JP4634001B2 - 熱交換装置及び冷凍装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱交換装置及び冷凍装置に関し、特に熱交換器の表面構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、対空気用熱交換器を蒸発器としている冷凍装置では、対空気用熱交換器と熱交換する空気温度が低い場合や蒸発器の蒸発温度が低い場合に、この熱交換面に霜が発生する。そして、霜が発生するとこの蒸発器の熱交換器能力が低下し冷凍能力が低下する。
例えば、冷凍装置の一種であるヒートポンプ式空気調和機では、暖房運転時に外気温度が低下すると蒸発温度が低下し、対空気用熱交換器が使用されている室外側熱交換器に着霜する。また、着霜すると室外側熱交換器の蒸発能力が低下し暖房能力が低下する。このため付着した霜又は霜が氷結した氷(以下単に霜又は氷という)を取り除くための除霜運転が適宜行われる。しかしながら、除霜運転が行われると、除霜運転方式により異なることがあるが、暖房運転が休止されたり暖房能力が低下したりするため、暖房快感度が低下するという問題があった。
また、除霜運転は、蒸発器に付着した霜又は氷を除去するために熱エネルギーを必要とし、このために暖房運転のエネルギー効率が低下するという問題があった。
そこで、従来から冷凍装置の蒸発器における着霜を遅らせて冷凍運転(冷凍装置の代表例であるヒートポンプ式空気調和機の場合では特に暖房運転が対象となる)の延長を図ること、除霜運転時間を短縮すること、及び除霜運転に必要な熱エネルギーを低減することが課題となっていた。
【0003】
このような課題に応えるものとして、着霜防止層を空気との熱交換面に設けることにより蒸発器への着霜量を低減しようとする方法が考えられる。すなわち、この着霜防止層を設ける方法は、主として蒸発器の熱交換面の撥水性を大きくして着霜を防止する方法である。
また、このような着霜防止層を設ける方法として、例えば、特許文献1に記載されている塗料、すなわち、分子量500〜20000の末端フッ素化されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を非フッ素系樹脂中に混入させた撥水性塗料を熱交表面に塗布する方法が考えられる。同様に、特許文献2に記載されている塗料、すなわち、分子量500〜20000の末端フッ素化されたPTFE粉末を液状樹脂(例えばフッ素樹脂やシリコーン系樹脂、ポリエステル樹脂)中に配合した着霜防止塗料を蒸発器の熱交表面に塗布する方法などが考えられる。
【0004】
【特許文献1】
特開平8-3477号公報
【特許文献2】
特開平8-3479号公報
【特許文献3】
特開昭57-34107号公報
【特許文献4】
特開昭62-7767号公報
【特許文献5】
特開昭62-174213号公報
【特許文献6】
特開平2-265979号公報
【特許文献7】
特開平2-298645号公報
【特許文献8】
特開平4-279612号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の塗料ではPTFE粉末を樹脂中に均一に分散させることは困難であり、表面に撥水性の小さい部分が残ってしまい、着霜防止効果が損なわれることが分かった。また、着霜防止層を熱交換面に形成しても着霜を完全に避けることが困難であるので、熱交換器では除霜が必要となる。ところが上記従来公知の塗料では除霜運転時間を短くすることや、除霜に必要な熱エネルギーを低減することまで配慮したものではなかった。
このように、従来の着霜防止層を表面に設ける方法は、未だ充分とはいえない状況であった。
【0006】
なお、上記の着霜防止層を表面に設ける着霜防止方法を適用する以外に、熱エネルギーを蒸発器の外部から加える除霜方法を用いることが考えられる。しかし、この熱エネルギーを蒸発器の外部から加える方法では、熱交換面に霜や氷が残ることは少ないが、熱交換面に接する界面部分の全ての霜や氷を融解する必要があり多大なエネルギーを必要とするほか温度も高くなり、熱に敏感な装置などには適用できないという問題がある。
また、そのほかに、着霜防止剤を表面に散布する方法も考えられるが、着霜防止剤によっても着霜が発生することがあるという問題がある。
また、熱交換装置に振動や衝撃などの機械的エネルギーを加える除霜方法を用いることも考えられるが、この方法を用いても従来の熱交換器の熱交換面は撥水性及び滑落性(熱交換面に付着した水滴の落下度合いを示す性質)が小さいため霜又は氷が残ってしまい、その後の着霜を容易にしてしまうという問題が残る。
このように、上記の着霜防止層を表面に設ける着霜防止方法以外の除霜方法も、着霜した熱交換器の除霜運転時間を短縮し、除霜に必要な熱エネルギーを低減することに繋がるものではない。
【0007】
本発明は、上記従来の技術に存在する問題点に着目してなされたもので、着霜を遅延させ、除霜運転時間を短縮し、かつ除霜に必要な熱エネルギーを低減した熱交換装置及び冷凍装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する第1の解決手段に係る熱交換装置は、空気との熱交換面が表面部分A及び表面部分Bを含み、表面部分A及び表面部分Bが下記の特性1及び特性2を備えているフィンを構成部材とする対空気用熱交換器と、この対空気用熱交換器を蒸発器として使用されている場合に、蒸発器を通過する空気の風圧を利用して付着する凝縮水を飛散させることを促進する水滴飛散促進機構とを備えているものである。
ここに、特性1とは、除霜運転の場合に、表面部分Aに接触している界面部分の霜又は氷が表面部分Bに接触している界面部分の霜又は氷より早く融解する特性をいい、特性2とは、除霜運転の場合に、表面部分Bに付着している霜又は氷が、表面部分Aに付着している霜又は氷が融解した場合に、この表面部分の霜又は氷と少なくとも部分的に連結して自重により表面部分Bから剥離する特性をいう。また、前記表面部分Aはモル熱容量が6JK−1mol−1〜7JK−1mol−1の無機粒子により構成される。
【0009】
このように構成された熱交換装置によれば、低熱容量の表面部分Aと霜又は氷との結合性又は付着性が低い表面部分Bの2種類の表面部分が分散配置されていることにより、熱交換面が撥水性及び滑落性に優れたものとなる。このため、熱交換装置の熱交換面で凝縮した凝縮水は、球形状となって蒸発器を通過する風圧で飛散されやすくなり、過冷却状態となり凍りにくくなる。したがって、熱交換面に付着した霜の成長速度が低下し除霜が必要となる着霜量までの冷凍運転(ヒートポンプ式空気調和機の場合は暖房運転)時間が延長される。
また、この熱交換装置の熱交換面に凝縮した凝縮水は、水滴飛散促進機構によりより一層飛散されるので、凝縮水が熱交換面に着霜する量が減少する。したがって、冷凍運転時間がより一層延長される。
一方、除霜運転時においては、熱交換装置における熱交換面の表面部分Aと接触する界面部分の霜又は氷を融解することにより、表面部分A上の霜又は氷が剥離する。さらに、この剥離した霜又は氷と表面部分Bに付着する霜又は氷とが少なくとも部分的に結合し、自重により表面部分Bに付着する霜又は氷が剥離される。したがって、この熱交換装置では、従来のように蒸発器の熱交換面に接触する界面部分の霜又は氷を全面的に融解する必要がなくなり、表面部分Aに接触する霜又は氷のみを融解すればよいので除霜運転時間が短縮される。
また、前述のような表面部分Aと表面部分Bとが分散配置された熱交換面は易霜氷剥離性が付与される。なお、本明細書において易霜氷剥離性というときは、熱交換装置を除霜する場合に、この熱交換装置の熱交換面に付着した霜又は氷が自重により熱交換面から剥離(離脱)し、霜又は氷が融解又は剥離された後の熱交換面に残存する水滴又は霜の量が少なくなる性質をいう。なお、冷凍運転が再開された後除霜運転が繰り返される場合、除霜後の熱交換装置の熱交換面に水滴、霜又は氷が残存していると、次の冷凍運転時に着霜や氷結の核になり、冷凍運転時間が短縮化される。しかし、本発明に係る熱交換装置では除霜後の蒸発器の熱交換面に残存する水滴又は霜の量が少なくなるので,冷凍運転時における着霜や氷結の核が少なくなり、冷凍運転時間の延長及び除霜運転時間の短縮を繰り返し発揮させることができる。このため、除霜に要する熱エネルギーが少なくて済むとともに、除霜運転時間が短縮される。
このように、第1の解決手段に係る熱交換装置によれば、冷凍運転効果の低下(例えば、ヒートポンプ式空気調和機に応用した場合における暖房快感度の低下)を防止するとともに、及びエネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0010】
また、上記課題を解決する第2の解決手段に係る熱交換装置は、撥水性バインダー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン粒子、分散剤、モル熱容量が6JK−1mol−1〜7JK−1mol−1の無機粒子及び溶媒からなる表面処理用組成物の塗膜が空気との熱交換面に施されたフィンを構成部材とする対空気用熱交換器と、この対空気用熱交換器と熱交換する空気を対空気用熱交換器に送風する送風機と、前記対空気用熱交換器を蒸発器として使用されている場合に、前記送風機により供給される空気の風圧を利用して、対空気用熱交換器も熱交換面に凝縮した凝縮水を飛散させることを促進する水滴飛散促進機構とを備えたものである。
【0011】
このように構成した第2の解決手段に係る熱交換装置によれば、対空気用熱交換器の熱交換面に低熱容量の表面部分Aと霜又は氷との結合性又は付着性が低い表面部分Bの2種類の表面部分が分散配置され、かつ表面部分A及び表面部分Bが前記特性1及び特性2を満たすように構成され、易霜氷剥離性を熱交換面に付与することが可能となる。したがって、前記第1の解決手段に係る熱交換装置と同様の作用により、暖房運転等の通常の冷凍運転時間が延長され、除霜運転時間が短縮され、エネルギー効率の低下が抑制される。また、無機粒子がカーボンブラックであることが好ましい。
【0012】
また、上記課題を解決する第2の解決手段に係る熱交換装置において、前記撥水性バインダー樹脂はフッ素樹脂であり、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子は重量平均分子量が500〜200,000、平均粒子径が0.1μm以上であり、分散剤はフルオロアルキル基を有するビニルモノマーから誘導された繰り返し単位を含む重合体であり、低熱容量の無機粒子は、モル熱容量が6JK−1mol−1〜7JK−1mol−1であって導電性を有するものであり、溶媒は有機溶媒系であり、さらに、これら組成物の配合割合を、撥水性バインダー樹脂100重量部に対してポリテトラフルオロエチレン粒子が100〜200重量部、分散剤が5〜30重量部、低熱容量の無機粒子が25〜200重量部、溶媒が400〜2,000重量部としてもよい。
【0013】
