JP4636396B2 - 直流モータ駆動回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば自動車のワイパー駆動部やいわゆるパワーウインドウの駆動部に適用して好適な直流モータの駆動回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のワイパー駆動部やいわゆるパワーウインドウの駆動部には、起動制御用に電磁継電器が用いられる直流モータの駆動回路が良く使用されている。図18は、ワイパー駆動部に用いられる従来の直流モータ駆動回路の例を示すものであり、また、図19はパワーウインドウの駆動部に用いられる従来の直流モータ駆動回路の例を示すものである。まず、ワイパー駆動部の直流モータ駆動回路の例について説明する。
【0003】
図18に示すように、ワイパー駆動用の直流モータ1の一端側は、電磁継電器2の可動接点(接極子(アーマチュア)により駆動される接点ばねなどに設けられる)ARに接続されている端子(以下、可動接点に接続されている端子を可動接点端子と称する)2aに接続される。
【0004】
また、直流モータ1の他端側は、電磁継電器2の常閉接点N/C (ノーマルクローズの接点(ブレイク接点))に接続されている端子(以下、常閉接点N/C に接続されている端子を常閉接点端子と称する)2bに接続されると共に、その接続点2dが接地される。
【0005】
さらに、電磁継電器2の常開接点N/O (ノーマルオープンの接点(メイク接点))に接続されている端子(以下、常開接点N/O が接続されている端子を常開接点端子と称する)2mは、自動車用のバッテリーからの直流電源電圧が供給される電源端子3に接続される。
【0006】
そして、電磁継電器2のコイル2Cには、ワイパー制御回路4から、使用者のワイパースイッチ5の操作に応じた制御電流が供給される。ワイパースイッチ5は、OFFポジション、間欠ポジションおよび連続ポジションの3個の切換位置を備える。それらの各切換位置の接点5a,5bおよび5cは、ワイパーコントロール4に接続されている。
【0007】
すなわち、ワイパースイッチ5の可動子5mが接点5a(「OFF」ポジション)の切換位置にあるときには、ワイパー制御回路4からはコイル2Cに制御電流が供給されない。このため、電磁継電器2の可動接点ARは、常閉接点N/C 側に接続されているので、直流モータ1の一端および他端が互いに接続され、直流モータ1は制動状態または静止状態にある。
【0008】
ワイパースイッチ5の可動子5mが接点5b(「間欠」ポジション)の切換位置に切り換えられたときには、ワイパー制御回路4は、間欠的に電磁継電器2のコイル2Cに制御電流を供給する。これにより、電磁継電器2では、可動接点ARは、制御電流がコイル2Cに流れる間だけ常開接点N/O 側に接続され、制御電流が途絶えたときには常閉接点N/C 側に戻る。つまり、電磁継電器2の可動接点ARは、制御電流の断続に応じて、常閉接点N/C と、常開接点N/O とに交互に接続される。
【0009】
このとき、直流モータ1には、電磁継電器2の可動接点ARが常開接点N/O 側に接続されるときに、図示のように直流電流Iが流れて、直流モータ1が回転駆動される。また、可動接点ARが常閉接点N/C 側に接続されるときには、直流モータ1への直流電流の供給が停止されると共に、直流モータ1は発電機となって、電流Iとは逆向きの電流が流れて制動される。つまり、直流モータ1が間欠的に回転駆動される。そして、この直流モータ1の間欠的な回転駆動により、間欠的にワイパーが駆動される。
【0010】
また、ワイパースイッチ5の可動子5mが接点5c(「連続」ポジション)の切換位置に切り換えられたときには、ワイパー制御回路4は、連続的に電磁継電器2のコイル2Cに制御電流を供給する。このため、電磁継電器2では、可動接点ARは常開接点N/O 側に接続され、直流モータ1には、連続的に図示のように直流電流Iが流れる。これにより、ワイパーが連続的に駆動される。
【0011】
そして、ワイパースイッチ5の可動子5mが接点5aの切換位置(「OFF」ポジション)に戻されたときには、コイル2Cには制御電流が流れなくなって、電磁継電器2では、可動接点ARは常閉接点N/C 側に接続される状態に復旧する。したがって、直流モータ1は発電機となって、直流電流Iとは逆向きの電流が流れて制動され、停止する。
【0012】
次に、パワーウインドウの駆動部に用いられる従来の直流モータ駆動回路の例を説明する。
【0013】
図19に示すように、パワーウインドウ用の直流モータ11の一端側は、ウインドウアップ制御用の電磁継電器12の可動接点端子12aに接続され、また、直流モータ11の他端側は、ウインドウダウン制御用の電磁継電器13の可動接点端子13aに接続される。
【0014】
そして、電磁継電器12の常閉接点端子12bと、電磁継電器13の常閉接点端子13bとは互いに接続され、その接続点17が接地される。また、電磁継電器12の常開接点端子12mと、電磁継電器13の常開接点端子13mとは互いに接続され、その接続点18が、自動車のバッテリーからの直流電源電圧が供給される電源端子3に接続される。
【0015】
そして、電磁継電器12のコイル12Cには、ウインドウアップ制御回路14から、使用者のウインドウアップ操作に応じた制御電流が供給される。また、電磁継電器13のコイル13Cには、ウインドウダウン制御回路16から、使用者のウインドウダウン操作に応じた制御電流が供給される。
【0016】
すなわち、使用者がウインドウアップ操作をすると、例えばその操作が行われている間、スイッチ15がオンとなり、ウインドウアップ制御回路14から電磁継電器12のコイル12Cに制御電流が流れ、電磁継電器12の可動接点ARは常開接点N/O 側に接続される。したがって、直流モータ11には、図19において、実線の矢印I1で示す方向に直流電流が流れて、直流モータ11は例えば正転方向に駆動され、これにより、自動車の窓ガラスが閉まる方向に上昇運動するようにされる。
【0017】
そして、使用者がウインドウアップ操作を止めると、スイッチ15がオフに戻り、電磁継電器12のコイル12Cには制御電流が流れなくなり、可動接点ARは常閉接点N/C 側に戻る。このため、直流モータ11は制動され、窓ガラスの上昇運動は停止する。
【0018】
また、使用者がウインドウダウン操作をすると、例えばその操作が行われている間、スイッチ17がオンとなり、ウインドウダウン制御回路16から電磁継電器13のコイル13Cに制御電流が流れ、電磁継電器13の可動接点ARは常開接点N/O 側に接続される。したがって、直流モータ11には、図19において、破線の矢印I2で示す方向に直流電流が流れて、直流モータ11は前記とは逆の回転方向に駆動され、これにより、自動車の窓ガラスが下降運動するようにされる。
【0019】
そして、使用者がウインドウダウン操作を止めると、スイッチ17がオフに戻り、電磁継電器13のコイル13Cには制御電流が流れなくなり、可動接点ARは常閉接点N/C 側に戻る。このため、直流モータ11は制動され、窓ガラスの下降運動は停止する。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
以上のようにして、従来の直流モータ駆動回路の場合、電磁継電器の一つの接点組を用い、制御電流を電磁継電器のコイルに供給して、可動接点ARを常開接点N/O 側に接続することにより、直流モータを回転駆動し、また、制御電流を停止して、電磁継電器を復旧させて、可動接点ARを常閉接点N/C 側に接続することにより、直流モータに制動をかけるようにしている。
【0021】
ところで、この種の直流モータ駆動回路に用いられている電磁継電器においては、直流モータに電磁継電器の常開接点N/O を介して直流電流が流れている状態から、コイルに制御電流が流れなくなって電磁継電器が復旧する際には、常開接点N/O からの可動接点ARの開離時に、常開接点N/O と可動接点ARとの間にアークが発生する。
【0022】
このため、電磁継電器の復旧状態における可動接点ARと常開接点との間のギャップ長(以下、説明の簡単のために、このギャップ長を、単に、接点ギャップ長と言うことにする)が小さい場合には、電磁継電器が復旧する際に、常開接点N/O からの可動接点ARの開離時のアークが切れる前に、可動接点ARが常閉接点N/C に接触し、接点組の常閉接点N/C と常開接点N/O との間が短絡(ショート)してしまい、電磁継電器が不良となってしまうおそれがある。
【0023】
そこで、従来は、電源端子3に印加される電圧値(バッテリー電圧値)に応じて、接点ギャップの大きさが定められている。このため、例えば直流12Vのバッテリーが標準の通常の乗用車の場合には、上述のような直流モータ駆動回路用としては、接点ギャップ長が、例えば0.3mmの電磁継電器が用いられる。これに対し、例えば24V(最大値は32V)以上の高電圧が用いられるトラックやバスなどの場合、接点ギャップ長が、例えば1.2mm以上の電磁継電器が必要とされていた。
【0024】
したがって、従来は、電源電圧が大きくなると、接点ギャップ長が長くなるので、電磁継電器が大型化して、プリント基板に実装する際の支障となると共に、可動接点ARのストロークが大きくなるために、電磁継電器の動作速度が遅くなるという問題があった。特に、最近は、ガソリンと電気を併用するエンジンを用いるハイブリットカーや、電気自動車なども登場して、自動車のバッテリーの電圧は、高電圧化しつつあり、上述の問題点は大きい。
【0025】
