユーザプロファイル7を的確に適用することができる。
また、他の画像形成装置2から取得したユーザプロファイル7を、有効期限を定めて記憶し、この有効期限が過ぎれば削除する。これにより、ユーザが当該他の画像形成装置2を使用した後の、そのユーザのユーザプロファイル7のセキュリティを高めることができる。また、記憶媒体を効率的に利用することができる。
また、転勤などに伴ってユーザの勤務先の支店が変わった場合に、そのユーザのユーザプロファイル7および個人ボックスKBを簡単に新たな支店の画像形成装置2に移動させることができる。
本実施形態では、アドレス帳画面HG3(図9参照)には、送信先の候補として、個人用アドレス帳情報7dまたは部署アドレス帳情報8に登録されているメンバを提示したが、他の情報に基づいてメンバを提示してもよい。例えば、ジョブ履歴情報7cに示される送信履歴に基づいて、過去の所定の期間にデータを送信したことのある相手を提示してもよい。
端末装置3を操作することによって画像形成装置2を使用する場合にも、上に説明した処理を適用することができる。例えば、A支店のユーザが、自分の携帯型の端末装置3を持ってB支店に出張し、その端末装置3を操作することによってB支店の画像形成装置2BにPCプリントのジョブを実行させる場合にも適用することができる。
この場合は、端末装置3は、PCプリントのジョブの実行指令を画像形成装置2Bに対して与える前に、そのユーザのユーザIDおよびパスワードを画像形成装置2Bに送信することによって、ユーザ認証を求める。すると、画像形成装置2Bは、ユーザが操作パネル20fを直接操作する場合と同様に、画像形成装置2Aからそのユーザのユーザプロファイル7などをダウンロードし、ユーザ認証の処理を行う。さらに、画像形成装置2Bは、ダウンロードしたユーザプロファイル7の内容を、画像形成装置2Bの環境および仕様に応じて修正する。そして、端末装置3は、修正されたユーザプロファイル7を画像形成装置2Bから取得する。これにより、ユーザは、修正されたユーザプロファイル7を参照し、適切な処理条件を画像形成装置2Bに対して指定することができる。
また、ユーザ認証を、パスワードの代わりに端末装置3のMACアドレスを用いてもよい。つまり、端末装置3は、画像形成装置2Bに対してパスワードの代わりに端末装置3自身のMACアドレスを送信する。画像形成装置2Bは、画像形成装置2Aからダウンロードしたユーザプロファイル7の個人用端末装置情報7eに示されるMACアドレスと端末装置3から取得(受信)したMACアドレスとを照合し、両者が一致すれば、正規のユーザであると認証する。または、パスワードおよびMACアドレスの両方を併用してもよい。
ダウンロードしたユーザプロファイル7の有効期限を、そのユーザプロファイル7の使用頻度の高さに応じて、延長するようにしてもよい。つまり、他の支店から訪れたユーザが画像形成装置2を多く使用すれば、その分、ユーザプロファイル7の有効期限を延長する。
本実施形態では、他の支店のユーザの、一時的に記憶しているユーザプロファイル7を、有効期限が過ぎた後に削除したが、他のタイミングでも削除するようにしてもよい。例えば、A支店のユーザのユーザプロファイル7がB支店の画像形成装置2Bに一時的に記憶されている場合において、各画像形成装置2は、次のような処理を行う。そのユーザがホーム(すなわち、A支店)に戻ってホームの画像形成装置2Aでログインしたときに、画像形成装置2Aは、その旨の通知を画像形成装置2Bに対して行う。画像形成装置2Bは、係る通知を受けると、有効期限に関わらず、そのユーザのユーザプロファイル7を削除する。
本実施形態では、支店ネットワーク10と通信回線16との間にルータ5を設けたが、さらに、プロキシサーバまたはファイアウォールを設けてもよい。この場合は、画像形成装置2は、他の支店の画像形成装置2からダウンロードしたユーザプロファイル7の内容を、プロキシサーバまたはファイアウォールの設定にも対応して変更するようにすればよい。
本実施形態では、ネットワーク環境に応じてデータの通信のプロトコルを変更したが、ネットワーク環境に応じて他の事項の変更を行ってもよい。例えば、ネットワーク環境に応じて、SCAN TO PCジョブをHTTPで行うときのプロキシの設定を変更したり、SCAN TO PCジョブをFTPで行うときのPassiveモードを切り換えたりしてもよい。
本実施形態では、本発明に係る画像処理システムを企業に適用した場合を例に説明したが、役所、学校、その他種々の団体にも適用することができる。
その他、企業内ネットワーク1、画像形成装置2の全体または各部の構成、処理内容、処理順序などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。