JP4640120B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、内燃機関の制御装置に関する。更に具体的には、複数の気筒と、その内部で燃焼サイクルに従って移動するピストンとを備える内燃機関を制御する制御装置に関するものである。
特開2002―61522号公報には、吸気バルブの開弁特性を変更することができる可変動弁機構を有する内燃機関の制御システムが開示されている。このシステムにおいては、内燃機関の停止時に、吸気バルブを小リフト量、小作用角に制御し、吸気バルブの閉弁時期(IVC)が下死点よりも大幅に早められるように制御する。内燃機関起動時には、このように制御された状態のままクランキングが開始される。このとき吸気バルブが早閉じに制御されているため、吸気行程における気筒内への吸入空気量が小さくなる。その結果、圧縮行程に入る気筒の筒内圧が低くなり、その気筒のピストンを押し上げるのに必要な圧縮圧力が小さくなる。これにより、上記従来技術によれば、内燃機関始動時のクランキングに伴う不快な振動の発生が抑制される。
また、ピストンが下死点付近にあるまま停止した場合、その気筒内に大気が流入するため、気筒内はそのピストンの位置に対応した大気圧下での空気量となる。この場合、吸気バルブを早閉じに制御しても、上記のような圧縮圧力を小さくする効果を得ることができない。しかし、上記従来技術のシステムは、力学的なバランス作用(コンプレッションによって押し返される力を受ける)によって、ピストンは行程の中央付近に停止する場合がほとんどであるとし、また、更に完璧を期するために、ピストンが中央付近に停止するように起動用モータを制御する場合もあるとしている。従って、上記従来技術のシステムによれば、吸気バルブの早閉じによる圧縮圧力の低減の効果を得られ、内燃機関始動時の振動が抑制される。
特開2002−61522号公報
上記従来技術においては、内燃機関始動直後の圧縮圧力を小さくするため、ピストンは上死点、下死点近傍で停止しないようにしている。しかしながら、上記従来技術は4気筒の内燃機関を基本とするものである。4気筒であれば、720度の燃焼サイクル中、気筒間の間隔を180度とすることができる。このため、全ての気筒内でピストンを、上死点、下死点から90度離れた位置に停止させることができる。しかし、4気筒より多い場合、720度の燃焼サイクルの中での爆発の間隔は短くなり、これに伴いピストンの位置の間隔も短くなる。具体的に、例えば8気筒の場合には、720度の燃焼サイクルの中で各気筒内のピストンは90度ずつの間隔を持つことになる。このような場合、全てのピストンを上死点、下死点から遠い位置に停止させることができず、いずれかの気筒のピストンは上死点および下死点から近い位置に停止することとなる。
内燃機関の停止中、気筒内には大気が侵入し気筒内は大気圧となり、そのピストン位置に対応した大気圧下での空気量が気筒内に吸入されることとなる。このためピストンが下死点付近で停止した場合、気筒内の空気量はそのピストンの停止位置に従って増大することとなる。その結果、吸気バルブを早閉じのタイミングとしても、停止時に吸入された空気により筒内圧はすでに大きくなっている。従って始動時における圧縮圧力が大きくなり、ピストンの押し上げのために大きなトルクが必要となる。その結果、内燃機関の始動時に振動が生することとなる。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、気筒数が4気筒を越える場合にも、効果的に振動を抑えた始動を可能とする内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、複数の気筒と、
前記複数の気筒のそれぞれの内部に配置されたピストンと、
前記複数の気筒それぞれに配置され、前記ピストンの移動に連動して所定のタイミングで吸気ポートを開閉する吸気バルブと、
前記ピストンを、内燃機関の燃焼サイクルに従って、前記気筒内で移動させる正回転手段と、
前記ピストンを、前記燃焼サイクルとは逆回転に、前記気筒内で移動させる逆回転手段と、
前記内燃機関の始動直後に前記ピストンが逆回転方向に移動するように前記逆回転手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第の発明は、更に、前記制御手段が、前記複数の気筒のうち、記内燃機関の始動直前、圧縮行程にある気筒であって、かつ、前記内燃機関の始動直前における前記ピストンの停止位置が、前記吸気バルブの閉弁タイミングにおける前記ピストンの停止位置よりも下死点に近い位置にある気筒を特定し、特定された該気筒が、少なくとも前記閉弁タイミングを越えるように逆回転の角度を制御することを特徴とする。
