JP4638549B2 - Igf−1レセプターと相互作用するタンパク質、それをコードする遺伝子及びそれらの使用 - Google Patents

Igf−1レセプターと相互作用するタンパク質、それをコードする遺伝子及びそれらの使用 Download PDF

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Description

本発明は、IGF-1レセプターと相互作用するタンパク質(IIPs)、それをコードする核酸、特に癌の分野における、診断及び治療のためのそれらの使用に関する。特に、本発明は、哺乳動物細胞、特に悪性腫瘍細胞における前記遺伝子の診断に、IGF-1レセプターとIIPとの間の相互作用を阻害するための遺伝子治療方法に、潜在的な癌治療剤についてスクリーニングする方法に、並びにIIPとIGF-1レセプターとの間の相互作用を阻害する潜在的に役立つ医薬剤をスクリーニングし、及び評価するのに役立つ細胞系及び動物モデルに関する。
本発明は、特に、遺伝子IIP-10及びその遺伝子産物のクローニング及びキャラクタリゼーションに関する。該遺伝子産物(ポリペプチド、mRNA)は、特にIGF-1レセプターシグナル伝達経路を調節する能力を有するとしてキャラクタライズされる。それゆえ、本発明による遺伝子産物の機能は、IGFレセプターのシグナル伝達を調節することである。それゆえ、IIPの強制的な活性化は、腫瘍細胞増殖性、生存性及びアポトーシスの回避性の増加と相関する。
IGF-1レセプターシグナル伝達システムは、腫瘍増殖及び生存に重要な役割を果たし、腫瘍アポトーシスの阻害に関連する。加えて、そしてその有系分裂促進特性と独立して、IGF-1R活性化は、試験管内及び生体内でプログラムされた細胞死に対して保護し、又は少なくともそれを遅らせることができる(Harringtonら、EMBO J. 13 (1994) 3286-3295 ; Sellら、Cancer Res. 55 (1995) 303-305 ; Singleton ら、Cancer Res. 56 (1996) 4522-4529)。
野生型のレベル未満のIGF-1Rのレベルの減少は、生体内での腫瘍細胞の広範囲のアポトーシスを引きおこすことも示されている。リガンド(IGF)及び/又はレセプターのいずれかの過剰発現は種々の腫瘍細胞系の特徴であり、動物モデルにおいて腫瘍形成を導き得る。ヒトIGF-1Rの過剰発現はNIH3T3又はRat-1繊維芽細胞のリガンド依存性固着独立性の増殖を導き、これらの細胞の接種はヌードマウスにおいて迅速な腫瘍形成を引きおこす(Kalekoら、Mol. Cell. Beiol. 10 (1990) 464-473 ; Pragerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (1994) 2181-2185) 。
乳腺において特異的にIGF-IIを過剰な発現するトランスジェニックマウスは乳癌を発達させ(Baste ら、Br. J. Cancer 72 (1995) 1189-1193)、より一般的なプロモーターの制御下でIGF-IIを過剰発現するトランスジェニックマウスは多数の広範囲の腫瘍型を発達させる(Roglerら、J. Biol. Chem. 269 (1994) 13779-13784)。極めて高頻度(80%超)でIGF-1又はIGF−IIを過剰発現するヒト腫瘍についての多くのうちの一例は、小細胞肺癌である(Quinn ら、J. Biol. Chem. 271 (1996) 11477-11483)。IGFシステムによるシグナル伝達は、特定のオンコジーンの形質転換活性のためにも必要とされるようである。
IGF-1R遺伝子の破壊を伴う胎児繊維芽細胞は、SV40T抗原、活性化Ha−ras、両方の組合せによって形質転換することができず(Sellら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 11217-11221 : Sell ら、Mol. Cell. Biol. 14 (1994) 3604-3612) 、ウシパピローマウイルスのE5タンパク質も、もはや形質転換することができない(Morrioneら、J. Virol. 69 (1995) 5300-5303)。IGF/IGF-1Rシステムでの干渉が形質転換された表現型を逆転し、腫瘍増殖を阻害することも示された(Trojan et al., Science 259 (1993) 94-97 ; Kalebic et al., Cancer Res. 54 (1994) 5531-5534 ; Prager et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (1994) 2181-2185 ; Resnicoff et al., Cancer Res. 54 (1994) 2218-2222 ; Resnicoff et al., Cancer Res. 54 (1994) 4848-4850 ; Resnicoff et al., Cancer Res. 55 (1995) 2463-2469)。
例えば、IGF-1RアンチセンスcDNA(729 bp)がトランスフェクトされたラット前立腺癌細胞(PA-III )を注入したマウスは、60日後の観察で、対照より90°に小さい、腫瘍を発達させ、又は腫瘍のない状態を維持した(Burfeindら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93 (1996) 7263-7268) 。アポトーシスに対するIGF-1Rが媒介する保護は新たな遺伝子発現及びタンパク質合成と独立している。これにより、IGF-1は、予め形成されたサイトソルメディエーターの活性化により抗アポトーシス機能を発揮する。
IGF-1Rに結合する特定のシグナル伝達基質(例えば、IRS-1、SHC、p85 P13キナーゼ等、詳細については以下を参照のこと)が開示されている。しかしながら、IGF-1Rに特有であるこれらの伝達体はなく、インスリンレセプターを含む他のレセプターチロシンキナーゼと比べてIGF-1Rの特有の生物学的特徴についての排他的な原因となり得た。これは、IGF-1R(又は少くともIGF−レセプターサブファミリー)の特定の標的が生存能を誘発し、アポトーシスを打ち消す存在であり得、これにより抗癌治療のための主な医薬標的であることを示す。
イースト2−ハイブリッドシステムを用いることにより、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の調節ドメイン、p85がIGF-1Rと相互作用することが示された(Lamothe, Bら、FEBS Lett. 373 (1995) 51-55 ; Tartare - Decker, S ら、Endocrinology 137 (1996) 1019-1024) 。しかしながら、p85の、本質的に全てのファミリーの多くの他のレセプターチロシンキナーゼへの結合も見られる。2−ハイブリッドスクリーニングにより規定されるIGF-1Rの別の結合パートナーは、trk、met、EGF-R及びインスリンレセプターのような他のチロシンキナーゼにも結合するSHCである(Tarare - Deckert, S ら、J. Biol. Chem. 270 (1995) 23456-23460)。
インスリンレセプター基質1(IRS-1)及びインスリンレセプター基質2(IRS-2)はIGF-1R及びインスリンレセプターの両方と相互作用することも見い出されている(Tartare - Deckert, S., et al., J. Biol. Chem. 270 (1995) 23456-23460 ; He, W., et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 11641-11645 ; Dey, R.B., et al., Mol. Endocrinol. 10 (1996) 631-641) 。IGF-1Rと相互作用するGrbloは結合パートナーとして多くのチロシンキナーゼ、例えばmet、インスリンレセプター、kit及びablを共有する(Dey, R.B ら、Mol. Endocrinol. 10 (1996) 631-641 ; Morrione, A. ら、Cancer Res. 56 (1996) 3165-3167)。
ホスファターゼPTPID(syp)は、極めて無差別的な結合能力も示し、即ちIGF-1R、インスリンレセプター、met及び他のものにも結合する(Rocchi, S., ら、Endocrinology 137 (1996) 4944-4952) 。より最近になって、mSH2-B及びvavがIGF-1Rの結合体として記述されたが、他のチロシンキナーゼとの相互作用も見られる。例えば、mSH2-Bはret及びインスリンレセプターとも結合する(Wang, J. and Riedel., J. Biol. Chem. 273 (1998) 3136-3139)。一緒に、これまで記述されたIGF-1R結合タンパク質は、治療的アプローチのための比較的非特異的な標的を示し、又はインスリンレセプター基質(IRS-1、IRS-2)の場合、インスリン由来活性のために欠くことができない。
