JP4641656B2 - 気体ばね - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、気体ばねに関し、特に、エアや窒素ガスなどの気体を封入しながら固定側たる車体側と可動側たる車輪側との間に配在されて振動吸収などに利用される自転車用の気体ばねの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、近年の自転車の中には、固定側たる車体側と可動側たる車輪側との間にエアや窒素ガスなど気体を封入した気体ばねを装備して、走行中の自転車に入力される路面振動などを吸収し、走行中の自転車における乗り心地を向上させるとするものがある。
【0003】
そして、そのための気体ばねとしては、これまでに種々の提案があるが、その中で、たとえば、図8に示す気体ばねにあっては、シリンダ体1内にピストン3で区画される気室Aと、シリンダ体1外の別タンクT内とされる気室Bとを有してなるとしている。
【0004】
そしてまた、この気体ばねにあっては、二つの気室A,B間に切換バルブVが配在されてなるとしており、この切換バルブVの切り換えで二つの気室A,B間の連通あるいは遮断が選択されるとしている。
【0005】
それゆえ、この従来の気体ばねによれば、気室Aを気室Bに連通するときに、言わば大きい容量による圧縮比の小さいばね力が得られ、気室Aを気室Bと遮断して気室Aのみとするときに、言わば小さい容量による圧縮比の大きいばね力が得られることになる。
【0006】
その結果、この気体ばねを装備する自転車にあっては、たとえば、ライダーの好みで、走行中の自転車において、圧縮比の大きいばね力に基づくハードな乗り心地と、圧縮比の小さいばね力に基づくソフトな乗り心地とを選択することが可能になる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の気体ばねにあっては、同じものを、たとえば、オフロード用あるいはオンロード用のいずれの自転車にも装備する場合には、それぞれに最適となるばね力の発揮を期待できなくなる。
【0008】
すなわち、オフロード用の自転車に装備される気体ばねにあっては、総じて圧縮比の大きいばね力の発揮が望まれ、したがって、そのためには、気室Aの容量を小さく設定することが肝要になる。
【0009】
それに対して、オンロード用の自転車に装備される気体ばねにあっては、総じて圧縮比の小さいばね力の発揮が望まれ、したがって、そのためには、上記と異なり、気室Aの容量を大きく設定することが肝要になる。
【0010】
その結果、上記した従来の気体ばねにあっては、気室Aの容量をオフロード用に設定する場合には、オンロード用として使用したときに、ピストンストロークを十分に確保できず、底突き現象を多発させることになる。
【0011】
また、上記と逆に、気室Aの容量をオンロード用に設定する場合には、オフロード用として使用したときに、圧縮比の大きいばね力を確保できず、上記と同様に底突き現象を多発させることになる。
【0012】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、たとえば、自転車における用途や走行条件に応じた最適な乗り心地を実現し得て、その汎用性の向上を期待するのに最適となる気体ばねを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、この発明による気体ばねの構成を、基本的には、自転車における車輪側に連結されるシリンダ体内に自転車における車体側に連結されるロッド体が出没可能に挿通されると共に、ロッド体の基端に連設されるピストンがシリンダ体内に摺動可能に収装されながらシリンダ体内にピストン側の気室とロッド側の気室とを区画し、この二つの気室を連通する連通路を有すると共に、この連通路に切換バルブを有してなるとする。
【0014】
そして、上記した構成において、より具体的には、連通路が切換バルブと直列する絞りを有し、切換バルブが連通路を連通状態にする連通ポジションおよび連通路を遮断状態にする遮断ポジションを有し、遮断ポジションがピストン側の気室からのエアのロッド側の気室への流入を阻止する一方でその逆流を許容するチェック弁を有してなるとする。
【0015】
また、切換バルブを切り換える外部からの入力が自転車における駆動チェーンの緊張状態を検知するセンサの検知信号に基づいて出力される電気的信号であるとする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による気体ばねは、たとえば、自転車(図示せず)に装備されるとし、図中で上端となる一端が固定側たる自転車における車体側に連結されると共に、図中で下端となる他端が可動側たる自転車における車輪側に連結されるとしている。
