JP4649126B2 - 密着性に優れた溶射皮膜を形成する溶射方法 - Google Patents

密着性に優れた溶射皮膜を形成する溶射方法 Download PDF

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本発明は、金属基材上に溶射皮膜を形成する溶射方法に関し、特に、基材と溶射皮膜との密着性を改良した溶射方法に関するものである。
溶射皮膜と基材との密着性を良くする方法として、溶射施工については、その前処理として、ブラスト処理が行われる。その理由は基材の錆び、塗膜など異物や汚染物を除去すると共に、基材表面に凹凸をつけて皮膜と基材との接触面積を広くし、かつ皮膜に「アンカー効果」を持たせるためである。ブラスト処理には研削材として、アルミナ、炭化珪素などが用いられるが、それらの研削材を圧縮空気により高速で射出するため、その処理には粉塵と騒音が発生するため、環境と作業者に負担が大きく、改善が要求されている。
また、この方法は安価で容易であるが、ブラスト材が表面に突き刺さり皮膜形成後にも基材/皮膜界面に残留するためある程度までの密着性しか得られない。
例えば、大気中プラズマ溶射法で軟鋼上にSUS304ステンレス鋼を成膜した場合、その実用化されているものの密着強度は高々50N/mm程度である。50N/mmと言えば、プラスチックの引張強さであり、このため溶射関連の技術者の間には「溶射皮膜は剥離しやすい」という固定観念がある。
そこで、複層金属材の製造方法で、サンドブラスト処理の後、ワイヤーブラシでの研磨処理を施し、次いで溶射して付着する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、溶射材料を溶射する方法で、被溶射材料を陰極として真空アーク放電を生起させて表面処理を行う前処理法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許第3425496号公報 特開平5−98412号公報
しかし、従来の前処理法を施した後の溶射による成膜方法では、溶射皮膜の密着強度は低く充分ではなく、各種機器の性能向上での要望に答えることができなかった。
そこで、本発明は、溶射前に基材表面を特定の処理手段を組み合わせた粗面化と清浄化により、基材と得られる溶射皮膜との密着性を改善する溶射方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意研究した結果、溶射前処理としてブラスト処理のみならず、酸化膜を形成した後真空アーククリーニング処理を施すと良いとの知見を得た。そこでこの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1) 金属基材表面をブラスト処理し、次いで大気雰囲気中で加熱する表面酸化処理を施して前記金属基材表面に3〜10μmの酸化膜を形成し、次いで真空アーククリーニング処理を行った後、溶射処理をする金属基材表面に密着性に優れた溶射皮膜を形成する溶射方法。
(2)前記溶射皮膜が金属、合金、セラミック、及びサーメットのいずれか1つであることを特徴とする(1)記載の溶射皮膜を形成する溶射方法、
(3)前記溶射皮膜がステンレススチールであることを特徴とする(1)または(2)記載の溶射皮膜を形成する溶射方法、
(4)前記溶射処理に続いて真空アーククリーニング処理を行い、セラミック溶射をする金属基材表面に密着性に優れた溶射皮膜を形成する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の溶射方法、
(5)前記溶射処理が減圧溶射処理である場合、溶射中にも真空アーククリーニング処理を行うことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の溶射皮膜を形成する溶射方法、および、
(6)前記大気雰囲気中での加熱を、480℃〜700℃の温度で、15〜120分の時間行うことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の溶射皮膜を形成する溶射方法、
(7)前記真空アーククリーニング処理を行った金属基材表面の粗さ(Ra)を4〜5μmとすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の溶射皮膜を形成する溶射方法、
