JP5024241B2 - 波長板及びこれを用いた光ピックアップ装置 - Google Patents
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Description
特許文献2には、複屈折性を有する有機性薄膜を2枚の透明基板の間に接着剤を介して積層し、波長が650nmのレーザ光に対しては、位相差が2π(m1−1/2)で実質的にπの位相差が生じ、波長が790nmのレーザ光に対しては、位相差が2πm2で実質的に2πの位相差が生じることが記載されている。
特許文献3には、790nm波長帯の光に対して593nm(=3/4×790nm)の位相差を有する第1波長板(材料は複屈折性を有する有機材料)と、395nm(=1/2×790nm)の位相差を有する第2波長板(材料は複屈折性を有する有機材料)とを夫々の光学軸が24°で交差するように積層してなる積層型波長板が開示されており、波長が660nmの直線偏光に対しては偏波面を45°回転させ、波長が790nmの直線偏光に対しては偏光状態を円偏光に変換することが記載されている。
さらに、特許文献4には、波長655nmに対して位相差2700°(=180°+360°×7、所謂7次モード180°で実質的な位相差は180°)となる第1波長板と、位相差630°(=270°+360°×1、所謂1次モード270°で実質的な位相差は270°)の第2波長板とを夫々の光学軸が45°で交差するように積層して構成した積層型波長板が開示されており、波長655nmの光に対して1/4波長板として機能し、波長785nmの光に対して1/2波長板として機能することが開示されている。更に、波長655nmに対して位相差2700°(=180°+360°×7、所謂7次モード180°で実質的な位相差は180°)となる第1波長板と、位相差1260°(=180°+360°×3、所謂3次モード180°で実質的な位相差は180°)の第2波長板とを夫々の光学軸が45°で交差するように積層して構成した積層型波長板が開示されており、波長655nmの光に対して1/2波長板として機能し、波長785nmの光に対して2/2波長板として機能することが開示されている。
つまり、位相差には波長依存性があるため、波長と位相差との関係を示す図12の通り、波長が所定の値からずれると位相差は大きく変化してしまうことになる。例えば、この波長板を光ピックアップ装置に搭載すると、使用する半導体レーザ等の光源に生じる温度ドリフト等によって当該光源から出射するレーザ光の波長がずれたとき前記波長板を透過する当該レーザ光に生じる位相差に大きな変化が生じてしまう。
これに対して、特許文献4に開示された積層型波長板は、光源から出射したレーザ光の波長がずれても当該積層型波長板を透過するレーザ光に生じる位相差の変化を補正する位相差補償機能を有しているので波長依存性は改善されているが、1/2波長板として機能する場合において当該積層型波長板に入射するレーザ光の直線偏光の偏波面を90゜回転させることができないという問題があった。
図13(A)(B)に示される通り、第1波長板62と第2波長板63とを積層した積層波長板61にレーザ光を入射させる場合において、図13(C)に示すポアンカレ球を用いて説明する。
図13(A)、(B)に示すように、積層波長板61は、レーザ光の入射側に配置された第1波長板62と出射側に配置された第2波長板63とを、第1波長板62の光学軸62aと第2波長板63の光学軸63aとが交差角度45°(=57°−12°)で交差するように積層したものである。
図13(C)において、赤道上の点P0から入射した直線偏光64は、第1波長板62を透過したときに180°+360°×7の位相差が生じるので軸R1を回転軸として180°+360°×7の分だけ回転して点P1へ到達する。更に、第2波長板63を透過したときに180°+360°×3の位相差が生じるので軸R2を回転軸として180°+360°×3の分だけ回転して点P2へ到達する。点P2はポアンカレ球の赤道上に位置しており、直線偏光64が第1波長板62と第2波長板63とを透過したときに生じる位相差は実質的に180°であるが、積層波長板61を出射した直線偏光65の偏光面は直線偏光64の偏波面に対して約120°回転している。即ち、入射光の直線偏光の偏波面と出射光の直線偏光の偏波面とが直交関係にならないので、P偏光をS偏光に変換する場合や異常光を常光に変換する必要がある光学系(用途)等には適さないという問題があった。