このように構成すれば、熱交換装置の熱交換面に前記特性1及び特性2を満たすより好ましい表面部分A及び表面部分Bが分散配置され、かつより好ましい易霜氷剥離性を熱交換面に付与することが可能となる。したがって、このような熱交換装置を用いた冷凍装置では、暖房運転等の通常の冷凍運転時間がより一層延長され、除霜運転時間がより一層短縮され、エネルギー効率の低下がより一層抑制される。
【0014】
また、上記熱交換装置において、前記水滴飛散促進機構は、前記送風機を、前記対空気用熱交換器が蒸発器として使用されている場合における最高速以上の高速度で運転するように構成されたものとすることもできる。
このように構成すれば、熱交換面上の凝縮水を飛散させる風圧を大きくすることができる。また、前記送風機の回転数を制御するだけの簡易な構成で水滴飛散促進機構を構成することができる。
【0015】
また、上記熱交換装置において、前記水滴飛散促進機構は、空気圧縮機を備え、この空気圧縮機から圧縮空気を前記対空気用熱交換器に吹き付けるように構成されたものとすることもできる。
このように構成すれば、熱交換面上の凝縮水を飛散させる風圧を十分に大きくすることができ、凝縮水をより多く飛散させることができる。
【0016】
また、上記熱交換装置において、前記水滴飛散促進機構は、加振装置を備え、この加振装置により前記対空気用熱交換器を振動させるように構成されたものとすることもできる。
このように構成すれば、熱交換面上の凝縮水が振動により移動が容易になり飛散され易くなる。
【0017】
また、上記熱交換装置において、前記水滴飛散促進機構を、前記対空気用熱交換器が蒸発器として使用されている場合において、前記対空気用熱交換器から凝縮水が飛散し始めたときに作動させるように構成してもよい。
このように構成した場合、熱交換面に凝縮した凝縮水を風圧で飛散させることが可能になったときに水滴飛散促進機構を作動させるので、無駄なエネルギーの損失を少なくし、エネルギー効率を高く維持することができる。
【0018】
また、上記熱交換装置において、前記水滴飛散促進機構を、前記対空気用熱交換器が蒸発器として使用されている場合において、前記対空気用熱交換器から凝縮水が飛散し始めたときに作動させ、前記対空気用熱交換器からの凝縮水の飛散が少なくなったときに停止させるように構成してもよい。
このように構成した場合は、熱交換面に凝縮した凝縮水を風圧で飛散させることが可能になったときに水滴飛散促進機構を作動させ、さらに、熱交換面に凝縮した凝縮水が凍り始めたときに水滴飛散促進機構を停止させるので、無駄なエネルギーの損失をさらに少なくし、エネルギー効率をより高く維持することができる。
【0019】
また、このように作動される水滴飛散促進機構を、対空気用熱交換器が除霜運転されるときにおいて表面部分Aに接触する界面部分の霜又は氷が融解したときに再作動させるように構成してもよい。
このように構成すると、水滴飛散促進機構を、冷凍運転時の凝縮水飛散だけではなく、除霜運転時における霜又は氷を飛散させることにも利用することができ、除霜運転時間を短縮することができる。
【0020】
また、前記課題を解決する解決手段に係る冷凍装置は、上記熱交換装置を用いたものである。
このように構成すれば、蒸発器の着霜を遅延させ、除霜運転時間を短縮し、熱エネルギー効率を向上させた冷凍装置を供給することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る実施の形態について説明する。まず、本発明に係る熱交換装置に適用する熱交換面の表面構造について説明する。
本発明においては、蒸発器の熱交換面は、下記特性1及び特性2を満たす表面部分A及び表面部分Bの2種類の表面部分が分散配置され、易霜氷剥離性に優れた表面構造に形成される。
【0022】
ここで、特性1及び特性2とは、前記に定義される特性をいう。これに関連して更に説明する。特性1は、表面部分Aと氷との密着結合関係をまず解くことにより、霜又は氷全体の離脱を容易にするための特性である。従来は、熱交換面に接触している霜又は氷を、単に熱交換面の界面部分で融解することにより熱交換面に付着する霜又は氷を離脱させようとしていたため、熱交換面の大きい部分で融解が生じなければ霜又は氷の離脱現象は生じなかったが、本発明に係る蒸発器の表面構造によれば表面部分Aに接触する界面部分の融解のみで霜又は氷全体の離脱が生ずる状態となる。
【0023】
また、霜又は氷の離脱を更に容易にするためには、表面部分Bが霜又は氷との結合性又は付着性が低い特性、例えば撥水性又は粗い表面などを有していることが好ましい。この場合、表面部分Aの界面部分で霜又は氷の融解が生ずれば表面部分Bとの界面部分の融解の有無に関係なく特性2が生じ得る。
【0024】
特性2は、表面部分Bに付着する霜又は氷が必ずしも融解しなくても表面部分Bから剥離されることを示す特性である。この場合の特徴は、表面部分Aから先に離脱した霜又は氷の結晶と一体に表面部分Bの霜又は氷の結晶が剥離する点にある。従来通常のものでは、剥離する前に表面部分Bに接する界面部分の霜又は氷も融解させなければならなかった。
【0025】
上記表面構造を熱交換面に付与すると、霜又は氷が付着している熱交換面に対し少ない熱エネルギーを加えるだけで容易に霜又は氷を除去できる。
【0026】
熱交換面は表面部分A及び表面部分B以外の表面部分を有していてもよいが、表面部分A及び表面部分Bの上記特性1及び特性2を損なうものであってはならない。
【0027】
表面部分Aと表面部分Bの面積割合や平面形状、配置、表面部分の立体形状などは、上記特性1と特性2を満たす限り限定されないが、次のようなものが好ましい。
【0028】
表面部分Aと表面部分Bとの面積割合は、1/99〜99/1の広い範囲で選択できるが、エネルギー効率面から言えば特性2の作用を発揮させることができる範囲内で表面部分Aの割合を少なくすることが望ましい。
【0029】
表面部分の平面形状と配置は、どのような形状や配置でもよい。具体例としては、表面部分Aと表面部分Bとが縞状に並んだもの、表面部分Aと表面部分Bとが海島状に配置されているもの、表面部分Aが表面部分B中に点状又は水玉状に分散しているもの(又はその逆)、表面部分Aが表面部分B上に格子状に配置されているもの(又はその逆)、表面部分Aが表面部分B上にリング状に配置されているもの(又はその逆)などを掲げ得る。
【0030】
表面部分の立体形状は、特に限定されず、平面状でも突起状でも異形でもよい。また、一方の表面が他方の表面より高いテラス状(角台状又は円台状など)であってもよい。
【0031】
次に本発明に係る表面構造の形成方法について説明する。
形成方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、(1)塗装による方法、(2)各種成形(モールディング)による方法、(3)各種化学的表面加工による方法、(4)各種物理的表面加工による方法、(5)積層体などの複合体とする方法などが揚げられる。
【0032】
以下塗装による方法について詳述する。
次の表面処理用組成物を熱交換面に塗装し、本発明に係る表面構造を形成する。
使用する表面処理用組成物としては、例えば、
(a)撥水性のバインダー樹脂、
(b)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、
(c)分散剤、
(d)低熱容量の無機粒子
及び
(e)溶媒
からなる表面処理用組成物が好ましい。
【0033】
この表面処理用組成物で形成された塗膜の表面構造において、表面部分Aは低熱容量の無機粒子(d)が形成し、表面部分Bは撥水性バインダー樹脂(a)とPTFE粒子(b)が形成しているものと推定される。
【0034】
撥水性バインダー樹脂(a)としては、撥水性であって、かつPTFE粒子(b)と低熱容量の無機粒子(d)を均一な分散状態で保持できるものであればよい。また、撥水性の程度としては対水接触角が大きいほうが望ましく、表面部分Bの対水接触角を140度以上とするものが好ましい。ただ、撥水性バインダー樹脂(a)の単独塗膜表面の対水接触角が140度以上である必要はないが、100度以上であるのが、目的とする撥水性を処理された表面に付与しやすい点から好ましい。
【0035】
このような撥水性バインダー樹脂(a)としては、例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などが揚げられるが、PTFE粒子の分散性などが優れる点からフッ素樹脂が好ましい。
【0036】
フッ素樹脂としては、従来公知のフッ素樹脂の中から選択できるが、耐候性、塗料化、溶剤溶解性などに有利なことから、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)を主体とする共重合体が好ましい。
【0037】
これらのフッ素樹脂としては、例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8などに記載の含フッ素共重合体が好ましく揚げられ、特に特許文献8記載の
(1) 下記式Iで表されるフルオロオレフィン構造単位
−CF2−CFX− (式I)
(式中、Xはフッ素原子、塩素原子、水素原子又はトリフルオロメチル基である)
(2) 下記式IIで表されるβ−メチル置換α−オレフィン構造単位
−CH2−CR(CH3)− (式II)
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である)
(3) 化学的硬化性反応性基を有する単量体に基づく構造単位
(4) エステル基を側鎖に有する単量体に基づく構造単位
及び
(5) 他の共重合可能な単量体に基づく構造単位
からなり、構造単位(1)が20〜60モル%、構造単位(2)が5〜25モル%、構造単位(3)が1〜45モル%、構造単位(4)が1〜45モル%及び構造単位(5)が0〜45モル%(ただし、構造単位(1)+(2)の合計が40〜90モル%である)含まれてなる数平均分子量1000〜500000の含フッ素共重合体が有用である。
【0038】
