JP4639502B2 - 半導体装置の製造方法および固体撮像装置の選別方法 - Google Patents

半導体装置の製造方法および固体撮像装置の選別方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、第2導電型の不純物領域上に第1,第2導電型または真性の不純物領域を結晶成長するときの界面近傍での汚染、とくにN化汚染の程度を有効に検知して結晶成長を進める工程を含む半導体装置の製造方法と、その検知した値を特性選別の基準に用いる固体撮像装置の選別方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の素子形成領域を結晶成長により形成することがある。
たとえば、本願出願人が特開平9−331058号公報に開示した発明では、縦型オバーフロードレイン方式の固体撮像素子において、第1導電型半導体基板と、該第1導電型半導体基板上に形成された第2導電型半導体領域と、該第2導電型半導体領域上に形成された第2導電型半導体領域より低濃度で赤外線が十分吸収されうる厚さの第1導電型,第2導電型または真性の発明領域を有し、該第1導電型,第2導電型または真性の半導体領域の表面に受光部が形成されている。好ましくは、第1導電型,第2導電型または真性の半導体領域がエピタキシャル層で形成され、第2導電型半導体領域がイオン注入により形成され、その濃度が1014〜1016cm-3程度となっている。
【0003】
この公報に記載された固体撮像素子によれば、第2導電型半導体領域が形成された半導体基板上に、第2導電型半導体領域より低濃度で赤外線が充分吸収されうる厚さの半導体領域を形成している。これにより、高エネルギーのイオン注入を用いると良好な生産性を保つことが困難となる深さに、いわゆるオーバフローバリア領域(第2導電型不純物領域)を形成することが可能となった。その結果、縦型オバーフロードレイン構造を形成した場合でも、赤外線などの波長が長い入射光成分が感度向上に寄与するようになった。
固体撮像素子の微細化,受光部面積の縮小にともなって素子の高感度化は重要な課題になっており、上記発明によって固体撮像素子の高集積化,高感度化が大きく進展するものと期待される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、もともと低い濃度の半導体領域上に、さらに低い濃度の半導体を結晶成長する場合、それまで施された種々の半導体形成工程での汚染などの影響を受け、結晶成長を行うときの界面付近で導電型がn型になりやすいというN化の問題がある。結晶成長層のN化の程度が大きいと、所望の不純物プロファイルを有した結晶成長層を形成することが困難となり、また素子特性に与える影響も大きくなる。
【0005】
たとえば、上記公報に記載された固体撮像素子では、第2導電型半導体領域の不純物濃度が1014〜1016cm-3と低く、その上に、これより低い濃度の第1導電型,第2導電型または真性の半導体領域を結晶成長する(以下、この半導体領域をエピタキシャル層という)。この結晶成長の以前に、第2導電型不純物領域の形成時に行った、洗浄,酸化,フォトリソグラフィ,イオン注入,酸化膜剥離の各工程、および、その結晶成長前の洗浄工程で、第2導電型不純物領域のドーパント不純物が汚染されていることがある。
具体的に、この汚染としては、第2導電型不純物領域の表面がN化していることがある。その後、第2導電型不純物領域の上に結晶成長する、より低濃度の半導体領域の界面に上記N化による不純物が混入し、オーバーフローバリア濃度が変動して、この濃度変動が、所定のオーバフローバリア高さを得るための基板電圧Vsub を大きくばらつかせる要因となる。また、このオーバーフローバリア濃度変動が、固体撮像素子内の画素間で混色不良を発生させる原因となる。
【0006】
このN化防止の対策のために種々の装置管理がなされているが、1014cm-3レベルと極めて低い濃度の汚染を管理することは現状では難しく、N化防止の対策が不十分な状況である。
さらに、現状では、上記の1014cm-3レベルのN化を事前に確認することができない。すなわち、実際にエピタキシャル層を形成後に固体撮像素子を形成してみないと、オーバーフローバリア濃度の変動およびそれに基づく画素間の混色の程度が判らない。その結果、所定のオーバーフローバリアの高さの変化を得るための基板電圧Vsub が大幅にばらついたり、画素間の混色不良が多量に発生するといった事態を未然に防ぐことができないという課題があった。
【0007】