この発明は、以上の点にかんがみ、接点ギャップ長を大きくした電磁継電器を使用しなくても、電源電圧が高くなった場合の問題を生じないようにした直流モータ駆動回路を提供することを目的とするものである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、この発明による直流モード駆動回路は、
第1の接点組の第1の可動接点が第1の常開固定接点に接続されたときに、前記第1の接点組と連動して電磁制御され、その第2の可動接点が第2の常開固定接点に接続される第2の接点組の前記第2の常開固定接点と前記第1の常開固定接点との直列接続を介して直流電流が直流モータに供給されて、前記直流モータが駆動され、
前記第1の接点組と前記第2の接点組に対する電磁制御が停止されて前記第1の接点組および第2の接点組が連動して復旧して、前記第2の接点組の前記第2の可動接点が常閉固定接点に接続されたとき、前記常閉固定接点を介して、前記直流モータの一端と他端とが接続されて、前記直流モータの回転の制動が行われる
ことを特徴とする。
【0027】
【作用】
上述の構成のこの発明による直流モータ駆動回路によれば、直流モータを駆動すべく、電磁継電器のコイルに制御電流が供給されてその可動子が常開接点側に接続されて、直流モータに直流電流が供給されるとき、その直流電流は、直列に接続された複数個の常開接点を介して直流モータに供給される。
【0028】
したがって、電磁継電器のコイルへの制御電流が停止されて、電磁継電器が復旧する場合の回路電圧は、可動接点(完全に電磁継電器が復旧したときには、可動接点は常閉接点と接続)と常開接点とのギャップが複数個直列に接続されたものに印加されることになるので、それぞれのギャップへの印加電圧は、直列接続された常開接点の個数分の1に分圧されて低くなる。
【0029】
したがって、電磁継電器のコイルへの制御電流が停止されて、電磁継電器が復旧する場合に、可動接点と常開接点N/O との間にアークが発生しても、複数個のギャップのそれぞれの印加電圧が低くなり、接点ギャップ長が短くても、アークによるショートの問題を生じ難くすることができる。そして、直列に接続された複数個の常開接点N/O から複数個の可動接点が同時に開離するため、可動接点の開離速度は等価的に速くなる。
【0030】
以上のことから、この発明によれば、接点ギャップ長が小さい小型の電磁継電器を用いても、その電磁継電器の可動接点が常開接点から離れる時に発生するアークを、可動接点が常閉接点側に戻るまでに切れるようにすることができる。
【0031】
この発明によれば、アーク遮断能力が小さい電磁継電器を用いても、アーク遮断能力を、それ以上に向上させた直流モータ駆動回路を提供することができる。
【0032】
なお、この明細書において、電磁継電器の可動接点が常開接点から離れる時に発生するアークを、可動接点が常閉接点側に戻るまでに切れるようにする能力をアーク遮断能力という。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、この発明による直流モータ駆動回路の実施の形態を、前述したワイパー駆動部およびパワーウインドウ駆動部に適用した場合について、図を参照しながら説明する。
【0034】
[ワイパー駆動部に適用した直流モータ駆動回路の実施の形態]
図1は、この発明をワイパー駆動部に適用した場合の実施の形態の構成を示すものである。この図1の実施の形態においては、ワイパー駆動制御用の電磁継電器20が、ワイパー制御回路33により、駆動制御されることにより、ワイパー駆動用の直流モータ31の回転駆動および制動制御が行われる構成とされる。この図1の実施の形態においては、ワイパー駆動制御用の電磁継電器20として、第1の接点組22と第2の接点組26との2個の接点組を備えるものを使用する。
【0035】
そして、ワイパー駆動用直流モータ31の一端側は、電磁継電器20の第2の接点組26の可動接点29に接続されている可動接点端子26aに接続される。また、直流モータ31の他端側は、電磁継電器20の第2の接点組26の常閉接点27に接続されている常閉接点端子26bに接続されると共に、その接続点22dが接地される。
【0036】
さらに、電磁継電器20の第2の接点組26の常開接点28に接続されている常開接点端子26mは、第1の接点組22の常開接点24に接続されている常開接点端子22mに接続される。この第1の接点組22の常閉接点23が接続されている常閉接点端子22bは遊端とされ、第1の接点組22の可動接点25が接続されている可動接点端子22aは、自動車用のバッテリーからの例えば24Vの直流電源電圧が供給される電源端子32に接続される。
【0037】
そして、電磁継電器20の2個の接点組22および26を連動して制御するためのコイル21には、ワイパー制御回路33から、使用者のワイパースイッチ34の操作に応じた制御電流が供給される。ワイパースイッチ34は、OFFポジション、間欠ポジションおよび連続ポジションの3個の切換位置を備える。それらの各切換位置の接点34a,34bおよび34cは、ワイパー制御回路33に接続されている。ワイパースイッチ34の可動子34mが使用者の操作に応じた切換位置に切り換えられると、ワイパー制御回路33により、その切換位置に応じたワイパー制御が行われる。
【0038】
図2は、図1の簡略化回路である。この図2をも参照しながら、図1の直流モータ駆動回路の動作について説明する。
【0039】
ワイパースイッチ34の可動子34mが接点34a(「OFF」ポジション)の切換位置にあるときには、ワイパー制御回路33からはコイル21に制御電流が供給されないので、電磁継電器20の接点組22および26の可動接点25および29は、共に常閉接点23および27に接続されている。したがって、直流モータ31の両端は、第2の接点組26の常閉接点27側を介して互いに接続された状態となる。この状態においては、直流モータ31は制動状態にある。
【0040】
ワイパースイッチ34が接点34b(「間欠」ポジション)の切換位置に切り換えられたときには、ワイパー制御回路33により、間欠的に電磁継電器20のコイル21に制御電流が流れるようにされる。すると、電磁継電器20では、間欠的に制御電流がコイル21に流れる間だけ、2個の接点組22および26の可動接点25および29は、連動してほぼ同時にそれぞれ常開接点24および28に接続される。そして、コイル21に制御電流が流れない間は、それぞれの可動接点25および29は、連動してほぼ同時に常開接点24および28から開離して、ほぼ同時にそれぞれ常閉接点23および27に戻る。
【0041】
そして、電磁継電器20の2個の接点組22および26の可動接点25および29が、それぞれ常開接点24および28に接続されるときに、直流モータ31には、図2の矢線Iに示すように直流電流Iが流れて、この直流モータ31が回転駆動される。また、電磁継電器20の2個の接点組22および26の可動接点25および29が、それぞれ常閉接点23および27に接続されるときには、直流モータ31は制動される。つまり、直流モータ31が間欠的に回転駆動され、この直流モータ31の間欠的な回転駆動により、間欠的にワイパーが駆動される。
【0042】
また、ワイパースイッチ34が接点34c(「連続」ポジション)の切換位置に切り換えられたときには、ワイパー制御回路33により、連続的に電磁継電器20のコイル21に制御電流が流れる。このため、電磁継電器20では、2個の接点組22および26の可動接点25および29は、連動してほぼ同時にそれぞれ常開接点24および28に接続され、直流モータ31には、連続的に図2の矢線Iに示すように直流電流Iが流れる。これにより、ワイパーが連続的に駆動される。
【0043】
そして、ワイパースイッチ34が接点34a(「OFF」ポジション)の切り換え位置に戻されたときには、コイル21には制御電流が流れなくなるので、電磁継電器20では、2個の接点組22および26の可動接点25および29は、連動してほぼ同時にそれぞれ常閉接点23および27に復旧する。
【0044】
なお、この場合に、この明細書において、「複数個の可動接点が連動してほぼ同時に常閉接点N/C 側に復旧する」とは、複数個の接点組の可動接点のそれぞれが常開接点N/O から常閉接点N/C 側に復旧するときに、それらの複数個の可動接点が、共に、常開接点N/O にも、常閉接点N/C にも接触しない状態を同時に生じる状態を経て、常閉接点N/C 側に復旧することを意味する。
【0045】
すなわち、「複数個の可動接点が連動して同時に復旧する」という場合に、かならずしも、複数個の可動接点が、全く同時に常開接点N/O から離れる必要はなく、また、全く同時に常閉接点N/C に接触するように復旧する必要はない。要は、複数個の可動接点が、共に、常開接点N/O にも、常閉接点N/C にも接触しない状態を同時に生じる状態が生じればよいことを意味している。
【0046】
一方、「複数個の可動接点が連動してほぼ同時に常開接点N/O 側に切り換わる」場合には、複数個の可動接点が、常開接点N/O にも、常閉接点N/C にも接触しない状態を同時に生じる状態を経ることは必須ではなく、ある一つの可動接点が常閉接点N/C から常開接点N/O に完全に切り替わってから、他の可動接点が常閉接点N/C から常開接点N/O に切り替わるようにされていてもよい。
【0047】
なお、複数個の電磁継電器により、あるいは複数個のコイルにより、それぞれ「複数個の可動接点が連動してほぼ同時に常閉接点N/C 側に復旧する」ようにする場合、各コイルへの直流電流の供給タイミングを制御するために、例えば、その直流電流の供給路に遅延回路等のタイミング制御回路を設けるようにしてもよい。
【0048】