また、第の発明は、第の発明において、前記制御手段は、前記複数の気筒のうち、前記内燃機関の始動直前に膨張行程にある気筒が、前記逆回転によっても上死点を越えない範囲となるように逆回転を制御することを特徴とする。
また、第の発明は、第の発明において、前記制御手段は、
前記複数の気筒のうち、前記内燃機関の始動直前に膨張行程にある気筒であって、前記内燃機関の始動直前における前記ピストンの停止位置が前記閉弁タイミングにおける前記ピストンの停止位置よりも下死点に近い位置にある気筒が、前記逆回転によっても上死点を越えない範囲となるように逆回転を制御することを特徴とする。
第1の発明によれば、内燃機関の始動前に、燃焼サイクルとは逆回転にピストンを移動させる。これにより内燃機関の始動直後、最初に圧縮終了点付近を通る気筒の筒内圧を小さく抑えることができ、内燃機関の始動時に発生する振動を小さく抑えることができる。
の発明によれば、逆回転の角度が、内燃機関の始動後、圧縮行程にある少なくとも1の気筒のピストンが、吸気バルブの閉弁時期を越えて逆回転する範囲で定められる。これにより、圧縮行程の気筒の筒内圧を小さくすることができ、内燃機関始動直後の圧縮圧力を小さく抑えることができる。
の発明によれば、逆回転の角度が、複数の気筒のうち、内燃機関の停止時に膨張行程にある気筒のピストンが、上死点を越えない範囲で定められる。これにより逆回転によるピストンの移動時に振動が発生するのを抑えることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成について]
図1は、この発明の実施の形態1における内燃機関の制御システムを説明するための模式図である。図2は、実施の形態1の気筒4の上部を表すための模式図である。図1に示すように、実施の形態1のシステムは、内燃機関2を備えている。内燃機関2は気筒4を備えている。図1においては、1の気筒4の断面のみを表しているが、後述するように内燃機関2は第1〜第8の8つの気筒4を備えている。気筒4内部にはピストン6が配置されている。ピストン6は、コンロッド8を介して、クランクシャフト10に接続されている。クランクシャフト10の近傍には、その回転数を検出する回転数センサ12が配置されている。
気筒4内のピストン6の上部には、燃焼室14が設けられている。燃焼室14には、吸気ポート16および排気ポート18が連通している。図1においては、1の気筒4に接続する1の吸気ポート16と排気ポート18が表されている。しかし、実際には図2に示すように、1つの気筒4の燃焼室14には、2つの吸気ポート16と2つの排気ポート18が連通している。図1を参照して、燃焼室14には、先端部が露出するように点火プラグ20が組み付けられている。吸気ポート16には、インジェクタ22が組みつけられている。また、インジェクタ22の上流には、電子制御式のスロットルバルブ24およびエアフロメータ26が配置されている。一方、排気ポート18には、排気空燃比に応じた出力を発する空燃比センサ28が配置されている。
内燃機関2は、吸気ポート16のそれぞれを開閉する吸気バルブ30と、排気ポート18のそれぞれを開閉する排気バルブ32とを備える。また、内燃機関2は、吸気バルブ30を駆動する吸気カム34と、排気バルブ32を駆動する排気カム36とを備える。吸気カム34および排気カム36は、カムプーリやタイミングベルト等を介して、クランクシャフト10に接続されている。吸気カム34および排気カム36が、クランクシャフト10の回転に連動して回転することにより、吸気バルブ30および排気バルブ32が稼動し、その結果、吸気ポート16および排気ポート18が開閉される。吸気カム34は、カムシャフト等を介してVVT機構(Variable Valve Timing Mechanism)38に連結されている。VVT機構38は、吸気カム34を介して吸気バルブ30の作用角およびリフト量を変化させ得るものとする。排気カム36は、カムシャフト等を介してVVT機構40に連結されている。VVT機構40は、排気カム36を介して排気バルブ32の作用角およびリフト量を変化させ得るものとする。なお、VVT機構38、VVT機構40の構造は特に新規なものではないため、ここではその詳細な説明は省略する。吸気カム34の近傍には、カムの回転位置を検出するカムポジションセンサ42が配置され、排気カム36の近傍には、カムポジションセンサ44が配置されている。