本発明の目的は、IGF-1Rと本発明によるIIPとの間の相互作用の調節(好ましくは阻害)に基づく新しい癌治療のための基礎となるIGF-1Rの結合タンパク質をコードする新規の遺伝子及び対応するポリペプチドを供することである。
本発明は、
a)配列番号:5に記載の核酸配列又はそれに相補的である核酸配列、
b)配列番号:6に記載のポリペプチドと相同性を示すポリペプチドをコードする、a)の核酸配列のうちの1つとストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸配列、又は
c)遺伝子コードの縮重により、a)又はb)の配列によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を有するIIP-10ポリペプチドをコードする配列
を含む群から選択される、IGF-1レセプターに結合するタンパク質をコードする核酸(IIP-10)に関する。
前記核酸は、好ましくは、配列番号:5に記載の配列を有する。
ハイブリダイゼーションは、好ましくは、5.0×SSC、5×Denhardt、7% SDS、0.5 Mリン酸緩衝液pH 7.0、10%デキストランスルフェート及び100μg/mlサケ精子DNA中で約50℃〜68℃で行われ、次に1×SSCで68℃での2回の洗浄ステップが行われる。
本発明は、更に、本発明による核酸分子の発現のために適した組換え発現ベクターに関する。
本発明は、また、本発明による核酸により形質転換された宿主細胞に関する。
本発明は、また、本発明による核酸によりコードされたIGF-1レセプターに結合する組換えポリペプチドに関する。
本発明は、更に、原核生物又は真核生物宿主細胞において外来DNAを発現させ、そして要求されるタンパク質を単離することにより、IGF-1レセプターに結合するタンパク質を生産するための方法であって、該タンパク質が、配列番号:5に記載のDNA配列又は配列番号:5に記載の核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされることを特徴とする方法に関する。
本発明は、更に、癌細胞の増殖能力を検出するための方法であって、
a)癌を患う被検体の体液、腫瘍細胞、又は該腫瘍細胞の細胞抽出物もしくは細胞培養物上清のサンプルをインキュベートするステップであって、該サンプルが、
(i)配列番号:1、3又は5に記載の核酸又はそれに相補的である核酸及び (ii)(i)からの核酸のうちの1つとハイブリダイズする核酸からなる群から選択される核酸プローブと一緒に核酸を含むステップと、
b)前記サンプルの核酸及び/又は前記核酸プローブの更なる結合パートナーによるハイブリダイゼーションを検出するステップと、
を含む方法に関する。
前記ハイブリダイゼーションは、好ましくは、少なくとも、配列番号:1もしくは配列番号:5に記載の核酸フラグメント又はその相補的フラグメントで行われる。
好ましくは、検出すべき核酸は検出前に増幅させる。
本発明は、更に、IGF-1RとIIP-10との間の相互作用を阻害する化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)前記IGF-1R及びIIPポリペプチドが複合体を形成することができるように、IGF-1R及びIIPポリペプチドを、候補の化合物を含む溶液に組み合わせるステップと、
b)前記化合物の欠如下における所定の結合のレベルに対する複合体の量を決定し、それから、前記化合物が、IGF-1RのIIPへの結合を阻害する能力を評価するステップと、
を含む方法に関する。
本発明は、更に、被検体における癌腫の治療のための治療剤を生産するための方法であって、該方法は、細胞アッセイにおいてIGF-1RとIIP-10との間の相互作用を調節する治療に有効な量の化合物に、医薬として許容される担体を組み合わせることを含み、ここで前記細胞アッセイにおいて、腫瘍細胞又はIGF-1Rの発現構成物及びIIPの発現構成物がトランスフェクトされた細胞を前記化合物で処理し、そしてIGF-1Rと各々のIIPとの間の複合体形成を分析し、ここで阻害の場合の複合体形成の程度が、同じ細胞アッセイにおける前記化合物なしでの複合体形成100%に対して50%を超えないことを特徴とする方法に関する。
好ましくは、前記化合物は前記相互作用を阻害する。
IGF-1レセプターの細胞質結合タンパク質のためのcDNAライブラリーをスクリーニングするために用いたイースト2−ハイブリッドベイトのドメイン構造を示す図である。 イースト2−ハイブリッドLexA/IGF-1レセプターベイト構成物の改良を示す図である。 IIP-1の異型を示す図である。 IIP-1のIGF-1レセプター結合ドメインを示す図である。 IIP-10のタンパク質配列モチーフを示す図である。
本発明は、好ましくは、
a)配列番号:5に記載の核酸配列又はそれに相補的である核酸配列、
b)配列番号:6に記載のポリペプチドと少なくとも75%の相同性を示すポリペプチドをコードする、a)の核酸配列のうちの1つとストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸配列、又は
c)遺伝コードの縮重により、a)又はb)の配列によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を有するIIP-10ポリペプチドをコードする配列
を含む群から選択される、IGF-1レセプターに結合するタンパク質をコードする核酸(IIP-10)を含む。
IIP-10のcDNAは25,697の計算した分子量で226aaの新しいタンパク質をコードする。IIP-10はリシンが豊富なタンパク質である(11%)。IIP-10は、N−グリコシル化部位、いくつかのN−ミリストイル化部位、CK2及びPKCリン酸化部位、1つのチロシンキナーゼリン酸化部位及び1つの推定上の核局在化シグナルを含む(図5)。IIP-10のcDNA配列は、ニワトリ胸腺細胞タンパク質cthy28 kD(EMBLアクセス番号:GG34350)のcDNAと65%の相同性を示す。IIP-10及びcthy28 kDのアミノ酸配列は、70%の同一性を示す。
IIP-10cDNAのnt383~nt584はWO95/14772に記載される部分的cDNA(ヒト遺伝子HUMGSO6271;アクセス番号T24253)と94%同一である。免疫蛍光法により、フラグ標識したIIP-10は、IGF-1レセプターを過剰発現するNIH3T3細胞において細胞質及び核局在化の両方を示す。更なるイースト2−ハイブリッド分析は、IIP-10がIGF-1レセプターとリン酸化依存様式で相互作用することを示す。IIP-10はインスリンレセプターと相互作用しない。IIP-10の欠失分析は、aa19〜aa26がIGF-1Lレセプターへの結合のために十分であることを示した。
“IIP10及びIGF-1レセプターの間の相互作用又は結合”とは、イースト2−ハイブリッドシステムにおいてラミンのような調節タンパク質でなくIGF-1レセプターへのIIP10ポリペプチドの特異的結合を意味する。IGF-1レセプターへの特異的結合は、細菌内で発現されるグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)-IIP融合タンパク質及び哺乳動物細胞内で発現されるIGF-1レセプターを用いて証明することができる。更に、Flag標識化IIP-10融合タンパク質(例えばWeidner, M. ら、Nature 384 (1996) 173-176)及びIGF-1レセプターの間の会合は、哺乳動物細胞システムにおいてモニターすることができる。この目的のため、各々のcDNAをトランスフェクトするために真核細胞発現ベクターが用いられる。タンパク質間の相互作用は抗Flag又は抗IGF-1レセプター抗体を用いて同時免疫沈降実験又は亜細胞局在化研究により視覚化される。
本発明は更に、本発明による遺伝子のためのプローブ及びプライマー並びに本発明による遺伝子産物の抗原決定基をコードする核酸を供する。それゆえ好ましい実施形態は、開示される配列以外の好ましくは10〜50、より好ましくは10〜20の連続ヌクレオチドの核酸を含む。
用語“核酸”とは、例えば、DNA、RNA、又は誘導化した活性なDNA又はRNAであり得るポリペプチドをいう。しかしながら、DNA及びmRNA分子が好ましい。