本発明の第1の目的は、第2導電型の不純物領域上に第1,第2導電型または真性の不純物領域を結晶成長するときの界面近傍での汚染を有効に検知し、その検出結果を以後の工程に反映させて不良の発生率を抑制することができる半導体装置の製造方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、上記検出結果を完成後の固体撮像素子の特性の良否を決める基準の一つに用いる固体撮像装置の選別方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る半導体装置の製造方法は、第1導電型半導体の表層の一部に第2導電型の半導体領域を形成し、第2導電型の半導体領域上と、その周囲の第1導電型半導体上とに、第1,第2導電型または真性の半導体からなる結晶成長層を結晶成長させる結晶成長の工程を含み、該結晶成長の工程が以下の工程、すなわち、半導体装置の製造ロットを構成する複数のウエハのうち一枚を先行して結晶成長し、上記第2導電型の半導体領域のピークキャリア濃度(C1)と、上記結晶成長層と上記第1導電型半導体との境界の近傍にできた濃度異常変化のピークキャリア濃度(C2)とを、上記先行して結晶成長したウエハで実測し、上記2つのピークキャリア濃度の比(C2/C1)が所定値以下のときに、上記製造ロット内の他のウエハを、上記先行したウエハと同じ条件で結晶成長する、各工程を含む。
上記ピークキャリア濃度の比(C2/C1)が所定値より大きいとき、好適に、その値に応じて、前処理を含む結晶成長に関係する条件のうち少なくとも一つの条件を上記先行したウエハの結晶成長時から変えて、上記製造ロット内の他のウエハを結晶成長する。
また、上記結晶成長層の不純物濃度が、上記第2導電型の半導体領域の第2導電型不純物の濃度より低い。
【0009】
この半導体装置の製造方法は、固体撮像装置の製造方法に好適である。
すなわち、上記半導体装置は固体撮像装置であり、上記第1導電型半導体は、上記固体撮像装置の第1導電型半導体基板または半導体基板上に形成した第1導電型の半導体層であり、上記製造方法が以下の工程、すなわち、第2導電型不純物を第1導電型半導体にイオン注入して、オーバフローバリア層として機能する上記第2導電型の半導体領域を形成し、上記先行ウエハの結晶成長,上記2つのピークキャリア濃度の測定および他のウエハの結晶成長を含む上記結晶成長の工程を実行し、上記結晶成長層に固体撮像素子を形成する。
上記結晶成長層の不純物濃度が、上記第2導電型の半導体領域の第2導電型不純物の濃度より低い。
また、上記結晶成長層を、その上面より入射した赤外光が十分吸収される範囲の所定厚さまで成長させる。
これらの要件を満たす固体撮像装置において、好適に、上記結晶成長の良否を決める判定基準に用いた上記ピークキャリア濃度の比(C2/C1)の値が0.2である。
【0010】
この半導体装置の製造方法では、第2導電型の不純物領域の表面汚染の程度が、上記ピークキャリア濃度の比(C2/C1)に強く相関する。したがって、この濃度比が一定値以下、たとえば0.2以下の場合、同一ロット内の後続ウエハを同じ条件で結晶成長する。
この濃度比が一定値、たとえば0.2より大きい場合、前処理を含む結晶成長に関係する条件のうち少なくとも一つの条件を変えて結晶成長を続けることができる。これにより、第2導電型の不純物領域の表面汚染に起因した結晶成長層の品質低下が有効に回避される。
また、上記濃度比が基準値を大きく上回る場合は、たとえば、そのロットを廃棄する。
【0011】
前記した本発明の第2の目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る固体撮像装置の選別方法は、第1導電型半導体の表層の一部に第2導電型の半導体領域を形成し、第2導電型の半導体領域上と、その周囲の第1導電型半導体上とに、第1,第2導電型または真性の半導体からなる結晶成長層を結晶成長させる結晶成長の工程を含むプロセスを経て製造された固体撮像装置の選別方法であって、上記結晶成長の工程が以下の工程、すなわち、半導体装置の製造ロットを構成し同じ条件の同じ製造装置を用いて製造される複数のウエハのうち一枚を先行して結晶成長し、上記第2導電型の半導体領域のピークキャリア濃度(C1)と、上記結晶成長層と上記第1導電型半導体との境界の近傍で上記結晶成長層内にできた濃度異常変化のピークキャリア濃度(C2)とを、上記先行して結晶成長したウエハで実測する各工程を含み、完成後の固体撮像装置の特性の選別時に、上記2つのピークキャリア濃度の比(C2/C1)を選別基準の一つに用いる。
【0012】