具体例としては、CTFE/イソブチレン(IB)/HBVE/プロピオン酸ビニル(VPi)共重合体、CTFE/IB/ヒドロキシエチルアリルエーテル(HEAE)/VAc共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi共重合体、CTFE/IB/HBVE/ベオバ9(シェル化学社製。商品名)共重合体、TFE/IB/HBVE/VBz共重合体、CTFE/IB/HBVE/マレイン酸ジエチル(DEM)共重合体、TFE/IB/HBVE/ベオバ9/マレイン酸ジブチル(DBM)共重合体、CTFE/IB/HBVE/フマル酸ジエチル(DEF)共重合体、CTFE/IB/HEVE/フマル酸ジブチル(DBF)共重合体、HFP/IB/HBVE/VBz共重合体、TFE/2−メチル−1−ペンテン(MP)/HBVE/VPi共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/CH2=CH(CF2)pCF3(p=1〜5)共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/VBz共重合体、CTFE/IB/HBVE/VAc共重合体、TFE/IB/HBVE/t−ブチル安息香酸ビニル(VtBz)共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/DEM共重合体、CTFE/IB/HBVE/VBz/DEF共重合体、CTFE/IB/HBVE/VPi/CH2=CH(CF2)pCF3(p=1〜5)共重合体、CTFE/MP/HEVE/VPi共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/ビニル酢酸(VAA)共重合体、TFE/IB/HEVE/VAc/VAA共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/VBz/クロトン酸(CA)共重合体、TFE/IB/HBVE/ベオバ9/CA共重合体、TFE/IB/HBVE/ベオバ9/VBz/CA共重合体、TFE/IB/HBVE/ベオバ10/VtBz/CA共重合体、TFE/IB/HBVE/VtBz/CA共重合体、TFE/IB/HBVE/DEMTFE/IB/HBVE/DFM/CA共重合体、/CA共重合体、TFE/MP/HBVE/VPi/VAA共重合体などが揚げられる。
【0039】
以上のフッ素樹脂の市販の商品としては、例えばゼッフル(ダイキン工業(株)製、ルミフロン(旭硝子(株)製)、フルオネート(大日本インキ(株)製)、セフラルコート(セントラル硝子(株)製)などが揚げられる。
【0040】
PTFE粒子(b)としては、重量平均分子量が500以上で500,000以下のものが好ましい。通常PTFEは重量平均分子量が100万〜1000万のものであるが、この範囲のPTFEは剪断力が加わるとフィブリル化するので、本発明で用いるPTFEは上記の範囲の分子量のPTFEを使用することが好ましい。好ましい重量平均分子量は600以上、特に5,000以上であり、また500,000以下、好ましくは200,000以下、更に好ましくは12,000以下である。
【0041】
また、平均粒子径としては、0.05μm以上で10μm以下の範囲のものが好ましい。平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、また好ましくは7μm以下、更には5μm以下である。
【0042】
更にPTFEはテトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体であってもよいし、公知の変性剤で変性されている変性PTFEであってもよい。
【0043】
また、PTFE粒子は重合開始剤などに起因して分子末端に不安定基が存在するが、そうした末端基を完全にフッ素化して安定化したPTFE粒子が好ましい。特に好ましいPTFE粒子は、末端基が完全にフッ素化された重量平均分子量500〜20,000で平均粒子径が2〜10μmのものである。
【0044】
PTFE粒子(b)の市販品としては、例えばダイキン工業(株)製のルブロン、セントラル硝子(株)製のセフラルルーブなどが揚げられる。
【0045】
分散剤(c)はPTFE粒子(b)を撥水性バインダー(a)中に均一に分散させる作用を有する。ここで使用する分散剤は、例えば溶媒を使用する場合にPTFE粒子(b)を溶媒に分散させる作用だけでは足らず、塗膜中で撥水性バインダー樹脂に均一にPTFE粒子(b)を分散させる作用をもつことが必要である。したがって、好適な分散剤は、PTFE粒子(b)及び撥水性バインダー樹脂(a)の種類、更には溶媒(e)の種類を考慮して選択する。
【0046】
撥水性バインダー(a)としてフッ素樹脂を選択し、後述する溶媒(e)として有機溶媒を選択する場合、分散剤としては、フルオロアルキル基を有するビニルモノマーから誘導された繰返し単位を含む重合体(C1)が好ましい。
更に好ましくは、フルオロアルキル基を有するビニルモノマーと非フッ素系ビニルモノマーとの共重合体が揚げられる。
【0047】
フルオロアルキル基を有するビニルモノマーは、フルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートであってもよく、更にフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートは、次の一般式で表されるものであってもよい。
Rf−A1−OC(=O)CB1=CH2
(式中、Rfは炭素数1〜21のフルオロアルキル基、B1は水素又はメチル基、A1は2価の有機基である。)
フルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば以下のものが例示できる。
【0048】
【化1】
【0049】
(式中、Rfは炭素数1〜21のフルオロアルキル基、R1は水素又は炭素数1〜10のアルキル基、R2は炭素数1〜10のアルキレン基、R3は水素又はメチル基、Arは置換基を有することもあるアリーレン基、nは1〜10の整数である。)
限定されないフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの具体例を次に示す。
CF3(CH2)OCOCH=CH2、
CF3CF2(CH2)OCOCH=CH2、
CF3(CF2)3(CH2)OCOCH=CH2、
CF3(CF2)4(CH2)OCOCH=CH2、
CF3(CF2)5(CH2)OCOCH=CH2、
CF3(CF2)6(CH2)OCOCH=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)OCOCH=CH2、
CF3(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3CF2(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)3(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)4(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)5(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)6(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CH2)3OCOCH=CH2、
CF3CF2(CH2)3OCOCH=CH2、
CF3(CF2)3(CH2)3OCOCH=CH2、
CF3(CF2)4(CH2)3OCOCH=CH2、
CF3(CF2)5(CH2)3OCOCH=CH2、
CF3(CF2)6(CH2)3OCOCH=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)3OCOCH=CH2、
CF3(CH2)6OCOCH=CH2、
CF3CF2(CH2)6OCOCH=CH2、
CF3(CF2)3(CH2)6OCOCH=CH2、
CF3(CF2)4(CH2)6OCOCH=CH2、
CF3(CF2)5(CH2)6OCOCH=CH2、
CF3(CF2)6(CH2)6OCOCH=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)6OCOCH=CH2、
CF3CH=CHCH2OCOCH=CH2、
CF3CF2CH=CHCH2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)3CH=CHCH2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)4CH=CHCH2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)5CH=CHCH2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)6CH=CHCH2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)7CH=CHCH2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CH2)2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)(CH2)2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)2(CH2)2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)3(CH2)2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)4(CH2)2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)5(CH2)2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)2OCOCH=CH2、
H(CF2)(CH2)OCOCH=CH2、
H(CF2)2(CH2)OCOCH=CH2、
H(CF2)4(CH2)OCOCH=CH2、
H(CF2)6(CH2)OCOCH=CH2、
H(CF2)8(CH2)OCOCH=CH2、
CF3CHFCF2(CH2)OCOCH=CH2、
CF3(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
CF3CF2(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)3(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)4(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)5(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)6(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CH2)OCOCH=CH2、
CF3(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
CF3CF2(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)3(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)4(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)5(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)6(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CH2)3OCOC(CH3)=CH2、