上述の構成の図1の実施の形態の場合、図2から容易に判るように、電磁継電器20の第2の接点組26の常開接点28は、第1の接点組22の常開接点24を通じて電源端子32に接続されている。すなわち、直流モータ31に流れる直流電流Iの電流路には、2個の常開接点24および28が直列に接続される状態となる。
【0049】
したがって、各接点組22および26において、それぞれの可動接点25および29が常開接点24および28側から常閉接点23および27側に復旧するときに、それぞれの可動接点25および29と常開接点24および28との間のギャップにアークが発生した場合、電源電圧は、それらの2個のギャップに印加されることになるので、電源電圧は分圧されて、1つのギャップ当たりの印加電圧は1/2になる。そして、可動接点25および29が常閉接点23および27に接続される状態に戻ったときには、電源電圧は、復旧状態における可動接点25および29と常開接点24および28との間の2個のギャップに印加されることになる。
【0050】
したがって、この実施の形態の直流モータ駆動回路においては、アーク遮断能力を考慮する際の第1および第2の接点組22および26の接点ギャップ長は、それら第1および第2の接点組の接点ギャップ長を等しくするならば、電源電圧が、そのときの電源電圧の1/2の電圧のときの電圧値を考慮して定めればよい。
【0051】
このため、接点組22および26のそれぞれにおける接点ギャップ長が短くても、前述したようなアークによるショートの問題を生じ難くすることができる。
【0052】
しかも、接点ギャップの大きさが小さい複数個の常開接点を直列に接続した構成により、常開接点の開離速度を等価的に高速にすることができる。すなわち、この実施の形態においては、それぞれの接点ギャップの大きさは小さい複数個の常開接点を直列に接続したことにより、電源電圧が印加される接点ギャップの大きさを等価的に大きくすることができる。そして、この等価的な大きさの接点ギャップについての開離速度は、直列接続の各常開接点がほぼ同時に開離するので、一つの常開接点についての開離速度でよくなり、その等価的な大きさの接点ギャップを一つの接点組で実現する場合に比べて、速くなる。
【0053】
したがって、この点においても、この実施の形態の直流モータ駆動回路によれば、接点ギャップ長が小さい電磁継電器であっても、アーク遮断能力を向上させることができる。
【0054】
そして、この実施の形態の直流モータ駆動回路によれば、バッテリーの電圧が高くなっても、電磁継電器の接点ギャップ長を大きくする必要はないので、小型の電磁継電器を使用することができる。また、電源のバッテリー電圧が高くなっても、接点ギャップ長は短くてよいので、動作速度が速い電磁継電器を用いることができるという効果もある。
【0055】
なお、図1において、第2の接点組26の常開接点端子26mを、第1の接点組22の可動接点端子22aに接続し、第1の接点組22の常開接点端子22mを電源端子32に接続するように構成しても、上述と同様の作用効果が得られる。
【0056】
また、図1の実施の形態は、直流モータ31の一方の端部を接地する場合であるが、直流モータ31の一方の端部を電源端子32に接続するように構成することもできる。図3は、その場合の構成例を示すもので、図1の例と同一部分には同一符号を付してある。
【0057】
すなわち、図3の実施の形態では、直流モータ31の一端側は、電磁継電器20の第1の接点組22の可動接点端子22aに接続され、また、直流モータ31の他端側は、電磁継電器20の第1の接点組22の常閉接点端子22bに接続されると共に、その接続点22eが電源端子32に接続される。
【0058】
そして、電磁継電器20の第1の接点組22の常開接点端子22mは、第2の接点組26の常開接点端子26mに接続される。この第2の接点組26の常閉接点端子26bは遊端とされ、第2の接点組26の可動接点端子26aは、接地される。その他は、図1の例と全く同様に構成される。
【0059】
この図3の構成の実施の形態の場合の簡略化回路を図4に示す。この図3の実施の形態の場合も、上述した図1の実施の形態の場合と全く同様の作用効果が得られる。
【0060】
なお、この図3の構成においても、第1の接点組22の常開接点端子22mを、第2の接点組26の可動接点端子26aに接続し、第2の接点組26の常開接点端子26mを接地するように構成しても、上述と同様の作用効果が得られる。
【0061】
なお、図1または図3の実施の形態において、第1の接点組22と第2の接点組26とは、それぞれ別々の電磁継電器を用いて構成してもよい。その場合には、それら別々の電磁継電器にワイパー制御回路33からの制御電流を同時に供給して、それら別々の電磁継電器を連動してほぼ同時に制御するようにしてもよい。
【0062】
この場合に、別々の電磁継電器の連動制御に当たっては、それらの電磁継電器のそれぞれの接点組の可動接点のそれぞれが、常開接点N/O 側から常閉接点N/C 側に復旧するときに、それらの複数個の可動接点が、共に、常開接点N/O にも、常閉接点N/C にも接触しない状態を同時に生じる状態を経て、常閉接点N/C 側に復旧するように、必要に応じてタイミング制御することは前述と同様である。
【0063】
このタイミング制御の点においては、図1または図3の実施の形態のように、一つの電磁継電器において1個のコイルにより、複数個の可動接点を同時に切換制御するようにした場合には、上述のタイミング制御は容易である、あるいは不要となるというメリットがある。
【0064】
上述の実施の形態では、各接点組の各接点からそれぞれ端子が導出されており、第1の接点組22の常開接点24と、第2の接点組の常開接点28とは、それらの常開接点端子22mと、28mとを接続することにより、直列に接続するようにしたが、上述のような自動車部品として、予め、筐体内で2つの接点組の常開接点を直列に接続した電磁継電器を用意して、用いるようにすることもできる。
【0065】
図5は、図1に示したワイパー駆動制御用の電磁継電器20の構造の一例を示す図であり、この例は、筐体内で2つの接点組の常開接点を直列に接続して、常開接点端子は省略したものである。図5は、電磁継電器20を各部品に分解して示したものである。
【0066】
図5の電磁継電器20の各部品は、端子板201上に組み立てられ、カバー202が端子板201に組み合わされることにより、組み立てられた部品が覆われる構成とされる。この例の電磁継電器20の筐体は、端子板201とカバー202とにより構成される。
【0067】
図5において、203は電磁石組立であり、L字型の継鉄203aによって鉄心入りのコイル21を保持する構造を有している。そして、この電磁石組立203は、コイル21の一端および他端がそれぞれ接続されている導電体材料からなるコイル端子204および205を備える。このコイル端子204および205は、端子板201のコイル端子導出用貫通孔201a,201bを貫通して、外部に導出される。
【0068】
209は、導電体材料からなる共通常開接点板である。この共通常開接点板209には、第1の接点組22の常開接点24と、第2の接点組26の常開接点28とが形成されている。この共通常開接点板209は、折り曲げ片209aを備え、その折り曲げ片209aが電磁石組立203に設けられている凹溝212に嵌合されることにより、共通常開接点板209が電磁石組立203に取り付けられる。共通常開接点板209からは、電磁継電器20の筐体外部に端子は導出されない。
【0069】
206は、第2の接点組26の常閉接点27が形成されている導電体材料からなる常閉接点板である。この例では、この常閉接点板206は、電磁石組立203に設けられている挿入溝211に嵌合されて、電磁石組立203に取り付けられるが、その際、常閉接点27と、共通常開接点板209に設けられている常開接点28とが所定のギャップ長だけ離れるように、常閉接点板206は、取り付けられる。なお、挿入溝211は、常開接点28と常閉接点27との間の距離分だけの高さを備えるように構成されている。
【0070】
常閉接点板206には、これと一体に常閉接点端子206tが形成されている。この常閉接点端子206tは、端子板201の端子導出用貫通孔201cを貫通して外部に導出されるようにされている。
【0071】
207および208は、導電体材料からなる可動接点ばねである。可動接点ばね207には可動接点25が形成され、可動接点ばね208には可動接点29が形成されている。この例では、これら可動接点ばね207および208を絶縁物213、214により固着して、磁性材からなる接極子板215に取り付けて接極子組立を構成する。
【0072】
すなわち、この例においては、2個の可動接点ばね207および208は、ほぼL字形に折り曲げられた形状を備え、これら可動接点ばね207、208を図5に示すように揃えて並べた状態において、その折り曲げ位置の両側で絶縁物213および214により、これら2個の可動接点ばね207、208を固着する。この固着は、例えば絶縁物213、214として絶縁樹脂を用いたインサート成型によって行われる。
【0073】
そして、可動接点ばね207、208の、可動接点25および29が設けられる方の固着部分の絶縁物214には、磁性材からなる接極子板215が固着されて、接極子組立が構成される。
【0074】
そして、可動接点ばね207、208を含むこの接極子組立は、絶縁物213の部分で、電磁石組立203に取り付けられる。このとき、コイル21に電流が流れていない状態においては、可動接点ばね208に設けられている可動接点29が、常閉接点27に接触すると共に、常開接点28と所定のギャップ長分だけ離れるようにされ、また、可動接点ばね207に設けられている可動接点25は、常開接点24と所定のギャップ長分だけ離れるようにされる。
【0075】