好適に、固体撮像素子が形成された上記結晶成長層の不純物濃度が、オーバフローバリア層として機能する上記第2導電型の半導体領域の第2導電型不純物の濃度より低く、かつ、上記結晶成長層の厚さが、その上面より入射した赤外光が十分吸収される範囲内の所定厚さに設定されている固体撮像装置の選別において、上記ピークキャリア濃度の比(C2/C1)の値0.2を、混色特性が良いと予測されるウエハの選別基準の一つに用いる。
【0013】
この固体撮像装置の選別方法では、製造途中で得られた上記濃度比のデータを見て、完成後の固体撮像装置に対し、その結晶成長層の品質に関係する特性、たとえば混色不良や基板電圧のばらつきの程度などを選別する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
ここでは、インターライン転送方式のCCDに本発明を適用した例を説明する。本発明は、その他、フレームインターライン転送方式あるいはフレーム転送方式など、転送方式に限定なく広く適用できる。
【0015】
図1は、本実施形態に係るCCDの概略構成を示すブロック図である。
このCCDは、撮像部1、水平転送部2、出力部3から構成されている。出力部3は、とくに図示しないが、出力ゲート部と、たとえばフローティングゲートアンプまたはフローティングディフュージョンアンプにより構成された電荷−電圧変換部と、リセットゲート部とを有する。
【0016】
撮像部1は、光電変換を行なう受光部4、読出ゲート部5および垂直転送部6からなる画素7を、平面マトリックス状に多数配置させて構成されている。各画素7間は、図示せぬチャネルストップで電気的に干渉しないように分離されている。
垂直転送部6は、受光部4の列ごとに共有され行方向に所定本数、配置されている。撮像部1には、垂直転送部6を駆動する4相の垂直転送クロック信号が入力される。水平転送部2には、これを駆動する2相の水平転送クロック信号が入力される。
これら水平転送部2および垂直転送部6は、半導体基板内の表面側に不純物が導入されて形成されたマイノリティ・キャリアの電位井戸と、誘電膜を介して基板上に繰り返し分離して形成された複数の電極(転送電極)とを有する。これらの転送部2,6には、その転送電極に対して上記した4相または2相の転送クロック信号がそれぞれ周期的に位相をずらして印加される。これら転送部3,7は、転送電極に印加される転送クロック信号に制御されて前記電位井戸のポテンシャル分布が順次変化し、この電位井戸内の電荷を転送クロック信号の位相ずれ方向に転送する、いわゆるシフトレジスタとして機能する。以下、垂直転送部を垂直転送レジスタ、水平転送部を水平転送レジスタという。
【0017】
図2は、図1のA−A線に沿った1画素分の水平方向断面図である。
このCCDは、n型のシリコン基板10を有し、その表面上に、これより低い不純物濃度のn型(以下、n- 型と表記)の第1エピタキシャル層11が形成されている。第1エピタキシャル層11は、単結晶シリコンの結晶成長により形成される。第1エピタキシャル層11の表層の一部、すなわち撮像部1に対応した箇所にp型の半導体不純物領域12が形成されている。図2に表れていない撮像部1以外の箇所では、第1エピタキシャル層11の表層部にp型の半導体不純物領域12が形成されていないため、表面にn型の第1エピタキシャル層11が表れている。
そして、このp型の半導体不純物領域12上、および、その周囲のn型の第1エピタキシャル層11上に、第1エピタキシャル層11より更に低濃度のn型(以下、n--型と表記)の第2エピタキシャル層13が形成されている。この第2エピタキシャル層13が、本発明の“結晶成長層”に該当し、結晶成長法により形成される。
【0018】
第2エピタキシャル層13内の垂直転送レジスタ6に対応した位置に、電荷転送時に電位井戸を形成するn型の転送チャネル領域15が形成されている。n型転送チャネル領域15は垂直転送方向に長く、撮像部1全体では、たとえば並行ストライプ状に形成されている。n型転送チャネル領域15の基板深部側に、p+ 型の高濃度不純物領域16が形成されている。このp+ 型高濃度不純物領域16の存在により、基板バルク側で発生した電荷のn型転送チャネル領域15への流入が防止され、その結果、とくにスミアが有効に抑制される。
なお、n型の転送チャネル領域15の基板表面側にもp型不純物領域を形成し、転送チャネルを埋め込み型としてもよい。この場合、基板表面準位による信号電荷のピンニングが防止され、垂直転送効率が向上する。
【0019】
