JP4641936B2 - ストラットマウント - Google Patents

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本発明は、自動車におけるストラット型ショックアブソーバーのピストンロッドの先端部に装着されるストラットマウントに関するものである。
自動車のストラットサスペンションにおいて、上下振動を減衰させるためのショックアブソーバーのピストンロッド(以下、単にロッドとも称する。)の先端部に装着されるストラットマウントは公知である(特許文献1など)。
特許文献1に記載されているような一般的なストラットマウントは、ショックアブソーバーの高さ方向に配設されたロッド先端に装着固定される内筒部材と加硫ゴムとが加硫接着により一体化された防振基体と、該防振基体を加硫ゴム部を介して収容固定したブラケットから構成されるものであり、ブラケットにて座席側の車体に装着固定され、ロッドから車体に伝達される振動を減衰する作用を奏するものである。
ストラットマウントは、使用状態において内筒部材と上側のブラケットとの間の加硫ゴムは常時圧縮変形を受けるものであり、その時に内筒部材下側の加硫ゴムが下側のブラケットの間で空隙を発生しないこと、加硫ゴムと下側のブラケットの間で滑りが生じないことが求められる。そのために、通常はブラケットを上下一対の部材から構成し、少なくとも一方に防振基体を収容する凹部が形成されており、防振基体の加硫ゴムを圧縮した状態で収容して上下のブラケット部材を固定することによりストラットマウントが製造される。
特許文献1に開示のような従来のストラットマウントにおいては、ブラケット部材は鋼材にて形成されており、加硫ゴムの圧縮下に上下のブラケット部材を固定する方法として、スポット溶接が一般的に使用されていた。
上記特許文献1に記載の鋼材製のブラケットを使用したストラットマウントは、重量が大きく、車両の軽量化、低燃費化の要請には対応できないものであるため、軽量化されたストラットマウントが求められ、係る要請に対応するものとして、ブラケットをアルミニウム合金にて形成したストラットマウントが公知である(特許文献2)。
特許文献2に開示されたストラットマウントは、軸方向の一端部を筒状に形成したブラケット部材を作製し、該筒状の開口部から防振基体を挿入して筒状開口部を折り曲げて閉鎖することにより製造されるものである。
特開2001−171323号公報 特開2002−274137号公報
しかし、特許文献2記載の発明によれば、軸方向の一端部を筒状に形成したブラケット部材を作製する必要があり、係るブラケット部材はロッド側に加硫ゴムを受け止めるリブを形成すると共に筒状の開口部が折り曲げ閉鎖時に略面板状となるように鋸刃状に加工する必要があり、複雑な加工が必要であって、切削部分も多くて材料的なむだも多く、製造コストが高いものである。
本発明は、軽量であり、しかも簡便に製造できると共にブラケット部材が所定の強度を有しているかを容易に検査可能なストラットマウントを提供することを目的とする。
本発明のストラットマウントは、鍔部を有する内筒部材と少なくとも前記鍔部において接着された加硫ゴム部からなる防振基体、及び前記防振基体を収容したブラケット部材とからなり、前記ブラケット部材はアルミニウム合金製であり、周縁にフランジ部を有し前記防振基体を収容する凹部を有するサスペンションのロッド側の第1ブラケットと、フランジ部を有する車体側の第2ブラケットとからなり、平面視にて各辺が外側に膨出した三角形の形状を有し、前記第1ブラケットのフランジ部と前記第2ブラケットのフランジ部とを複数のスポットかしめにより当接固定することにより形成されており、前記第1ブラケットのフランジ部と前記第2ブラケットのフランジ部の当接部の複数箇所において段差を形成するように構成され、前記第1ブラケットのフランジ部と前記第2ブラケットのフランジ部との各頂点部には取付け用のボルト穴が形成されており、前記第1ブラケットの前記ボルト穴近傍と前記第1ブラケットの凹部を構成する周壁部外側の基部との間に他のフランジ部よりも厚肉の厚肉部が形成されており、前記第1ブラケットのフランジ部における前記ボルト穴間に薄肉部が形成されており、前記第1ブラケットのフランジ部の薄肉部に、スポットかしめにより形成される複数の凸部が配置され、前記段差は隣設する前記凸部の間に配置され、前記凸部の周縁部で前記内筒部材の軸芯方向に凹設される凹溝が前記第1ブラケットの周壁部に形成されている。