CF3CF2(CH2)3OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)3(CH2)3OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)4(CH2)3OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)5(CH2)3OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)6(CH2)3OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)3OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CH2)6OCOC(CH3)=CH2、
CF3CF2(CH2)6OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)3(CH2)6OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)4(CH2)6OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)5(CH2)6OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)6(CH2)6OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)6OCOC(CH3)=CH2、
CF3CH=CHCH2OCOC(CH3)=CH2、
CF3CF2CH=CHCH2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)3CH=CHCH2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)4CH=CHCH2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)5CH=CHCH2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)6CH=CHCH2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)7CH=CHCH2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)2(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)3(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)4(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)5(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
H(CF2)(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
H(CF2)2(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
H(CF2)4(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
H(CF2)6(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
H(CF2)8(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
CF3CHFCF2(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
CF3SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)2SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)3SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)4SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)5SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)6SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
CF3C6F10(CF2)2SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2、
(CF3)2CFCH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)2CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)3CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)5CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CFCH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)2CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)3CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)5CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)7CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
【0050】
【化2】
【0051】
上記のフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートは2種以上を混合して用いることももちろん可能である。
【0052】
非フッ素系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレートエステルが挙げられる。(メタ)アクリレートエステルは、(メタ)アクリル酸と、脂肪族アルコール、例えば、一価アルコール又は多価アルコール(例えば、2価アルコール)とのエステルであってもよい。
【0053】
非フッ素系モノマーとしては、例えば以下のものを例示できる。
【0054】
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、アルコキシポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートグリシジルメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、グルコシルエチルメタクリレート、メタクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、p−イソプロピルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類。
【0055】
更に、エチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、クロロプレン、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルアルキルケトン、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0056】
また、非フッ素系モノマーは、ケイ素系モノマー(例えば、(メタ)アクリロイル基含有アルキルシラン、(メタ)アクリロイル基含有アルコキシシラン、(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン)であってよい。
【0057】
含フッ素重合体(c(1))は、ラジカル重合法で製造できる。
【0058】
重合体(c(1))の重量平均分子量は比較的小さいものであり、3,000以上、更には5,000以上、特に7,000以上であり、また30,000以下、更には20,000以下、特に15,000以下であるが好ましい。
【0059】
低熱容量の無機粒子(d)としては、多くの金属単体又は非金属単体、更には一部の金属化合物の粒子が該当する。具体例としては、例えば金、銀、アルミニウム、鉄、銅などの金属;炭素、ホウ素などの非金属;その他金属化合物などを掲げることができる。
また、低熱容量の無機粒子(d)は、別の観点からは、導電性であることが望ましい。撥水性バインダーの多くは帯電性であり、塗膜表面に氷結の核となる塵を付着させやすいので、塗膜表面の帯電を防止することにより着氷(雪)を更に防止できる。
なお、耐候性を損なわないためには低熱容量の無機粒子も耐候性や耐食性、耐溶剤性に富むものが望ましい。
低熱容量の無機粒子(d)の熱容量としては、モル熱容量で7JK−1mol−1以下が好ましい。下限は通常6JK−1mol−1である。
低熱容量の無機粒子(d)の1次平均粒子径としては、分散性の点から2μm以上、12μm以下が好ましい。
【0060】
かかる低熱容量の無機粒子(d)としては、特に炭素の単体であるカーボンブラック、とりわけ結晶性のカーボンブラックが好ましい。
【0061】
なお、低熱容量の無機粒子(d)を配合するときは、その理由は不明であるが、撥水性の有無にかかわらず、滑落性が更に向上する。また、着霜してしまった場合の除霜を容易にする作用も期待できる。
【0062】
溶媒(e)は、表面処理組成物の各成分の均一な混合を容易にし、塗膜の形成を容易にし、更に各種成分を撥水性バインダー樹脂(a)中に均一分散させる観点から有用である。したがって、溶媒(e)は他の成分(a)、(b)、(c)及び(d)を考慮して選択される。
【0063】
溶媒(e)としては水などの無機溶媒系でもよいが、上記観点から有機溶媒系が好ましい。有機溶媒系としては単一の溶媒でも2種以上の混合溶媒系でもよい。2種以上使用する場合は、極性有機溶媒と非極性有機溶媒を含むことが他の各成分をより一層均一に分散させ得る点から望ましい。
【0064】
極性有機溶媒としては、例えば酢酸ブチル、酢酸エチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルなどが揚げられる。
【0065】
非極性有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンのほか、石油スピリッツであるターペンなどが揚げられる。
【0066】
特に酢酸ブチルと石油系溶剤(トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ターペンなど)とを混合使用することにより、得られる塗膜の滑水性を調節できる。混合割合は組み合わせる溶剤の種類によって異なり任意であるが、同じ重量か酢酸ブチルの多いほうが滑水性が良好な点から好ましい。