第2エピタキシャル層13内の前記受光部4に対応した位置に、n- 型の不純物領域(信号電荷蓄積領域)18が形成されている。また、n- 型の不純物領域18の基板表面側には、正電荷が蓄積されるp++型不純物領域(正電荷蓄積領域)19が形成されている。これらにより、基板垂直方向の断面がP++−N- −N--−P構造の、いわゆるHAD(Hole Accumulated Diode)センサと称されるフォトダイオードPDが形成されている。このフォトダイオードPDに入射された光が光電変換されて信号電荷(電子)を生成し、この信号電荷がn- 型の不純物領域18内で一定時間蓄積される。また、入射光が強い場合に、余分な電荷はp型の不純物領域12により形成されたOFB(Over Flow Barrier) から溢れ出し基板側に捨てられる。OFBの高さは基板10に印加される基板電圧Vsub により変化させることができる。この基板電圧Vsub を変えることにより、信号電荷の蓄積量が変化し、蓄積時間を変更してシャッタ機能が実現される。
【0020】
受光部4に対し図2より右側で隣接する他のセルの垂直転送部(不図示)との間、あるいは、前述した垂直転送部6に対し図2より左側で隣接する他のセルの受光部(不図示)との間に、p+ 型の高濃度不純物領域からなるチャネルストップ領域17が形成されている。チャネルストップ領域17は、フォトダイオードPDを構成する不純物領域18,19の図2に表れていない他の2辺側にも延在している。これにより、水平方向および垂直方向のセル間で信号電荷の干渉が有効に防止されている。
【0021】
垂直転送レジスタ6のn型の転送チャネル領域15と受光部4のn+ 型の不純物領域18との間に位置するn--型不純物領域が、読出ゲート領域となる。なお、この領域に、読出ゲートの電位障壁の高さを調整する低濃度なp型不純物領域を形成してもよい。
【0022】
これらの各種不純物領域が形成されたn--型の第2エピタキシャル層13上は誘電体膜14により被覆されている。誘電体膜14は、図2では単層に描かれているが、実際は、垂直レジスタ6,読み出しゲート部5およびチャネルストップ領域上で、上下の酸化膜(たとえば、二酸化珪素膜)と、その間に挟まれ電荷蓄積能力を有した窒化膜(たとえば、窒化珪素膜)とからなる三層構造の誘電体膜となっている。これは、主に読み出しゲート部のしきい値電圧を変化させて、アンチブルーミング特性の調整を可能にするためである。
この三層の誘電体膜14が形成された、読出ゲート部5,垂直転送レジスタ6およびチャネルスットップ領域にかけては、たとえばポリシリコンからなる垂直転送電極20が形成されている。この垂直転送電極20は、とくに図示しないが、他のポリシリコン層からなる垂直転送電極と一部重なりながら垂直転送方向に繰り返して配置されている。また、垂直転送電極20は、読出ゲート部5の制御用電極としても機能する。
垂直転送電極20表面および受光部4における誘電体膜14表面が、たとえばPSG,SiO2 などからなる層間絶縁膜21で覆われている。垂直転送電極20の上面および側面を覆い受光部4上で開口する遮光膜22が、層間絶縁膜21上に形成されている。遮光膜22は、例えばAl,Wなどの金属材料からなる。
【0023】
以下、このCCDの製造方法について、図3(A)から図6を参照して説明する。
ここで、図3(A)〜(C)は撮像部全体に対応した断面図であり、図4から図6は、その1画素に対応した部分を拡大して示す水平転送方向の断面図である。
【0024】
まず、図3(A)に示すように、CZ法により作製されたシリコン基板10を用意する。シリコン基板10は、たとえば、その主面が(100)面であり、リンがドープされてn型の導電性を有し、その比抵抗が8〜12Ω・cm程度とする。ここでは、シリコン基板10の大きさを、直径8インチとした。
このシリコン基板10上に結晶成長を行い、シリコン基板より低濃度のn- 型の第1エピタキシャル層11を形成する。たとえば、枚葉式のCVD炉を用い1030℃の温度にて、比抵抗が40〜50Ω・cm程度のn- 型単結晶シリコンを8μmほど成長させる。
【0025】
図3(B)に示すように、このn- 型の第1エピタキシャル層11の表層の一部に、p型の不純物領域12を形成する。具体的には、イオン注入時のスルー膜として用いる酸化膜を第1エピタキシャル層11上形成し、この酸化膜上に撮像部1の全体を開口したマスク層を形成し、このマスク層を開口部を通してp型不純物を第1エピタキシャル層11内にイオン注入する。たとえば、ホウ素イオンB+ をエネルギー700eV,ドーズ1×1011/cm-2にてイオン注入する。
その後、酸化膜を剥離する。
【0026】