用語“ストリンジェント条件下でハイブリダイズする”とは、2つの核酸フラグメントが、Sambrookら(Molecular Cloning ; A laboratory manual (1989) Cold Spring Harbor Laboratory. Press, New York, USA) に記載される標準ハイブリダイゼーション条件下で互いにハイブリダイズすることができることをいう。
より詳しくは、本明細書に用いる“ストリンジェント条件”とは、5.0×SSC、5×Penhardt、7% SDS、0.5Mリン酸緩衝液pH 7.0、10%デキストランスルフェート及び100 μg/mlサケ精子DNA中での約50℃〜68℃でのハイブリダイゼーション、次の1×SSCでの68℃での2回の洗浄ステップをいう。更に、洗浄ステップの温度は、室温約22℃の低ストリンジェンシー条件から約68℃の高ストリンジェンシー条件まで増加させることができる。
本発明は、更に、IIP-10の発現のために適した組換え発現ベクター、該発現ベクターを移入した組換え宿主細胞、及びIIP-10遺伝子によりコードされるタンパク質の組換え生産のための方法を含む。
本発明は、更に、本発明による核酸によりコードされ、及び好ましくは配列番号:5に記載のDNA配列によりコードされる合成及び組換えポリペプチド並びにそれらに基づくペプチド擬態物を含む。このようなペプチド擬態物は細胞膜について高いアフィニティーを有し、細胞により直ちに取り込まれる。ペプチド擬態物は、好ましくはペプチド及びタンパク質由来の化合物であり、非天然アミノ酸、コンホメーション制限、等配電子置換、環化等を用いる構造改変によって得られる。それらは好ましくは、24又はそれ未満、好ましくは20又はそれ未満のアミノ酸に基づくが、約12アミノ酸に基づくものが特に好ましい。
ポリペプチド及びペプチド擬態物は、それらの対応するDNA配列により及びそれら由来のアミノ酸配列によって規定することができる。その単離されたIIPポリペプチドは、個体間で異なる天然の対立遺伝子変異体内でおこり得る。このようなアミノ酸のバリエーションは、通常、アミノ酸置換である。しかしながら、それらは、生物学的に活性なフラグメントを導く全配列へのアミノ酸の欠失、挿入又は付加でもあり得る。範囲及び型の両方に関して、その中で発現される細胞及び細胞型に依存する本発明によるIIPタンパク質は、グリコシル化又は非グリコシル化形態であり得る。殺腫瘍性及び/又は転移性活性を有するポリペプチドは、該ポリペプチドを発現する癌細胞を用い、該ポリペプチドを発現しない癌細胞に関連する増殖能力及びアポトーシスを測定する腫癌進行阻害アッセイによって容易に同定することができる。
それゆえ、“IIP-10活性又はIIP-10を有するポリペプチド”は、小さなアミノ酸変異を有するがIIP-10と実質的に同じ活性を有するタンパク質を意味する。それは、実質的に、活性が同じ生物特性のものであることを意味し、そのポリペプチドは、IIP-10とアミノ酸配列において少なくとも75%の相同性(同一性)を示す。より好ましくは、アミノ酸配列は少なくとも90%の同一性である。本発明による相同性は、コンピュータープログラムGap又はBestFit(University of Wisconsin ; Needleman and Wunsch, J. Biol. Chem. 48 (1970) 443-453 ; Smith and Waterman, Adv. Appl. Math-2 (1981) 482-489)により決定することができる。
本発明による、及び本発明により用いられる他のIIPは特に以下のものがある:
IIP-1
IIP-1と呼ぶIGF-1レセプターに相互作用するタンパク質をコードするcDNA(配列番号:1)を単離した。そのIIP-1のcDNAは35,727の計算した分子量で333aaの新しいタンパク質をコードする。IIP-1はグリシンが豊富なタンパク質である(13%)。IIP-1は、いくつかのN−ミリストイル化部位、PKC及びCK2リン酸化部位:並びに2つの推定上の核局在化シグナルを含む。第2の異型、26,071の計算した分子量の236aaの長さのIIP-1(p26)を同定した。それは、最も確からしくは、交互のスプライシングによって作られる(図3)。両方の異型はIGF-1レセプターに結合する。
IIP-1のcDNA配列は以前に報告されている(Database EMBL Nos. AF089818及びAF061263;Devries, L. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 (1998) 12340-12345) 。2つの重複するcDNAクローン(図4)を同定し、それは、ヒトTIP-2部分cDNA(GenBankアクセス番号:AF028824)(Rousset ら、Oncogene 16 (1998) 643-654) に対して高い相同性を有し、それらをIIP-1a及びIIP-1bとした。IIP-1a cDNAはIIP-2のnt 117〜751に相当する。IIP-1b cDNAは、TIP-2配列(nt1〜106)の他に、WO97/27296の配列Y2H35に相同である更なる5′配列(nt 25〜158)を示す。
IIP-1a及びIIP-1bは両方とも、周知のタンパク質間相互作用ドメインであるTIP−2のPDZドメインをコードする配列(nt 156〜410)を有する(Ponting, C.P. ら、BioEssays 19 (1997) 469-479)。欠失分析により、PDZドメインはIIP-1の本質的かつ十分なIGF-1レセプター結合ドメインとして決定された(図4)。
更なるイースト2−ハイブリッド分析は、IIP-1タンパク質のIGF-1レセプターへの結合がこのレセプターチロシンキナーゼに特異的であることを示した。インスリンレセプター又はRosへの相互作用は見られなかった。他のファミリーのレセプターチロシンキナーゼはIIP-1(例えばMet、Ret、Kit、Fms、Neu、EGFレセプター)と相互作用しなかった。これにより、IIP-1は最も確からしくは、IGF-1レセプターチロシンキナーゼに特異的であることが示された最初の相互作用タンパク質である。IIP-1はIGF-1レセプターのキナーゼ不活性変異体にも結合する。
IIP-2
IIP-2は、ヒトAPS(EMBLアクセス番号:HSAB520)に対応するIGF-1レセプターの細胞質部分の新しい結合体として同定された。APSは、以前に、食餌としてオンコジーンc−kitキナーゼを用いるイースト2−ハイブリッドスクリーンにおいて単離されている(Yokouchi, M ら、Oncogene 15 (1998) 7-15)。IIP-2はキナーゼ依存様式でIGF-1レセプターと相互作用する。IIP-2の結合は、インスリンレセプターファミリーの他の膜(インスリンレセプター、Ros)に対して観察されたが、関連しないレセプターチロシンキナーゼ(Met)に対しては観察されなかった。IGF-1レセプターと相互作用することが見出されたIIP-2の領域はAPSのSH2ドメイン(nt 1249〜1545)を含むヒトAPS(nt 1126〜1674、EMBL Acc No.AB000520)に対応する。
IIP-3
IIP-3は、新しいIGF-1レセプターに相互作用するタンパク質として単離され、それはPSM(GenBankアクセス番号:AF020526)と同一である。PSMは、活性化インスリンレセプターに結合するシグナル伝達タンパク質を含むPH及びSH2ドメインとして知られる(Riedel, H ら、J. Biochem. 122 (1997) 1105-1113) 。PSMの変異体は公開されている(Riedel, H ら、J. Biochem. 122 (1997) 1105-1113) 。IIP-3のIGF-1レセプターへの結合はレセプターのチロシルリン酸化に依存する。
PSMの変異型のnt 1862〜2184に対応するcDNAクローンを同定した。その単離したcDNAクローンはIGF-1レセプター結合領域をコードすることが判明した。PSMのSH2ドメイン(nt 1864〜2148、EMBL Acc No.AF020526)は単離されたIIP-3の部分的cDNAクローンの配列によりコードされる。
IIP-4
IIP-4は、IGF-1レセプターの細胞質ドメインの新しい相互作用タンパク質として単離された。IIP-4はp59fyn,src様チロシンキナーゼ(EMBLアクセス番号:MMU70324及びヒトfynEM-HUM1:HS66H14)(Cooke, M.P.,及びPerlmutter, R.M., New Biol. 1 (1989) 66-74) 。IIP-4はキナーゼ依存様式でIGF-1レセプターに、及びインスリンレセプター及びMetのようないくつかの他のレセプターチロシンキナーゼに結合する。IGF−1レセプターと相互作用するIIP-4の領域(nt 665〜1044)はp59fynのSH2ドメイン(EMBL Acc No.V70324)を含む。
IIP-5
