JP4644971B2 - 皮革様シート状物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は皮革様シート状物の環境に配慮した製造方法に関する。さらに詳しくは、皮革様シート状物の製造において有機溶媒を使用することなく複合繊維の1成分を除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維からなるシートに高分子弾性体を付与してなる皮革様シート状物は、衣料用途、資材用途ともに広く用いられている。特に0.3dtex以下の極細繊維を用いた皮革様シート状物は天然皮革に似た風合い、タッチを有しており、近年その使用が拡大している。該極細繊維を得る手段としては、複数の高分子物質を用いて海島型の複合繊維もしくはポリマーブレンド繊維を作り、その中の一成分を有機溶媒によって除去する方法が、得られる繊維が細く、繊維間に適度な空間ができ柔軟性に優れるため広く採用されている。
【0003】
近年、有機溶媒の使用に対して環境への悪影響が懸念され、該皮革様シート状物の製造に関しても有機溶剤を使用することなく製造することが要望されるようになってきた。例えば、アルカリ水溶液を用いた極細繊維発現処理が特開平6−316814号公報に示されているが、該処理では補強剤が付与できず、極細繊維発現処理に有機溶媒を用いたものと比較すると風合いと品位の劣るものしかできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らは、かかる従来技術の背景に鑑み、鋭意検討の結果、本発明に達した。即ち、極細繊維発現型繊維シートに補強剤を付与せしめた後、有機溶剤を用いることなくアルカリ水溶液により極細繊維を発現し、その後溶液タイプもしくはエマルジョンの高分子弾性体を付与し、補強剤と高分子弾性体および繊維が風合いを損ねることなく接着を向上させ、風合いと耐久性に優れた皮革様シート状物を環境への負荷を軽減した上で得られることを見出したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる従来技術の問題を解決するために、以下のような構成を有する。即ち、皮革様シート状物の製造方法であって、
1.アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる少なくとも2種類以上の高分子物質の組み合わせからなる極細繊維発現型繊維を用いてシートを作成する工程。
2.シートに鹸化度90%以上のポリビニルアルコールを付与する工程。
3.シートを150℃以上195℃未満の温度に加熱する工程。
4.シートをアルカリ水溶液で処理して、前記シートの形態は実質的に保ちつつ極細繊維を発現せしめる工程。
5.シートに高分子弾性体の溶液もしくはエマルジョンを含浸して高分子弾性体を付与する工程。
6.シート中の補強剤および高分子弾性体の溶媒を一部あるいは全て除去する工程。
をこの順で行うことを特徴とする皮革様シート状物の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の皮革様シート状物の製造にあたり、まずアルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子物質の組み合わせからなる極細繊維発現型繊維を用いてシートを作成する工程が必要である。
【0007】
本発明でいう高分子物質がアルカリ水溶液に対する溶解性を異にするとは、極細繊維を発現せしめる条件下で溶解速度が20倍以上、より好ましくは40倍以上異なることをいう。
【0008】
本発明において、アルカリ水溶液に対する溶解性の高い高分子物質は特に限定はされないが、アルカリ溶解速度と紡糸安定性の点から、5-ソディウムスルホイソフタル酸、ポリエチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸等を5〜20モル%共重合した共重合ポリエステルが好ましい。特に耐熱性、弱アルカリ溶解性の点から5-ソディウムスルホイソフタル酸を5〜20モル%共重合したポリエチレンテレフタレート共重合体を用いることがより好ましい。また、これら共重合体は2元のみならず3元以上の多元共重合体であってもよい。
【0009】
本発明において、アルカリ水溶液に対する溶解性の低い高分子物質として、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、共重合ポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド、共重合ポリアミド等を好ましく用いることができる。
【0010】
本発明は、アルカリ水溶液を用いて極細繊維を発現せしめることを特徴とするが、そのようなアルカリ水溶液としては特に限定されることはなく、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア塩等を用いることができる。また、適宜熱を加えながら処理することは処理の効率を高める上で好ましい。
【0011】
極細繊維発現繊維の形態としては、特公昭48−22126号公報等に示されたような高分子相互配列体繊維、特公昭51−21041号公報、特公昭60−21904号公報等で示された混合紡糸繊維、特開平9−310230号公報等で示された分割型複合繊維等、目的に応じて適宜選択して使用することが好ましい。かかる繊維から得られる極細繊維の繊度は0.3dtex以下であることが、柔軟性等の風合いの点から好ましい。
【0012】
単繊維繊度は0.3dtex以下であるのが好ましいが、必ずしも不織布に含まれている単繊維全てが0.3dtex以下である必要はなく、不織布が実質的に0.3dtex以下の単繊維で構成されている状態となればよい。
【0013】
かかる極細繊維発現型繊維をシート化するにあたりその形態としては、特に限定されることはなく、織物、編物、不織布等を好ましく用いることができるが、柔軟性、質感の点で不織布がより好ましい。かかる不織布としては特に限定されることはなく、短繊維不織布、長繊維不織布いずれでも用いることができる。また不織布の製造方法もスパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、抄紙法、カード法等のいずれでもよく、必要に応じて、ニードルパンチ法、水流交絡法等で絡合を施してもよい。