次に、図3(C)に示すように、p型の不純物領域12上と、その周囲に表出するn- 型の第1エピタキシャル層11上とに、第1エピタキシャル層11より低濃度で高抵抗のn--型の第2エピタキシャル層13を結晶成長により形成する。たとえば、枚葉式のCVD炉を用い1150℃の温度にて、比抵抗が500Ω・cmより大きいn--型の単結晶シリコンを9〜11μmほど成長させる。
この第2エピタキシャル層11の形成は、まず、製造ロットから先行ウエハを一枚選んで行う。
【0027】
この先行ウエハに対し、図3(D)に示すSR(Spreading Resistance)測定を行う。具体的には、この先行ウエハを斜め研磨してステインニング後、SR測定端子を動かし、表面からの距離の関数として抵抗の分布を調べる。この深さ方向の抵抗分布をキャリア濃度分布に変換した測定結果の例を、図7に示す。
図7に示すように、上記深さ方向のSR分布の測定は、撮像部1以外のp型不純物領域12が形成されていない箇所で行い、キャリア濃度に換算する。図7には、結晶成長面にN化があった場合の濃度分布と、結晶成長面にN化がなかった場合の濃度分布を重ねて示す。
【0028】
前述したp型不純物領域12の形成時に行った、洗浄,酸化,フォトリソグラフィ,イオン注入,酸化膜剥離の各工程、および、その結晶成長前の洗浄工程で、p型不純物領域12のドーパント不純物が汚染されていることがある。このことを、一般にN化というが、同じような汚染はp型不純物領域12周囲の第1エピタキシャル層11表面にもある。したがって、この汚染した面に、極めて低濃度(高抵抗)のエピタキシャル層13を形成すると、その汚染の影響を受けて、高抵抗エピタキシャル層13の界面近傍でn型が強まり、図7に示すようにキャリア濃度のピークが生じる。このピーク濃度C2の、N化がない場合の濃度曲線までの距離がN化による濃度増加分となる。
【0029】
また、上記したSR測定において、p型不純物領域12のピークキャリア濃度C1を測定しておく。本発明では、このp型不純物領域12のピークキャリア濃度C1に対する、上記ピークキャリア濃度C2の比(C2/C1)を、エピタキシャル基板の良否を決めるパラメータをして用いる。このパラメータを用いる理由を、以下に述べる。
【0030】
本発明者は、固体撮像素子の画素間混色不良がエピタキシャル基板の出来で左右されることから、混色不良の程度が良いものから悪いものまで広範囲に分布する様々な素子の履歴(プロセスデータ)を検討し、混色不良を起こした素子と同じロット内のウエハを調査した結果、N化が混色不良に大きく影響していることを突き止めた。そして、上述した濃度比(C2/C1)が、混色不良と極めて強い相関があることが見い出した。その相関図を、図8に示す。
図8は、1/3インチ,38万画素のCCD固体撮像素子の混色不良がばらついているサンプルに着目し、その素子と同じウエハの典型的な混色不良率を縦軸とし、そのウエハと同じロット内の先行ウエハの濃度比(C2/C1)を横軸にとったグラフである。
【0031】
このグラフから、濃度比(C2/C1)が高くなると、その値が0.2を境にして急激に混色不良率が増加することが判る。したがって、濃度比(C2/C1)を0.2以下とすることで混色不良率1%未満が達成できる。また、濃度比(C2/C1)が0.1の付近を境に混色不良が僅かずつ出始めている。したがって、より望ましくは、濃度比(C2/C1)を0.1以下とすることで混色不良率をほぼ0%に低減できる。
この濃度比(C2/C1)が0.2以下の条件では、所定のオーバーフローバリア高さとするための基板電圧Vsub の値が殆どばらつかないことを確認した。
【0032】
この混色不良率と濃度比(C2/C1)との関係を、他の同じような構造を持つCCD固体撮像素子についても調べた。その結果、縦型オーバーフロードレイン構造を採用した場合、濃度比(C2/C1)がある境界値を越えると混色不良率が急増し、その境界値以下では基板電圧Vsub も安定しているという結論を得た。
【0033】
上記理由により、図3(D)の濃度比(C2/C1)判断では、濃度比(C2/C1)が0.2以下の場合、その先行ウエハを行った結晶成長の装置の状態および条件が良好であると判断する。したがって、その合格した先行ウエハと同じロット内の他のウエハに対し、先行ウエハと同じ装置で同じ条件で、図3(C)に示す第2エピタキシャル層13の形成を行う。
一方、濃度比(C2/C1)が0.2より大きい場合は、先行ウエハと同じ条件での結晶成長は行わない。そして、望ましくは、濃度比の大きさに応じて対処の仕方をかえるとよい。たとえば、濃度比が0.2を僅かに越える程度であれば、結晶成長時のPH3 のドープ量などを調整することで濃度比を0.2以下にすることが可能である。しかし、濃度比がある程度の大きさまでなら、たとえば複数回洗浄するか別の洗浄法を採用するなど後続ウエハの洗浄条件を見直し、洗浄条件を単独で、あるいは成長条件と組み合せて変化させる。さらに濃度比が大きい場合は、ウエハを廃棄し、最初の第1エピタキシャル層の形成からやり直す。