【0067】
本発明の表面処理組成物における好ましい配合割合は、撥水性のバインダー樹脂(a)100重量部に対して(以下、特に断らない限り同じ)、PTFE粒子(b)は100重量部以上で200重量部以下であり、分散剤(c)は5重量部以上で30重量部以下である。低熱容量の無機粒子(d)は25重量部以上で200重量部以下、また溶媒(e)は400重量部以上で2000重量部以下とすることが好ましい。
【0068】
かかる表面処理組成物は、塗膜を形成できる形態であれば種々の形態に調製できるが、塗膜の形成が容易な点から溶媒型塗料に調製するのが好ましく、塗装性や分散性の点から固形分濃度を5〜40重量%、特に15〜30重量%とするのが好ましい。また、本発明の目的を損なわない限り、顔料、他の樹脂類、流動調整剤、色分かれ防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0069】
溶媒型塗料としての表面処理用組成物の調製は、溶剤(e)に各成分を投入し、充分攪拌して行う。攪拌方法としては特に限定されないが、超音波攪拌法や強制攪拌法などがPTFE粒子(b)や低熱容量の無機粒子(d)などの粒子成分を容易に均一に分散できる点から好ましい。
【0070】
塗装方法としては特に限定されず、例えばディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレー法などの方法が採用できる。塗布後、室温で乾燥するか、必要に応じて加熱乾燥させて硬化被膜を形成する。
【0071】
塗膜の膜厚は適用部分によって適宜選定すればよいが、通常10μm以上、更には30μm以上、また0.2mm以下、更には0.1mm以下が好ましい。
【0072】
塗布する基材は特に限定されず、着霜が問題となる熱交換器によって決まる。例えばアルミニウム、ステンレススチール、銅、各種合金、セラミックスなどが揚げられる。
【0073】
かくして得られる塗膜(熱交換面を形成する表面構造)は、熱交換面に表面部分Aと表面部分Bを与え、易霜氷剥離性を有するものである。
更にこの塗膜は、熱交換面の滑落角(4μリットル水滴)を10度以下、更に好ましくは5度以下にすることができ、また、塗膜表面の対水接触角を140度以上、更には145度以上、特に150度以上にし、撥水性表面に形成された微小な水滴も容易に滑落し、着霜の核を形成させず、着霜を防止する効果を向上させるものである。
【0074】
(試験例)
次に、上記塗膜により表面構造を形成した試験例について説明する。なお、本発明に係る塗膜形成方法は下記の試験例に用いた形成方法に限定されるものではない。
【0075】
比較試験例1
撥水性バインダー樹脂(a)としてダイキン工業(株)製のゼッフルGK−510、PTFE粒子(b)としてセントラル硝子(株)製のセフラルルーブ(商品名。平均一次粒子径5〜10μmの変性PTFE。重量平均分子量1500〜20000)、分散剤(c)としてダイキン工業(株)製のユニダインTG−656を用い、表1に記載の量を表1に示す有機溶剤(e)に投入し、超音波攪拌法により攪拌混合して表面処理用組成物を調製した。
【0076】
得られた表面処理用組成物をアルミニウム板(JISH4000のA1200系。100mm×100mm)上にスプレー法で塗装し、室温で1日間放置して硬化させた後、塗膜表面を洗浄せずに乾燥して試験用の塗板(塗膜の膜厚20μm)を作製した。
【0077】
この塗板について以下の方法により、対水接触角及び滑落角(4μリットル)を調べた。結果を表1に示す。
【0078】
なお、対水接触角は次のようにして測定した。
JISR3257に準じ、協和界面科学(株)製の接触角計(CA−VP、商品名)により、温度15〜20℃、相対湿度50〜70%で測定した。対水接触角の角度は大きいほうが撥水性が高い。
【0079】
また、滑落角は次のようにして測定した。
塗板を協和界面科学(株)製の接触角計(CA−VP、商品名)に水平に固定し、温度17±1℃で相対湿度60±2%の環境下に水平に載置された試料板上に蒸留水を4μリットル滴下して水滴を形成し、次いで試料板を角度0.1度ずつ傾斜させていき、水滴が転がり始めたときの試料板の角度を測定した。表に示す測定値は初回の滑落角である。滑落角の角度は小さいほうが水滴滑落性(滑水性)がよい。
【0080】
【表1】
【0081】
試験例1
上記の比較試験例1において、成分(a)、(b)、(c)及び(e)の配合割合を表2に示す割合とし、更に低熱容量の無機粒子(d)として表2に示す粒子を同表に示す量加えたほかは試験例1と同様にして表面処理用組成物を調製し塗装して試験用の塗板を作製した。攪拌方法は超音波攪拌法を採用した。
【0082】
この塗板について、対水接触角及び転落角を比較試験例1と同様にして調べた。結果を表2に示す。この結果から、低熱容量の無機粒子(d)を加えることにより滑落性を改善し得ることが分かる。
【0083】
なお、表2中の低熱容量の無機粒子(d)は次のものである。
CB:カーボンブラック(シグマ・アルドリッチ製。一次平均粒子径2〜12μm)
GF:天然黒鉛(一次平均粒子径約3μm)
【0084】
【表2】
【0085】
試験例2
試験例1の実験番号2−2(カーボンブラック粒子)及び実験番号2−8(天然黒鉛粒子)において、得られた塗膜を120℃で10時間加熱硬化させ、試験用の塗板を作製した。
【0086】
この加熱硬化塗板について、対水接触角及び転落角を比較試験例1と同様に調べた。その結果を表3に示す。この試験例2においても比較試験例1のものに比し滑落性を改善し得ることが分かる。
【0087】
【表3】
【0088】
試験例3
撥水性バインダー樹脂(a)としてダイキン工業(株)製のゼッフルGK−510を4.0g、PTFE粒子(b)としてセントラル硝子(株)製のセフラルルーブ(商品名。平均一次粒子径5〜10μmの変性PTFE。重量平均分子量1500〜20000)を4.0g、分散剤(c)としてダイキン工業(株)製のユニダインTG−656を4.0g、低熱容量の無機粒子(d)としてカーボンブラック(シグマ・アルドリッチ製。平均粒子径2〜12μm)を2.0g用い、酢酸ブチル20gとヘプタン20gの混合溶媒に投入し、超音波攪拌により攪拌混合して表面処理用組成物を調製した。
【0089】
得られた表面処理用組成物をアルミニウム板(JIS H4000のA1200系。100mm×100mm)上にスプレー法で塗装し、室温で1日間放置して硬化させた後、塗膜表面を洗浄しないで乾燥して試験用の塗板(塗膜の膜厚20〜30μm)を作製した。
【0090】
この塗板をついて対水接触角及び滑落角(4μリットル)を前述の比較試験例1と同様の方法で測定したところ、対水接触角は152.1度であり、滑落角は4.6度であった。
【0091】
次に、着霜(フロスト)−除霜(デフロスト)試験を次の要領で行った。
まず、風洞内に試料板を鉛直に固定し、試料板の表面温度を−7±2℃に維持する。この風洞内に相対湿度87±3%の湿気を含んだ空気(温度7±0.2℃)を試料板の表面に平行に風速1m/秒で流し、試料板表面に強制的に着霜させる。このフロスト運転は20分間続ける。
フロスト運転後直ちに試料板表面温度を5℃に加熱しデフロスト運転を開始する。空気はフロスト運転時と同じものを同じ条件で流す。デフロスト運転は2分間続ける。
このようなフロスト運転−デフロスト運転を1サイクルとし、これを連続して2サイクル行う。
以上が着霜(フロスト)−除霜(デフロスト)試験の要領である。
【0092】
上記着霜(フロスト)−除霜(デフロスト)試験により次の結果が得られた。
(1) 第1サイクルのフロスト運転開始10分後に着霜が始まった。この着霜開始時の試料板表面の状態をCCDカメラ(ELMO社製のCN401。商品名)で撮影した写真を図1(全体)及び図2(拡大。倍率1.2倍。以下同様)に示す。
また、フロスト運転開始から20分後の、フロスト運転終了時の試料板表面の着霜状態をCCDカメラで撮影した写真を図3(全体)及び図4(拡大)に示す。この写真から分かるように、試料板表面に形成された霜又は氷は綿状(針状結晶の集合体)であった。
【0093】
(2) 第1サイクルのデフロスト運転では、デフロスト運転開始後直後から着霜している霜又は氷が剥離し始めた。この霜又は氷の剥離開始時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図5(全体)及び図6(拡大)に示す。これら写真から分かるように、この試験例3では、氷は塊のままでずれ落ちている。なお、従来の熱交換器では、氷が略解けていた、また、氷が略解ける前に氷の塊がずれ落ちるようなことはなかった。
また、第1サイクルのデフロスト運転開始2分後のデフロスト運転終了時には完全に霜又は氷が試料板表面から剥がれ落ちてしまっていた。このデフロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図7(全体)及び図8(拡大)に示す。これら写真から分かるように、デフロスト運転終了時の試料板表面には肉眼で観察できる水滴は認められなかった。
【0094】
(3) 引き続く第2サイクルでは、フロスト運転開始6分後に着霜が始まった。
そして、第2サイクルのフロスト運転開始20分後の、フロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図9(全体)及び図10(拡大)に示す。これら写真から分かるように、第1回目のフロスト運転の状態と比較し変化がない。
(4)次いで行った第2サイクルのデフロスト運転では、デフロスト運転開始直後から霜又は氷が剥離し始めた。この霜又は氷の剥離開始時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図11(全体)に示す。
また、第2サイクルのデフロスト運転開始から30秒後には、試料板表面に付着した霜又は氷が略完全に剥離した。この霜又は氷が略完全に剥離したときの試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図12(全体)に示す。これら写真から分かるように、第2サイクルのデフロスト運転時においても、霜又は氷が塊のままでずれ落ちている。
また、第2サイクルのデフロスト運転開始から2分後の、デフロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図13(全体)及び図14(拡大)に示す。これら写真から分かるように、第2サイクルのデフロスト運転終了後にも試料板表面には肉眼で観察できる水滴は認められなかった。
【0095】
比較試験例2
試験例3において、低熱容量の無機粒子(d)を配合しなかったほかは同様にして調製した表面処理用組成物を用いて試料板を作製し、同様にして着霜(フロスト)−除霜(デフロスト)試験を行った。その結果は次のようであった。
【0096】
(1) 第1サイクルのフロスト運転開始約5分後に着霜が始まり、第1サイクルのフロスト運転開始から約10分後にはほぼ全面が氷結した。このフロスト運転開始約10分後の、全面フロスト状態の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図15(全体)及び図16(拡大)に示す。
