JP4633887B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、靭性が改良されたエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂組成物は、接着性、耐薬品性、電気絶縁性等に優れており、接着剤、成形材料、積層板、塗料など多方面で使用されている。ベースとなるエポキシ樹脂や硬化剤の種類も多く、その組合せによって種々の硬化特性を有する組成物が得られる。とくに電気・電子部品分野においては、耐熱性に優れた架橋密度の高いものが多用されているが、これらは一般に靭性が低いため、耐熱性を実質的に損なうことなくその改良を行うことが求められている。また耐熱性の比較的低いエポキシ樹脂組成物の利用分野においても、靭性の改良が求められることがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このため本発明は、エポキシ樹脂組成物の靭性の改良を目的とするものである。とりわけ耐熱性に優れたエポキシ樹脂組成物において、耐熱性を実質的に損なうことなく靭性を改良することが可能な処方の提供を目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、樹脂成分であるエポキシ樹脂(A)とエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合ゴム(C)、及び4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ジシアンジアミド、ピペリジンから選ばれる硬化剤(B)からなり、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合ゴム(C)が10〜15重量部配合されていることを特徴とするエポキシ樹脂組成物が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるエポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を2個以上有し、多価アミンや酸無水物などの硬化剤により硬化して樹脂状物を形成するものである。例えばエピクロルヒドリンと、ビスフェノール類などの多価フェノール類や多価アルコールとの縮合によって得られるもので、ビスフェノールA型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、ノボラック型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、テトラフェニロールエタン型などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を例示することができる。その他エピクロルヒドリンとフタル酸誘導体や脂肪酸などのカルボン酸との縮合によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとアミン類、シアヌル酸類、ヒダントイン類との反応によって得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、さらには様々な方法で変性したエポキシ樹脂を使用することもできる。
【0006】
本発明で使用することができる硬化剤(B)は、エポキシ樹脂に広く使用されているものであってよく、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、ピペリジンなどのアミン系硬化剤、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、テトラブロモ無水フタル酸、無水ヘッド酸などの酸無水物系硬化剤、ノボラック型フェノール樹脂などのポリフェノール系硬化剤、ポリサルファイド、チオエステルなどのポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネートプレポリマーなどのイソシアネート系硬化剤、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン系硬化剤、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール系硬化剤、BF3モノエチルアミン、BF3ピペラジンなどのルイス酸系硬化剤、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの縮合型硬化剤を例示することができる。これらの中では、アミン系硬化剤又は酸無水物系硬化剤を使用するのが好ましい。
【0007】
本発明においては、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)と共に、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合ゴム(C)が使用される。本発明で使用されるエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合ゴムは、(メタ)アクリル酸エステル含量が25〜70重量%、好ましくは50〜65重量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、好ましくは0.3〜15g/10分の共重合体であり、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとからなる二元共重合ゴムのみならず、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル及び架橋サイトモノマーとからなる多元共重合ゴムであってもよい。通常はエポキシ樹脂及び/又は硬化剤と反応性を有する架橋サイトモノマーを含有する多元共重合体を使用することが望ましい。
【0008】
エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合ゴムにおける(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであり、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどを例示することができる。これらの中では、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルの使用が好ましい。
【0009】
前記多元共重合ゴムにおける架橋サイトモノマーとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピルのようなマレイン酸モノエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルのような不飽和モノカルボン酸グリシジルなどを例示することができる。とくにマレイン酸モノメチル及びマレイン酸モノエチルのようなマレイン酸モノエステルの使用が好ましい。また多元共重合体における架橋サイトモノマーの含有量は、0.1〜10重量%、とくに0.3〜7重量%の範囲にあることが望ましい
