JP2003500011A - シンデスモスおよびその利用法 - Google Patents

シンデスモスおよびその利用法

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JP2003500011A JP2000604810A JP2000604810A JP2003500011A JP 2003500011 A JP2003500011 A JP 2003500011A JP 2000604810 A JP2000604810 A JP 2000604810A JP 2000604810 A JP2000604810 A JP 2000604810A JP 2003500011 A JP2003500011 A JP 2003500011A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、シンデカン−4に結合する、新規なタンパク質であるシンデスモスをコードしている遺伝子を提供する。シンデスモスポリペプチド類は細胞マトリックス相互作用に関与する。本明細書においては、単離された核酸分子およびアンチセンス核酸分子、組換え発現ベクター、シンデスモス遺伝子の挿入配列または一部を含む宿主細胞および非ヒトトランスジェニック動物を開示している。本発明の組成物を用いた診断、スクリーニングおよび治療方法についても示している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本出願は、1999年3月15日に受理された仮出願第60/124,497号の優先権を享受
するものであり、その出願内容全体を取り入れるものである。
【0002】 発明の背景 細胞の形態、移動、増殖および分化は、シグナル伝達を介した接着依存性およ
び増殖因子レセプターの作用によるものである。接着依存性シグナル伝達系は、
細胞マトリックス相互作用部位において巨大分子コンプレックス形成を介するこ
とにより、細胞外マトリックスと細胞内細胞骨格とを構造的および生化学的に結
びつけている。細胞培養においては、これらの巨大細胞コンプレックスはフォー
カルアドヒージョン(接着域)と称される。(ブーリッジ(Burridge )および
クルツァノスカ−ウドニカ( Chrzanowska - Wodnicka )、( 1996 ) Ann . Rev
. Cell . Dev . Biol . 12 : 463 - 518 )接着レセプターがシグナル伝達系お
よび構造的変化を媒介する能力は、一部には、細胞質ドメインが細胞骨格構成成
分と結合することによって生じる。次に、細胞内シグナル伝達コンプレックスを
組織するために、細胞骨格構成成分は構造的作用およびアダプター作用を発揮す
る。構造的作用および/またはアダプター作用を発揮する細胞骨格タンパク質と
しては、アクチン、α−アクチニン、パキシリン、テーリン、テンシン( tensi
n )およびビンキュリンなどが挙げらる。関連するシグナル伝達タンパク質とし
ては、チロシンキナーゼ類(フォーカルアドヒージョンキナーゼ、src、csk お
よびfyn )、PKCおよびMAPKを含むセリン−トレオニンキナーゼファミリー、な
らびに低分子量GTP結合タンパク質を含むRAS ファミリーなどが挙げられる。(
クラーク( Clark )およびブラッジ( Brugge )、( 1996 ) Science 268 : 23
3 - 239 ;ブーリッジ(Burridge )およびクルツァノスカ−ウドニカ( Chrzan
owska - Wodnicka )、( 1996 ) Ann . Rev . Cell . Dev . Biol . 12 : 463 -
518 ) 細胞表面ヘパラン硫酸プロテオグリカン類によって構成されるシンデカンファ
ミリーの構成分子(シンデカン1〜4)は、細胞接着および形態の調節に関与し
ている。(バーンフィールド( Bernfield )ら、( 1991 ) Ann . Rev . Cell .
Biol . 8 : 365 - 393 ;カレー( Carey )、( 1997 ) Biochem . J . 327 :
1 - 16;リウ( Liu )ら、(1998 ) J . Biol . Chem . 273 : 22825 - 22832
;ウッズ( Woods )およびコッホマン( Couchman )、( 1998 ) Trends Cell
Biol . 8 : 189 - 192 )シンデカンファミリーの4つの構成分子すべてにおい
て、細胞質ドメインの配列は高度に保存されており、該ドメインは相同性に基づ
き、保存性膜近位サブドメイン、可変性中央サブドメインおよび保存性C末端サ
ブドメインに分けられる。シンデカンファミリー構成分子の細胞質ドメインと直
接または間接的に結合する数種の細胞性成分が確認されている。これらには例え
ば、シンデカン4の細胞質ドメインの可変性中央領域と直接相互作用するPKCα
およびホスファチジルイノシトール4,5−ビホスフェート( PIP2 )(オー(
Oh )ら、( 1997 ) J . Biol . Chem . 272 : 11805 - 11811 ;オー( Oh )
ら、( 1997 ) J . Biol . Chem . 272 : 8133 - 8136 ;オー( Oh )ら、( 199
8 ) J . Biol . Chem . 273 : 10624 - 10629 )、高度に保存されたC末端のEF
YA 配列を介してシンデカンファミリーのすべての構成分子の細胞質ドメインと
相互作用する、PDZを含むタンパク質であるシンテニン( syntenin )(グルー
タンズ( Grootjans )ら、( 1997 ) Prot . Natl . Acad . Sci . USA 94 : 13
683 - 13688 )およびCASK / LIN - 2(コーエヘン( Cohen )ら、( 1998 ) J
. Cell Bio . 142 : 129 - 138 ;ハスエ( Hsueh )ら、( 1998 ) J . Biol .
Chem . 142 : 139 - 151 )、ならびにシンデカン3の膜近位ドメインに結合す
るSrc−コルタクチン( cortactin )コンプレックス(キヌネン( Kinnunen )
ら、( 1998 ) J . Biol. Chem. 273 : 10702 - 10708 )などが含まれる。
【0003】 シンデカン4はフォーカルコンタクトにおいて見出され(ウッズ( Woods )
およびコッホマン( Couchman )、( 1994 ) Mol . Biol . Cell 5 : 183 - 192
;バシュー( Baciu )およびゲティンク(Goetinck )( 1995 ) Mol . Biol .
Cell 11 : 1503 - 1513 )、PKCαと結合する(オー( Oh )ら、( 1997 ) J .
Biol . Chem . 272 : 11805 - 11811 ;オー( Oh )ら、( 1997 ) J . Biol .
Chem . 272 : 8133 - 8136 )。
【0004】 発明の概要 本発明は、一部分においては本明細書においてシンデスモス(syndesmos )と
呼ぶ新規な細胞性タンパク質をコードしている遺伝子の発見に基づく。シンデス
モスタンパク質は、シンデカン4の細胞質ドメインとは相互作用するが、シンデ
カンファミリーの他の構成分子とは相互作用しないことがわかった。シンデスモ
スが過剰発現すると、細胞拡散およびアクチン細胞骨格構成を媒介する。シンデ
スモスは、シンデカン4が連結してフォーカルアドヒージョンコンプレックスを
形成する際に作用する。
【0005】 従って、ひとつの側面から見ると、本発明は、シンデスモスタンパク質または
それらの生物学的に活性な部分をコードしているヌクレオチド配列を含む単離さ
れた核酸分子(例えば、cDNAs など)、ならびにシンデスモスをコードしている
核酸検出用のプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブに適した核酸フ
ラグメント(例えば、mRNA など)である。特に好ましい実施態様においては、
単離された核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド配列またはコード領域(配列
番号3)もしくはこれらのヌクレオチド配列と相補的な配列を含む。別の特に好
ましい実施態様においては、本発明の単離された核酸分子は、好ましくはストリ
ンジェントな条件下において、配列番号1に示すヌクレオチド配列またはそれら
の一部分との同一性が少なくとも約60〜65%、好ましくは少なくとも約70〜75%
、より好ましくは少なくとも約80〜85%、さらに好ましくは約90〜95%、96%、
97%、98%または99%であるヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチ
ド配列を含む。さらに別の好ましい実施態様においては、単離された核酸分子は
配列番号2のアミノ酸配列をコードしている。好ましいシンデスモス核酸は、本
明細書に記載しているシンデスモス活性のうちの少なくともひとつを有するタン
パク質をコードしている。
【0006】 別の実施態様においては、単離された核酸分子はタンパク質またはそれらの一
部分をコードしており、このとき、タンパク質またはそれらの一部分は、配列番
号2のアミノ酸配列と十分に相同なアミノ酸配列(例えば、該タンパク質または
それらの一部分がシンデスモスの生物学的活性を保持している程度に配列番号2
のアミノ酸配列と十分な相同性を有するアミノ酸配列など)を含んでいる。好ま
しくは、核酸分子によってコードされているタンパク質またはそれらの一部分は
、細胞マトリックス相互作用において作動する能力を保持している。ひとつの実
施態様においては、核酸分子によってコードされているタンパク質は、配列番号
2のアミノ酸配列との配列の同一性が少なくとも約60〜70%、好ましくは少なく
とも約80〜85%、より好ましくは少なくとも約86%、88%、90%、最も好ましく
は少なくとも約90〜95%、96%、97%、98%または99%である(例えば、配列番
号2の全アミノ酸配列など)。また、別の好ましい実施態様においては、該タン
パク質は、配列番号2の全アミノ酸配列と実質的に相同なタンパク質の全長であ
る(配列番号3に示されているオープンリーディングフレームによってコードさ
れている)。さらに別の実施態様においては、該タンパク質は哺乳類タンパク質
(例えば、ヒトのタンパク質など)であり、配列番号2のアミノ酸配列またはそ
れらの一部分と実質的に相同である。
【0007】 またさらに別の実施態様においては、単離された核酸分子は、SH3ドメイン結
合部位モチーフをコードしている配列を含むシンデスモスタンパク質の一部分を
コードしている。好ましくは、該核酸分子によってコードされているSH3ドメイ
ン結合部位モチーフは、配列番号2のSH3ドメイン結合部位モチーフ(すなわち
、アミノ酸残基数約24〜27個)との配列の同一性が少なくとも約80%以上である
。好ましくは、SH3ドメイン結合部位モチーフはコンセンサス配列 P - X - P -
P を有し、ここで、Xは任意のアミノ酸である。
【0008】 別の好ましい実施態様においては、単離された核酸分子はシンデスモスタンパ
ク質またはそれらの一部をコードしており、このとき、該タンパク質またはそれ
らの一部は、配列番号2との配列の同一性が少なくとも約55%以上であり、さら
に、細胞マトリックス相互作用に関する以下の活性のうちのひとつまたはそれ以
上を有する。1)シンデカン4と直接または間接的に相互作用する;2)パキシ
リンと直接または間接的に相互作用する;3)細胞内シグナル伝達タンパク質(
例えば、GTP結合タンパク質、フォーカルアドヒージョンキナーゼ、セリン−ト
レオニンキナーゼなど)と直接または間接的に相互作用する;4)細胞骨格構成
を調節する、例えば、マトリックスレセプター(例えば、シンデカン4など)と
細胞骨格に関与している細胞内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリンな
ど)との相互作用を調節するなど;5)PKCαと直接または間接的に相互作用す
る;6)アクチンストレスファイバーの形成および/または構成を調節する;7
)接着形成シグナル伝達経路を調節する;8)細胞付着を調節する;ならびに/
または、9)細胞拡散を調節する。
【0009】 また別の実施態様においては、単離された核酸分子は、少なくとも15個のヌク
レオチドから構成されており、さらに、ストリンジェント条件下において、配列
番号1または配列番号3のヌクレオチド配列を含む核酸分子とハイブリダイズす
る。好ましくは、単離された核酸分子は天然に存在する核酸分子と一致する。よ
り好ましくは、単離された核酸分子は、天然に存在するシンデスモスまたはそれ
らの生物学的に活性な部分をコードしている。好ましくは、生物学的に活性な部
分は、150塩基対、200塩基対、300塩基対、400塩基対、500塩基対、600塩基対、
700塩基対または1000塩基対以上の長さのヌクレオチド配列によってコードされ
ている。さらに、シンデスモスをコードしているcDNA 配列(例えば、配列番号
1など)に関する本明細書の開示により、アンチセンス核酸分子(すなわち、シ
ンデスモスcDNA 配列のコード鎖と相補的な分子)も提供される。
【0010】 ひとつの好ましい実施態様においては、コードされているシンデスモスタンパ
ク質は、配列番号2のアミノ酸配列とは少なくとも1個から2個、3個、5個、
10個、20個または40個まで(超えることはない)のアミノ酸残基が異なっている
。しかしながら、ひとつの好ましい実施態様においては、その差異は次のような
ものである。シンデスモスがコードされているタンパク質はシンデスモスの生物
学的活性を示し、例えば、コードされているシンデスモスタンパク質は天然に存
在するシンデスモス(例えば、配列番号2で表されるシンデスモスタンパク質な
ど)の生物学的活性を保持している。
【0011】 好ましい実施態様においては、コードされているポリペプチドは、配列番号2
由来のアミノ酸配列のすべてまたはフラグメントを含んでおり、例えば、リーデ
ィングフレーム内などにおいて追加のアミノ酸残基と融合しており、好ましくは
、配列番号2由来の配列をコードしているゲノム性DNA 5' からゲノム性DNA に
よってコードされている残基と融合している。
【0012】 好ましい実施態様においては、コードされているシンデスモスタンパク質は、
本明細書に記載しているシンデスモス配列、ならびに他のN 末端および/または
C 末端アミノ酸配列を含む。
【0013】 また別の側面から見ると、本発明は、本発明の核酸分子を含むベクター(例え
ば、組換え発現ベクターなど)およびそのようなベクターを導入する宿主細胞に
関する。ひとつの実施態様においては、そのような宿主細胞を用いて適切な培地
内で培養することにより、シンデスモスタンパク質を産生する。シンデスモスタ
ンパク質は培地または宿主細胞から単離することが可能である。
【0014】 さらに別の側面から見ると、本発明は、シンデスモス遺伝子を導入することが
できる、またはシンデスモス遺伝子によって改変することができる非ヒトトラン
スジェニック動物(例えば、齧歯類(例えば、マウスなど)、ウシ、ヤギ、ブタ
、ウサギまたはモルモットなど)に関する。ひとつの実施態様においては、シン
デスモスをコードしている本発明の核酸分子を導入遺伝子として導入することに
より、ヒト以外の動物のゲノムを改変することができた。別の実施態様において
は、ヒト以外の動物のゲノム内に存在する内在性のシンデスモス遺伝子を改変す
ることができ、例えば、相同的組換えによって機能が破壊された。
【0015】 さらに別の側面から見ると、本発明は、単離されたシンデスモスタンパク質ま
たはそれらの一部分(例えば、それらの生物学的に活性な部分)に関する。好ま
しい実施態様においては、単離されたシンデスモスタンパク質またはそれらの一
部分は、細胞マトリックス相互作用において作動する。別の好ましい実施態様に
おいては、単離されたシンデスモスタンパク質またはそれらの一部分は、シンデ
スモス活性のうちのひとつまたはそれ以上を保持している程度に配列番号2のア
ミノ酸配列との相同性が高い。
【0016】 ひとつの実施態様においては、シンデスモスタンパク質の生物学的に活性な部
分は、1個のドメインまたはモチーフ、好ましくは、シンデスモス活性を有する
1個のドメインまたはモチーフを含む。そのようなモチーフとしては例えば、SH
3結合ドメイン部位モチーフおよび/または少なくとも1個または2個のミリス
チル化( myristylation )モチーフなどが挙げられる。
【0017】 図面の説明 図1は、ニワトリのシンデスモスのcDNA 配列および予想アミノ酸配列を示す
。ヌクレオチド配列は配列番号1の核酸の1番〜1182番に相当している。アミノ
酸配列は配列番号2のアミノ酸の1番〜320番に相当している。
【0018】 発明の詳細な説明 本発明は、細胞マトリックス相互作用において作動し、本明細書においてシン
デスモス(syndesmos )核酸およびタンパク質分子と呼ぶ新規な分子の発見に基
づく。ひとつの実施態様においては、シンデスモス分子は細胞骨格構成に関与す
るタンパク質を調節する。好ましい実施態様においては、本発明のシンデスモス
分子は、マトリックスレセプターであるシンデカン4と細胞骨格に関与している
細胞内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリンおよび/またはパキシリン
など)との相互作用を調節することができる。
【0019】 シンデスモスは、シンデカン4の細胞質ドメインと相互作用する物質として見
出された。シンデカン4の細胞質ドメインへのシンデスモスの結合は直接的およ
び特異的であり、このドメイン内の高度に保存された膜近位領域および可変性中
央領域の両者にまたがっている。保存性膜近位ドメイン単独でもシンデカン4の
シンデスモスとの相互作用を媒介することができるが、可変性中央ドメインは相
互作用に特異性を付与しているものと考えられる。このような特異性に対する媒
介物質として中央ドメインが関与していることは、3つの知見から示唆される。
第一は、シンデカン1、2または3の細胞質ドメインがシンデカン4の細胞質ド
メインと同一の保存性膜近位配列およびC末端配列を含んでいるにも関わらず、
シンデスモスがシンデカン1、2または3のいずれの細胞質ドメインとも結合し
ないことである。第二は、細胞質ドメイン全体との結合に比べて、膜近位ドメイ
ン単独では結合が弱いことである。最後に、可変性中央ドメインを内部削除する
と結合が消失することである。
【0020】 本発明のシンデスモスタンパク質またはポリペプチドは、細胞骨格に関与して
いるアクチンなどのタンパク質と相互作用することもできる。好ましくは、シン
デスモスタンパク質またはポリペプチドは、接着依存性シグナル伝達経路を介し
て細胞骨格のタンパク質と相互作用する。シンデスモスの過剰発現が細胞の形態
に与える影響は、細胞接着および拡散の初期段階においてよりはっきりと表れる
ことが明らかになっている。さらに、血清不在下においては、細胞の表現型はさ
らに増加した。これらの知見から、シンデスモスによる細胞形態の調節は血清と
は無関係であり、接着依存性シグナルを必要とすることが示唆された。シンデス
モスがアクチンストレスファイバーの形成および構成を調節する能力は、下流の
血清依存性経路と機能的に平行していることが示唆された。シンデスモスがフォ
ーカルコンタクト、アクチン繊維上、および基底分布に局在していることから、
細胞外マトリックスレセプターと細胞骨格との架橋分子として作用している可能
性が示唆された。故に、ひとつの側面から見ると、本発明は、シンデスモス4に
結合し、ならびに/または、アドヒージョンレセプター、シンデスモス4と細胞
骨格に関与するタンパク質との相互作用を媒介するシンデスモスタンパク質およ
びポリペプチドに関する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ニワトリのシンデスモスのcDNA 配列および予想アミノ酸配列
【手続補正書】
【提出日】平成14年2月13日(2002.2.13)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の名称】 シンデスモスおよびその利用法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【出願の関連性】 本出願は、1999年3月15日に出願された米国仮出願第60/124,497号の優先権を
享受するものであり、その出願内容全体を取り入れるものである。
【0002】
【発明の背景】 細胞の形態、移動、増殖および分化は、接着依存性および増殖因子レセプター
介在性シグナル伝達によるものである。接着依存性シグナル伝達系は、細胞マト
リックス相互作用部位において巨大分子コンプレックス形成を介することにより
、細胞外マトリックスと細胞内細胞骨格とを構造的および生化学的に結びつけて
いる。細胞培養においては、これらの巨大細胞コンプレックスはフォーカルアド
ヒージョン(接着域)と称される(ブーリッジ(Burridge)およびクルツァノス
カ−ウドニカ(Chrzanowska-Wodnicka)、(1996)Ann. Rev. Cell. Dev. Biol. 1
2:463-518)。接着レセプターがシグナル伝達系および構造的変化を媒介する能
力は、一部には、細胞質ドメインが細胞骨格構成成分と結合することによって生
じる。次に、細胞内シグナル伝達コンプレックスを組織するために、細胞骨格構
成成分が構造的作用およびアダプター作用を発揮する。構造的作用および/また
はアダプター作用を発揮する細胞骨格タンパク質としては、アクチン、α−アク
チニン、パキシリン、テーリン、テンシン(tensin)およびビンキュリンなどが
挙げらる。関連するシグナル伝達タンパク質としては、チロシンキナーゼ類(フ
ォーカルアドヒージョンキナーゼ、src、csk およびfyn)、PKCおよびMAPKを含
むセリン−トレオニンキナーゼファミリー、ならびに低分子量GTP結合タンパク
質を含むRAS ファミリーなどが挙げられる(クラーク(Clark)およびブラッジ
(Brugge)、(1996)Science 268:233-239;ブーリッジ(Burridge)およびクル
ツァノスカ−ウドニカ(Chrzanowska-Wodnicka)、(1996)Ann. Rev. Cell. Dev.
Biol. 12:463-518)。
【0003】 細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカン類を構成するシンデカンファミリー
の構成分子(シンデカン1〜4)は、細胞接着および形態の調節に関与している
(バーンフィールド(Bernfield)ら、(1991)Ann. Rev. Cell. Biol. 8:365-39
3;カレー(Carey)、(1997)Biochem. J. 327:1-16;リウ(Liu)ら、(1998)J.
Biol. Chem. 273:22825-22832;ウッズ(Woods)およびコッホマン(Couchman
)、(1998)Trends Cell Biol. 8:189-192)。シンデカンファミリーの4つの構
成分子すべてにおいて、細胞質ドメインの配列は高度に保存されており、該ドメ
インは相同性に基づき、保存性膜近位サブドメイン、可変性中央サブドメインお
よび保存性C末端サブドメインに分けられる。シンデカンファミリー構成分子の
細胞質ドメインと直接または間接的に結合する数種の細胞性成分が確認されてい
る。これらには例えば、シンデカン4の細胞質ドメインの可変性中央領域と直接
相互作用するPKCαおよびホスファチジルイノシトール4,5−ビホスフェート
(PIP2)(オー(Oh)ら、(1997)J. Biol. Chem. 272:11805-11811;オー(Oh
)ら、(1997)J. Biol. Chem. 272:8133-8136;オー(Oh)ら、(1998)J. Biol.