IIP-5は、新しいIGF-1レセプターと相互作用するタンパク質として単離された。IIP-5は、ジンクフィンガータンパク質Zfp38(EMBLアクセス番号:MMZFPTA)と高い相同性を示し、対応するヒト遺伝子と少なくとも80%の相同性を有する。Zfp-38は転写因子として知られている(Chowdhury, Kら、Mech. Der. 39 (1992) 129-142) 。IIP-5は活性化及びリン酸化IGF-1レセプターと排他的に相互作用するが、キナーゼ不活性変異体とは相互作用しない。IIP-5のIGF-1レセプターへの結合に加えて、IIP-5の、インスリンレセプターファミリーのレセプターチロシンキナーゼ(インスリンレセプター、Ros)との相互作用が観察された。IIP-5はより遠くで関連したチロシンキナーゼMetに結合しない。
Zfp38(EMBL Acc No.MMZFPIA)のnt 756〜1194をコードし、第1のジンクフィンガー(nt 1075〜1158)を含むIGF-1レセプターに結合する1つのcDNAクローンを単離した。このドメインは活性化IGF-1レセプターへの結合のために十分である。
IIP-6
IIP-6は、新しいIGF-1レセプターと相互作用するタンパク質として同定された。IIP-6は、Zfp29(EMBLアクセス番号:MMZEP29)のジンクフィンガードメインと小さな類似性を示す。Zfp29はN末端の転写活性化ドメイン及び14のC末端Cys2 HiS2 ジンクフィンガーからなる(Denny, P.,及びAshworth, A., Gene 106 (1991) 221-227)。IIP-6のIGF-1レセプターへの結合はIGF-1レセプターキナーゼのリン酸化に依存する。IIP-6はインスリンレセプターとも結合するがMetとは相互作用しない。IGF-1レセプターと相互作用することが見い出されたIIP-6の領域(配列番号:3、配列番号:4)はCys2 His2 型の2つのジンクフィンガードメインを含む。
IIP-7
IIP-7は、Pax-3(EMBLアクセス番号:MMPAX3R及びヒトPax3EM-HUM2:S69369)に対応する新しいIGF-1レセプターと相互作用するタンパク質として単離された。Pax-3は、初期の胚形成の間に発現されるDNA結合タンパク質として知られている(Goulding, M.D.ら、EMBO J. 10 (1991) 1135-1147)。IIP-7はリン酸化依存様式でIGF-1レセプターに結合する。IIP-7はインスリンレセプター及びMetとも相互作用する。部分的なIIP-7cDNAクローンはPax3のIGF-1レセプタードメイン(nt 815〜1199、EMBL Acc No.MMPAX3R)をコードすることが判明した。この領域はPax−3の対になったドメインオクタペプチド(nt 853〜876)及び対の型のモメオドメイン(nt 952〜1134)を含む。
IIP-8
IIP-8はGrb7(EMBLアクセス番号:MMGRB7P、ヒトGrb7 EM-HUM1:AB008789)の全長のcDNAをコードする。Grb7、PHドメイン及びSH3ドメイン含有シグナル伝達タンパク質はEGFレセプター結合タンパク質(Margolis, B.L.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 8894-8898) として最初に公開された。IIP-8はIGF-1レセプターのキナーゼ不活性変異体と相互作用しない。IIP-8の、いくつかの他のレセプターチロシンキナーゼ(例えばインスリンレセプター、Ros及びMet)への結合も観察された。
IIP-9
IIP-9は新しいIGF-1レセプター相互作用タンパク質として同定された。IIP-9はnck-β(EMBL Acc No.AF043260)と同一である。NckはSH2及びSH3ドメインからなる細胞質シグナル伝達タンパク質である(Lehmann, J. M ら、Nucleic Acids Res. 18 (1990) 1048)。IIP-9はリン酸化依存様式でIGF-1レセプターと相互作用する。nckはIGF-1レセプターの膜近傍領域に結合する。IIP-9のIGF-1レセプターへの結合の他に、インスリンレセプターとの相互作用が見られたが、Ros又はMetとの相互作用は見られなかった。
本発明の好ましい対象は、相同であるポリペプチド、より好ましくは、配列番号:6のポリペプチドに実質的に同一であるポリペプチド(IIP-10)である。相同性は、Pearson, W.R., Methods in Enzymology 183 (1990) 63-68, Academic Press, San Diego, USにより記載されるFastAアルゴリズムを用いることによって検査することができる。“実質的に同一”とは、保存性アミノ酸置換、例えば1のアミノ酸の同じクラスの別のアミノ酸への置換(例えばグリシンについてバリン、リシンについてアルギニン等)により、又はそのポリペプチドの生物機能を破壊しないアミノ酸配列の位置に位置した1又は複数の非保存性アミノ酸置換、欠失又は挿入によってのみ異なるアミノ酸配列を意味する。これは、そのポリペプチド内の別の共有ペプチド結合の置換を含む。“ポリペプチド”は、長さ又は翻訳後修飾(例えばグリコシル化又はリン酸化)にかかわらずアミノ酸のいずれかの鎖を意味し、用語“タンパク質”と交換可能に用いることができる。
本発明によれば、“生物学的に活性なフラグメント”とは、全長の天然のタンパク質の生理学的効果(例えばその生物学的基質を結合し、抗原性応答を引きおこす等)を発揮することができるフラグメントを意味する。
本発明は、抗原性である本発明によるポリペプチドのフラグメントを特徴とする。本明細書に用いる用語“抗原性”は、特定の免疫原応答、例えば本発明によるタンパク質に特異的に結合する抗体を生産する免疫原応答を誘導することができる。そのフラグメントは、好ましくは少なくとも8アミノ酸、そして好ましくは25アミノ酸までの長さである。1つの好ましい実施形態において、そのフラグメントは、IGF-1レセプターへのIIPの結合の原因であるドメイン(即ちIIP-1のPDZドメイン)を含む。“ドメイン”とは、その結合パートナーとの相互作用に直接関連したタンパク質中のアミノ酸の領域を意味する。PDZドメインは、イオン- 、チャンネル及びレセプタークラスター化並びにエフェクター酵素へのレセプターの連結に関連するいくつかのタンパク質において見出される約90残基の反復である。このようなPDZは、一般に、Cabral, J.H.ら、Nature 382 (1996) 649-652 に記載される。
本発明は、更に、原核又は真核宿主細胞において外来DNAを発現させ、そして要求されるタンパク質を単離するか、又は医薬的手段のため生体内で外来DNAを発現させることにより、その発現又は活性が腫瘍増殖と相関した本発明によるタンパク質を生産するための方法を含む。ここで、前記タンパク質は、好ましくはIIP-10をコードするDNA配列、より好ましくは配列番号:5に記載のDNA配列によりコードされる。
本発明によるポリペプチドは、組換え手段により又は合成によっても生産することができる。原核生物において組換え生産した場合には非グリコシル化IIP-10ポリペプチドが得られる。本発明により供される核酸配列により、(例えばヒト細胞と別の、他の哺乳動物の細胞でも)いずれかの要求される細胞のゲノム内のIIP-10遺伝子又はその変異体について調査すること、これらを同定すること、及びIIP-10タンパク質をコードする要求される遺伝子を単離することが可能になる。このような方法及び適切なハイブリダイゼーション条件(上記参照のこと、“ストリンジェント条件”)は当業者に周知であり、例えばSambrookら(Molecular Cloning ; A laboratory manual (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA 、及びHames, B.D., Higgins, S.G., Nucleic acid hybridisation - a practical approach (1985) IRL Press, Oxford, England を参照のこと。この場合、これらの出版物に記載される標準プロトコルが通常、実験のために用いられる。
組換えDNA技術の使用は多数の活性なIIP-10誘導体の生産を可能にする。このような誘導体は、例えば置換、欠失又は付加により個々の又はいくつかのアミノ酸において修飾することができる。誘導体は、例えば、部位特異的変異誘発により行うことができる。このような変異は、当業者により容易に行うことができる(J. Sambrook, B.D. Hames 、前掲)。それは、単に、IIP-10の特徴的な特性が保存される後述の腫瘍細胞増殖阻害アッセイにより確実にされなければならない。