【0017】
それゆえ、図示するところでは、シリンダ体1が車輪側部材とされ、このシリンダ体1に対して出没可能に挿通されるロッド体2が車体側部材とされている。
【0018】
そして、この気体ばねは、図示するところでは、空圧シリンダ状に形成されていて、ロッド体2の図中で下端となる基端に連設されるピストン3がシリンダ体1内に摺動可能に収装されながらシリンダ体1内に気室Aと気室Bを区画している。
【0019】
このとき、図示するところでは、気室Aがシリンダ体1内の図中でピストン3の下方側となるピストン側の気室とされ、気室Bがシリンダ体1内の図中でピストン3の上方側となるロッド側の気室とされており、各気室A,Bには、エアや窒素ガスなどの適宜の気体が封入されている。
【0020】
また、この気体ばねは、図示するところでは、シリンダ体1の外部に配在されて上記の二つの気室A,Bを連通する連通路4を有しており、この連通路4中には、この連通路4を開閉する切換バルブ5と、この切換バルブ5に直列する絞り6とを有している。
【0021】
このとき、この切換バルブ5は、外部からの入力で切り換わる連通ポジション5aと、上記の入力が解除されるときに戻される遮断ポジション5bとを有してなり、遮断ポジション5bは、気室Aからの気体が気室Bに流入することを阻止する一方でその逆流を許容するチェック弁5cを有している。
【0022】
それゆえ、この気体ばねにあっては、気室Aと気室Bにおけるピストン3に対する受圧面積差によって、ロッド体2に常時伸長方向の反力が作用していることになる。
【0023】
ちなみに、このチェック弁5cは、図示しないが、切換バルブ5における遮断ポジション5bを単なる遮断ポジションにする一方で、この遮断ポジションを迂回するバイパス通路中に配設するとしても良い。
【0024】
それゆえ、以上のように形成された気体ばねにあっては、ロッド体2がシリンダ体1内に没入する圧縮作動時に、以下のようにして、圧縮比の異なるばね力を発揮することになる。
【0025】
すなわち、まず、連通路4中の切換バルブ5が図示する遮断ポジション5bの状態に維持されているときには、シリンダ体1内でのピストン3の下降で気室Aが圧縮されることでばね力が発揮されることになる。
【0026】
このとき、この気体ばねにあっては、気室Aが圧縮されることによる反力、すなわち、ピストン3を受圧面積にするいわゆる圧縮比の大きいばね力が発揮される。
【0027】
一方、図示しないが、連通路4中の切換バルブ5が連通ポジション5aに切り換るときには、気室Aと気室Bが連通状態になって気室の容量が大きくなると共に、この状態での圧縮作動時には、気室Aと気室Bの気体がロッド体2の断面積を受圧面積にして圧縮されることになり、上記した気室Aのみが圧縮される場合に比較して、大きい容量による圧縮比の小さいばね力が発揮されることになる。
【0028】
図2は、この発明による気体ばねと図8に示す従来の気体ばねとにおいて、ロッド体2に作用する荷重ばね特性を比較して示すものである。ちなみに、当然のことながら、初期圧力として同じ圧力が封入されている。
【0029】
まず、従来の気体ばねでは、単に気室Aの容量を変化させるだけであるから、気室の容量を気室Aだけとして圧縮比を大きくした場合の荷重ばね特性(図2中に破線H1で示す)と、気室の容量を気室Aに気室Bを加えて大きくして圧縮比を小さくした場合の荷重ばね特性(図2中に破線S1で示す)との変化幅Y1が後述する変化幅Yより小さくなる。
【0030】
すなわち、上記に対して、この発明では、気室の容量と受圧面積の両方を変化させるから気室の容量を気室Aとして圧縮比を大きくすると共に受圧面積をピストン3の断面積とした場合の荷重ばね特性(図2中に実線Hで示す)と気室の容量を気室Aおよび気室Bとして圧縮比を小さくすると共に受圧面積をロッド体2の断面積とした場合の荷重ばね特性(図2中に破線Sで示す)との変化幅Yが上記した従来の気体ばねにおける場合に比較して著しく大きくなる。
【0031】
そして、この発明の場合には、気室B側からもピストン3に図2中に実線Nで示す気体圧力が作用するために、ロッド体2に作用する荷重としては、その分小さくなるが、荷重ばね特性の変化幅Yは上記した変化幅Y1より大きくなる。
【0032】