(8)前記金属基材に鉄鋼基材を用いることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の溶射皮膜を形成する溶射方法、
(9)(1)〜(8)のいずれか1項に記載の溶射方法で得られる金属材料であって、前記金属基材の表面に溶射処理により形成された溶射被膜を有し、該溶射被膜のJIS H8666に準じて測定した密着強度が86N/mm 以上であることを特徴とする金属材料、
(10)前記溶射皮膜が金属、合金、セラミック、及びサーメットのいずれか1つであることを特徴とする(9)に記載の金属材料、
(11)前記溶射皮膜がステンレススチールであることを特徴とする(9)又は(10)に記載の金属材料、および
(12)前記金属基材に鉄鋼基材を用いたことを特徴とする(9)〜(11)のいずれか1項に記載の金属材料
を提供するものである。
本発明によれば、ブラスト材が界面に残留することがなく、また、界面の凹凸が深く細いため、基材と溶射皮膜との密着強度が極めて強い溶射皮膜を形成することができる。そして、その密着強度は強く、強度試験において使用する接着剤の破断が生ずるものである。
そして、溶射皮膜のある金属材料は、航空機用エシジン、発電用ガスタービンエンジン、自動車用エンジンなどに多用され、より過酷な条件にも対応することが可能となるり、密着強度の向上は、機器の高性能化、長寿命、省資源、省エネルギーに直接資することができる。
また、本発明の方法は、環境負荷と作業者に負担の大きいブラスト処理時間を短縮することができる。
本発明の密着度の優れた溶射皮膜を形成する溶射方法の好ましい実施の態様について、詳細に説明する。
本発明の溶射皮膜材料は、金属、合金、セラミック、サーメットなどこれまで利用されているどのようなものでもよく、例えば、鋼系材料、モリブデン、チタン等があり、ステンレススチール、モリブデン等が特に好ましい。
ブラスト処理は溶射施工の前処理として不可欠であるが、アルミナ等酸化物などをブラスト材として用いるために、ブラスト面が汚染される。これが密着力低下の一つの原因である。さらに、長時間ブラスト処理を施しても、基材が摩耗するだけで、表面粗さは高くならない。
ブラスト処理には、ブラスト材の粒度・エア圧力、ブラスト距離など多くの条件があるが、本発明で用いることのできブラスト処理はどのようなものでも良く特に限定するものではないが、本発明では例えば、#20〜36のアルミナをブラスト材とし、エア圧0.5MPa〜0.7MPaで行うのが好ましい。
さらに後述するように表面酸化処理、真空アーククリーニング処理を行うので、ブラスト処理は従来ほど長時間行う必要はない。
ブラスト処理が終わった後、本発明では表面酸化処理により基材に酸化膜を形成する。
表面酸化処理は、化学薬品による手段等どのような方法でもよいが、大気雰囲気中で加熱による処理を行う。その温度および時間は480〜700℃、15〜120分、好ましくは520〜680℃、25〜100分、さらに好ましくは580〜650℃、45〜70分である。これにより金属基材表面に3〜10μmの酸化膜を形成する。
ブラスト処理により金属基材表面には凹凸が形成され、基材に存在した大部分の酸化膜は除去されているが、ブラスト材などの不純物が残るので、溶射皮膜の高密着のために真空アーククリーニング処理を行う。
この真空アーククリーニング処理時に金属基材表面に酸化膜が形成されていることが必要である。酸化膜が存在する場合と酸化膜が存在しない場合では、表面粗さのパラメータである中心線平均粗さ(Ra)の変化の課程の違いは次のように考えられる。
金属表面に酸化膜が存在する場合、陰極点は、その酸化膜状上の1点に滞留し、酸化物を蒸発させ、下地の金属層まで到達する。陰極点の滞留の際、下地の金属は熱伝導により溶融温度に達する。この溶融された金属が、急速な酸化物の蒸発の際に、クレータから噴出し、凝固して突起物として残るためRaは大きくなる。
金属表面に酸化物がない場合は、陰極点の移動速度は非常に高速となり、陰極点の滞留時間が短縮される。このため、金属の溶融深さは浅くなり、大きな表面粗さは得られない。
表面粗さの測定によると、酸化膜がない場合にはRaは3μm程度であるが、酸化膜がある場合には4〜5μmとなる。