また、第1サイクルのフロスト運転開始20分後の、フロスト運転終了時の試料板表面における着霜状態をCCDカメラで撮影した写真を図17(全体)及び図18(拡大)に示す。
前述の試験例3と比較すると、フロスト運転終了時において着霜量の多いことが分かる。これは試験例3のものでは、試料板表面で結露した水滴が風圧で川下に流されたり、容易に下方に落下したりするため、フロスト運転により氷結する水滴が試料板表面に少ないことを示しているものと解釈できる。
【0097】
(2) 第1サイクルのデフロスト運転では、デフロスト運転開始直後から着霜している霜又は氷が融解し始めた。この霜又は氷の融解開始時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図19(全体)及び図20(拡大)に示す。これら写真から分かるように、氷が剥離しているところでは水玉模様の水滴が付着して霜又は氷が完全に融解した状態となっており、前述の試験例3のように氷の塊がずれ落ちる状況とは異なっている。
また、第1サイクルのデフロスト運転開始2分後のデフロスト運転終了時には完全に霜又は氷が融解した。このデフロスト運転終了時の試料板表面の状態を撮影した写真を図21(全体)及び図22(拡大)に示す。これら写真から分かるように、前述の試験例3とは異なり、デフロスト運転終了後の試料板表面には肉眼で観察できる大小の水滴が多数認められた。
【0098】
(3) 引き続く第2サイクルでは、運転開始6分後に着霜が始まった。
第2サイクルのフロスト運転開始20分後の、フロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図23(全体)及び図24(拡大)に示す。これら写真から大きな水滴が氷結した状態であることが分かる。この点で第1回目のフロスト運転時の状態と比較し大きな変化のあることが分かる。これは、第1回目のデフロスト運転終了後の試料板表面に付着していた大きな水滴が氷結したものと思われる。
(4)次いで行った第2サイクルのデフロスト運転では、デフロスト運転開始直後から霜又は氷が融解し始めた。デフロスト運転開始直後の霜又は氷が融解開始時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図25(全体)に示す。また、デフロスト運転開始1分後には霜又は氷が略完全に融解した。このときの試料板表面の状態を撮影した写真を図26(全体)に示す。これら写真から分かるように、付着した霜又は氷は塊のままでずれ落ちることなく融解している。
また、第2サイクルにおけるデフロスト運転開始2分後の、デフロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真を図27(全体)及び図28(拡大)に示す。これら写真から分かるように、前述の第1回目のデフロスト運転終了時より更に多くの大小の水滴が表面に残存していた。
【0099】
上記のように、本発明に係る表面構造を熱交換面に施すと、熱交換面が撥水性、滑水性及び易霜氷剥離性に優れたものとなる。
【0100】
(実施の形態1)
実施の形態1を図29〜図31に基づき説明する。図29は実施の形態1に係る冷凍装置の冷媒回路図である。図30は同冷凍装置の室外側熱交換器における熱交換面上の凝縮水量の運転時間に対する変化と飛散時間とを示す図である。図31は図30におけるt1、t2の外気温度に対する変化を示す図である。図32は同冷凍装置の暖房運転時における水滴飛散促進機構の制御フローチャートである。図33は同冷凍装置の除霜運転時における水滴飛散促進機構の制御フローチャートである。
【0101】
実施の形態1に係る冷凍装置は、図29に示されるように、セパレート型ヒートポンプ式空気調和機であって、圧縮機1の吐出側及び吸入側が四路切換弁2の吐出ポート2a及び吸入ポート2bに接続され、この四路切換弁2の切換ポート2c、2d間に室外側熱交換器3、膨張機構4、室内側熱交換器5が接続されている。また、圧縮機1、四路切換弁2、室外側熱交換器3は室外ユニット(図示せず)に収納されており、室内側熱交換器5は室内ユニット(図示せず)に収納されている。また図29において、符号3aは室外側熱交換器3に外気を送風する室外ファンであり、符号5aは、室内側熱交換器5に室内空気を送風する室内ファンである。
【0102】
室外側熱交換器3は、平板型プレートフィンに熱交換パイプを嵌挿した対空気用熱交換器であって、この平板型プレートフィンの熱交換面には、前述の表面処理物を塗装して前述の表面構造が形成されている。したがって、この室外側熱交換器3の熱交換面には、低熱容量の表面部分Aと霜又は氷との結合性又は付着性が低い表面部分Bの2種類の表面部分が分散配置されている。また、室外側熱交換器3の暖房運転時(後記暖房サイクル参照)における出口側(四路切換弁2側)には、この暖房運転時の出口側の冷媒温度Ts1を検出する第1センサ11が取り付けられ、また、室外側熱交換器3の入口側空気温度Ts3を検出する第3センサ21と、除霜運転時の室外側熱交換器3の出口側空気温度Ts4を検出する第4センサ22とを備えている。
【0103】
そして、上記構成の冷凍装置は、制御装置13により次のように運転される。
冷房運転時には、四路切換弁2を冷房サイクル側(B側)に切り換えることにより、冷媒を、圧縮機1、四路切換弁2、室外側熱交換器3、膨張機構4、室内側熱交換器5、四路切換弁2、圧縮機1と循環させる(冷房サイクル)。このように冷媒を流通させることにより、室内側熱交換器5を蒸発器として作用させ、かつ、室外側熱交換器3を凝縮器として作用させて冷房を行う。
【0104】
また、暖房運転時には、四路切換弁2を暖房サイクル側(A側)に切り換えることにより、冷媒を、圧縮機1、四路切換弁2、室内側熱交換器5、膨張機構4、室外側熱交換器3、四路切換弁2、圧縮機1と循環させる(暖房サイクル)。このように冷媒を流通させることにより、室内側熱交換器5を凝縮器として作用させ、かつ、室外側熱交換器3を蒸発器として作用させて暖房を行う。なお、暖房運転時には外気温度が低く、蒸発温度が0℃以下となるので、暖房運転を継続している間に室外側熱交換器3が着霜する。
また、除湿運転時には、四路切換弁2を冷房サイクル側(B側)に切り換え、冷房サイクルで冷媒を流通させるサイクル(除霜サイクル)により、室外側熱交換器3を加熱して除霜を行う。
【0105】
また、本実施の形態における水滴飛散促進機構、すなわち、室外側熱交換器3が蒸発器として使用されている場合に、室外ファン3aにより供給される空気の風圧を利用して、対空気用熱交換器も熱交換面に凝縮した凝縮水を飛散させることを促進する水滴飛散促進機構としては、室外ファン3aが速度可変に構成されており、暖房運転時における速度より高速のモードで室外ファン3aを運転するように構成されている。
【0106】
上記暖房運転時において、暖房運転時間が経過すると、室外側熱交換器の熱交換面に空気中の水分が凝縮して付着する。この凝縮水は図30に示すように変化する。すなわち、室外側熱交換器3の熱交換面は、上述の表面構造が形成され、撥水性及び滑落性に優れた熱交換面として形成されているので、熱交換面に付着した凝縮水は、ある程度の量になると送風機からの送風圧力により飛散され始める(図30におけるt1参照)。したがって、熱交換面に付着した凝縮水が凍るまでは、熱交換面上の凝縮水は余り増加しない(図30におけるt2参照)。しかし、この凝縮水が凍り始めると凝縮水の飛散が減少し急激に熱交換面上の水分量が増加する(図30におけるt2以降参照)。なお、このt1、t2は外気温度に影響され、概ね図31に示す傾向で変化することが分かった。
【0107】
そこで、暖房運転時における水滴飛散促進機構の制御を図32に従い説明する。なお、暖房運転は前述の暖房サイクルにおいて圧縮機1ON、室外ファン3aON、四路切換弁2がA側切換位置、室内ファン5aONとして行われている(ステップS1)。この暖房運転において、室外側熱交換器3の入口側空気温度Ts3を検出し、図30におけるt1、t2を決定する(ステップS2)。同時に暖房運転時間を計測する第1タイマを作動させ(ステップS3)、暖房運転開始後t1時間経過したときに(ステップS4)水滴飛散促進機構を作動させる(ステップS5)。この場合の水滴飛散促進機構は室外ファン3aを高速モードで運転することである。そして、暖房運転開始後t2時間経過したときに(ステップS6)、水滴飛散促進機構を停止する(ステップS7)。
このように、水滴飛散促進機構は図31におけるt1からt2の間で駆動される。
【0108】
次に、除湿運転及び除湿運転時における水滴飛散促進機構の制御は次のように行われる。
この実施の形態における暖房運転において(図33におけるステップS11、暖房運転は上述のものと同一)、室外側熱交換器3の着霜量が増加するにつれ室外側熱交換器3の出口側冷媒温度Ts1が低下し、暖房能力が低下する。そこで、第1センサ11で検出する冷媒温度Ts1が所定温度Taになると(ステップS12)、圧縮機1をOFF及び室外ファン3aをOFFして暖房運転を停止する(ステップS13)。そして、四路切換弁2をB側に切り換え(ステップS14)、圧縮機1を運転し(ステップS15)、制御装置13に内蔵した第2タイマーを作動させて(ステップS16)、前述の除霜サイクルで除霜運転を行う。
【0109】
上記除霜運転が所定時間tm経過したときに表面部分Aに接触する界面部分の霜又は氷が融解するようにこの所定時間tmを予め設定しておく。そして、所定時間経過したときに(ステップS17)圧縮機1を停止する(ステップS18)。このとき、表面部分Aに接する界面部分の霜又は氷が融解し脱落を始める。一方、この室外側熱交換器3の熱交換面は撥水性と滑落性に優れているため、この融解した霜又は氷が表面部分Bに付着している霜又は氷とが部分的に連結して自重により剥離する。また、圧縮機1を停止すると同時に水滴飛散促進機構をONし、室外ファン3aを高速モードで運転する(ステップS19)。前述の剥離作用に加え室外ファン3aによる風圧が脱落する表面部分A上の霜又は氷に風圧が作用し表面部分Bに付着している霜又は氷の剥離が促進される。
【0110】
このようにして室外側熱交換器3の熱交換面における霜又は氷の剥離が進むにつれて室外側熱交換器3の温度が上昇する。除霜運転時当初は、室外側熱交換器3に霜又は氷が付着しているため室外側熱交換器3における空気の出入口温度差Ts3−Ts4が大きくなっていたが、室外側熱交換器3に付着している霜又は氷が脱落するにつれ室外側熱交換器3の温度が上昇し、室外側熱交換器3における空気の出入口温度差Ts3−Ts4が小さくなる。そこで、予め室外側熱交換器3における空気の出入口温度差Ts3−Ts4が所定値Tcより下回るようになったときに除霜運転が完了するようにこの温度差Ts3−Ts4を設定しておく。そして、この温度差Ts3−Ts4が所定値Tcより小さくなったときに除霜運転を終了させ(ステップS20)、水滴飛散促進機構を停止させる、すなわち、室外ファン3aを停止させる(ステップS21)。なお、除霜運転を終了した後は、四路切換弁2をA側に切り換えて通常の暖房運転サイクルに戻って暖房運転が再開される(ステップS21→ステップS11)。