なお、濃度比の判定基準は0.2以下に限らず、それより小さい値、たとえば0.1以下としてもよい。また、本例の第2エピタキシャル層13は、フォトダイオードPDに赤外領域の感度を持たせるために厚く設定したが、高感度としない場合は薄くてもよい。
【0034】
以上の工程により、第1導電型半導体(第1エピタキシャル層11)に第2導電型半導体領域12を有し、それらの上に第2エピタキシャル層13を有したCCD固体撮像素子用のエピタキシャル基板が形成される。
【0035】
図4では、まず、n--型の第2エピタキシャル層13の表面に、誘電体膜14を形成する。誘電体膜14は、たとえば二酸化珪素膜/窒化珪素膜/二酸化珪素膜の積層膜(ONO膜)とする。
つぎに、n--型の第2エピタキシャル層13に各種不純物領域を形成する。具体的には、誘電体膜14上に所定パターンのマスク層を形成し、このマスク層の開口部から誘電体膜14をスルー膜としてn型またはp型の不純物を必要な条件にてイオン注入する。このマスク層の形成とイオン注入とを繰り返すことにより、垂直転送レジスタを構成するn型の転送チャネル領域15、その下のp+ 型の高濃度不純物領域16、およびp+ 型のチャネルストップ領域17をそれぞれ形成する。
【0036】
図5に示すように、誘電体膜14上に転送電極20を形成する。転送電極が2層の場合、第1多結晶シリコンの堆積とパターンニング、層間誘電体膜の形成、第2多結晶シリコンの堆積とパターンニングの順で行う。
【0037】
図6に示すように、受光部4にn- 型の信号電荷蓄積領域18を形成するためにn型不純物をイオン注入する。また、その上層にp+ 型の正電荷蓄積領域19を形成するためにp型不純物をイオン注入する。このイオン注入は、ONO膜(誘電体膜)14を付けたままでもよいが、イオン注入に先立って転送電極20をマスクとして受光部4のONO膜14を除去し、受光部4に単層の二酸化珪素膜を再度形成し、その単層の二酸化珪素膜をスルー膜として用いてもよい。あるいは、ONO膜の最下層の二酸化珪素膜を残してイオン注入してもよい。
【0038】
その後、必要に応じて活性化アニールを行う。
また、図2に示すように、転送電極20上および受光部4の誘電体膜14上に、たとえばPSGまたはSiO2 からなる層間絶縁膜21を堆積する。また、遮光膜22となる金属膜を層間絶縁膜21上に形成し、これをパターンニングして受光部4の上方で開口させる。
さらに、必要に応じて、層間絶縁膜,層内凹レンズ,カラーフィルタ,OCL(On Chip Lens)を形成し、当該CCDを完成させる。
【0039】
本発明の固体撮像装置の製造方法の実施形態は、上記の説明に限定されない。たとえば、CZ基板に変えてMCZ(Magnetic field Czochralski)法で成長させたMCZ基板を用いてもよい。また、MCZ基板を用いた場合、第1エピタキシャル層11を形成しないで、MCZ基板表面を中性子ドープしてシリコンを燐に変える処理をし、その第1導電型層にOFBとなる第2導電型不純物領域12を形成してもよい。なお、CZ基板上に第1エピタキシャル層11を形成する理由は、CZ基板に直接OFBを形成すると、CZ基板のドーパント濃度ムラ(striation) に起因して画像コントラストがばらつくからである。MCZ基板はこのようなドーパント濃度ムラが殆どないため、上記した方法により第1エピタキシャル層11を省略することが可能となる。また、第1エピタキシャル層11を設けた他の理由としては、いわゆるシャッタ電圧を調整するためである。その必要がなければ、MCZ基板を用いることを前提に第1エピタキシャル層11の省略が可能となる。
【0040】
エピタキシャル基板は、その形成に低抵抗基板を用いること、および/または、結晶成長に先立って低抵抗な埋め込み領域を形成することにより、エピタキシャル層より下方領域の直列抵抗を低くすることが可能である。そのため、エピタキシャル基板を用いると、素子内で所望のエネルギー障壁変化を生じさせるための駆動電圧および基板への印加電圧が低減され、低消費電力化に有利となる。
シリコンエピタキシャル基板の形成には、実用的な方法として化学気相成長(CVD; Chemical Vapor Diposition)が用いられている。このCVDは、SiCl4 あるいはSiHCl3 をソースガスとして用いる水素還元法、またはSiH2 Cl2 あるいはSiH4 をソースガスとして用いる熱分解法によって行われる。上記した第1および第2エピタキシャル層11,13の形成では、いずれの方法を用いてもよい。