係る構成のストラットマウントは軽量であり、しかも簡便に製造できるものである。即ち、特許文献2のブラケット部材と比較すると本発明のブラケット部材はいずれも製造が容易であり、凹部を有するブラケット部材に防振基体を収容配置し、他のブラケット部材を載せて押圧し、第1ブラケットのフランジ部と第2ブラケットのフランジ部とを当接させて複数のスポットかしめを行うことで容易に製造することができる。また、複数のスポットかしめにより形成されたブラケット部材の強度、即ちスポットかしめ部の強度を、内筒部材と段差を構成するフランジ部との間で反対方向に一定の荷重を負荷し、スポットかしめが破壊しないことを確認することにより、容易に検査することができる。
上述のストラットマウントにおいては、前記フランジ部には複数の取付け用のボルト穴が形成されており、前記第1ブラケットの前記ボルト穴近傍と前記周壁部外側の基部との間が他のフランジ部よりも厚肉に形成されており、前記スポットかしめは薄肉部に形成されており、前記段差は隣設する凸部の間に形成されていることが好ましい。
また、フランジ部におけるボルト穴の近傍部分に厚肉部を形成することでストラットマウントの車体への取付け状態においてボルト穴にかかる応力に対する補強効果を奏すると共に、フランジ部におけるボルト穴間に薄肉部を形成することで第1ブラケットのフランジ部全体を厚肉に形成した場合に比べてスポットかしめに必要とされる荷重を小さくできる。
また、スポットかしめされる薄肉部の隣設する凸部の間に段差が配置される、即ち、第1ブラケットの強度を有する部分に段差が形成されていないので、段差がフランジ部全周に形成されている場合に比べて、第1ブラケットと第2ブラケットを剥離する方向の荷重がフランジ部のボルト穴の近傍部分の厚肉部に作用し難い。よって、段差がフランジ部全周に形成されている場合に比べて、第1ブラケットと第2ブラケットを剥離する方向の荷重がスポットかしめ部分に作用し易いので、スポットかしめ部の強度(第1ブラケットと第2ブラケットの剥がれ強度)を正確に検査することができる。
また、凸部の周縁部で内筒部材の軸芯方向に凹設される凹溝が第1ブラケットの周壁部に形成されているので、隣設する凸部の間に段差を配置した場合であっても、検査装置のフランジ部材押圧部材で押圧する段差の押圧面積を確保しつつ、正面視で各辺が外側に膨出した三角形状のブラケット部材の膨出量を小さくできる。
係る構成のストラットマウントは、軽量化されていてしかもボルトにより車体に取り付けたときの取付け部の強度が高く形成されたものであり、しかも中心軸に対して均等に荷重を負荷して検査を行うことができる。
また上記のストラットマウントにおいては、前記周壁部は前記第1ブラケットに形成されており、前記スポットかしめの凸部が前記第1ブラケット側のフランジ部に形成されていることが好ましい。
係る構成のストラットマウントは、車体側の取付け面の構造を平坦で加工穴の少ない構成にすることができるので、全体として簡単な取付け構造であり強度低下の少ないものとすることができる。
また上記のストラットマウントにおいては、前記第2ブラケットは、前記加硫ゴム部と接する部分の厚さが前記フランジ部の厚さよりも厚肉に形成されていることが好ましい。
係る構成のストラットマウントは、サスペンションのロッドから内筒部材の鍔部と加硫ゴム部を通じて負荷される応力に対して高い強度を有するものである。
図1は、本発明の好適な実施形態を示した斜視図であり、ブラケット部材を構成するストラットマウントのショックアブソーバーのロッド側の第1ブラケットに防振基体を収容する凹部と該凹部を構成する周壁部を形成した例である。図1は第1ブラケット側から見た斜視図であり、図4は反対側の車体側の第2ブラケット側から見た平面図である。また図2は、図1におけるX−X断面を第2ブラケットを上にして示した断面図である。ブラケット部材の形状は特に限定されないが、取付け工数が少なく、充分な取付け強度が得られることからフランジ部は三角形形状であることが好ましく、図1のような正三角形形状であることがより好ましい。
ストラットマウント10は鍔部39を有する内筒部材38、鍔部39の上下面において鍔部39を挟持するように接着された加硫ゴム部40とからなる防振基体36、防振基体36を収容したブラケット部材17とから構成されている。ブラケット部材17は、周縁にフランジ部14を有し、防振基体36を収容する凹部を構成する周壁部を有するサスペンションのロッド側の第1ブラケット16とフランジ部33を有し、座席側に装着固定される第2ブラケット32とから構成されており、第1ブラケット16のフランジ部14と第2ブラケット32のフランジ部33とを当接固定して防振基体36を収容している。
