JP4634027B2 - ビタミンd様活性代替用剤 - Google Patents

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本発明は、ビタミンD様活性を有し、ビタミンD類の代わりに医薬品や食品に配合することができるビタミンD様活性代替用剤に関する。
ビタミンD類としては、ビタミンDのほか、活性型ビタミンD(1α,25(OH)2ビタミンD、1α,24(OH)2ビタミンD、1α(OH)ビタミンD)が知られている。現在、活性型ビタミンDは皮膚疾患や副甲状腺、悪性腫瘍、骨などの疾患に対する治療剤として幅広く使用検討がなされている。例えば皮膚疾患の分野においては活性型ビタミンDが尋常性乾癬に非常に有効であることが報告されている(非特許文献1)。尋常性乾癬とは、厚い白色あるいは銀白色の鱗屑を付着した紅斑が肘頭、膝蓋、頭部などを中心として全身皮膚に多発するという臨床症状を示す皮膚疾患である。また活性型ビタミンDは、悪性腫瘍、特に前立腺癌、大腸癌、乳癌、血液性悪性腫瘍等に対して有効であると考えられている(非特許文献2)。それぞれ疫学的な調査からその発生や進行に活性型ビタミンDの欠乏が関与しているとの報告もあり、効果の差異は悪性腫瘍の種類によってあるものの活性型ビタミンD投与によって一定の効果が挙げられている(非特許文献3)。
また、食餌性ビタミンDの欠乏に陥ると血中のミネラル低下に伴うクル病が発症することは古くより知られており、活性型ビタミンDは骨代謝疾患に対する治療薬としても使用されている。
ビタミンDを多く含むキノコ類又はビタミンD本体と動物の肝臓及び腎臓のホモジェネートを加えることで活性型ビタミンD強化組成物を調製できる旨の報告もある(特許文献1及び2)。これらは、そのままでは一般に生理作用を発現しないビタミンDに、肝臓や腎臓中に含まれるビタミンD活性化酵素を添加することで活性化ビタミンDを合成しようとすることを意図している。しかし、上記臓器には活性型ビタミンDを分解する24−水酸化酵素も含まれている点や、様々な物質が入り混じるホモジェネートを基質であるビタミンDに添加・インキュベートしただけという点などにおいて、効率的な活性型ビタミンD強化剤を提供するには問題が多い。
また、一方で活性型ビタミンDの反復投与により、高カルシウム血症になることで体重減少などの副作用が起こりうることが知られており、使用に際しては更なる注意が必要である(非特許文献4)。
一方、糖リン酸エステルの生理作用については、pH緩衝作用(特許文献3)、輸液への応用(特許文献4)、カルシウム強化剤としての利用(特許文献5及び6)、赤血球保存剤への応用(特許文献7)、ヘキソースリン酸カルシウムを有効成分とする低カルシウム血症及び骨代謝異常症の予防治療剤(特許文献8)、糖リン酸エステルを含有する無機物質の消化管吸収促進剤(特許文献9)、糖リン酸エステル又はその塩からなるミネラル呈味改善剤(特許文献10)が報告されている。しかし、これらの報告中に糖リン酸エステルがビタミンD様活性を有するか否かについての記載はない。
小林仁ら MB Derma. 2:53-62,1997 秋澤忠男ら:ビタミンD Update 2001, メディカルチュア,2001 Cummingham D. et al, Br. Med. J., 291:1153-1155(1985) Weber K. et al:J. Bone Miner. Res.,10(4). 639-651(2001) 特開平10−236971号公報 特開平11−158074号公報 特開昭62−243675号公報 特開平02−250821号公報 特開2002−145893号公報 特開2002−253170号公報 特開昭62−158221号公報 特開昭64−22号公報 特開平2−249468号公報 特開2003−79337号公報
このように従来のビタミンD、活性型ビタミンD及びそれらの誘導体には副作用が発生する等の問題がある。従って、本発明の目的は、活性型ビタミンDと同様の作用を有し、副作用がなく安全に長期間投与可能な素材を提供することにある。