また、内燃機関2は、ECU(Electronic Control Unit)46を備えている。ECU46は、回転数センサ12、エアフロメータ26、空燃比センサ28、およびカムポジションセンサ42、44等の各種センサから、内燃機関2の制御に必要な情報を取得する。また、取得した情報に基づいて、クランクシャフト10、点火プラグ20、インジェクタ22、スロットルバルブ24、および、VVT機構38、40の駆動を制御する。
[実施の形態1のシステムの特徴的な制御]
図3は、内燃機関2の停止時における各気筒4の状態を説明する模式図であり、図4は、内燃機関2の停止時における吸気バルブ30および排気バルブ32のバルブタイミングについて説明するためのバルブタイミングダイヤグラムである。また、図5は、内燃機関2の始動時における各気筒4の状態を説明する模式図であり、図6は、内燃機関2の始動時における吸気バルブ30および排気バルブ32のバルブタイミングについて説明するためのバルブタイミングダイヤグラムである。各図において、「IVO」は吸気バルブの開弁タイミング、「IVC」は吸気バルブの閉弁タイミング、「EVO」は排気バルブの開弁タイミング、「EVC」は排気バルブの閉弁タイミングを表している。なお、以下本実施の形態において、ピストン6のTDC(Top Dead Center;上死点)とBDC(Bottom Dead Center;下死点)との間に限らず、吸気バルブの閉弁(IVC)から、爆発・膨張開始点付近のTDC(以下「圧縮TDC」)までの間の行程を、「拡大圧縮行程」と称するものとする。
図3、図4に示すように、内燃機関2は第1〜第8気筒の8つの気筒4を有している。第1〜第8の各番号は燃焼順序を表すものであり、内燃機関2内で必ずしもこの番号順に配置されているものではない。なお、特に個別に各気筒4を表す場合には、第1〜第8気筒に対応して4a〜4hの符号を付すものとする。また各図において、○内に示す番号は第1〜第8気筒に対応して気筒番号を示すものとする。
内燃機関2の停止時は、第1〜第8気筒のピストン6は、TDC、BDCと、その中間位置とに停止する。具体的に図3の例では、第4気筒4dのピストン6は吸気開始点付近のTDC(以下、「吸気TDC」とする)で停止し、90度ずつずれて、第3気筒4cのピストン6が吸気TDCと圧縮開始点付近のBDC(以下「圧縮BDC」とする)との間で停止、第2気筒4bのピストン6が圧縮BDCで停止し、第1気筒4aのピストン6が圧縮BDCと、圧縮TDCとの間で停止する。第8気筒4hのピストン6は、圧縮TDCの位置で停止し、90度ずつずれて、第7気筒4gのピストン6が圧縮TDCと、爆発・膨張後のBDC(以下「排気BDC」とする)との間で停止、第6気筒4fのピストン6が排気BDCで停止、第5気筒4eのピストン6が排気BDCと吸気TDCとの中間位置で停止している。
図4に示すように、吸気バルブ30は早閉じのタイミングで、具体的には吸気TDCと圧縮BDCとの中間付近で閉じられる。一方、排気バルブ32は早開きのタイミングで、具体的には排気BDCより早いタイミングで開かれる。停止時及び始動開始時には、このタイミングに設定された状態でVVT機構38、40がロックされ、吸気バルブ30、排気バルブ32は、クランクシャフト10の回転、すなわちピストン6の動きに連動して稼動する。
上記の状態で内燃機関2が停止すると、各気筒4内には外部から徐々に大気が侵入する。これにより、筒内圧は大気圧となる。大気圧における気筒4それぞれの行程容量(排気量)を1、燃焼室14の容量をαとすると、ピストン6がBDCまで移動している第2、第6気筒4b、4fの空気量は1+α、TDCにある第4、第8気筒4d、4hの空気量はα、BDCとTDCとの中間位置にピストン6が停止している第3、1、7、5気筒4c、4a、4f、4eの空気量は1/2+αとなる。なお、機械圧縮比をεとするとαは、α=1/(ε-1)となる。