【0111】
この実施の形態1は以上のように構成されているので次のような効果を奏する。
室外側熱交換器3の熱交換面が撥水性及び滑落性に優れたものとなるため、室外側熱交換器3の表面で凝縮して付着した凝縮水が球形状となって室外側熱交換器3を通過する風圧で飛散されやすくなる。また、熱交換面に付着した凝縮水は過冷却状態となり凍りにくくなる。したがって、室外側熱交換器3の熱交換面に付着した霜の成長速度が低下し除霜が必要となる着霜量までの暖房運転時間が延長される。また、室外側熱交換器3の熱交換面に凝縮した凝縮水は、水滴飛散促進機構により飛散されるので、凝縮水が熱交換面に着霜する量がさらに減少する。したがって、冷凍運転時間がより一層延長される。
【0112】
また、この実施の形態1によれば、室外側熱交換器3の熱交換面は表面部分Aと表面部分Bとが分散配置されているので、除霜運転時においては、表面部分Aと接触する界面部分の霜又は氷を融解することにより、表面部分A上の霜又は氷が剥離する。そして、この剥離した霜又は氷と表面部分B上の霜又は氷とが少なくとも部分的に結合し、自重により表面部分B上の霜又は氷が剥離される。さらに、この除霜運転時において表面部分Aに接する霜又は氷が融解したときに、水滴飛散促進機構が作動して室外ファン3aが暖房運転時の速度より高速で運転されるため、表面部分Aとの界面部分で融解した表面部分A上の霜又は氷がより大きな風圧を受けて飛散されることにより、表面部分B上の霜又は氷の剥離がより一層促進され、除霜時間がさらに短縮される。したがって、この室外側熱交換器3では、従来のように熱交換面に付着した霜又は氷を全面的に融解する必要がなくなり除霜運転時間が短縮される。
【0113】
また、この実施の形態1によれば、室外側熱交換器3の熱交換面は易霜氷剥離性を有するので、除霜運転時、熱交換面の霜又は氷が自重により表面から塊のまま剥離(離脱)し、霜又は氷が融解又は剥離された後の熱交換面に水滴が残存しなくなる。このため、冷凍運転再開後の着霜量又は氷結量が減少し、冷凍運転時間の延長と除霜運転時間の短縮を継続して発揮させることができる。したがって、除霜に要する熱エネルギーが少なくて済むとともに、除霜運転時間が短縮される。
【0114】
このように、実施の形態1によれば、暖房運転時間が延長され、除霜運転時間が短くなるので、暖房快感度が向上し、エネルギー効率が向上する。
【0115】
(実施の形態2)
実施の形態1では、熱交換装置における熱交換面に付着した凝縮水の飛散開始、及び飛散終了を予め設定したタイマの作動により検出するようにしていたがこの実施の形態2では光学式センサにより検出するようにしたものである。
以下この実施の形態2を、図34及び図35に基づき説明する。なお、図34は実施の形態2に係る冷凍装置の冷媒回路であり、図35は同冷凍装置の暖房運転時における水滴飛散促進機構の制御フローチャートである。
【0116】
実施の形態2に係る冷凍装置の冷媒回路は、図34に示すように、実施の形態1との相違は、室外側熱交換器3の空気流出側に凝縮水の飛散を検出する光学式センサ25を設けたものであって、その他の構成は実施の形態1の場合と同一である。
【0117】
次に、暖房運転時における水滴飛散促進機構の制御を図35に従い説明する。なお、暖房運転は、実施の形態1の場合と同様に、冷媒回路を暖房サイクルとして圧縮機1ON、室外ファン3aON、四路切換弁2がA側切換位置、室内ファン5aONとして行われている(ステップS31)。この暖房運転において光学式センサ25に水滴の飛散の有無を検出する(ステップS32)。水滴の飛散が検出された場合は水滴飛散促進機構を作動させる(ステップS33)。この場合の水滴飛散促進機構は、実施の形態1の場合と同様、室外ファン3aを高速モードで運転することである。また、同時に暖房運転時間を計測する第3タイマを作動させ(ステップS34)、所定時間ts内に次の凝縮水の飛散の有無を検出する(ステップS35)。そして、所定時間ts内に凝縮水の飛散が無い場合は(ステップS36)、熱交換装置の熱交換面における凝縮水が凍り始めたと判断することができ、水滴飛散促進機構がOFF、つまり室外ファン3aが停止される(ステップS37)。なお、前述の所定時間ts内に凝縮水の飛散があれば、熱交換面上に未だ霜又は氷が成長していない状態であると判断されるので、ステップ35の水滴検出作業が継続される(ステップS35→ステップ34)。
【0118】
上記実施の形態2における水滴飛散促進機構の作動は、実施の形態1における作動と略同様の結果となる。なお、実施の形態2の場合は、凝縮水の飛散有無を直接的に検出しているので、実施の形態1の場合に比しより精度凝縮水の飛散有無を検出することができる。
【0119】
実施の形態2は以上のごとく構成されているので、実施の形態1の場合と同様の効果を奏することができる。
【0120】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1における水滴飛散促進機構を以下に説明するように変更したものである。なお、図36は実施の形態3に係る冷凍装置における水滴飛散促進機構の説明図であり、図37は同水滴飛散促進機構における圧縮空気噴出ノズルの側面図である。
【0121】
実施の形態3における水滴飛散促進機構は、空気圧縮機41、空気圧縮機41に接続された圧縮空気噴出ノズル42を備えている。圧縮空気噴出ノズル42は水平各上部材の室外側熱交換器3側面に複数の圧縮空気噴出孔43が形成され、反対側の面に空気圧縮機を接続するこの空気圧縮機41から圧縮空気供給するフレキシブルチューブ44が接続されている。
【0122】
また、上記水滴飛散促進機構を構成する圧縮空気噴出ノズル42は、水滴飛散促進機構をONしたときには、モータ等(図示せず)により室外側熱交換器3の空気通過面を上下動させることができるように構成されている。
なお、実施の形態3におけるその他の構成は、実施の形態1と同一である。
【0123】
実施の形態3は以上のように構成されているので、実施の形態1と同様の効果を奏する。また、実施の形態3では、水滴飛散促進機構が空気圧縮機41から圧縮空気を前記対空気用熱交換器に吹き付けるように構成されているので、熱交換面上の凝縮水を飛散させる風圧を十分に大きくすることができ、凝縮水をより多く飛散させることができる。
【0124】
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態1における水滴飛散促進機構を以下に説明するように変更したものである。なお、図38は実施の形態4に係る水滴飛散促進機構の説明図である。
【0125】
実施の形態4における水滴飛散促進機構は、図38に示すように、室外側熱交換器3の下部に室外側熱交換器3に振動を加える加振装置51を設置したものである。なお、その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0126】
実施の形態4は以上のように構成されているので、実施の形態1と同様の効果を奏する。また、実施の形態4では、水滴飛散促進機構が加振装置51により室外側熱交換器3に振動加える用に構成されているので、熱交換面上の凝縮水が振動により移動が容易になり飛散され易くなる。
【0127】
(実施の形態5)
実施の形態5は、実施の形態1における除霜サイクルを単純ホットガスバイパス方式に変更したものである。その内容を図39及び図40に基づき説明する。なお、図39は実施の形態5に係る冷凍装置の冷媒回路図であり、図40は同冷凍装置における除霜運転時の制御フローチャートである。
【0128】
実施の形態5に係る冷凍装置の冷媒回路は、冷房サイクル、暖房サイクル、着霜を検出する第1センサ11、室外側熱交換器3の入口側空気温度を検出する第3センサ21及び室外側熱交換器3の出口側空気温度を検出する第4センサ22は実施の形態1の場合と同様である。
また、この冷媒回路には、圧縮機1の吐出配管から暖房サイクルにおける室外側熱交換器3の入口側にホットガスバイパス回路7が設けられ、このホットガスバイパス回路7中に電磁弁などのバイパス弁8が設けられている。圧縮機1の吐出配管から暖房サイクルにおける室外側熱交換器3の入口側にホットガスバイパス回路7が設けられ、このホットガスバイパス回路7中に電磁弁などのバイパス弁8が設けられている。
【0129】
そして、除霜運転は次のように行われる。
暖房運転時において(図40におけるステップS41)、室外側熱交換器3の着霜量が増加するにつれ室外側熱交換器3の出口側冷媒温度Ts1が低下し、暖房能力が低下する。そこで、第1センサ11で検出する冷媒温度Ts1が所定温度Taになると(ステップS42)、暖房運転を停止し、膨張機構4を閉鎖し、かつ除霜運転に切り換える。この切り換えは、圧縮機1の運転は継続したままとして室外ファン3aを停止することにより(ステップS43)暖房運転を停止し、バイパス弁8を開放して(ステップS44)圧縮機1の吐出ガスを室外側熱交換器3の入口側に流すことにより除霜運転を開始する。同時に制御装置13に内蔵した第4タイマーを作動させる(ステップS45)。このとき冷媒流通回路中には膨張機構4が介在しない状態となり、圧縮機1の高低圧力差は小さくなるので、圧縮機1の吐出量は大幅に増大する。したがって、圧縮機1の吐出ガスが全量室外側熱交換器3に供給されるため、冷媒回路の高圧側に蓄積されていた熱エネルギーが一挙に室外側熱交換器3を加熱するために供給されることになる。この回路が本実施の形態5における除霜サイクルであり、これを単純ホットガスサイクル方式と称する。
【0130】
また、上記除霜サイクルによる除霜運転が所定時間tm経過したときに表面部分Aに接触する界面部分の霜又は氷が融解するようにこの所定時間tmを予め設定しておく。そして、所定時間経過したときに(ステップS46)バイパス弁8を閉鎖する(ステップS47)。このとき、表面部分Aに接する界面部分の霜又は氷が融解し脱落を始める。一方、この室外側熱交換器3の熱交換面は撥水性と滑落性に優れているため、この融解した霜又は氷が表面部分Bに付着している霜又は氷とが部分的に連結して自重により剥離する。また、バイパス弁8閉鎖すると同時に水滴飛散促進機構をONし、室外ファン3aを高速モードで運転する(ステップS48)。これにより、前述の剥離作用に加え室外ファン3aによる風圧が脱落する表面部分A上の霜又は氷に風圧が作用し表面部分Bに付着している霜又は氷の剥離が促進される。
【0131】
このようにして室外側熱交換器3の熱交換面における霜又は氷の剥離が進むにつれて室外側熱交換器3の温度が上昇する。室外側熱交換器3における空気の出入口温度差Ts3−Ts4の変化により除霜運転を終了する点は実施の形態1の場合と同様である(ステップS49)。なお、除霜運転を終了した後は、水滴飛散促進機構をOFFして(ステップS50)、暖房運転に復帰させる(ステップS50→ステップS41)。
【0132】
この実施の形態5は以上のように構成されているので、実施の形態1と同様の効果を奏する。