そして、この取り付け状態では、電磁石組立203のコイル21に電流が流れることにより構成される電磁石により、接極子板215が吸引されるように構成されている。接極子板215は、2個の可動接点ばね207、208に固着されているので、2個の可動接点ばね207、208は、この接極子板215の動きに応じて同時に駆動される。
【0076】
そして、可動接点ばね207の可動接点端子207tは、端子板201の端子導出用貫通孔201dを貫通して外部に導出され、また、可動接点ばね208の可動接点端子208tは、端子板201の端子導出用貫通孔201eを貫通して外部に導出されるようにされている。
【0077】
この第2の実施の形態の電磁継電器20は、以上のような構成であるので、コイル21に電流が供給されない状態では、接極子板215は、電磁石組立203側に吸引されず、このため、可動接点ばね207および208は、共通常開接点板209側に変位されず、第2の接点組26の可動接点29は、常開接点28とは離間して、常閉接点27に接続される状態になるとともに、第1の接点組22の可動接点25は、常開接点24と離間される状態となる。
【0078】
そして、コイル端子204および205を通じてコイル21に電流が供給されると、接極子板215が電磁石組立203に吸引されるため、可動接点ばね207および208は、常開接点板209側に同時に変位し、可動接点25および29が、それぞれ常開接点24および28に同時に接続される。
【0079】
したがって、可動接点ばね207の端子207tと可動接点ばね208の端子208tとの間には、2個の常開接点24、28が直列に接続されることになる。
【0080】
そして、コイル21への電流の供給が停止されると、電磁石組立203による接極子板215の吸引力が消滅するため、可動接点ばね207および208は、自身の弾性復帰力により、ほぼ同時に共通常開接点板209の常開接点24および28から開離し、可動接点29が常閉接点27に接続され、可動接点25が常開接点24と離間する元の状態に復帰する。
【0081】
このときに、電磁継電器20が、図1の直流モータ駆動回路のように接続された場合、電源電圧が印加される等価的な接点ギャップ長は、可動接点29と常開接点28との間のギャップ長g1と、可動接点25と常開接点24との間のギャップ長g2との和となり、電源電圧は、それぞれのギャップ長g1,g2に分圧されて印加されることになる。したがって、前述したアーク遮断能力として十分なギャップ長g1,g2の値は、電源電圧が、一つの接点ギャップに印加される場合に比較して短くてよくなる。
【0082】
そして、この例の場合、電磁継電器20として必要な接点ギャップ長は、g1(あるいはg2;g1とg2とはほぼ等しい)であるので、一つの接点組の接点ギャップの場合の、ほぼ1/2とすることができる。したがって、電磁継電器20は小型のものとすることができる。
【0083】
また、この実施の形態の電磁継電器20の場合には、接極子カードを用いない構成であるので、部品点数を少なくすることができる。
【0084】
また、この実施の形態の構成によれば、2個の可動接点ばね207、208が、絶縁物により接極子板215に固定されているので、2個の可動接点25、29の一方と常開接点24、28の一方が溶着したときには、他方の可動接点も、復帰位置まで戻らない。このため、常閉接点が存在しない方の可動接点25と常開接点24とが溶着しても、他方の可動接点29は、常閉接点27側には戻らないので、電磁継電器の可動接点の常開接点からの開離時の継続アークにより、常開接点と常閉接点との間がデッドショートとなることはない。
【0085】
したがって、上述のような溶着が発生したときであっても、電磁継電器が破壊されてしまうだけであって、同じ回路基板上の制御回路などを破壊してしまうような事態を回避することができる。
【0086】
[パワーウインドウ駆動部に適用した直流モータ駆動回路の実施の形態]
次に、この発明による直流モータ駆動回路の実施の形態を、パワーウインドウ駆動部に適用した場合について説明する。
【0087】
図6は、この発明をパワーウインドウ駆動部に適用した実施の形態の構成を示すものである。この図6の実施の形態においては、前述した図19の従来の構成における電磁継電器12および13の代わりに、上述の実施の形態と同様の2個の接点組を備える電磁継電器40および50を用いる。
【0088】
すなわち、パワーウインドウ用の直流モータ36の一端側は、ウインドウアップ制御用の電磁継電器40の第2の接点組46の可動接点48が接続されている可動接点端子46aに接続され、また、直流モータ36の他端側は、ウインドウダウン制御用の電磁継電器50の第2の接点組52の可動接点58が接続されている可動接点端子52aに接続される。
【0089】
そして、電磁継電器40の第2の接点組46の常閉接点47に接続されている常閉接点端子46bと、電磁継電器50の第2の接点組56の常閉接点57に接続されている常閉接点端子56bとは互いに接続され、その接続点61が接地される。
【0090】
また、電磁継電器40の第2の接点組46の常開接点48が接続されている常開接点端子46mは、第1の接点組41の常開接点44が接続されている常開接点端子42mに接続され、この第1の接点組41の常閉接点43が接続されている常閉接点端子42bは遊端とされる。
【0091】
また、電磁継電器50の第2の接点組56の常開接点58が接続されている常開接点端子56mは、第1の接点組52の常開接点54が接続されている常開接点端子52mに接続され、この第1の接点組52の常閉接点が接続されている常閉接点端子52bは遊端とされる。
【0092】
さらに、電磁継電器40の第1の接点組42の可動接点45が接続されている可動接点端子42aと、電磁継電器50の第1の接点組52の可動接点55が接続されている可動接点端子52aとが互いに接続され、その接続点62が電源端子32に接続される。
【0093】
そして、電磁継電器40のコイル41には、ウインドウアップ制御回路63から、使用者のウインドウアップ操作に応じた制御電流が供給される。ウインドウアップ制御回路63には、使用者のウインドウアップ操作のためのスイッチ64が接続されている。また、電磁継電器50のコイル51には、ウインドウダウン制御回路65から、使用者のウインドウダウン操作に応じた制御電流が供給される。ウインドウダウン制御回路65には、使用者のウインドウダウン操作のためのスイッチ66が接続されている。
【0094】
図7は、図6の簡略化回路である。この図7をも参照しながら、図6の直流モータ駆動回路の動作について説明する。
【0095】
使用者がウインドウアップ操作をすると、例えばその操作が行われている間、スイッチ64がオンとなり、ウインドウアップ制御回路63から電磁継電器40のコイル41に制御電流が流れ、電磁継電器40の第1および第2の接点組42および46の可動接点45および49のそれぞれは、連動してほぼ同時に常開接点44および48側に接続される。したがって、直流モータ36には、図7において、実線の矢印Inで示す方向に直流電流Inが流れて、直流モータ36は例えば正転方向に駆動され、これにより、自動車の窓ガラスが上昇運動するようにされる。
【0096】
そして、使用者がウインドウアップ操作を止めると、スイッチ64がオフに戻り、電磁継電器40のコイル41には制御電流が流れなくなり、2個の接点組42および46の可動接点45および49のそれぞれは、連動してほぼ同時に常閉接点43および47側に戻る。このため、直流モータ36は制動されて、窓ガラスの上昇運動が停止する。
【0097】
また、使用者がウインドウダウン操作をすると、例えばその操作が行われている間、スイッチ66がオンとなり、ウインドウダウン制御回路65から電磁継電器50のコイル51に制御電流が流れ、電磁継電器50の2個の接点組52および56の可動接点55および59のそれぞれは、連動してほぼ同時に常開接点54および58側に接続される。したがって、直流モータ36には、図7において、破線の矢印Irで示す方向に直流電流Irが流れて、直流モータ36は前記とは逆の回転方向に駆動され、これにより、窓ガラスが下降運動するようにされる。
【0098】
そして、使用者がウインドウダウン操作を止めると、スイッチ66がオフに戻り、電磁継電器50のコイル51には制御電流が流れなくなり、2個の接点組52および56の可動55および59のそれぞれは、連動してほぼ同時に常閉接点54および58側に戻る。このため、直流モータ36は制動されて、窓ガラスの下降運動が停止する。
【0099】
このパワーウインドウの駆動部に適用した場合の実施の形態においても、電磁継電器40または50の第2の接点組46または56の常開接点48および58は、第1の接点組42または52の常開接点44および48を通じて電源端子32に接続される構成であり、直流モータ36に流れる、直流電流InまたはIrの電流路には、2個の常開接点44と48または54と58が直列に接続される状態となる。
【0100】
したがって、この実施の形態においても、前述の実施の形態と同様にして、各接点組における接点ギャップ長が小さい電磁継電器40および50を用いても、アーク遮断能力が向上する。すなわち、この実施の形態の直流モータ駆動回路によれば、電源電圧が高くなっても接点ギャップの小さい小型の電磁継電器を使用することができる。
【0101】
なお、図6において、電磁継電器40では第2の接点組46の常開接点端子46mを、第1の接点組42の可動接点端子42aに接続し、第1の接点組42の常開接点端子42mを電源端子32に接続し、また、電磁継電器50では第2の接点組56の常開接点端子56mを、第1の接点組52の可動接点端子52aに接続し、第1の接点組52の常開接点端子52mを電源端子32に接続するように構成しても、上述と同様の作用効果が得られる。