以上のように、この発明による気体ばねにあっては、気室Aが気室Bに連通していないときに発生されるばね力は、圧縮比が大きくなるのに加えて、気室Aがピストン3の断面を受圧面にして圧縮されることによるばね力になるが、気室Aが気室Bに連通しているときに発生されるばね力は、圧縮比が小さくなるのに加えて、ロッド体2の断面を受圧面にして圧縮されることによるばね力が発生されることになる。
【0033】
その結果、ばね力の変化幅が気室における容量の変化のみによる従来の場合に比較して、この発明による場合には、ばね力の変化幅が気室における容量の変化のみだけでなく受圧面積も変化することになり、ばね力の変化幅を大きく設定し得ることになる。
【0034】
したがって、この気体ばねが装備される自転車にあっては、オフロード走行あるいはオンロード走行のいずれにも好ましいばね力を発揮し得ることになる。
【0035】
のみならず、上記の効果を得るために、従来の気体ばねでは、シリンダ体1内の気室Aに対して外部に配在される気室B、すなわち、別タンクT(図8参照)を極端に大きくすることになるから、気体ばね全体の重量を大きくするなどで、自転車への塔載性を低下させ易くなるが、この発明の気体ばねでは、仮に別タンク構造を採用するとしても、いたずらに重量を大きくせずして、自転車への塔載性を低下させないことになる。
【0036】
ちなみに、切換バルブ5は、多くの場合に、この気体ばねが装備される自転車がオフロード用に設定されている場合には、常閉型に設定され、この気体ばねが装備される自転車がオンロード用に設定されている場合には、常開型に設定されるであろう。
【0037】
一方、上記した連通路4中には切換バルブ5に直列するように絞り6が配設されてなるとし、しかも、この絞り6は、切換バルブ5が連通ポジション5aにあるとき、気室Aと気室Bの間を行き交う気体の流れに絞り抵抗を与える。
【0038】
その結果、切換バルブ5が連通ポジション5aにあって、荷重ばね特性の小さいばね力、すなわち、ソフトな乗り心地にあるときに、たとえば、自転車におけるジャンプ後の着地などで気体ばねが大きいストロークで高速圧縮するような場合には、絞り6で大きな減衰力を発揮することになり、気体ばねにおいて底突き現象の発現を回避し得ることになる。
【0039】
以上のように構成された気体ばねにあっては、図示するところでは、ピストン3の背面側に、すなわち、気室B内に位置決められているロッド体2の外周側に配在されるようにしてこの気室B内に収装される伸び切りばね7を有してなるとし、気体ばねが最伸長近傍まで伸長作動すると、この伸び切りばね7がピストン3に当って最伸長時の衝撃を緩和することになる。
【0040】
ところで、以上のように構成された気体ばねにあっては、前記したように、図示するところでは、切換バルブ5に外部からの入力があるときにこの切換バルブ5が連通ポジション5aに切り換わり、この入力が解除されるときにこの切換バルブ5が遮断ポジション5bに戻されるように設定されてなるとしている。
【0041】
そして、この切換バルブ5への入力は、ライダーの手動操作によるとしても良いが、図示する実施形態では、外部からの入力が電気的信号からなるとし、しかも、図3,図4および図5に示すように、この電気的信号が自転車における駆動輪たる後輪に連繋された後輪ギヤ8に巻装される駆動チェーン9の緊張状態を検知するセンサ10からの検知信号に基づいて出力されるとしている。
【0042】
すなわち、まず、この気体ばねが自転車における後輪側に装備されるとすると、自転車の走行開始時にライダーがペダルを強く踏み込むためにいわゆる踏ん張ることを考慮すれば、また、このとき、この気体ばねで得られるフワフワ感が上記したライダーの踏ん張りを妨げる方向に機能することを考慮すると、図3に示すように、電気的信号が駆動輪たる後輪に一体的に保持された後輪ギヤ8に巻装される駆動チェーン9の緊張状態(図中に実線で示す状態)を検知するセンサ10からの検知信号に基づいて出力されるとするのが好ましい。
【0043】
そして、駆動チェーン9の緊張状態を検知するセンサ10からの検知信号に基づいて切換バルブ5に電気的信号が入力されるとき、気体ばねにおいて荷重ばね特性を大きくするように設定すれば、上記した走行開始時におけるライダーの踏ん張りがフワフワ感によって妨げられなくなり、ライダーの踏ん張り力をフルにクランク11に伝達し、後輪ギヤ8、すなわち、駆動輪たる後輪を効率良く回動させることが可能になると言い得る。
【0044】
なお、この図3に示すところでは、駆動チェーン9には、たとえば、プーリー10aが接触していて、このプーリー10aが駆動チェーン9の緊張で移動するとき、センサ10がその動作を、すなわち、ストロークしたことを検知するように設定されている。