IIP-10タンパク質をコードするこれらの核酸により、本発明によるタンパク質は、再現可能に大量に得ることができる。原核生物又は真核生物、例えば原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞のために、核酸は、当業者に周知の方法に従って、適切な発現ベクターに組み込まれる。このような発現ベクターは、好ましくは、調節可能な/誘導可能なプロモーターを含む。次に、これらの組換えベクターは、発現のために、適切な宿主細胞、例えば原核生物宿主細胞として大腸菌又は真核生物宿主細胞としてサッカロマイセス・セレビシアエ、奇形癌細胞系PA-lsc9117(Buettnerら、Mol. Cell. Biol. 11 (1991) 3573-3583) 、昆虫細胞、CHO又はCOS細胞に導入され、そしてその形質転換され又は形質導入された宿主細胞は、異種遺伝子の発現を許容する条件下で培養される。
そのタンパク質の単離は、宿主細胞から又は宿主細胞の培養上清から周知の方法に従って行うことができる。このような方法は、例えばAusubel I., Frederick M., Current Protocols in Mol. Biol. (1992), John Wiley and Sons, New York に記載される。また、そのタンパク質の試験管内再活性化は、細胞培養物内で可溶性形態で見い出されないなら、必要であり得る。
それゆえ、本発明は、更に、外来DNAの原核生物又は真核生物発現の産物であるIIPポリペプチドに関する。
そのタンパク質は、細胞又は培養上清から単離し、クロマトグラフィー手段により、好ましくはイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー及び/又は逆相HPLCにより精製することができる。
IIP-10は、周知のタンパク質精製技術、例えば免疫沈降法、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、等電点電気泳動、選択的沈降法、電気泳動等を用いてアフィニティークロマトグラフィーにより組換え生産後に精製することができる。
診断法
本発明は、更に、IIP−遺伝子をコードする核酸分子を検出するための方法であって、サンプル(例えば体液、例えば血液、細胞ライゼート)を本発明による核酸分子と共にインキュベートし、そして前記IIP遺伝子である核酸分子の存在を決定するために標的核酸分子への前記核酸分子のストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションを決定することを含む方法並びに、それゆえ、哺乳動物細胞又は体液内でのIGF-1R活性化又は阻害の同定のための方法を含む。
それゆえ、本発明は、腫瘍細胞の増殖能力を検出するための方法であって、
a)癌を患う被検体の体液のサンプル、癌細胞のサンプル、又は該癌細胞の細胞抽出物もしくは細胞培養物上清のサンプルをインキュベートするステップであって、前記サンプルは、
(i)配列番号:1,3もしくは5に記載の核酸又はそれに相補的である核酸、並びに
(ii)(i)からの核酸のうちの1つとストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸
からなる群から選択された核酸プローブと共に核酸を含むステップと、
b)前記サンプルの核酸の更なる結合パートナー及び/又は核酸プローブにより又はX線ラジオグラフィーによりハイブリダイゼーションを検出するステップと、
を含む方法も包含する。
プローブとサンプルからの核酸との間のハイブリダイゼーションは、このようなタンパク質のRNAの存在を示す。このような方法は当業者に周知であり、例えばWO89/06698、EP-A 0200362、USP 2915082、EP-A 0063879、EP-A 0173251、EP-A 0128018に記載される。
本発明の好ましい実施形態において、サンプルのコーディング核酸は、テストの前に、例えば周知のPCR技術により増幅される。通常、誘導化された(標識された)核酸プローブは核酸診断の枠組の中にある。このプローブは、担体に結合したサンプルからの変性したDNA又はRNAに接触され、この過程において、温度、イオン強度、pH及び他の緩衝条件は核酸プローブの長さ及び組成並びに結果として生じる予想されるハイブリッドの融点により選択される−標識されたDNA又はRNAが相同なDNA又はRNAに結合できるように選択される(ハイブリダイゼーションについて、Wahl, G.M.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76 (1979) 3683-3687も参照のこと)。適切な担体はニトロセルロースに基づく膜又は担体材料(例えばSchleicher及びSchuell, BA85, Amersham. Hybond, C.)、粉末形態の強化又は結合したニトロセルロース又は種々の官能基(例えばニトロ基)で誘導化したナイロン膜(例えばSchlescher及びSchuell, Nytran ; NEN, Gene Screen ; Amersham Hybond M. ; Pall Biodyne) である。
次に、DNA又はRNAへのハイブリダイゼーションは、非特異的結合を防ぐために洗浄し、飽和させた後に、抗体又は抗体フラグメントと担体をインキュベートすることにより検出される。その抗体又は抗体フラグメントは、誘導化の間に核酸プローブに組み込まれる基質に対して生ずる。次に抗体が標識される。しかしながら、直接的に標識されたDNAを用いることも可能である。抗体とのインキュベーションの後、それは、特異的に結合した抗体コンジュゲートのみを検出するために再び洗浄される。次にその測定は、抗体又は抗体フラグメントへの標識により周知の方法に従って行われる。
その発現の検出は例えば次の通り行うことができる。
− 固定化された完全な細胞と、固定化された組織スミアと、及び単離された中期染色体とのイン・シトゥハイブリダイゼーション
− コロニーハイブリダイゼーション(細胞)及びプラークハイブリダイゼーション(ファージ及びウイルス)、
− サザンハイブリダイゼーション(DNA検出)
− ナーザンハイブリダイゼーション(RNA検出)
− 血清分析(例えばスロット・ブロット分析による血清中の細胞の細胞型分析)
− 増幅後(例えばPCR技術)
好ましくは、核酸プローブは、サンプルの核酸とインキュベートされ、ハイブリダイゼーションは、任意に、サンプルの核酸のための更なる結合パートナー及び/又は核酸プローブにより検出される。
本発明により核酸は、従って、患者の腫瘍細胞の転移及び進行能力の診断における価値ある予後マーカーである。
IIP又はインヒビターのアンタゴニスト及びアゴニストのためのスクリーニング
本発明によれば、IIP-10のアンタゴニスト又はIIPの発現のためのインヒビター(例えばアンチセンス核酸)は、腫瘍進行を阻害し、好ましくは体の遺伝子療法により、生体内での腫瘍細胞の大量のアポトーシスを引きおこすのに用いることができる。
それゆえ、本発明は、癌、糖尿病、神経退化疾患、骨の疾患のための治療可能性についてのスクリーニングの方法に、病気のための治療の方法に、及びこのような病気のための潜在的に役立つ治療をスクリーニングし及び評価するのに役立つ動物モデルにも関する。それゆえ、本発明の別の対象は、上述の及び関連の疾患の治療の利用性を有する化合物を同定するための方法である。これらの方法は、本発明によるポリペプチドの発現を調節するための方法、本発明によるタンパク質に選択的に結合することができる化合物を同定するための方法及び前記ポリペプチドの活性を調節することができる化合物を同定する方法を含む。これらの方法は、試験管内で及び生体内で行うことができ、本発明の形質転換された細胞系及びトランスジェニック動物モデルを用いることができる。
IIPのアンタゴニスト又はIIPのインヒビターは、IGF-1RとIIP、好ましくはIIP-10との間の相互作用を阻害する物質又は化合物として定義される。それゆえ、IGF-1Rの生物活性はこのような化合物の存在下で減少する。一般に、IIPアンタゴニストについてのスクリーニング手順は、候補の物質を、IIPを有する宿主細胞と、結合のために好ましい条件下で接触させ、そしてレセプターの媒介するシグナル伝達の減少の程度を測定する(アンタゴニストの場合)ことに関する。このようなアンタゴニストは腫瘍治療に用いるための医薬剤として役立つ。糖尿病、神経疾患、又は骨の疾患の治療のために、シグナル伝達経路の刺激が必要とされ、即ちアゴニストのためのスクリーニングが役立つ。
IIP活性化は、いくつかの方法で測定することができる。典型的には、活性化は、細胞生理学上の変化、例えば成長率の増加もしくは減少により、分化状態の変化により、又は標準的な細胞アッセイ、例えばMTT又はXTTアッセイ(Roche Diagnostics GmbH,DE)において検出できる細胞代謝の変化により明らかになる。
