第1の発明は、鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋を収納する本体と、前記本体に対し蓋ヒンジおよび蓋ロックにより開閉自在に設けた蓋と、前記蓋に取り付けられ鍋の開口部を覆う内蓋と、前記鍋内の圧力を調整する圧力調整手段とを備え、前記蓋と内蓋間には、内蓋を蓋に対して傾斜角度を有し着脱自在の係止状態に保持する内蓋係止手段と、内蓋係止手段を支点として回転移動させる内蓋を蓋に着脱自在に装着する内蓋装着手段と、傾斜角度を有して内蓋を係止状態に保持した状態における蓋の閉成時に、内蓋装着手段による内蓋の装着を阻止する内蓋ストッパーとを設けた炊飯器とするものである。これにより、内蓋の蓋へ装着は、内蓋係止手段を支点として内蓋を回転移動させ、内蓋装着手段によって行うものであり、内蓋の一部を片手で保持し、係止状態から装着状態へと操作できるので、操作負担が軽減されると同時に、装着が確実であるから、圧力調整手段で鍋内の圧力を調整しながら、所定の炊飯性能を安定して発揮するものである。特に、予め内蓋を蓋に装着しない係止状態で蓋を閉成すると、内蓋ストッパーの作用により、内蓋装着手段による内蓋の装着を阻止するので、蓋を閉じることができない。そのため、使用者は内蓋が正常に装着されていないことを確認でき、内蓋を蓋に確実に装着してから炊飯することとなり、炊飯性能が安定するものである。
第2の発明は、特に、第1の発明において、蓋と内蓋間には、内蓋を蓋の内蓋装着手段に装着させる内蓋案内手段を有することにより、内蓋案内手段の作用により内蓋を蓋に確実に装着することができるとともに、予め内蓋を蓋に装着しない係止状態で蓋を閉成すると、内蓋は内蓋ストッパーに案内され確実に装着が阻止されるものである。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、内蓋係止手段を蓋ヒンジ寄りに、内蓋装着手段を蓋ロック寄りに配置したことにより、蓋の開成時において、内蓋はその下部で支持され上部で装着されることになる。圧力炊飯は通常炊飯に比べると重い内蓋であるものの、使用者はこの内蓋を上方あるいは斜め上方から係止状態とすることができて、操作の負担が軽減されるとともに、内蓋は下方の内蓋係止手段を支点に回転移動させればよく、比較的重い内蓋であっても、内蓋の上部を押して内蓋装着手段へと装着させることができる。このため内蓋の蓋への装着のための操作力は僅かでよいものである。
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、内蓋装着手段は内蓋を蓋から開放する解除手段を有し、前記解除手段は内蓋係止手段に保持された内蓋の回転移動する移動範囲の外側に配置したことにより、炊飯や保温終了後に、内蓋を取り外す場合、まず蓋を開放し、次に内蓋を蓋から取り外すべく解除手段を操作するが、この時に、内蓋係止手段を支点として装着状態から係止状態へと回転移動する内蓋には触れることがない。したがって、炊飯直後や保温中など内蓋の温度が高温時にも、使用者が直接触れることなく内蓋を係止状態にすることができる。さらに内蓋が係止状態であることで、内蓋の両面から放熱させて短時間でその表面温度を下げることができる。
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、内蓋装着手段は、蓋に対する内蓋の非装着時に、蓋の閉成を停止する蓋ロック停止手段を有することにより、蓋ロック停止手段の作用により、内蓋の装着忘れによる不完全な炊飯性能や保温性能にならないようにできる。
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、内蓋係止手段は、内蓋を傾斜角度まで回転させる係止部軸受けと、前記内蓋の回転を傾斜角度で停止させる係止部回り止めとを有することにより、内蓋係止手段が内蓋の回転と停止を制御するので、余分な部品を使用せずシンプルな構成となり、蓋および内蓋の質量増大による操作性の低下がない。
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、内蓋係止手段に係止した内蓋が傾斜角度を有する係止状態から蓋への装着状態まで回転する範囲において、内蓋係止手段を中心として蓋と反対側に内蓋の重心があることにより、内蓋は蓋から開放されると、所定の傾斜角度まで自重により自動的に回転移動する。また、蓋および内蓋に若干の外力、振動が加わっても、傾斜角度へと回転する力が作用するので、係止状態で安定するものである。