実施の形態1において、内燃機関2の始動直前には、図3、図4の状態から、図5、6の状態となるようにクランクシャフト10を90度逆回転させる。この結果、図5、図6に示すように第1〜第8気筒4それぞれのピストン6、吸気バルブ30、排気バルブ32が、90度逆回転した位置に戻される。具体的に、第3気筒4cは吸気行程開始点付近に戻される。ピストン6はTDCとBDCとの中間位置から吸気TDC付近に戻り、これに連動してカムが逆回転する。第2気筒4bは吸気行程のIVCより僅かに進角する位置に戻され、吸気バルブが開いた状態となる。また、第2気筒4bのピストン6はTDCとBDCとの中間位置まで上昇する。第1気筒4aは拡大圧縮行程の中で逆回転され、ピストン6はBDCに下降する。第8気筒4hは圧縮行程に戻され、ピストン6はBDCとTDCとの中間位置に下降する。第7気筒4gは膨張行程開始点付近に戻され、ピストン6はTDCに上昇する。第6気筒4fは膨張行程に戻され、ピストン6はTDCとBDCとの中間位置に上昇する。第5気筒4eは排気行程の中で戻され、ピストン6はBDCに下降する。第4気筒4dは排気行程に戻され、ピストン6はTDCとBDCとの中間位置にまで下降する。
上記のようにクランクシャフト10を90度逆回転すると、各気筒4内の空気量は以下のように変化する。第3気筒4cは、吸気バルブ30が開いた状態で、ピストン6が元の位置から上昇して気筒内の容積が減少するため、気筒内の空気量はαに減少する。第2気筒4bについては、ピストン6が元の位置から上昇し、IVCにおいて吸気バルブ30が開くため、気筒内の空気量は1/2+αに減少する。
第1気筒4aについては、ピストン6がBDCまで下降するため気筒4a内の容積は増加する。しかし、吸気バルブ30、排気バルブ32が共に閉じているため、気筒4a内の空気量1/2+αは変化せずそのまま維持される。この空気量1/2+αは大気圧下では、ピストン6がBDCとTDCとの中間位置にあるときの空気量であり、ピストン6がBDCにある場合には大気圧下での気筒4a内の空気量は1+αである。従って、第1気筒4a内の筒内圧は低い状態となる。また、第8気筒4hについてもピストン6が圧縮TDCからストロークの中間位置まで下降するため、気筒4hの容積は増加する。しかし、吸気バルブ30、排気バルブ32が共に閉じているため、内燃機関2停止時の空気量αがそのまま維持される。この空気量αは、大気圧下では、ピストン6がBDCに位置する場合の空気量であり、ピストン6がストロークの中間位置にある場合大気圧下での気筒4内の空気量は1/2+αである。従って、第8気筒4h内は筒内圧の低い状態となる。
第7気筒4gについてはピストン6が停止時の位置から上昇し気筒4g内の容積は減少するが、吸気バルブ30、排気バルブ32が共に閉鎖されているため空気量がそのまま維持され1/2+αとなる。第6気筒4fについては、もとの位置からピストン6が上昇し、気筒4f内の容積が減少する。この上昇中しばらく排気バルブ32が開いた状態となる。従って、第6気筒4fにおいては、ピストン6の上昇に連動して一部の空気が排出され、気筒4f内の空気量は1/2+α程度に減少する。第5、第4気筒4e、4dについては、もとの位置からピストン6が下降して気筒4e、4f内の容積が増加する。このとき排気バルブ32が開いた状態となるため大気が吸引され、空気量はピストン6の位置にあわせて1+α、1/2+αに増加する。
ところで、内燃機関2の始動時に起きる振動の最も大きな原因となるのは、圧縮終了点付近(以下「圧縮端」とする)、すなわち実施の形態1においては、圧縮TDC付近において、ピストン6を押し上げる力である。従って、圧縮端における筒内圧が大きい場合、ピストン6の押し上げに大きなトルクが必要となる。特に、始動直後のトルクが確保されていない状態にあっては、圧縮端において大きなトルクが必要となると、トルク変動が大きくなり、振動発生の原因となる。従って、圧縮端において必要となるトルクを減らすことにより、始動時の振動を抑えることができる。
この点、実施の形態1においては図3、4に示す状態で停止し、始動時においては図5、6のようにクランクシャフト10の90度の逆回転を行う。これにより、逆回転前には圧縮BDC付近にあって、筒内の空気量が最大の1+αとなっていた第2気筒4bは、吸気行程のIVC直前に戻され、吸気バルブが開いた状態となり、空気量が1/2+αにまで減少する。その後、正回転で内燃機関2の始動を開始後、直ちに吸気バルブ30が閉弁するため、第2気筒4b内の空気量は1/2+αのまま拡大圧縮行程に入る。したがって、逆回転を行わずに、拡大圧縮行程に入った場合の第2気筒の空気量(1+α)と比較して、拡大圧縮行程において圧縮する空気量を大幅に減少させることができる。その結果、圧縮端における筒内圧を小さくすることができ、振動の発生を抑えることができる。