Chem. 273:10624-10629)、高度に保存されたC末端のEFYA 配列を介してシン
デカンファミリーのすべての構成分子の細胞質ドメインと相互作用する、PDZを
含むタンパク質であるシンテニン(syntenin)(グルータンズ(Grootjans)ら
、(1997)Prot. Natl. Acad. Sci. USA 94:13683-13688)およびCASK/LIN-2(コ
ーエン(Cohen)ら、(1998)J. Cell Bio. 142:129-138;ハスエ(Hsueh)ら、(
1998)J. Biol. Chem. 142:139-151)、ならびにシンデカン3の膜近位ドメイン
に結合するSrc−コルタクチン(cortactin)コンプレックス(キヌネン(Kinnun
en)ら、(1998)J. Biol. Chem. 273:10702-10708)などが含まれる。
【0004】 シンデカン4はフォーカルコンタクトにおいて見出され(ウッズ(Woods)お
よびコッホマン(Couchman)、(1994)Mol. Biol. Cell 5:183-192;バシュー(
Baciu)およびゲティンク(Goetinck)(1995)Mol. Biol. Cell 11:1503-1513)
、PKCαと結合する(オー(Oh)ら、(1997)J. Biol. Chem. 272:11805-11811;
オー(Oh)ら、(1997)J. Biol. Chem. 272:8133-8136)。
【0005】
【発明の概要】 本発明は、一部分においては、本明細書においてシンデスモス(syndesmos)
と呼ぶ新規な細胞性タンパク質をコードしている遺伝子の発見に基づく。シンデ
スモスタンパク質は、シンデカン4の細胞質ドメインとは相互作用するが、シン
デカンファミリーの他の構成分子とは相互作用しないことが見出された。シンデ
スモスが過剰発現すると、細胞伸展およびアクチン細胞骨格構造を媒介する。シ
ンデスモスは、シンデカン4をフォーカルアドヒージョンコンプレックスに連結
させるように作用する。
【0006】 従って、ひとつの側面から見ると、本発明は、シンデスモスタンパク質または
それらの生物学的に活性な部分をコードしているヌクレオチド配列を含む単離さ
れた核酸分子(例えば、cDNAs など)、ならびにシンデスモスをコードしている
核酸検出用のプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブに適した核酸フ
ラグメント(例えば、mRNA など)である。特に好ましい実施態様においては、
単離された核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド配列またはコード領域(配列
番号3)もしくはこれらのヌクレオチド配列と相補的な配列を含む。別の特に好
ましい実施態様においては、本発明の単離された核酸分子は、好ましくはストリ
ンジェントな条件下において、配列番号1に示すヌクレオチド配列またはそれら
の一部分との同一性が少なくとも約60〜65%、好ましくは少なくとも約70〜75%
、より好ましくは少なくとも約80〜85%、さらに好ましくは約90〜95%、96%、
97%、98%または99%であるヌクレオチド配列、またはそれらの配列とハイブリ
ダイズするヌクレオチド配列を含む。さらに別の好ましい実施態様においては、
単離された核酸分子は配列番号2のアミノ酸配列をコードしている。好ましいシ
ンデスモス核酸は、本明細書に記載しているシンデスモス活性のうちの少なくと
もひとつを有するタンパク質をコードしている。
【0007】 別の実施態様においては、単離された核酸分子は、タンパク質またはそれらの
一部分であって、該タンパク質またはそれらの一部分が、配列番号2のアミノ酸
配列と十分に相同なアミノ酸配列(例えば、該タンパク質またはそれらの一部分
がシンデスモスの生物学的活性を保持している程度に配列番号2のアミノ酸配列
と十分な相同性を有するアミノ酸配列など)を含んでいるものをコードしている
。好ましくは、核酸分子によってコードされているタンパク質またはそれらの一
部分は、細胞マトリックス相互作用において作動する能力を保持している。ひと
つの実施態様においては、核酸分子によってコードされているタンパク質は、配
列番号2のアミノ酸配列との配列の同一性が少なくとも約60〜70%、好ましくは
少なくとも約80〜85%、より好ましくは少なくとも約86%、88%、90%、最も好
ましくは少なくとも約90〜95%、96%、97%、98%または99%である(例えば、
配列番号2の全アミノ酸配列など)。また、別の好ましい実施態様においては、
該タンパク質は、配列番号2の全アミノ酸配列と実質的に相同なタンパク質の全
長である(配列番号2は、配列番号3に示されているオープンリーディングフレ
ームによってコードされている)。さらに別の実施態様においては、該タンパク
質は哺乳類タンパク質(例えば、ヒトのタンパク質など)であり、配列番号2の
アミノ酸配列またはそれらの一部分と実質的に相同である。
【0008】 またさらに別の実施態様においては、単離された核酸分子は、SH3ドメイン結
合部位モチーフをコードしている配列を含むシンデスモスタンパク質の一部分を
コードしている。好ましくは、該核酸分子によってコードされているSH3ドメイ
ン結合部位モチーフは、配列番号2のSH3ドメイン結合部位モチーフ(すなわち
、アミノ酸残基数約24〜27個)との配列の同一性が少なくとも約80%以上である
。好ましくは、SH3ドメイン結合部位モチーフはコンセンサス配列P-X-P-Pを有し
、ここで、Xは任意のアミノ酸である。
【0009】 別の好ましい実施態様においては、単離された核酸分子は、シンデスモスタン
パク質またはそれらの一部であって、該タンパク質またはそれらの一部が、配列
番号2との配列の同一性が少なくとも約55%以上であり、さらに、細胞マトリッ
クス相互作用に関する以下の活性のうちのひとつまたはそれ以上を有するものを
コードしている。1)シンデカン4と直接または間接的に相互作用する;2)パ
キシリンと直接または間接的に相互作用する;3)細胞内シグナル伝達タンパク
質(例えば、GTP結合タンパク質、フォーカルアドヒージョンキナーゼ、セリン
−トレオニンキナーゼなど)と直接または間接的に相互作用する;4)細胞骨格
構造を調節する、例えば、マトリックスレセプター(例えば、シンデカン4など
)と細胞骨格に関与している細胞内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリ
ンなど)との相互作用を調節するなど;5)PKCαと直接または間接的に相互作
用する;6)アクチンストレスファイバーの形成および/または構造を調節する
;7)接着形成シグナル伝達経路を調節する;8)細胞接着を調節する;ならび
に/または、9)細胞伸展を調節する。
【0010】 また別の実施態様においては、単離された核酸分子は、少なくとも15個のヌク
レオチドから構成されており、さらに、ストリンジェント条件下において、配列
番号1または配列番号3のヌクレオチド配列を含む核酸分子とハイブリダイズす
る。好ましくは、単離された核酸分子は天然に存在する核酸分子と相応するもの
である。より好ましくは、単離された核酸分子は、天然に存在するシンデスモス
またはそれらの生物学的に活性な部分をコードしている。好ましくは、生物学的
に活性な部分は、150塩基対、200塩基対、300塩基対、400塩基対、500塩基対、6
00塩基対、700塩基対または1000塩基対以上の長さのヌクレオチド配列によって
コードされている。さらに、シンデスモスをコードしているcDNA 配列(例えば
、配列番号1など)に関する本明細書の開示により、アンチセンス核酸分子(す
なわち、シンデスモスcDNA 配列のコード鎖と相補的な分子)も提供される。
【0011】 ひとつの好ましい実施態様においては、コードされているシンデスモスタンパ
ク質は、配列番号2とのアミノ酸残基の相違が、多くても1個から2個、3個、
5個、10個、20個または40個まで(超えることはない)である。しかしながら、
ひとつの好ましい実施態様においては、その差異は次のようなものである。シン
デスモスがコードされているタンパク質はシンデスモスの生物学的活性を示し、
例えば、コードされているシンデスモスタンパク質は天然に存在するシンデスモ
ス(例えば、配列番号2で表されるシンデスモスタンパク質など)の生物学的活
性を保持している。
【0012】 好ましい実施態様においては、コードされているポリペプチドは、配列番号2
由来のアミノ酸配列のすべてまたはフラグメントを含んでおり、例えば、リーデ
ィングフレーム内において追加のアミノ酸残基と融合しており、好ましくは、配
列番号2由来の配列をコードしているゲノム性DNA 5' からゲノム性DNAによって
コードされている残基と融合している。
【0013】 好ましい実施態様においては、コードされているシンデスモスタンパク質は、
本明細書に記載しているシンデスモス配列、ならびに他のN 末端および/または
C 末端アミノ酸配列を含む。
【0014】 また別の側面から見ると、本発明は、本発明の核酸分子を含むベクター(例え
ば、組換え発現ベクターなど)およびそのようなベクターを導入する宿主細胞に
関する。ひとつの実施態様においては、そのような宿主細胞を用いて適切な培地
内で培養することにより、シンデスモスタンパク質を産生する。シンデスモスタ
ンパク質は培地または宿主細胞から単離することができる。
【0015】 さらに別の側面から見ると、本発明は、シンデスモス遺伝子を導入することが
できる、またはシンデスモス遺伝子によって改変することができる非ヒト(ヒト
以外の)トランスジェニック動物(例えば、齧歯類(例えば、マウスなど)、ウ
シ、ヤギ、ブタ、ウサギまたはモルモットなど)に関する。ひとつの実施態様に
おいては、シンデスモスをコードしている本発明の核酸分子を導入遺伝子として
導入することにより、非ヒト動物のゲノムを改変することができた。別の実施態
様においては、非ヒト動物のゲノム内に存在する内在性のシンデスモス遺伝子を
改変することができ、例えば、相同的組換えによって機能が破壊された。
【0016】 さらに別の側面から見ると、本発明は、単離されたシンデスモスタンパク質ま
たはそれらの一部分(例えば、それらの生物学的に活性な部分)に関する。好ま
しい実施態様においては、単離されたシンデスモスタンパク質またはそれらの一
部分は、細胞マトリックス相互作用において作動する。別の好ましい実施態様に
おいては、単離されたシンデスモスタンパク質またはそれらの一部分は、シンデ
スモス活性のうちのひとつまたはそれ以上を保持している程度に配列番号2のア
ミノ酸配列との相同性が高い。
【0017】 ひとつの実施態様においては、シンデスモスタンパク質の生物学的に活性な部
分は、ドメインまたはモチーフ、好ましくは、シンデスモス活性を有するドメイ
ンまたはモチーフを含む。そのようなモチーフとしては例えば、SH3結合ドメイ
ン部位モチーフおよび/または少なくとも1個または2個のミリスチル化(myri
stylation)モチーフなどが挙げられる。
【0018】 本発明はまた、シンデスモスタンパク質の単離調製に関する。好ましい実施態
様においては、シンデスモスタンパク質は配列番号2のアミノ酸配列を含む。別
の好ましい実施態様においては、配列番号2の全アミノ酸配列(配列番号3に示
されるオープンリーディングフレームによってコードされている)のアミノ酸配
列)と実質的に相同であるタンパク質の全長を単離したものに関する。さらに別
の好ましい実施態様においては、該アミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列
との同一性が少なくとも約60〜70%、好ましくは少なくとも約80〜85%、より好
ましくは少なくとも約86%、88%、90%、最も好ましくは少なくとも約90〜95%
、96%、97%、98%または99%である。別の実施態様においては、単離されたシ
ンデスモスタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも約
60〜70%以上であり、さらに、次の活性のうちのひとつまたはそれ以上を有する
。1)シンデカン4と直接または間接的に相互作用する;2)パキシリンと直接
または間接的に相互作用する;3)細胞内シグナル伝達タンパク質と直接または
間接的に相互作用する(例えば、GTP結合タンパク質、フォーカルアドヒージョ
ンキナーゼ、セリン−トレオニンキナーゼなど);4)細胞骨格構造を調節する
、例えば、マトリックスレセプター(例えば、シンデカン4など)と細胞骨格に
関与する細胞内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリンなど)との相互作
用を調節するなど;5)PKCαと直接または間接的に相互作用する;6)アクチ
ンストレスファイバーの形成および/または構造を調節する;7)接着形成シグ
ナル伝達経路において作動する;8)細胞接着を調節する;9)細胞伸展を調節
する。
【0019】 別の態様として、単離されたシンデスモスタンパク質は、例えば、ストリンジ
ェント条件下においてハイブイダイズするヌクレオチド配列、または、配列番号
1のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも約60〜65%、好ましくは少なくと
も約70〜75%、およびより好ましくは約90〜95%、96%、97%、98%もしくは99
%であるヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列を含む。また
、シンデスモスの好ましい形態においては、本明細書に記載しているシンデスモ
ス活性のひとつまたはそれ以上を有することが好ましい。
【0020】 好ましい実施態様においては、シンデスモスタンパク質はアミノ酸配列に関し
て、配列番号2の配列との残基数の相違が、多くても1個から2個、3個、5個
、10個、20個または40個まで(超えることはない)である。別の好ましい実施態
様においては、シンデスモスタンパク質はアミノ酸配列に関して、配列番号2の
配列との相違が1%、2%、3%、5%または10%までである。好ましくは、こ
のような相違は、シンデスモスタンパク質がシンデスモスの生物学的活性を示す
ような程度であり、例えば、シンデスモスタンパク質が天然に存在するシンデス
モスの生物学的活性を保持しているという程度である。
【0021】 別の側面から見ると、本発明は、シンデカン4と結合することができるシンデ
スモスタンパク質のフラグメントに関する。好ましい実施態様においては、該フ
ラグメントは少なくとも10個、15個、20個、25個、30個、50個、100個、150個の
アミノ酸残基から構成されており、シンデカン4に結合することができる。
【0022】 本発明をさらに別の面から見ると、シンデスモスタンパク質は組換えシンデス
モスタンパク質であり、以下の点のうちのひとつまたはそれ以上について、組織
から単離されたシンデスモスとは異なる。グリコシル化、ミリスチル化、ホスホ
リル化、またはその他の翻訳後修飾のパターン。
【0023】 また別の側面から見ると、本発明は、シンデスモスに結合することができるシ
ンデカン4タンパク質のフラグメントに関する。好ましい実施態様においては、
該フラグメントは少なくとも10個、15個、20個、25個、30個のアミノ酸残基から
構成されており、シンデスモスに結合することができる。好ましくは、シンデス
モス結合性フラグメントは、シンデカン4のアミノ酸残基のうち少なくとも10個
、15個、17個、20個または30個を含むが、20個、28個、30個、40個、50個または
100個を超えることはない。好ましい実施態様においては、シンデスモス結合性
フラグメントは、配列番号6のアミノ酸番号169番〜197番、または180番〜197番
のアミノ酸を含む。
【0024】 本発明のシンデスモスタンパク質またはそれらの一部もしくはフラグメントは
、抗シンデスモス抗体を調製するのに用いることができる。従って、本発明は、
配列番号2に示すアミノ酸配列のうちの少なくとも8個のアミノ酸残基を含むシ
ンデスモスの抗原性ペプチドも提供し、さらに、該ペプチドに対して生成した抗
体がシンデスモスと特異的免疫コンプレックスを形成するようなシンデスモスの
エピトープも包含する。好ましくは、該抗原性ペプチドは少なくとも10個のアミ
ノ酸残基を含んでおり、より好ましくは少なくとも15個のアミノ酸残基、さらに
好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基、最も好ましくは少なくとも30個、50
個、70個、80個のアミノ酸残基を含んでいる。本発明はさらに、抗体、例えば、
シンデスモスに特異的に結合するモノクローナル抗体などに関する。ひとつの実
施態様においては、抗体はモノクローナルである。別の実施態様においては、検
出可能な物質に該抗体を結合させる。さらに別の実施態様においては、抗体およ
び薬剤学的に許容できるキャリヤーを含む薬剤学的組成物に該抗体を配合するこ
とができる。
【0025】 別の側面から見ると、シンデカン4中のシンデスモス結合性フラグメントは、
抗体を調製するのに用いることができる。従って、本発明は、配列番号5示すア
ミノ酸配列のうちの少なくとも8個〜17個のアミノ酸残基を含むシンデカン4の
抗原性ペプチドも提供し、さらに、該ペプチドに対して生成した抗体がシンデカ
ン4のシンデスモス結合領域と特異的免疫コンプレックスを形成するようなシン
デカン4のエピトープも包含する。好ましくは、該抗原性ペプチドは少なくとも
10個のアミノ酸残基を含んでおり、より好ましくは少なくとも15個のアミノ酸残
基、さらに好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基、最も好ましくは少なくと
も30個、50個のアミノ酸残基を含んでいる。本発明はさらに、抗体、例えば、シ
ンデカン4のシンデスモス結合領域に特異的に結合するモノクローナル抗体など
に関する。ひとつの実施態様においては、抗体はモノクローナルである。別の実
施態様においては、検出可能な物質に該抗体を結合させる。さらに別の実施態様
においては、抗体および薬剤学的に許容できるキャリヤーを含む薬剤学的組成物
に該抗体を配合することができる。
【0026】 また別の側面から見ると、本発明は、イン・ビトロ(in vitro)またはイン・
ビボ(in vivo)において、シンデスモスが媒介している細胞の特性を調節する
方法に関する。この方法は、調節を行う(例えば、シンデスモスのシンデカン4
との相互作用を阻害するなど)作用物質と細胞を接触させることを含む。
【0027】 シンデスモス/シンデカン4相互作用は、シンデスモスとシンデカン4との結
合を干渉する作用物質を添加することによって阻害または減弱することができる
。そのような作用物質の例としては、例えば、イントラボディ(intrabody)な
どのようなシンデスモスに結合する抗体、もしくはシンデカン4に結合する抗体
(例えば、シンデカン4中のシンデスモス結合領域に結合する抗体など)、また
はそれらの両方が挙げられる。その他の作用物質としては次のようなものが挙げ
られる。シンデスモスタンパク質もしくはそれらのシンデカン4結合領域、シン
デカン4タンパク質もしくはそれらのシンデスモス結合領域、シンデスモスタン
パク質もしくはそれらのシンデカン4結合領域を他のポリペプチド(例えば、細
胞への侵入または溶解性を促進するポリペプチドなど)へ融合させたもの、シン
デカン4タンパク質もしくはそれらのシンデスモス結合領域を他のポリペプチド
(例えば、細胞への侵入または溶解性を促進するポリペプチドなど)へ融合させ
たもの、シンデスモスまたはシンデカン4以外でシンデスモスもしくはシンデカ
ン4に結合するポリペプチド(例えば、ファージディスプレーまたはツーハイブ
リッドアッセイなどにおける結合によって選択されるポリペプチドなど)。好ま
しい実施態様においては、該方法は、上述の作用物質のうちのひとつをコードし
ている核酸を添加することを含む。
【0028】 好ましい実施態様においては、該方法は、細胞骨格構造を調節する(例えば、
マトリックスレセプター(例えば、シンデカン4など)と細胞骨格に関与してい
る細胞内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリンなど)との相互作用を調
節するなど)、アクチンストレスファイバーの形成および/または構造を調節す
る、接着形成を調節する、細胞接着を調節する、ならびに細胞伸展を調節する。
【0029】 好ましい実施態様においては、本方法は、望ましくない、または異常なシンデ
スモスタンパク質活性または核酸発現によって特徴づけられる疾患を有する被験
被験対象を治療することを含む。
【0030】 好ましい実施態様においては、本発明は、望ましくない、または異常な細胞内
相互作用(例えば、不要または異常の細胞−細胞相互作用および/または細胞−
マトリックス相互作用、不要または異常の細胞移動/運動(例えば、癌など)な
ど)が関与している疾患を有する被験対象を治療することを含む。
【0031】 好ましい実施態様においては、以下のようなシンデスモスの生物学的活性を調
節することができる。1)シンデカン4とと直接または間接的に相互作用する;
2)パキシリンと直接または間接的に相互作用する;3)細胞内シグナル伝達タ
ンパク質と直接または間接的に相互作用する(例えば、GTP結合タンパク質、フ
ォーカルアドヒージョンキナーゼ、セリン−トレオニンキナーゼなど);4)細
胞骨格構造を調節する、例えば、マトリックスレセプター(例えば、シンデカン
4など)と細胞骨格に関与する細胞内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュ
リンなど)との相互作用を調節するなど;5)PKCαと直接または間接的に相互
作用する;6)アクチンストレスファイバーの形成および/または構造を調節す
る;7)接着形成シグナル伝達経路において作動する;8)細胞接着を調節する
;9)細胞伸展を調節する。
【0032】 別の側面から見ると、本発明は、イン・ビトロ(in vitro)またはイン・ビボ
(in vivo)において、シンデスモスが媒介している細胞の特性を調節する方法
に関する。この方法は、細胞がシンデスモスの活性を調節する作用物質と接触す
ることを含む。シンデスモス活性は、例えば、転写時、翻訳時または翻訳後に調
節することができる。
【0033】 好ましい実施態様においては、シンデスモス活性は次のような作用物質を添加
することによって調節することができる。シンデスモスアンチセンス分子、抗体
(例えば、シンデスモスに結合するようなイントラボディなど)、シンデカン4
タンパク質またはそれらのシンデスモス結合部分、パキシリンまたはそれらのシ
ンデスモス結合部分、シンデカン4タンパク質もしくはパキシリンまたはそれら
のシンデスモス結合部位を他のポリペプチド(例えば、細胞への侵入または溶解
性を促進するポリペプチドなど)に融合させたもの、シンデカン4またはパキシ
リン以外でシンデスモスに結合するポリペプチド(例えば、ファージディスプレ
ーまたはツーハイブリッドアッセイなどにおいて結合性に関して選択されたポリ
ペプチド、シンデスモスのコントロール領域に結合する小分子など)。好ましい
実施態様においては、本方法は、上述の作用物質のうちのひとつをコードしてい
る核酸を添加することを含む。
【0034】 好ましい実施態様においては、該方法は、細胞骨格構造を調節し(例えば、マ
トリックスレセプター(例えば、シンデカン4など)と細胞骨格に関与する細胞
内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリンなど)との相互作用を調節する
など)、アクチンストレスファイバーの形成および/または構造を調節し、接着
形成を調節し、細胞接着を調節し、また、細胞伸展を調節する。
【0035】 好ましい実施態様においては、該方法は、望ましくない、または異常な細胞相
互作用(例えば、望ましくない、または異常な細胞−細胞相互作用および/また
は細胞−マトリックス相互作用、あるいは望ましくない、または異常な細胞移動
/運動、例えば、癌など)が関与して生じる疾患を有する被験対象を治療するこ
とを含む。
【0036】 好ましい実施態様においては、以下のようなシンデスモスの生物学的活性のう
ちのひとつまたはそれ以上を調節することができる。1)シンデカン4と直接ま
たは間接的に相互作用する;2)細胞内シグナル伝達タンパク質と直接または間
接的に相互作用する(例えば、GTP結合タンパク質、フォーカルアドヒージョン
キナーゼ、セリン−トレオニンキナーゼなど);3)PKCαと直接または間接的
に相互作用する;4)細胞骨格構造を調節する、例えば、マトリックスレセプタ
ー(例えば、シンデカン4など)と細胞骨格に関与する細胞内タンパク質(例え
ば、アクチン、ビンキュリンなど)との相互作用を調節するなど;5)パキシリ
ンと直接または間接的に相互作用する;6)アクチンストレスファイバーの形成
および/または構造を調節する;7)接着形成シグナル伝達経路において作動す
る;8)細胞接着を調節する;9)細胞伸展を調節する。