【0045】
それゆえ、このプーリー10aがストロークしたことを検知する限りにおいては、図示するところに代えて、図4に示すように、リンク10bを介してプーリー10aがストロークしたことをセンサ10が検知するように設定するとしても良い。
【0046】
そして、図3に示す実施の形態は、駆動チェーン9にほぼ直交する方向にセンサ10を配在するスペースに余裕がある場合に効果的な配置態様になり、図4に示す実施の形態は、駆動チェーン9にほぼ直交する方向にセンサ10を配在するスペースに余裕がない場合に効果的な配置態様になる。
【0047】
そしてまた、図5に示す実施の形態では、センサ10がプーリー10aの移動量を直接検知し得る構造に構成されてなると共に、このセンサ10からの信号がコントローラCで電気的信号に変換されて、これが切換バルブ5に入力されるように設定されてなるとしている。
【0048】
ちなみに、図示しないが、前記した図3,図4に示す実施形態にあっても、センサ10からの信号がコントローラCで電気的信号に変換されて、これが切換バルブ5に入力されるように設定されてなるのはもちろんである。
【0049】
前記したところは、この発明による気体ばねを言わば原理的に説明したものであるが、この気体ばねは、具体的には、たとえば、図6に示すように形成されるであろう。
【0050】
すなわち、この図6に示すところでは、気体ばねは、車輪側部材たるシリンダ体1内に車体側部材たるロッド体2が出没可能に挿通されてなると共に、このロッド体2の基端に連設されるピストン3がシリンダ体1内に摺動可能に収装されながらシリンダ体1内に気室Aと気室Bを区画してなるとしている。
【0051】
このとき、ロッド体2が車体側部材とされることで、このロッド体2の軸芯部に配在されたアクチュエーター12から外部に延在されるハーネス12aにいたずらに振動などによる負荷をかけることがなく、したがって、ハーネス12aのいわゆる疲労を大幅に抑制できる点で有利となる。
【0052】
そして、この観点からすれば、ロッド体2の軸芯部にアクチュエーター12が配在されるとしても、このアクチュエーター12にいたずらに振動などによる負荷をかけることがなく、したがって、アクチュエーター12のいわゆる疲労を大幅に抑制できる点で有利となるとも言い得る。
【0053】
つぎに、この気体ばねは、ピストン3に上記の二つの気室A,Bを連通する連通路(符示せず)を有すると共に、この連通路中にこの連通路を開閉する切換バルブ5(図1参照)と、この切換バルブ5に直列する絞り6(図1参照)としてのオリフィス3aとを有してなるとしている。
【0054】
このとき、切換バルブ5は、気室Aからの気体が気室Bに流入することを阻止する一方で、その逆流を許容するチェック弁5c(図1参照)としてのポペット13を有してなるとしている。
【0055】
したがって、たとえば、ピストン3が圧縮状態に位置しているときに、切換バルブを遮断ポジション5bに切り換えた場合でも、気室Aにおける気体反力で気室Bにおける気体がチェック弁5cを介して気室Aに流入することで、気体ばねを最伸長状態に復帰させることが可能になり、元の乗車姿勢を維持できることになる。
【0056】
また、切換バルブ5が連通ポジション5aにあって、乗り心地がソフトとされているときに、路面突起の乗り上げなどで大きい入力がある、すなわち、急激な圧縮作動が招来される事態になっても、絞り6としてのオリフィス3aによる減衰効果の発揮を期待できることになる。
【0057】
そして、このポペット13は、ロッド体2の軸芯部に収装されて外部からの電気的信号の入力時に駆動する前記したアクチュエーター12によって開閉制御される、すなわち、アクチュエーター12の駆動軸12bに連繋されたカムロッド14の回動で開閉制御されるとしており、この制御のときに、前記した図1を借りて説明すれば、連通ポジション5aあるいは遮断ポジション5bのいずれかに切り換わるとしている。
【0058】
ちなみに、ポペット13は、図示するところでは、その背後側に隣設されたコイルばねからなる附勢ばね13aによって、図中で上昇方向となる前進方向に附勢されてなるとしている。
【0059】
そして、このポペット13は、図示する上昇状態にあるときに、連通路を閉鎖し、アクチュエーター12によってカムロッド14が回動し、これによって図中で下降するときに、連通路を開放するように設定されている。
【0060】
ところで、この図6に示すところでは、図中で下端面となるピストン3の受圧面、すなわち、気室A側の端面に環状のバンプクッション15を有し、同じく図中で上端面となるピストン3の背面、すなわち、気室B側の端面にも前記した伸び切りばね7(図1参照)に相当する環状のバンプクッション16を有してなるとしている。