そこで、光源に生じる温度ドリフト等によって光源から出射するレーザ光の波長がずれた場合であっても、レーザ光が入射した波長板に生じる位相差変動を最小に抑えるよう位相補償することができ、かつ1/2波長板として機能する場合において直線偏光の偏波面を90゜回転させることができる波長板の実現が要望されている。
このような要望は、CDとDVDとの互換性のある光ピックアップ装置で785nm前後の波長領域と655nm前後の波長領域の異なる2波長に対応する光学素子のみならず、CD785nm前後の波長領域とDVDの655nm前後の波長領域とBlu−rayやHDDVD等の405nm前後の波長領域との異なる3波長に対応する光学素子でも求められている。
前記波長λA に対する前記第1波長板の位相差をΓA1とし、
前記波長λA に対する前記第2波長板の位相差をΓA2としたとき、
ΓA1=360°+360°×2×N A ……(1)
ΓA2=180°+360°×NA ……(2)
を満足し、
前記波長λB に対する前記第1波長板の位相差をΓB1とし、
前記波長λB に対する前記第2波長板の位相差をΓB2としたとき、
ΓB1=360°×2×N B ……(3)
ΓB2=360°×NB ……(4)
を満足し、
前記第1波長板の面内方位角θ 1 、前記第2波長板の面内方位角θ 2 としたとき、
θ 1 =−21°±10°
θ 2 =45°±10°
を満足し、
前記波長λA に対する常光線屈折率と異常光線屈折率との複屈折率差をΔnAとし、
前記波長λB に対する常光線屈折率と異常光線屈折率との複屈折率差をΔnBとすると、
NB=(ΔnB/ΔnA)×(λA/λB)×(0.5+NA) ……(5)
但し、N A 及びN B は、小数第1位が4以下ならば切り捨て、5以上ならば切り上げてなる正の整数
を満足することを特徴とする。
本発明のある別の実施形態に係る波長板は、(N A ,N B )の組合せが以下の何れかであることを特徴とする。
(N A ,N B )=(2.0,2.0)・・・(a1)
(N A ,N B )=(3.0,3.0)・・・(a2)
(N A ,N B )=(8.0,7.0)・・・(a3)
(N A ,N B )=(9.0,8.0)・・・(a4)
本発明のある別の実施形態に係る波長板は、前記波長λ A 及び前記波長λ B のうち何れか一方が390〜410nmの波長帯に含まれることを特徴とする。
本発明のある別の実施形態に係る光ピックアップ装置は、光源と、前記光源から出射された光を記録媒体に集光する対物レンズと、前記記録媒体で反射された光を検出する検出器と、を備え、前記光源と前記対物レンズとの間の光路中に前記波長板が配置されていることを特徴とする。
[適用例1]適用例1に係る積層波長板は、少なくともλA,λBの2波長を含む複数の波長に対応し、かつ、入射側に配置された第1波長板と出射側に配置された第2波長板とを光学軸が交差するように積層した積層波長板であって、
波長λAの前記第1波長板における位相差をΓA1とし、
波長λAの前記第2波長板における位相差をΓA2とし、
波長λBの前記第1波長板における位相差をΓB1とし、
波長λBの前記第2波長板における位相差をΓB2とし、
前記第1波長板の面内方位角θ1をθ1=−21°とし、
前記第2波長板の面内方位角θ2をθ2=45°とし、
波長λAの常光線屈折率noAと異常光線屈折率neAとの差(neA−noA)である複屈折率差をΔnAとし、
波長λBの常光線屈折率noBと異常光線屈折率neBとの差(neB−noB)である複屈折率差をΔnBとすると、
ΓA1=360°+360°×2NA ……(1)
ΓA2=180°+360°×NA ……(2)
ΓB1=360°×2NB ……(3)