【0037】 好ましい実施態様においては、シンデスモス活性を調節する作用物質としては
、シンデスモスタンパク質の活性、またはシンデスモス核酸の発現を増強する作
用物質を用いることができる。シンデスモスタンパク質の活性、またはシンデス
モス核酸の発現を増強する作用物質の例としては、低分子(例えば、シンデスモ
スのプロモーター領域に結合する低分子など)、活性シンデスモスタンパク質、
および細胞内に導入されているシンデスモスをコードしている核酸などが挙げら
れる。別の実施態様においては、シンデスモス活性を調節する作用物質としては
、シンデスモスタンパク質の活性またはシンデスモス核酸の発現を減弱する作用
物質を用いることができる。シンデスモスの活性または発現を減弱する作用物質
の例としては、低分子、アンチセンスシンデスモス核酸分子、ならびに、抗体も
しくはイントラボディ(intrabody)(これらは、シンデスモスまたはその標的
であるシンデカン4もしくはパキシリンに特異的に結合する)などが挙げられる
。好ましい実施態様においては、細胞は被験対象の内部に存在しており、当該作
用物質を外部から被験対象に投与する。
【0038】 別の側面から見ると、本発明は、望ましくない、または異常な細胞接着または
細胞伸展(例えば、癌など)によって特徴づけられる疾患を有する被験対象を治
療することに関する。この方法には、シンデスモスとシンデカン4との相互作用
を調節する(例えば、阻害するなど)作用物質を細胞と接触させることを含む。
別の実施態様においては、本方法は、シンデスモスとパキシリンとの相互作用を
調節する(例えば、阻害するなど)作用物質を細胞と接触させることを含む。
【0039】 シンデスモス/シンデカン4相互作用は、シンデスモスとシンデカン4との結
合に干渉する作用物質を添加することによって阻害または減弱することができる
。そのような作用物質の例としては、抗体、イントラボディが挙げられ、例えば
、シンデスモスに結合する抗体、またはシンデカン4に結合する抗体(シンデカ
ン4のシンデスモス結合領域に結合する抗体など)、またはそれらの両方などが
ある。その他の作用物質としては、シンデスモスタンパク質もしくはそれらのシ
ンデカン4結合部分、シンデカン4もしくはそれらのシンデスモス結合部分、シ
ンデスモスタンパク質またはそれらのシンデカン4結合部分と他のポリペプチド
(例えば、細胞への侵入または溶解性を促進するポリペプチドなど)との融合体
、シンデカン4もしくはそれらのシンデスモス結合部分と他のポリペプチド(例
えば、細胞への侵入または溶解性を促進するポリペプチドなど)との融合体、シ
ンデスモスまたはシンデカン4に結合するシンデスモスまたはシンデカン4以外
のポリペプチド(例えば、ファージディスプレーまたはツーハイブリッドアッセ
イなどによって結合性に関して選択されたポリペプチドなど)が挙げられる。好
ましい実施態様においては、この方法は、上述の物質のうちのひとつをコードし
ている核酸を投与することを含む。
【0040】 好ましい実施態様においては、該方法は、細胞骨格構造を調節し(例えば、マ
トリックスレセプター(例えば、シンデカン4など)と細胞骨格に関与する細胞
内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリンなど)との相互作用を調節する
など)、アクチンストレスファイバーの形成および/または構造を調節し、接着
形成を調節し、細胞接着を調節し、また、細胞伸展を調節する。
【0041】 別の側面から見ると、本発明は、望ましくない、または異常な細胞伸展(例え
ば、癌など)によって特徴づけられる疾患を有する被験対象を治療することに関
する。シンデスモス活性は、例えば、転写時、翻訳時または翻訳後に調節するこ
とができる。
【0042】 好ましい実施態様においては、シンデスモス活性は次のような作用物質を添加
することによって調節することができる。そのような作用物質の例としては、シ
ンデスモスアンチセンス分子、抗体(例えば、シンデスモスに結合するイントラ
ボディなど)、シンデカン4タンパク質もしくはそれらのシンデスモス結合部分
、シンデカン4もしくはそれらのシンデスモス結合部分と他のポリペプチド(例
えば、細胞への侵入または溶解性を促進するポリペプチドなど)との融合体、シ
ンデスモスに結合するシンデカン4以外のポリペプチド(例えば、ファージディ
スプレーまたはツーハイブリッドアッセイなどによって結合性に関して選択され
たポリペプチドなど)、低分子(例えば、シンデスモスのコントロール領域に結
合する低分子など)が挙げられる。好ましい実施態様においては、この方法は、
上述の作用物質のうちのひとつをコードしている核酸を投与することを含む。
【0043】 好ましい実施態様においては、該方法は、細胞骨格構造を調節し(例えば、マ
トリックスレセプター(例えば、シンデカン4など)と細胞骨格に関与する細胞
内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリンなど)との相互作用を調節する
など)、アクチンストレスファイバーの形成および/または構造を調節し、接着
形成を調節し、細胞接着を調節し、また、細胞伸展を調節する。
【0044】 好ましい実施態様においては、以下のようなシンデスモスの生物学的活性のう
ちのひとつまたはそれ以上を調節することができる。1)シンデカン4と直接ま
たは間接的に相互作用する;2)パキシリンと直接または間接的に相互作用する
;3)細胞内シグナル伝達タンパク質と直接または間接的に相互作用する(例え
ば、GTP結合タンパク質、フォーカルアドヒージョンキナーゼ、セリン−トレオ
ニンキナーゼなど);4)細胞骨格構造を調節する、例えば、マトリックスレセ
プター(例えば、シンデカン4など)と細胞骨格に関与する細胞内タンパク質(
例えば、アクチン、ビンキュリンなど)との相互作用を調節するなど;5)PKC
αと直接または間接的に相互作用する;6)アクチンストレスファイバーの形成
および/または構造を調節する;7)接着形成シグナル伝達経路において作動す
る;8)細胞接着を調節する;9)細胞伸展を調節する。
【0045】 シンデスモス活性を調節する作用物質としては、シンデスモスタンパク質の活
性またはシンデスモス核酸の発現を増強する作用物質を用いることができる。シ
ンデスモスタンパク質の活性またはシンデスモス核酸の発現を増強する物質とし
ては、低分子(例えば、シンデスモスのプロモーター領域に結合する低分子など
)、活性シンデスモスタンパク質、および細胞内に導入されているシンデスモス
をコードしている核酸などが挙げられる。別の実施態様においては、シンデスモ
ス活性を調節する作用物質としては、シンデスモスタンパク質の活性またはシン
デスモス核酸の発現を減弱する作用物質を用いることができる。シンデスモスの
活性または発現を減弱する作用物質の例としては、低分子、アンチセンスシンデ
スモス核酸分子、ならびに、抗体もしくはイントラボディ(これらは、シンデス
モスまたはその標的であるシンデカン4に特異的に結合する)などが挙げられる
。好ましい実施態様においては、細胞は被験対象の内部に存在しており、該作用
物質を外部から被験対象に投与する。
【0046】 好ましい実施態様においては、該方法は細胞接着および/または細胞伸展を調
節することを含む。
【0047】 また、本発明は、疾患に対するリスクに関して被験対象を評価する方法に関す
る。この方法は例えば、シンデスモス遺伝子内の遺伝子の欠失を検出する、また
はシンデスモス遺伝子の誤発現を検出することなどによって評価を行い、それら
の評価から、被験対象が疾患のリスクを負っている(例えば、疾患をにかかって
いる、またはかかることが予測されるなど)か否かを判断する。そのような疾患
とは、シンデスモス核酸の発現および/またはシンデスモスタンパク質の活性の
変型または異常によって特徴づけられるものであり、例えば、細胞相互作用の異
常(例えば、細胞−細胞および/または細胞−マトリックス相互作用の異常、細
胞移動/運動の異常など)が関与している疾患などが挙げられる。好ましい実施
態様においては、そのような方法としては、被験対象由来の細胞サンプル内など
の遺伝子欠失(例えば、シンデスモスタンパク質をコードしている遺伝子に影響
を与えるような変化を伴う欠失など)の存否を検査すること、または、シンデス
モス遺伝子の誤発現を検査することなどが挙げられる。遺伝子欠失は、例えば、
シンデスモスmRNAにハイブリダイズすることができる核酸プローブ(例えば、ラ
ベルしたプローブなど)にサンプルを接触させることなどによって評価すること
ができる。発現は、シンデスモスタンパク質に結合することができる抗体(例え
ば、ラベルした抗体など)を用いて評価することができる。好ましい実施態様に
おいては、この方法を胎児診断または新生児診断に利用することができる。
【0048】 別の側面から見ると、本発明は、シンデカン4遺伝子内の遺伝子欠失を評価す
ること(例えば、診断するなど)に関し、それによって、被験対象が望ましくな
い、または異常なシンデスモス/シンデカン4相互作用によって特徴づけられる
疾患に対するリスクを負っている(例えば、疾患にかかっている、またはかかる
ことが予測されるなど)か否かを判断する。ひとつの実施態様においては、本方
法は、被験対象から採取した細胞サンプル内などにシンデカン4タンパク質をコ
ードしている遺伝子に影響を与えるような変化をもたらすことを特徴とする遺伝
子欠失の存否を評価すること、あるいは、シンデカン4遺伝子の誤発現を評価す
ることを含む。好ましい実施態様においては、本方法は、シンデカン4内のシン
デスモス結合領域をコードしているヌクレオチド配列に影響を与えるような遺伝
子欠失の存否を評価することを含む。遺伝子欠失は、シンデカン4のmRNA にハ
イブリダイズすることができる核酸プローブ(例えば、ラベルしたプローブなど
)をサンプルに接触させることなどによって評価することができる。発現は、シ
ンデカン4タンパク質に結合することができる抗体、例えば、シンデカン4内の
シンデスモス結合領域に結合する抗体(例えば、ラベルした抗体など)などを用
いて評価することができる。好ましい実施態様においては、この方法を胎児診断
または新生児診断にも利用することができる。
【0049】 さらに別の側面から見ると、本発明は、生物学的サンプル内のシンデスモス核
酸またはタンパク質の存在を検出する方法に関する。好ましい実施態様において
は、本方法は、シンデスモスタンパク質またはシンデスモス核酸を検出すること
ができる化合物または作用物質(例えば、mRNA など)を生物学的サンプル(例
えば、細胞サンプルなど)に接触させることを含み、そのことによって生物学的
サンプル内のシンデスモス核酸またはタンパク質の存在を検出する。そのような
化合物または作用物質としては、例えば、シンデスモスmRNA にハイブリダイズ
することができるラベルした、もしくはラベル可能な核酸プローブ、またはシン
デスモスタンパク質に結合することができるラベルした、もしくはラベル可能な
抗体などが挙げられる。さらに本発明は、シンデスモスタンパク質またはmRNA
を検出することに基づき、異常な細胞相互作用(例えば、細胞−細胞相互作用お
よび/または細胞−マトリックス相互作用の異常、細胞移動/運動の異常、例え
ば、癌など)が関与している疾患などに関して被験対象を診断する方法を提供す
る。ひとつの実施態様においては、本方法は、被験対象から採取した細胞サンプ
ルまたは組織サンプル(例えば、生検サンプルなど)にシンデスモスタンパク質
またはmRNA を検出することができる作用物質を接触させること、細胞サンプル
または組織サンプル内で発現したシンデスモスタンパク質またはmRNA の量を測
定すること、細胞サンプルまたは組織サンプル内で発現したシンデスモスタンパ
ク質またはmRNA の量を被験対象サンプル内のそれらと比較すること、ならびに
、細胞サンプルまたは組織サンプル内で発現したシンデスモスタンパク質または
mRNA の量を被験対象サンプル内のそれらと比較することに基づいて診断を下す
ことを含む。特異的診断試験については以下に詳細を記載する。生物学的サンプ
ル内のシンデスモス核酸またはタンパク質を検出するためのキットも本発明の範
囲内であり、以下に詳細を記載する。
【0050】 本発明をさらに別の側面から見ると、本発明は、例えば、シンデスモス核酸発
現および/またはタンパク質活性の異常によって特徴づけられる疾患(例えば、
所望しないまたは異常な細胞−細胞相互作用および/または細胞−マトリックス
相互作用、所望しないまたは異常な細胞移動/運動など)治療用の化合物を確認
するためのスクリーニングなどに関する。一般的には、これらの方法は、ある化
合物または作用物質がシンデスモス遺伝子の発現もしくはシンデスモスタンパク
質の活性を調節する能力をアッセイすることを含み、それによって、シンデスモ
ス核酸の発現および/もしくはタンパク質発現の異常によって特徴づけられる疾
患を治療するための化合物を確認することができる。好ましい実施態様において
は、本方法は、疾患を有する被験対象から採取した生物学的サンプル(例えば、
細胞サンプルまたは組織サンプルなど)を化合物または作用物質と接触させるこ
と、発現しているシンデスモスタンパク質量を測定すること、ならびに/または
、生物学的サンプル内のシンデスモスタンパク質活性を測定すること、生物学的
サンプル内に発現しているシンデスモスタンパク質の量および/もしくは細胞内
の測定可能なシンデスモスの生物学的活性を対照サンプルのそれらと比較するこ
とを含む。化合物または作用物質と接触させた細胞内のシンデスモスタンパク質
の発現量および/もしくはシンデスモス活性を対照と比較した場合における変化
は、シンデスモス発現および/もしくはシンデスモス活性の調節の指標となる。
【0051】 さらに本発明は、シンデスモスタンパク質と相互作用する化合物または作用物
質を同定する方法に関する。好ましい実施態様においては、シンデスモスタンパ
ク質との相互作用としては、結合、リン酸化、またそのほかに、相互作用して結
合(例えば、共有結合または非共有結合など)を形成もしくは解裂することが挙
げられる。そのような化合物としては例えば、シンデカン4のフラグメントもし
くはアナログ、シンデカン4以外のポリペプチド(例えば、無作為に作成され、
シンデスモスと相互作用するポリペプチドなど)もしくは低分子などが挙げられ
る。好ましい実施態様においては、本方法は、化合物または作用物質がシンデス
モスタンパク質に結合してコンプレックスを形成するような条件下において、シ
ンデスモスタンパク質を化合物と接触させる段階、ならびに、シンデスモスタン
パク質と化合物とのコンプレックス形成を検出する段階を含み、このとき、当該
化合物のシンデスモスタンパク質への結合能は、コンプレックス内に化合物が存
在していることによって示されるようになっている。化合物または作用物質を確
認する方法としては、例えば、無細胞アッセイなどがある。例えば、シンデスモ
スを適切な基質(例えば、グルタチオンセファロースビーズまたはグルタチオン
誘導体を固定したマイクロタイタープレートなど)に結合させることができる融
合タンパク質(例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ/シンデスモス融
合タンパク質など)を用い、シンデスモスを基質に固定することができる。
【0052】 別の実施態様においては、細胞に基づくアッセイを用い、シンデスモスタンパ
ク質と相互作用する化合物または作用物質を同定することができる。これらの方
法としては、シンデスモスの生物学的活性を調節する(例えば、阻害または促進
するなど)能力に基づいて化合物または作用物質を同定することが含まれる。好
ましい実施態様においては、そのような化合物は、以下に示すシンデスモスの生
物学的活性のうちのひとつまたはそれ以上を調節する。1)シンデカン4と直接
または間接的に相互作用する;2)細胞内シグナル伝達タンパク質と直接または
間接的に相互作用する(例えば、GTP結合タンパク質、フォーカルアドヒージョ
ンキナーゼ、セリン−トレオニンキナーゼなど);3)PKCαと直接または間接
的に相互作用する;4)細胞骨格構造を調節する、例えば、マトリックスレセプ
ター(例えば、シンデカン4など)と細胞骨格に関与する細胞内タンパク質(例
えば、アクチン、ビンキュリンなど)との相互作用を調節するなど;5)パキシ
リンと直接または間接的に相互作用する;6)アクチンストレスファイバーの形
成および/または構造を調節する;7)接着形成シグナル伝達経路において作動
する;8)細胞接着を調節する;9)細胞伸展を調節する。
【0053】 別の側面から見ると、本発明は、シンデスモス核酸の発現を調節する化合物を
同定する方法に関する。好ましい実施態様においては、核酸の発現は、シンデス
モス核酸分子(例えば、シンデスモスmRNA など)にハイブリダイズすることが
できる核酸プローブ(例えば、ラベルしたプローブなど)を用いて評価すること
ができる。別の好ましい実施態様においては、シンデスモス核酸の発現(例えば
、DNA 発現など)は、イン・ビボ(in vivo)またはイン・ビトロ(in vitro)
において、化合物をシンデスモス核酸分子(例えば、シンデスモス核酸分子のコ
ントロール領域など)と接触させ、シンデスモスの転写を測定することによって
評価することができる。シンデスモスの転写は、抗体など(例えば、ラベルした
抗体など)を用いてシンデスモスタンパク質の産生を検出すること、または、シ
ンデスモスのコントロール領域に融合したマーカー遺伝子など(例えば、lacZ
遺伝子など)を用い、マーカーの産生を追跡することによって細胞活性を測定す
ることにより、評価することができる。
【0054】 さらに本発明は、標的分子(例えば、接着レセプター(例えば、シンデカン4
など)など)、細胞骨格に関与しているタンパク質(例えば、アクチン、ビンキ
ュリン、パキシリンなど)、シグナル伝達経路に関与しているタンパク質(例え
ば、接着依存性シグナル伝達事象に関与するタンパク質(例えば、フォーカルア
ドヒージョンキナーゼ、セリン−トレオニンキナーゼ、PKC αなどのようなGTP
タンパク質)など)のシンデスモスとの相互作用を調節する(例えば、阻害また
は促進するなど)化合物または作用物質を同定する方法に関する。これらの方法
においては、化合物または作用物質の存在下、標的分子がシンデスモスタンパク
質と結合してコンプレックスを形成する条件下において、標的分子にシンデスモ
スタンパク質を接触させる。別の方法としては、化合物または作用物質の不在下
で形成したコンプレックスの量と比較した場合のシンデスモスタンパク質と標的
分子との間のコンプレックス形成の増減などが、その化合物または作用物質のシ
ンデスモスタンパク質と標的分子との相互作用調節能を示す。
【0055】 本明細書において使用している「異種(heterologous)プロモーター」とは、
ある遺伝子または精製核酸と天然において関連のないプロモーターをさす。
【0056】 本明細書において使用している「精製された」、または「実質的に純粋な」、
または単離「調製された」ポリペプチドとは、天然に存在する他のタンパク質、
脂質および核酸から分離されたポリペプチドをさす。好ましくは、該ポリペプチ
ドは、精製の際に使用した抗体またはゲルマトリックス(例えば、ポリアクリル
アミドなど)などの物質から分離したものである。好ましくは、該ポリペプチド
は、精製調製物中に乾燥重量%として少なくとも10%、20%、50%、70%、80%
または95%以上含まれている。好ましくは、この調製物は、タンパク質のシーク
エンス(配列解析)を実施するのに十分な量のポリペプチドを含んでおり、その
量は少なくとも1mg、10mgまたは100mgである。
【0057】 本明細書において使用している「精製された細胞調製物」とは、植物細胞また
は動物細胞の場合には、イン・ビトロ(in vitro)において調製した細胞をさし
、完全に天然のままの植物または動物をさすものではない。培養細胞または微生
物細胞の場合には、被験対象の細胞を少なくとも10%、より好ましくは50%含有
する調製物である。
【0058】 本明細書において使用している「処置」とは、任意の治療的処置、例えば、治
療剤または治療物質(例えば、薬剤など)を投与することなどを含む。
【0059】 本明細書において使用している「被験対象(subject)」とは、ヒトおよび非
ヒト動物をさす。好ましい実施態様においては、被験対象は、シンデスモスが関
与している疾患に罹患するリスクを有すると診断された個人などのようなヒトで
ある。本発明において使用している「非ヒト動物」とは、すべての脊椎動物、例
えば、哺乳類および哺乳類以外、具体的には、非ヒト霊長類、反芻動物、鳥類、
両生類、爬虫類などが挙げられる。
【0060】 「単離された核酸」または「純粋な核酸」(例えば、実質的に純粋なDNA など
)とは、以下のような核酸のうちのひとつまたは両者をさす。核酸の起源となっ
ている生物内において天然に存在するゲノムのうち、直接隣接している(すなわ
ち、一方が5’末端であり、もう一方が3’末端である)配列(例えば、コード
配列など)のうちの直接連続していない一方もしくは両方、または、核酸の起源
となっている生物内に存在している実質的に遊離の核酸配列。このような核酸の
例としては、ベクター(例えば、自立的複製性のプラスミドまたはウイルス)、
または、原核細胞もしくは真核細胞のゲノムDNA に組み込まれた組換えDNA 、あ
るいは、他のDNA 配列とは独立した別個の分子として存在する組換えDNA (例え
ば、PCRまたは制限エンドヌクレオチドアーゼ処理によって産生されるcDNA また
はゲノム性DNA フラグメントなど)などが挙げられる。実質的に純粋なDNA とし
ては、ハイブリッド遺伝子をコードしている配列の一部である組換えDNA も含ま
れる。
【0061】 本明細書において使用している「配列の同一性または相同性」とは、2つのポ
リペプチド分子間または2つの核酸分子間の配列の類似性をさす。2つのアミノ
酸配列(例えば、配列番号2など)または2つの核酸の相同性%を決定するには
、最適比較が行えるように配列を並べる(例えば、一方のタンパク質または核酸
と最適な並列ができるように、他方のタンパク質または核酸にギャップを導入す
ることができる)。アミノ酸残基またはヌクレオチドを対応する位置のアミノ酸
またはヌクレオチドと比較する。ひとつの配列(例えば、配列番号2など)のあ
る位置に存在するアミノ酸またはヌクレオチドが、他方の配列の対応する位置に
存在するそれらと同一である場合に、これらの分子はその位置において相同であ
るという(すなわち、本明細書において使用しているアミノ酸または核酸の「相
同性」とは、アミノ酸または核酸の「同一性」と同義である)。2つの配列間の
相同性%は、配列に占める同一位置数の関数として表される(すなわち、相同性
%=(同一位置数/総位置数)×100)。例えば、2つの配列内の10位置中6位
置が一致または相同である場合には、2つの配列は60%相同である、または60%
の配列同一性を有するという。例を挙げると、DNA 配列ATTGCC とTATGGC とは、
50%の相同性または配列同一性を有する。一般的には、2つの配列を並べて最大
限の相同性または配列同一性が得られるようにして比較を行う。
【0062】 2つの配列間の配列比較および相同性%の決定は数学的アルゴリズムを用いて
行うことができる。好ましくは、配列の比較に使用する数学的アルゴリズムとし
ては、カーリン(Karlin)およびアルツシュル(Altschul)によって変形された
(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877, 1993)、カーリン(Karlin)お
よびアルツシュル(Altschul)のアルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8
7: 2264-2268, 1990)が挙げられるが、これに限定されるわけではない。そのよ
うなアルゴリズムはアルツシュル(Altschul)らのNBLAST およびXBLAST プログ
ラム(バージョン2.0)に組み込まれている(J. Mol. Biol. 215:403-410, 199
0)。BLAST ヌクレオチド検索は、スコア=100、語数=12の条件でNBLAST プロ
グラムを用いて行い、本発明のシンデスモス核酸分子と相同なヌクレオチド配列
を得ることができる。BLAST タンパク質検索は、スコア=50、語数=3の条件で
XBLAST プログラムを用いて行い、本発明のシンデスモスタンパク質分子と相同
なアミノ酸配列を得ることができる。比較のためにギャップを有する並びを検索
することができる。ギャップを有するBLAST は、アルツシュル(Altschul)らの
記載(Nucleic. Acids Res. 25(17): 3389-3402, 1997)に従って使用すること
ができる。BLAST プログラムおよびギャップを有するBLAST プログラムを使用す
る場合には代表的な各プログラム(例えば、XBLAST およびNBLAST など)の欠如
パラメーター(default parameters)を用いることができる。http://www.ncbi.