第8の発明は、特に、第4〜第7のいずれか1つの発明において、内蓋装着手段の解除手段は、蓋から内蓋を前方に押し出す内蓋押し出しピンを有することにより、解除手段を操作すると、内蓋押し出しピンが内蓋を前方に押し出し、比較的小さい力で確実に内蓋を蓋から分離することができる。
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明において、圧力調整手段は、内蓋と蓋の間に配置したことにより、ある程度の重量と大きさを有する圧力調整手段の少なくとも一部を内蓋に取り付けることができ、内蓋係止手段に係止した内蓋が傾斜角度を有する係止状態から略鉛直方向の装着状態まで回転する範囲において、内蓋の重心が蓋に近い。したがって、内蓋を内蓋係止手段に係止し、続いて蓋に装着する場合には、小さい力で内蓋を蓋の方向に回転させて内蓋装着手段にて装着できる。また、内蓋を開放する時には、内蓋の重心が蓋に近いことにより、係止状態へと作用する力が低減されて、係止状態で内蓋が停止するときの衝撃力が小さくなる。
第10の発明は、特に、第4〜第9のいずれか1つの発明において、内蓋の温度を検知する内蓋温度検知手段を備え、解除手段は内蓋の温度に基づいて、内蓋装着手段からの内蓋の開放を制御する解除手段制御部を有することにより、内蓋の温度が高温の場合に内蓋を開放しないようにできる。炊飯器は、通常、鍋温度検知手段や内蓋温度検知手段などにより、鍋および調理物の温度が適正に推移するように加熱手段を制御する制御手段を備えており、この制御手段の指令に基づき解除手段制御部の動作を制御することができる。また、解除手段制御部が内蓋温度に連動して内蓋の開放を制御する機構であっても同様である。
第11の発明は、特に、第4〜第10のいずれか1つの発明において、蓋の開放状態を検知する蓋状態検知手段を備え、解除手段は蓋の開放状態が所定時間以上継続すると自動的に内蓋を開放する第2の解除手段制御部を有することにより、蓋状態検知手段は蓋が開放状態であることを検知し、蓋の開放状態が予め設定された所定時間以上である場合に、炊飯器の動作を制御する制御手段が第2の解除手段制御部により内蓋を開放することで、内蓋を係止状態とし、内蓋の両面を露出して短時間で温度を低下させることができる。
第12の発明は、特に、第11の発明において、保温停止後に蓋を開放すると、解除手段は自動的に内蓋を開放することにより、使用者は保温停止後には蓋を開放し、鍋や内蓋を取り出して洗うなどのお手入れを行うが、内蓋が自動的に蓋から開放されるので、簡単に内蓋を取り外すことができる。
第13の発明は、特に、第1〜第12のいずれか1つの発明において、内蓋は係止状態において略鉛直方向に自立することにより、内蓋が蓋に装着した状態から係止状態に変更するときに、内蓋が略鉛直方向で自立するため、係止状態では前後に揺動するもののその幅は小さく、係止状態に止まるときに内蓋および内蓋係止手段に発生する衝撃力が小さく、耐久性に優れる。
第14の発明は、特に、第1〜第13のいずれか1つの発明において、内蓋は、内蓋係止手段により係止される係止部と内蓋装着手段により装着される装着部とを複数有することにより、内蓋を蓋に装着するときに、内蓋は略円形でその外周部に係止部および装着部が複数個あるので、内蓋の装着方向が円周方向で複数通りに選べ、使用者は内蓋の上下や取り付け角度を意識しないで簡単に装着でき、内蓋の使い勝手がよいものである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1〜図11は、本発明の実施の形態1における炊飯器を示している。
図1に示すように、炊飯器の本体16は、米や水などの被調理物を収容する鍋1を着脱自在に内部に有し、本体16の上面および鍋1の開口部を覆う蓋4を開閉自在に上部に有している。
鍋1は、鍋1の底面に設けられた加熱コイルなどの鍋底の加熱手段2、側面に設けられた鍋側面の加熱手段3により加熱される。蓋ヒンジ5は本体16の一端にて蓋4を支持し、蓋ロック6は本体16の他端にて蓋4を支持するものであり、蓋ヒンジ5と蓋ロック6にて蓋4を開閉する。蓋4には金属材料で形成された内蓋7が着脱自在に取り付けられており、この内蓋7は誘導加熱するため加熱コイルなどの内蓋の加熱手段10を有している。蓋4を閉じた状態で、内蓋7は鍋1の開口部を覆うとともに、鍋1内の蒸気を排出する蒸気孔7aと、鍋1内の蒸気や水分の流出を防止するループ状のパッキン7bとを有している。