また、逆回転後正回転で内燃機関2の始動を開始した際、最初に圧縮行程の圧縮端を通過する気筒は第8気筒4hとなる。ここで、第8気筒4hは逆回転中も、吸気バルブ30おにより気筒4h内の空気量がαのまま増加することなく、TDCとBDCとの中間位置にまでピストン6が引き戻された状態になっている。つまり、第8気筒4hの空気量(α)は、始動開始時のピストン位置の通常の空気量(1/2+α)に比較して小さい状態となっている。従って、第8気筒4h内の圧縮端における筒内圧は小さく、振動の発生を抑えることができる。更に、第8気筒4hの後、続けて第1気筒4aが圧縮端を通過する。第1気筒4aは逆回転により気筒4a内の空気量が1/2+αの状態のまま増加することなく、圧縮のBDCにまでピストン6が引き戻された状態となっている。従って、第1気筒4a内の筒内圧は小さくなっている。これにより、更に振動の低減を図ることができる。
また、始動後、最初に拡大圧縮行程に入る上記の第2、第8、第1気筒以外の気筒については、吸気バルブ30のIVCが早閉じのタイミングとなるように制御されることにより、振動の発生が抑えられている。つまり、吸気バルブ30は、吸気TDCと圧縮BDCとの中間付近で閉じられるため、拡大圧縮行程前に気筒4内に吸入される空気量は1/2+αとなる。従って、圧縮行程の圧縮端における筒内圧は小さく抑えられ、圧縮端における振動の発生が抑えられる。
図7、図8は、この発明の実施の形態1の制御装置が実行する制御のルーチンを説明するためのフローチャートである。図7のルーチンは内燃機関2の停止時に毎回実行されるルーチンである。図7のルーチンでは、まず内燃機関2の停止が指示されているか否かが判定される(ステップS102)。内燃機関2の停止指示の有無は、例えばHV車であればHV制御からの指示有無、アイドリング中の内燃機関2の停止制御がされていない場合にはドライバーによりイグニッションスイッチがOFFされたか否か等により判定される。ステップS102において内燃機関2の停止指示が認められない場合には、この処理を終了する。ステップS102において内燃機関2の停止指示が認められた場合、停止時の制御を行う(ステップS104)。具体的に停止時には、図3、図4に示すように、8つの気筒のうち2つの気筒4(図3においては第4、第8気筒)のピストン6がTDCに、2つの気筒(図3においては第2、第6気筒)のピストン6がBDCに、残りの気筒4(図3においては、第1、第3、第5、第7気筒)のピストン6が、それぞれTDCとBDCとの間に位置するように制御される。一方、吸気バルブ30、排気バルブ32は、早閉じのタイミングになるように吸気カム34、排気カム36の角度を調整することにより制御される。
図8のルーチンは内燃機関2の始動寺に毎回実行されるルーチンである。図8のルーチンでは、まず内燃機関2の始動が指示されているか否かが判定される(ステップS106)。内燃機関2の始動指示の有無は、例えば、HV車の場合にはHV制御からの始動指示の有無、アイドリング時の内燃機関2の停止制御がされていない場合にはドライバーによりイグニッションスイッチがONされたか否か等により判定される。ステップS106において、内燃機関2の始動指示が認められない場合、この処理を終了する。
一方、ステップS106において内燃機関2の始動が認められた場合、内燃機関2のクランクシャフト10が90度逆回転される(ステップS108)。これにより内燃機関2始動時に拡大圧縮行程に入る気筒のうち、特に、ピストン6がBDC付近で停止しており、筒内の空気量が大きくなっている気筒(図5においては、第2気筒4b)は、IVCにまで逆回転される。その結果吸気バルブ30が開き、第2気筒4b内の空気量は、そのときのピストン6位置(TDCとBDCとの中間)に合わせて、1/2+αにまで減少する。また、同様に、内燃機関2の始動時に拡大圧縮行程に入る他の気筒4(図5においては、第8気筒4h及び第1気筒4a)のピストン6は、内部の空気量が変化しないままに引き戻される。その結果、この気筒4内の空気量はピストン6の位置に対しては少なく、筒内圧が小さい状態となる。