また、この実施の形態5によれば、除霜運転は単純ホットガスバイパス方式を採用しているので、暖房運転から除霜運転への切り換えが連続的となる。
また、この実施の形態5によれば、除霜運転は単純ホットガスバイパス方式を採用しているので、冷媒回路の高圧側に蓄積されていた熱エネルギーが一挙に蒸発器に放出される。したがって、短時間で表面部分Aに接触している界面部分の霜又は氷を融解することができ除霜運転時間を短縮することができる。なお、熱交換面の全表面の霜又は氷を融解する必要のある従来の冷凍装置では熱量不足を招きやすいが、本発明の場合は表面部分Aの表面部分(界面部分)の霜又は氷のみを融解すればよいので、熱エネルギー不足の心配がない。
【0133】
(実施の形態の変更例)
(1) また、実施の形態1においては、除霜サイクルを正サイクルホットガスバイパス方式としてもよい。すなわち、正サイクルホットガスバイパス方式は、暖房運転時の冷媒回路で冷媒を循環させながら圧縮機吐出ガスを蒸発器入口側にバイパスさせる除霜サイクルを行うものであるので、このように構成するには、実施の形態1の冷媒回路中に実施の形態5の場合と同様のホットガスバイパス回路7を設ける。また、除霜運転中も暖房用膨張機構4を作動させたままとするので、バイパス弁8の冷媒流通抵抗を実施の形態5の場合よりも大きくする。したがって、除霜サイクルは、暖房サイクルにおいてバイパス弁8を開放することにより形成される。また、除霜運転時の制御フローチャートは図36と同一で行われる。このように構成すれば、圧縮機1を連続運転させながら除霜運転に切り換えることができるので、除霜運転時間が短縮される。
【0134】
実施の形態1において、暖房運転時における室外ファン3aの風速モードを多段階とし、水滴飛散促進機構ONしたときの室外ファン3aの高速モードを、この暖房運転時における風速モードの中の高速モードの速度とすることもできる。このように構成すれば、室外ファン3aの回転速度を暖房運転時用と水滴飛散促進機構用と共通させているので、室外ファン3aの駆動装置を安価にすることができる。
【0135】
(2) 実施の形態4においては、加振装置51が室外側熱交換器3の下部に設置されていたが、この過信装置の設置位置は特に限定されるものではない。例えば、室外側熱交換器3の上部に設置してもよい。
【0136】
【発明の効果】
本発明の熱交換装置によれば、熱交換面に撥水性及び滑落性に優れた表面構造が形成されるとともに、蒸発器を通過する空気の風圧を利用して付着する凝縮水を飛散させることを促進する水滴飛散促進機構とを備えているので、着霜を遅延させ、除霜運転時間を短縮し、除霜に必要な熱エネルギーを低減することができる。したがって、冷凍運転効果の低下(例えば、ヒートポンプ式空気調和機に応用した場合における暖房快感度の低下)、及びエネルギー効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例3における第1サイクルのフロスト運転開始10分後の、着霜開始時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した写真である。
【図2】図1の部分拡大写真である。
【図3】試験例3における第1サイクルのフロスト運転開始20分後の、フロスト運転終了時の試料板表面の着霜状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図4】図3の部分拡大写真である。
【図5】試験例3における第1サイクルのデフロスト運転開始直後の、霜又は氷の剥離開始時の試料板表面の剥離状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図6】図5の部分拡大写真である。
【図7】試験例3における第1サイクルのデフロスト運転開始2分後の、デフロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図8】図7の部分拡大写真である。
【図9】試験例3における第2サイクルのフロスト運転開始20分後の、フロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図10】図9の部分拡大写真である。
【図11】試験例3における第2サイクルのデフロスト運転開始直後の、霜又は氷の剥離開始時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図12】試験例3における第2サイクルのデフロスト運転開始30秒後の、剥離略完了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図13】試験例3における第2サイクルのデフロスト運転開始2分後の、デフロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図14】図13の部分拡大写真である。
【図15】比較試験例2における第1サイクルのフロスト運転開始約10分後の、全面フロスト状態の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図16】図15の部分拡大写真である。
【図17】比較試験例2における第1サイクルのフロスト運転開始20分後の、フロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図18】図17の部分拡大写真である。
【図19】比較試験例2におけるで第1サイクルのデフロスト運転開始直後の、霜又は氷の融解開始時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図20】図19の部分拡大写真である。
【図21】比較試験例2の第1サイクルにおけるデフロスト運転開始2分後の、デフロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図22】図21の部分拡大写真である。
【図23】比較試験例2の第2サイクルにおけるフロスト運転開始20分後の、フロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図24】図23の部分拡大写真である。
【図25】比較試験例2の第2サイクルにおけるデフロスト運転開始直後の、霜又は氷の融解開始時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図26】比較試験例2の第2サイクルにおけるデフロスト運転開始1分後の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真である。
【図27】比較試験例2の第2サイクルにおけるデフロスト運転開始2分後の、デフロスト運転終了時の試料板表面の状態をCCDカメラで撮影した全体写真
【図28】図27の部分拡大写真である。
【図29】実施の形態1に係る冷凍装置の冷媒回路図である。
【図30】同冷凍装置の室外側熱交換器における熱交換面上の凝縮水量の運転時間に対する変化と飛散時間とを示す図である。
【図31】図30におけるt1、t2の外気温度に対する変化を示す図である。
【図32】同冷凍装置の暖房運転時における水滴飛散促進機構の制御フローチャートである。
【図33】同冷凍装置の除霜運転時における水滴飛散促進機構の制御フローチャートである。
【図34】実施の形態2に係る冷凍装置の冷媒回路である。
【図35】同冷凍装置の暖房運転時における水滴飛散促進機構の制御フローチャートである。
【図36】実施の形態3に係る冷凍装置における水滴飛散促進機構の説明図である。
【図37】同水滴飛散促進機構における圧縮空気噴出ノズルの側面図である。
【図38】実施の形態4に係る水滴飛散促進機構の説明図である。
【図39】実施の形態5に係る冷凍装置の冷媒回路図である。
【図40】同冷凍装置における除霜運転時の制御フローチャートである。
【符号の説明】
3 室外側熱交換器(対空気用熱交換器)
3a 室外ファン
7 ホットガスバイパス回路
11 第1センサ
13 制御装置
21 第3センサ
22 第4センサ
25 光学式センサ
41 空気圧縮機
42 圧縮空気噴出ノズル
51 加振装置
Claims (8)
- 撥水性バインダー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン粒子、分散剤、モル熱容量が6JK−1mol−1〜7JK−1mol−1の無機粒子及び溶媒からなる表面処理用組成物の塗膜が空気との熱交換面に施されたフィンを構成部材とする対空気用熱交換器と、
この対空気用熱交換器と熱交換する空気を対空気用熱交換器に送風する送風機と、
前記対空気用熱交換器を蒸発器として使用されている場合に、前記送風機により供給される空気の風圧を利用して、対空気用熱交換器も熱交換面に凝縮した凝縮水を飛散させることを促進する水滴飛散促進機構と
を備えている熱交換装置。 - 前記撥水性バインダー樹脂はフッ素樹脂であり、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子は重量平均分子量が500〜200,000、平均粒子径が0.1μm以上であり、分散剤はフルオロアルキル基を有するビニルモノマーから誘導された繰り返し単位を含む重合体であり、低熱容量の無機粒子は、モル熱容量が6JK−1mol−1〜7JK−1mol−1であって導電性を有するものであり、溶媒は有機溶媒系であり、さらに、これら組成物の配合割合は、撥水性バインダー樹脂100重量部に対してポリテトラフルオロエチレン粒子が100〜200重量部、分散剤が5〜30重量部、低熱容量の無機粒子が25〜200重量部、溶媒が400〜2,000重量部である請求項1に記載の熱交換装置。
- 前記無機粒子がカーボンブラックである請求項1または2に記載の熱交換装置。
- 前記水滴飛散促進機構は、前記送風機を、前記対空気用熱交換器が蒸発器として使用されている場合における最高速以上の高速度で運転させるように構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の熱交換装置。
- 前記水滴飛散促進機構は、前記対空気用熱交換器が蒸発器として使用されている場合において、前記対空気用熱交換器から凝縮水が飛散し始めたときに作動させるように構成されている請求項3または4に記載の熱交換装置。
- 前記水滴飛散促進機構は、前記対空気用熱交換器が蒸発器として使用されている場合において、前記対空気用熱交換器から凝縮水が飛散し始めたときに作動させ、前記対空気用熱交換器からの凝縮水の飛散が少なくなったときに停止させるように構成されている請求項3または4に記載の熱交換装置。
- 前記水滴飛散促進機構は、前記対空気用熱交換器を除霜運転するときにおいて、前記無機粒子に接触する界面部分の霜又は氷が融解したときに再作動させるように構成されている請求項6に記載の熱交換装置。
- 請求項1〜7の何れか1項に記載された熱交換装置が蒸発器として使用されている冷凍装置。
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