それゆえ、本発明による核酸及びタンパク質は、IGF-1R及びIIPの相互作用を妨害する薬剤を同定し、デザインするのにも用いることができる。例えば、そのタンパク質の1つと相互作用する薬剤は、その天然の対の他方への結合を許容するかわりにそれに優先的に結合することができる。IGF-1レセプターに結合することができ、それによりIIPの結合を防ぐことができ、又はその逆もできるいずれかの薬剤はIIPに結合することができ、それによりIGF-1レセプターの結合を防ぐ。両方の場合において、IGF-1レセプターシステムのシグナル伝達は調節する(好ましくは阻害する)されるであろう。この容易さについて薬剤をスクリーニングすることは、テスト化合物とIIP及びIGF-1レセプターの相互作用との間の競合アッセイ(当該技術分野のアッセイ標準)を確立し、結合パートナーと同じ特性の精製タンパク質又はフラグメントを用いることにより行われる。
本発明によるタンパク質は、本発明によるタンパク質の活性を調節する化合物の同定のためのアッセイ手順に用いるのに適する。本明細書に記載されるように活性を調節することには、タンパク質の阻害又は活性化があり、前記タンパク質活性の正常な調節に直接又は間接的に作用することを含む。タンパク質活性を調節する化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト及び本発明によるタンパク質の活性の調節に直接もしくは間接的に作用する化合物がある。本発明によるタンパク質は、モジュレーターを同定するためのアッセイ手順に用いるためにネイティブ及び組換え源の両方から得ることができる。一般に、モジュレーターを同定するためのアッセイ手順は、IGFレセプター、本発明のタンパク質、及び該タンパク質活性のモジュレーターと予想されるものを含むテスト化合物又はサンプルを含むであろう。
テスト化合物又はサンプルは、例えば、ネイティブであるか組換え体であるかにかかわらず、本発明の精製タンパク質、ネイティブであるか組換え体であるかにかかわらず、該タンパク質を生産する細胞の亜細胞画分、及び/又はネイティブであるか組換え体であるかにかかわらず、該タンパク質を発現する完全な細胞に基づいて、直接テストすることができる。テスト化合物又はサンプルは、本発明によるタンパク質に、該タンパク質の周知のモジュレーターの存在又は欠如下で添加することができる。テスト化合物又はサンプルの調節活性は、例えばテスト化合物もしくはサンプルが前記タンパク質に結合し、前記タンパク質を活性化し、その活性を阻害し、他の化合物の前記タンパク質への結合を阻害しもしくは増強し、レセプター制御を調節し又は細胞内活性を調節することにより決定することができる。
タンパク質活性のモジュレーターの同定は、そのタンパク質活性に関する病状を治療するのに役立つ。他の化合物は、本発明によるタンパク質の活性を刺激し又は阻害するために役立ち得る。このような化合物は、本発明によるタンパク質の活性化又は不活性化が細胞増殖、細胞死、非増殖、細胞の新形成形質転換体の誘導、又は転移性腫瘍増殖のいずれかを生ずる病気の治療に用いることができ、従って、癌、例えば前立腺及び乳癌の予防及び/又は治療に用いることができよう。本発明によるタンパク質をコードするDNA分子の単離及び精製は、前記タンパク質の組織分布を確立すること、並びに前記タンパク質の活性及び/又はその発現を調節する化合物を同定するための方法を確立することのために役立つであろう。
それゆえ、本発明の更なる実施形態は、IGF-1RとIIP-1又はIIP-10との間の相互作用を阻害する化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)IGF-1R及びIIP-1又はIIP-10ポリペプチドを、候補化合物を含む溶液に、該IGF-1R及びIIP-1又はIIP-10ポリペプチドが複合体を形成することができるように組み合わせ、
b)前記候補化合物の欠如下の所定の結合のレベルに対する複合体の量を決定し、それから、前記候補化合物がIGF-1RのIIP-1又はIIP-10ポリペプチドへの結合を阻害する能力を評価することを含む方法である。
このようなスクリーニングアッセイは、好ましくは、IGF-1R又はIIP-1又はIIP-10が固相に結合するELISAアッセイとして行われる。
本発明の更なる実施形態は、患者における癌腫の治療のための治療剤の生産のための方法であって、生化学及び/又は細胞アッセイにおいてIGF-1RとIIPとの間の相互作用を少なくとも50%の程度まで阻害する治療に有効な量の化合物を組み合わせることを含む方法である。生化学アッセイは、好ましくはELISAベースのアッセイ又はホモジニアスアッセイである。ELISAシステムの場合、2つの結合パートナーに特異的な抗体が複合体の検出のために用いられる。ホモジニアスアッセイの場合、少なくとも1の結合パートナーは、複合体の分析を許容する蛍光体で標識される。細胞アッセイは、好ましくは、腫瘍細胞又はIGF-1R及び各々の結合タンパク質の発現構成物がトランスフェクトされた細胞が薬剤あり又はなしで処理され、次に2つの構成物間の複合体形成が標準細胞アッセイを用いて分析されるアッセイである。
本発明の好ましい実施形態は、患者において癌腫の治療のための治療剤の生産のための方法であって、医薬として許容される担体を、細胞アッセイにおいてIGF-1RとIIP-1又はIIP-10との間の相互作用を阻害する治療に有効な量の化合物と組み合わせることを含み、ここで前記細胞アッセイにおいて、腫瘍細胞又はIGF-1R及び各々のIIPの発現構成物は前記化合物で処理され、そしてIGF-1Rと前記各々のIIPとの間の複合体形成が分析され、そして阻害の場合の前記化合物形成の程度は同じ細胞アッセイにおける前記化合物なしでの複合体形成について100%に対して50%を超えない。
本発明の更なる実施形態は、細胞アッセイにおいてIGF-1RとIIP-1又はIIP-10との間の相互作用を阻害する治療に有効な量の化合物で癌腫を患う患者を処理する方法であり、ここで前記細胞アッセイにおいて腫瘍細胞又はIGF-1R及び各々のIIPの発現構成物がトランスフェクトされた細胞は前記化合物で処理され、そしてIGF-1Rと前記各々のIIPとの間の複合体形成が分析され、そして阻害の場合の前記複合体形成の程度は同じ細胞アッセイにおける前記化合物なしでの複合体形成について100%に対して50%を超えない。
本発明の更なる実施形態は本発明によるIIP-1又はIIP-10に対する抗体である。
抗体は、ヒト、マウス、又はラットポリペプチドから作った。IIP-1又はIIP-10を特異的に認識する抗体は本発明に含まれる。このような抗体は標準的免疫学的技術を用いて生ずる。抗体は、ポリクローナルでもモノクローナルでもよく、又はヒトに適合させた抗体のように組換えにより生産することができる。IIP-1又はIIP-10と相互作用する能力を保持する抗体フラグメントも供される。このようなフラグメントは、全長の抗体のタンパク質による開裂によって生産することができ、又は組換えDNA法によって生産することができる。本発明の抗体は診断的及び治療的適用に役立つ。それらは、生物サンプル、特に組織サンプル及び体液中でIIP-1又はIIP-10を検出し及び定量するために用いられる。それらは、アゴニスト又はアンタゴニストとして機能することにより、IIP-1又はIIP-10の活性を調節するのにも用いられる。
以下の実施例、引用文献、配列表及び図面は、本発明の理解を助けるために供され、その真の範囲は添付の請求の範囲に記載される。本発明の精神から離れることない手順において改良を行うことができることが理解される。
図面及び配列の記載
図1は、IGF-1レセプターの細胞質結合タンパク質のためのcDNAライブラリーをスクリーニングするために用いられるイースト2−ハイブリッドベイト(baits)のドメイン構造を示す。LexA DNA結合ドメインを野生型IGF-1レセプター(a)又はキナーゼ不活性変異体(aa1003でのK/A変異)(b)(Ullrich, Aら、EMBO J. ら(1986) 2503-2512 ; Weidner, M. ら、Nature 384 (1996) 173-176)の細胞質(cp)ドメイン(nt 2923〜4154)に融合した。LexA DNA結合ドメインとレセプタードメインとの間に挿入された2つの異なるリンカーのヌクレオチド及びアミノ酸配列を以下に示す。I1(wt IGF-1レセプター)及びK1(キナーゼ不活性変異体IGF-1レセプター)構成物は、I2及びK2構成物に比べて更なるプロリン及びグリシンを含む。