表面酸化処理により酸化膜の形成された金属基材に、真空アーククリーニング処理を施す。真空アーククリーニング処理では、チャンバー内圧力、電圧、電流、クリーニング時間など諸条件があるが、本発明ではこれらの条件を適宜設定して行うことができる。それらの条件は、例えば、チャンバー内圧力は100Pa、電流20〜90A、クリーニング時間3〜5秒が好ましい。
図1に好ましい真空アーククリーニング処理装置の一例の概略構成を示す。その主な構成は、真空容器1、容器内に設けられた水冷式銅電極(陽極)2、周囲を絶縁体5で覆った支持具4、支持具に支持され陰極となる被処理対象である金属基材3、真空アーク放電用電源6、のぞき窓7およびガス給排気系からなる。
溶射処理は、一般的に多く用いられているいかなる溶射法でもよい。大気圧プラズマ溶射法の例で説明すると、電流600〜850A、電圧35V、アルゴン圧力0.35MPa(50psi)、ヘリウム圧力0.35〜0.69MPa(50〜100psi)が適当である。
こうして密着性に優れた溶射皮膜を形成する。
本発明は、複数層の溶射皮膜を形成することもできる。この場合、1層目の皮膜を形成した後、再度真空アーククリーニング処理を行い表面の酸化物を除去し、続いて外層の溶射皮膜を形成する。このように皮膜形成の間に真空アーククリーニング処理を施すことによって各層間の密着強度を強力にすることができる。外層にセラミック皮膜を形成する場合にも好ましい方法である。
本発明では、溶射処理の前工程としてブラスト処理、表面酸化処理、真空アーククリーニング(VAC)処理をこの順序で行うことが重要である。
ブラスト処理、加熱処理、VAC処理を行ったものは、ブラスト処理又はVAC処理のみのものより表断面の凹凸が大きく且つ細かい。これは、ブラスト処理、表面酸化処理後VAC処理を行うと、ブラスト処理によってできた凸部は電界が集中するため低電流密度で凹凸ができる。すると凸部に電界が集中し陰極点が生じ、高電流密度によって、溶融、蒸発が起き、凹凸がさらに大きくなると考えられる。
図2は、ブラスト処理だけを施した後、溶射処理をした場合(後述する比較例1)の基材と溶射皮膜界面(下部の灰色部分が溶射処理をされた試料である)の光学顕微鏡写真の一例である。ブラスト処理だけでは粗さも不十分であり、さらにブラスト時に基材表面が汚染されるために、汚染物質が界面に残っているのが分かる。
一方、図3は本発明の方法によるもので、ブラスト処理された試験片を、例えば、600℃で1時間加熱して表面に酸化膜を形成した後真空アーククリーニング処理を施し、溶射処理をした場合(後述する実施例1)の光学顕微鏡写真である。
この顕微鏡写真から次のように考えられる。
(1)酸化物、ブラスト処理による汚染物質などがほぼ完全に取り除かれ、清浄な表面が得られる。
(2)表面が薄く溶融し、新しい表面が露出するため、表面が活性化している。
(3)酸化物除去時の強いアークによって薄く溶融した基材の一部が上方に持ち上げられるため、粗さの山と山の間隔もブラストだけよりも小さい。このとき持ち上げられた瞬間にアークは他の部分に移るために、溶融部分が落下しながら凝固する。このため、凹凸部にキノコ型の山が形成される。キノコ型の傘の下に溶射皮膜が入り込むので、強いアンカー効果'が発揮される。
このような機構によって、基材−皮膜界面は清浄であり、基材と皮膜は拡散を伴って結合し密着強度が著し高い溶射皮膜が形成されるものと考えられる。
先に記載した通り、皮膜の密着力の向上は皮膜として最も基本的な要件であり、皮膜を用いるすべての機器の性能を向上させることが可能である。その中でも、密着力の向上や酸化物の除去によって初めて可能となる具体例について詳述する。
(1)自動車用エンジンの軽量化、コンパクト化
周知のように自動車の燃費の向上は、自動車メーカーにとって重要な課題であり、燃費の向上のためには車重の低減が大きな要件である。車の部品の中で最も重いエンジンを軽くすることによって、エンジンを固定する各種の部品、メンバーも軽量化でき、波及効果が期待できる。
このためシリンダーブロックを軽量なアルミニウム合金で作製し、これに溶射法で硬質な金属を成膜して、シリンダーを作ることが各社で開発されている。この方法にはシリンダー間の寸法を縮小できると言うメリットもあり、エンジンを横置きして、前輪を駆動するレイアウトの車には一石二鳥と言える方策である。
しかし、実用化を妨げている最大の問題点は皮膜の密着力の低さの故に、各自動車メーカーとも10万キロ、20万キロ走行後にも、シリンダーを形成する皮膜が剥離しないという確信が持てないのが現状である。