そこで本発明者は、活性型ビタミンDの標的遺伝子の発現量を指標としてスクリーニングした。すなわち、活性型ビタミンDは、標的細胞内のビタミンDレセプター(VDR)と結合し、さらにレチノイドXレセプターとヘテロダイマーを形成する。次いでこの複合体が遺伝子上のビタミンD応答配列に結合することにより、この応答配列をプロモーターとして有するいくつかの遺伝子の転写が活性化することにより種々の生理作用を生じる(Ohyama Y. et al:J. Biol. Chem., 269, 10545-10550, 1994)。当該活性型ビタミンDの標的遺伝子として24−水酸化酵素、CYP3A、CaT1、カルビンディンD9K、カルビンディンD28K、オステオカルシン、オステオポンチンなどが知られている。そこで、種々の化合物を用いて当該標的遺伝子の発現を亢進する成分のスクリーニングをしたところ、全く意外にも糖リン酸エステル又はその塩に優れた標的遺伝子発現亢進作用があり、これがビタミンD様活性代替用剤として有用であることを見出した。
すなわち、本発明は糖リン酸エステル又はその塩を有効成分とするビタミンD様活性代替用剤を提供するものである。
本発明によれば、安全に長期投与可能なビタミンD様活性代替用剤が提供できる。
本発明のビタミンD様活性代替用剤に用いられる糖リン酸エステルとしては、単糖リン酸エステル、すなわちヘキソースリン酸エステル又はペントースリン酸エステルが挙げられる。当該単糖リン酸エステルとしては、グルコース−1−リン酸、グルコース−6−リン酸、グルコース−1,6−二リン酸、マルトース−1−リン酸、フルクトース−1−リン酸、フルクトース−6−リン酸、ガラクトース−1−リン酸、ガラクトース−6−リン酸、ラクトース−1−リン酸、スクロース−1−リン酸等を挙げることができる。このうち、グルコース−1−リン酸、グルコース−6−リン酸、フルクトース−6−リン酸がより好ましい。
これらの糖リン酸エステルのうち、グルコース−1−リン酸は、糖代謝でのグリコーゲンからTCAサイクルまでの解糖系における中間生成物であり、通常我々が摂取する食品中にも広く存在することが報告されている(Fisheries Science, 64(1),125-130,1998、 Anal Biochem, 176(2),449-456,1989)。また、グルコース−1−リン酸は、単回及び反復投与による毒性試験においても非常に高い安全性が多数報告されており(Fournier E.et al:Therapie,26(1):27-37,1971等)、医薬品のみならず食品分野においても安全に摂取できるものであることから特に好ましい。
また、これら糖リン酸エステルの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マグネシウム塩等が挙げられる。このうちナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩は、水に対する溶解性が高いことからより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。また、これらの糖リン酸エステル又はその塩は水和物であってもよい。
これらの糖リン酸エステルは、例えば特開昭61−22096号、特開平1−639589号、特開2002−300899号等に記載のように、固定化酵素法や菌体を用いた発酵法により安価かつ大量に製造することができる。本発明の腸管機能改善剤には、これらの製造法により得られ、単離精製した糖リン酸エステル又はその塩を用いてもよいが、発酵生産物をそのまま用いることもできる。
糖リン酸エステル又はその塩は、後記実施例に示すように、活性型ビタミンDの標的遺伝子である24−水酸化酵素、CYP3A及びCaT1の発現量を顕著に亢進させ、ビタミンD様活性を有する。従って、糖リン酸エステル又はその塩はビタミンD様活性代替用剤として有用であり、ビタミンD様活性が必要な医薬や食品、例えば皮膚疾患、副甲状腺、悪性腫瘍、骨疾患等の予防又は治療用の医薬又は食品に使用できる。
本発明のビタミンD様活性代替用剤の剤型は、通常の経口投与用製剤であればよく、例えば粉末、錠剤、顆粒、散剤、カプセル剤、水溶液、懸濁液等の形態が好ましい。また、本発明ビタミンD様活性代替用剤は食品、例えば機能性食品等として使用でき、その形態は特に制限されず、果汁;野菜汁;ソース、味噌、醤油等の調味料;豆乳、納豆等の大豆食品;クリーム、ドレッシング、マヨネーズ及びマーガリン等の乳化食品;水産加工食品;食肉加工品;清涼飲料、酒類、コーヒー、ココア、紅茶、緑茶、発酵茶、半発酵茶、粉末飲料及び機能性飲料等の飲料;漬物類;麺類;粉末スープを含むスープ類;ゼリー;チーズ、ヨーグルト、牛乳等の乳製品;パン、ケーキ等の小麦粉食品;スナック菓子、チューインガム、キャンディー、チョコレート等の菓子類;錠剤、顆粒剤等の健康食品等が挙げられる。
