JP4646429B2 - 光プローブ顕微鏡 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、プローブと試料間に働く力などを利用して、高分解能で試料表面の形状の観察や物性の観察を行うのと同時に高分解能の光学特性分布の観察を行う光プローブ顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に光プローブ顕微鏡では、光源には主にCWレーザーや繰り返し数の多いパルスレーザーが用いられることが多く、Arレーザー,HeCdレーザーなどのCWレーザーを光源とした場合には、アナログタイプあるいはフォトンカウンティングタイプのフォトマルチプライヤーやアバランシェフォトダイオードなどの光検出器をそのまま用いることができる。また、チタンサファイヤレーザーなどで、1kHz以上の繰り返し数の高いパルスレーザーでも同様の光検出器を用いることができる。この場合、特に、アナログ方式の光検出器を用いる場合には、ロックインアンプを用いることで、パルス状の光信号を直流信号に変換して取り出すことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これに対して、試料物性評価のため波長可変レーザーなど、50Hz以下の繰り返し数の少ないパルスレーザーを用いた場合には、ロックインアンプを使用すると、パルス幅が変調周波数に対して極端に狭く信号が検出されにくいことに加えて、ロックインアンプの時定数を大きめにとらなくてはならないため、信号変化に対する応答速度が遅くなるという問題がある。また、フォトンカウンティングを行う場合にも、フォトンカウントが可能な光パルスが出力されている時間が数十ナノ秒程度であり、フォトンカウンターの繰り返しパルスへの応答性は数十ナノ秒程度のデッドタイムで制限されることから、十分なカウント数を得ることが難しいと考えられる。また、プローブ顕微鏡では、試料表面を走査することによって、形状情報を連続的に取得しており、光情報は、この形状情報と同期した形で取り込む必要がある。このようなことから、本発明では、繰り返し数の少ないパルスレーザーを用いる光プローブ顕微鏡において、パルスレーザーの周波数とは非同期に、形状信号の取得と同期したタイミングで光信号を取り込み2次元画像化を行うことを可能にすることを課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明では、このような繰り返し数の少ないパルスレーザーを使用した場合の問題点に対応するため、少なくともパルスレーザー光源、光プローブ、試料プローブの相対的なXY面内走査およびZ方向変位手段、制御手段、データ収集手段、入射光学系、集光光学系、光検出器を備えた光プローブ顕微鏡において、さらに、光検出器のピーク値をホールドするピークホールド回路を含む光信号変換回路を用いることで、パルスレーザーの出力光に起因する光検出器出力のパルスピーク値をパルスレーザー周波数のタイミングとは非同期でデータ収集手段に取り込み、2次元画像化できるようにした。特に、Qスイッチ方式のパルスレーザーにおいて、パルスレーザーのランプ発光と同期したランプパルスをリセットパルスとすることによって、前記ピークホールド回路のホールド値をリセットし、ピークホールド回路の後段に、さらに自己復帰型の第2のピークホールド回路を設置し、リセットパルスと次の光信号のピーク値の間のホールド値が断絶せずにホールド値が保持されるようにした。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【0006】
図1は、本発明の光プローブ顕微鏡の一つの構成図を示したものである。図1において、先端部分に局在した光の場を有する光プローブ11と、その光プローブ11の先端と試料の間を近接した距離に制御するためのプローブ位置検出手段12、試料プローブの相対的なZ方向変位手段である微動機構13および制御手段14と、前記プローブを試料表面上XY面内で2次元的に走査する走査手段15と、前記局在した光の場を発生するためのパルスレーザー光源16と、プローブに光を導入するための入射光学系17、プローブ11先端に近接した試料22表面から放射される光を集光するための光学系18と、データ収集手段19とを有し、さらに、光検出器20および信号変換手段21を有している。ここで、光検出器20によって得られた信号のピーク値をホールドするピークホールド回路を含む信号変換手段21を経由して、データ収集手段19で信号強度を取得するようになっている。
【0007】
図2は、Qスイッチ方式のパルスレーザーから出力されるパルス信号と光検出器で得られる信号を模式的に示したものである。図中の▲1▼はランプトリガ信号、▲2▼はQスイッチトリガ信号、▲3▼は光検出器の信号をそれぞれ示している。図2(a)は、0.1秒程度の時間スケールで、パルスの周期的な発生の状態を示した図で、図2(b)では、時間スケールを拡大したもので、ランプパルスから少し遅れてQスイッチパルスが入り、Qスイッチパルスとほぼ同時に光信号が観測されている状態を示している。
【0008】
図3は、信号変換手段として、1段のピークホールド回路を用いた場合に、光検出器の出力信号が信号変換手段を経由した場所での信号波形を模式的に示している。出力信号▲3▼は、ピーク値をホールドした後、緩やかに減少し、再びピーク値をホールドすることで、段差の小さなのこぎり型の波形を示す。このように信号を変換することで、レーザーパルスの周波数とは非同期にデータ収集手段に信号が取り込めるようにできる。ただし、自己復帰のためパルス間で一定速度で信号が減少するため、最終的な2次元画像において、この変動分がノイズとして入ってしまう場合がある。
【0009】