ΓB2=360°×NB ……(4)
NB=(ΔnB/ΔnA)×(λA/λB)×(0.5+NA) ……(5)
を満足することを特徴とする。
(2)から、
ΓA2=180+360・NA={360・ΔnA・d2}/λA…(2)’
但し、d2は第2波長板の厚さ寸法
(4)から、
ΓB2=360・NB={360・ΔnB・d2}/λB…(4)’
(2)’(4)’で求められた式をd2でくくると、(5)となる。
そして、式(5)から入射する光の波長が実際に使用する波長が所定値の波長λA,λBより短くても、その短い分だけ位相差が相殺され、あるいは実際に使用する波長が所定値の波長λA,λBより長くても、その長い分だけ位相差が相殺されることになり、実際に出射する波長が所定値からずれることがない。
(NA,NB)=(2.0,2.0)・・・(a1)
(NA,NB)=(3.0,3.0)・・・(a2)
(NA,NB)=(8.0,7.0)・・・(a3)
(NA,NB)=(9.0,8.0)・・・(a4)
この適用例3では、Blu−ray等に用いることができる積層波長板を提供できる。
この適用例4では、前述の効果を奏することができる光ピックアップ装置を提供することができる。
まず、本実施形態の積層波長板について説明する。図1には本実施形態にかかる積層波長板の概略構成が示されており、(A)は積層波長板をレーザ光の入射方向から見た正面図、(B)は側面図である。
図1において、積層波長板1は、レーザ光の入射側に配置された第1波長板2と出射側に配置された第2波長板3とを、第1波長板2の結晶光学軸2aと第2波長板3の結晶光学軸3aとが交差するように積層したものである。第1波長板2及び第2波長板3は、ともに複屈折性を有する結晶材料から形成されるものであり、この結晶材料としては、水晶、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、サファイヤ、BBO、方解石、YVO4等を例示できるがここでは材料に水晶を用いて説明する。第1波長板2と第2波長板3とは、例えば、接着剤を用いて互いに貼り付けられている。そして、積層波長板1を構成する第1波長板2及び第2波長板3の材料である水晶の切断角度をそれら波長板の主表面(入出射面)の法線と水晶の結晶光学軸(Z軸)とのなす角度が90°(以下、90°Zと称す)となる角度とする。
この積層波長板1では、積層波長板1に入射するレーザ光の直線偏光の偏波面と第1波長板2の結晶光学軸2aとのなす角度を面内方位角θ1で示し、前記直線偏光の偏波面と第2波長板3の結晶光学軸3aとのなす角度を面内方位角θ2で示している。
図2〜図5に示されるポアンカレ球を用いて、積層波長板1に入射した直線偏光の偏光状態の光学的変化を説明する。
図2において、点P0から入射した直線偏光51は、第1波長板2の光軸R1を中心として360°の倍数分だけ(実質は360°)回転して点P1(点P0)の位置に到達し、さらに、第2波長板3の光軸R2を中心にして180°+360°の倍数分だけ(実質は180°)回転して点P2に到達し第2波長板3の出射面から直線偏光52となって出射する。点P2はポアンカレ球における点P0とは反対側の赤道上に位置するので、第1波長板2に入射した直線偏光51の位相を180°ずらすことができるだけでなく、直線偏光の偏波面を90°回転させることができる。つまり、直線偏光51の偏波面と直線偏光52の偏波面とは直交関係にある。
図3において、点P0から入射した直線偏光51は、第1波長板2の光軸R1を中心として360°の倍数分だけ回転して点P1(点P0)の位置に到達し、さらに、第2波長板3の光軸R2を中心にして360°の倍数分だけ回転して点P2(点P1,点P0)に到達する。点P2はポアンカレ球における点P0と同じ位置である。
点P0から入射した直線偏光51は、第1波長板2を透過することにより位相差が生じ、軸R1を回転軸として360°+360°×nだけ回転して点P1(点P0)に到達する。更に、第2波長板3を透過することにより位相差が生じ、点P0から軸R2を回転軸として180°+360°×mだけ回転して点P2の位置に到達し直線偏光52となって積層波長板1から出射することとなる。これは直線偏光の偏光面が90°回転することを表している。