本発明のビタミンD様活性代替用剤には、トコフェロール、アスコルビン酸およびその誘導体、フィロキノン、メナキノン、メナジオン及びその誘導体、β−カロチン、ビタミンA、チアミン、リボフラビン、ビタミンB6、シアノコバラミン、葉酸等のビタミン類;オリゴ糖、ヘキソース、ペントース及び糖アルコール等の糖類;エタノール等のアルコール類;クエン酸、リンゴ酸等の有機酸;乳清蛋白、カゼイン等の牛乳由来蛋白、大豆蛋白等の蛋白、ペプチド類;カテキン、イソフラボン等のフラボノイド類;コンドロイチン硫酸、ゲルタマン硫酸等のプロテオグリカン;チョウジ、ジュニパーベリー、アスナロ等のエキス、生薬類等を配合できる。また、増粘剤、ゲル化剤、乳化安定剤であるカラギーナン、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ジェランガム、アルギン酸、デキストラン、プルラン、カードラン等との併用も可能である。
本発明のビタミンD様活性代替用剤の投与、摂取量は、糖リン酸エステル又はその塩として成人1日当たり0.05〜15g、特に0.1〜10gが好ましい。
実施例1
活性型ビタミンDと糖リン酸エステルの標的細胞として、小腸上皮様に分化することが知られているCaco−2細胞(大日本製薬)を用いた。フィブリラーコラーゲンカルチャープレート(ベクトンディッキンソンInc.)のインサートに、Caco−2細胞を培養用培地(10%ウシ胎児血清、MEM用非必須アミノ酸、200mMグルタミン酸/MEMアール)に懸濁して添加した。一方、プレートにも培養用培地を添加し定法にて培養した。インサートおよびプレートの培地は定期的に交換し、培養15日目に試験に供した。その後インサート内に1α,25(OH)2ビタミンD(シグマアルドリッチジャパン)10nM、又は糖リン酸エステルであるグルコース−1−リン酸ナトリウム(Solchem社製(Italy))を1mMになるように添加し、24時間毎に培地交換しながら72時間培養した。その後、Isogen(和光純薬)にてCaco−2細胞のmRNAを抽出し、各プライマーを用いてRT−PCR法にて標的遺伝子、CYP3A遺伝子、24−水酸化酵素遺伝子及びCaT1遺伝子のmRNA量を定量した。
その結果、図1〜3に示すように、グルコース−1−リン酸ナトリウムは、活性型ビタミンDと同様に、顕著に24−水酸化酵素、CYP3A、CaT1の遺伝子発現を亢進した(各遺伝子発現量はハウスキーピング遺伝子であるG3PDHで除した)。以上より、VDRを介して発現が制御されている蛋白分子を指標としてビタミンD様活性を評価した場合、糖リン酸エステルであるグルコース−1−リン酸ナトリウムは活性型ビタミンDと同等の作用があり、ビタミンD様活性代替用剤になることが判明した。
実施例2 添加食品
グルコース−1−リン酸ナトリウム60重量%とデキストリン40重量%を混合し、1包2gの包装品、又は本混合品を常法により錠剤に成形し、1錠2gの錠剤とすることにより、1包装又は1錠が一人用の調理時に用いる簡便な添加用食品を得ることができる。
実施例3 粉末飲料
ブドウ糖60重量%、デキストリン15重量%、クエン酸ナトリウム5重量%、ビタミンC1重量%、グルコース−1−リン酸ナトリウム15重量%に香料(レモンフレーバー)4重量%を加え、十分に混合した後10g分包にし、1日1回摂取用の水や湯に溶かして摂取する香味良好な粉末飲料を得ることができる。
実施例4 錠菓
無水結晶ぶどう糖60重量%、フロストシュガー9重量%、粉末オレンジ香料4.5重量%、グアーガム2重量%、アスコルビン酸2.5重量%、クエン酸(結晶)1.5重量%、乳性カルシウム5重量%、グルコース−1−リン酸ナトリウム15重量%、ショ糖脂肪酸エステル(HLB20)0.5重量%、色素適量を均一混合し、常法により15mmΦの径を有する2gの錠剤を打錠し、風味良好な1日に5錠摂取する香味良好な錠菓を得ることができる。
実施例5 ゼリー食品