【0061】
このバンプクッション15,16を有することで、この気体ばねの最圧縮時と最伸長時にピストン3がシリンダ体1に衝突することが回避されることになる。
【0062】
ところで、上記した図6に示す気体ばねにあっては、アクチュエーター12の駆動軸12bにおける回動がカムロッド14によってポペット13の上下動に変換されているが、つぎの図7に示すところでは、アクチュエーター12の駆動軸12bの上下動で、ポペット13を直接上下動し得るとしている。
【0063】
ちなみに、この図7に示すところでは、アクチュエーター12から延在されるハーネス12aには、ロッド体2のロッドヘッド部2aに保持されたコネクター12cが連結されてなるとしている。
【0064】
その結果、この図7に示す実施形態にあっては、カムロッド14が不要になる点で有利となるが、さらには、気室Bの容量を図6に示す実施形態の場合に比較して大幅に大きくしている点で特徴がある。
【0065】
以下に、少し説明するが、この実施形態による気体ばねも、基本的には、図6に示すところと同様の構成を有しているので、その構成が同一となるところについては、図中に同一の符号を附するのみとして、要する場合を除き、その詳しい説明を省略する。
【0066】
すなわち、この図7に示す実施形態の場合にも、ロッド体2が中空に形成されていながら軸芯部にアクチュエーター12を臨在させているが、この実施形態の場合には、アクチュエーター12の外側に出現する言わば筒状の空間を気室B1に設定している。
【0067】
そして、ピストン3は、この気室B1を気室Bに連通させる通路3cを有すると共に、この気室B1を気室Aに連通させる通路3bを有してなるとしている。
【0068】
ちなみに、図示するところでは、オリフィス3aは、切換バルブ5(図1参照)を構成するポペット13の上端部周りに形成されるとしている。
【0069】
それゆえ、この実施形態による場合には、ポペット13を開放することで、気室Aが気室B,B1に連通し、このとき、気室としての容量が極めて大きくなって、圧縮比が極めて小さくなって、荷重ばね特性、すなわち、ばね力が極めて小さくなる。
【0070】
そして、この実施形態による場合には、気室Bがロッド体2内に形成される気室B1に連通してロッド側の気室となるから、気室Bの容量変化がシリンダ体1に対するロッド体2の出没のみに依存している図6に示す実施形態の場合に比較して、シリンダ体1の長さを小さくでき、結果として、気体ばねにおける長さを小さくできる点で有利となる。
【0071】
ちなみに、図示するところでは、潤滑油含浸部材17の配在下にダストシール18およびオイルシール19が配在されるとして、いわゆる防錆構造下にロッド体2のシリンダ体1に対する恒久的な摺動性を保障するとしている。
【0072】
前記したところは、この発明による気体ばねが自転車に利用される場合を例にして説明したが、この発明が意図するところからすれば、この気体ばねが自動二輪車あるいは四輪車両に利用されるとしても良く、その場合の作用効果は、前記したところと同様となるのはもちろんである。
【0073】
また、前記したところは、この発明による気体ばねが自転車の後輪側に装備されるとして説明したが、この発明が意図するところからすれば、この気体ばねがおよそ二輪車におけるフロントに装備されるとしても良く、その場合の作用効果も前記したところと同様となる。
【0074】
【発明の効果】
以上のように、この発明にあっては、ピストン側の気室とロッド側の気室とを連通する連通路に切換バルブを有してなるから、切換バルブによって連通路が連通状態におかれるときには、大きい気室容量となるために圧縮比が小さくなって荷重ばね特性の小さいばね力が発揮され、走行中の自転車におけるソフトな乗り心地を得ることが可能になり、切換バルブによって連通路が遮断状態におかれるときには、小さい気室容量となるために圧縮比が大きくなって荷重ばね特性の大きいばね力が発揮され、走行中の自転車におけるハードな乗り心地を得ることが可能になる。
【0075】
このとき、この気体ばねにあっては、ピストン側の気室がロッド側の気室に連通していない状態での圧縮作動時には、受圧面積がピストンの断面積とされるのに対して、ピストン側の気室がロッド側の気室に連通している状態での圧縮作動時には、受圧面積がピストンの断面積からロッド体の断面積に変わることから、荷重ばね特性の変化幅が気室容量の変化のみによる従来の場合に比較して、気室容量の変化による圧縮比の変化に加えて、受圧面積の変化によっても制御されることになり、ピストンストロークを確保しながら荷重ばね特性の変化幅を大きく設定し得ることになる。