また、蓋4には、内蓋7が蓋4に対して傾斜角度α(図2)を有して着脱自在の係止状態に保持する内蓋係止手段8と、内蓋7が内蓋係止手段8を支点として回転移動し蓋4に着脱自在に装着する内蓋装着手段9がそれぞれ設けられている。さらに、蓋4には、傾斜角度αを有して内蓋7を係止状態に保持した状態における蓋4の閉成時、すなわち、図2のように内蓋7が傾斜状態に保持されている状態で蓋4を閉成する時に、内蓋装着手段9による内蓋7の装着を阻止する内蓋ストッパー4aを設けている(詳細は後述)。
鍋温度検知手段11は、鍋1の底部に設けられ鍋1の温度を検知する。内蓋温度検知手段12は内蓋7の温度を検知する。圧力調整手段13は、内蓋7に設けられた鍋1内の蒸気を放出する蒸気孔7aと、球状の弁体である調圧ボール13aと、この調圧ボール13aを移動させて蒸気孔7aを開閉する調圧ボール移動手段13bと、鍋1内の圧力を検知する圧力検知手段13cとにより構成され、蒸気孔7aを閉じて鍋1内に蒸気を充満させることより鍋1内の圧力を大気圧以上にし、蒸気孔7aを開放して蒸気孔7aと蓋4に設けられた第2の蒸気孔14とで構成される蒸気通路を通じて鍋1内の蒸気を機外へ放出することにより鍋1内の圧力を大気圧と同等にする。なお、調圧ボール13aは内蓋7に設けられ、他は蓋4に設けられている。
制御手段15は、加熱手段制御部15aと温度計測制御部15bを有し、炊飯器の本体16の前面に設けられた入力操作部17により入力された信号、および記憶手段(図示せず)に記憶された、浸水工程を実行する所定時間、炊き上げ工程における温度上昇速度、炊飯の各工程での圧力値などの値に基づいて、炊飯工程を実行する。炊飯工程において、加熱手段制御部15aは鍋温度検知手段11および内蓋温度検知手段12の検知信号に基づいて鍋底の加熱手段2、鍋側面の加熱手段3および内蓋の加熱手段10を制御する。
図2は、開放した蓋4に内蓋7を係止した状態を示し、内蓋係止手段8に対して内蓋7が矢印A方向から挿入され、図3のように、内蓋係止手段8に設けた内蓋係止孔8aに対し、内蓋7の内蓋係止部20に設けた係止部すべり止め22が嵌合する。同時に、内蓋7が内蓋係止手段8を支点として自重により回転しようとする動作を係止部回り止め21が内蓋7と係合することで停止し、内蓋7は蓋4に対して傾斜角度αで係止される。
なお、内蓋係止孔8aは少なくとも一部が貫通しており、内蓋係止手段8に内蓋7などから滴下した水滴が滞留することなく流出するので、乾燥しやすく、清潔性を維持しやすい構造である。
内蓋7は内蓋係止手段8を支点として図2に示す矢印B方向に回転させると、図8に示すように内蓋装着部24が内蓋装着手段9に装着され、図4に示すように内蓋7が蓋4に装着される。
図7は、炊飯器の入力操作部17を示し、これは使用者が所望の運転コースなどを設定したり炊飯工程などをスタートさせたりするときに操作されるものであり、炊飯工程を開始する炊飯スイッチ17a、ご飯の炊き上がりを設定するかたさ設定スイッチ17bなどの各スイッチと、表示部18を有している。表示部18は、炊飯終了時や選択されたコースなどを表示するメイン表示部18a、炊飯工程中であることを示す炊飯ランプ18b、保温工程中であることを示す保温ランプ18c、冷やご飯を温める再加熱工程中であることを示す再加熱処理ランプ18d、圧力工程中であることを示す圧力処理ランプ18eなどを有している。
次に、本実施の形態における炊飯器の炊飯工程について説明する。
炊飯工程は、図9に示すように浸水工程A1、炊き上げ工程A2(その一部を沸騰維持工程という)および蒸らし工程A3の順で構成され、続いて保温工程(図示は省略)が実行される。
浸水工程A1では、使用者により米量に対する所定量の水が鍋1内に供給され、鍋底の加熱手段2などによる加熱を行い、鍋温度検知手段11で鍋1の温度を検知しながら、糊化が行われない最高温度(55〜58℃程度)以下の温度T1で所定時間だけ行い、次に炊き上げ工程A2を実行する。
炊き上げ工程A2では、主として鍋底の加熱手段2で鍋1を加熱し、沸騰T2させる。また、圧力調整手段13により蒸気孔7aを閉じて鍋1内を密閉し、蒸気を充満させて鍋1内の圧力を大気圧よりも高め、炊飯水を100℃以上で沸騰させる。