【0041】
また、第2導電型の不純物領域12はイオン注入で形成したが、たとえば拡散法によっても形成できる。
【0042】
上記の実施形態においては、第2エピタキシャル層13内にp型ウエルを形成して、そのp型ウエル内にCCD固体撮像素子を形成してもよい。
また、CCD以外の固体撮像装置、たとえば増幅型固体撮像装置やCMOS型固体撮像装置等の製造にも本発明を適用し、画素間混色の抑制および基板電圧の安定化を図ることができる。
さらに、CCD以外の固体撮像装置、さらに他の半導体装置であっても、結晶成長層を有し、その不純物濃度が低いなどの理由により結晶成長の界面付近で濃度異常が発生しやすい半導体装置に本発明は広く適用できる。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0043】
このウエハ評価方法は、ウエハプロセス内でのウエハの選別に限らず、ウエハ状態で出来上がった半製品、あるいは、パッケージングされて出来上がった固体撮像装置の製品に対する特性選別に応用できる。
具体的には、前記した濃度比(C2/C1)のデータをロットごとに蓄積しておく。ウエハ状態の半製品またはパッケージング後の製品の製造ロットは通常管理されているので、そのロットNOを調べれば、そのロットにおける濃度比(C2/C1)が分る。したがって、この濃度比が、たとえば0.2以下(または0.1以下)であることを、混色特性がよく基板電圧変動が小さい半製品または製品の選別基準とする。
これにより、その後の混色特性等の測定が効率よく行える。たとえば、混色特性のランク分けをする場合などでは選別効率が上がるし、濃度比0.1以下の場合に特定の測定項目を省略することも可能となる。
【0044】
【発明の効果】
本発明の第1の観点に係る半導体装置の製造方法によれば、先行ウエハの濃度比検出結果を見て、その後の後続ウエハの結晶成長の条件に反映させたり処分を決めることができる。このため、結晶成長層の品質が高く半導体装置の特性が良く、大量の不良発生を有効に防止して、歩留りの向上を図り、製造コストを抑制することができる。また、半導体装置の製造工程の速い段階で適切な処置が取られるため、生産計画が立てやすくなる。
この製造方法を固体撮像装置に適用した場合、濃度比0.2以下を合格ウエハとすれば、混色不良を1%以下に低減できる。また、第2導電型の不純物領域により形成される電位障壁(いわゆるオーバーフローバリア)の高さを決めるために第1導電型半導体側から印加する電圧(いわゆる基板電圧)が安定する。つまり、一定の基板電圧を印加したときに、上記オーバーフローバリアの高さがばらつかない。
【0045】
本発明の第2の観点に係る固体撮像装置の選別方法では、製造途中で得られた上記濃度比のデータを見て、完成後の固体撮像装置の特性選別ができる。これにより最終的な特性チェックの時間と費用を節約できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るCCDの概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係るCCDに関し、図1のA−A線に沿った1画素分の水平転送方向の断面図である。
【図3】(A)〜(C)は、実施形態に係るCCDの製造において、エピタキシャル基板の形成までを示す断面図である。(D)は、実施形態に係るCCDの製造において、SR測定による濃度比判断の工程を表示した図である。
【図4】実施形態に係るCCDの製造において、垂直転送部およびチャネルストップ領域で不純物領域の形成後を示す1画素分の水平転送方向の断面図である。
【図5】実施形態に係るCCDの製造において、垂直転送電極形成後を示す1画素分の水平転送方向の断面図である。
【図6】実施形態に係るCCDの製造において、受光部の不純物領域の形成後を示す1画素分の水平転送方向の断面図である。
【図7】本発明の実施形態に関し、SR測定に基づく深さ方向のキャリア濃度分布例を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施形態に関し、1/3インチ,38万画素のCCD固体撮像素子の混色不良率と、対応する先行ウエハの濃度比(C2/C1)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…撮像部、2…水平転送部、3…出力部、4…受光部、5…読み出しゲート部、6…垂直転送部、7…画素、10…シリコン基板(半導体基板)、11…第1エピタキシャル層(第1導電型半導体)、12…p型不純物領域、13…第2エピタキシャル層(結晶成長層)、14,14a…誘電体膜、15…垂直転送チャネル領域、16…高濃度不純物領域、17…チャネルストップ領域、18…信号電荷蓄積領域、19…正電荷蓄積領域、20…垂直転送電極、21…層間絶縁膜、22…遮光膜。