ここで、所定の波長から短波長方向に波長がずれることにより位相差が大きく変動した場合について説明する。
点P0から入射した直線偏光51は、第1波長板2を透過することにより位相差が生じ、このとき軸R1を回転軸として360°+360°×nよりも余分に回転してしまい、点P1’の位置に到達する。続いて第2波長板3を透過することにより位相差が生じ、軸R2を回転軸として180°+360°×mよりも余分に回転してしまうが、このときの起点は点P1’であるため、近似的に表現すると弦P0P1’≒線分P0’P1’の関係を満足していれば、第1波長板2と第2波長板3とを透過したときに生じる位相差は実質的にほぼ180°であり点P2近傍のP2’の位置に到達することができる。弦P0P1’≒線分P0’P1’の関係を満足するためには、第1波長板2の光学軸をあらわす軸R1と軸S1とのなす角度を調整すれば良い。
ここで、所定の波長から短波長方向に波長がずれることにより位相差が大きく変動した場合について説明する。
点P0から入射した直線偏光51は、第1波長板2を透過することにより位相差が生じ、このとき軸R1を回転軸として360°+360°×nよりも余分に回転してしまい、点P1’の位置に到達する。続いて第2波長板3を透過することにより位相差が生じ、軸R2を回転軸として360°+360°×mよりも余分に回転してしまうが、このときの起点は点P1’であるため、近似的に表現すると弦P0P1’≒線分P2’P1’の関係を満足していれば、第1波長板2と第2波長板3とを透過したときに生じる位相差は実質的に360°であるので、点P2近傍の点P2’の位置に到達することができる。弦P0P1’≒線分P2’P1’の関係を満足するためには、第1波長板2の光学軸をあらわす軸R1と軸S1とのなす角度を調整すれば良い。
つまり、本実施形態では、第2波長板3の位相差Γ2が入射光の波長の変化によりΔΓ2の位相差変化を生じた場合、この位相差変化ΔΓ2を第1波長板2の波長の変化による位相差変化ΔΓ1で相殺すれば積層波長板1の波長依存性を抑圧することができる。
第2波長板3の波長の変化による位相差変化ΔΓ2は基板材料の波長分散で決まる一定の数値を有しており、第1波長板2の波長の変化による位相差変化ΔΓ1は第1波長板2の面内方位角θ1を調整することで、その大きさを可変とすることが可能である。
なお、位相差変化ΔΓ1、ΔΓ2とは、所定の波長における位相差Γ1,Γ2を中心としてそれぞれ±ΔΓ1/2、±ΔΓ2/2の範囲で変動する変動幅を表している。
第1波長板2の波長λAに対する位相差をΓA1とし、第2波長板3の波長λAに対する位相差をΓA2とすると、積層波長板1は波長λAにおいて1/2波長板として機能するので、位相差ΓA1、ΓA2は以下のように表すことができる。
ΓA1=360°+360°×2NA(NA=1,2,3,…正の整数) ……(1)
ΓA2=180°+360°×NA(NA=1,2,3,…正の整数) ……(2)
ΓB1=360°×2NB(NB=1,2,3,…正の整数) ……(3)
ΓB2=360°×NB(NB=1,2,3,…正の整数) ……(4)
NB=(ΔnB/ΔnA)×(λA/λB)×(0.5+NA) ……(5)
の条件で次数NA,NBが定まるように積層波長板1を設計する。
ここで、NBは式(2)、(4)を以下のように展開して求めたものである。
式(2)は以下のように表すことができる、
ΓA2=180°+360°×NA={360°/λA}×ΔnA×d2…(2)’
但し、d2は第2波長板の厚さ寸法
d2=(180°+360°×NA)×(λA/360°/ΔnA)
=(0.5+NA)×(λA/ΔnA)…(2)”
次に式(4)は以下のように表すことができる、
ΓB2=360°×NB={360°/λB}×ΔnB×d2…(4)’
d2=(360°×NB)×(λB/360°/ΔnB)
=NB×(λB/ΔnB)
故に式(2)’、(4)’から
(0.5+NA)×(λA/ΔnA)=NB×(λB/ΔnB)