nlm.nih.gov.を参照のこと。配列の比較に用いることができる数学的アルゴリズ
ムのその他の好ましい例としては、マイヤース(Myers)およびミラー(Miller
)のアルゴリズムであるCABIOS (1989年)が挙げられる。そのようなアルゴリ
ズムはALIGN プログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、これは、GCG配
列ならびソフトウェアパッケージ(GCG sequence alinment software package)
の中の一部である。アミノ酸配列の比較を目的としてALIGN プログラムを用いる
場合には、PAM120 分子量残余表(PAM120 weight residue table)、ギャップ長
ペナルティー=12、ギャップペナルティー=4を使用することができる。
【0063】 本明細書においては、「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」
という語は、相互に入れ替えて読むことができるものとして使用している。
【0064】 「シンデスモスの生物学的活性」とは、次の活性のうちのひとつまたはそれ以
上をさす。1)シンデカン4と直接または間接的に相互作用する;2)細胞内シ
グナル伝達タンパク質と直接または間接的に相互作用する(例えば、GTP結合タ
ンパク質、フォーカルアドヒージョンキナーゼ、セリン−トレオニンキナーゼな
ど);3)PKCαと直接または間接的に相互作用する;4)細胞骨格構造を調節
する、例えば、マトリックスレセプター(例えば、シンデカン4など)と細胞骨
格に関与する細胞内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリンなど)との相
互作用を調節するなど;5)パキシリンと直接または間接的に相互作用する;6
)アクチンストレスファイバーの形成および/または構造を調節する;7)接着
形成シグナル伝達経路において作動する;8)細胞接着を調節する;9)細胞伸
展を調節する。
【0065】 本明細書において使用している「低分子量物質」とは、ペプチド、ペプチドミ
メチックまたは非ペプチド化合物(分子量が2000以下、好ましくは1000以下であ
る有機分子など)をさす。
【0066】 本明細書において使用している「導入遺伝子(トランスジーン)」とは、導入
されるトランスジェニック動物または細胞とは部分的または全体的に異種である
(すなわち、外来性である)、あるいは、導入されるトランスジェニック動物ま
たは細胞の内在性遺伝子と相同ではあるが、挿入される細胞のゲノムを改変する
ことを意図して動物のゲノム内へ挿入しよううとしている、もしくは挿入される
(例えば、生来の遺伝子とは異なる位置に挿入する、または挿入によってノック
アウト状態になるなど)核酸配列(例えば、被験対象とするシンデスモスポリペ
プチドをひとつまたはそれ以上コードしている核酸配列など)をさす。導入遺伝
子は、ひとつまたはそれ以上の転写制御配列、および選択された核酸の至適発現
に必要と考えられるイントロンなどの他の任意の核酸を含む場合があり、それら
はすべて機能発揮できるように特定の核酸に結合しており、エンハンサー配列を
含むこともある。
【0067】 本明細書において使用している「トランスジェニック細胞」とは、導入遺伝子
を含む細胞をさす。
【0068】 本明細書において使用している「トランスジェニック動物」とは、動物の細胞
のうちのひとつまたはそれ以上、好ましくは基本的にすべての細胞が導入遺伝子
を有する任意の動物をさす。導入遺伝子は、計画的な遺伝子操作法(例えば、マ
イクロインジェクションまたは組換えウイルスを用いた感染など)により、細胞
前駆体に直接的または間接的に導入を行うことにより、細胞内に導入することが
できる。このような分子は染色体内に組み込まれるか、または染色体外でDNA を
複製する。
【0069】 本明細書において使用している「組織特異的プロモーター」とは、プロモータ
ーとして作用し(すなわち、機能発揮できるようにプロモーターに結合している
特定のDNA 配列の発現を制御する)、かつ、組織(例えば、哺乳類の組織など)
の特異的細胞内において特定のDNA の発現を行うDNA 配列をさす。この語句は、
あるひとつの組織内では、特定のDNA の発現を基本的に制御するが、他の組織に
おいても発現を起こす、いわゆる「リーキー(leaky)」プロモーターをも含む
ものである。
【0070】 「シンデスモスアミノ酸配列または核酸配列と無関係」とは、本明細書におい
て開示している天然に存在するシンデスモス配列との同一性が30%以下、20%以
下、好ましくは10%以下であることを意味する。
【0071】 あるポリペプチドが、本明細書において開示しているシンデスモスの特性をひ
とつまたはそれ以上有する場合には、そのポリペプチドはシンデスモスの生物学
的活性を有する。あるポリペプチドが、本明細書において開示しているシンデス
モスの特性をひとつまたはそれ以上有するポリペプチドのアンタゴニスト、アゴ
ニストまたはスーパーアゴニストである場合には、そのポリペプチドは生物学的
活性を有する。
【0072】 本明細書において使用している「誤発現(misexpression)」とは、RNA また
はタンパク質レベルにおいて遺伝子の発現が非野生型パターンであることをさす
。これらとしては以下のようなものが挙げられる。非野生型レベルでの発現(す
なわち、過剰または少量発現);遺伝子が発現する時間および段階に関して野生
型とは異なる発現パターン(例えば、所定の発達期間または発達段階において、
野生型と比較した場合に発現が増加または減少しているなど);所定の細胞型ま
たは組織型において、野生型と比較した場合に発現が減少しているという点にお
いて、野生型とは異なる発現パターン;発現されたポリペプチドのスプライシン
グの大きさ、アミノ酸配列、転写後修飾または生物学的活性という点に関して野
生型とは異なる発現パターン;遺伝子の発現に与える環境刺激または細胞外刺激
の影響という点に関して野生型とは異なる発現パターン(例えば、刺激の強度が
増強または減弱する場合に、野生型と比較して発現が増加または減少しているな
ど)。本明細書において記載しているように、本発明は、ひとつの側面として、
シンデスモスポリペプチドおよび/またはそのような核酸と同等のもの(均等物
)をコードしているヌクレオチド配列を含む実質的に純粋な(または組換え)核
酸に関する。本明細書において使用している核酸には、フラグメントおよび同等
のものを含む。同等のものとは、機能的に同等のポリペプチドをコードしている
ヌクレオチド配列をさす。同等なヌクレオチド配列としては、ひとつまたはそれ
以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失が生じることにより異っている配列
(対立遺伝子変異など)、ならびに遺伝子コードの縮重によって本明細書に開示
しているヌクレオチド配列とは異なっているヌクレオチド配列が挙げられる。
【0073】 本明細書において使用している「ストリンジェント条件下においてハイブリダ
イズする」とは、ヌクレオチド配列が相互にハイブリダイズした状態でハイブリ
ダイゼーションおよび洗浄を行うための条件をさす。好ましくは、配列相互の同
一性が少なくとも約60%、少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約70%
、さらに好ましくは少なくとも約75%以上であるような条件の場合に配列が相互
にハイブリダイズする。そのようなストリンジェント条件は当業者においては既
知であり、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Mol
ecular Biology)」(ジョン・ウィレー&サンズ(John Wiley & Sons)社、ニ
ューヨーク、1989年刊、6.3.1〜6.3.6)に記載されている。ストリン
ジェントハイブリダイゼーションの条件として好ましい例は、45℃において6×
塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイズし、次に、50
〜65℃において0.2×SSCおよび0.1%のSDS で1回以上洗浄するというものであ
る。好ましくは、ストリンジェント条件下において配列番号1の配列にハイブリ
ダイズする本発明の単離された核酸分子は、天然に存在する核酸分子に相応する
。本明細書において使用している「天然に存在する」核酸分子とは、天然に存在
する(例えば、天然のタンパク質をコードしているなど)ヌクレオチド配列を有
するRNA 分子またはDNA 分子をさす。ひとつの実施態様においては、核酸は天然
のシンデスモスタンパク質をコードしているものである。
【0074】 特に記載していない限り、本発明の実施においては、細胞生物学、細胞培養、
分子生物学、導入遺伝子生物学、微生物学、組換えDNA および免疫学に関する従
来から用いられている技術を利用しており、これらは当業者においては既知であ
る。そのような技術については文献に記載されている。例えば、以下を参照のこ
と。「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laborator
y Manual)」第2版、サンブルック(Sambrook)編、フリッシュ(Fritsch)お
よびマニアティス(Maniatis)(コールドスプリングハーバー・ラボラトリープ
レス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年;「DNA クローニング
(DNA Cloning)」第1巻および第2巻、D. N. グローヴァー(Glover)編、198
5年;「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」、M. J. ガイ
ト(Gait)編、1984年;ムリス(Mullis)ら、米国特許第4,683,195号;「核酸
ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」、B. D. ハメス(Ha
mes)およびJ. ヒギンズ(Higgins)編、1984年;「転写および翻訳(Transcrip
tion And Translation)」、B. D. ハメス(Hames)およびJ. ヒギンズ(Higgin
s)編、1984年;「動物細胞の培養(Culture of Animal Cells)」、R. I. フレ
ッシュニー(Freshney)(アラン・R.リス(Alan R. Liss)社)、1987年;「
不動化細胞および酵素(Immobilized Cells and Enzymes)」(IRL プレス(IRL
Press))、1986年;「分子クローニングの実践的指針(A Practical Guide To
Molecular Cloning)」、B. パーバル(Perbal)、1984年;論文「酵素学にお
ける手法(Methods In Enzymology)」(アカデミック・プレス(Academic Pres
s)社、ニューヨーク);「哺乳類細胞用の遺伝子導入ベクター(Gene Transfer
Vectors For Mammalian Cells)」、J. H. ミラー(Miller)およびM. P. カロ
ス(Calos)編(コールドスプリングハーバー・ラボラトリープレス(Cold Spri
ng Harbor Laboratory Press)、1987年;「酵素学における手法(Methods In E
nzymology)」第154巻および第155巻、ウー(Wu)ら編;「細胞生物学および分
子生物学における免疫化学的手法(Immunochemical Methods In Cell And Molec
ular Biology)」、メイヤー(Mayer)およびウォーカー(Walker)編(アカデ
ミック・プレス(Academic Press)社、ロンドン)、1987年;「実験免疫学ハン
ドブック(Handbook Of Experimental Immunology)」第1巻〜第4巻、D. M.