本発明の溶射方法を用いれば、皮膜の密着力を現在の実用化されているものの3倍程度にまで高めることは可能で、軽量・コンパクトなシリンダーの製造に有力な手法となり得ることが期待できる。
(2)航空機用・発電用ガスタービンエンジンの高効率化
ガスタービンエンジンは高出力化と高効率化のために、タービン入り口温度はますます高くなっており、高温・高速の燃焼ガスにさらされるタービン翼には断熱皮膜(TBC)が不可欠である。現在用いられているTBCは、ボンドコートとして用いられるCoNiCrAlYと断熱の役割があるZrO−Y(PSZ)の2層からなる。しかし、特に運転が過酷な発電用ガスタービンでは、断熱皮膜の寿命は約半年と言われており、断熱皮膜の長寿命化が高効率の鍵となっている。
TBCに関しては多くの研究結果があり、皮膜の剥離の原因はボンドコートであるCoNiCrAlYの表面に発生する酸化物であることが明らかとなっている。周知のように酸化や腐食現象では、酸化物、腐食生成物が一種の触媒になって、さらに酸化、腐食が進行する。
そこでTBCの皮膜形成に当たって、本発明を適用すれば、
1.基材とCoNiCrAlYの密着強度を格段に高めることができる。
2.溶射成膜されたCoNiCrAlYの表面からほぼ完全に酸化物を除去できる。
3.CoNiCrAlYとPSZの密着力を格段に高めることができる。
などの理由から、TBCの耐剥離寿命を大幅に伸ばすことが可能と考えられる。このため航空機エンジンにこの技術が採用されれば、メインテナンスの間隔を延ばすことができ、経済的な効果は計り知れない。
(3)皮膜中に酸化物を含まない減圧プラズマ溶射の開発
金属皮膜を減圧プラズマ溶射装置で成膜した場合でも、たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)で皮膜断面を観察すると、少量の酸化物が存在することは、よく経験することである。この少量の酸化物が、時として機械的性質を低下させ、耐食性を劣化させる原因となっているが、これまでどのような溶射法でも、皮膜中に全く酸化物を含まないで成膜することはできていない。したがって、溶射皮膜から酸化物を完全に除去できる技術が開発されれば、画期的といえる。
本発明において、減圧プラズマ溶射法を用いて溶射中に真空アーククリーニング処理を連続して行えば、真空アーククリーニング処理によるアークは酸化物に選択的に作用するので、ほとんど酸化物を含まない溶射皮膜を形成することが可能と考えられる。
先ず、鉄鋼基材を試料とし、その端面を#20、#24、#36を混合したアルミナ粒子を使用し手動でブラスト処理を行った。ブラスト空気圧0.7MPa、ノズル径8mm、基材−ノズル間距離は約100mmである。ブラスト処理終了後の試料を600℃、1時間電気炉内で加熱した。表面に膜厚み6〜7μmの酸化膜が形成されていた。
上記試料を図1に示した真空容器内の支持具4に設置し、金属基材試料を陰極とし、真空容器1内を100Pa以下に排気し、Arガス雰囲気とした。容器内の排気後、試料と電極間に直流電流を印加し、直流アーク放電を生起させた。電極間距離は、20mm、40mmとし、電流は20、30、60、90Aとし、アーク時間は任意として真空アーククリーニング処理で酸化膜の除去を行った。
真空アーククリーニング処理した試料にプラズマ溶射により円筒型試料端面に溶射皮膜を形成した。溶射材料はSUS316ステンレススチールを使用し、溶射皮膜の厚さは200μmを目標とした。
溶射条件は、アーク電流:800A、溶射距離:100mm、溶射角度:90°、主ガス:Ar(0.35MPa)、補助ガス:He(0.69MPa)、吐出量:30g/分とした。
次に、溶射皮膜の形成された試料をJIS H8666の溶射皮膜試験方法に準じて皮膜の密着強度を測定した。
図4に示すように、A試験片8は、上記に記載した前処理を施し、溶射を施工して、その上部端面には皮膜を形成したものである。A試験片8は直径25mm、長さ40mmの円柱状で反対側の端面には引張り試験機のジグに固定するために、M16のネジが切ってある。
同寸法のB試験片9にはブラストだけを施し、A試験片8、B試験片9を強力な接着剤で接着した。この測定ではエポキシ樹脂系の接着剤(商品名:アラルダイトAT−1、
チバガイギー株式会社製)を使用し、150℃、40分加熱して接着した。この接着剤の強度は約85N/mmである。その後、A、B両試験片の他端にチャッキング用の棒材をねじ止めして、引張り試験機に取り付け、引張試験を行って皮膜の密着強度を測定した。