第1ブラケット16は、周壁部12の内側の凹部の底部に防振基体36の加硫ゴム部40を受ける底壁部15と開口端部側にバウンドバンパーゴムの端部を装着するバウンドバンパーゴム受容部13を備えている。
第2ブラケット32は、中央部が防振基体36保持側に窪んだ円板状であり、フランジ部33から中央部の加硫ゴム当接部35側にS字状の屈曲部Pが形成されている。係る構成により加硫ゴム当接部35が外側方向の応力を受けた場合に屈曲部Pがリブの効果を奏してフランジ部に曲げ応力を与えて第1ブラケットのフランジ部と第2ブラケットのフランジ部との当接固定を剥離する変形が防止される。
第1ブラケット16並びに第2ブラケット32はアルミニウム合金、例えばマグネシウム系アルミニウム合金、シリコン系アルミニウム合金、亜鉛系アルミニウム合金などを使用し、金型を使用したダイキャスト法、鍛造法などの公知の方法の少なくとも1種を使用することにより製造する。寸法精度を高めるために切削仕上げ加工を行うことは好適な態様である。
防振基体36は、予め加硫ゴム部40成形と同時に内筒部材38を加硫接着することにより作製する。内筒部材38は金属又は樹脂にて形成されるものであり、金属材料としては鋼材、アルミニウム合金などが好適であり、強度と軽量化の観点よりアルミニウム合金の使用が好ましい。
第1ブラケット16と第2ブラケット32とは、それぞれのフランジ部14と33とを当接させてスポットかしめを行うことにより固定する。スポットかしめは、当接したフランジ部の片面側から円柱状のピンで押圧し、反対側においてピンよりも断面積の大きな内径を有する円筒状凹部を有するダイスで受け、該円筒状凹部内にピンで押圧されたフランジ部構成層を内側層とし、ダイス側のフランジ部構成層を外側層とした凸部24を形成して該内側層と外側層とを接触係止させることによりかしめが行われ、第1ブラケットと第2ブラケットとが当接固定される。図1の例においては、第1ブラケット16側のフランジ部14にダイスを当て、第2ブラケット32のフランジ部33側からピンを押圧した例を示した。
スポットかしめにより当接固定された第1ブラケット16と第2ブラケット32のフランジ部14と33には、隣設する取付け用のボルト穴間の中央部において一方のフランジ部の幅を広くして段差21が形成されている。防振基体36の内筒部材38と段差21において幅広に形成されたフランジ部を第1ブラケット16と第2ブラケット32とが離隔する方向に一定の荷重を負荷することにより、第1ブラケット16と第2ブラケット32とを当接固定するスポットかしめが所定の強度を有しているかどうかが容易に検査できる。段差21を形成するフランジ部はどちらが幅広に形成されていてもよいが、図2、3においては、第1ブラケットのフランジ部材14の幅が広い例を示した。
図3にはスポットかしめを行った部位の部分平面図を示した。第1ブラケット16の防振基体を収容する凹部の外面には、スポットかしめのダイスにより形成される凸部24の周縁部に、内筒部材38の軸芯方向(フランジ部に垂直方向)に凹溝20が形成されている。またフランジ部14においても、凸部24の周縁部にダイスを当接可能に幅広い部分Hが形成されている。仮想線はダイス当接位置である。
ブラケット部材17は平面視にて各頂点がR加工され、各辺が外側に膨出した略正三角形の形状を有している。頂点部には車体へ取り付けるための取付け用ボルト穴22が形成されており、取付け用ボルト穴22を含む部位に頂点部から周壁部12の立ち上がっている基部に及ぶ厚さが他のフランジ部よりも厚い厚肉部18がリブ状に形成されている。係る厚肉部18は、ストラットマウント10の車体への取付け状態においてこの部位にかかる応力に対する補強効果を奏する。
図4の平面図に示したように、スポットかしめにおいてピンを押圧した部位にはピン穴34が形成される。また図2、図4にて明らかなように第2ブラケットの外側面は平坦であり、その結果、このストラットマウントを装着固定する車体側は、固定用のボルト穴を形成するだけでよく、その他の穴加工が不要であり、加工が簡単で強度の低下も防止される。