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ジシアンジアミド、ピペリジンから選ばれる硬化剤(B)を化学理論当量(エポキシ基基準)乃至はそれ以下の範囲で、またエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合ゴム(C)を10〜15重量部の範囲で配合する。エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合ゴム(C)の使用は靭性の改良に効果的であり、またその好適な配合量はエポキシ樹脂や硬化剤の種類によっても異なるが、あまり多量に配合すると耐熱性の低下が無視できなくなる。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、必要に応じ種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、離型剤、粘着付与剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、無機充填剤などを例示することができる。
【0012】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
[参考例1,4,6、実施例2,3,5,7,8、比較例1〜3]80℃に加熱したビスフェノールA型エポキシ樹脂[平均分子量380、エポキシ当量190、油化シェルエポキシ(株)製エピコート828]に所定量のエチレン・アクリル酸メチル・マレイン酸モノエチル共重合ゴム(EMA)のテトラハイドロフラン溶液(EMA濃度23重量%)を加え、ディスパーサー(IKALABOTECHNIK製ULUTRA TURRAX T725basic)を用いて混合し、120℃で減圧脱泡してテトラハイドロフランを除去した。混合物に所定量の硬化剤を加え、硬化温度以下の温度で減圧脱泡させたのち、表1に示す条件で硬化させ、所定形状のシートを作成した。
【0014】
また比較のため、EMAを配合しない場合についても同様にしてシートを作成した。
【0015】
これらの配合処方を表1に、また硬化条件を表2に示す。
【0016】
【表1】
DDM :4,4'−ジアミノジフェニルメタン
DCDA:ジシアンジアミド
PPD :ピペリジン
EMA :エチレン・アクリル酸メチル・マレイン酸モノエチル共重合ゴム(アクリル酸メチル含量55重量%、マレイン酸モノエチル含量4重量%)
【0017】
【表2】
【0018】
得られたシートサンプルについて耐熱性及び破壊靭性の評価を次のようにして行った。
【0019】
[動的粘弾性試験]動的粘弾性試験で得られた動的弾性率G’のチャートから耐熱性の変化を調べた。すなわちJIS−K7213に準じた捩り振り子による事由減衰振動型粘弾性測定装置((株)レスカ製RD−1100AD)を用い、昇温速度1.38℃/分、試験温度0〜300℃の範囲で、長さ85mm、巾10mm、厚さ1mmの短冊型試験片の上端に一定の捩れ角を与え、その後自由減衰させながら捩り角と振動周期を測定し、その数値からコンピューターにより動的弾性率G’、損失弾性率G''及び損失正接tanδを演算させ、その値を図示させた。これらのうち、参考例1、実施例2,3及び比較例1の動的弾性率G’のチャートを図1に、参考例4、実施例5及び比較例2のそれを図2に、参考例6、実施例7,8及び比較例3のものを図3にそれぞれ示した。
【0020】
[破壊靭性試験]
破壊靭性試験は、ASTM−D5045−91aに準じて、ねじ式万能試験機((株)インテスコ製210B)を用い、長さ60mm、巾62mm、厚さ6mmのコンパクト試験片を用いて行った。試験片に設けられた機械加工による溝にカッターの刃をあて治具を用いてハンマーで刃を均等に叩き、先端の鋭い亀裂を入れ、長さ15〜17mmの初期亀裂を形成させた。荷重値と初期亀裂長さから、次式により破壊靭性値(KIC)を算出した。
【0021】
【数1】
KIC=(P/BW1/2)・f(a/W)
ここでPは荷重(kN)、Bは試験片厚さ(mm)、Wは試験片巾(mm)、aは初期亀裂長さ(mm)、f(a/W)は形状因子で次式により導かれる。
【0022】
【数2】
f(a/W)=(2+a/W)(0.886+4.64a/W-13.32a2/W2+14.72a3/W3-5.6a4/W4)/(1-a/W)3/2
【0023】
これらの結果を表3に示す。尚表中のKICの値は、23℃における測定値である。
【0024】
【表3】
【0025】
硬化剤としてDDMを使用した参考例1、実施例2,3及び比較例1の系においては、図1のチャートで明らかなように、動的弾性率は、EMA5phr配合で高温側で僅かな上昇が、またEMA10phr及び15phr配合でー40℃近辺から僅かな低下がそれぞれ認められるが、耐熱性の変化はほとんど無視できる程度であり、その一方で表3で明らかなように破壊靭性値がかなり上昇している。
【0026】
硬化剤としてDCDAを使用した実施例4〜5及び比較例2を対比すると、図2から明らかなようにEMA添加量の増加に伴い、0℃付近から動的弾性率が急激に低下しており、耐熱性の低下が認められるが、表3から明らかなように破壊靭性値は相当に改善されている。
【0027】
硬化剤としてPPDを使用した実施例6〜8及び比較例3の系においては、図3から明らかなようにEMAの配合量の増加につれ動的弾性率の急激な低下の始まる温度が低温側に移行し耐熱性の低下が認められるが、表3から明らかなように、破壊靭性値は相当に改善されている。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、エポキシ樹脂における靭性を顕著に改良することができる。とくに硬化剤として適当なものを選択すれば、耐熱性を実質的に損なうことなく靭性を改良することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1、実施例2,3及び比較例1の動的弾性率を示す図面である。
【図2】参考例4、実施例5及び比較例2の動的弾性率を示す図面である。
【図3】参考例6、実施例7,8及び比較例3の動的弾性率を示す図面である。
Claims (1)
- 樹脂成分であるエポキシ樹脂(A)とエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合ゴム(C)、及び4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ジシアンジアミド、ピペリジンから選ばれる硬化剤(B)からなり、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合ゴム(C)が10〜15重量部配合されていることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
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