【0014】
本発明において、上述の不織布に補強剤として特定の高分子物質を付与する。
【0015】
かかる高分子物質としては、
(1)40℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に20分間浸漬したあとの重量減少率が10%以下。
(2)N,N-ジメチルホルムアミドに60分浸漬したあとの重量減少率が5%以下。
(3)98℃の熱水中に30分浸漬したあとの重量減少率が95%以上。
なる特性を全て満たす必要がある。
【0016】
(1)の重量減少率は5%以下が好ましく、3%以下であればより好ましい。また、(2)の重量減少率は3%以下が好ましい。さらに(3)の重量減少率は97%以上が好ましく、100%であればより好ましい。
【0017】
かかる特性を有することにより、極細繊維発現処理時のフェルト形態および機能保持、ポリウレタンとの接着性をコントロールできることから品位、風合い、物性を目的に応じて任意に制御することができる。かかる高分子物質としてはポリビニルアルコール、あるいはその誘導体、水溶性でんぷん、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸エステル部分ケン化物、ポリアクリルアミド、酢酸セルロース等の有機物質が好ましい。鹸化度が90%未満のポリビニルアルコールを補強剤として用いた場合アルカリ水溶液に溶出してフェルト形態および機能保持の効果が不十分となるため、本発明においては特に鹸化度が90%以上のポリビニルアルコールが好ましく、鹸化度が95%以上のポリビニルアルコールであればさらに好ましい。
【0018】
また、アルカリ水溶液への溶解性を下げる目的で、これらの補強剤を不織布に付与した後、熱処理することが極めて効果的であるので好ましい。この熱処理の温度は、130℃以上が好ましく、130℃〜195℃であればより好ましい。130℃未満であれば効果が不十分であるので好ましくなく、195℃を越えると不溶化し、除去できなくなる場合があるので好ましくない。このような補強剤の除去処理における易制御性の点から、熱処理の温度は、150℃〜190℃であればさらに好ましい。処理時間はシートの形態、熱処理装置の性能により、状況、目的に応じて適宜決めることができる。
【0019】
本発明において、極細繊維発現処理する際の除去溶媒としては、アルカリ水溶液を用い、必要に応じて加熱、攪拌、絞液等の操作を行い、補強剤の付与された不織布中の繊維の易溶解性成分を除去する。この際、より溶解性の低い高分子物質が一部溶解してもかまわないが、この処理中にシートの形態、機能を実質的に維持し続ける条件下で行うことが必要である。
【0020】
次に、高分子弾性体の溶液もしくはエマルジョンの付与処理については含浸法、スプレー法、コーティング法等を施したものを熱による乾式凝固法、水等による湿式凝固法、適宜スチーム処理等の常法で処理することができる。
【0021】
本発明において、高分子弾性体としてはポリウレタン、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアクリル酸エステル等を好ましく用いることができるが、風合いを柔軟にする点でポリウレタンがより好ましい。
【0022】
本発明において、高分子弾性体の溶媒としては、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、メチレングリコールモノエチルエーテル等を好ましく用いることができる。
【0023】
高分子弾性体の総付与量はシート構成繊維に対し20〜120重量%付与するのが好ましい。
【0024】
本発明において、高分子弾性体溶液を付与した後、凝固し温水中に漬け、補強剤を除去した後、常法により必要に応じ、スライス、バフィングして目的とする銀付用基材もしくはスエード用基材を得ることができる。この基材は適宜の後処理加工に供することができる。
【0025】
【実施例】
本発明を下記の実施例により説明する。実施例中における部とは重量部のことを指す。本発明における溶解速度、重量減少率は以下の方法により測定した。
(1)溶解速度
JIS K6911の耐薬品性試験に準じて処理時間を1時間として得た重量比より求めた。
(2)重量減少率
(a)補強剤をポリプロピレンの不織布2gに対して合計重量がほぼ5gとなるように含浸して付与したものをW0gとし、このものを恒温槽で液温40℃に保たれた10重量%水酸化ナトリウム水溶液300mL中に20分間浸漬した後の重量をW1gとして、次式により求めた。
重量減少率=(W0−W1)/(W0−2)×100(%)
(b)補強剤をポリプロピレンの不織布2gに対して合計重量がほぼ5gとなるように含浸して付与したものをW0gとし、このものを20℃のN,N-ジメチルホルムアミド300mL中に60分間浸漬した後の重量をW2gとして、次式により求めた。
重量減少率=(W0−W2)/(W0−2)×100(%)
(c)補強剤をポリプロピレンの不織布2gに対して合計重量がほぼ5gとなるように含浸して付与したものをW0gとし、このものを恒温槽で98℃に保たれた熱水中に30分間浸漬した後の重量をW3gとして、次式により求めた。
重量減少率=(W0−W3)/(W0−2)×100(%)
実施例1
5-ソディウムスルホイソフタル酸を8モル%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として30部、島成分としてポリエチレンテレフタレートが70部からなる割合で1フィラメント中に島成分が36島含まれる形態であり、平均繊度が、3.8dtexの海島型繊維のステープルを用いてカード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、しかる後、ニードルパンチを施し、不織布を作成した。
【0026】