加熱途中で、鍋1の温度が60℃前後になるとデンプンの糊化が始まる。この炊き上げ工程A2において、米は含水率が低いため吸水に時間を要し糊化に時間がかかる。また、炊飯時間を短縮するために急激に沸騰させると、米表面が先に糊化してしまい米内部への水や熱の伝達が十分に行えず、特に米中心部の糊化が完了しない状態で炊飯工程が終了するため、粘りのないパサパサしたご飯になってしまう。そこで、鍋底の加熱手段2の加熱を調整しながら、適度な温度上昇速度となるように制御する。また、鍋1内の圧力が大気圧よりも高いため、100℃以上の水で炊き上げることで、100℃の水で炊く場合に比べて加熱量が増え糊化を促進させる。鍋1内の水が沸騰したことを鍋温度検知手段11が検知すると、沸騰維持工程に移る。
沸騰維持工程では、圧力調整手段13により蒸気孔7aを開放して鍋1内の圧力を大気圧と同等にしながら、沸騰を維持する。沸騰により水が対流するため、水が米同士の間を激しく流れることにより、鍋1内の米全体に水と熱がまんべんなく供給され糊化が促進される。また、鍋1内の水が蒸発すると、蒸気孔7aが開放されたことにより蒸気の流れができ、蒸気は米の間を通過して上昇して蒸気孔7aから炊飯器外へ放出され、蒸気が米の間を通過することにより米に熱を与え、さらに糊化が促進される。
鍋1内の炊飯水が蒸発してほぼ無くなると鍋1の温度が急激に上昇する。この急激な上昇により所定の温度を鍋温度検知手段11が検知したとき、沸騰維持工程を終了し、次の蒸らし工程A3に移る。
蒸らし工程A3では、鍋底の加熱手段2、鍋側面の加熱手段3および内蓋の加熱手段10により追い炊き加熱を行い、ご飯の温度を維持し、糊化の継続と余分な水分の蒸発を行う。所定時間蒸らし工程A3を行った後、鍋1内の温度を所定温度(例えば、70℃前後)に維持する保温工程を行う。
次に、炊飯器の操作との関連で今少し動作および作用を説明する。
本体16に米と水を収納した鍋1をセットし、時刻t0において、使用者によって炊飯スイッチ17aが押圧されると、炊飯ランプ18bを点灯させ浸水工程を開始する。主として鍋底の加熱手段2により鍋1内の米と水を一定温度に加熱して、保持する。
時刻t1において、炊き上げ工程を開始する。圧力調整手段13により蒸気孔7aを閉じ、蒸気を充満させて鍋1内の圧力を大気圧以上にした状態で、鍋底の加熱手段2、鍋側面の加熱手段3および内蓋の加熱手段10により鍋1を加熱し鍋1内の水を沸騰させ、圧力処理ランプ18eを点滅させる。
時刻t2において、鍋1内の水が沸騰し、炊き上げ工程の一部として沸騰維持工程を開始する。圧力調整手段13により蒸気孔7aを開放して蒸気を機外へ逃がし、沸騰を維持することにより水と熱を米に供給して糊化を促進させる。
時刻t3において、鍋1内の水分がなくなり、鍋1の温度が急激に上昇し所定の温度に達したことを鍋温度検知手段11が検知すると、蒸らし工程を開始する。さらに、時刻t4において、炊飯工程を終了し、保温工程に移行する。
また、本実施の形態では、入力操作部17に炊飯する米種を選択する米種入力部(図示せず)を設け、各米種に適切な圧力値を記憶手段にそれぞれ記憶しておき、選択された米種に応じた圧力値になるよう圧力調整手段13により調節することにより、各米種に適切な温度、圧力で炊飯することができる。例えば、玄米の場合は、白米が選択された場合よりも圧力値を高くすることにより、かたさやぱさつきがなく炊き上げることができる。また、軟質米と硬質米、新米と古米、白米と玄米などより細かく米種を選択できるようにすることにより、より各米種に対して適切な炊飯を行うことができる。
また、本実施の形態における炊飯器では、鍋底の加熱手段2、鍋側面の加熱手段3および内蓋の加熱手段10は、誘導加熱によるものを用いているが、それぞれ電気ヒータやガス燃焼など熱源は何でもよく、鍋底の加熱手段2以外は設けなくてもよい。また、それぞれが単一のリング形状であってもよく、複数個に分割されてあってもよい。もちろん、複数個のコイルで構成されてもよい。
また、鍋温度検知手段11および内蓋温度検知手段12は、通常運転での温度から異常時の高温度までの範囲を検知できるものであれば、どのような検知原理でもよい。
また、本実施の形態における炊飯器では、圧力制御手段13は内蓋7の蒸気孔7aを開閉することにより鍋1内の圧力を調節したが、鍋1内の圧力を制御できるものであればどのようなものでもよい。
以上のような本実施の形態における炊飯器について、使用者の操作と炊飯性能という観点を中心にさらに説明する。