ウェイア(Weir)およびC. C. ブラックウェル(Blackwell)編、1986年;「マ
ウス胚の操作(Manipulating the Mouse Embryo)」(コールドスプリングハー
バー・ラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニュー
ヨーク)、1986年。
【0075】 本発明のその他の特徴および利点については、請求項および以下の詳細な記載
から明らかである。
【0076】 発明の詳細な説明 本発明は、細胞マトリックス相互作用において作動し、本明細書においてシン
デスモス(syndesmos)核酸およびシンデスモスタンパク質分子と称する新規な
分子の発見に基づく。ひとつの実施態様においては、シンデスモス分子は細胞骨
格構造に関与するタンパク質を調節する。好ましい実施態様においては、本発明
のシンデスモス分子は、マトリックスレセプターであるシンデカン4と細胞骨格
に関与している細胞内タンパク質(例えば、アクチン、ビンキュリンおよび/ま
たはパキシリンなど)との相互作用を調節することができる。
【0077】 シンデスモスは、シンデカン4の細胞質ドメインと相互作用する物質として見
出された。シンデカン4の細胞質ドメインへのシンデスモスの結合は直接的およ
び特異的であり、このドメイン内の高度に保存された膜近位領域および可変性中
央領域の両者に関与している。保存性膜近位ドメイン単独でもシンデカン4のシ
ンデスモスとの相互作用を媒介することができるが、可変性中央ドメインは相互
作用に特異性を付与しているものと考えられる。このような特異性に対する媒介
物質として中央ドメインが関与していることは、3つの知見から示唆される。第
一は、シンデカン1、2または3の細胞質ドメインがシンデカン4の細胞質ドメ
インと同一の保存性膜近位配列およびC末端配列を含んでいるにも関わらず、シ
ンデスモスがシンデカン1、2または3のいずれの細胞質ドメインとも結合しな
いことである。第二は、細胞質ドメイン全体との結合に比べて、膜近位ドメイン
単独では結合が弱いことである。最後に、可変性中央ドメインの内部が削除され
ると結合が消失することである。
【0078】 本発明のシンデスモスタンパク質またはシンデスモスポリペプチドは、細胞骨
格に関与しているアクチンなどのタンパク質と相互作用することもできる。好ま
しくは、シンデスモスタンパク質またはシンデスモスポリペプチドは、接着依存
性シグナル伝達経路を介して細胞骨格のタンパク質と相互作用する。シンデスモ
スの過剰発現が細胞の形態に与える影響は、細胞接着および伸展の初期段階にお
いて顕著であることが見出されている。さらに、血清不在下においては、細胞は
表現型をさらに増加させた。これらの知見から、シンデスモスによる細胞形態の
調節は血清とは無関係であり、接着依存性シグナルを必要とすることが示唆され
た。シンデスモスがアクチンストレスファイバーの形成および構造を調節する能
力は、下流の血清依存性経路に対応する機能であることを示唆している。シンデ
スモスがフォーカルコンタクトに局在しており、アクチン繊維と並び、そして基
底分布していることから、細胞外マトリックスレセプターと細胞骨格との架橋分
子として作用している可能性が示唆された。かくして、ひとつの側面から見ると
、本発明は、シンデスモス4に結合し、ならびに/または、アドヒージョンレセ
プター、シンデスモス4と細胞骨格に関与するタンパク質との相互作用を媒介す
るシンデスモスタンパク質およびポリペプチドに関する。
【0079】 シンデスモスのcDNA の単離およびクローニング シンデカン4の細胞質ドメインと相互作用すると考えられるタンパク質を同定
し、分析することを目的として、シンデカン4の細胞質ドメインを誘引部(bait
)として用いた酵母相互作用捕獲システム(yeast interactive trap system)
を行った。フィンレー(Finley)およびブレント(Brent)(1994年)、ならび
にゼルヴォス(Zervos)ら(1993年) Cell, 72:223-232 を参照のこと。宿主
としては酵母の菌株EGY48 MATa trpl ura3 LEU2:pLexAop6-LEU2 を用いた。β
−D−ガラクトシド(X-gal)アッセイにはレポータープラスミドpSH18-34を用
いた。誘引部プラスミドは、鳥類のシンデカン4の細胞質ドメインのアミノ酸番
号169番〜197番までをコードしているヌクレオチド配列をフレームとし、これに
LexA DNA 結合ドメインのヌクレオチド配列およびpLexA-202+PL2(LexA-CS4C)
中のC末端のダイマー化ドメインを融合させることによって構築した。スクリー
ニングの標的としたライブラリーは、プラスミドpJG4-5内で作出した4日目のニ
ワトリ胚肢芽のcDNA ライブラリーでる。スクリーニングの対照誘引部としてはL
exA-n-myc 、LexA-R4CK230R 、LexA-Cyclin C (ゼルヴォス(Zervos)ら(1993
年)およびワン(Wang)ら、(1994年))を用いた。プラスミドpSH18-34および
LexA-CS4C をEGY48 に導入し、URA3 およびHIS3 をマーカーとする選択条件下で
維持した。この株を4日目のニワトリ胚肢芽のcDNA ライブラリーにトランスフ
ェクトした。Ura-His-Trp-グルコースプレート上で選択を行ったところ、0.5×1
06 個のユニーク酵母クローンが確立され、これを掻き取って集め、−70℃で保
存した。増幅を行った酵母ストック由来の約5×106 個のクローンについて、Ur
a-His-Trp-Leu ガラクトースプレート上で相互作用物質としての可能性を有する
ものをスクリーニングした。次に、陽性コロニーをUra-His-Trp-X-gal ガラクト
ースプレート上およびUra-His-Trp-X-gal グルコースプレート上に線条塗布した
。Ura-His-Trp-Leu ガラクトースプレート上で増殖し、Ura-His-Trp-X-gal グル
コースプレート上で青色コロニーを形成したコロニーのみを単離し、KC8細胞に
導入した。単離したcDNA について、制限酵素分析および配列解析によって分析
を行い、上述の対照誘引部に対する相互作用の特異性試験を行った。
【0080】 酵母を用いたツーハイブリッドスクリーニングにおいてシンデカン4の細胞質
ドメインと特異的に相互作用するクローンの配列解析を行うことにより、MEK-1
に対して限定的な配列相同性を有するひとつのポリペプチド配列をコードしてい
る新規な部分cDNA を確認した。部分cDNA を用いてLMH (バシュー(Baciu)ら
、J. Biol. Chem. 269:696-703(1994))および鳥類胚性cDNA ライブラリー(ク
ロンテック(Clontech)社、カリフォルニア州パロアルト)をスクリーニングす
ることにより、数個のクローンの全長を単離し、配列解析を行うことができた。
すべてのクローンが4個のメチオニン残基から構成されているクラスターから開
始する共通の大きなオープンリーディングフレームを有していた。確認された全
長クローンのC末端領域内に存在するコードされたポリペプチド配列は、ツーハ
イブリッドスクリーニングによって単離された上記の部分cDNA のそれと一致し
た。確認された全長cDNA はシンデスモスであり、イン・ビトロ(in vitro)結
合アッセイ(以下を参照)においてコードされたシンデスモスタンパク質を使用
することにより、相互作用が確認された。シンデスモスのヌクレオチド配列およ
びアミノ酸配列は配列番号1および配列番号2にそれぞれ示しており、さらに図
1にも示している。
【0081】 シンデスモスの配列をジェンバンク(Genbank)データベースと比較すること
により、シンデスモスが新規なタンパク質であることが確認でき、また、予想さ
れるポリペプチド配列については、該データベース内に存在するポリペプチド配
列と相同性を有する大きな領域は確認できなかった。しかしながら、モチーフ調
査により、タンパク質内のいくつかのサブドメインは既知のタンパク質モチーフ
と相同性を示すことが明らかになった。以下に示すように、第二および第三のメ
チオニンに続く残基はミリスチル化( myristylation)モチーフに合致するグ
リシン残基であった(タワー(Tower), J. Biol. Chem. 262:1030-1036(1987)
)。N末端ドメイン内のPPLP配列(アミノ酸番号24〜27)は、SH3結合部位モ
チーフに対する要求性を満たしていた(フェン(Feng)ら、Science 266:1241-
1247(1994))。シンデスモスアミノ酸の中央部分であるアミノ酸番号190〜199番
は、MEK-1 の活性化ループ(ハーディック(Hardic)およびハンクス(Hanks)
、「タンパク質キナーゼについて(The Protein kinase facts book)」、アカ
デミック・プレス(Academic Press)社)と一部ではあるが相同性を示した。さ
らに、アミノ酸DHG(アミノ酸番号162〜164)およびPE(アミノ酸番号212
〜213)に対応する位置に関して相同性が確認されており、DFGはMEK-1のサブ
ドメインVII内において、PEはMEK-1のサブドメインVIII内において確認された
。そのほかには、MEK およびその他の真核性キナーゼ類に対する相同性は見出さ
れなかった。
【0082】 イン・ビトロ(in vitro)における転写−翻訳アッセイ イン・ビトロ(in vitro)における転写−翻訳は、ヴィトロジェン(Vitrogen
)社(カリフォルニア州サンディエゴ)から市販されているTNT イン・ビトロ(
in vitro)転写−翻訳キットを用いて行った。反応はメーカーの指示に従って行
った。初期分析には、シンデスモスのcDNA をpcDNA (ヴィトロジェン(Vitroge
n)社)にサブクローニングし、RNA 合成にはT7プロモーターを用いた。対照反
応は、未挿入のベクターの存在下および不在下において行った。生成物の特異性
は、イン・ビトロ(in vitro)転写−翻訳生成物についてウェスタン分析を行う
ことによって確認した。メチオニン開始部位に関する分析用には、T7プロモータ
ー配列およびヌクレオチド番号1〜30番を含む5’プライマーを用いてそれぞれ
のPCR産物を産生した。個々の開始部位のメチオニンを調べることを目的として
、個々のメチオニン残基に対応するヌクレオチドをGTGに突然変異させた。3
’プライマーはNT1079〜1099番に対応していた。PCR産物は、エクステンドPCR
ポリメラーゼミックス(Extend PCR Polymerase mix)(ベーリンガー(Boehrin
ger)社、マンハイム)を用いて産生した。得られたPCR産物を精製し、イン・ビ
トロ(in vitro)転写−翻訳アッセイに使用した。対照反応はPCR産物を用いず
に、またはNT3’から開始コドンに至る部分(NT31〜51番)に対応するプラ
イマーに連結したT7プロモーターを用いて産生したPCR産物を用いて行った。
【0083】 pcDNA 3.0(LMH4A)にサブクローニングした全長クローンを用いておこなった
イン・ビトロ(in vitro)転写−翻訳アッセイから、主要翻訳生成物として40 k
Da のバンドを確認した。5’ヌクレオチドの−12〜+30番までの部分の欠失が
、配列番号1の開始部位であるヌクレオチド番号1〜30によってコードされてい
るメチオニン残基のクラスターが関与しているすべてのタンパク質合成を阻止し
た。イン・ビトロ(in vitro)転写−翻訳実験によって得られた40 kDa のポリ
ペプチドは、抗シンデスモスポリクローナル抗体によって認識され、かつ、鳥類
の胚性組織由来の組織抽出物中において確認されたバンドと分子量が一致した。
【0084】 ヌクレオチド番号1〜30によってコードされており、開始部位と考えられる4
つの部位からなるクラスターに使用されている開始メチオニンを確認することを
目的として、選択操作における突然変異およびイン・ビトロ(in vitro)転写−
翻訳アッセイを行った。突然変異は、開始コドンと考えられる4つのコドンのう
ちのひとつのみを残してあとの3つに対して行った、または個々の開始コドンを
除去することによって行ったが、これらのことから、4個のメチオニン残基のい
ずれからも翻訳を開始できることが明らかになった。第二および第三の開始コド
ンと考えられるコドンによってコードされているメチオニン残基にはグリシン残
基が結合しており、この残基がシンデスモスのミリスチル化の際に必要な構造を
供している(タウラー(Towler)ら、J. Biol. Chem. 262:1030-1036(1987))
。シンデスモスのミリスチル化を確認することにより、イン・ビボ(in vivo)
における開始は、第二または第三のメチオニン残基から進行することが示唆され
た(以下を参照)。しかしながら、第三開始部位と比較すると、第二開始部位は
コザック(Kozak)コンセンサス配列(GCCGCC(A/G)CCAUGG:
配列番号7)(コザック(Kozak)、Nucl. Acid Res. 26:8125-8248(1987))に
対して高い相同性を示すことから、イン・ビボ(in vivo)においては第二のメ
チオニンから開始する傾向があることが示唆された。
【0085】 シンデスモス発現の分析 ウェスタン分析:8日目のニワトリ胚を4×SDS-PAGE サンプル緩衝液に可溶
化し(緩衝液50μlあたりに湿組織20mgを加えた)、煮沸後凍結した。使用前に
溶解し、21ゲージのニードルを用いてホモジナイズした。5μlのサンプルを10
%のSDS-PAGE ゲルに添加し、電気泳動を行った後、イモビロン−Pメンブレン
(Immobilon-P membrane)上にブロットした。アフィニティ精製した抗シンデス
モスポリクローナル抗体を用い(免疫化学の項を参照)、次に抗ウサギHRPコン
ジュゲート二次抗体(バイオラド(Biorad)社、カリフォルニア州ハーキュレス
)およびECL 基質(NEN ライフサイエンスプロダクツ(NEN Life Science Produ
cts)社、マサチューセッツ州ボストン)を加えることにより、タンパク質を可
視化した。
【0086】 抗シンデスモスポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロット分析により、
8日目のニワトリ胚の脳、目、砂嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、脛骨および皮膚に
おいて単一の40 kDa のポリペプチドが検出された。
【0087】 ノーザン分析:サンブルック(Sambrook)らの記載(「分子クローニング:実
験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」(コールドスプ
リングハーバー・ラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press
)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989年))に従い、イソチオ
シアナート法を用いてニワトリ胚性組織からRNAを単離した。各組織から総RNA量
として10μgのサンプルを採取し、1.5%のアガロースホルムアミドゲルに添加し
て分離後、イモビロン−Nメンブレン(Immobilon-N membrane)(ミリポア(Mil
lipore)社、マサチューセッツ州ベッドフォード)上にブロットした。得られた
ブロットは、6×SSC 、0.5%のSDSを含む5×デンハート(Denhardt)溶液およ
び100μg/mlの剪断サケ精子DNA 中、62℃、4時間かけてブロックした。ランダ
ムプライマーおよびクレノー(Klenow)フラグメント(ファルマシア(Pharmaci
a)社、スウェーデン、ウプサラ)を用い、クローンLMH4A 由来の精製インサー
ト(50 ng)をdCTP-[ 32P ] でランダムにラベルした。最終的に10mlあたり約10 6 dpm/ml を用い,ブロットしたmRNA を調べた。ハイブリダイゼーション後、メ
ーカーの指示に従ってストリンジェンシーの高い条件で膜を洗浄し、X-Omat フ
ィルム(コダック(Kodak)社、ニューヨーク州ロチェスター)に露出した。ラ
イフテクノロジーズ(Life Technologies)社(メリーランド州ゲイザースバー
グ)から市販されているRNA 標準を用いて分子量を決定した。
【0088】 ノーザン分析から、分子量2.1 kb、1.7 kb および1.5 kb の3つのmRNA の存
在が示唆された。分子量が小さい転写体は、配列解析によってオルタネートポリ
-A 付加部位に対応していることが確認された。10日目の胚性組織中の大動脈、
心臓、脳、砂嚢、腎臓、肝臓、前胃および皮膚、ならびに15日目の胚中の腸およ
び筋肉において、3種のmRNAはすべて検出された。
【0089】 ミリスチル化アッセイ 10%の透析FBSを添加したDMEM(5ml)中、1mCi の[ 9,10(n)-3H ]ミリスチン酸
(アマシャム(Amersham)社)を用い、24時間かけてCEF (70%融合性)をラベ
ルした。細胞をRIPA 緩衝液に溶解し、ウサギ前免疫血清、ウサギ抗シンデスモ
ス抗体、またはミリスチル化の陽性対照としてマウスモノクローナル抗src 抗体
(アップステートバイオテクノロジー(Upstate Biotechnology)社)を用いて
タンパク質を免疫沈降させた。免疫沈降後、タンパク質を12%のSDS-PAGE ゲル
上で泳動させ、イモビロン−Pメンブレン(Immobilon-P membrane)上に移し、
マンビー(Mumby)およびバス(Buss)の記載(Methods:A Companion to Metho
ds in Enzymology 1:216-220(1990))に従って、21日間オートラジオグラフィ
ーを行うことにより、放射活性タンパク質を調べた。
【0090】 開始部位と考えられている4つの部位のクラスター内の第二および第三のメチ
オニン残基の後ろにはグリシン残基が結合している。翻訳がこれらのメチオニン
残基から開始される場合、該残基に結合しているグリシン残基はミリスチル化す
ることができるはずである。CEF 培養中において、シンデスモスの直接ミリスチ
ル化試験を行った。3H−ミリスチン酸を用い、イン・ビボ(in vivo)において
ほぼ融合性のCEF をラベルし、細胞抽出物を調製し、さらに、抗シンデスモス抗
体を用いて免疫沈降を行った。得られた免疫沈降物をSDS-PAGE ゲル上で電気泳
動させ、イモビロン−Pメンブレン(Immobilon-P membrane)上に移し、オート
ラジオグラフィーを行うことによって3H−ラベルしたシンデスモスを調べた。
抗src 抗体を用いて同じ抽出物から既知のミリスチル化タンパク質であるsrc を
免疫沈降させ、陽性対照として、シンデスモスと同様の方法に従って分析を行っ
た。オートラジオグラフィー後、シンデスモス免疫沈降物中には、シンデスモス
と考えられる推定分子量40 kDa の単一のバンドが検出された。src 免疫沈降物
中にも単一のバンドが検出されたが、このタンパク質の推定分子量は60 kDa で
あった。
【0091】 イン・ビボ(in vivo)におけるシンデスモスとシンデカン4との結合性を調
べることを目的として、アフィニティー精製した抗シンデカン4(CS4E)、抗シ
ンデスモスポリクローナル抗体または事前免疫IgG をもちいて免疫沈降アッセイ
も行った。ニワトリ胚繊維芽細胞由来の総タンパク質溶解物を等量用い、それぞ
れ指示された抗体を添加して免疫沈降を行った。免疫沈降物は10%の還元SDS-PA
GE ゲル上で分離させ、アフィニティー精製した抗シンデスモスポリクローナル
抗体を用いてウェスタンブロットを行った。全細胞溶解物、抗シンデスモスおよ
び抗シンデカン4による免疫沈降物中には40 kDa の反応性バンドが存在してい
たが、事前免疫IgG による免疫沈降物中には存在していなかったことから、イン
・ビボ(in vivo)におけるシンデスモスとシンデカン4との結合性が示唆され
た。
【0092】 これらの結果から、シンデスモスをミリスチル化できることが示唆された。シ
ンデスモスの全体または一部分のみをミリスチル化することができると考えられ
る。シンデスモスがミリスチル化できることから、シンデスモスがプラズマ膜に
局在していることが示唆され、このことは、シンデスモスが基底膜内に局在して
いたことと一致している。タンパク質が膜に安定的に結合するためには、両側に
塩基性アミノ酸が存在するミリスチル化−パルミチル化の組み合わせを含む2つ
の結合点を有するのが一般的である(レッシュ(Resh)、Cell 76:411-413(199
4))。塩基性アミノ酸の膜との結合は、酸性の膜リン脂質との相互作用によるも
のである。膜のリン脂質と相互作用することができ、ミリスチル化が可能なグリ
シン残基は、シンデスモス内に2個存在するが、これらにはいずれも塩基性アミ
ノ酸が結合していない。シンデスモスはシンデカン4の細胞質ドメインと相互作
用することから、シンデスモスが膜結合するための第二の結合点はシンデカン4
であると考えられる。
【0093】 バクテリアの発現 シンデカン4またはシンデスモスの完全型もしくは多様な突然変異型をコード
しているcDNA をグルタチオントランスフェラーゼ(発現ベクターとしてPGEX 5X
-2 (ファルマシア(Pharmacia)社、スウェーデン、ウプサラ)を使用)、また
はマルトース結合タンパク質(発現ベクターとしてpMAL-C2 (NE バイオラブズ
(NE Biolabs)社、マサチューセッツ州ビバリー)を使用)のフレーム内でクロ
ーニングした。融合したプラスミドは、はじめにSure 細胞(ストラタジーン(S
tratagene)社、カリフォルニア州ラホーヤ)にトランスフェクトし、クローン
は配列解析によって確認し、SDS-PAGE によって発現の分析を行った。タンパク
質発現を行わせることを目的として、増殖のためにSure 細胞にトランスフェク
トしたcDNA をBL-21 細胞(ノヴァジェン(Novagen)社、ウィスコンシン州マデ
ィソン)にトランスフェクトした。タンパク質の発現は、高増殖培地中において
トランスフェクトした細胞がOD 600 =0.6 に至るまで増殖し、その後、1mM のI
PTG (シグマ(Sigma)社、ミズーリ州セントルイス)を用いて1〜2時間の誘
導期間をとることによって達成された。インキュベーション期間終了後、細胞を
遠心分離して集め、pH7.5の溶解緩衝液(15 mM のリン酸ナトリウム、30 mM のN
aCl 、0.25%のツイーン20(Tween 20)、10 mM のEDTA 、10 mM のEGTA 、2μ
g/mlのリソザイムおよびプロテアーゼ阻害剤のカクテル(コンプリートTM(Com
plete TM)、ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)社)に再懸濁
した。マイクロチップを使用し、50%持続で設定を5にし、氷上で1分間超音波
をあてることによって細胞を溶解した(ブランソン(Branson))。14,000×g
で10分間遠心分離することによって不溶物を除去した。pMal 融合タンパク質用
のマルトースアフィニティーカラム(NE バイオラブズ(NE Biolabs)社、マサ
チューセッツ州ビバリー)またはGST 融合タンパク質用のグルタチオンアフィニ
ティーカラムのいずれかに発現タンパク質を通した。結合後、溶出の準備のため
、カラムを溶解緩衝液で十分に洗浄し、つぎに溶解緩衝液の洗浄(0.5 MのNaCl
含有)を行い、リン酸緩衝液で平衡化した。10 mM のマルトースを含む溶解緩
衝液を用いることによってpMal 融合タンパク質が溶出した。タンパク質結合ア
ッセイに使用するため、GST−シンデスモス融合タンパク質はGSTアフィニティー
カラムに結合させたままにしておいた。
【0094】 イン・ビトロ(in vitro)結合アッセイ 共免疫沈降によってイン・ビボ(in vivo)における結合性は示されたが、そ
れらによっては、シンデスモスとシンデカン4の細胞質ドメインとの直接的な結
合関係は示されていないし、シンデカン4に対するシンデスモスの特異性が示さ
れたわけでもない。シンデスモスとシンデカン4との直接的な相互作用ならびに
シンデスモスの特異性を明らかにすることを目的として、イン・ビトロ(in vit
ro)結合アッセイを行った。これは、バクテリアを用いて発現させたGST−シン
デスモス融合タンパク質をグルタチオンアガロースビーズに不動化させ、可溶性
の精製pMal /シンデカン4融合タンパク質に対する結合能をアッセイすること
によって行った。
【0095】 GSTビーズに結合しているGST−シンデスモス融合タンパク質の50%スラリー を15μl取り、0.5mlの溶解緩衝液(1%BSA 含有)中、10μgの可溶性pMal シ
ンデカンとインキュベートした。常時撹拌しながら室温で30分間インキュベート
した後、反応混合物を氷上に置き、溶解緩衝液で3回洗浄し、続いて1MのNaCl
を含む溶解緩衝液で3回洗浄した。GST−シンデスモスビーズに結合しているタ
ンパク質をSDS-PAGE 緩衝液に可溶化し、電気泳動を行い、イモビロン−Pメン
ブレン(Immobilon-P membrane)上に移し、鳥類特異的シンデカン4ポリクロー
ナル抗体CS4E (バシュー(Baciu)ら、J. Biol. Chem. 269:696-703(1994))
を用い、結合しているシンデカン4コアタンパク質を分析した。
【0096】 シンデカン4コアタンパク質の全長(S-4)はシンデスモスに結合したが、細
胞質性欠失突然変異(テイルレス(Tailless))は結合しなかった。シンデスモ
スとGSTとの間に相互作用が存在しないことは、シンデカン4の全長とGST単独と
の間で結合が生じないことから明らかである。これらの分析から、シンデカン4
コアタンパク質とシンデスモスとの相互作用は、シンデカン4の細胞質ドメイン
との直接的相互作用によるものであることが示唆された。
【0097】 次に、シンデカン4の細胞質ドメインに対する相互作用の特異性について調べ
た。この分析を行うにあたっては、シンデカン4pMal 構築体(コンストラクト
)の全長中、シンデカン4の細胞質ドメインをシンデカン1,2または3の細胞
質ドメインと置換したキメラタンパク質を構築した。シンデスモスは、シンデカ
ン4(S-4)の細胞質ドメインと特異的に相互作用したが、シンデカン4の細胞
質ドメインをシンデカン1(S-1)、シンデカン2(S-2)またはシンデカン3(
S-3)のそれと置換したキメラコアタンパク質とはいずれも相互作用しなかった
。これらの結果から、シンデスモスの相互作用はシンデカン4の細胞質ドメイン
に特異的であることが示唆され、このことから、シンデカン4の細胞質ドメイン
に特有のアミノ酸が相互作用を媒介していると考えられる。
【0098】 シンデカン4とシンデスモスとの相互作用を媒介するシンデカン4の細胞質ド
メイン内のアミノ酸を確認することを目的として、細胞質に欠失を有する一連の
突然変異体を作出し、不動化したGST−シンデスモスとの相互作用能を調べた。
シンデカン4の全長とGST−シンデスモスとの結合と比較した場合、シンデカン
4の全長とGSTとの間には結合は検出されなかった。シンデカン4の細胞質ドメ
インのC末端から中央ドメインにかけて存在するアミノ酸番号197番〜180番まで
のアミノ酸を除去したところ、シンデカンのシンデスモスに対する結合は弱まっ
たが消失はしなかった。最後の膜近位アミノ酸を除去すると、結合はすべて消失
した。これらの結果から、保存性の膜近位領域は結合に必須であり、可変性中央
領域および保存性C末端領域は相互作用の強度に影響を与えることが示唆された
。細胞質ドメインの保存性の膜近位領域および可変性中央領域がシンデスモスと
の結合に関与していることを調べることを目的として、中央ドメインおよび膜近
位ドメインの内部に欠失を作出した。両者とも、結合アッセイにおいて、内部に
欠失を有する突然変異構築体はGST−シンデスモスと特異的に相互作用すること
はなかった。シンデスモスはシンデカン4の細胞質ドメインとのみ相互作用し、
その他のシンデカンファミリーのそれとは相互作用しないという知見と併せて、
欠失構築体を用いた実験から得られたデータを考察することにより、細胞質ドメ
インの膜近位領域および可変性領域の両方がシンデスモスとの相互作用に関与し
ていることが示唆された。
【0099】 シンデスモスとシンデカン4の細胞質ドメインとの特異的相互作用には、すべ
てのシンデカンファミリーに共通の膜近位部分とシンデカン4にのみ存在する中