次に、内燃機関2が始動される(ステップS110)。ここでは、始動後、拡大圧縮行程に入り、かつ、BDC付近にピストン6が停止していた気筒(図5においては、第2気筒2b)について、一旦IVCのタイミングにまで逆回転している。従って、気筒4内の空気量が小さくなっている。従って、この気筒4の圧縮端における圧力は小さくなっている。また、始動後に拡大圧縮行程に入る他の気筒(図5においては第1気筒4a、第8気筒4h)についは、逆回転によっても空気量が増加していない。従って、筒内圧が小さい状態のまま圧縮端を通過することができる。従って、内燃機関2の始動後の拡大圧縮行程での圧縮端における圧力が小さくなる。その結果、内燃機関2の始動時に発生する振動を低減することができる。
なお、実施の形態1においては、8つの気筒のうち4つの気筒において、ピストン6がTDC、BDCで停止させ、始動時に90度の逆回転を行う場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではない。停止位置とバルブタイミングは通常の走行状態を考慮して決定すればよく、始動時にはピストン6の停止位置およびバルブタイミングを考慮して逆回転の角度を決定し、その角度で始動直前にクランクシャフト10の逆回転を行えばよい。すなわち、内燃機関2の停止時に、ピストン6が、IVCにおけるピストン6の位置よりもBDCに近い位置に停止している気筒であって、逆回転をせずに始動した場合にIVCを越える前に拡大圧縮行程に入る気筒において、逆回転により、始動後に拡大圧縮行程に入る気筒を特定して、その気筒がIVCを越えるまで、逆回転するようにすればよい。
また、逆回転時に膨張行程にある気筒(図5では第6、第7気筒4f、4g)のピストン6の押し上げにより、圧縮TDCを超える場合、逆回転時に振動が発生することが考えられる。従って、逆回転する場合、膨張行程にある気筒がTDCを越えない範囲とすることが好ましい。あるいは、膨張行程にある気筒がTDCを越える場合であっても、内燃機関停止時のピストン6の停止位置が、IVCにおけるピストン位置よりもBDCに近い位置に停止している気筒については、逆回転によりTDCを越えない範囲に留めることが好ましい。これにより振動の発生をより効果的に抑えることができる。
また、実施の形態1においてはVVT機構38、40により吸気カム34、排気カム36を介してバルブタイミングが制御され、クランクシャフト10の回転に連動して吸気バルブ30、排気バルブ32が開閉される場合について説明した。しかし、バルブタイミングの制御機構はこれに限るものではなく、例えば各吸気バルブ30、排気バルブ32を個別に稼動できるものなど、他の制御機構を用いてもよい。
実施の形態2.
実施の形態2のシステム構成は、内燃機関2の気筒4の数が4気筒である点を除き、実施の形態1と同じものである。図9は、実施の形態2における内燃機関2の停止時の気筒の状態を説明するための模式図である。また、図10は、内燃機関2の停止時のバルブタイミングを説明するためのバルブタイミングダイヤグラムである。図9に示すように、実施の形態2の例では、内燃機関2は第1〜第4の4気筒4a〜4dを有している。内燃機関2の停止時には、各気筒4のピストン6のそれぞれを例えば、圧縮BDC、吸気TDC、排気BDC、圧縮TDCに停止する。停止後、各気筒4内は空気に置換される。その結果、ピストン6がTDCにある第2、第4気筒4b、4d内の空気量はαとなり、ピストン6がBDCにある第1、第3気筒4a、4c内の空気量は1+αとなる。図10に示すように吸気バルブ30は早閉じのタイミングで閉じられ、排気バルブ32は早開きのタイミングで開閉されるように吸気カム34、排気カム36を介して制御される。
図11は内燃機関2の始動時にクランクシャフト10を90度逆に回転させた場合の各気筒の状態を説明するための模式図であり、図12は、始動時のバルブタイミングを説明するためのバルブタイミングダイヤグラムである。実施の形態2においては、実施の形態1と同様に、始動時にクランクシャフト10を90度逆回転させる。このとき図11に示すように、各気筒4のピストン6のそれぞれはTDCとBDCとの中間位置に配置される。具体的に第1気筒4aは吸気バルブ30が閉じられる直前のタイミングにまで戻されることから、90度逆回転した時点で吸気バルブ30が開き、第1気筒4a内の圧力は大気圧となるとともに、気筒4a内の空気量は1+αから1/2+αにまで減少する。第4気筒4dは圧縮TDCからストローク中間付近に途中に戻される。この間、吸気バルブ30、排気バルブ32共に閉鎖されている。従って、第4気筒4d内の空気量はαから変化せず、第4気筒4dの筒内圧は減少する。第3気筒4cは膨張行程の途中に戻される。このとき排気バルブ32の開弁タイミングを進角して制御されているため、逆回転の途中排気バルブ32が開いた状態にあり、第3気筒4c内の空気は排気されながらピストン6が戻される。従って、第3気筒4c内はほぼ大気圧に近く、空気量は1+αから1/2+α程度にまで減少する。第2気筒4bは排気行程の途中に戻される。このとき排気バルブ32が開放された状態となるため、第2気筒4bの筒内圧は大気圧となり、空気量はαから1/2+αに増加する。