図2に示すように、内蓋7を蓋4に取り付ける時に、内蓋係止手段8によって内蓋7を蓋4に対して傾斜角度αを有して係止状態に保持するものであり、さらに内蓋係止手段8を支点として内蓋7を矢印B方向に回転移動させ、内蓋装着手段9によって内蓋7を蓋4に装着するものである(図3の状態)。これらの構成により、使用者は内蓋7の一部を片手で保持し、係止状態から装着状態へと操作できるので、使用者が内蓋7を装着する操作の負担が軽減される。
なお、本実施の形態では使用者が持つ部位が明確ではないが、内蓋7の外縁部に専用の取っ手を設けてもよいものである。
同時に、内蓋7の蓋4への装着が片手で確実に実行され、所定の位置に装着されるから、蓋4を閉じたときには鍋1と内蓋7のパッキン7bとのシール性能が確保される。鍋1内を高温高圧とする圧力炊飯において蒸気の漏れが無く、圧力調整手段13で鍋1内の圧力を精度よく調整しながら、所定の炊飯性能を安定して発揮するものである。
なお、本実施の形態ではパッキン7bの形状は単純な断面形状として記載されているが、現実的には先端部が薄く、鍋1内の内圧により変形してよりシール性能を強化できる形状を備えたものとするものである。しかしながら、これらは一般的な技術でもあり、具体的な形状は様々に可能であり、詳細な図示は省略する。
続いて、炊飯あるいは保温終了後には内蓋装着手段9によって内蓋7を蓋4から開放すると、内蓋7は内蓋係止手段8を支点として矢印Bとは逆方向に回転移動し、装着状態から係止状態へと変更でき(図2の状態)、ここで内蓋7の一部を片手で保持して、取り外すことができるので、お手入れ時の負担が軽減される。
また、蓋4と内蓋7の少なくとも一方(本実施の形態では蓋4)には、内蓋7の内蓋装着部24が蓋4の内蓋装着手段9に確実に装着されるように、内蓋7の移動を案内する内蓋案内手段23を有する。
実際の炊飯における準備作業として、使用者は本体16に米と水を入れた鍋1を収納し、内蓋7を内蓋係止手段8によって蓋4に係止させ、蓋4の閉操作を行う。このときに予め内蓋7を蓋4に装着しない係止状態で蓋4を閉じると、図5、図6に示すように、当初は蓋4も内蓋7も一体的に矢印Cおよび矢印Dのように回転する。続いて内蓋7が鍋1に当たってからも、蓋4がさらに回転する。ここで、蓋4に設けた内蓋ストッパー4aは回動して垂れ下がり、内蓋7の調圧ボール13aと当たって、蓋4の回転が停止する。すなわち、内蓋7が内蓋装着手段9に装着されることを阻止する。この装着阻止は、内蓋案内手段23により内蓋7が案内されるため、内蓋ストッパー4aと調圧ボール13aが確実に当たり、確実に行われる。
同時にこの内蓋ストッパー4aの作用により、内蓋7が鍋1に当たった時点で、蓋4は所定の閉状態でないので、蓋ロック6が動作せず、蓋4を閉じることができない。ここで、使用者が手を離すと、蓋ヒンジ5により蓋4が開放されるので、使用者は内蓋7が正常に装着されていないことを確認できる。そのため、内蓋7を蓋4に確実に収納してから、大気圧での通常炊飯はもちろん、高圧高温での圧力炊飯において蒸気の漏れがなく、炊飯することとなる。すなわち、使用者にとって簡単な操作で、炊飯性能が安定する。
なお、内蓋ストッパー4aの材質はステンレス形成され、その形状は図5、図6などに示すように略L字形であり、蓋4の開閉状態や内蓋7の有無によってその取り付け状態が変化するものである。この内蓋ストッパー4aは略鉛直方向に吊り下げられると、自重によってL字の一辺が略水平となるようなものである。また、金属材料以外にも、耐熱樹脂などで形成してもよい。また、内蓋ストッパー4aに対して、バネ力やソレノイドなど他の駆動源を付加することで、その位置を切り替えるものでもよい。また、内蓋ストッパー4aとは、内蓋7が係止状態である場合に、内蓋7の一部や圧力調整手段13と当たることで、蓋4が閉状態にできないものであればよく、略L字形の内蓋ストッパー4aに限定されるものでもない。
また、内蓋案内手段23は蓋4の内面に設けられたリブ形状の突起であり、略円形の内蓋7の外周が所定の位置を回転移動するように案内するものである。したがって、内蓋案内手段23の形状は内蓋7の外形に合わせて任意に変更可能であり、単なるリブ形状でなく、蓋4の内面の全体形状で所定の位置に案内しても良いものである。また、内蓋7が略円形であることで、洗浄と乾燥などのお手入れ性が優れる。なお、内蓋7の外形が略円形のシンプルな形状でなく、比べるとお手入れ性が低下するとはいえ、内蓋案内手段23を内蓋7に設けて、蓋4に内蓋案内手段23に対応した凹凸を設けてもよい。