央可変領域の両方が関与しているという知見から、シンデカン1,2および3な
らびに一連のシンデスモス関連タンパク質ファミリーを構成していると考えられ
るタンパク質の細胞質ドメインが関与する異種相互作用が起こる可能性が示唆さ
れた。シンデスモスファミリー中の個別のタンパク質との相互作用は、近位アミ
ノ酸の認識能によって生じ、一方、中央可変領域に近接するアミノ酸は結合に特
異性を付与する。そのような結合の例としては、シンデカン3の細胞質ドメイン
と、Srcファミリーキナーゼ類および基質であるコルタクチン(cortactin)なら
びに30 kDa タンパク質を含むタンパク質コンプレックスとの相互作用が挙げら
れる(キヌネン(Kinnunen)ら、J. Biol. Chem. 273:10702-10708(1998))。
これらの相互作用は、細胞質ドメインの保存性膜近位領域の配列に関して、合成
ペプチドと競合する可能性がある。タンパク質コンプレックスの結合はシンデカ
ン3の細胞質ドメインに特異的であるか否か、また、このコンプレックスがシン
デカン1,2または4の細胞質ドメインにも結合することができるか否かに関し
ては報告されていない。この相互作用がシンデカン3の細胞質ドメインに特異的
であるならば、本明細書において報告しているシンデスモスとシンデカン4の細
胞質ドメインとの相互作用の場合と同様に、中央可変性領域が関与していると考
えられる。タンパク質とすべてのシンデカン細胞質ドメインとの一般的な相互作
用においては、高度に保存されたC末端アミノ酸およびPDZドメイン(シンテニ
ン(グルータンズ(Grootjans)ら、Prot. Natl. Acad. Sci. USA 94:13683-13
688(1997))およびCASK/LIN-2 (コーエン(Cohen)ら、J. Cell Bio. 142:129
-138(1998);ハスエ(Hsueh)ら、J. Cell. Biol. 142:139-151(1998))を含む
)が関与していることが報告されている。故に、シンデカンファミリーの細胞質
ドメインと細胞質タンパク質との一般的および特異的相互作用は、結合が高度に
保存されている領域を含むのか、または可変性領域を含むのかによって判断され
るものであると考えることができる。これらの多様な相互作用は、シンデカンの
オリゴマー化の結果として可能になった(カレー(Carey)、Biochem. J. 327:
1-16(1997))、または逐次的に生じていったと考えられる。別の考え方としては
、これらの多様な関係は、ひとつのシンデカンが異なる作用を発揮するという組
織依存的様式によって生じたものであると考えることができる。
【0100】 シンデスモス、PKCおよびパキシリンの間の相互作用 血清飢餓ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)中においては、ホルボールエステルの
一種である12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート(TPA)を用い
たプロテインキナーゼC(PCK)の活性化が、シンデカン4,PKCα、シンデスモ
スおよびパキシリンの間の多数の相互作用を引き起こすきっかけとなる。これら
の相互作用は、TPA 処理を行って5分以内に実施した共免疫沈降実験において
観察された。はじめに、シンデスモスがPKCαと相互作用した。この相互作用は
持続時間が比較的短く、次に、シンデスモスとシンデカン4との相互作用が起こ
った。血清飢餓細胞中においては、TPA はシンデスモスとパキシリンとの間の相
互作用も引き起こす。シンデスモスとパキシリンとの間の相互作用は、血清不含
ではない正常CEF 中で行った共免疫沈降実験においても観察された。イン・ビト
ロ(in vitro)転写/翻訳反応において放射ラベルしたシンデスモスは、GST−
パキシリンには結合するがGST単独(負の対照)の場合には結合しないという実
験結果から示されるように、シンデスモスとパキシリンとの間の相互作用は直接
的なものである。His-5 は、パキシリンと密接な関係があり、WFBラット繊維芽
細胞中に存在するフォーカルアドヒージョンタンパク質である。GST−His-5 は
、イン・ビトロ(in vitro)転写/翻訳反応において産生し、放射ラベルしたシ
ンデスモスとも結合した。これらの分子相互作用は、シンデカン4を細胞骨格タ
ンパク質であるパキシリンと結びつけ、従って、アクチン細胞骨格構造およびフ
ォーカルアドヒージョン形成を制御するシグナル伝達経路内にこのプロテオグリ
カンが存在することになる。
【0101】 細胞培養 最初のニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)は、バシュー(Baciu)ら、J. Biol. Chem
. 269:696-703(1994)の記載に従い、8日齢の胚の背側の皮膚から得た。NIH 3T
3 細胞は、ATCC (カタログ番号 CRL1658)から入手した。10%のウシ胎児血清
(FBS)、ストレプトマイシン(250μg/ml)およびペニシリン(250ユニット/
ml)(ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社(メリーランド州ゲイザ
ースバーグ))を加えたダルベッコの変形イーグル培地(Dulbecco's Modified
Eagle Medium:DMEM)中、加湿雰囲気下、37℃において、細胞同士が接触しない
程度の密度でこれらの細胞系を維持した。血清不含実験用に、抗トリプシン性破
壊および再播種を行う前に、DMEM および抗生物質のみを含む培地中で16〜18時
間細胞を培養した。
【0102】 トランスフェクション実験を行うため、6ウェル組織培養プレート(ファルコ
ン(Falcon)社、マサチューセッツ州ベッドフォード)に1ウェルあたり2.5×1
05 個ずつ細胞を播種し、完全増殖培地中で一晩培養した。血清不含DMEM 培地で
細胞を一回洗浄し、血清不含DMEM(1ml)中、5μlのリポフェクチン(Lipofect
in)(ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社(メリーランド州ゲイザ
ースバーグ))を用いて環状プラスミドDNA (2μg)を細胞にトランスフェクト
した。5時間後、トランスフェクション用培地を完全増殖培地に置き換えた。安
定したNIH 3T3 形質転換体を得ることを目的として、cDNA をpcDNA 3.0 ベクタ
ー(インヴィトロジェン(In Vitrogen)社、カリフォルニア州カールスバッド
)に組み込んだ。トランスフェクションを行って48時間後、3個の150mm 皿に細
胞を播種し、G418耐性増殖(700 μg/ml)を10日間行って選択した。この時点
で、クローニングリング(スペシャルティ・メディア(Specialty Media)社、
ニュージャージー州ラヴァレット)を用いて個々のコロニーをクローニングし、
増殖し、凍結保存用サンプルを調製した。導入遺伝子(トランスジーン)産物を
発現したクローンについては、ウェスタン分析および免疫細胞化学により特性分
析を行った。
【0103】 免疫細胞化学 細胞固定はウッズ(Woods)およびコッホマン(Couchman)の方法(Mol. Biol
. Cell 5:183-192(1994))に従って行い、染色はバシュー(Baciu)およびゲテ
ィンク(Goetinck)の記載(Mol. Biol. Cell 11:1503-1513(1995))に従って
行った。本実験において使用したポリクローナル抗体は、鳥類シンデカン4の外
ドメイン(ectodomain)(CS-4-E)に特有のアミノ酸配列に対するもの、および
シンデスモスに対するものであった。CS-4-E の作出およびアフィニティー精製
については文献に記載されている(バシュー(Baciu)ら、J. Biol. Chem. 269
:696-703(1994))。アフィニティー精製したCS-4-E は20μg/mlの濃度で使用
した。抗シンデスモス抗体は、免疫原としてpMal−シンデスモス融合タンパク質
を用い、ウサギに産生させた。抗シンデスモス抗体は、はじめにpMal−シンデス
モス−CL-4B アフィニティーカラムに免疫血清を通すことによりアフィニティー
精製した。0.1Mのグリシン(pH 2.5)を用いて結合した抗体を溶出させ、1/1
0量の1Mのトリス(pH 8.0)で中和した。マルトース結合タンパク質−CL-4B
アフィニティーカラムを用い、マルトース結合タンパク質を認識する抗体を除去
した。得られた抗体の反応性の特異性については、GST−シンデスモス融合タン
パク質およびpMal−シンデカン融合タンパク質のウェスタンブロット分析によっ
て確認した。ビンキュリン(VN 3-24)モノクローナル抗体(ガーデナー(Garde
ner)およびファンブロー(Fambrough)(1983))は、発展的研究ハイブリドーマ
バンク(Developmental Studies Hybridoma Bank)(NICHID からの契約番号N 01
-HD-2-3244 に基づき、ジョンズ・ホプキンス大学医学部薬理学および分子科学
学科(Depertment of Pharmacology and Molecular Sciences, Johns Hopkins U
niversity, School of Medicine)(メリーランド州ボルティモア、21205)なら
びにアイオワ大学生物科学学科(Department of Biological Sciences, Univers
ity of Iowa)(アイオワ州アイオワシティ、52242)によって維持されている)
から入手した。モノクローナル抗体は腹水から得、1/100に希釈して使用した
。アクチンの染色にはFITC−ファロイジン(FITC-Phalloidin)(モレキュラー
・プローブス(Molecular Probes)、オレゴン州ユージーン)をメーカーの指示
に従って使用した。一次抗体染色を可視化することを目的として、スライドにTR
ITC またはFITC をコンジュゲートした二次抗体(ピアス(Pierce)社、イリノ
イ州ロックフォード)を1/75に希釈して加え、室温で30分間インキュベートし
た。二次抗体はフィギュア・レジェンド(figure legends)内で確認した。PBS
で3回洗浄した後、フルオロマウントG(Fluoromount)(バイオメディア(Bio
media)社、カリフォルニア州フォスターシティ)を用いて被覆した細片をマウ
ントした。ライカ・コンフォーカル顕微鏡(Leica Confocal microscope)を用
いて免疫細胞化学分析を行った。複数ラベル実験において使用した3つの放出チ
ャンネルについては、メーカーの記載に従い、あるチャンネルから別のチャンネ
ルに流出が起こらないように、励起レベルおよびゲインを設定した。これは実験
的に証明されている。非特異的染色は二次抗体のみを使用して判断した。
【0104】 細胞伸展の定量 アクチン染色したNIH 3T3 細胞の画像については、エピ蛍光を利用したニコン
(Nikon)E800 顕微鏡およびスポットデジタルカメラ(ダイアグノスティック・イ
ンストゥルメンツ(Diagnostic Instruments)社、ミシガン州スターリングハイ
ツ)によって捉えた。細胞表面積の定量は、イメージプロ・プラス(ImagePro P
lus)画像分析システム(メディアサイバーメティクス(Mediacybermetics)社
、メリーランド州シルバースプリング)を用いて行った。得られた値は、各サン
プルから任意に選択した90個の細胞を分析して求めた平均値および平均値の標準
偏差を表すものである。
【0105】 上述のように、pcDNA 3.0発現ベクター(対照)または鳥類シンデスモスcDNA
を連結したpcDNA 3.0発現ベクターのいずれかを用いてNIH 3T3 細胞をトランス
フェクトした。シンデスモスの発現はウェスタン分析によって確認した。シンデ
カン4が関与している可能性が考えられる細胞形態、アクチンストレスファイバ
ーおよびフォーカルコンタクト形成に関して、対照トランスフェクトクローン(
これは鳥類シンデスモスの発現を示さない)を異なるレベルでシンデスモスを発
現する3つのトランスフェクトクローンと比較した。血清存在下、フィブロネク
チンで被覆したスライド上にシンデスモス発現細胞および対照NIH 3T3 細胞を一
晩おいて観察したところ、細胞形態については両者の間に顕著な差異は認められ
なかった。このような条件下において、シンデスモス過剰発現細胞を培養すると
、細胞伸展が促進される傾向が観察されることがあった。しかしながら、血清不
在下において、フィブロネクチン被覆スライド上に血清不含細胞を接着、伸展さ
せると、シンデスモス発現細胞は、細胞表面積、アクチンストレスファイバーお
よびフォーカルコンタクト形成の明らかな促進を示した(図参照)。対照クロー
ンおよび3つのシンデスモス発現クローンの表面積の平均(平均値±S. D .)は
それぞれ、353(±172)、635(±265)、581(±205)および589(±236)μm2 であった。このことは、対照クローンに対してシンデスモス発現クローンの細胞
の総表面積がそれぞれ77%、62%および65%増加したことを示す。さらに、シン
デスモスを高レベルで発現した2つのクローンにおいては、糸足(フィロポディ
ア)形成の促進が観察された。細胞伸展ならびにアクチンストレスファイバーお
よびフォーカルコンタクト形成に対してシンデスモス発現が及ぼす影響は、血清
存在下で細胞を播種した場合、または抗トリプシン性破壊を行う前に血清不含状
態になっていない場合には、大きく減少した。このような知見から、シンデスモ
スによるアクチンストレスファイバー形成および細胞伸展の制御は、接着の影響
を受けることが示唆された。
【0106】 シンデスモスが細胞伸展およびアクチン認識を媒介する能力は、細胞形態およ
び細胞骨格構造の媒介物質としてのシンデカンファミリーを構成する物質の機能
的特徴と一致している(ヴァイニーノ(Vanino)ら、Dev. Biol. 147:322-333(
1991);カレー(Carey)ら、J. Cell. Biol. 124:161-170(1994);カト(Kato
)ら、Mol. Biol. Cell. 6:559-576(1995);キヌネン(Kinnunen)ら、J. Biol
. Chem. 273:10702-10708(1998))。
【0107】 シンデスモスの過剰発現が細胞形態に及ぼす影響は、播種後24時間行った培養
期間中よりも細胞接着および伸展の初期段階の方が大きかった。血清不在下にお
いて細胞を播種することにより、さらに表現型の種類が増加した。これらの知見
から、シンデスモスによる細胞形態の制御は血清とは無関係であり、接着依存性
シグナルを必要とすることが示唆された。このシグナルは、糸足の形成に関連が
あると考えられ、糸足は、シンデスモスを過剰発現した細胞内においてよく観察
された。シンデスモスがアクチンストレスファイバー形成を制御する能力は、血
清依存性経路の下流に相応する機能であることが示唆された。シンデスモスがフ
ォーカルコンタクト、アクチン繊維のならびおよび基底分布に局在していること
から、その機能は、EMC レセプターと細胞骨格との間の架橋分子であることが強
く示唆された。
【0108】 シンデスモスに対する主な染色パターンは、フォーカルコンタクトに結合し、
また、アクチンストレスファイバーに沿った点状パターンであった。シンデスモ
スのフォーカルコンタクトへの結合は、細胞接着およびフォーカルコンタクト形
成の初期段階において最も顕著に表れ、はっきりとしたF−アクチン染色が観察
された場合もあった。伸展の後期または十分に伸展した細胞においては、フォー
カルアドヒージョンでのシンデスモスの染色レベルは低かった。しかしながら、
主染色は基底細胞表面に沿った点状パターンであった。この点状染色パターンか
ら、シンデスモスは、アクチン繊維と古典的なフォーカルコンタクトの定義外の
細胞マトリックスとの結合に関与することが示唆された。この染色パターンは、
シンデカン4において観察されたそれと対照的であった。というのも、シンデカ
ン4では、フォーカルコンタクトに対してはっきりした染色を示し、特に、マト
リックスのならびの中で活性な部位に相当する非常に伸展した細胞において染色
が観察された。細胞下におけるシンデカン4の検出とシンデスモスの検出との間
に差異があることは、フォーカルコンタクトが十分に確立している場合には抗体
がシンデスモスを認識できないことを示しているものと考えられる。別の表現を
すれば、細胞下におけるシンデスモスとフォーカルコンタクトまたは細胞骨格と
の結合は、細胞の形態学的状態または細胞型に応じて変化し得る動的な過程であ
るということができる。予測されるシンデスモスの動的役割は、ミリスチル化の
状態にも関係があるものと考えられる。これらの知見を考えあわせると、シンデ
カン4とシンデスモスとの相互作用は、接着後すぐに、または、最終的にはフォ
ーカルコンタクト形成に導く一連の古典的なフォーカルコンタクトの定義外にお
いて生じるものと考えられる。シンデカン4およびシンデスモスにおいて観察さ
れた点状染色パターンは、そのような役割と一致するものである。
【0109】 シンデスモスのアナログ アナログとは、アミノ酸配列もしくは配列とは無関係な部分で、またはこれら
の両方について、天然に存在するシンデスモスとは異なるものである。配列とは
無関係な変形としては、シンデスモスに対してイン・ビボ(in vivo)またはイ
ン・ビトロ(in vitro)において化学的誘導体化を行うことが挙げられる。配列
とは無関係な変形の例としては、アセチル化、メチル化、ホスホリル化、カルボ
キシル化またはグリコシル化などの変化が挙げられる。
【0110】 好ましいアナログとしては、シンデスモスの生物学的活性を損なわない程度に
保存性アミノ酸のうちの1個またはそれ以上が置換している、または、非保存性
アミノ酸のうちの1個またはそれ以上が置換、欠失もしくは挿入されることによ
って野生型配列とは配列が異なっているシンデスモス(またはそれらの生物学的
に活性なフラグメント)が挙げられる。一般的に、保存性アミノ酸の置換として
は、あるアミノ酸が類似の性質を有する別のアミノ酸と置換されることが挙げら
れ、例えば、以下に示す群内での置換などがある。バリン、グリシン;グリシン
、アラニン、;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン
酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;お
よびフェニルアラニン、チロシン。その他の保存性アミノ酸の置換に関しては以
下の表から選択することができる。
【0111】
【表1】 本発明の範ちゅうに含まれるその他のアナログとしては、ペプチドの安定性を
増すように変形されたものがある。そのようなアナログには、ペプチド配列内に
ひとつまたはそれ以上の非ペプチド結合(これは、ペプチド結合に代わるもので
ある)を有する場合がある。また、そのようなアナログには、天然に存在するL
−アミノ酸以外の残基(例えば、D−アミノ酸、または天然には存在しない、も
しくは合成アミノ酸であるβ−またはγ−アミノ酸など)を含むもの、ならびに
環状アナログなどがある。
【0112】 遺伝子治療 本発明の遺伝子構築体は、遺伝子治療プロトコールの一部として使用し、シン
デスモスポリペプチドのアゴニスト型またはアンタゴニスト型のいずれかをコー
ドしている核酸を輸送することもできる。本発明は、特定の細胞型において、イ
ン・ビボ(in vivo)でのシンデスモスポリペプチドのトランスフェクトおよび
発現を行う発現ベクターに関し、これにより、ポリペプチドが誤発現された細胞
内において、シンデスモスポリペプチドの機能を再構築する、または機能に拮抗
する。シンデスモスポリペプチドの発現構築体は、生物学的に有効な任意のキャ
リヤーを用いて投与することができ、そのようなキャリヤーとしては例えば、イ
ン・ビボ(in vivo)においてシンデスモス遺伝子を効率的に輸送することが可
能な任意の製剤または組成物などが挙げられる。方法としては、組換えレトロウ
イルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスおよび単純ヘルペスウイルス1型
、または組換えバクテリアもしくは真核性プラスミドを含むウイルス性ベクター
内に該遺伝子を挿入することなどが挙げられる。ウイルス性ベクターは細胞に直
接トランスフェクトする。プラスミドDNA は、例えば、陽イオン性リポソーム、
(リポフェクチン)または、誘導体化(例えば、抗体をコンジュゲートするなど
)、ポリリジンコンジュゲート、グラミシジンS、人工ウイルスエンベロープも
しくはその他の細胞内キャリヤーなどで補助することによって輸送することがで
き、また、イン・ビボ(in vivo)において、遺伝子構築体またはでCaPO4 沈降
物を直接注入することもできる。
【0113】 核酸を細胞内にン・ビボ(in vivo)導入するために好ましい方法としては、
シンデスモスポリペプチドをコードしているcDNA などの核酸を含むウイルス性
ベクターを使用することである。ウイルス性ベクターを用いて細胞を感染させる
ことの利点は、標的細胞の大部分が核酸を受け入れ得ることである。さらに、ウ
イルス性ベクター内において(例えば、ウイルス性ベクター内に含まれるcDNA
などによって)コードされている分子は、ウイルス性ベクターの核酸を取り込ん
だ細胞内で効率的に発現される。
【0114】 レトロウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクターは、外来性遺伝子
をイン・ビボ(in vivo)、とりわけヒトに輸送するための組換え遺伝子送達系
として利用することができる。これらのベクターは細胞内に遺伝子を効率的に送
達し、輸送された核酸は、宿主の染色体DNA に安定的に組み込まれる。複製欠損
レトロウイルスのみを産生する特別な細胞系(このような系は「パッケージング
細胞」と称されている)の開発により、遺伝治療に対するレトロウイルスの用途
が広がってきており、また、欠損レトロウイルスは、遺伝子治療目的で遺伝子輸
送に使用されることに特徴がある(総説としては、ミラー(Miller), A. D. Bl
ood 76:271(1990)を参照のこと)。一般的な手法に従い、複製欠損レトロウイ
ルスをビリオン内にパッケージすることができ、ビリオンを使用することにより
、ヘルパーウイルスを利用して標的細胞を感染させることができる。組換えレト
ロウイルスを作出し、そのようなウイルスを用いてイン・ビボ(in vivo)また
はイン・ビトロ(in vitro)において細胞を感染させるプロトコールについては
、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular B
iology)」(アウスベル(Ausbel)ら編、グリーンパブリッシング(Greene Pub
lishing)社、1989年)9.10〜9.14、およびその他の一般的な実験室マニュ
アルに記載されている。適切なレトロウイルスの例としては、pLJ、pZIP、pWEお
よびpEM などが挙げられるが、これらは当業者においては既知である。同種指向
性および両種指向性レトロウイルスシステムを調製するために適切なパッケージ
ングウイルス系の例としては、ψCrip、ψCre、ψ2およびψAm などが挙げられ
る。レトロウイルスを用いることにより、イン・ビトロ(in vitro)および/ま
たはイン・ビボ(in vivo)において、上皮細胞などの多様な遺伝子が多数の異
なる細胞系に導入されている(例えば、イグリティス(Eglitis)ら、Science 2
30:1395-1398(1985);ダノス(Danos)およびムリガン(Mulligan)、Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA 85:6460-6464(1988);ウィルソン(Wilson)ら、Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA 85:3014-3018(1988);アーメンターノ(Armentano)ら、P
roc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6141-6145(1990);ヒューバー(Huber)ら、Pr
oc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8039-8043(1991);フェリー(Ferry)ら、Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 88:8377-8381(1991);チョドハリー(Chowdhurry)ら
、Science 254:1802-1805(1991);ヴァン・ベセヘム(van Beusechem)ら、Pro
c. Natl. Acad. Sci. USA 89:7640-7644(1992);カイ(Kay)ら、Human Gene T
herapy 3:641-647(1992);ダイ(Dai)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1
0892-10895(1992);ウー(Hwu)ら、J. Immunol. 150:4104-4115(1993);米国
特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号;PCT出願 WO 89/07136;PCT出願 W
O 89/02468;PCT出願 WO 89/05345;PCT出願;WO 92/07573 などを参照のこと)
【0115】 本発明において有用なその他のウイルス性遺伝子輸送システムとしては、アデ
ノウイルス由来のベクターがある。アデノウイルスのゲノムは、目的の遺伝子産
物をコードし、発現するように操作することができるが、正常な溶菌性ウイルス
生活環内においては複製能が不活化されるように操作することができる。例えば
、バークナー(Berkner)ら、Bio Techniques 6:616(1988);ローゼンフィール
ド(Rosenfield)ら、;Science 252:431-434(1991)およびローゼンフィールド
(Rosenfield)ら、Cell 68:143-155(1992)を参照のこと。アデノウイルス株Ad
type5 dl324 またはその他のアデノウイルス株(例えば、Ad2, Ad3, Ad7 など
)由来の適切なアデノウイルス性ベクターは当業者において既知である。組換え
アデノウイルスは、特定の条件下においては非分裂細胞に感染することができず
、上皮細胞を含む多様な細胞系に感染させることができるという点に関しては有
利である(ローゼンフィールド(Rosenfield)ら、同上)。さらに、ウイルス粒
子は比較的安定であり、精製および濃縮が容易であり、さらに、上述しているよ
うに、感染スペクトルに影響を与えるように変形することが可能である。加えて
、導入されたアデノウイルスのDNA (およびそれに含まれる外来性のDNA)は宿
主のゲノムに組み込まれることなくエピソームにとどまり、従って、導入された
DNA が宿主のゲノム(例えば、レトロウイルス性DNA など)に組み込まれた場合
に挿入性の突然変異を生じた結果として起こり得る問題を避けることができる。
さらに、アデノウイルス性ゲノムが外来DNA を保持できる能力は、その他の遺伝
子輸送ベクターに比べて大きい(8kbまで)(バークナー(Berkner)ら、同上
;ハジャマンド(Haj-Ahmand)およびグラハム(Graham)、J. Virol. 57:267(
1986))。
【0116】 遺伝子の輸送に有用なさらに別のウイルス性ベクターシステムとしては、アデ
ノ関連ウイルス(AAV)がある。アデノ関連ウイルスは天然に存在する欠損ウイ
ルスであり、複製および増殖性生活環を行うためには、へルパーウイルスとして
アデノウイルスやヘルペスウイルスなどのその他のウイルスを必要とする(総説
として、ムツィッカ(Muzyczka)ら、Curr. Topics in Micro. and Immunol. 15
8:97-129(1992)を参照のこと)。アデノ関連ウイルスは、DNA を非分裂細胞に
組み込むことができ、安定的な組換えを行う頻度が高い、数少ないウイルスのう
ちのひとつでもある(例えば、フロッテ(Flotte)らAm. J. Respir. Cell Mol.