図2は、イースト2−ハイブリッドLexA/IGF-1レセプターベイト構成物の改良を示す。a)は、IGF-1レセプターの細胞質結合部位の概略図である。IGF-1レセプターのα−サブユニットはジスルフィド結合によりβ鎖に連結される。そのβ鎖の細胞質部分は膜近傍及び(末端ドメイン内に基質のための結合部位を含む。b)は、膜近傍IGF-1レセプター結合部位のみを含む2−ハイブリッドベイトのドメイン構造を示す。IGF-1レセプターの膜近傍ドメイン(nt 2923〜3051)(Ullrich, Aら、EMBO J. ら(1986) 2503-2512)はtprmetのキナーゼドメイン(nt 3456〜4229)に融合した(GenBankアクセス番号:HSU19348)。c)は、C末端IGF-1レセプター結合部位のみを含む2−ハイブリッドベイトのドメイン構造を示す。IGF-1レセプターのC末端ドメイン(nt 3823〜4149)(Ullrich, Aら、EMBO J. ら(1986) 2503-2512)をtprmetのキナーゼドメイン(nt 3456〜4229)(GenBankアクセス番号:HSU19348)に融合した。
図3は、IIP-1の異型を示す。a)は、IIP-1及びIIP-1(p26)のcDNA配列の図を示す。ヌクレオチドは上にナンバリングされる。IIP-1 cDNA内の潜在的な翻訳開始部位は位置63である。別のスプライス変異体IIP-1(p26)内の潜在的な翻訳開始部位としての最初のATGは位置353である。両方のcDNAは位置1062に終止コドンを含む。b)は、IIP-1及びIIP-1(p26)のドメイン構造を示す。アミノ酸位置を上に示す。IIP-1(p26)と比べて、IIP-1はN末端に更なる97アミノ酸を含む。IIP-1の両方の異型は、アミノ酸129及び213の間の領域を貫くPDZドメインを含む。
図4は、IIP-1のIGF-1レセプター結合ドメインの図である。全長のIIP-1、その部分的cDNAクローン(IIP-1a及びIIP-1b)及び欠失変異体(IIP-1a/mu1、IIP-1a/mu2、IIP-1a/mu3、IIP-1b/mu1)をイースト2−ハイブリッドシステムにおいてIGF-1との相互作用について検査した。イースト細胞に、LexA IGF-1レセプター融合構成物及びVP16活性化ドメインに融合したIIP-1又は異なるIIP-1変異体をコードする活性化プラスミドを同時に移入した。IIP-1又はその変異体及びIGF-1レセプターの間の相互作用を、ヒスチジン欠損培地上にプレートし、30℃で6日、インキュベートしたイースト形質転換体の成長をモニターすることにより分析した(イーストコロニーの直径:+++、2日で1mm超;++、4日で1mm超;+、6日で1mm超;成長は検出されず)。PDZドメインは、IGF-1レセプターとの相互作用を媒介するために本質的かつ十分であるとして定着することができる。全長のIIP-1に対するヌクレオチド位置を上に示す。
図5は、IIP-10のタンパク質配列モチーフを示す。IIP-10のアミノ酸配列を、PROSIIE Dictionaryに記載される規則的な発現パターンについてタンパク質配列を調査することによりタンパク質モチーフを捜すコンピュータープログラム“Motifs”を用いて分析した。
配列番号:1は、IIP-1のヌクレオチド配列(cDNA)である。
配列番号:2は、IIP-1の予想されるアミノ酸配列である。
配列番号:3は、IIP-6部分cDNAクローンのヌクレオチド配列である。
配列番号:4は、IIP-6部分cDNAクローンの予想されるアミノ酸配列である。2つのCys2 His2 ジンク・フィンガードメインのシステイン及びヒスチジン残基はアミノ酸72,75,88,92,160,103,116、及び120である。
配列番号:5は、IIP-10のヌクレオチド配列(cDNA)である。
配列番号:6は、IIP-10の予想されるアミノ酸配列である。
配列番号:7は、プライマーTIP2c-sである。
配列番号:8は、プライマーTIP2b-rである。
配列番号:9は、プライマーHcthy-sである。
配列番号:10は、プライマーHcthy-rである。
実施例1.
IGF-1R結合タンパク質の単離及びキャラクタリゼーション
イースト2−ハイブリッドシステム(Fields, S.及びSong, O., Nature 340 (1989) 245-246)を未知のサイトソルIGF-1レセプター結合タンパク質を単離するのに用いた。スクリーニングのために、イースト内のレセプターの鎖間チロシルリン酸化を許容するイースト2−ハイブリッドシステムの改良型を用いた。
イースト2−ハイブリッドベイトプラスミド(BTM116-cpIGF-1レセプター)を、IGF-1レセプターのβ−サブユニットの細胞質ドメイン(nt 2923〜4154)(Ullrich, Aら、EMBO J. ら(1986) 2503-2512)を、ダイマーを形成する、活性化野生型レセプターの状態に擬態するLexA DNA結合ドメイン(例えばWeidner, Mら、Nature 384 (1996) 173-176)に融合することにより作製した。LexA DNA結合ドメインとレセプタードメインとの間にプロリン−グリシンスペーサーを導入することにより、そのベイトがIGF-1レセプターの周知の基質に結合する能力は、他のスペーサーアミノ酸と比べて顕著に増加した。
あるいは、関係していない極めて能力のあるレセプターチロシンキナーゼのキナーゼドメインに融合したIGF-1レセプターの膜近傍又はC末端領域(nt 2923〜3051又はnt 3823〜4146)(Ullrich, Aら、EMBO J. ら(1986) 2503-2512)のみを含むベイトを作製した。ここで、tprmetのキナーゼドメイン(nt 3456〜4229)(GenBankアクセス番号:HSU19348)(図2)を用いた。この方法において、下流のエフェクターへの結合を媒介するIGF-1レセプターの領域を図示することが可能である。
IGF-1レセプターベイトプラスミドを、活性化ドメインcDNAライブラリー(例えばVP16-又はGal4ベースの活性化ドメイン)(例えば、Weidner, Mら、Nature 384 (1996) 173-176)をスクリーニングするのに用いた。ベイト及びプレイ(prey)プラスミドを、Hts3及びlacZリポーター遺伝子を含むサッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)株L40に同時トランスフェクトした。ヒスチジン欠損培地上で増殖中のイーストコロニーからライブラリープラスミドを単離し、配列決定し、そしてイースト株L40に再導入した。異なるテストベイトでの同時トランスフェクト実験、即ちIGF-1レセプターのキナーゼ不活性変異体(L1033A)又はインスリンレセプターファミリー(インスリンレセプター、Ros)及び関係のないレセプターチロシンキナーゼファミリー(Met,EGFレセプター、Kit,Fms,Neu)の細胞質ドメインをコードするBTM116プラスミドでの実験により、予想されるベイト−プレイ相互作用の特異性を評価した。以前には未知のIGF-1レセプター相互作用タンパク質(IIP)をコードするいくつかのcDNAを同定した。更に、IGF-1レセプターの周知の物質の結合ドメイン、例えばp85PI3KのC末端SH2ドメイン及びGrb10のSH2ドメインを見出した。結果を表1に示す。
イースト2−ハイブリッドシステムにおいてテストした異なるレセプターチロシンキナーゼに対するIIPの結合特異性の図。イースト細胞に、異なるレセプターチロシンキナーゼをコードするLexA融合構成物及びVP16活性化ドメインに融合した異なるIIPをコードする活性化プラスミドを同時にトランスフェクトした。IIPと異なるレセプターチロシンキナーゼとの間の相互作用を、ヒスチジン欠損培地上にプレートし、30℃で3日、インキュベートしたイースト形質転換体の成長をモニターすることにより分析した(wt IGF-1R、キナーゼ活性IGF-1レセプター;mu IGF-1R、キナーゼ不活性化変異体IGF-1レセプター;IR、インスリンレセプター;Ros,Rosレセプターチロシンキナーゼ;Met,Metレセプターチロシンキナーゼ;+、3日以内で直径1mm超のイースト形質転換体の成長;−、検出された成長なし;nd、未測定)
実施例2.
アッセイシステム
A)インビトロ/生化学アッセイ
ELISAベースのアッセイ/ホモジニアスアッセイ
IGF-1R及びその結合タンパク質(IIP)を、大腸菌及び真核細胞内でTaq−酵素あり又はなしで発現させ、均一になるまで精製する。IGF-1R及び各々の結合タンパク質の相互作用を薬剤の存在又は欠如下で分析する。IGF-1R及び各々の結合タンパク質の結合を阻害し又は促進する化合物を選択する。ELISAシステムの場合、2つの結合パートナーに特異的な抗体を、複合体の検出のために用いる。ホモジニアスアッセイの場合、少くとも1の結合パートナーを、複合体の分析を許容する蛍光染料で標識する。あるいは、抗Taq抗体の相互作用をモニターするために用いる。
B)細胞アッセイ:
腫瘍細胞又はIGF−1R及び各々の結合タンパク質の発現構成物をトランスフェクトした細胞を薬剤あり又はなしで処理し、次に2つの構成物間の複合体を標準アッセイを用いて分析する。
実施例3.