また、内蓋係止手段8を蓋ヒンジ5寄りに、内蓋装着手段9を蓋ロック6寄りに配置している。この構成において蓋4の開状態で、蓋ヒンジ5は略鉛直方向に置かれた蓋4の下部に位置し、蓋ロック6は蓋4の上部に位置するものであるから、内蓋係止手段8を蓋ヒンジ5寄りに設けたことで、内蓋7が鉛直方向の下部で支持されるものである。すなわち、圧力炊飯を行うために通常炊飯に比べると重い内蓋7であるものの、使用者はこの内蓋7を上方あるいは斜め上方から自重によってスライドするように収納し、内蓋7を係止状態とすることができて、自然な収納作業であり、操作の負担が軽減される。
また、内蓋装着手段9を蓋ロック6寄りに設けたことで、内蓋7は下方の内蓋係止手段8を支点に回転させればよいものであり、比較的重い内蓋7であっても、内蓋係止手段8での回転における摩擦抵抗は小さいので、矢印Bのように内蓋7の上部を押して内蓋装着手段9へと装着させるための操作力は僅かでよいものである。
また、図8に示すように、内蓋装着手段9は内蓋装着部24を蓋4から開放する解除手段25を有し、この解除手段25は内蓋係止手段8に保持された内蓋係止部20を支点として回転移動することにより形成する内蓋7の移動空間の外側に配置している。
炊飯や保温終了後に、内蓋7を取り外すためには、まず蓋ロック6を外し、蓋4を開放し、次に内蓋7を蓋4から取り外すべく解除手段25を操作する。この時に、内蓋係止手段8を支点として、装着状態から係止状態へと回転移動する内蓋7に解除手段25を操作する手指が触れないので、炊飯直後や保温中など内蓋7の温度が高温時にも、使用者が直接触れないで内蓋7を係止状態にすることができる。さらに内蓋7が係止状態であることで、熱容量が大きく高温である内蓋7の両面から放熱させて、短時間でその表面温度が下がる。
なお、解除手段25の具体的な構造は図示を省略するが、内蓋装着手段9から内蓋装着部24を取り出す構造であればよく、バネとラッチなどを組み合わせ利用して実現できるものである。
また、図8に示すように、内蓋装着手段9は内蓋7が装着されていない場合に蓋4が閉じない蓋ロック停止手段26を有する。蓋ロック停止手段26としては、内蓋7を蓋4に装着するための内蓋装着手段9が、内蓋7の装着がない時に、例えば内部に収納されない凸部を有するものとする。これによると、内蓋7の装着がない時に内蓋装着手段9の凸部が本体16に当たることで、蓋4が鍋1に対して閉状態まで回転することを途中で制止する。このため蓋4が本体16に対して所定の位置に収納されない。すなわちこの内蓋装着手段9の凸部が蓋ロック停止手段26となるものである。
なお、蓋ロック停止手段26は、予め内蓋装着部24が内蓋装着手段9に所定の位置に完全に収納された場合はもちろん、ほぼ収納された場合に伸縮自在となり蓋4に収納されるような構成ではあるが、内蓋7が係止状態で使用者が蓋4を閉じた場合には、内蓋ストッパー4aの作用により、内蓋7は蓋4に装着されない。その結果として、蓋4が閉じられない。内蓋ストッパー4aと蓋ロック停止手段26の両手段による効果で、使用者により、内蓋7の確実な装着が実施される。
この蓋ロック停止手段26があるので、蓋4および内蓋7が正しく装着されない場合に、炊飯や保温の運転動作を停止することができる。結果として内蓋7の装着忘れによる不完全な炊飯性能や保温性能にならないようにできる。また、使用者が蓋4から手を離すと、通常は蓋ヒンジ5の開放力により蓋4が開状態となり、内蓋7が装着されていないことが明確に分かる。しかも、本実施の形態では内蓋7が装着されず蓋ロック停止手段26が作用する場合は、蓋ヒンジ5の作用により蓋4が開状態となり、使用者がより確実に内蓋7が装着されていないことを確認できるので、炊飯や保温など必要なタイミングで内蓋7を忘れずに装着することになる。
また、図10に示すように、内蓋係止手段8は内蓋係止部20を中心に内蓋7を傾斜角度αまで回転させる係止部軸受け30と、内蓋7の回転を傾斜角度αで停止させる係止部回り止め21とを有する。
蓋4に対して内蓋7を係止させる係止状態に関し、内蓋係止手段8の係止部軸受け30にて内蓋係止部20、特に内蓋係止部軸20aを略中心に内蓋7をその自重によって傾斜角度αまで回転させるものである。また、係止部回り止め21にて内蓋7の回転を傾斜角度αで停止させるものである。回転の抵抗が少なく停止が行えるので、操作が軽く、耐久性も優れる。
