JP4649748B2 - 2波長用位相板および光ヘッド装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は2波長用位相板および光ヘッド装置に関し、特に660nm波長帯および790nm波長帯の2種の光を透過する2波長用位相板、およびこの2波長用位相板を用いた情報の記録および/または再生を行う光ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
CDやDVDなどの光ディスク、または光磁気ディスクなどの光記録媒体に情報の記録および/または再生を行う光ヘッド装置において、光源である半導体レーザからの出射光は対物レンズにより光記録媒体上に集光され、光記録媒体で反射して戻り光となる。この戻り光はビームスプリッタを用いて光検出器である受光素子に導かれ、光記録媒体上の情報が電気信号に変換される。
【0003】
同一の光ヘッド装置を用いて、規格の異なる光記録媒体であるCDおよびDVDの情報の記録および/または再生を行うため、CDとDVDとの互換光ヘッド装置(以下、単に互換光ヘッド装置という)が製品化されている。光記録媒体の記録層として、光の反射・吸収に対して波長依存性の大きい媒質を用いる、CD−Rなどの記録および/または再生を前提とした光記録媒体においては、CDに用いられる半導体レーザは790nm波長帯のものである。このとき、DVDには660nm波長帯の半導体レーザが用いられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
CDおよびDVDの記録および/または再生特性を向上するために、半導体レーザからの出射光を光記録媒体に集光するとき、出射光の偏光状態を制御する方法が提案されている。特に、DVD再生時のジッター特性を向上するため、出射光の光路中に1/2波長板または旋光子を挿入し、DVDのトラック方向に対し、45°の振動方向を有する直線偏光を入射することが有効である。
【0005】
一方、CD記録時の半導体レーザ出力の安定化(これにより、記録特性が向上)のために、半導体レーザから光記録媒体に至る光路中に、1/4波長板を挿入することが有効である。すなわち、この挿入により半導体レーザからの出射光と半導体レーザへの戻り光とによる不要な干渉を防止できる。このとき、半導体レーザの出射光は光記録媒体への集光時に円偏光となっている。
【0006】
しかし、互換光ヘッド装置において、上述のようにCDおよびDVDに対し、それぞれ異なる偏光状態で出射光を集光させるためには、次のことを行う必要があった。すなわち、CD用の半導体レーザ出射光の光路とDVD用の半導体レーザ出射光の光路とで共通(共有)となっていない光路上に、それぞれの偏光状態を制御するための位相板を配設する。
【0007】
この配設が、互換光ヘッド装置における部品数の低減と小型化の妨げとなっているため、CD用とDVD用の2つの半導体レーザ出射光の共通の光路上に、一つの位相板でおのおのの偏光状態を制御できる2波長用位相板の開発が望まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、660nm波長帯および790nm波長帯の2種の直線偏光を透過させて用いる2波長用位相板であって、
該2波長用位相板は、透明基板と該透明基板に固定されたそれぞれの光軸が19〜29°の範囲にある角度で交差するように重ねられた複屈折性を有する2枚の有機物薄膜とを有しており、
前記2枚の有機物薄膜のうち、一方の有機物薄膜は533〜652nmの範囲にあるリタデーション値を有し、他方の有機物薄膜は356〜434nmの範囲にあるリタデーション値を有しており、
前記2種の直線偏光は、前記2波長用位相板を透過することで、前記660nm波長帯の光の偏光方向は回転し、前記790nm波長帯の光は円偏光となることを特徴とする2波長用位相板を提供する。
【0009】
また、660nm波長帯および790nm波長帯の2種の直線偏光を出射する光源と、前記出射された2種の光を光記録媒体に集光する対物レンズと、前記集光された2種の光の前記光記録媒体からの反射光を検出する光検出器とを備え、前記光記録媒体に情報の記録および/または再生を行う光ヘッド装置であって、
該光ヘッド装置の光源と対物レンズとの間の光路中に上記2波長用位相板が設置されており、