このような変動が生じないようにする方法としては、自己復帰型ではなく、リセットパルスでピークホールド値をリセットする方法をとることができる。図4は、信号変換手段の周辺部分の構成を示した図であるが、光検出器20からの信号は信号変換手段21に送られ、ここでピークホールドされ、データ収集手段に送られる。信号変換手段21では、レーザーからのリセットパルスによって、ホールド値がリセットされる。このリセットパルスとしてランプトリガ信号を用いた場合の波形を図5に模式的に示す。光信号パルスのピーク値は、ピークホールドされ、次の光信号パルスで、更新されるようになる。ただし、この更新までの間に、ランプトリガとQスイッチトリガの時間ずれ分100マイクロ秒程度のブランクが生じる。このブランク時間は相対的に短いため、データ収集手段で、このタイミングでデータ取り込みが行われなければ問題は生じないが、仮に、このタイミングでデータ取り込みが行われると、2次元画像中にブランク点が生じることになる。
【0010】
一方、Qスイッチパルスをリセットパルスとして使用した場合の波形を図6に示す。この場合、ブランク時間を短くすることができるが、リセットパルスと光信号のピークが時間的に重なってしまい、ピーク値が完全な高さでホールドされないこともある。
【0011】
次に、図7は、信号処理手段21を1段目のピークホールド回路23と2段目のピークホールド回路24の2段構成として、1段目のピークホールド回路をランプパルスによりリセットする方式とし、2段目のピークホールド回路を自己復帰型とした構成を示したものである。このときの信号波形は、図8に示すように、ピーク値が平坦にホールドされ、ランプパルスで1段目のピークホールド回路がリセットされた後、2段目のピークホールド回路で、1段目のピークホールド回路のみではブランク部分となる部分で、ピーク信号値をさらにホールドするとともに、自己復帰型で減衰を始めるためパルスごとにピーク値が更新するようになっている。これによって、パルスレーザーの周波数とは非同期で、データ収集手段によって、形状信号と同期したタイミングで光信号を取り込み2次元画像化を行うことが可能である。
【0012】
【発明の効果】
以上で説明したように、本発明のピークホールド回路を含む信号処理手段を有するプローブ顕微鏡によって、繰り返し数の少ないパルスレーザーを用いても、パルスレーザーの周波数とは非同期で、データ収集手段によって、形状信号と同期したタイミングで光信号を取り込み2次元画像化を行うことが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光プローブの構成を示す図
【図2】Qスイッチ方式のパルスレーザーから出力されるパルス信号、および、光検出器で得られる信号を模式的に示した図
【図3】Qスイッチ方式のパルスレーザーから出力されるパルス信号、および、光検出器で得られ信号が変換手段を経由した場所での信号を模式的に示した図
【図4】信号変換手段の周辺部分の構成を示した図
【図5】Qスイッチ方式のパルスレーザーから出力されるパルス信号、および、光検出器で得られ信号が変換手段を経由した場所での信号を模式的に示した図
【図6】Qスイッチ方式のパルスレーザーから出力されるパルス信号、および、光検出器で得られ信号が変換手段を経由した場所での信号を模式的に示した図
【図7】信号変換手段の周辺部分の構成を示した図
【図8】Qスイッチ方式のパルスレーザーから出力されるパルス信号、および、光検出器で得られ信号が変換手段を経由した場所での信号を模式的に示した図
【符号の説明】
11 光プローブ
12 プローブ位置検出手段
13 微動手段
14 制御手段
15 走査手段
16 パルスレーザー光源
17 入射光学系
18 集光光学系
19 データ収集手段
20 光検出器
21 信号変換手段
22 試料
23 ピークホールド回路
24 ピークホールド回路

Claims (6)

  1. 少なくともパルスレーザー光源、光プローブ、試料プローブの相対的なXY面内走査およびZ方向変位手段、制御手段、データ収集手段、入射光学系、集光光学系、光検出器を備えた光プローブ顕微鏡において、
    さらに、光検出器のピーク値をホールドするピークホールド回路を含む信号変換回路を備え、
    前記データ収集手段が、前記信号変換回路によりホールドした前記パルスレーザーの出力光に起因する前記光検出器出力のパルスピーク値をパルスレーザー周波数とは非同期かつ形状信号と同期したタイミングで取り込むことにより、2次元画像化することを特徴とする光プローブ顕微鏡。
  2. 前記ピークホールド回路が自己復帰型であり、ホールド値が前記ピーク値の変動に追従することを特徴とする請求項1記載の光プローブ顕微鏡。
  3. 前記パルスレーザーのランプ発光と同期したランプパルスをリセットパルスとすることによって、前記ピークホールド回路のホールド値をリセットし、前記ホールド値が前記ピーク値の変動に追従することを特徴とする請求項1記載の光プローブ顕微鏡。
  4. 前記パルスレーザーが、Qスイッチ方式のパルスレーザーであり、Qスイッチパルスをリセットパルスとすることによって、前記ピークホールド回路のホールド値をリセットし、前記ホールド値が前記ピーク値の変動に追従することを特徴とする請求項1記載の光プローブ顕微鏡。
  5. 前記ピークホールド回路の後段にさらに第2のピークホールド回路を有し、前記リセットパルスと次の光信号のピーク値の間の前記ホールド値が断絶せずにホールド値が保持されることを特徴とする請求項3記載の光プローブ顕微鏡。
  6. 前記第2のピークホールド回路が、自己復帰型であることを特徴とする請求項記載の光プローブ顕微鏡。
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