なお、この回転の駆動源には内蓋7の自重や蓋4あるいは内蓋7に設けたバネの反発力など、さまざまな構成があり得るが、内蓋係止手段8が内蓋7の回転と停止を制御するものであれば、余分な部品を使用せずシンプルな構成であり、蓋4や本体16の大きさや質量は従来と殆ど同様の程度の大きさで実現でき、蓋4および内蓋7の質量増大による操作性の低下や部品の大型化がない。
また、図11に示すように、内蓋係止手段8に係止した内蓋7が傾斜角度を有す係止状態から略鉛直方向の装着状態まで回転する範囲において、内蓋係止手段8を中心として蓋4と反対側に内蓋7の重心Pがある。
内蓋7は所定の傾斜角度より鉛直方向に立った角度でセットしても、内蓋係止手段8に係止した状態では内蓋7の重心Pが内蓋係止手段8を中心として蓋4と反対側にあるので、所定の傾斜角度αまで内蓋7の自重(矢印Wで示す)を駆動源として、回転モーメント(D×W)にて自動的に回転する。また、蓋4および内蓋7に若干の外力、振動が加わっても、傾斜角度αへと回転する力が常時作用するので、係止状態で安定する。
さらに、炊飯終了後には解放手段25によって内蓋7を蓋4から開放すると、内蓋7は内蓋係止手段8を支点として回転移動し、装着状態から係止状態へと変更し、内蓋7の一部を片手で保持して、取り外すことができるので、お手入れ時の負担が軽減される。
また、既述したように、圧力調整手段13、特に調圧ボール13aを内蓋7と蓋4の間に配置している。すなわち、圧力調整手段13(圧力調整弁や調圧ボールなどとも呼ばれる)が内蓋7と蓋4の間に配置され、高温高圧の蒸気を密封するためのある程度の重量と大きさを有する圧力調整手段13、特に調圧ボール13aを内蓋7に取り付けることで、内蓋係止手段8に係止した内蓋7が傾斜角度αを有する係止状態から略鉛直方向の装着状態まで回転する範囲において、内蓋7の重心が蓋4に近いものである。
したがって、内蓋7を内蓋係止手段8に係止し、続いて蓋4に装着する場合には、内蓋7の重心が蓋4に近い分だけ、小さい力で内蓋7を蓋4の方向に回転させて内蓋装着手段9にて装着できる。また、内蓋7を開放する時には、内蓋7の重心が蓋4に近いことにより、装着状態から係止状態へと変化する間に作用する力が圧力調整手段13の質量に相当する分だけ低減されて、係止状態で内蓋7が停止するときの衝撃力が小さくなる。このため、内蓋7の開閉に伴う変形が少なく、耐久性に優れる。
なお、本実施の形態では、蓋4に、内蓋係止手段8、内蓋装着手段9および内蓋ストッパー4aを設けているが、これらを内蓋7に設けるか、あるいは蓋4と内蓋7にそれぞれ分担して設けることも可能であり、実施の形態の構成に限られるものではない。
また、本実施の形態における鍋底の加熱手段2、鍋側面の加熱手段3、内蓋の加熱手段10は鍋1や内蓋7を誘導加熱する加熱コイルで構成しているが、ヒータや蒸気など他の熱源であってもよいものである。したがって、鍋1や内蓋7は誘導加熱できる金属材料で構成しているが、熱源に応じて他の材料であってもよいものである。
また、本実施の形態では、鍋1内の圧力を検知する圧力検知手段13cを有しているが、内蓋温度検知手段12や他の温度検知手段により鍋1内の温度を検出し、鍋1内の圧力を推定することで、運転を制御するものであってもよい。
(実施の形態2)
図12、図13は、本発明の実施の形態2における炊飯器の要部を示すものである。炊飯器の基本構成は実施の形態1と同じであるのでその説明を省略する。
本実施の形態における炊飯器は、図12に示すように、内蓋装着手段9の解除手段25は、内蓋係止部20を支点として蓋4から内蓋7を前方に押し出す内蓋押し出しピン32を有するものである。その他は実施の形態1と同じである。
内蓋装着手段8の解除手段25により蓋4から内蓋7を取り外すため、内蓋係止部20を支点として内蓋7を前方に押し出す内蓋押し出しピン32を設けたことで、図13において矢印Fとして示す比較的小さい力でもって、内蓋係止手段8から距離Lで内蓋7の一端を前方に押し出すことができて、確実に内蓋装着部24を蓋4から分離する。
内蓋押し出しピン32はバネ力が付勢され(図示は省略)、内蓋7の内蓋装着部24を所定の力で押し出し、内蓋7の自重による回転を滑らかに開始する。なお、バネ力の他に、永久磁石やソレノイドなどの磁力で駆動してもよい。
(実施の形態3)