前記光源から出射された2種の直線偏光は、前記2波長用位相板を透過することで、前記660nm波長帯の光の偏光方向は回転し、前記790nm波長帯の光は円偏光となった後、前記対物レンズによって前記光記録媒体に集光されることを特徴とする光ヘッド装置を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の2波長用位相板は、660nm波長帯(以下、波長λ1ということもある)および790nm波長帯(以下、波長λ2ということもある)の2種の直線偏光を透過させて用いるものであり、複屈折性を有する2枚の有機物薄膜が重ねられ、さらに透明基板に重ねられた構造を有している。660nm波長帯の直線偏光とは波長が640〜680nmの範囲にある光であり、790nm波長帯の直線偏光とは波長が770〜810nmの範囲にある光である。2波長用位相板の構造としては、重ねられた有機物薄膜が1枚の透明基板に固定されていてもよく、2枚の透明基板の間にサンドイッチ状に挟まれて固定されていてもよい。
【0011】
以下、本発明の2波長用位相板について詳細に説明する。本発明の2波長用位相板は、例えば図1に示すように、透明基板11と透明基板14との間に、2枚の有機物薄膜13Aおよび13Bを挟み、接着剤12A、12Bを用いて固定する構成である。波長λ1および波長λ2の光が透明基板11側から2波長用位相板101にそれぞれ入射する。
【0012】
有機物薄膜13Aおよび13Bは、例えばポリカーボネートなどの有機材料を延伸させることにより延伸方向に光軸の揃った複屈折性膜である。790nm波長帯の光に対し、有機物薄膜13Aのリタデーション値は593nm(=3×790/4nm)を中心値とする533〜652nmの範囲にあり、一方、有機物薄膜13Bのリタデーション値は395nm(=1×790/2nm)を中心値とする356〜434nmの範囲にある。
【0013】
また、有機物薄膜13Aの光軸と有機物薄膜13Bの光軸とのなす角度θは24°を中心値とする19〜29°の範囲の値をとる。角度θが24°のとき後述するように本発明の効果が最も大きく、好ましい。しかし、19〜29°の範囲の値であれば本発明の効果を有する。リタデーション値の中心値である593nmおよび395nmも、本発明の効果が最も大きい値である。以下では、角度θが24°、有機物薄膜13Aのリタデーション値は593nm、有機物薄膜13Bのリタデーション値は395nmとして説明する。
【0014】
また、複屈折性を有する有機物薄膜13Aおよび13Bとして、透明基板11および14上に塗布した配向膜用の膜に、所望の配向処理を施した後、複屈折性材料である液晶モノマーの溶液を塗布し、光重合用の光源光を照射することで重合硬化させた高分子液晶を用いることもできる。この場合、有機物薄膜13Aおよび13Bを透明基板11および14に固定する接着剤12Aを用いることなく位相板を形成できて好ましい。
【0015】
接着剤12Aおよび12Bの材料としては、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリイミド系、ウレア系、メラミン系、フラン系、イソシアネート系、シリコーン系、セルロース系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、ゴム系やそれらの混合系のものを使用できる。接着剤はUV硬化型や熱硬化型であれば作業性がよく好ましいが、これらに限定されない。接着剤は平滑に一定厚さで薄く塗布することが、入射光の波面収差の補正を良好にするために必要である。塗布の方法としては、スピンコート、ロールコートなどの方法を用いると作業性が優れ、また厚さの制御が容易であるため好ましい。
【0016】
透明基板11および14としては、光学的に平坦なガラス基板、プラスチック基板などを使用できる。また、透明基板の表面にフォトリソグラフィやエッチングなどの技術を用いて回折格子を加工して、光を回折させる機能を発現させてもよい。上述のように構成された2波長用位相板に入射する660nm波長帯の光と790nm波長帯の光は、偏光方向が互いに平行または垂直な直線偏光であるとして、660nm波長帯の光の偏光方向と有機物薄膜13Aの光軸とが、45°の角度をなすように入射し、2波長用位相板を透過することで、660nm波長帯の光の偏光方向は45°回転し、790nm波長帯の光は円偏光となる。
【0017】
次に、本発明の光ヘッド装置について説明する。本発明の光ヘッド装置は、660nm波長帯の光と790nm波長帯の2種の直線偏光を出射する光源と、出射された2種の光を光記録媒体に集光する対物レンズと、集光された2種の光の光記録媒体からの反射光を検出する光検出器とを備えている。光源としては、通常半導体レーザが使用される(ディスクリートな半導体レーザ、または2波長用半導体レーザのいずれを用いてもよい)。