Biol. 7:349-356(1989);サムルスキ(Samulski)ら、J. Virol. 63:3822-38
28(1989);マクローグリン(Mclaughlin)ら、J. Virol. 62:1963-1973(1989)
などを参照)。少なくとも300塩基対のAAV のヌクレオチドを含むベクターは、
パッケージし、組み込むことができる。外来性DNA 用のスペースは約4.5 kbまで
と制限されている。トラッシン(Tratschin)ら(Mol. Cell. Biol. 5:3251-32
60(1985))が記載しているようなAAV ベクターを用いて細胞にDNA を導入するこ
とができる。AAV ベクターを用いることにより、多様な核酸が異なる細胞系に導
入されている(例えば、ヘルモナー(Hermonat)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA 81:6466-6470(1984);トラッシン(Tratschin)ら、Mol. Cell. Biol. 4:2
072-2081(1985);ワンディスフォード(Wondisford)ら、Mol. Endocrinol. 2:
32-39(1988);トラッシン(Tratschin)ら、J. Virol. 51:611-619(1984);フ
ロッテ(Flotte)ら、J. Biol. Chem. 268:3781-3790(1993)などを参照)。
【0117】 ウイルスを用いた導入法に加えて、上述しているように、ウイルスを用いない
方法によって動物の組織内においてシンデスモスポリペプチドを発現させること
もできる。ウイルスを用いない遺伝子導入方の多くは、巨大分子の取り込みおよ
び細胞内輸送を行わせるため、哺乳類細胞において用いられる通常のメカニズム
を利用するものである。好ましい実施態様においては、ウイルスを用いない本発
明の遺伝子送達システムでは、細胞外経路を利用し、標的細胞により目的のシン
デスモス遺伝子が取り込まれるようにする。この様式の遺伝子送達システムの例
としては、リポソーム由来のシステム、ポリリジンコンジュゲートおよび人工ウ
イルスエンベロープなどが挙げられる。
【0118】 代表的な実施例においては、表面に陽電荷を有しており(例えば、リポフェク
チン類など)、さらに、標的組織の細胞表面抗原に対する抗体を有していること
もあるリポソームに、シンデスモスポリペプチドをコードしている遺伝子を捕獲
させることができる(ミズノ(Mizuno)ら、No Shinkei Geka 20:547-551(1992
);PCT公報 WO 91/06309;日本国特許出願第1047381号;ヨーロッパ特許公報EP-
A-43075)。
【0119】 臨床段階においては、治療用シンデスモス遺伝子の遺伝子送達システムは、当
業者において既知である多数の方法のうちの任意のものを用いて患者に導入する
ことができる。例えば、遺伝子送達システム製剤は、静注などによって全身に導
入することができ、トランスフェクションの特異性により、標的細胞内のにおい
てタンパク質の特異的形質導入が優先的に生じる。このようなトランスフェクシ
ョンは、遺伝子送達基剤(ビヒクル)、レセプター遺伝子の発現を調節する転写
制御配列による細胞型もしくは組織型発現、またはそれらの組み合わせによって
行われる。別の実施態様においては、動物に関して極めて限定的な導入により、
組換え遺伝子の初期送達が行われている。例えば、遺伝子送達基剤は、カテーテ
ル(米国特許第5,328,470号を参照)または走触性注入(Stereotactic injectio
n)(例えば、チェン(Chen)ら、PNAS 91:3054-3057(1994)など)によって導
入することができる。
【0120】 遺伝子治療構築体を含む製剤は、許容できる希釈剤を用いた、または、遺伝子
送達基剤を包埋する徐放性マトリックスを用いた遺伝子送達システムとして構成
することができる。別の方法としては、組換え細胞(例えば、レトロウイルス性
ベクターなど)からそのまま遺伝子送達システムを産生できる場合には、遺伝子
送達システムを産生する細胞を1個またはそれ以上含む製剤として調製すること
もできる。
【0121】 トランスジェニック動物 本発明は、シンデスモス導入遺伝子を保有し、かつ、好ましくは(しかし随意
に)動物内のひとつまたはそれ以上の細胞内において内在性または外来性のシン
デスモス遺伝子を発現(または誤発現)する細胞を有するトランスジェニック動
物を包含する。シンデスモス導入遺伝子は、タンパク質の野生型をコードするこ
とができ、または、アゴニストおよびアンタゴニスト、さらにアンチセンス構築
体をも含む野生型の相同体をコードすることができる。好ましい実施態様におい
ては、導入遺伝子の発現は、例えば、所望するパターンになるように発現を制御
するシス−作用配列などを利用する特定の細胞または組織集団に限定されている
。組織特異的調節配列および条件付き調節配列を用いてある特定の空間的パター
ンについて導入遺伝子の発現を制御することができ、例えば、乳汁または動物か
らのその他の分泌産物の産生を制御することなどが挙げられる。
【0122】 フラグメントおよびアナログの調製 フラグメントの調製 タンパク質のフラグメントは、組換え、タンパク質溶解性の切断、または化学
合成などのいくつかの方法によって調製することができる。ポリペプチドの内部
または末端フラグメントは、一方の末端(末端フラグメントの場合)または両端
(内部フラグメントの場合)からポリペプチドをコードしている核酸を1個また
はそれ以上除去することによって調製することができる。突然変異させたDNA の
発現により、ポリペプチドフラグメントが産生される。末端を少しずつ除去して
いくエンドヌクレアーゼを用いて切断することにより、フラグメントの並びをコ
ードしているDNA を調製することができる。ランダム剪断、制限酵素による切断
、または上述の方法の組み合わせによってもタンパク質フラグメントをコードし
ているDNAを調製することができる。
【0123】 当該分野において既知の技術、例えば、従来型のメリフィールド(Merrifield
)固相f-Moc またはt-Boc 化学などを利用することによってフラグメントを化学
的に合成することもできる。例えば、本発明のペプチドは、フラグメントの重複
(オーバーラップ)が全くないように、所望する長さのフラグメントに任意に分
割することができ、または、所望する長さの重複フラグメントに任意に分割する
ことができる。
【0124】 アナログの調製:ランダム法による改変 DNAおよびペプチド配列の調製 タンパク質のアミノ酸配列変異体は、タンパク質、またはタンパク質の特定の
ドメインもしくは領域をコードしているDNA にランダムに突然変異を起こすこと
によって調製することができる。有用な方法としては、PCR突然変異および飽和
突然変異があげられる。一連の変性オリゴヌクレオチド配列を合成することによ
り、ランダムアミノ酸配列変異体のライブラリーを調製することもできる(変異
体のライブラリー内のタンパク質をスクリーニングする方法については本明細書
の別の箇所に記載している)。
【0125】 PCR突然変異 PCR突然変異においては、Taq ポリメラーゼの正確性を低下させて使用し、ク
ローニングしたDNA フラグメントにランダムに突然変異を起こさせた(ルーン(
Leung)ら、Technique 1:11-15(1989))。これは、ランダムに突然変異を起こ
させる非常に強力かつ比較的迅速な方法である。Taq DNA ポリメラーゼによるDN
A 合成の正確性を低下させるような条件下(例えば、dGTP/dATP の比を5にして
使用し、PCR反応にMn2+ を添加するなど)において、ポリメラーゼ連鎖反応(PC
R)を用い、突然変異を起こしたDNA 領域を増幅させることができる。増幅したD
NA フラグメントのプールを適切なクローニングベクターに挿入し、ランダム突
然変異体ライブラリーを得る。
【0126】 飽和突然変異 飽和突然変異により、クローニングしたDNA フラグメントに多数の一塩基置換
を迅速に行うことができる(メイヤー(Mayer)ら、Science 229:242(1985))
。この技術は、突然変異体の調製(例えば、イン・ビトロ(in vitro)における
一本鎖DNA の化学処理または放射線照射などによる)、および相補的DNA 鎖の合
成を包含するものである。突然変異の頻度は、処理強度を調節することによって
制御することができ、基本的にすべての塩基について置換を行うことができる。
本方法は突然変異フラグメントの遺伝的選択を含んでいないことから、両方の中
立置換(neutral substitutions)および作用の改変されたフラグメントが得ら
れる。点突然変異の分布は保存性配列エレメントに偏ってはいない。
【0127】 変性オリゴヌクレオチド 相同体(ホモログ)のライブラリーは、一連の変性オリゴヌクレオチド配列か
ら調製することもできる。変性配列の化学合成は自動DNA 合成機を用いて行うこ
とができ、次に、合成遺伝子を適切な発現ベクターに連結する。変性オリゴヌク
レオチドの合成は、当該分野において既知である(例えば、ナラン(Narang)ら
、Tetrahedron 39:3(1983);イタクラ(Itakura)ら、組換えDNA 手法 第3回
クリーブランドシンポジウム 巨大分子(Recombinant DNA, Proc 3rd Cleavela
nd Sympos. Macromolecules)(A. G. ウォルトン(Walton)編、アムステルダ
ム:エルセヴィア(Amsterdam:Elsevier)社、pp 273-289(1981));イタクラ
(Itakura)ら、Ann. Rev. Biochem. 53:323(1984);イタクラ(Itakura)ら、
Science 198:1056(1984);イケ(Ike)ら、Nucleic Acid Res. 11:477(1983)
などを参照のこと)。そのような技術はその他のタンパク質の指定変異に用いら
れている(例えば、スコット(Scott)ら、Science 249:386-390(1990);ロバ
ーツ(Roberts)ら、PNAS 89:2429-2433(1992);デヴリン(Devlin)ら、Scien
ce 249:404-406(1990;クヴィルラ(Cwirla)ら、PNAS 87:6378-6382(1990);
ならびに米国特許第5,223,409号、5,198,346号および5,096,815号などを参照の
こと)。
【0128】 アナログの調製:指定突然変異による改変 DNAおよびペプチド配列の調製 非ランダム性突然変異技術、すなわち指定突然変異技術を用い、特定の領域内
に特定の配列または突然変異を提供することができる。このような技術を用いて
変異体(タンパク質を構成する既知のアミノ酸配列の中の残基の欠失、挿入また
は置換などを有するもの)を調製することができる。突然変異部位は個々にまた
は一続きに変形することが可能であり、例えば、(1)はじめに保存アミノ酸を
置換し、次に到達目標に応じてより過激な選択を行って置換する、(2)標的残
基を削除する、もしくは(3)特定の位置に隣接する残基と同類または異類の残
基を挿入する、または1〜3を組み合わせることによって実施する。
【0129】 アラニン走査突然変異誘発 アラニン走査突然変異誘発(alanine scanning mutagenesis)は、所望するタ
ンパク質中の突然変異に好ましい位置またはドメインである特定の残基または領
域を確認するために有用な方法である(カニンガム(Cunningham)およびウェル
ス(Wells)Science 244:1081-1085(1989))。アラニン走査においては、標的
残基内の残基または官能基を確認し(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、ヒ
スチジン、リジンおよびグルタミン酸などのような電荷を帯びた残基など)、そ
れらを中性または陰イオン性アミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラ
ニン)に置換する。アミノ酸の置換により、細胞内外の周囲の水性環境とのアミ
ノ酸の相互作用が変化する。置換に対して機能感受性を示すこれらのドメインは
、次に、置換部位に、または置換部位の代わりに、さらにその他の変異体を導入
することによって改良される。従って、アミノ酸配列変化を導入する部位は予め
定めておくが、突然変異自身の性質については予め定めておく必要はない。例え
ば、ある部位における突然変異効率を最適化することを目的として、標的コドン
または領域についてアラニン走査またはランダム突然変異を行い、所望する活性
についての最適な組み合わせを得るために、発現された所望するタンパク質サブ
ユニット変異体をスクリーニングする。
【0130】 オリゴヌクレオチドを媒介とする突然変異誘発 オリゴヌクレオチドを媒介とする突然変異誘発(oligonucleotide-mediated m
utagenesis)は、DNA の変異体の置換、欠失および挿入を行うのに有用な方法で
ある(例えば、アデルマン(Adelman)ら、DNA 2:183 ,(1983)を参照のこと)
。端的に説明すると、DNA 鋳型に対する突然変異をコードしているオリゴヌクレ
オチドをハイブリダイズすることによって所望するDNA を改変し、このとき、鋳
型は、所望するタンパク質の未改変もしくは天然のDNA 配列を含むプラスミドま
たはバクテリオファージの一本鎖型であるようにする。ハイブリダイゼーション
後、DNA ポリメラーゼを用いて鋳型の二本目の鎖を完全な形で合成し、このこと
により、鋳型はオリゴヌクレオチドプライマーを取り込み、所望するタンパク質
のDNA の中から選択した改変をコードしていることになる。一般的に、少なくと
も25個のヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドを用いる。最適なオリ
ゴヌクレオチドは、突然変異をコードしている鋳型のいずれか一端のヌクレオチ
ドに完全に相補的な12個〜15個のヌクレオチドを有する。これにより、オリゴヌ
クレオチドが一本鎖DNA 鋳型分子に正確にハイブリダイズすることができる。ク
レア(Crea)らが記載している(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:5765(1978)
)ような当該分野において既知の技術を用いることにより、オリゴヌクレオチド
を容易に合成することができる。
【0131】 カセット突然変異誘発 変異体の調製するさらに別の方法としては、カセット突然変異誘発(cassette
mutagenesis)があり、この方法は、ウェル(Well)らによって記載された(Ge
ne 34:315(1985))技術に基づくものである。出発材料は、突然変異を誘発され
るタンパク質のサブユニットDNA を含むプラスミド(またはその他のベクター)
である。突然変異を誘発されるタンパク質のサブユニットDNA内のコドンを確認
する。確認された突然変異部位の両端には特徴的な制限酵素エンドヌクレオチド
アーゼ部位が存在していなければならない。もしそのような制限酵素部位が存在
しない場合には、上述のオリゴヌクレオチドを媒介とする突然変異誘発法を利用
し、所望するタンパク質サブユニットDNA 内の適切な位置に制限酵素部位を導入
することによって調製することができる。プラスミド内に制限酵素部位を導入し
た後、これらの部位においてプラスミドを切断して直線化する。一般的な方法を
用い、2つの制限酵素部位間に所望する突然変異を含むDNA 配列をコードしてい
る二本鎖オリゴヌクレオチドを合成する。二本の鎖は別異に合成し、その後、一
般的な技術を用いてハイブリダイズする。この二本鎖オリゴヌクレオチドはカセ
ットと称する。このカセットは3’および5’末端を有するように設計されてお
り、これらの末端は、カセットがプラスミドに直接結合するように、直線化プラ
スミドの末端に対応している。このプラスミドは、突然変異を起こした所望する
タンパク質サブユニットDNA配列を有していることになる。
【0132】 コンビナトリアル突然変異誘発 コンビナトリアル突然変異誘発(combinatorial mutagenesis)を用いて突然
変異体を調製することもできる。例えば、一群の相同体またはその他の関連タン
パク質に対するアミノ酸配列を一列に並べ、好ましくは、最も高い相同性が得ら
れるように並べる。並べた配列の中のある位置に出現しているすべてのアミノ酸
を選択してコンビナトリアル配列の変性集合を創出することができた。核酸レベ
ルにおけるコンビナトリアル突然変異誘発により、変化に富んだ変異体のライブ
ラリーが調製され、また、このライブラリーは、変化に富んだ遺伝子ライブラリ
ーによってコードされていた。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物は、酵
素を用いて遺伝子配列内に結合させることができ、このとき、候補配列の変性集
合が別異のペプチドとして発現されるように、または、変性配列の集合を含む大
きな融合タンパク質の集合として発現されるようにする。
【0133】 ペプチドフラグメントまたは相同体のライブラリーをスクリーニングするため の一次ハイスループット法 調製された突然変異体遺伝子生成物をスクリーニングする方法としては、多数
の技術が当該分野において既知である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニ
ングする技術には次のような段階が含まれることが多い。複製可能な発現ベクタ
ー内に遺伝子ライブラリーをクローニングし、得られたベクターのライブラリー
を用いて適切な細胞を形質転換し、所望する活性を検出するような条件下におい
て遺伝子を発現させる。例えば、この場合においては、他のシンデスモスサブユ
ニットに結合すること、三量体シンデスモス分子内に組み込むこと、天然のリガ
ンドまたは基質に結合すること、産生物が既に検出されている遺伝子をコードし
ているベクターが比較的容易に単離できるようにすることなどが挙げられる。以
下に記載している各技術は、ランダム突然変異誘発技術などによって調製された
多数の配列をスクリーニングするためのハイスループット分析に利用可能である
【0134】 ツーハイブリッドシステム 他のスクリーニング法と共に、上述したようなツーハイブリッド(相互作用捕
獲)アッセイを用いてフラグメントまたはアナログを確認することができる(例
えば、米国特許第5,283,317号;PCT公報 WO/10300;ツェルヴォス(Zervos)ら
、Cell 72:223-232(1993);マデューラ(Madura)ら、J. Biol. Chem. 268:12
046-12054(1993);バーテル(Bartel)ら、Biotechniques 14:920-924(1993);
イワブチ(Iwabuchi)ら、Oncogene 8:1693-1696(1993)などを参照)。これら
にはアゴニスト、スーパーアゴニストおよびアンタゴニストが含まれている。(
目的のタンパク質およびそれと相互作用するタンパク質は、餌となるタンパク質
(bait protein)および釣り上げられるタンパク質(fish protein)として用い
られる。)これらのアッセイは、餌となるタンパク質とタンパク質−タンパク質
相互作用することによって媒介される機能性転写アクチベーターの再構築を検出
することを基本としている。特に、これらのアッセイは、ハイブリッドタンパク
質を発現するキメラ遺伝子を利用するものである。第一のハイブリッドは、餌と
なるタンパク質(例えば、シンデスモス分子またはそれらのフラグメントなど)
に融合したDNA 結合ドメインを有する。第二のハイブリッドタンパク質は、発現
ライブラリー(例えば、胚性肢芽発現ライブラリーなど)などの「釣り上げられ
る」タンパク質に融合した転写活性化ドメインを含む。釣り上げられるタンパク
質と餌となるタンパク質とが相互作用できる場合には、DNA結合ドメインと転写
活性化ドメインとの距離を近づけることができる。この距離は、DNA 結合ドメイ
ンによって認識される転写制御部位に対して機能発揮できるように連結している
レポーター遺伝子に転写を開始させるのに十分な距離であり、マーカー遺伝子の
発現を検出でき、さらに、マーカー遺伝子の発現を利用して、餌となるタンパク
質とその他のタンパク質との相互作用を評価することができる。
【0135】 ディスプレーライブラリー スクリーニングアッセイのひとつの方法として、候補ペプチドを細胞またはウ
イルス粒子の表面上に展示(ディスプレー)し、ディスプレーされた生成物を介
して特定の細胞またはウイルス粒子が適切なレセプタータンパク質に結合する能
力を「パンニングアッセイ(panning assay)」によって検出する方法がある。
例えば、バクテリア細胞の表面膜タンパク質の遺伝子内に遺伝子ライブラリーを
クローニングすることができ、得られた融合タンパク質をパンニングによって検
出する(ランダー(Lander)ら、WO 88/06630;フックス(Fuchs)ら、Bio/Tech
nology 9:1370-1371(1991);ゴワード(Goward)ら、TIBS 18:136-140(1992)
)。同様に、ラベルした検出可能なリガンドを用いて、機能性ペプチド相同体と
しての可能性を評価することができる。蛍光ラベルしたリガンド(例えば、レセ
プターなど)を用いて、リガンド結合活性を有する相同体を検出することができ
る。蛍光ラベルしたリガンドを用いることにより、細胞を視覚的に検査すること
ができ、蛍光顕微鏡下において分離可能であり、または、細胞の形状が許容する
場合には蛍光活性化セルソーターを用いて分離することができる。
【0136】 遺伝子ライブラリーは、ウイルス粒子の表面上で融合タンパク質として発現さ
せることができる。例えば、糸状ファージ系においては、外来性ペプチドは感染