図5は図1〜4に例示のストラットマウントを改良したストラットマウントの断面図である。このストラットマウントの特徴は、車体側の第2ブラケットにあり、該第2ブラケットは、防振基体36の加硫ゴム部40に当接する加硫ゴム当接部35の厚さt2がフランジ部33の厚さt1よりも厚く形成されている点にある。第2ブラケット32は、図2の第2ブラケットと同様にフランジ部33から中心側の屈曲部PにおいてS字状に屈曲し、加硫ゴム当接部35が凹部を形成するように構成されており、屈曲部Pにおいて厚さがフランジ部33の厚さから加硫ゴム当接部35の厚さに漸増するように構成されている。係る構成のストラットマウントは、サスペンションのロッドから内筒部材の鍔部と加硫ゴム部を通じて負荷される応力に対する高い曲げ強度を有するものである。
図6には、図4に示したストラットマウント10のスポットかしめにより当接固定された第1ブラケット16と第2ブラケット32にて形成されるブラケット部材17が所定の剥離強度を有しているかどうかを検査する検査方法を断面図にて例示した。検査装置はフランジ部材押圧部材51と内筒部材押圧部材53とから構成されており、フランジ部材押圧部材51と内筒部材押圧部材53とは駆動装置(図示せず)により互いに反対方向に変位して第1ブラケット16と第2ブラケット32を剥離する方向の荷重を負荷可能に構成されている。図5においては、ストラットマウント10のロッド挿通側から位置固定された検査装置の内筒部材押圧部材53を内筒部材38の内筒に嵌着し、上部側からフランジ部材押圧部材51にて第1ブラケット16のフランジ部14の段差21部を所定の荷重Pを負荷して内筒部材押圧部材53方向に押圧する例を示した。第1ブラケット16と第2ブラケット32には、圧縮して収容された加硫ゴム部40による剥離荷重が作用しているので、負荷する荷重はストラットマウント10に路面の凹凸などにより衝撃的に負荷される荷重を想定した荷重を負荷すればよい。
本発明のストラットマウントの好適な実施形態を示した斜視図 図1に例示のストラットマウントのX−X断面図 スポットかしめを行った部位の部分平面図 本発明のストラットマウントの車体側の第2ブラケット側から見た平面図 別実施例のストラットマウントを示した断面図 ブラケット部材が所定の剥離強度を有しているかどうかを検査する検査方法を例示した断面図
10 ストラットマウント
12 周壁部
16 第1ブラケット
17 ブラケット部材
20 凹溝
21 段差
24 凸部
32 第2ブラケット
36 防振基体
38 内筒部材
39 鍔部
40 加硫ゴム部

Claims (2)

  1. 鍔部を有する内筒部材と、少なくとも前記鍔部において接着された加硫ゴム部とからなる防振基体、及び前記防振基体を収容したブラケット部材とからなり、
    前記ブラケット部材はアルミニウム合金製であり、周縁にフランジ部を有し前記防振基体を収容する凹部を有するサスペンションのロッド側の第1ブラケットと、フランジ部を有する車体側の第2ブラケットとからなり、平面視にて各辺が外側に膨出した三角形の形状を有し、前記第1ブラケットのフランジ部と前記第2ブラケットのフランジ部とを複数のスポットかしめにより当接固定することにより形成されており、
    前記第1ブラケットのフランジ部と前記第2ブラケットのフランジ部の当接部の複数箇所において段差を形成するように構成され、
    前記第1ブラケットのフランジ部と前記第2ブラケットのフランジ部との各頂点部には取付け用のボルト穴が形成されており、
    前記第1ブラケットの前記ボルト穴近傍と前記第1ブラケットの凹部を構成する周壁部外側の基部との間に他のフランジ部よりも厚肉の厚肉部が形成されており、前記第1ブラケットのフランジ部における前記ボルト穴間に薄肉部が形成されており、
    前記第1ブラケットのフランジ部の薄肉部に、スポットかしめにより形成される複数の凸部が配置され、前記段差は隣設する前記凸部の間に配置され、
    前記凸部の周縁部で前記内筒部材の軸芯方向に凹設される凹溝が前記第1ブラケットの周壁部に形成されていることを特徴とするストラットマウント。
  2. 前記第2ブラケットは、前記加硫ゴム部と接する加硫ゴム当接部の厚さが前記フランジ部の厚さよりも厚肉に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のストラットマウント。
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