【0102】
また、図6の実施の形態は、直流モータ36の制動時、直流モータ36の両端は接地するように構成したが、直流モータ36の制動時に、直流モータ36の両端を電源端子32に接続することもできる。図9は、その場合の構成例を示すもので、図6の例と同一部分には同一符号を付してある。
【0103】
すなわち、図9の実施の形態では、直流モータ36の一端側は、電磁継電器40の第1の接点組42の可動接点端子42aに接続され、また、直流モータ36の他端側は、電磁継電器50の第1の接点組52の可動接点端子52aに接続される。そして、電磁継電器40の第1の接点組42の常閉接点端子42bと電磁継電器50の第1の接点組52の常閉接点端子52bとが互いに接続されると共に、その接続点67が電源端子32に接続される。
【0104】
そして、電磁継電器40の第1の接点組42の常開接点端子42mは、第2の接点組46の常開接点端子46mに接続され、また、電磁継電器50の第1の接点組52の常開接点端子52mは、第2の接点組56の常開接点端子56mに接続される。
【0105】
そして、電磁継電器40および50の、それぞれの第2の接点組46および56の常閉接点端子46bおよび56bのそれぞれは遊端とされ、電磁継電器40および50の第2の接点組46および56の可動接点端子46aおよび56aは、互いに接続され、その接続点68が接地される。その他は、図6の例と全く同様に構成される。
【0106】
この図9の構成の実施の形態の場合の簡略化回路を図8に示す。この図9の実施の形態の場合も、上述した図6の実施の形態の場合と全く同様の作用効果が得られる。
【0107】
なお、この図9の構成においても、電磁継電器40では第1の接点組42の常開接点端子42mを、第2の接点組46の可動接点端子46aに接続し、第2の接点組46の常開接点端子46mを接地し、また、電磁継電器50では第1の接点組52の常開接点端子52mを、第2の接点組56の可動接点端子56aに接続し、第2の接点組56の常開接点端子56mを接地するように構成しても、上述と同様の作用効果が得られる。
【0108】
また、第1の接点組42と第2の接点組46とは、それぞれ別々の電磁継電器を用いて構成してもよい。同様に、第1の接点組52と第2の接点組56とは、それぞれ別々の電磁継電器を用いて構成してもよい。その場合には、それら別々の電磁継電器に、ウインドウアップ制御回路63またはウインドウダウン制御回路64からの制御電流を同時に供給して、それら別々の電磁継電器を連動してほぼ同時に制御するようにしてもよい。
【0109】
この場合に、別々の電磁継電器の連動制御に当たっては、それらの電磁継電器のそれぞれの接点組の可動接点のそれぞれが常開接点N/O から常閉接点N/C 側に復帰するときに、それらの複数個の可動接点が、共に、常開接点N/O にも、常閉接点N/C にも接触しない状態を同時に生じる状態を経て、常閉接点N/C 側に復帰するように、必要に応じてタイミング制御することは前述と同様である。
【0110】
なお、図6および図9に示したように、1個のコイルで、複数個の可動接点を連動してほぼ同時に切換制御するようにしたときに、上述のタイミング制御が容易である、あるいは不要となるというメリットがある。
【0111】
また、2個の電磁継電器40、50を用いるのではなく、2個のコイルと、それらのコイルによりそれぞれ制御される複数個の接点組を、1個の筐体に収納した1個の電磁継電器を用いるようにすることもできる。
【0112】
そのように1個の電磁継電器の構成とした場合には、上述のタイミング制御が容易である、あるいは不要となるだけでなく、1個の電磁継電器で、パワーウインドウのアップコントロールおよびダウンコントロールが可能となるというメリットがある。
【0113】
図10は、そのように2個の電磁継電器40および50の機能を1個の筐体に収納した、1個の電磁継電器300の構成の一例を示すものである。この図10は、電磁継電器300を各部品に分解して示したものである。
【0114】
図10の電磁継電器300の各部品は、端子板301上に組み立てられ、カバー302が端子板301に組み合わされることにより、組み立てられた部品が覆われる構成とされる。電磁継電器300の筐体は、端子板301とカバー302とにより構成される。端子板301には、電磁継電器40の筐体の外部に導出する端子用の貫通孔301a,301b,301c,301d,301e,301g,301h,301i,301jが設けられている。
【0115】
図10の電磁継電器300の例は、図9に示した電磁継電器40および電磁継電器50のそれぞれに対応する内部構成部分として、図5に示した電磁継電器20を用いたものとほぼ等しい。
【0116】
図10において、参照符号403以降の400番代の符号を付与した部分は、図9の電磁継電器40に対応する部分であり、参照符号503以降の500番代の符号を付与した部分は、図9の電磁継電器50に対応する形成する部分である。説明の理解を容易にするため、図10においては、常閉接点、常開接点および可動接点並びにコイルの番号は、図9の電磁継電器40および50のそれらに対応させて示すものとする。
【0117】
図10において、403および503は、それぞれ電磁石組立である。それぞれの電磁石組立403および503は、L字型の継鉄403aおよび503aによって鉄心入りのコイル41および51を保持する構造を有している。そして、電磁石組立403および503は、それぞれコイル41および51の一端および他端がそれぞれ接続されている導電体材料からなるコイル端子404、405および504、505を備える。これらのコイル端子404、405、504、505は、端子板301のコイル端子導出用貫通孔301a,301b,301c,301dを貫通して、外部に導出される。
【0118】
409は、常開接点44と、常開接点48とが共通に設けられる共通常開接点板である。また、509は、常開接点54と、常開接点58とが共通に設けられる共通常開接点板である。
【0119】
これらの共通常開接点板409および509は、それぞれ折り曲げ片409aおよび509aを備え、その折り曲げ片409aおよび509aが電磁石組立403および503に設けられている凹溝412および512に嵌合されることにより、共通常開接点板409および509が電磁石組立403および503に取り付けられる。これらの共通常開接点板409および509からは、電磁継電器300の筐体外部に端子は導出されない。
【0120】
406は、常閉接点43が形成されている導電体材料からなる常閉接点板である。また、506は、常閉接点53が形成されている導電体材料からなる常閉接点板である。
【0121】
この例では、これらの常閉接点板406と506のそれぞれと一体に常閉接点端子406tおよび506tが形成されている。これらの常閉接点端子406t、506tは、端子板301の端子導出用貫通孔301e、301fを貫通して外部に導出されるようにされている。
【0122】
そして、この例では、この常閉接点板406および506は、電磁石組立403および503にそれぞれ設けられている挿入溝411および511に嵌合されて、電磁石組立403および503のそれぞれに取り付けられる。その際、常閉接点43と、共通常開接点板409に設けられている常開接点44とが所定のギャップ長だけ離れるように、常閉接点板406は、電磁石組立403に取り付けられると共に、常閉接点53と、共通常開接点板509に設けられている常開接点54とが所定のギャップ長だけ離れるように、常閉接点板506は、電磁石組立503に取り付けられる。なお、挿入溝411および511は、常開接点44と常閉接点43との間の距離分、および常開接点54と常閉接点53との間の距離分だけの高さを備えるように構成されている。
【0123】
407および408は、可動接点ばねであり、導電体材料からなる。可動接点ばね407には可動接点45が形成され、可動接点ばね408には可動接点49が形成されている。この例では、これら可動接点ばね407および408を絶縁物413および414により固着して接極子板415に取り付けて、接極子組立を構成する。
【0124】
また、507および508は、可動接点ばねであり、導電体材料からなる。可動接点ばね507には可動接点55が形成され、可動接点ばね508には可動接点59が形成されている。この例では、これら可動接点ばね507および508を絶縁物513および514により固着して接極子板515に取り付けて、接極子組立を構成する。
【0125】
可動接点ばね407、408、507および508は、ほぼL字形に折り曲げられた形状を備え、可動接点ばね407と408とが、また、可動接点ばね507と508とが、それぞれ図10に示すように揃えて並べられた状態において、その折り曲げ位置の両側で絶縁物413と414とにより、また、絶縁物513と514とにより、固着される。この固着は、例えば絶縁物413および414、また、絶縁物513および514として絶縁樹脂を用いたインサート成型によって行われる。
【0126】
そして、絶縁物414および514には、磁性材料からなる接極子板415および515がそれぞれ固着されて、それぞれの接極子組立が構成される。
【0127】
そして、それぞれの接極子組立は、絶縁物413および513の部分で、電磁石組立403および503のそれぞれに取り付けられる。このとき、コイル41および51に電流が流れていない状態においては、可動接点ばね407および507に設けられている可動接点45および55が、常閉接点43および53に接触すると共に、常開接点44および54と所定のギャップ長分だけ離れるようにされ、また、可動接点ばね408および508に設けられている可動接点49および59は、常開接点48および58と所定のギャップ長分だけ離れるようにされる。