このシートに鹸化度98%のポリビニルアルコール水溶液を島繊維に対して30部含浸し、乾燥した後150℃で熱処理を施した。上述のポリビニルアルコールの40℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に20分間浸漬したあとの重量減少率は3%、N,N-ジメチルホルムアミドに60分浸漬したあとの重量減少率は3%、98℃の熱水中に30分浸漬したあとの重量減少率は100%であった。
次に、このシートを60℃に加熱した10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて海成分を除去した。
この処理後のシートにポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を島繊維に対して40部含浸付与し、湿式凝固し、90℃の熱水を用いて脱ポリビニルアルコール(同時に脱ジメチルホルムアミド)処理を施した。
【0027】
次にこのシートをスライス、バフィングした後、サーキュラー染色機において分散染料で染色を施した。
【0028】
得られた皮革様シート状物は、耐久性に富み、良好な物性を有するものであった。
比較例1
実施例1と同様にして得た不織布に鹸化度88%のポリビニルアルコール水溶液を島繊維に対して30部含浸し乾燥した後は実施例1と同様に極細繊維発現処理以降の処理を施した。上述のポリビニルアルコールの40℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に20分間浸漬したあとの重量減少率は20%、N,N-ジメチルホルムアミドに60分浸漬したあとの重量減少率は3%、98℃の熱水中に30分浸漬したあとの重量減少率は100%であった。
【0029】
得られた皮革様シート状物は極細繊維発現処理中にポリビニルアルコールの溶出が見られ、柔軟性がなくペーパーライクなものになった。
比較例2
5-ソディウムスルホイソフタル酸を8モル%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として30部、島成分としてポリエチレンテレフタレートが70部からなる割合で1フィラメント中に島成分が36島含まれる形態であり、平均繊度が、3.8dtexの海島型繊維のステープルを用いてカード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、しかる後、ニードルパンチを施し、不織布を作成した。
【0030】
このシートを60℃に加熱した10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて海成分を除去した。
【0031】
このシートに鹸化度98%のポリビニルアルコール水溶液を島繊維に対して30部含浸し、乾燥した後150℃で熱処理を施した。上述のポリビニルアルコールの40℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に20分間浸漬したあとの重量減少率は3%、N,N-ジメチルホルムアミドに60分浸漬したあとの重量減少率は3%、98℃の熱水中に30分浸漬したあとの重量減少率は100%であった。
次に、この処理後のシートにポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を島繊維に対して40部含浸付与し、湿式凝固し、90℃の熱水を用いて脱ポリビニルアルコール(同時に脱ジメチルホルムアミド)処理を施した。
【0032】
次にこのシートをスライス、バフィングした後、サーキュラー染色機において分散染料で染色を施した。
【0033】
得られた皮革様シート状物は、品位が粗く、風合いはペーパーライクなものになった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、有機溶媒を使用することなく複合繊維の少なくとも1成分を除去するため、環境に対する負荷を低減でき、かつ良好な品位と風合いを有する人工皮革を製造することができる。
Claims (5)
- 皮革様シート状物の製造方法であって、
1.アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる少なくとも2種類以上の高分子物質の組み合わせからなる極細繊維発現型繊維を用いてシートを作成する工程。
2.シートに鹸化度90%以上のポリビニルアルコールを付与する工程。
3.シートを150℃以上195℃未満の温度に加熱する工程。
4.シートをアルカリ水溶液で処理して、前記シートの形態は実質的に保ちつつ極細繊維を発現せしめる工程。
5.シートに高分子弾性体の溶液もしくはエマルジョンを含浸して高分子弾性体を付与する工程。
6.シート中の補強剤および高分子弾性体の溶媒を一部あるいは全て除去する工程。
をこの順で行うことを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。 - 補強剤が鹸化度90%以上のポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の皮革様シート状物の製造方法。
- 補強剤を付与したシートを130℃以上の温度に加熱することによって40℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に20分間浸漬したあとの重量減少率を5%以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の皮革様シート状物の製造方法。
- アルカリ水溶液による処理によって発現する極細繊維が繊度0.3dtex以下のポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の皮革様シート状物の製造方法。
- 補強剤を付与したシートを150℃以上195℃未満の温度に加熱することを特徴とする請求項1または3に記載の皮革様シート状物の製造方法。
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