Claims (9)

  1. 第1導電型半導体の表層の一部に第2導電型の半導体領域を形成し、第2導電型の半導体領域上と、その周囲の第1導電型半導体上とに、第1,第2導電型または真性の半導体からなる結晶成長層を結晶成長させる結晶成長の工程を含み、
    結晶成長の工程が以下の工程、すなわち、
    半導体装置の製造ロットを構成する複数のウエハのうち一枚を先行して結晶成長し、
    上記第2導電型の半導体領域のピークキャリア濃度(C1)と、上記結晶成長層と上記第1導電型半導体との境界の近傍にできた濃度異常変化のピークキャリア濃度(C2)とを、上記先行して結晶成長したウエハで実測し、
    上記2つのピークキャリア濃度の比(C2/C1)が所定値以下のときに、上記製造ロット内の他のウエハを、上記先行したウエハと同じ条件で結晶成長する、
    各工程を含む半導体装置の製造方法。
  2. 上記ピークキャリア濃度の比(C2/C1)が所定値より大きいとき、その値に応じて、前処理を含む結晶成長に関係する条件のうち少なくとも一つの条件を上記先行したウエハの結晶成長時から変えて、上記製造ロット内の他のウエハを結晶成長する
    請求項1記載の半導体装置の製造方法。
  3. 上記半導体装置は固体撮像装置であり、
    上記第1導電型半導体は、上記固体撮像装置の第1導電型半導体基板または半導体基板上に形成した第1導電型の半導体層であり、
    上記製造方法が以下の工程、すなわち、
    第2導電型不純物を第1導電型半導体にイオン注入して、オーバフローバリア層として機能する上記第2導電型の半導体領域を形成し、
    上記先行ウエハの結晶成長,上記2つのピークキャリア濃度の測定および他のウエハの結晶成長を含む上記結晶成長の工程を実行し、
    上記結晶成長層に固体撮像素子を形成する
    各工程を含む請求項1記載の半導体装置の製造方法。
  4. 上記結晶成長層の不純物濃度が、上記第2導電型の半導体領域の第2導電型不純物の濃度より低い
    請求項1記載の半導体装置の製造方法。
  5. 上記結晶成長層の不純物濃度が、上記第2導電型の半導体領域の第2導電型不純物の濃度より低い
    請求項3記載の半導体装置の製造方法。
  6. 上記結晶成長層を、その上面より入射した赤外光が十分吸収される範囲の所定厚さまで成長させる
    請求項3記載の半導体装置の製造方法。
  7. 上記結晶成長の良否を決める判定基準に用いた上記ピークキャリア濃度の比(C2/C1)の値が0.2である
    請求項3記載の半導体装置の製造方法。
  8. 第1導電型半導体の表層の一部に第2導電型の半導体領域を形成し、第2導電型の半導体領域上と、その周囲の第1導電型半導体上とに、第1,第2導電型または真性の半導体からなる結晶成長層を結晶成長させる結晶成長の工程を含むプロセスを経て製造された固体撮像装置の選別方法であって、
    上記結晶成長の工程が以下の工程、すなわち、
    半導体装置の製造ロットを構成し同じ条件の同じ製造装置を用いて製造される複数のウエハのうち一枚を先行して結晶成長し、
    上記第2導電型の半導体領域のピークキャリア濃度(C1)と、上記結晶成長層と上記第1導電型半導体との境界の近傍で上記結晶成長層内にできた濃度異常変化のピークキャリア濃度(C2)とを、上記先行して結晶成長したウエハで実測する
    各工程を含み、
    完成後の固体撮像装置の特性の選別時に、上記2つのピークキャリア濃度の比(C2/C1)を選別基準の一つに用いる
    固体撮像装置の選別方法。
  9. 固体撮像素子が形成された上記結晶成長層の不純物濃度が、オーバフローバリア層として機能する上記第2導電型の半導体領域の第2導電型不純物の濃度より低く、かつ、上記結晶成長層の厚さが、その上面より入射した赤外光が十分吸収される範囲内の所定厚さに設定されている固体撮像装置の選別において、上記ピークキャリア濃度の比(C2/C1)の値0.2を、混色特性が良いと予測されるウエハの選別基準の一つに用いる
    請求項8記載の固体撮像装置の選別方法。
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