【0128】
そして、この取り付け状態では、電磁石組立403および503のコイル41および51に電流が流れることにより構成される電磁石により、接極子板415および515が吸引されるように構成されている。接極子板415および515は、それぞれ2個の可動接点ばね407、408および507、508に固着されているので、2個の可動接点ばね407、408および507、508のそれぞれは、接極子板415、515の動きに応じてそれぞれ同時に駆動される。
【0129】
なお、可動接点ばね407、408、507および508の可動接点端子407t,408t,507tおよび508tのそれぞれは、端子板301の端子導出用貫通孔301g,301h,301iおよび301jを貫通して外部に導出されるようにされている。
【0130】
この実施の形態の電磁継電器300は、以上のような構成であるので、図9の直流モータ駆動回路において、2個の電磁継電器40および50を用いた場合と、同様の動作を行なう。
【0131】
図11は、2個の電磁継電器40および50の機能を1個の筐体に収納した、1個の電磁継電器300の、他の例を示す図であり、これも各部品に分解して示したものである。この例の電磁継電器300は、前述した図10の電磁継電器300において、常開接点44、48、54および58が、共通の1枚の導電体板部として構成される共通常開接点板320上に形成されて、これにより、常開接点44、48、54および58が、電気的に共通に接続されるように構成されたものである。
【0132】
共通常開接点板320を、電磁石組立403および503に共通に取り付けるために、この例では、共通取付板310が用いられる。この共通取付板310は、嵌合部311および312を備え、この嵌合部311および312内に、電磁石組立403および503のそれぞれに設けられる突部421および521がそれぞれ挿入嵌合されることにより、共通取付板310が電磁石組立403および503と結合される。
【0133】
共通取付板310には、さらに、電磁石組立403および503の底面のそれぞれに対応する位置に弾性突板部313が設けられ、この弾性突板部313の凹孔内に、図示しない電磁石組立403および503側に設けられている突部が嵌合して、共通取付板310が電磁石組立403および503としっかりと結合される。
【0134】
共通取付板310には、共通常開接点板320と、常閉接点板422および522とが取り付けられる。常閉接点板422には、常閉接点43が設けられ、常閉接点板522には、常閉接点53が設けられる。これらの常閉接点板422と522のそれぞれと一体に常閉接点端子422tおよび522tが形成されている。これらの常閉接点端子422t、522tは、端子板301の端子導出用貫通孔301e、301fを貫通して外部に導出されるようにされている。
【0135】
このため、共通取付板310の電磁石組立403、503側との反対側の面には、図示は省略したが、共通常開接点板320の圧入板部321が圧入される凹溝が形成されると共に、常閉接点板422および522の圧入突起423および523が圧入される凹溝が形成される。
【0136】
そして、可動接点ばね407、408、507および508は、共通取付板310の分だけ可動接点45、49、55および59を設ける側の長さが長くされる。また、常閉接点板422および522の位置が、図10の場合とは、ずれているので、それに合わせて、可動接点ばね407と408、また、可動接点ばね507と508の位置が、図10とは逆となっている。
【0137】
その他は、図10の場合と同様に構成されている。
【0138】
この図11の構成の電磁継電器300によっても、上述の実施の形態と同様の作用効果が得られることは勿論である。そして、この図11の構成の電磁継電器によれば、4組の接点組の常開接点44、48、54および58は、共通の1枚の導電体板部として構成される共通常開接点板320上に形成され、これにより、電気的に共通に接続されているので、構成を簡略にすることができる。
【0139】
図12は、パワーウインドウ駆動部に適用した直流モータ駆動回路の、さらに他の実施の形態を示す回路図である。
【0140】
この図12の実施の形態においては、パワーウインドウ用の直流モータ36の一端側は、ウインドウアップ制御用の電磁継電器70の可動接点74から導出される可動接点端子70aに接続され、また、直流モータ36の他端側は、ウインドウダウン制御用の電磁継電器80の可動接点84から導出される可動接点端子80aに接続される。
【0141】
そして、電磁継電器70の常閉接点72から導出される常閉接点端子70bと、電磁継電器80の常閉接点82から導出される常閉接点端子80bとは互いに接続され、その接続点77が接地される。また、電磁継電器70の常開接点73から導出される常開接点端子70mと、電磁継電器80の常開接点83から導出される常開接点端子80mとが接続され、その接続点88がウインドウアップダウン共用の電磁継電器90の常開接点93から導出される常開接点端子90mに接続される。
【0142】
そして、電磁継電器90の常閉接点92から導出される常閉接点端子90bは遊端とされ、また、電磁継電器90の可動接点94から導出される可動接点端子90aは電源端子32に接続される。
【0143】
そして、ウインドウアップ制御回路63からの、使用者のウインドウアップ操作に応じた制御電流は、電磁継電器70のコイル71に供給されると共に、電磁継電器90のコイル91に供給される。また、ウインドウダウン制御回路65からの、使用者のウインドウダウン操作に応じた制御電流は、電磁継電器80のコイル81に供給されると共に、電磁継電器90のコイル91に供給される。
【0144】
図13は、図12の簡略化回路である。この図13をも参照しながら、図12の直流モータ駆動回路の動作について説明する。
【0145】
使用者がウインドウアップ操作をすると、例えばその操作が行われている間、スイッチ64がオンとなり、ウインドウアップ制御回路63から電磁継電器70および90のコイル71および91に制御電流が流れ、電磁継電器70および90の可動接点74および94のそれぞれは、連動してほぼ同時に常開接点73および93側に接続される。したがって、直流モータ36には、図13において、実線の矢印Inで示す方向に直流電流Inが流れて、直流モータ36は例えば正転方向に駆動され、これにより、自動車の窓ガラスが上昇運動するようにされる。
【0146】
そして、使用者がウインドウアップ操作を止めると、スイッチ64がオフに戻り、電磁継電器70および90のコイル71および91には制御電流が流れなくなり、可動接点74および94はそれぞれ、連動してほぼ同時に常閉接点72および92側に戻る。このため、直流モータ36は制動され、窓ガラスの上昇運動が停止する。
【0147】
一方、使用者がウインドウダウン操作をすると、例えばその操作が行われている間、スイッチ66がオンとなり、ウインドウダウン制御回路65から電磁継電器80および90のコイル81および91に制御電流が流れ、電磁継電器80および90の可動接点84および94のそれぞれは、連動してほぼ同時に常開接点83および93側に接続される。したがって、直流モータ36には、図13において、破線の矢印Irで示す方向に直流電流Irが流れて、直流モータ36は前記とは逆の回転方向に駆動され、これにより、窓ガラスが下降運動するようにされる。
【0148】
そして、使用者がウインドウダウン操作を止めると、スイッチ66がオフに戻り、電磁継電器80および90のコイル81および91には制御電流が流れなくなり、可動接点84および94のそれぞれは、連動してほぼ同時に常閉接点82および92側に戻る。このため、直流モータ36は制動され、窓ガラスの下降運動が停止する。
【0149】
以上の説明からも判るように、この実施の形態においても、電磁継電器70または80の常開接点73および83は、電磁継電器90の常開接点93を通じて電源端子32に接続される構成であり、直流モータ36に流れる直流電流InまたはIrの電流路には、2個の常開接点73および93または83および93が直列に接続される状態となる。
【0150】
したがって、前述の実施の形態と同様にして、各接点組における接点ギャップ長が小さくても、アーク遮断能力を向上させることができ、常閉接点N/C と常開接点N/O との間のショートの問題を軽減することができる。
【0151】
なお、前述の実施の形態の場合と同様に、直流モータ36の制動時、直流モータ36の両端は接地するように構成したが、直流モータ36の制動時に、直流モータ36の両端を電源端子32に接続することもできる。
【0152】
図14は、その場合の簡略化回路図を示すものである。このように構成する図14の実施の形態の場合も、上述した図12の実施の形態の場合と全く同様の作用効果が得られる。
【0153】
なお、この実施の形態において、3個の電磁継電器を用いるのではなく、3個のコイルと、それらによりそれぞれ制御される複数個の接点組を、1個の筐体に収納した1個の電磁継電器を用いるようにすることもできる。
【0154】
そのように1個の電磁継電器の構成とした場合には、複数個の可動接点を連動してほぼ同時に切換制御するようにしたときに、可動接点のそれぞれが常開接点N/O から常閉接点N/C 側に復帰するときに、それらの複数個の可動接点が、共に、常開接点N/O にも、常閉接点N/C にも接触しない状態を同時に生じる状態を経て、常閉接点N/C 側に復帰するようにするタイミング制御が容易である、あるいは不要となるというメリットがある。