水40重量%にカラギーナンとローカストビーンガムの混合ゲル化剤0.65重量%、グレープフルーツの50%濃縮果汁10重量%、クエン酸0.05重量%、ビタミンC0.05重量%、グルコース−1−リン酸ナトリウム1.5重量%を混合し、グレープフルーツフーレバー適量を添加したのちに液糖を適量加え、さらに水を加えて100重量%とした溶液を1kg得る。85℃で5分間保持して殺菌処理後、100mLの容器に分注し、静置して徐冷しながら5℃に冷却して、ゲル化させ、口に含んだ時に口溶け性が良好で、果実風味を有し食感香味良好なゼリー食品を得ることができる。
実施例6 乳飲料
市販牛乳5kgにグルコース−1−リン酸ナトリウム30gを添加溶解し、200mLの缶詰とし、常法にて殺菌することにより、乳飲料を得ることができる。
実施例7 清涼飲料水
果糖ブドウ糖液糖13重量%、クエン酸0.3重量%、アスコルビン酸0.03重量%、クエン酸ナトリウム0.02重量%、香料(ライムフレーバー)0.1重量%、炭酸カルシウム0.5重量%、グルコース−1−リン酸ナトリウム1.2重量%に水を加えて溶解し、pHを3.5に調製後、5リットルの飲料を得る。溶液は、100mLをガラスビン容器に分注し、常法により殺菌を行ない風味良好な清涼飲料水を得ることができる。
実施例8 水
市販ミネラルウォーター5kgにグルコース−1−リン酸ナトリウム30gを溶解し、ロ過後、200mL缶容器に充填し、常法による殺菌を行い、容器充填水を得ることができる。
実施例9 茶飲料
茶飲料として、ウーロン茶葉50gから5kgの抽出液を得た後、グルコース−1−リン酸ナトリウム20gとアスコルビン酸Na1gを添加溶解し、重曹を用いてpH5.5に調整、350mLの缶詰とし、常法にて殺菌し、香味良好なウーロン茶を得ることができる。
実施例10 コーヒー飲料
コーヒーとして、焙煎コーヒー豆(モカ、コロンビア)250gから4kgの抽出液を得た後、蔗糖200g、牛乳500gを添加し、グルコース−1−リン酸ナトリウム30gを添加溶解後、水及び重曹を用いてpH6の溶液5kgを得、200mLの缶詰とし、常法にて殺菌し、香味良好なコーヒー飲料を得ることができる。
実施例11 野菜入り混合果汁飲料
市販混合果実飲料2kgにグルコース−1−リン酸ナトリウム12gを添加溶解し、200mLの缶詰とした後、常法にて殺菌し、野菜入り混合果汁飲料を得ることができる。
実施例12 アイスクリーム
牛乳2kgに蔗糖60gとグルコース−1−リン酸ナトリウム30g及び適量のフレーバーを添加し、攪拌冷却しながらクリームを調製し、20個に小分けした後、更なる冷却により、香味良好なアイスクリームを得ることができる。
実施例13 小麦粉食品(カップケーキ)
薄力粉100g、鶏卵100g、砂糖100g、ショートニング35g、マーガリン35g、ベーキングパウダー2.5g、洋酒6g、グルコース−1−リン酸ナトリウム15g、水適量の組成からなる生地をカップケーキ調製の要領で調製した後、10個の型に分け、常法により焼成、製造し、風味良好なカップケーキを得ることができる。
実施例14 調味料(醤油)
市販醤油又は減塩醤油1kgにグルコース−1−リン酸ナトリウム100gを添加溶解し、殺菌し、1日の醤油使用量が20gとなるように調製した醤油又は減塩醤油を得ることができる。
実施例15 ドリンク剤
タウリン 800mg、ショ糖 11000mg、カラメル 50mg、安息香酸ナトリウム 30mg、ビタミンB1硝酸塩 5mg、ビタミンB2 20mg、ビタミンB6 20mg、ビタミンC 2000mg、ビタミンE 100mg、ニコチン酸アミド 20mg、グルコース−1−リン酸ナトリウム1200mgを適量の精製水に加えて溶解し、リン酸水溶液でpH3に調節した後さらに精製水を加えて全量を100mLとした。これを80℃で30分滅菌して、香味良好なすぐれたドリンク剤を得ることができる。
グルコース−1−リン酸ナトリウム及び活性型ビタミンDのCYP3A遺伝子発現に及ぼす作用を示す図である。 グルコース−1−リン酸ナトリウム及び活性型ビタミンDの24−水酸化酵素遺伝子発現に及ぼす作用を示す図である。 グルコース−1−リン酸ナトリウム及び活性型ビタミンDのCaT1遺伝子発現に及ぼす作用を示す図である。

Claims (2)

  1. グルコース−1−リン酸ナトリウムを有効成分とする活性型ビタミンD標的遺伝子発現亢進剤。
  2. 活性型ビタミンD標的遺伝子が、24−水酸化酵素遺伝子、CYP3A遺伝子又はCaT1遺伝子である請求項1記載の活性型ビタミンD標的遺伝子発現亢進剤。
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