上述したように、内燃機関2の始動時において最も大きなトルクが必要となり、振動の原因となるのは、圧縮行程の圧縮端においてピストン6を押し上げる際の力である。ここで、逆回転により内燃機関2の始動直後に拡大圧縮行程に入る気筒は第4気筒4d及び第1気筒4aである。特に、第1気筒4aは内燃機関2の停止時にピストンがBDCにあるため、気筒内の空気量が大きくなっている。しかし、逆回転により第1気筒4aはIVCよりも進角して戻される。すなわち、第1気筒4aは、逆回転によりピストン6がTDCとBDCとの中間位置付近に来た時点で、吸気バルブ30が開放される。その結果、ピストン6内の空気は排出され、そのピストン6位置に対応した空気量1/2+αにまで減少する。従って、内燃機関2の始動後、第1気筒4aが圧縮端を通過する際の筒内圧を小さくすることができ、内燃機関2の始動時における振動の発生を抑えることができる。また、実施の形態2において第4気筒4dは逆回転により空気量αのままピストン6の位置が戻されているため、筒内圧が小さく状態となっている。従って、内燃機関2全体として始動後の圧縮行程の圧縮端におけるトルク変動を小さく抑えることができ、始動時に発生する振動を小さく抑えることができる。上記のような実施の形態2における制御は、図7、図8と同様のルーチンで行われる。
なお、実施の形態2では、図9、図10に示すように各気筒4のピストンをそれぞれ、TDCまたはBDCで停止させる場合について説明した。しかしピストンの停止位置はこれに限るものではない。図13は、この発明の実施の形態2における他の停止時の例を説明するためのバルブタイミングダイヤグラムである。図13に示す例では、各気筒4のピストン6は、それぞれTDCとBDCとの間の各行程の中間位置付近に停止するように制御される。この場合、停止時に各気筒4内が空気に置換されることにより、第1〜第4気筒の筒内圧は大気圧となり、空気量は全て1/2+αとなる。この例の場合、IVCにおけるピストン6の位置とほぼ同位置において、全ての気筒4のピストン6が停止することになる。従って、仮に逆回転により、内燃機関2の始動後に拡大圧縮行程に入るいずれかの気筒を、IVCを越えて進角させたとしても、その気筒4内の空気量を停止時よりも減少させることができない。従って、このような場合、つまり、始動後に拡大圧縮行程に入る気筒のなかに、ピストン6の位置よりもBDCに近くなる気筒4がないような場合には、特に逆回転をする効果を得ることができない。このような場合には、逆回転を行うことなく通常通りに内燃機関2の始動を開始すればよい。実施の形態2においては、逆回転を行うことなく始動する場合にも、IVCは、進角制御されているため、拡大圧縮行程における圧縮空気量は1/2+αとなる。従って、始動時の振動を抑えることができる。
また、上記の逆回転を行わない場合の制御を、逆回転を行う場合の制御と組み合わせて、例えば、図8のステップS106とステップS108との間に、ピストン6の停止位置から逆回転が必要か否かを判定するステップを加えて、逆回転が必要と判定された場合にのみ、ステップS108において逆回転をするような制御を行うこともできる。
上述したように、停止位置とバルブタイミング、始動時の逆回転の角度は、実施の形態2において説明した例に限るものではない。停止位置とバルブタイミングは通常の走行状態を考慮して決定すればよい。また、始動時にはピストン6の停止位置およびバルブタイミングを考慮して、逆回転の角度を決定する。すなわち、逆回転により、始動後に拡大圧縮行程に入る気筒であって、IVCのピストン位置よりもBDCに近い位置にピストン6が停止している気筒を特定し、この気筒がIVCを越えて進角されるような角度を算出して、逆回転するようにすればよい。これにより、気筒内の空気量を停止時の空気量より少なくすることができ、始動時の圧縮行程の圧縮端におけるその気筒の筒内圧を小さくし、トルク変動による振動の発生を抑えることができる。