【0018】
また、本発明の光ヘッド装置は、光記録媒体に情報の記録および/または再生を行う装置であって、光ヘッド装置の光源と対物レンズとの間の光路中に上記の2波長用位相板が設置されている。ここで、情報の記録および/または再生を行う装置とは、情報の記録と再生を行う装置、またはいずれかを行う装置という意味である。また、光源と対物レンズとの間の光路中とは、光源とコリメートレンズとの間の光路中でもよく、コリメートレンズと対物レンズとの間の光路中であってもよい。コリメートレンズと対物レンズとの間にある方が、平行光(平面波)が位相板に入射するため、位相板の作製が容易となり好ましい。
【0019】
本発明の光ヘッド装置の構成の一例を示す図2において、半導体レーザ1Aを出射した、DVD用の660nm波長帯の光はビームスプリッタ2により反射され、進行方向が90°変更されてビームスプリッタ3を透過後、コリメートレンズ4により平行光となり、本発明の2波長用位相板101に入射する。2波長用位相板101を透過後、この波長帯の直線偏光は、その偏光方向を45°回転され、対物レンズ5によって、光記録媒体である光ディスク6の情報記録面上に集光される。
【0020】
集光された光は光ディスク6により反射され、対物レンズ5によって、再び平行光となり2波長用位相板101に入射する。2波長用位相板101を透過後、この波長帯の光の偏光方向は、往路の偏光方向と平行になり、コリメートレンズ4、ビームスプリッタ3、ビームスプリッタ2の順に透過して光検出器8上に集光される。
【0021】
一方、半導体レーザ1Bを出射した、CD系の790nm波長帯の光はビームスプリッタ3により反射され、コリメートレンズ4により平行光とされ、本発明の2波長用位相板101に入射する。2波長用位相板101を透過後、この波長帯の直線偏光は、円偏光に変換され、対物レンズ5によって、光ディスク6の記録面上に集光する。光ディスク6で反射された円偏光は、対物レンズ5によって、再び平行光となり、2波長用位相板101に入射する。2波長用位相板101を透過した光の偏光方向は、往路の偏光方向に垂直になった後、コリメートレンズ4、ビームスプリッタ3、ビームスプリッタ2の順に透過して光検出器8上に集光される。
【0022】
本発明の光ヘッド装置においては、DVD系の光記録媒体の情報の記録および/または再生時に、光記録媒体のトラック方向に対し45°の偏光方向を有する直線偏光を入射することが、再生信号のジッター値の低下すなわち再生特性を大きく向上できるので極めて好ましい。2枚の有機物薄膜のそれぞれの光軸のなす角度が19°のときは、トラック方向に対し直線偏光は55°となり、それぞれの光軸のなす角度が29°のときは、トラック方向に対し直線偏光は35°となり、35〜55°の範囲の角度でジッター値の低下があり好ましい。
【0023】
一方、CD系の光記録媒体の情報の記録および/または再生時に、光記録媒体からの半導体レーザへの反射(戻り)光と半導体レーザからの出射光のそれぞれの偏光方向を直交させて不要な干渉を防止できる。したがって、記録時の半導体レーザの出力の安定化を図ることができ、光記録媒体への記録特性が向上する。
【0024】
【実施例】
「例1」
本例を、図1に示した2波長用位相板を用いて説明する。屈折率が1.5である透明基板11に、ポリカーボネートを延伸して複屈折性を発現させた有機物薄膜13Aをポリエステル系のUV硬化型接着剤12Aによって固定する。有機物薄膜13Aのリタデーション値は592.5nmである。
【0025】
次に、同様にポリカーボネートを延伸して複屈折性を発現させ、リタデーション値が395nmである有機物薄膜13Bをポリエステル系のUV硬化型接着剤12Bによって固定する。このとき、有機物薄膜13Aと有機物薄膜13Bのそれぞれの光軸のなす角度θが24°になるように固定する。さらに、屈折率が1.5である透明基板14をポリエステル系のUV硬化型接着剤12Aを用いて貼り合わせることにより、2波長用位相板101を作製する。
【0026】
以上のように作製される2波長用位相板101に波長λ1が660nmの直線偏光と、波長λ1が790nmの直線偏光を、透明基板11側から入射する。このとき、前記2つの直線偏光の偏光方向は互いに平行で、その偏光方向と有機物薄膜13Aの光軸とが45°の角度をなすように入射する。その結果、波長660nmの光は、透明基板14側から見て偏光方向を反時計回りに45°回転させて出射し、波長790nmの光は、円偏光となって出射する。