NB=(λA/ΔnA)/(λB/ΔnB)×(0.5+NA)
=(ΔnB/ΔnA)×(λA/λB)×(0.5+NA)……(5)
となる。
表1で示されるNAとNBとの関係のうち、NAが2.0でありNBが2.1、NAが3.0であり、NBが2.9、NAが8.0でありNBが7.1、NAが9.0でありNBが7.9の場合が好ましい。ここで、選択したNBの小数点以下を四捨五入する。
(NA,NB)=(2.0,2.1)≒(2.0,2.0)・・・(a1)
(NA,NB)=(3.0,2.9)≒(3.0,3.0)・・・(a2)
(NA,NB)=(8.0,7.1)≒(8.0,7.0)・・・(a3)
(NA,NB)=(9.0,7.9)≒(9.0,8.0)・・・(a4)
図4(A)において、第2波長板3に生じた位相差変化ΔΓ2により、ポアンカレ球上の座標P0(P1)がP1”に変化したものとし、このP0→P1”の距離を近似的に直線X2で表すと、ΔΓ2とX2とは次の式(6)を満たす。但し、kはポアンカレ球の半径である。
X2 2=2k2−2k2COSΔΓ2 …(6)
次に、同様に、図4(B)において、第1波長板2に生じた位相差変化ΔΓ1により、ポアンカレ球上の座標P0(P1)がP1’に変化したものとし、このP0→P1’の距離を近似的に直線X1で表すと、ΔΓ1とX1とは次の式(7)を満たす。但し、rはR1を回転軸としてΔΓ1回転させる時の半径である。
X1 2=2r2−2r2COSΔΓ1 …(7)
図5(A)において、第2波長板3に生じた位相差変化ΔΓ2により、ポアンカレ球上の座標P0(P1)がP1”に変化したものとし、このP0→P1”の距離を近似的に直線X2で表すと、ΔΓ2とX2とは前記式(6)を満たす。
次に、図5(B)において、第1波長板2に生じた位相差変化ΔΓ1により、ポアンカレ球上の座標P0(P1)がP1’に変化したものとし、このP0→P1’の距離を近似的に直線X1で表すと、ΔΓ1とX1とは前記式(7)を満たす。
r2=2k2−2k2COS2θ1 …(8)
さらに、式(7)及び(8)から式(9)を導き出せる。
X1 2=4k2(1−COS2θ1)(1−COSΔΓ1) …(9)
X1≒X2
である必要があり、式(6)と式(9)とから、
X1 2=X2 2
2k2−2k2COSΔΓ2=4k2(1−COS2θ1)(1−COSΔΓ1)…(10)の関係が成立する。
式(10)において、kを正規化してまとめると、
1−COSΔΓ2=2(1−COS2θ1)(1−COSΔΓ1)
2(1−COS2θ1)=(1−COSΔΓ2)/(1−COSΔΓ1)
1−COS2θ1=(1−COSΔΓ2)/{2×(1−COSΔΓ1)}
COS2θ1=1−(1−COSΔΓ2)/{2×(1−COSΔΓ1)}…(11)
ここで、第1波長板2と第2波長板3とは同じ波長分散の基板材料で構成されているので、
m=ΓA1/ΓA2
とすると、次式が得られる。
ΔΓ1=m×ΔΓ2 …(12)
式(12)を式(11)に代入すると次式(13)が導き出せる。
COS2θ1=1−(1−COSΔΓ2)/{2×(1−COS(m×ΔΓ2))}…(13)
式(13)は、第2波長板3により生じる位相差変化ΔΓ2により第1波長板2の面内方位角θ1が決定されることを示している。
前述で求めた(NA,NB)の値のうち式(a1)を採用する。
(NA,NB)=(2.0,2.0)・・・(a1)
波長λAの第1波長板2における位相差ΓA1は式(1)から
ΓA1=360°+360°×2×2.0=360°+360°×4=1800°
とし、波長λAの第2波長板3における位相差ΓA2は式(2)から
ΓA2=180°+360°×2.0=900°
とし、波長範囲を390〜410nmにおいて1/2波長板として機能する場合についてパラメータを算出する。
波長λAの第1波長板2における位相差ΓA1が1800°であり、波長λAの第2波長板3における位相差ΓA2が900°であるため、
m=ΓA1/ΓA2=1800°/900°=2
となる。
また、積層波長板1の基板材料は切断角度90°Zの水晶であり、波長λAの中心波長を660nmとし、±25nmの範囲で見た場合、第2波長板3の位相差変化ΔΓ2は中心波長に対して、±ΔΓ2/2=±45°…(14)