図14は、本発明の実施の形態3における炊飯器示すものである。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態における炊飯器は、図に示すように、内蓋7の温度を検知する内蓋温度検知手段12を備えるとともに、解除手段25の動作を内蓋7の温度に基づいて内蓋装着手段9からの内蓋7の開放を停止するように制御手段15に解除手段制御部35を有する。その他は実施の形態1と同じである。
すなわち、制御手段15は内蓋7の温度を検知する内蓋温度検知手段12の検知温度に基づき、内蓋装着手段9から内蓋7を開放する解除手段25の動作の運転停止を判断し、その結果を実行する解除手段制御部35を有する。制御手段15がこれらを連動させることで、例えば炊飯直後や内蓋7の温度が高温の場合に内蓋7を開放しないようにする。
炊飯器は、通常、鍋温度検知手段11や内蓋温度検知手段12などにより、鍋1および調理物の温度が適正に推移するように鍋底の加熱手段2を制御する加熱手段制御部15aや温度計測制御部15bを有する制御手段15を備えており、この制御手段15の指令に基づき同様に解除手段制御部35の動作を制御することができる。
なお、本実施の形態としては制御手段15の解除手段制御部35で内蓋7の開放を制御しているが、内蓋7の温度に連動して内蓋7の開放を実行する感熱素子を有する機構であってもよいものである。
(実施の形態4)
図15、図16は、本発明の実施の形態4における炊飯器示すものである。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態における炊飯器は、図15に示すように、蓋4の開放状態を検知する蓋状態検知手段37を備え、解除手段25は蓋4の開放状態が所定時間以上継続すると自動的に内蓋7を開放する第2の解除手段制御部38を有する。その他は実施の形態1と同じである。
蓋状態検知手段37は蓋4が開放状態であることを検知し、蓋4の開放状態が予め設定された所定時間以上である場合に、炊飯器の動作を制御する制御手段15が第2の解除手段制御部38により内蓋7を開放することで、内蓋7を係止状態とし、内蓋7の両面を露出して短時間で温度を低下させる。蓋状態検知手段37は、炊飯器の蓋4に取り付けられることで雰囲気温度は室温より高い場合が多いとはいえ、球状のマグネットとホール素子など、種々のセンサーで構成することが可能であり、特に限定されるものではない。
また、図16に示すように、保温停止後に蓋4を開放すると、制御手段15の指令により解除手段25が自動的に内蓋7を開放するようにもしている。
通常、使用者は保温停止後には蓋4を開放し、鍋1や内蓋7を取り出して洗うなどのお手入れを行う。すなわち、保温停止後に蓋4を開放するときには、解除手段25により内蓋7が自動的に蓋4から開放されるので、内蓋7の温度が短時間で低下するとともに、簡単に内蓋7を取り外せるものである。
(実施の形態5)
図17、図18は、本発明の実施の形態5における炊飯器示すものである。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態における炊飯器は、図17に示すように、内蓋7が係止状態において略鉛直方向に自立するようにしている。その他は実施の形態1と同じである。
内蓋7が略鉛直方向で自立する構成であるから、内蓋7が蓋4に装着した状態から係止状態に変更するときに、係止状態では内蓋7は前後に揺動するものの、係止状態に止まるときに内蓋係止部20および内蓋係止手段8に発生する衝撃力が小さく、耐久性に優れる。なお、傾斜角度αは使用者が操作できる最小の角度であれば、さらに衝撃力が小さくなる。
なお、図17から容易に推測できるように、内蓋7を矢印A方向に係止させると、内蓋7の重心が蓋4に近い場合には、内蓋7の自重により矢印B方向に回転移動し、自動的に蓋4に装着されるので、使用者にとって操作が簡単である。
また、図18に示すように、内蓋7は複数個の内蓋係止部20および内蓋装着部24を有するものである。
内蓋7を蓋4に装着するときに、内蓋7は略円形でその外周部に内蓋係止部20および内蓋装着部24が複数個あるので、内蓋7の装着方向が円周方向で複数通りに選べる。このため、使用者は内蓋7の上下方向や取り付け角度をそれほどは意識しないで簡単に装着できるので、内蓋7の使い勝手がよいものである。
なお、各実施の形態1〜5における構成は、必要に応じて適宜組み合わせて使用することができるものであり、各実施の形態そのものに限定されるものではない。