【0027】
「例2」
例1で作製される2波長用位相板101を、図2に示す光ヘッド装置のようにコリメートレンズ4と対物レンズ5との間の光路中に設置する。ここでは、2波長用位相板101(図1参照)の透明基板11は、コリメートレンズ4と対向している。すなわち、DVD系の波長660nmの光を発振する半導体レーザ1AおよびCD系の波長790nmの光を発振する半導体レーザ1Bから出射した2種の直線偏光が、2波長用位相板101に、透明基板11側から入射することになる。
【0028】
それぞれの直線偏光の偏光方向が、相互に平行になるように半導体レーザ1Aおよび1Bは設置されており、この偏光方向と、2波長用位相板101を構成する有機物薄膜13Aとの光軸のなす角度が45°になるように、光ヘッド装置に2波長用位相板101を設置する。
【0029】
このように構成された光ヘッド装置において、光記録媒体である光ディスク6に集光される、DVD系の波長660nmの光は、偏光方向が光ディスク6のトラックの方向に対し45°の角度をなしており、一方光ディスク6に集光される、CD系の波長790nmの光は、円偏光になっている。光ディスク6の記録面上で反射する復路光(戻り光)は、対物レンズ5によって、再び平行光となり、2波長用位相板101を透過する。2波長用位相板101を透過する復路光のうち、DVD系の波長660nmの光の偏光方向は、往路光の偏光方向と平行になり、CD系の波長790nmの偏光方向は、往路光の偏光方向と垂直になった後、コリメートレンズ4によって光検出器8上に集光する。その結果、DVD系の光ディスクにおける再生信号のジッター値の低下が実現して再生特性が向上し、一方、CD系の光ディスク記録時の半導体レーザの出力の安定化が実現して記録特性が向上する。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の2波長用位相板は、積層された一枚の位相板でありながら、660nm波長帯および790nm波長帯の光のうち、660nm波長帯の直線偏光に対し、偏光方向を45°回転させ、790nm波長帯の直線偏光に対し、直線偏光を円偏光化する位相特性を示す。
【0031】
本発明の2波長用位相板をCDとDVDとの互換光ヘッド装置に搭載することで、DVD系の光ディスクにおける再生信号のジッター値の低下が実現して再生特性を向上でき、CD系の光ディスク記録時の半導体レーザの出力の安定化が実現して記録特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施態様に係る2波長用位相板の構成を示す断面図。
【図2】本発明の第2実施態様に係る光ヘッド装置の構成を示す概念図。
【符号の説明】
101:2波長用位相板
11、14:透明基板
12A、12B:接着剤
13A、13B:有機物薄膜
1A、1B:半導体レーザ
2、3:ビームスプリッタ
4:コリメートレンズ
5:対物レンズ
6:光ディスク
8:光検出器
Claims (2)
- 660nm波長帯および790nm波長帯の2種の直線偏光を透過させて用いる2波長用位相板であって、
該2波長用位相板は、透明基板と該透明基板に固定されたそれぞれの光軸が19〜29°の範囲にある角度で交差するように重ねられた複屈折性を有する2枚の有機物薄膜とを有しており、
前記2枚の有機物薄膜のうち、一方の有機物薄膜は533〜652nmの範囲にあるリタデーション値を有し、他方の有機物薄膜は356〜434nmの範囲にあるリタデーション値を有しており、
前記2種の直線偏光は、前記2波長用位相板を透過することで、前記660nm波長帯の光の偏光方向は回転し、前記790nm波長帯の光は円偏光となることを特徴とする2波長用位相板。 - 660nm波長帯および790nm波長帯の2種の直線偏光を出射する光源と、前記出射された2種の光を光記録媒体に集光する対物レンズと、前記集光された2種の光の前記光記録媒体からの反射光を検出する光検出器とを備え、前記光記録媒体に情報の記録および/または再生を行う光ヘッド装置であって、
該光ヘッド装置の光源と対物レンズとの間の光路中に請求項1記載の2波長用位相板が設置されており、
前記光源から出射された2種の直線偏光は、前記2波長用位相板を透過することで、前記660nm波長帯の光の偏光方向は回転し、前記790nm波長帯の光は円偏光となった後、前記対物レンズによって前記光記録媒体に集光されることを特徴とする光ヘッド装置。
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