である。
従って、式(13)にm=2,ΔΓ2=90°を代入すると、第1波長板2の面内方位角θ1は、
COS2θ1=1−(1−COSΔΓ2)/{2×(1−COS(m×ΔΓ2))}
=1−(1−COS90°)/{2×(1−COS(2×90°))}
=1−1/{2×(1−(−1))}
=1−1/4
=3/4
θ1=1/2×COS−1(3/4)
=20.70°
≒21°
と求まり、図1(a)において、面内方位角の正負を水平軸xに対して反時計回り方向を正とし、時計回り方向を負としているので、θ1は、約−21°となる。
そして、第2波長板3の面内方位角θ2は45°である。
従って、λAの波長範囲390〜410nmにおいて、近似的に求められる設計条件は
下記の通りとなる。
ΓA1=1800°
ΓA2=900°
θ1=−21°
θ2=45°
これらの設計条件は近似を含んでいるので、更に詳細な計算を行って設計条件を最適化することが好ましい。詳細な計算はジョーンズベクトルやミューラ行列を用いて計算することができる。ここではミューラ行列を用いた計算を行った。
出射光の偏光状態Eは次式で表される。
表2は位相差ΓA1、ΓA2と光学軸方位角度θ1、θ2との最適化前後での角度である。
また、図6に示す最適化後の特性Qは本実施形態に係る積層波長板1の有する光学特性の一例であって、これに限らず、例えば、図7及び図8に示すようにθ1=−21°±10°、θ2=45°±10°の範囲で面内方位角を調整して最適な特性を得ることができる。
図7のグラフにおいて、横軸が波長(nm)であり、縦軸が変換効率である。図7において、Q1〜Q5は、(θ1,θ2)の組合せを次の表3に示す値に設定したときの変換効率である。
本実施形態の光ピックアップ装置10は、2波長対応の光ピックアップ装置であり、例えば、CD用とDVD用との互換性のある光ピックアップ装置である。なお、本実施形態の光ピックアップ装置をDVD用とBlu−ray用との互換性のある光ピックアップ装置やCD用とBlu−ray用との互換性のある光ピックアップ装置に用いてもよい。
図9において、光ピックアップ装置10は、CD用レーザ光源11Aと、DVD用レーザ光源11Bと、これらのレーザ光源11A,11Bから照射されるレーザ光を記録媒体である光ディスクDに集光する対物レンズ12と、この対物レンズ12に集光されて光ディスクDで反射された出射光を検出する検出器13とを備えて構成されている。
このハーフミラー14とレーザ光源11A,11Bとの間には偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと称す)16が配置されている。このPBS16とCD用のレーザ光源11Aとの間にはCD用のグレーティング17Aが配置され、PBS16とレーザ光源11Bとの間にはDVD用のグレーティング17Bが配置されている。PBS16とハーフミラー14との間には本実施形態に係る積層波長板1が配置されている。グレーティング17A,17Bは回折格子である。
ハーフミラー14と対物レンズ12との間にはコリメートレンズ19と、立上ミラー20とが配置されており、これらのコリメートレンズ19と立上ミラー20との間には1/4波長板18が配置されている。
PBS16の斜面16aには、P偏光を透過しS偏光を反射する光学特性を有する偏光分離膜が形成されている。レーザ光源11A(CD用),11B(DVD用)からは夫々S偏光のレーザ光、P偏光のレーザ光が出射されるので、レーザ光源11B(DVD用)から出射したP偏光のレーザ光はPBS16の斜面を透過して光路を維持し、レーザ光源11A(CD用)から出射したS偏光のレーザ光はPBS16の斜面で反射して、DVD用レーザ光の光路と同軸となる。