【0076】
そして、上記の効果を得るために、従来の気体ばねでは、シリンダ体内の気室に対して外部に配在される別タンクを極端に大きくすることになるから、重量を大きくするなどで、自転車への塔載性を低下させ易くなるが、この発明の気体ばねでは、仮に別タンク構造を採用するとしても、いたずらに重量を大きくせずして、自転車への塔載性を低下させないことになる。
【0077】
また、切換バルブをロッド体の軸芯部に収装する場合には、気体ばねの外観を良くしながら気体ばね自体を小型化できることになる。
【0078】
そして、この気体ばねにあっては、ロッド側の気室からピストン側の気室への気体の流れのみを許容するチェック弁を設けたから、切換バルブが遮断ポジションにあっても気体ばねを最伸長状態に維持することが可能になり、したがって、この気体ばねを自転車に装備する場合には、切換バルブの状態に拘りなく乗車姿勢を一定に保つことが可能になる。
【0079】
また、この気体ばねにあっては、切換バルブに直列する絞りを設けたから、ソフトな乗り心地にあるときに、路面突起の乗り上げなどで大きな入力がある場合にも、絞りによる減衰効果の発揮を期待できることになり、自転車における乗り心地を良好に維持することが可能になる。
【0080】
また、この気体ばねにあっては、切換バルブへの外部からの入力を電気的信号とし、この電気的信号が駆動輪に連繋された後輪ギヤに巻装される駆動チェーンの緊張状態を検知するセンサからの検知信号に基づいて出力されるとするから、気体ばねが自転車における後輪側に装備され、また、切換バルブが電気的信号の入力時に圧縮比の大きいばね力を発揮するように設定される場合には、自転車の走行開始時にライダーがペダルを強く踏み込むときにフワフワ感がなくなり、ライダーの踏ん張り力をフルに活かし得ることになり、効率良く自転車を走行開始させることが可能になる。
【0081】
その結果、この発明によれば、たとえば、自転車における用途や走行条件に応じた最適な乗り心地を実現し得て、その汎用性の向上を期待するのに最適となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による気体ばねを原理的に示す図である。
【図2】この発明による気体ばねのばね力を従来の気体ばねのばね力と共に示す特性図である。
【図3】駆動チェーンとセンサの位置関係を示す原理図である。
【図4】他の実施の形態による駆動チェーンとセンサの位置関係を部分的に拡大して示す原理図である。
【図5】同じく他の実施の形態による駆動チェーンとセンサの位置関係を図5と同様に示す図である。
【図6】この発明による気体ばねを具体化した例を示す縦断面図である。
【図7】この発明による気体ばねを具体化した他の例を図6と同様に示す図である。
【図8】従来例としての気体ばねを図1と同様に示す図である。
【符号の説明】
1 シリンダ体
2 ロッド体
3 ピストン
3a オリフィス
3b,3c 通路
4 連通路
5 切換バルブ
5a 連通ポジション
5b 遮断ポジション
5c チェック弁
6 絞り
7 伸び切りばね
8 後輪ギヤ
9 駆動チェーン
10 センサ
10a プーリー
10b リンク
11 クランク
12 アクチュエーター
12a ハーネス
12b 駆動軸
13 ポペット
13a 附勢ばね
14 カムロッド
15,16 環状バンプクッション
A,B,B1 気室
C コントローラ
Claims (1)
- 自転車における車輪側に連結されるシリンダ体内に自転車における車体側に連結されるロッド体が出没可能に挿通されると共に、ロッド体の基端に連設されるピストンがシリンダ体内に摺動可能に収装されながらシリンダ体内にピストン側の気室とロッド側の気室とを区画し、この二つの気室を連通する連通路を有すると共に、この連通路に切換バルブを有してなる自転車用の気体ばねにおいて、連通路が切換バルブと直列する絞りを有し、切換バルブが連通路を連通状態にする連通ポジションおよび連通路を遮断状態にする遮断ポジションを有し、遮断ポジションがピストン側の気室からのエアのロッド側の気室への流入を阻止する一方でその逆流を許容するチェック弁を有すると共に、切換バルブを切り換える外部からの入力が自転車における駆動チェーンの緊張状態を検知するセンサの検知信号に基づいて出力される電気的信号であることを特徴とする気体ばね。
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