【0155】
図15および図16は、そのように3個のコイルと複数の接点組を1個の筐体内に設けた電磁継電器700の構成の一例を示すものである。図15は、その電磁継電器を各部品に分解して示したものである。
【0156】
図15の電磁継電器700の各部品は、端子板701上に組み立てられ、カバー702が端子板701に組み合わされることにより、組み立てられた部品が覆われる構成とされる。電磁継電器700の筐体は、端子板701とカバー702とにより構成とされる。
【0157】
なお、図16は、端子板701をその裏側から見たものであり、外部に導出する端子用の貫通孔701a,701b,701c,701d,701e,701f,701g,701i,701j,701kが示されている。
【0158】
図15において、参照符号703以降の700番代の符号を付与した部分は、図12の電磁継電器70に対応する部分であり、参照符号803以降の800番代の符号を付与した部分は、図12の電磁継電器80に対応する部分であり、また、参照符号903以降の900番代の符号を付与した部分は、図12の電磁継電器90に対応する部分である。
【0159】
説明の理解を容易にするため、図15においては、各接点組の常閉接点、常開接点および可動接点並びにコイルの番号は、図12の電磁継電器70、80および90のそれらに対応させて示すものとする。
【0160】
図15において、703、803および903は、それぞれ電磁石組立である。それぞれの電磁石組立703、803および903は、L字型の継鉄703a、803aおよび903aによって鉄心入りのコイル71、81および91を保持する構造を有している。
【0161】
そして、電磁石組立703、803および903は、それぞれコイル71、81および91の一端および他端がそれぞれ接続されている導電体材料からなるコイル端子704、705、804、805および904、905を備える。これらのコイル端子704、705、804、805および904、905は、端子板701のコイル端子導出用貫通孔701a,701b,701e,701fおよび701c,701dを貫通して、外部に導出される。
【0162】
この図15の例の電磁継電器700では、電磁継電器70の常閉接点72と、電磁継電器80の常閉接点82とは備えるが、電磁継電器90の常閉接点92は、不要であるので、備えていない。
【0163】
706は常閉接点72が形成されている導電体材料からなる常閉接点板である。また、806は常閉接点82が形成されている導電体材料からなる常閉接点板である。この例では、これらの常閉接点板706と806とは互いに連結されて一体物として構成されており、電気的にも接続された構造とされている。そして、これと一体に常閉接点端子706tが形成されている。この常閉接点端子706tは、図12の接続点77に対応する。
【0164】
この常閉接点端子706tは、図16に示す端子板701の端子導出用貫通孔701gを貫通して外部に導出されるようにされている。なお、常閉接点板706と806との連結部706aは、端子板701の凹溝701hに嵌合するようにされている。
【0165】
また、707は、可動接点74が設けられている導電体材料からなる可動接点ばねである。この可動接点ばね707には、これと一体に可動接点端子707tが形成されており、この可動接点端子707tは、端子板701の端子導出用貫通孔701iを貫通して外部に導出されるようにされている。
【0166】
また、807は、可動接点84が設けられている導電体材料からなる可動接点ばねである。この可動接点ばね807には、これと一体に可動接点端子807tが形成されており、この可動接点端子807tは、端子板701の端子導出用貫通孔701kを貫通して外部に導出されるようにされている。
【0167】
さらに、907は、可動接点94が設けられている導電体材料からなる可動接点ばねである。この可動接点ばね907には、これと一体に可動接点端子907tが形成されており、この可動接点端子907tは、端子板701の端子導出用貫通孔701jを貫通して外部に導出されるようにされている。
【0168】
709は、導電体材料からなる共通常開接点板である。この共通常開接点板709には、常開接点73、83および93が形成されている。
【0169】
つまり、図12の場合の3個の電磁継電器70、80、90に対応する3個の継電器部の常開接点73、83および93は、共通の1枚の導電体板部として構成される共通常開接点板709上に形成され、これにより、電気的に共通に接続されている。
【0170】
この共通常開接点板709は、端子板301に形成されている凹溝701m内に嵌合される。しかし、この共通常開接点板709からは、電磁継電器700の筐体外部に端子は導出されない。
【0171】
そして、磁性材料からなる接極子710が、電磁石組立703に、ヒンジばね711により取り付けられる。この接極子710は、コイル71に電流が供給されることにより構成される電磁石により電磁石組立703側に吸引駆動されて、可動接点ばね707を、この接極子710の先端に設けられているカード部710aによって、共通常開接点板709側に変位させるように構成されている。
【0172】
また、磁性材料からなる接極子810が、電磁石組立803に、ヒンジばね811により取り付けられる。この接極子810は、コイル81に電流が供給されることにより構成される電磁石により電磁石組立803側に吸引駆動されて、可動接点ばね807を、この接極子810の先端に設けられているカード部810aによって、共通常開接点板709側に変位させるように構成されている。
【0173】
さらに、磁性材料からなる接極子910が、電磁石組立903に、ヒンジばね911により取り付けられる。この接極子910は、コイル91に電流が供給されることにより構成される電磁石により電磁石組立903側に吸引駆動されて、可動接点ばね907を、この接極子910の先端に設けられているカード部910aによって、共通常開接点板709側に変位させるように構成されている。
【0174】
電磁継電器700は、以上のような構成であるので、電磁石組立703、803および903のコイル71、81および91のいずれにも電流が供給されない状態では、接極子710、910、710は、電磁石により駆動されず、このため、可動接点ばね707、907および807は、共通常開接点板709側に変位されず、可動接点74は常閉接点72に、可動接点84は常閉接点82に接続される状態になるとともに、可動接点94は、常開接点93と離間されている状態となる。
【0175】
そして、図12に示したように、使用者がウインドウアップ操作をすると、コイル71およびコイル91にウインドウアップ制御回路63から電流が供給されて、接極子710および910が電磁石組立703および903側に吸引されることにより、接極子710および910のカード部710aおよび910aによって可動接点ばね707および907が、共通常開接点板709側に弾性変位されて、可動接点74と常開接点73とが接続され、また、可動接点94と常開接点93とが接続される。
【0176】
したがって、可動接点ばね707の端子707tと可動接点ばね907の端子907tとの間には、2個の常開接点73および93が直列に接続されることになる。
【0177】
そして、コイル71および91への電流の供給が停止されると、接極子710および910による弾性変位力が消滅するので、可動接点ばね707および907は、自身の弾性復帰力により、ほぼ同時に共通常開接点板709の常開接点73および93から開離し、可動接点74が常閉接点72に接続される元の状態に復帰する。
【0178】
また、図12に示したように、使用者がウインドウダウン操作をすると、コイル81およびコイル91にウインドウダウン制御回路65から電流が供給されて、接極子810および910が電磁石組立803および903側に吸引されることにより、接極子810および910のカード部810aおよび910aによって可動接点ばね807および907が、共通常開接点板709側に弾性変位されて、可動接点84と常開接点83とが接続され、また、可動接点94と常開接点93とが接続される。
【0179】
したがって、可動接点ばね807の端子807tと可動接点ばね907の端子907tとの間には、2個の常開接点83および94が直列に接続されることになる。
【0180】
そして、コイル81および91への電流の供給が停止されると、接極子810および910による弾性変位力が消滅するので、可動接点ばね807および907は、自身の弾性復帰力により、ほぼ同時に共通常開接点板709の常開接点83および93から開離し、可動接点84が常閉接点82に接続される元の状態に復帰する。
【0181】
以上のように構成した電磁継電器700を図12に用いた直流モータ駆動回路では、前述と同様の作用効果を有する。すなわち、この実施の形態によれば、接点ギャップ長が短い構造の1個の電磁継電器を用いて、アーク遮断能力に優れたウインドウアップ/ダウン駆動制御用の直流モータ駆動回路を実現することができる。
【0182】
そして、図15および図16を用いて説明した例の電磁継電器700の場合、3個の常開接点73、83および93は、共通常開接点板709に形成するようにしたことにより、部品点数を削減して、構造を簡略化することができると共に、複数個の常開接点を直列接続させるための電気的接続工程を不要とすることができる。
【0183】