ハーフミラー14の反射面14aには、P偏光を透過しS偏光を反射する光学特性を有する光学薄膜が形成されている。PBS16を透過してきたP偏光のDVD用レーザ光は、積層波長板1に入射すると180°の位相差が生じることにより偏波面が90°回転してS偏光のレーザ光に変換されてハーフミラー14に至る。そして、S偏光となったレーザ光はハーフミラー14の反射面14aで確実に反射するので光ディスクDへと導かれることになる。なお、PBS16を反射したCD用レーザ光はもともとS偏光であるので、偏波面を回転させる必要はなく、積層波長板1を透過したときに生じる位相差は2πとなりS偏光を維持した状態で積層波長板1から出射し、ハーフミラー14の反射面で反射し光ディスクDへと導かれる。
図10の光ピックアップ装置10は、図9の光ピックアップ装置10と同様に、例えば、CD用とDVD用との互換性のある光ピックアップ装置である。
図10(A)において、光ピックアップ装置10は、CD用レーザ光源とDVD用レーザ光源とが一体となったレーザ光源21を備えており、このレーザ光源21から照射されるレーザ光はハーフミラー14に向けて照射される。
光路補正素子22は、水晶などの複屈折性を有する材料から構成されており、この複屈折性材料の有する光学軸に対して直交する偏波面を有する直線偏光は常光線と呼び、当該光学軸に対して水平となる偏波面を有する直線偏光を異常光線と呼ぶ。
照射部21A(CD用),21B(DVD用)から夫々照射されるレーザ光は互いに偏波面が同一方向のS偏光の直線偏光であり且つ光路補正素子の光学軸に対して共に異常光線となるのでこのままでは、光路補正素子22で共に屈折してしまい同軸の光路とすることができない。そこで、光路補正素子22とレーザ光源21との間に本実施形態に係る積層波長板1aを配置させ、一方のレーザ光の直線偏光の偏波面のみを90°回転させ、光路補正素子22に対して常光線となるようにした。
従って、照射部21Bから出射したDVD用のS偏光のレーザ光は、光路補正素子22に積層された積層波長板1aで生じる位相差はπとなり偏波面は90°回転しP偏光となって光路補正素子22に入射する。当該P偏光のレーザ光は、光路補正素子22の光学軸22aに対して常光線となるので、屈折することなく光路を維持した状態で光路補正素子22を出射しハーフミラー14に至る。
一方、照射部21Aから出射したCD用のS偏光のレーザ光は、光路補正素子22に積層された積層波長板1aで生じる位相差は2πとなり偏波面は変動することなくS偏光を維持して積層波長板1aを出射し光路補正素子22に入射する。当該S偏光のレーザ光は光学軸22aに対して異常光線となるので光路補正素子22で屈折し、DVD用レーザ光の光路と同軸にされて光路補正素子22から出射しハーフミラー14に至る。
ここで、前述の通りハーフミラー14の反射面14aには、P偏光を透過しS偏光を反射する光学特性を有する光学薄膜が形成されているので、このままではP偏光のDVD用レーザ光は反射面14aで反射することなく透過してしまう。そのため、光路補正素子22とレーザ光源21との間とは反対側にもう一つ本実施形態に係る積層波長板1bを配置させることにより、P偏光のDVD用レーザ光をS偏光のレーザ光に変換してハーフミラー14へと導いている。なお、光路補正素子22を出射したCD用S偏光のレーザ光は積層波長板1bでは偏波面が回転せずS偏光を維持した状態で積層波長板1bを出射しハーフミラー14に至る。なお、図10では、積層波長板が2箇所配置されているので、積層波長板1aと積層波長板1bとで区別して説明しているが、これらは積層波長板1と同じ構成である。
λA,λBの2波長に対応し、かつ、入射側に配置された第1波長板2と出射側に配置された第2波長板3とを光軸が交差するように積層した積層波長板1を、波長λAの第1波長板2における位相差をΓA1とし、波長λAの第2波長板3における位相差をΓA2とし、波長λBの第1波長板2における位相差をΓB1とし、波長λBの第2波長板3における位相差をΓB2とし、第1波長板2の面内方位角θ1をθ1=−21°とし、第2波長板3の面内方位角θ2をθ2=45°とし、波長λAの常光線屈折率noAと異常光線屈折率neAとの差(neA−noA)をΔnAとし、波長λBの常光線屈折率noBと異常光線屈折率neBとの差(neB−noB)をΔnBとすると、
ΓA1=360°+360°×2NA ……(1)
