JP4646119B2 - ブレーキディスクとその表面処理方法及びブレーキディスクの表面処理装置 - Google Patents
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Description
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、摩擦面(5a)が表面処理されたブレーキディスクであって、前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層(5e)が形成されており、前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にいくほど金属組織が微細な結晶粒化していることを特徴とするブレーキディスク(5)である。
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクを備える車輪の縦断面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの平面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。以下では、新幹線などの鉄道車両のディスクブレーキ装置を例に挙げて説明する。
図4は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの表面処理方法を説明するための図である。
図4に示す表面処理工程は、摩擦面5aを表面処理する工程であり、摩擦面5aの表層に硬化処理層5bを形成する硬化処理工程を含み、この硬化処理工程は摩擦面5aをショットピーニング処理する工程である。この硬化処理工程では、図4に示すように、アルミナ、ジルコニア、シリカなどの無機質素材からなる粒子(ショット粒子)6が摩擦面5aに多数投射されて、この摩擦面5aの表層に残留圧縮応力を付与し硬化処理層5bが形成される。
図5は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置を概略的に示す構成図である。
図5に示す表面処理装置7は、摩擦面5aを表面処理する装置である。表面処理装置7は、図5に示すように、硬化処理装置8と、駆動装置9と、設定装置10と、制御装置11などを備えている。表面処理装置7は、摩擦面5aに粒子6を噴射してこの摩擦面5aを表面改質する。
図5に示す設定装置10によって摩擦面5aの硬化処理条件が設定されると、この硬化処理条件に応じて硬化処理装置8及び駆動装置9を制御装置11が動作させる。このため、駆動装置9の駆動速度(回転速度)を制御装置11が制御して、駆動装置9が硬化処理装置8を連続して回転するとともに、粒子6の噴射圧力や噴射時間などを制御装置11が制御して、硬化処理装置8が摩擦面5aに粒子6を噴射する。その結果、摩擦面5aに圧縮残留応力が付与されて摩擦面5aの表層に硬化処理層5bが形成される。
(1) この第1実施形態では、ブレーキディスク5の摩擦面5aの表層に硬化処理層5bが形成されている。このため、ブレーキディスク5の強度を向上させることができる。例えば、制動時にブレーキディスク5に発生する熱応力によって微小な熱亀裂が発生するのを抑制することができるとともに、微小な熱亀裂が発生してもこの熱亀裂の進展を防止することができる。その結果、鉄道車両用ディスクブレーキ装置の場合には、保全検査周期間(二年間)におけるブレーキディスク5の長寿命化が図られて、ブレーキディスク5の交換に要する費用を削減することができる。また、従来技術4のようなめっき又は溶射によって硬化層を形成する場合に比べて、摩擦面5aの表層に強固な硬化処理層5bを形成することができる。さらに、ブレーキディスク5を加工する加工工程の後に、摩擦面5aの表層に硬化処理層5bを形成する硬化処理工程を追加することによって、摩擦面5aを簡単に硬化処理することができる。その結果、従来技術1〜3のような特別な金型を製造したり組立に手間をかけたりする必要がなくなるため、製造工程が簡単になってブレーキディスク5を安価に製造することができる。
図6は、この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。以下では、図1〜図3に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図6に示すブレーキディスク5には、摩擦面5aと、フィン部5cと、貫通孔5dと、硬化処理層5eなどが形成されている。硬化処理層5eは、熱処理によって形成されており、制動時に発生する熱によって摩擦面5a側の金属組織の結晶粒が微細化するように、摩擦面5a側の金属組織が粗大化されている。硬化処理層5eは、ブレーキディスク5の厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、表面にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化(結晶粒が粗大化)しており、内部にいくほど金属組織が微細な結晶粒化(結晶粒が微細化)している。