また、図15の電磁継電器700の実施の形態においては、図12の直流モータ駆動回路用として、常閉接点72と常閉接点82とを筐体内部において互いに接続して共通常閉接点部品とし、この共通常閉接点部品から接続点77に対応する端子706tを導出するようにしているので、端子数を少なくすることができると共に、部品点数を少なくすることができる。
【0184】
図17は、電磁継電器の常開接点N/O からの可動接点の開離時のアークにより常閉接点N/C と常開接点N/O との間が短絡して、電磁継電器が破壊されてしまう電圧(破壊電圧と称する)と、接点ギャップ長との関係を示す特性図である。
【0185】
図17において、実線101は、従来の図18あるいは図19の構成の場合の電磁継電器についての特性図であり、前述したように、直流24V用としては、12V用の0.3mmのギャップ長の電磁継電器は使用できず、ギャップ長の大きい電磁継電器を用いなければならないことが判る。
【0186】
そして、図17において、実線102は、上述した実施の形態の直流モータ駆動回路の電磁継電器の場合で、直流モータの駆動直流電流の電流路に、2個の常開接点を直列に接続するように構成した場合の特性図である。この特性図から、たとえバッテリー電圧が42Vと高電圧になっても、前述したようなアークによる常開接点と常閉接点との間のデッドショートによる破壊は生じないことが確かめられた。
【0187】
[その他の実施の形態]
上述の図1、図6、図9および図12の実施の形態では、2個の接点組を備える電磁継電器を用いて、2個の常開接点を直列に接続した場合について説明したが、2個以上の接点組を備える電磁継電器を用いて、それらの接点組の2個以上の常開接点を、直流モータへの直流電流の電流路に直列に接続するように構成することにより、直流電源電圧が、より高くなった場合にも対応することができる。
【0188】
また、上述の実施の形態では、各接点組からはそれぞれ接点端子が導出されており、その接点端子同志を電磁継電器の外部で電気的に接続するようにしたが、上述の説明のような自動車用部品として、予め筐体内で2個の常開接点が直列に接続された電磁継電器を用意して、用いるようにすることもできる。
【0189】
また、上述の実施の形態では、複数個の接点組を備える電磁継電器を用いる場合について説明したが、前述もしたように、各接点組を構成する電磁継電器は、別々のものであってもよい。
【0190】
また、この発明は、上述の例のような自動車のワイパー駆動部やパワーウインドウ駆動部などに限らず、電磁継電器を用いて、直流モータの上述のような駆動制御を行う直流モータ駆動回路の全てに適用することができる。
【0191】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、接点ギャップ長が小さい電磁継電器を使用しても、可動子の常開接点からの開離時のアークによる常閉接点と常開接点との間のショートの問題を生じ難くすることができる直流モータ駆動回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による直流モータ駆動回路の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1の実施の形態の回路の簡略化回路図である。
【図3】図1の実施の形態の直流モータ駆動回路の変形構成例を示す図である。
【図4】図3の例の簡略化回路図である。
【図5】図1の直流モータ駆動回路に用いることができる電磁継電器の一例の構成を示す図である。
【図6】この発明による直流モータ駆動回路をパワーウインドウ駆動用に適用した場合の実施の形態の構成を示す図である。
【図7】図6の例の簡略化回路図である。
【図8】図9の実施の形態の直流モータ駆動回路の変形構成例を示す図である。
【図9】この発明による直流モータ駆動回路をパワーウインドウ駆動部に適用した他の実施の形態を示す図である。
【図10】図9の直流モータ駆動回路に用いることができる電磁継電器の一例の構成を示す図である。
【図11】図9の直流モータ駆動回路に用いることができる電磁継電器の他の例の構成を示す図である。
【図12】この発明による直流モータ駆動回路の他の実施の形態の構成を示す図である。
【図13】図12の例の簡略化回路図である。
【図14】図12の実施の形態の直流モータ駆動回路の変形構成例の簡略化回路図である。
【図15】図12の直流モータ駆動回路に用いることができる電磁継電器の一例の構成を示す図である。
【図16】図12の直流モータ駆動回路に用いることができる電磁継電器の一例の構成の一部を示す図である。
【図17】この発明の効果を、従来技術との比較において説明するための図である。
【図18】従来の直流モータ駆動回路の一例を示す図である。
【図19】従来の直流モータ駆動回路の他の例を示す図である。
【符号の説明】
20 ワイパー駆動制御用電磁継電器
21 電磁継電器20のコイル
22 電磁継電器20の第1の接点組
26 電磁継電器20の第2の接点組
23、27 電磁継電器20の第1、第2の接点組の常閉接点
24、28 電磁継電器20の第1、第2の接点組の常開接点
25、29 電磁継電器20の第1、第2の接点組の可動接点
31 ワイパー駆動用直流モータ
32 電源端子
36 パワーウインドウ用直流モータ
40 ウインドウアップ駆動制御用電磁継電器
41 電磁継電器40のコイル
42 電磁継電器40の第1の接点組
46 電磁継電器40の第2の接点組
43、47 電磁継電器40の第1、第2の接点組の常閉接点
44、48 電磁継電器40の第1、第2の接点組の常開接点
45、49 電磁継電器40の第1、第2の接点組の可動接点
50 ウインドウダウン駆動制御用電磁継電器
51 電磁継電器50のコイル
52 電磁継電器50の第1の接点組
56 電磁継電器50の第2の接点組
53、57 電磁継電器50の第1、第2の接点組の常閉接点
54、58 電磁継電器50の第1、第2の接点組の常開接点
55、59 電磁継電器50の第1、第2の接点組の可動接点
Claims (4)
- 第1の接点組の第1の可動接点が第1の常開固定接点に接続されたときに、前記第1の接点組と連動して電磁制御され、その第2の可動接点が第2の常開固定接点に接続される第2の接点組の前記第2の常開固定接点と前記第1の常開固定接点との直列接続を介して直流電流が直流モータに供給されて、前記直流モータが駆動され、
前記第1の接点組と前記第2の接点組に対する電磁制御が停止されて前記第1の接点組および第2の接点組が連動して復旧して、前記第2の接点組の前記第2の可動接点が常閉固定接点に接続されたとき、前記常閉固定接点を介して、前記直流モータの一端と他端とが接続されて、前記直流モータの回転の制動が行われる直流モータ駆動回路。 - 直流モータの一端側が、一つの接点組の可動接点に接続され、
前記直流モータの他端側が、直流電源の一端側に接続されると共に、前記一つの接点組の常閉固定接点に接続され、
前記可動接点が接続される常開固定接点が、1〜複数個の他の接点組の常開固定接点を通じて前記電源の他端側に接続され、
前記一つの接点組の常開固定接点および前記1〜複数個の他の接点組の常開固定接点は連動して開閉制御されることを特徴とする直流モータ駆動回路。 - 直流モータの一端側が、第1のコイルに電流が供給されることにより電磁制御される第1の接点組の第1の可動接点に接続されると共に、前記直流モータの他端側が、前記第1のコイルとは別の第2のコイルに電流が供給されることにより電磁制御される第2の接点組の第2の可動接点に接続され、
前記第1の接点組の前記第1の可動接点が接続される第1の常閉固定接点および第2の接点組の前記第2の可動接点が接続される第2の常閉固定接点のそれぞれが互いに接続されて、その接続点が直流電源の一端側に接続され、
前記第1の接点組の前記第1の可動接点が接続される第1の常開固定接点および第2の接点組の前記第2の可動接点が接続される第2の常開固定接点が、それぞれ1〜複数個の第1および第2の他の常開接点を通じて互いに接続され、その接続点が前記直流電源の他端側に接続され、
前記第1の1〜複数個の他の常開固定接点は、前記第1の接点組の前記第1の常開固定接点と連動して開閉制御されると共に、前記第2の1〜複数個の他の常開固定接点は、前記第2の接点組の前記第2の常開固定接点と連動して開閉制御され、
前記第1のコイルと前記第2のコイルへの電流の供給が、それぞれ独立に制御されて、前記直流モータが正転・逆転制御されることを特徴とする直流モータ駆動回路。 - 直流モータの一端側が、第1のコイルに電流が供給されることにより電磁制御される第1の接点組の第1の可動接点に接続されると共に、前記直流モータの他端側が、前記第1のコイルとは別の第2のコイルに電流が供給されることにより電磁制御される第2の接点組の第2の可動接点に接続され、
前記第1の接点組の前記第1の可動接点が接続される第1の常閉固定接点および第2の接点組の前記第2の可動接点が接続される第2の常閉固定接点のそれぞれが互いに接続されて、その接続点が直流電源の一端側に接続され、
前記第1の接点組の前記第1の可動接点が接続される第1の常開固定接点と第2の接点組の前記第2の可動接点が接続される第2の常開固定接点とが1〜複数個の第1および第2の他の常開接点を通じて互いに接続され、その接続点が前記直流電源の他端側に接続され、
前記1〜複数個の他の常開接点は、前記第1の接点組の前記第1の常開固定接点および前記第2の接点組の前記第2の常開固定接点と連動して開閉制御されると共に、前記第1のコイルと前記第2のコイルへの電流の供給が、それぞれ独立に制御されて、前記直流モータが正転・逆転制御されることを特徴とする直流モータ駆動回路。
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