IIP-1及びIIP-10のcDNAクローニング(及びRT-PCRアッセイ)
全長のIIP-1のヌクレオチド配列を、データベース情報(EST)及びIIP-1の部分cDNAクローン(IIP-1a,IIP-1b)の配列を用いてアラインした。全長のIIP-1のcDNAクローニングを、MCF7 ADR乳細胞系から単離した全RNAでのRT PCRにより行った。2つのオリゴヌクレオチドプライマー:TIP2c-s(配列番号:7)及びTIP2b-r(配列番号:8)でのRT PCRにより1.0kb(IIP-1)及び0.7kb(IIP-1(p26))の2つのDNAフラグメントを増幅した。
全長のIIP-10のヌクレオチド配列を、データベース情報(EST)及びIIP-10の部分DNAクローンの配列を用いてアラインした。IIP-10のcDNAクローニングを、結腸癌細胞系SW480から単離した全RNAで行った。2つのオリゴヌクレオチドプライマー:Hcthy-s(配列番号:9)及びHcthy-r(配列番号:10)でのRT PCRにより676bpのcDNAフラグメント(IIP-10)を増幅した。
DNA配列決定を、Ampli Taq登録商標FSジデオキシターミネーターキット(Perkin Elmer,Foster City,CA)を用いてABI 373Aシーケンサーでのジデオキシヌクレオチド鎖ターミネーション法を用いて行った。
cDNA及び予想されるタンパク質配列の比較を、Advanced Blast Search (Altschul, S.F. ら、J. Mol. Biol. 215 (1990) 403-410 ; Altschul, S.Fら、Nucleic Acids Res. 25 (1997) 3389-3402) を用いて行った。
実施例4.
IIP-1及びIIP-10のウエスタンブロット分析
全細胞ライゼートを、50mM Tris pH8.0, 150mM NaCl ,1% NP40,0.5%デオキシコール酸、0.1% SDS、及び1mM EDTAを含む緩衝液中に調製し、4℃で15分、遠心することにより透明にした。その上清のタンパク質濃度を、製造元のマニュアルに従って、Micro BCA Protein Assayキット(Pierce Chemical Co., Rockford, IL)を用いて測定した。IGF-1レセプターを、抗IGF-1レセプター抗体(Santa Cruz)を用いて免疫沈降させた。タンパク質をSDS-PAGEにより分画し、ニトロセルロースフィルターに電気泳動により移した。ニトロセルロースフィルターを20mM Tris pH7.5 ,150mM NaCl, 0.2% Tween-20中10%脱脂粉乳と共にプレインキュベートした。フラッグエピトープに対するマウスモノクローナル抗体の結合を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ標識化ヤギ抗マウスIgG抗血清(Biorad, Munich, DE)により検出し、増強化学発光検出システムECLTM(Amersham, Braunschweig, DE)を用いて視覚化した。
実施例5.
リポソーム媒介トランスフェクションによる哺乳動物細胞内でのIIP-1へIIP-10の過剰発現
IIP-1〜-10についてのcDNAをpBATflag又はpcDNA3flag(Weidner, Mら、Nature 384 (1996) 173-176 ; Behrens, Jら、Nature 382 (1996) 638-642 ; Behrens, J. ら、Science 280 (1998) 596-599) のNatI部位にクローン化した。NIH3T3細胞又は他の受容細胞に、トランスフェクション剤としてFu GENE6(Roche Biochemicals)を用いて、pcDNAflag IIP-1〜-10又はpBATflag IIP-1〜-10をトランスフェクトした。細胞を、0.4mg/mlのG418において選択した。単一のコロニーをとり、IIP-1〜-10の発現について分析し、増殖に関して機能的にキャラクタライズした。
ノーザンブロット分析
ヒト及びネズミmRNA多重組織ノーザン・ブロットを、Clonetech(Palo Alto, CA, US)から購入した。そのコーディング領域のIIP-10 nt 343〜nt 676を貫くcDNAプローブをPCR DIG Labeling Mix(Roche Piaghostics GmbH, DE)を用いてDIG-dUTPで標識した。ジゴキシゲニン標識化アクチンRNAプローブをRoche Diagnostics GmbH, DEから購入した。DIG EasyHybハイブリダイゼーション溶液(Roche Diagnostics GmbH, DE)を用いてハイブリダイゼーションを行った。IIP-10 mRNAを、アルカリホスファターゼにコンジュゲートしたDIG特異的抗体及びCSPD基質(Roche Diagnostics. GmbH, DE)で検出した。
実施例6.
癌細胞におけるmRNAの検出
配列番号:1もしくは配列番号:5又はその相補配列とハイブリダイズする核酸によりコードされるタンパク質が癌細胞内で発現されるか否か、及び結果としてmRNAが存在するか否かを検出するために、一方で、核酸ハイブリダイゼーションの確立された方法、例えばノーザンハイブリダイゼーション、イン・シトゥハイブリダイゼーション、ドット又はスロットハイブリダイゼーション及びその由来の診断技術を行うことが可能である(Sambrook et al., Molecular Cloning ; A laboratory manual (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA ; Hames, B.D., Higgins, S.G., Nucleic acid hybridisation - a practical approach (1985) IRL Press, Oxford, England; WO89/06698; EP-A 0200362; EP-A 0063879; EP-A 0173251; EP-A 0128018)。他方、特定のプライマーを用いる増幅の多様なレパートリーからの方法を用いることが可能である(PRC Protocols - A Guide to Methods and Applications (1990), publ. M.A. Innis, D.H. Gelfand, J.J. Sninsky, T.J. White, Academic Press Inc. ; PCR - A Practical Approach (1991), publ. M.J. McPherson, P. Quirke, G.R. Taylor, IRL Press) 。
このためのRNAは、Chomcszynski及びSacchi, Anal. Biochem 162 (1987) 156-159の方法により癌組織から単離する。20μgの全RNAを1.2%アガロースホルムアルデヒドで分離し、標準的な方法(Sambrookら、Molecular Cloning ; A laboratory manual (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA)によりナイロン膜(Amersham, Braunsthweig, DE)に移した。DNA配列番号:1又は配列番号:5をプローブとして放射能標識した(Feinberg, A.P., 及びVogelstein, B., Anal. Biochem. 137 (1984) 266-267)。ハイブリダイゼーションを、68℃で、5×SSC,5×Denhardt,7% SDS 10.5Mリン酸緩衝液pH 7.0,10%デキストランスルフェート及び100μg/mlサケ精子DNA中で行った。次に、膜を2回、1時間、1×SSC中で68℃において洗い、次にX線フィルムに露出した。
実施例7.
本発明によるタンパク質の活性のモジュレーターの同定のための手順
実施例5の発現ベクター(IIP-1又はIIP-10のいずれかについて、10μg/106 細胞)を、当該技術で周知の標準的な方法(Sambrookら)によりNIH3T3細胞に移す。ベクターを摂取した細胞は、選択の存在下又は選択条件(0.4mg/ml G418)下で増殖する能力によって同定される。IIPをコードするDNAを発現する細胞は、実施例5に記載されるように、ノーザン・ブロット分析によって検出される。あるいは、そのタンパク質を発現する細胞は、実施例4に記載される抗体を用いるウエスタン・ブロット分析によるタンパク質の同定によって同定される。発現ベクターからタンパク質を発現する細胞は、変化した形態及び/又は増強された成長特性を示すであろう。
タンパク質を発現し、上述の変化した特性の1又は複数を示す細胞を、モジュレーター化合物と予想されるものあり及びなしで培養する。化学的及び天然のライブラリーのスクリーニングにより、このような化合物は、細胞増殖をモニターする高スループット細胞アッセイを用いて同定することができる(色原基質としてテトラゾリウム塩WST-1、MTT、又はXTTを用いる細胞増殖アッセイ、又はブロモデソキシウリジン(BrdU)を用いる細胞死検出、ELISA;例えばBoehringer Mannheim GmbH, Apoptosis and Cell Proliferation;2nd edition, 1998, pp. 70-84)。
モジュレーター化合物は、IIPタンパク質活性に対する細胞応答を増加させ又は減少させるであろうし、各々IGF-1レセプター機能のアクティベーター又はインヒビターであろう。
あるいは、モジュレーターと予想されるものは、腫瘍細胞の培養物に添加され、その細胞は、変化した形態を示し、及び/又は減少した又は増加した成長特性を示す。モジュレーター化合物と予想されるものは、IIPタンパク質あり及びなしで細胞に添加され、細胞応答は、細胞の形態特性の直接観察により測定され、及び/又は細胞はそれらの成長特性についてモニターされる。モジュレーター化合物は、IIPタンパク質に対する細胞応答を増加又は減少させるであろうし、各々IGF-1レセプター活性のアクティベーター又はインヒビターであろう。
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Claims (1)

  1. 原核生物又は真核生物宿主細胞において外来DNAを発現させ、そしてIGF-1レセプターに結合するタンパク質を単離することにより、当該タンパク質を生産するための方法であって、該タンパク質が、配列番号:5に記載のDNA配列又は配列番号:5に記載の核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされることを特徴とする方法。
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