図7は、この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの表面処理方法の工程図である。
図7に示す表面処理工程#100は、摩擦面5aを熱処理する工程であり、摩擦面5aを焼なましする焼なまし工程#110と、焼なまし工程#110後の摩擦面5aを焼入れする焼入れ工程#120と、焼入れ工程#120後の摩擦面5aを焼もどしする焼もどし工程#130とを含む。
図8は、この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置を概略的に示す構成図である。
図8に示す表面処理装置7は、硬化処理装置12と、駆動装置13と、温度検出装置14と、設定装置15と、制御装置16などを備えている。表面処理装置7は、硬化処理装置12によって摩擦面5aを加熱するとともにこの摩擦面5aを冷却してこの摩擦面5aを熱処理する。
図8に示す設定装置15によって摩擦面5aの硬化処理条件が設定されると、ブレーキディスク5を駆動装置13が連続して回転しながら、硬化処理装置12が所定の焼なまし温度で所定時間だけ摩擦面5aを加熱して徐冷する。次に、硬化処理装置12が所定の焼入れ温度で摩擦面5aを再度加熱した後に、冷却剤を噴射して摩擦面5aを冷却する。次に、硬化処理装置12が所定の焼もどし温度で摩擦面5aを再度加熱して冷却する。その結果、摩擦面5aが熱処理されて摩擦面5aの表層に硬化処理層5eが形成される。
この第2実施形態には、硬化処理層5eが熱処理によって形成されている。このため、例えば、摩擦面5a側の金属組織が粗大化されて、制動時に発生する熱によってこの摩擦面5a側の材料組織が動的に変化して結晶粒が微細化する。このため、制動を繰り返す毎に摩擦面5aの表層が徐々に硬化して、ブレーキディスク5の強度を向上させることができる。その結果、制動時の熱応力による亀裂の発生を抑制することができるとともに、亀裂が発生したような場合にはこの亀裂の進展を可能な限り遅延又は停止させることができる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
この実施形態では、鉄道車両のブレーキディスク5を例に挙げて説明したが、自動車、自動二輪車又は自転車などのブレーキディスクについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、表面硬化処理としてショットピーニング処理を例に挙げて説明したが、ブラスト処理などについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、表面処理装置7によって摩擦面5aを表面処理しているが、鉄道車両の台車の軸箱を洗浄するために使用されるブラスト装置などを利用して摩擦面5aを表面処理することもできる。
2 ディスクブレーキ装置
5 ブレーキディスク
5a 摩擦面
5b 硬化処理層
5c フィン部
5e 硬化処理層
6 粒子
7 表面処理装置
8 硬化処理装置
12 硬化処理装置
Claims (3)
- 摩擦面が表面処理されたブレーキディスクであって、
前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層が形成されており、
前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にいくほど金属組織が微細な結晶粒化していること、
を特徴とするブレーキディスク。 - ブレーキディスクの摩擦面を表面処理するブレーキディスクの表面処理方法であって、
前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層を形成する熱処理工程を含み、
前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にいくほど金属組織が微細な結晶粒化し、
前記熱処理工程は、
前記摩擦面を焼なましする焼なまし工程と、
前記焼なまし工程後の前記摩擦面を750〜860℃で焼入れする焼入れ工程と、
前記焼入れ工程後の前記摩擦面を300〜600℃で焼もどしする焼もどし工程とを含むこと、
を特徴とするブレーキディスクの表面処理方法。 - ブレーキディスクの摩擦面を表面処理するブレーキディスクの表面処理装置であって、
前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層を形成する硬化処理装置と、
前記摩擦面の温度を検出する温度検出装置と、
前記温度検出装置の検出結果に基づいて前記硬化処理装置を制御する制御装置とを備え、
前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にいくほど金属組織が微細な結晶粒化し、
前記制御装置は、前記硬化処理装置が前記摩擦面を焼なましし、焼なまし後のこの摩擦面を750〜860℃で焼入れし、焼入れ後のこの摩擦面を300〜600℃で焼もどしするように、この硬化処理装置を制御すること、
を特徴とするブレーキディスクの表面処理装置。
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