また、以上の実施の形態では、4気筒、8気筒の場合について説明したが、これに限るものでもなく、例えば6気筒などの場合であっても同様に適用することができる。この場合であっても、内燃機関2の始動後に拡大圧縮行程の圧縮端を通る気筒内の空気を減少させることができるものであればよく、その結果、始動時の振動を小さく抑えることができる。
以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に限定されるものではない。また、実施の形態において説明する構造や、方法におけるステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
この発明の実施の形態1におけるシステムの構成を説明するための模式図である。 この発明の実施の形態1における内燃機関の1の気筒上部を表す図である。 この発明の実施の形態1における内燃機関の停止時の各気筒の状態を表す図である。 この発明の実施の形態1における内燃機関の停止時の各気筒の状態を表す図である。 この発明の実施の形態1における内燃機関の始動時の各気筒の状態を表す図である。 この発明の実施の形態1における内燃機関の始動時の各気筒の状態を表す図である。 この発明の実施の形態1において制御装置が実行する制御のルーチンを説明するためのフローチャートである。 この発明の実施の形態1における制御装置が実行する制御のルーチンを説明するためのフローチャートである。 この発明の実施の形態2における内燃機関の停止時の各気筒の状態を表す図である。 この発明の実施の形態2における内燃機関の停止時の各気筒の状態を表す図である。 この発明の実施の形態2における内燃機関の始動時の各気筒の状態を表す図である。 この発明の実施の形態2における内燃機関の始動時の各気筒の状態を表す図である。 この発明の実施の形態2における内燃機関の他の停止時の各気筒の状態を表す図である。
符号の説明
2 内燃機関
4 気筒
6 ピストン
8 コンロッド
10 クランクシャフト
12 回転数センサ
14 燃焼室
16 吸気ポート
18 排気ポート
20 点火プラグ
22 インジェクタ
24 スロットルバルブ
26 エアフロメータ
28 空燃比センサ
30 吸気バルブ
32 排気バルブ
34 吸気カム
36 排気カム
38 VVT機構
40 VVT機構
42 カムポジションセンサ
44 カムポジションセンサ
46 制御装置

Claims (3)

  1. 複数の気筒と、
    前記複数の気筒のそれぞれの内部に配置されたピストンと、
    前記複数の気筒それぞれに配置され、前記ピストンの移動に連動して所定のタイミングで吸気ポートを開閉する吸気バルブと、
    前記ピストンを、内燃機関の燃焼サイクルに従って、前記気筒内で移動させる正回転手段と、
    前記ピストンを、前記燃焼サイクルとは逆回転に、前記気筒内で移動させる逆回転手段と、
    前記内燃機関の始動直後に前記ピストンが逆回転方向に移動するように前記逆回転手段を制御する制御手段と、
    を備え、
    前記制御手段は、
    前記複数の気筒のうち、前記内燃機関の始動直前、圧縮行程にある気筒であって、かつ、前記内燃機関の始動直前における前記ピストンの停止位置が、前記吸気バルブの閉弁タイミングにおける前記ピストンの停止位置よりも下死点に近い位置にある気筒を特定し、特定された該気筒が、少なくとも前記閉弁タイミングを越えるように逆回転の角度を制御する、ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記制御手段は、記複数の気筒のうち、前記内燃機関の始動直前に膨張行程にある気筒が、前記逆回転によっても上死点を越えない範囲となるように逆回転を制御することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記制御手段は、
    前記複数の気筒のうち、前記内燃機関の始動直前に膨張行程にある気筒であって、前記内燃機関の始動直前における前記ピストンの停止位置が前記閉弁タイミングにおける前記ピストンの停止位置よりも下死点に近い位置にある気筒が、前記逆回転によっても上死点を越えない範囲となるように逆回転を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
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