性ファージの表面に発現させることができ、そのことによって2つの顕著な利点
が生じる。第一に、これらのファージは1mlあたり1013 個以上の濃度でアフィ
ニティーマトリックスに通すことができるため、一度に大量のファージをスクリ
ーニングすることができる。第二に、各感染性ファージはその表面に遺伝子産物
をディスプレーしているため、アフィニティーマトリックスからある特定のファ
ージが低収率で回収された場合には、そのファージをもう一回感染させることに
よって増幅させることができる。ほぼ同一の大腸菌(E. coli)糸状ファージM13
の群のうち、ファージディスプレーライブラリーにはfd およびfl が最もよく用
いられる。ファージgIII またはgVIII のコートタンパク質を用い、ウイルス粒
子の完全なパッケージングを崩壊させることなく融合タンパク質を得ることがで
きる。外来性エピトープは、pIII のNH2 末端において発現させることができ、
そのようなエピトープを有するファージは、該エピトープを有しない多量のファ
ージから回収することができる(ランダー(Lander)ら、PCT公報WO 90/02909;
ガラード(Garrard)ら、PCT公報WO 92/09690;;マークス(Marks)ら、J. Bio
l. Chem. 267:16007-16010(1992);グリフィスス(Griffiths)ら、EMBO J. 12
:725-734(1993);クラックソン(Clackson)ら、Nature 352:624-628(1991);
バーバス(Barbas)ら、PNAS 89:4457-4461(1992))。
【0137】 一般的な方法においては、ペプチド融合の相手として大腸菌(E. coli)のマ
ルトースレセプター(外膜タンパク質、LamB)を用いる(チャービット(Charbi
t)ら、EMBO J. 5:3029-3037(1986))。LamB 遺伝子をコードしているプラス
ミド内にオリゴヌクレオチドを挿入し、タンパク質の細胞外ループのうちのひと
つに融合されたペプチドを調製する。これらのペプチドは、抗体などのリガンド
に結合することができ、細胞が動物に投与された場合には、免疫応答を誘起する
ことができる。その他の細胞表面タンパク質としては、例えば、OmpA (ショー
ル(Schorr)ら、Vaccines 91:387-392(1991))、PhoE (アグターバーグ(Agt
erberg)ら、Gene 88:37-45(1990))およびPAL (フックス(Fuchs)ら、Bio/T
echnology 9:1369-1372(1991))などが挙げられ、また、大きなバクテリア表面
構造は、ペプチドライブラリーの媒質としての役割を果たしていた。ペプチドは
ピリンに融合することができるが、ピリンとは、ポリマー化することにより、バ
クテリア間の遺伝的情報交換を行う線毛a (pilus-a)管状構造体を形成するタ
ンパク質である(サーティー(Thirty)ら、Appl. Environ. Microbiol. 55:98
4-993(1989))。線毛の役割は細胞外の環境と相互作用することであることから
、線毛は、細胞外環境にペプチドを呈示する際に有用な補助となる。ペプチドデ
ィスプレーに用いられるもうひとつの大きな表面構造としては、バクテリアの運
動に関する器官である鞭毛がある。サブユニットタンパク質であるフラジェリン
にペプチドが融合することにより、宿主細胞上に多数のペプチドコピーが高密度
で並ぶ(クワジマ(Kuwajima)ら、Bio/Technology 6:1080-1083(1988))。他
のバクテリア種の表面タンパク質もペプチド融合の相手として作用した。そのよ
うな例としては、スタフィロコッカス(Staphylococcus)のプロテインA および
ナイセリア(Neisseria)の外膜プロテアーゼIgA などが挙げられる(ハッソン
(Hasson)ら、J. Bacteriol. 174:4239-4245 (1992);クラウザー(Klauser)ら、EMBO J. 9:1991-1999(1990))。
【0138】 上述した糸状ファージ系およびLamB 系においては、表面にペプチドを保持し
ている粒子(細胞またはファージ)内にDNA を含有していることにより、ペプチ
ドとそれをコードしているDNA との間に物理的な連結が生じる。ペプチドを捕獲
することにより、粒子とその内部のDNA を捕獲した。別の方法においては、DNA
結合タンパク質LacI を用いてペプチドとDNA との間の連結を形成する(カル(C
ull)ら、PNAS USA 89:1865-1869(1992))。この系は、3’末端にオリゴヌク
レオチドクローニング部位を有するLacI 遺伝子を含むプラスミドを用いる。ア
ラビノースを用いて誘導を制御した状態でLacI −ペプチド融合タンパク質を産
生する。この融合においては、LacI が本来有している、LacO オペレーター(La
cO)として知られている短いDNA 配列への結合能を保持している。発現プラスミ
ド上にLacO のコピーを2個取り付けることにより、LacI −ペプチド融合タンパ
ク質はそれをコードしているプラスミドに強固に結合する。各細胞内のプラスミ
ドは1個のオリゴヌクレオチド配列のみを含んでおり、また、各細胞は1個のペ
プチド配列のみを発現することから、ペプチドは、合成に直接関与しているDNA
配列と特異的かつ安定的に結合することになる。ライブラリー内の細胞を穏やか
に溶解し、ペプチド−DNA コンプレックスを不動化レセプターのマトリックスに
接触させることにより、活性化ペプチドを含むコンプレックスを回収する。次に
、増幅のために結合プラスミドDNA を細胞内に再導入し、DNA 配列解析を行って
ペプチドリガンドの同一性を確認する。本方法の実用性を示す目的で、ドデカペ
プチドの大きなランダムライブラリーを作成し、オピオイドペプチドであるディ
ノルフィンBに対するモノクローナル抗体を用いて選択を行う。一群のペプチド
を回収したが、すべてのペプチドがディノルフィンBの6残基部位に対応するコ
ンセンサス配列によって関連づけられる(カル(Cull)ら、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 89:1869(1992))。
【0139】 本方法は(ペプチド−オン−プラスミド法と称されることもある)、2つの重
要な点においてファージディスプレー法とは異なっている。第一点は、ペプチド
が融合タンパク質のC末端に結合しており、そのことによって、ライブラリーの
構成物が遊離のカルボキシ末端を有するペプチドとしてディスプレーされること
である。糸状ファージコートタンパク質であるpIII およびpVIII は、C末端を
介してファージに結合しており、ゲストペプチドは外側に伸長しているN 末端ド
メイン内に入り込むことになる。ある構成においては、ファージディスプレーさ
れたペプチドは融合タンパク質のアミノ末端のすぐそばに存在している(クヴィ
ルラ(Cwirla)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382(1990))。第二
の相違点は、ライブラリー内に実際に存在するペプチド集団に対して、一連の生
物学的偏りが影響を与えていることである。LacI 融合タンパク質は、宿主細胞
の細胞質に局在している。ファージコート融合タンパク質は、翻訳中は細胞質に
一時的に接触しているが、ファージ粒子内に組み込まれるのを待つ間に、内膜を
通して外質部分に迅速に分泌されるものの、C末端疎水性ドメインによって膜に
つなぎ止められており、N 末端には外質に突出したペプチドを有している。異な
るタンパク質溶解活性を有する酵素に接触させた実験の結果から、LacI および
ファージ内のペプチドは非常に異なっていると考えられる。ファージコートタン
パク質は、ファージ内への取り込みの準備として、内膜を通過する輸送およびシ
グナルペプチダーゼ処理を要した。ある種のペプチドに関しては、これらの処理
において有害な影響が表れ、ライブラリー内でははっきり表れてこない(ギャロ
ップ(Gallop)ら、J. Med. Chem. 37(9): 1233-1251(1994))。このような特定
の偏りは、LacI ディスプレー系内に原因があるわけではない 組換えランダムライブラリーにおいて存在可能な低分子量ペプチドの数は非常
に大量である。一般に、107 〜109 個の別異のクローンから構成されるライブラ
リーが調製される。組換え体数が1011 個までの大きさのライブラリーが作成さ
れているが、この大きさはクローンライブラリーの実際的な限界に近い。ライブ
ラリーの大きさのこのような制限は、任意のセグメントを含むDNA を宿主バクテ
リア細胞内に形質転換する段階で生じてくる。この制限を回避することを目的と
して、最近、ポリソームコンプレックス内の発生期ペプチドのディスプレーに基
づくイン・ビトロ(in vitro)系が開発された。このディスプレーライブラリー
法は、現在作成可能なファージ/ファージミドまたはプラスミドライブラリーよ
りも103 〜106 大きいライブラリーを作成できる可能性を有している。さらに、
ライブラリーの構築、ペプチドの発現およびスクリーニングをすべて細胞を用い
ない(セルフリー)系で行うことができる。
【0140】 本方法のひとつの応用例(ギャロップ(Gallop)ら、J. Med. Chem. 37(9): 1
233-1251(1994))として、1012個のデカペプチドをコードしている分子DNA ライ
ブラリーを構築し、イン・ビトロ(in vitro)において大腸菌(E. coli)S30
内で発現したライブラリーを転写/翻訳系と組み合わせた例がある。ポリソーム
内のRNA の実質的な割合を増加させ、発生期ペプチドがそれらをコードしている
RNA に連結している状態で含まれているコンプレックスを得られるような条件を
選択してリボソームをmRNA 上に連結した。従来型の組換えペプチドディスプレ
ーライブラリーのスクリーニングとほぼ同様の方法により、不動化レセプターを
用いてアフィニティー精製を行うことが可能な程度にポリソームは強固である。
結合しているコンプレックスからRNA を回収し、cDNA に転換し、PCRによって増
幅することにより、次回の合成およびスクリーニング用の鋳型を作成する。ポリ
ソームディスプレー法はファージディスプレー法と組み合わせることができる。
数回のスクリーニングを繰り返した後、ポリソームに富んだプールから得たcDNA
をファージミドベクター内にクローニングした。このベクターは、コートタン
パク質に融合しているペプチドをディスプレーしているペプチド発現ベクターと
して、および、ペプチド確認のためのDNA 配列解析ベクターとして作用する。フ
ァージ上にポリソーム由来のペプチドを発現させることにより、この様式に従っ
てアフィニティー選択法を続けること、または、各クローンのペプチドについて
、ファージELISA によって結合活性のアッセイを行う、もしくは、完全ファージ
ELISA によって結合特異性のアッセイを行うことができる(バーレット(Barret
)ら、Anal. Biochem. 204, 357-364(1992))。活性ペプチドの配列を確認する
ためには、ファージミド宿主によって産生されたDNA の配列解析を行う。
【0141】 二次スクリーニング 上述したハイスループットアッセイの後で、さらに生物学的活性を明らかにす
るために二次スクリーニングを行うことができ、これにより、例えば、当業者で
あれば、アンタゴニストとアゴニストを区別することができる。使用される二次
スクリーニングの種類は、試験を必要とする所望活性に応じて決まる。例えば、
目的のタンパク質とそれに対応するリガンドとの間の相互作用を阻害する能力を
利用して、上述の一次スクリーニングのうちのひとつによって単離された一群の
ペプチドフラグメントからアンタゴニストを確認するアッセイを開発することが
可能である。
【0142】 このように、フラグメントおよびアナログを調製し、それらの活性を試験する
方法については、当該分野において既知である。一度、目的とするコア配列が確
認されたならば、アナログとフラグメントを得るための行為は、当業者にとって
は常習作業である。
【0143】 ペプチドミメチック 本発明に従えば、目的のシンデスモスポリペプチドのタンパク質結合ドメイン
を削除することにより、ミメチック(例えば、ペプチド剤、または非ペプチド剤
など)を調製することもできる。例えば、「網膜芽腫遺伝子タンパク質に結合す
るヒトパピローマウイルスのペプチド阻害剤(Peptide inhibitors of human pa
pillomavirus protein binding to retinoblastoma gene protein)」(ヨーロ
ッパ特許出願EP-412, 762A およびEP-B31, 080A)などを参照。
【0144】 重要な残基からなる非加水分解性ペプチドアナログは、ベンゾジアゼピン(例
えば、フライディンガー(Freidinger)ら、「ペプチド:化学および生物学(Pe
ptides:Chemistry and Biology)」、G. R. マーシャル(Marshall)編(エス
コム出版社(ESCOM Publisher)、オランダ、ライデン(1988年))などを参照
)、アゼピン(例えば、ハフマン(Huffman)ら、「ペプチド:化学および生物
学(Peptides:Chemistry and Biology)」、G. R. マーシャル(Marshall)編
(エスコム出版社(ESCOM Publisher)、オランダ、ライデン(1988年))など
を参照)、置換γラクタム環類(ガーヴェイ(Garvey)ら、「ペプチド:化学お
よび生物学(Peptides:Chemistry and Biology)」、G. R. マーシャル(Marsh
all)編(エスコム出版社(ESCOM Publisher)、オランダ、ライデン(1988年)
)などを参照)、ケトメチレンプソイドペプチド類(エヴェンソン(Ewenson)
ら、J. Med. Chem. 29:295(1986)、およびエヴェンソン(Ewenson)ら、「ペプ
チド:構造および機能(Peptides:Structure and Function)」、第9回アメリ
カペプチドシンポジウム予稿集(Proceedings of the 9th American Peptide Sy
mposium)(ピアス化学(Pirce Chemical)社、イリノイ州ロックランド(1985
年))などを参照)、□−ターンジペプチドコア類(ナガイ(Nagai)ら、Tetra
hedron Lett 26:647(1985);およびサト(Sato)ら、J. Chem. Soc. Perkin Tr
ans. 1:1231(1986))および□−アミノアルコール類(ゴードン(Gordon)ら、
Biochem. Biophys. Res. Commun. 126:419(1985);およびダン(Dann)ら、Bio
chem. Biophys. Res. Commun. 134:71(1986))などを用いて調製することが可
能である。
【0145】 抗体 また本発明は、目的のシンデスモスポリペプチドと特異的に反応する抗体をも
包含する。標準的なプロトコールを用い、本明細書の記載に従うことにより、抗
タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体を作成することができ
る(例えば、「抗体:実験室マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)
」、ハーロゥ(Harlow)およびレーン(Lane)編(コールドスプリングハーバー
プレス(Cold Spring Harbor Press)(1988年)などを参照)。
【0146】 シンデスモスエピトープに特異的に結合する抗体は、シンデスモス発現の量お
よびパターンを評価するために行う組織サンプルの免疫組織化学染色に用いるこ
ともできる。抗シンデスモス抗体は免疫沈降およびイムノブロットによる診断に
も用いることができ、臨床試験法の一部として、組織および体液内のシンデスモ
スレベルの検出および測定を行うことができる。
【0147】 本発明の抗体に関する別の用途としては、□gt11、□gt18-23、□ZAP および
□ORF8 などのような発現ベクター内に構築されたcDNA ライブラリーの免疫学的
スクリーニングが挙げられる。正しい読み枠(リーディングフレーム)内に正し
い方向に挿入されたコード配列を有するこの種のメッセンジャーライブラリーは
、融合タンパク質を産生することができる。例えば、□gt11は、アミノ末端がβ
−ガラクトシダーゼアミノ酸配列から構成され、カルボキシ末端が外来性ポリペ
プチドから構成されている融合タンパク質を産生する。目的のポリペプチドの抗
原性エピトープは抗体を用いて検出することができ、例えば、本発明の抗体を用
い、感染を行ったプレートから反応性ニトロセルロースフィルターに結合させる
。次に、このアッセイによって評価したファージを感染プレートから単離するこ
とができる。このようにして、他の動物由来の相同体の存在の確認およびクロー
ニングが可能になり、さらに、ヒト由来の別のイソ型(スプライシング変異体を
含む)の検出およびクローニングが可能になる。
【0148】 その他の実施態様 本発明は、さらに、対立遺伝子変異体、天然に存在する突然変異体、誘導によ
る突然変異体、ストリンジェンシーが高いまたは低い条件下において配列番号2
のポリペプチドをコードしている核酸にハイブリダイズするDNA によってコード
されているタンパク質(ストリンジェンシーの高低の定義に関しては、「分子生
物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」
(ジョン・ウィレー&サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、1989年
、6.3.1〜6.3.6を参照。参考として本明細書に取り入れておく)、および抗血清
によってシンデスモスに特異的に結合するポリペプチドを含む。
【0149】 本発明の核酸およびポリペプチドには、開示されている配列内の解析エラーに
よって本明細書に開示している配列とは異なるものも包含する。
【0150】 また本発明は、フラグメント、好ましくは生物学的に活性なフラグメント、ま
たはシンデスモスのアナログをも包含する。生物学的に活性なフラグメントまた
はアナログとは、配列番号2に示すシンデスモスに特徴的である、または、天然
に存在するその他のシンデスモスに特徴的である、任意のイン・ビボ(in vivo
)またはイン・ビトロ(in vitro)活性(例えば、上述した生物学的活性のひと
つまたはそれ以上など)を有するものである。特に好ましいのは、転写後プロセ
ッシングによって生じたフラグメントなどのようにイン・ビボ(in vivo)に存
在するフラグメント、または、スプライシングを受けたRNA の翻訳によって生じ
たフラグメントである。フラグメントには、本来の細胞または内在性細胞におい
て発現されるもの(例えば、アミノ末端シグナル配列の除去などのような翻訳後
プロセッシングの結果として発現されるものなど)、および、CHO 細胞内などの
ような発現系内において調製されるものが含まれる。特に好ましいフラグメント
は、タンパク質溶解性解裂またはその他のスプライシング事象によって調製され
た活性フラグメントである。
【0151】 その他の実施態様は上記の請求項に包含される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ニワトリのシンデスモスのcDNA 配列および予想アミノ酸配列
【図1A】 図1の続き
【図面の詳細な説明】 図1および図1Aは、ニワトリのシンデスモスのcDNA 配列および予想アミノ酸
配列を示す。ヌクレオチド配列は配列番号1の核酸の1番〜1182番に相当してい
る。アミノ酸配列は配列番号2のアミノ酸の1番〜320番に相当している。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】単離された核酸分子であって、 a)配列番号1、配列番号3またはそれらと相補的なヌクレオチド配列との配列
    の一致性が少なくとも60%であるヌクレオチド配列を含む核酸分子; b)配列番号2のアミノ酸配列との配列の一致性が少なくとも約60%であるアミ
    ノ酸配列を含むポリペプチドをコードしている核酸分子; c)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドのフラグメントであって、配
    列番号2のアミノ酸配列のうちの少なくとも15個の連続したアミノ酸残基を含む
    フラグメントをコードしている核酸分子; d)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する天然に存在する対立
    遺伝子変異をコードしている核酸分子であって、このとき、ストリンジェント条
    件下において配列番号1または配列番号3を含む核酸分子とハイブリダイズする
    核酸分子;さらに、 e)1個から2個、3個、5個、10個、20個または40個までのアミノ酸残基が配
    列番号2とは異なっているポリペプチドをコードしている核酸分子; を含む群から選択されることを特徴とする単離された核酸分子。
  2. 【請求項2】単離された核酸分子であって、 a)配列番号1、配列番号3またはそれらと相補的なヌクレオチド配列を含む核
    酸分子;さらに、 b)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしている核酸分子 を含む群から選択されることを特徴とする請求項1記載の単離された核酸分子
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