得られた測定結果を表1に示す。
表中、試験片番号中実施例1〜5は、それぞれ次のような条件で得られたものである。
実施例1、2は電極間距離40mm、実施例3〜5は電極間距離20mmとした。また、電流値は、実施例1、3が30A、実施例2が60A、実施例4が20A、実施例5が90Aである。アーク時間は、実施例1〜3が3秒、実施例4が1秒、実施例5が5秒である。
比較例1は、溶射前処理として加熱による表面酸化処理、真空アーククリーニング処理を施さないもの、比較例2は、溶射前処理としてブラスト処理、加熱による表面酸化処理を施さないもので、その他の点は実施例1のものと同様である。
通常のブラスト処理だけの場合(比較例1)の密着強度は、74N/mmであり、真空アーククリーニング処理のみの場合(比較例2)は、57N/mmであるが、本発明の方法では平均88N/mmであった。しかもこの場合、すべての試験片で、剥離は接着剤の破断によるものであるから、皮膜の実質の密着強度はさらに高いことは明らかである。
本発明を実施する真空アーククリーニング装置の一例の概略構成図である。 ブラスト処理だけを施した場合の基材と溶射皮膜界面の光学顕微鏡写真の一例である。 本発明を実施した場合の基材と溶射皮膜界面の光学顕微鏡写真の一例である。 密着強度を測定する溶射皮膜試験の概略図である。
符号の説明
1 真空容器
2 銅電極(陽極)
3 金属基材(陰極)
4 支持具
5 絶縁体
6 電源
7 のぞき窓
8 A試験片
9 B試験片

Claims (12)

  1. 金属基材表面をブラスト処理し、次いで大気雰囲気中で加熱する表面酸化処理を施して前記金属基材表面に3〜10μmの酸化膜を形成し、次いで真空アーククリーニング処理を行った後、溶射処理をする金属基材表面に密着性に優れた溶射皮膜を形成する溶射方法。
  2. 前記溶射皮膜が金属、合金、セラミック、及びサーメットのいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の溶射皮膜を形成する溶射方法。
  3. 前記溶射皮膜がステンレススチールであることを特徴とする請求項1または2記載の溶射皮膜を形成する溶射方法。
  4. 前記溶射処理に続いて真空アーククリーニング処理を行い、セラミック溶射をする金属基材表面に密着性に優れた溶射皮膜を形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶射方法。
  5. 前記溶射処理が減圧溶射処理である場合、溶射中にも真空アーククリーニング処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶射皮膜を形成する溶射方法。
  6. 前記大気雰囲気中での加熱を、480℃〜700℃の温度で、15〜120分の時間行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶射皮膜を形成する溶射方法。
  7. 前記真空アーククリーニング処理を行った金属基材表面の粗さ(Ra)を4〜5μmとすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶射皮膜を形成する溶射方法。
  8. 前記金属基材に鉄鋼基材を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶射皮膜を形成する溶射方法。
  9. 前記請求項1〜のいずれか1項に記載の溶射方法で得られる金属材料であって、前記金属基材の表面に溶射処理により形成された溶射被膜を有し、該溶射被膜のJIS H8666に準じて測定した密着強度が86N/mm 以上であることを特徴とする金属材料
  10. 前記溶射皮膜が金属、合金、セラミック、及びサーメットのいずれか1つであることを特徴とする請求項9に記載の金属材料
  11. 前記溶射皮膜がステンレススチールであることを特徴とする請求項9又は10に記載の金属材料
  12. 前記金属基材に鉄鋼基材を用いたことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の金属材料
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