ΓA2=180°+360°×NA ……(2)
ΓB1=360°×2NB ……(3)
ΓB2=360°×NB ……(4)
NB=(ΔnB/ΔnA)×(λA/λB)×(0.5+NA) ……(5)
の条件で定まるようにした。そのため、入射する光の波長が実際に使用する波長が所定値の波長λA,λBより短くても、その短い分だけ位相差が相殺され、あるいは実際に使用する波長が所定値の波長λA,λBより長くても、その長い分だけ位相差が相殺されることになり、実際に出射する波長が所定値からずれることがなくなる。
例えば、前記実施形態では、入射側に配置された第1波長板2と出射側に配置された第2波長板3とを光軸が交差するように積層した積層波長板から積層波長板1を構成したが、本発明では、図11に示される通り、第1波長板2と第2波長板3とを光軸が交差するように積層した積層波長板の両面あるいは一方の面に回折格子4を一体に構成するものでもよい。例えば、図11(A)には、第1波長板2と第2波長板3とを光軸が交差するように積層した積層波長板の両面に回折格子4がそれぞれ形成されている。図11(B)には、第1波長板2と第2波長板3とを光軸が交差するように積層した積層波長板の第1波長板2側の片面に回折格子4が形成されている。
波長板への回折格子4の構造や形成方法は、例えば、特開2004-341471号公報、特開2001-281432号公報に記載されているものを用いることができる。
この構成により、回折格子と積層波長板とが一体化されるので、グレーティング(回折格子)を光路中に別途配置する必要がなくなり、部品点数の減少を図ることができる。
また、本発明の積層波長板1は光ピックアップ装置以外にもプロジェクタにも適用することができる。
Claims (4)
- 互いに帯域の異なる波長帯に含まれる波長λ A の光と波長λ B の光が入射する第1波長板と、前記第1波長板の出射側に配置されている第2波長板と、が各々の光学軸が互いに交差するように配置され、
前記波長λA に対する前記第1波長板の位相差をΓA1とし、
前記波長λA に対する前記第2波長板の位相差をΓA2としたとき、
ΓA1=360°+360°×2×N A ……(1)
ΓA2=180°+360°×NA ……(2)
を満足し、
前記波長λB に対する前記第1波長板の位相差をΓB1とし、
前記波長λB に対する前記第2波長板の位相差をΓB2としたとき、
ΓB1=360°×2×N B ……(3)
ΓB2=360°×NB ……(4)
を満足し、
前記第1波長板の面内方位角θ 1 、前記第2波長板の面内方位角θ 2 としたとき、
θ 1 =−21°±10°
θ 2 =45°±10°
を満足し、
前記波長λA に対する常光線屈折率と異常光線屈折率との複屈折率差をΔnAとし、
前記波長λB に対する常光線屈折率と異常光線屈折率との複屈折率差をΔnBとすると、
NB=(ΔnB/ΔnA)×(λA/λB)×(0.5+NA) ……(5)
但し、N A 及びN B は、小数第1位が4以下ならば切り捨て、5以上ならば切り上げてなる正の整数
を満足することを特徴とする波長板。 - 請求項1において、
(NA,NB)の組合せが以下の何れかであることを特徴とする波長板。
(NA,NB)=(2.0,2.0)・・・(a1)
(NA,NB)=(3.0,3.0)・・・(a2)
(NA,NB)=(8.0,7.0)・・・(a3)
(NA,NB)=(9.0,8.0)・・・(a4) - 請求項1又は2において、
前記波長λA及び前記波長λBのうち何れか一方が390〜410nmの波長帯に含まれることを特徴とする波長板。 - 光源と、
前記光源から出射された光を記録媒体に集光する対物レンズと、
前記記録媒体で反射された光を検出する検出器と、
を備え、
前記光源と前記対物レンズとの間の光路中に請求項1乃至3の何れか一項に記載の波長板が配置されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
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